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2013年12月24日 (火曜日)

一期一会な「融合の音楽」

どっぷり浸かるほどのファンではないのだが、部分部分でディープな好みのアルバムがある女性シンガー・ソングライターがいる。その名は「ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)」。

ジョニ・ミッチェルとは、米国を代表する女性シンガー・ソングライターの一人。カナダ・アルバータ州生まれ。母はスコットランド及びアイルランド系で、父はノルウェー系。1943年生まれだから、今年で70歳になる。1969年のセカンド盤『青春の光と影』の成功により、メジャーな人気を獲得するようになった。

独特な響きを宿した複雑なコードをベースに、エキゾチックでルーツ・ミュージック的な旋律を宿した、彼女独特の歌曲が素晴らしく個性的だ。

どの曲もどこかアーティスティックな雰囲気を宿し、どこかロマンティシズム漂うところが、これまた個性的で、アーシーでフォーキーな雰囲気も芳しく、ジョニの曲は一聴するだけで、それと判るものが多い。

そんなジョニが、ジャズ・ミュージシャンとの邂逅を果たし、一期一会なフュージョン・ミュージックを創造した、そんな一期一会な成果の記録がここにある。Joni Mitchell『Shadows and Light』(写真左)。1979年9月のライブ録音。初出は1980年、LP2枚組でリリースされた。

ちなみにパーソネルは、Joni Mitchell (el-g, vo), Pat Metheny (g), Jaco Pastorius (b), Don Alias (ds), Lyle Mays (key), Michael Brecker (ts, ss)。うむむむ、凄いメンバー構成じゃ。なんというメンバー構成じゃ。このパーソネルの組合せだけで「一期一会」である。このボーカルのジョニのバックを務めるクインテットって、いや〜凄い。
 

Shadows_and_light

 
パット・メセニー・グループの双頭リーダーの二人に、後のジャコ・パストリアス率いるワード・オブ・マウス・ビッグバンドのリズム・セクションの二人に、ブレッカー・ブラザースの兄弟2管の弟のテナー&ソプラノのクインテット。こんな組合せ、この時以外にあり得ない。

コンテンポラリー・ジャズ畑からのジャズメンをバックに侍らせて、ジョニは、ジャジーにフォーキーに、そして、R&Bにゴスペルチックに、そしてロックっぽく「融合の音楽」を創造し,唄い上げていく。

一言で言うと「アメリカン・ルーツ・ミュージック」をベースとした「フュージョン(融合)な音楽」である。コンテンポラリー・ジャズ畑からのジャズメン達のクインテットな音が、素晴らしく柔軟性と応用性の高いフュージョン・ミュージックを表現していく。その様が、このライブ盤では見事に捉えられている。

異種格闘技という言葉があるが、このジョニのライブ盤は、異種格闘技というよりは、異種コラボレーションと表現したらよいだろうか。お互いの個性とテクニックを尊重しつつ、良い意味でのコラボレーションが、奇跡的に成立している。コンテンポラリー・ジャズ畑の強者達が、「ジョニの為に」の一言の下に結集している。

このライブ盤の音世界は筆舌に尽くしがたい。コンテンポラリー・ジャズ者、及び、フュージョン・ジャズ者の方々はもとより、米国西海岸のシンガー・ソングライターの音世界のファンの方々に聴いていただきたい、奇跡の様な「フュージョン(融合)な音楽」の記録である。

どこか敬虔な響きを宿していて、僕にとっては、このライブ盤は冬の季節によく聴くアルバムの代表格ですね。ライブのエコー感も程良く心地良く、こんなライブ盤が録音されたこと自体が「一期一会」な出来事と言えるでしょう。

 
 

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2013年2月15日 (金曜日)

ジョニの考えるジャズ

ジャズは融合の音楽。様々なジャンルの音楽と融合(Fusion)してきた。ボサノバと融合し、ソウルミュージックと融合し、ロックと融合し、ワールドミュージックと融合し、その都度、新たな音楽を生み出してきた。

そんな融合の音楽であるジャズ。このコラボレーションも「融合」の賜。怒れる伝説のベーシスト、チャールズ・ミンガスと、米国西海岸フォークロックのシンガーソングライター、歌姫のジョニ・ミッチェル。このミンガスとジョニのコラボ。融合の音楽のジャズが、米国西海岸フォークロックと融合して、素敵な化学反応を起こしている。

そのアルバムの名はスバリ『Mingus(ミンガス)』(写真左)。1979年のリリース。ミンガスは既に病床にあり、声と歌のみの参加となっている。でも、その存在感は抜群。ミンガスの見守る中、ジョニを始めとする曲者達が自分達なりの「ミンガス・ミュージック」を奏でる。

参加ミュージシャンを列挙する。Joni Mitchell (ac-g, key, vo), Charles Mingus (vo), Wayne Shorter (sax), Herbie Hancock (key, ac-p), Jaco Pastorius (b, Brass Arr), Peter Erskine (ds), Don Alias (congas), Emil Richards (per)。いやはや、凄い面子。曲者揃いである。

特に、このアルバムで大活躍しているのが、ベースのジャコ。当時、ジョニと「良い仲」だったこともあって、ジャコのベースは実に気合いが入っていて、鬼気迫るものがある。凄いアコベである。フロント楽器であるウェインのサックスが霞むほどだ。ジャコのアコベの代表作として挙げても良い位、素晴らしいジャコのパフォーマンスが聴ける。そうそう、ブラス・アレンジもジャコである。

 

Joni_michell_mingus

 

ジョニも負けてはいない。パーカッシブなアコギの演奏は、これまた鬼気迫るものがあって、実にテンション高く切れ味鋭い、一種、妖気漂う凄まじいパフォーマンス。ボーカルも情感こもりまくりで、いわゆる「絶唱」である。

1980年代以降、米国西海岸の女性シンガーソングライター達がジャズ・ボーカルに挑戦したアルバムをリリースしているが、いずれも、ジャズ・スタンダード曲をジャズのフォーマットをバックに、ジャズ・ボーカリストの様に歌うというもの。それなりの成果を出しているところが素晴らしいが、つまりはジャズ・ボーカルの物真似。

しかし、この『Mingus(ミンガス)』でのジョニ・ミッチェルは違う。モーダルなメインストリーム・ジャズの即興演奏をバックに、ジョニの曲をジョニの歌い方で歌う。ジョニの弾き方でアコギを弾く。そうして、出来上がった音楽が「唯一無二」な、それまで聴いたことの無いフュージョン・ジャズ。ジョニでしか為し得ない音世界。

このアルバムを聴くと、ジョニ・ミッチェルの考えるジャズ、というものを体感できる。ジョニが考え、ジョニが感じ、ジョニが表現したジャズ。ジョニ・ミッチェルから、このアルバムを見てみると、ジャズの懐の深さ、ジャズの柔軟さ、ジャズの革新さを感じ取る事ができる。

ジャズという音楽ジャンルがジョニの内部に化学反応を起こし、それに触発されたジャコが凄いエレベを弾きまくる。そしてハービーがエレピをアコピを弾きまくる。そして、アースキンとアライアスが叩きまくる。凄まじいリズム・セクション。ジャズメン同士ではこのグルーブは出ないだろう。ジョニとの他流試合の成果。

ジャズとは融合の音楽であり、ジャズとは即興の音楽である。そんなことを改めて再認識させられる、実に希有な傑作アルバムである。 

 
 

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