2021年2月22日 (月曜日)

ソニクラのお蔵入り音源・1

僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの1人、ソニー・クラーク(Sonny Clark)。1931年7月、米国ペンシルベニア州生まれ、1963年1月、NYにて死去。31歳での「早逝のピアニスト」。それでも、リーダー作はブルーノート・レーベルを中心に10数枚、サイドマン参加でのアルバムは50数枚とかなりの枚数になる。

1955年から逝去する前年1962年の7年の間に、参加アルバムが60数枚、年平均8枚程度、録音していたのだから、当時の「ファースト・コール」ぶりが偲ばれる。そんな当時の人気ピアニスト、ソニー・クラークのリーダー作の中で、録音されてアルバム番号まで確定していながら、お蔵入りになったアルバムが幾枚かある。

まずは、『Sonny Clark Quintets』(写真左)。1957年12月8日、1958年1月5日の2セッションからの録音。

ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Paul Chambers (b) は共通。1957年12月8日のセッションは、Clifford Jordan (ts), Kenny Burrell (g), Pete LaRoca (ds)、1958年1月5日のセッションは、Art Farmer (tp), Jackie McLean (as), Philly Joe Jones (ds) が加わったクインテット編成。

このパーソネルを見て、1958年1月5日の録音(1〜2曲目)って、かの名盤『Cool Struttin'』と同一日、同一メンバーでの録音ではないか、と思われた方は、優れた「ブルーノート者」である。
 
 
Sonny-clark-quintets
 
 
そう、この1曲目「Royal Flush」と2曲目「Lover」は『Cool Struttin'』と同一日、同一メンバーでの録音である。演奏の雰囲気、音の傾向が『Cool Struttin'』そのもの。名演の類である。この盤、この2曲を聴くだけでも価値がある。

かたや、1957年12月の録音は、質実剛健テナーのジョーダンと、漆黒のアーバン・ギターのバレルがフロントを張る変則クインテットだが、ここでのクラークのピアノも絶好調。

クラークは1956〜57年が絶好調で、その絶好調期の最後を飾ったのが、1958年1月5日のセッション。当時、お蔵入りになって2曲は、『Cool Struttin'』がLPであったが故に、収録時間的にあぶれたと思われる(CDでは『Cool Struttin'』のボートラで追加されている)。

逆に、1957年12月8日のセッションの3曲は、このパーソネルでのセッションが、後にも先にもこの日だけだったので、結果、この3曲はアルバムに収録されないまま、放置されたと思われる。このセッションについては、運がなかった、気の毒な3曲だろう。

それでも、1976年に目出度くリリースされたのだから良かった。ジャケットのデザインも良好、ここにクラークの写真が小粋にあしらわれていた、と思うのは僕だけだろうか。
 

 

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2021年2月18日 (木曜日)

「モーダルなホレス」もクールだ

ブルーノートの看板ピアニストと言えば、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)。ホレスはデビューから遺作まで、基本的にブルーノートからのリリースだった。ブルーノートで見出されメジャーになったジャズマンは、ほとんどが弱小なレーベルだったブルーノートを離れて、メジャーなレーベルに移籍していった。

しかし、ホレスは違った。ずっとブルーノートを離れなかった。それも、ホレスを見出したブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンがブルーノートを離れた後も、ホレスはブルーノートを見放さなかった。ブルーノートが一旦活動停止し、純ジャズ復古のタイミングで復活した後も、ホレスはブルーノートにいた。

Horace Silver『Further Explorations』(写真)。1958年1月13日の録音。ブルーノートの1589番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Art Farmer (tp), Clifford Jordan (ts), Teddy Kotick (b), Louis Hayes (ds)。ファンキー・ジャズの雄、ホレス・シルヴァー好調のクインテット盤。
 
 
Further-explorations
 
 
全6曲中、ファーマーのトラペットとジョーダンのテナー、フロント2管のクインテット演奏が3曲。フロント2管を抜いた、ピアノ・トリオでの演奏が3曲。パーソネルを見渡すと、ファンキー・ジャズの臭いがしない。ベースとドラムを見ると、どちらかと言うと、モード・ジャズ。そう、この盤、ホレスの「モード・ジャズへのチャレンジ」な感じの盤なのだ。

冒頭の「The Outlaw」の前奏の2管フロントのユニゾン&ハーモニーには、しっかり「ファンキー臭さ」があるんだが、以降、ホレスのアドリブに入ると、ファンキー臭さを抑えて、モーダルな展開になっていく。ホレスのリーダー作に、これだけファンキー臭さが少ないのは、この盤だけだと思う。それでも、モーダルなフレーズの奥に、ファンクネスがそこはかとなく漂っているところがクール。

この盤、モード・ジャズの影が見え隠れし、新しい音へのチャレンジが頼もしい。熱かったファンキー・ジャズが、この盤では、クールでモーダルなファンキー・ジャズに大変身。ホレスの異色作として、これはこれで「アリ」だと感じる。何も「ファンキー」ばかりがホレスのジャズでは無い。
 
 
 
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2021年2月17日 (水曜日)

これがバップなオルガンの究極形

ジャズ・オルガンが大好きである。「ハモンド・オルガン」を聴いたのは幼稚園の時。ミッション系の幼稚園に通っていたのだが、その幼稚園の立派な教会に設置されていたのが「ハモンド・オルガン」。記憶があやふやだったので、10年ほど前、現地まで確認に行ったのだが、確かに立派な「ハモンド・オルガン」だった。それ以来、何故かオルガンの音が大好きなのだ。

ジャズ・オルガンといえば、やはり「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」にとどめを刺す。ジミー・スミスのプレイを初めて聴いたのは『House Party』、ブルーノートの4002番。このアルバムを聴いた時、とにかくぶっ飛んだ。その素晴らしいテクニック、その素晴らしいダイナミズム、そして、ファンクネス。ど迫力のオルガンにビックリした。以来、ジャズ・オルガンと言えば、最終的には「ジミー・スミス」。

『Groovin' At Smalls' Paradise, Vol. 1& 2』(写真)。ブルーノートの1585番と1586番。1957年11月15日、NYの「Smalls' Paradise」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Eddie McFadden (g), Donald Bailey (ds)。スミスのオルガンがベースのパートも兼ねるので、ベーシストはいない。しかも、今回はギターとのトリオ演奏である。
 
 
Groovin-at-smalls-paradise
 
 
サックスが入る場合は、サックスとオルガンが平等にフロントを担当するが、ギターだとジャズの場合、音の線が細いので、オルガンがフロント演奏のメインになる。ということで、この2枚のライヴ盤、ジミー・スミスのダイナミックなオルガンの独壇場。ジミー・スミスのオルガンだけを愛でる「だけ」の為のライヴ盤である。言い換えると、ジミー・スミスのオルガンの真髄を感じることが出来る、優れたライヴ盤である。

当時、スタジオ録音では「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切ったジミー・スミスであったが、さすがにライヴでは、従来の、高テクニック、壮大なダイナミズム、そして、滴り落ちるファンクネス、揃いも揃った3拍子の、ジミー・スミスでしか弾けない、素晴らしいジャズ・オルガンのライヴ演奏がこの2枚の盤に記録されている。

しかし、このライヴ盤でのジミー・スミスのオルガンは凄い。溢れんばかりの歌心、しつこいまでにテクニックを披露し、こってこてのファンクネスを振り撒きまくる。これがバップなオルガンの究極形だろう。オルガン・ジャズと言えば、ムーディーで柔らかな音をイメージする向きもあるが「とんでもない」。それはイージー・リスニング。純ジャズのオルガンは、ジミー・スミスに代表される「バップな」オルガンだろう。
 
 
 
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2021年2月15日 (月曜日)

トロンボーン好盤として外せない

ハードバップ期のジャズ・レーベルには、メジャーにはならない、地味な存在のジャズマンが必ずいる。しかし、ブルーノート・レーベルだけは、確かに地味な存在のジャズマンがいるにはいるが、これがなかなかの「職人的で小粋で素敵な」ジャズマンばかり。他のレーベルは、残念ながら、地味な存在のジャズマンはその力量もそれなりなんだが、ブルーノートは違う。これが、ブルーノートの不思議なところなのだ。

そんなブルーノートの「地味な存在のジャズマンだが、職人的で小粋で素敵なジャズマン」の1人が「Bennie Green(ベニー・グリーン)」。ベニー・グリーンは、1923年4月、米国イリノイ州シカゴ生まれのトロンボーン奏者。活動のピークは1950年代後半に留まるが、そのホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイが独特の個性。

Bennie Green『Back On The Scene』(写真左)。ブルーノートの1587番。1958年3月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Charlie Rouse (ts), Joe Knight (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。ベニー・グリーンのブルーノートにおける初リーダー作。他のサイドメンも地味ではあるが、確かな腕の職人芸的ジャズマンで固めている。
 
 
Back-on-the-scene
 
 
とにかく、一言で言うと、実に雰囲気のある、トロンボーンならではの、ほのぼのホンワカ、魅惑的な低音が心地良い、とてもジャジーでブルージーなモダン・ジャズである。モダン・ジャズと書いたのは他でもない。このベニー・グリーンのトロンボーンは、ビ・バップやハードバップの影響がかなり小さい。どちらかといえば、スイング・ジャズの影響を色濃く残している。

フロント2管の相棒、チャーリー・ラウズのテナーがとてもハードバップ色濃厚で、このラウズとの対比で、グリーンのトロンボーンの特徴が浮かび出てくる。グリーンとラウズをマッチアップしたプロデュースの勝利だろう。このスイングから中間派のほのぼのとしたモダン・ジャズ風の音がとても渋く、とても心地良い。ナイトもスイング風のピアノで、グリーンのトロンボーンに、時には絡み、時には鼓舞しつつ、リズム・セクションの要として活躍している。

こういう盤が転がっているから、ブルーノート・レーベルは隅に置けない。マイナーな存在のジャズマンのリーダー作だからといって、聴かずに飛ばすことは出来ない。ブルーノート・レーベルには「捨て盤」は無い。しかし、この盤を録音した時のぶるーんって34歳。まだまだ若手。それなのに、この老獪な人生の甘いも酸いも経験したような、人間味溢れる達観した柔らかな音色は何なんだろう。ジャズ・トロンボーンの好盤の一枚として絶対に外せない盤である。
 
 
 

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2021年2月 1日 (月曜日)

都会の夜を連想させるモーガン盤

リー・モーガンのブルーノート1500番台に立ち戻っている。当ブログでまだ記事にしていない好盤の「落ち穂拾い」である。1538番のモーガンのデビュー盤『Indeed!』から、1500番台のモーガンの単独リーダー作、コ・リーダー作を併せて全8枚。この盤が最後の1500番台のリー・モーガンのリーダー作になる。

Lee Morgan『City Lights』(写真左)。ブルーノートの1575番。1957年8月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), George Coleman (ts, as), Ray Bryant (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。モーガンのトランペット、フラーのトロンボーン、コールマンのサックスのフロント3管のセクステット(6重奏団)構成。

録音時、フロント3管のモーガンは弱冠19歳。フラーは23歳、コールマンは22歳。リズム・セクションのピアノ担当ブライアントは26歳、ベースのチェンバースは22歳、ドラムのテイラーは28歳。フロント3管の平均年齢は21歳。リズム・セクションの平均年齢25歳。若手で固めたセクステットだが、フロント3管はあまりに若い。若さに任せて、バリバリのアドリブ合戦が繰り広げられるのか、と思いきや、それが違う。
 
 
City-light  
 
 
タイトルが「City Lights(街の灯り)」。この盤は、当時の米国東海岸では珍しい、アーバンでアダルトにアレンジされた「大人のファンキー・ジャズ」である。フロント3管の平均年齢21歳で、この「大都会の夜、それも深夜」をイメージさせる、大人のブロウを聴かせてくれるとは。バリバリのアドリブ合戦どころか、アダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズな内容にちょっとビックリする。

収録曲を見れば、ベニー・ゴルソンの曲が5曲中3曲を占める。この盤、ゴルソンが作曲だけで無くアレンジでも参加していたらしく、なるほど、フロント3管のユニゾン&ハーモニーは、あからさまでは無いが「ゴルソン・ハーモニー」の香りがする。そう、このゴルソンのアレンジが「都会の灯り」の雰囲気を濃厚に醸し出しているのだ。

全編に渡って「大人」で「都会の夜」の雰囲気漂う音世界が心地良く流れていく。抑制の美とアレンジの妙。そんなゴルソンのアレンジの意図を理解し、的確に表現していく若手の3管フロント。その力量は計り知れないものがある。とりわけ、弱冠19歳、最若手のリーダー、モーガンのトランペットの「抑制の美」がこの盤の最大の聴きどころ。「都会の夜」を連想させる企画盤として良好の内容。好盤です。
 
 
 
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2021年1月30日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・198

このところ、リー・モーガンに凝っている。特に晩年のモーガンについては、今回、聴き直して、その内容を見直したところがある。そして、今一度、リー・モーガンのブルーノート1500番台に立ち戻る。当ブログでまだ記事にしていない好盤の「落ち穂拾い」である。

Lee Morgan『The Cooker』(写真左)。1957年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Pepper Adams (bs), Bobby Timmons (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。聴き所は2つ。1つは、ペッパー・アダムスのバリトン・サックス(バリサク)の参加。そして、もうひとつは、ザ・ファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの参加。

改めて、リー・モーガンのトランペット、ペッパー・アダムスのバリサクのフロント2管のクインテット構成。このトランペットとバリサクのフロント2管がこの盤の特徴。切れ味良く、ブリリアント、そして力感溢れるモーガンのトランペットだからこそ、存在感抜群のモーガンのトランペットだからこそ、この盤の2管フロントが映えるのだ。

耽美的、リリカル、繊細さが「ウリ」の、ちょっとでも「線が細い」トランペットだと、バリサクのボワッとした、ブリブリした重低音に負けて、音がどこかへ行ってしまう危険性がある。
 
 
The-cooker
 
 
が、このモーガンの存在感溢れる、切れ味の良い中高音だと、バリサクの音色との「好対照」が映える。加えて、モーガンのハイテクニックのトランペットにユニゾン&ハーモニーで追従するアダムスのバリサクの演奏テクニックも特筆に値する。

バックのリズム・セクションも好調。こってこてファンキーなピアニスト、ティモンズが弾きまくる。ブルーノートはリハーサルにもギャラを払うほど、本番の演奏の精度は高い。しっかりと端正で整った演奏の中で、ファンキーに弾きまくるティモンズは「整っている」。

ファンキーだからといって、俗っぽいところは無い。整った躍動感溢れるファンキー・ピアノ。これが、トラペット+バリサクのフロント2管にバッチリ合っている。ポルチェンのベースとフィリージョーのドラムも何時になく「ファンキー」なリズム&ビートを叩き出す。

実は僕、この盤、昔から大好きな一枚なんです。特に、この盤でバリサクの魅力に取り憑かれました。ジャケットのモーガンの横顔のアップも格好良い。ブルーノート・レーベルならではの好盤です。
 
 
 

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2021年1月29日 (金曜日)

ジャケを見て、ギョッとする。

ジャケットを見れば「ギョッ」とする。おおよそ、ジャズのアルバムとは思えない。1960年代後半のサイケデリック系ポップスか、ラブ&ピース系のソフトロックのアルバムではないかと思ってしまう。でも、これって、歴としたブルーノート・レーベルのアルバムなのだ。

1965年、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンはブルーノートを米リバティー社に売却、1967年引退した。ライオンの手を離れたブルーノートは、ジャケット・デザインなど、外に見える部分ではあるが、大手レコード会社の趣味の悪い、大衆向けのデザインやタイポグラフィーを採用していった。もはやジャケットを見ただけでは「ブルーノート・レーベル」盤だということが判断出来なくなった(笑)。

Lee Morgan『Caramba!』(写真)。1968年5月3日の録音。ブルーノートの4289番。プロデューサーはフランシス・ウルフ。アルフレッド・ライオンでは無い。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds), Cal Massey (arr)。モーガン&モーピンの2管フロントのクインテット編成。
 
 
Caramba_20210129195601   
 
 
このジャケットを見れば、まあ、内容的には俗っぽいソウル・ジャズか、サイケデリックなジャズ・ファンクだろうなあ、と思うのだが、パーソネルを見れば、このメンバーでソウル・ジャズやジャズ・ファンクをやるはずが無いよなあ、とも思う。ということで、聴いてみると・・・・。さすがはリー・モーガン。俗っぽいジャズに身をやつすことは無かった。

冒頭の「Caramba」は、モーガンお得意の、硬派でポップなジャズ・ロック。「The Sidewinder」でお馴染みのジャズ・ロックの後は、いきなりポップではあるが、モーダルなジャズにガラッと様変わり。モーガンのトランペットは溌剌とモーダルなフレーズを連発、モウピンのテナーもお得意のモード奏法で硬派なフレーズを吹き上げる。

シダー・ウォルトン率いるリズム・セクションも好演。不思議とモーガンならではの響きがそこかしこに感じられて、気がつけば、リー・モーガンならではの「モード・ジャズ」のオンパレード。しかし、ジャケットとアルバムの内容とこれだけかけ離れた盤も珍しい。アルバムのリリース当時、モーガンはどう思っただろう。
 
 
 

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2021年1月28日 (木曜日)

モーガン最後の公式セッション

当ブログの朝のツイート「今日のスタート」で、リー・モーガン(Lee Morgan)の聴き直し、それも、急逝直前の遺作から順に遡って聴き直している。モーガンが内縁の妻に撃たれて急逝したのは、1972年2月19日(享年34歳)。ジャズは、クロスオーバー・ジャズとモーダルなジャズが主流だった時期。モーガンが果敢に新しいジャズのトレンドに挑んでいった姿が涙を誘う。

Lee Morgan『The Last Session』(写真左)。1971年9月17–18日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Grachan Moncur III (tb), Bobbi Humphrey (fl), Billy Harper (ts, alto-fl), Harold Mabern -(ac-p, el-p), Reggie Workman (b, perc), Jymie Merritt (b), Freddie Waits (ds, recorder)。フロント4管のセプテット(7重奏団)編成。

モーガン、急逝の5ヶ月前のセッションの記録。最後の公式セッションになる。メンバーは、当時のブルーノート御用達のメンバーをメインに固めた「手練の面々」。メンバーの志向としては、モーダルなジャズを志向するメンバーが多くを占めている。積極的な電気楽器の導入もあって、クロスオーバー・ジャズの影響も垣間見える。
   
  
The-last-session-lee-morgan   
  
 
モーガンのトランペットが、モード・ジャズに完全適応している様子が窺える。それまでのスタジオ録音は、ところどころ、ファンキー・ジャズへの未練や、ソウル・ジャズへの浮気心が見え隠れして、ちょっと散漫なイメージが付きまとっていたが、この盤では、それが吹っ切れた様に、モード・ジャズ一色に染まっている。

そんなモーダルなジャズをベースに、エレクトリック・サウンドの積極導入、スピリチュアルなアドリブ展開、黒人解放運動からの影響、そして、ネイティヴな民族音楽の要素の反映など、従来のスタイルから明らかに進化したモーガンの音楽を聴くことが出来る。この時期、こんなモーダルなジャズの音世界は他に無い。明らかにモーガンならではの音世界である。

当時の、新しいモーガンの進化した音世界が形になったアルバムだと思う。ここから更に進化したモーガンが聴けるはずだったのだが、このセッションの5ヶ月後、内縁の妻に撃たれて急逝する。実に残念である。

最後に、ノーマン・シーフ撮影によるジャケが実に格好良い。本当に「鯔背で小粋で格好良い」トランペッターだった。
 
 
 

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2021年1月23日 (土曜日)

整然と整ったモブレー=モーガン

ブルーノート・レーベルのアルバムは「ジャケット・デザイン」の面でも優れたものを多く残している。この盤も例に漏れず、実に粋なアルバム・ジャケットである。セッションを録音したであろうオープンリール・テープを運ぶキャリング・ケースをあしらったデザイン。そして、それにそぐった絶妙なロゴタイプ。

Hank Mobley & Lee Morgan『Peckin' Time』(写真左)。1958年2月9日の録音。ブルーノートの1574番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。双頭リーダーのハンク・モブレーのテナー、リー・モーガンのトランペットがフロント2管のクインテット構成。整然と整った躍動感溢れるスッキリとした演奏で、ジャズの良さがギッシリ詰まった盤。

共演者が同年代若しくは年下の時のモブレーは好調だ。ケリーのピアノもご機嫌。モーガンのペットも溌剌。アルバム全体を通して、モブレーのリーダー作の中で、一番、内容が整った盤ではないか。もともと、モブレーとモーガンの相性は良く、この2人の2管コンビには外れが無い。その2人が絶好調なこの盤。アレンジも良好、フロント2管のバランスも良くて、ほんと整った内容に惚れ惚れする。
 
 
Peckin-time  
 
 
特に、唯一のスタンダード、3曲目の「Speak Low」はアレンジも良好、フロント2管が朗々と鳴り響いて、とても素敵な演奏に仕上がっている。ほんと、この盤ではモブレーがテナーを伸び伸びと吹いている。伸び伸びと吹く分、テクニックにも良い影響を与えていて、ミスの無い流麗なアドリブ・フレーズは特筆すべきもの。もしかしたら、この盤、総合的に見て、ハンク・モブレーの一番出来の盤かもしれない。

バックのリズム・セクションの活躍も見逃せない。もともと、モブレーとベースのポール・チェンバースも相性が良い。そして、ハッピー・スインガーでそこはかとなくブルージーなウィントン・ケリーのピアノが、モブレー=モーガンのフロント2管のスピード感とバッチリ合っていて、演奏全体のスピード感の供給に貢献、そして、パーシップのドラムが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと「締めて」いる。

ブルーノート・レーベルのアルバムの中でも、ジャズの即興演奏でありがちな「破綻」が全く無い。スリリングな演奏を好む向きには、ちょっと物足りないかも。しかし、フロント2管の抑制がほどよく効いたバリバリな吹きまくりと、バックのリズム隊の躍動感と疾走感。アーティステックな側面を強く感じる、素敵なハードバップ盤である。
 
 
 

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Never_giveup_4 
 

2021年1月19日 (火曜日)

漆黒ソウルフルなタレンタイン

「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のテナー、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)。タレンタインは「ブルーノート御用達」。ブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者といっても良い。生涯のリーダー作の半数がブルーノート・レーベルからのリリース。

Stanley Turrentine with The Three Sounds『Blue Hour』(写真左)。1960年6月29日と12月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。後のブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者とピアノ・トリオの共演。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン、なかなか小粋なマッチアップをする。

もともと、スリー・サウンズのリーダー・ピアニスト、ジーン・ハリスのピアノはファンキー&ブルージー、そしてソウルフル。バックを担うリズム隊の2人、シンプキンスのベース、ドゥディのドラムも「こってこてファンキー」。「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のタレンタインのテナーを引き立てるのに恰好のリズム・セクションである。
 
 
Blue-hour  
 
 
冒頭の「I Want a Little Girl」から、こってこてのファンクネス全開。ゆったりと吹き上げるタレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。やり過ぎじゃないかと思えるくらいのファンクネス。オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの「間(あいだ)」をいくタレンタインのテナー。この「オールド・スタイル」を踏襲する部分がとりわけ「ソウルフル」。

バックのリズム・セクションがスリー・サウンズというのが完璧に効いている。ファンクネス&ソウルフルの相乗効果で、タレンタインのテナーは全編に渡って「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。ジャケットのようにブルーに染まる、タレンタイン渾身のブロウが映える5曲。コンプリート盤も良いが、この盤は当初のオリジナル盤の5曲を聴いて欲しい。

この盤はタレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」の個性が最大に発揮された好盤。逆にこれ以上に「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」に振れることは無い。タレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」度合いの最高地点を記録した『Blue Hour』。リラックスして、じっくりと聴き込みたいですね。出来たら、まずまずのレベルのステレオ装置で。
 
 
 

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