2020年7月 3日 (金曜日)

普遍的なハードバップなジャズ

ホレス・シルヴァーのファンキー・ピアノが長年のお気に入りである。とにかく判り易い。ジャズを聴き始めたジャズ者初心者の頃、ホレス・シルヴァーのピアノは判り易かった。マイナー調の愁いを、時にラテンの哀愁を帯びた、それでいて躍動感のあるフレーズ。これが「ファンキー」というものか、と僕は「ファンキー」というワードを、ホレス・シルヴァーのピアノのパフォーマンスを通じて理解した。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、次の2つの編成に分かれる。 1963年10月31日の録音で、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日の録音で、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

アルバム冒頭のタイトル曲「Song for My Father」が特に有名。一度聴いたら忘れない、とてもキャッチャーでポップで躍動感溢れるテーマが格好良い。この曲は、1964年の録音なので、テーマの印象的な、溌剌ファンキーなトランペットは「カーメル・ジョーンズ」である。ブルー・ミッチェルでは無い。寄り添うようなテナー・サックスは「ジョー・ヘン」。
 
 
Song-for-my-father  
 
 
この盤、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」ばかりが有名だが、2曲目以降も、なかなかのファンキー・ジャズが展開されている。特に、1964年の録音の方が内容的に優れていて、ファンキーでポップな曲で固められたこの盤では、カーメル・ジョーンズとジョー・ヘンのフロント2管の相性がバッチリ。曲で言うと「The Natives Are Restless Tonight」「Que Pasa」「The Kicker」。

時は1960年代前半、モード・ジャズが主流を占めつつあったが、この盤にはスインギーなハードバップ、スインギーなブルースが満載。シルヴァーのピアノがファンキーなので「ファンキー・ジャズ」に分類されたりするが、この盤は古き良き時代のハードバップがメイン。演奏も端正で躍動感溢れ、イマージネーション溢れるアドリブが展開される。普遍的なハードバップなジャズがこの盤に詰まっている。

本作のタイトル曲「Song For My Father」はホレス・シルバーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が実はホレス・シルヴァーの父君そのものである。ブルーノート・レーベルって、モダン・ジャズの硬派でならしたレーベルなんだが、こういうジャケ写での「粋な計らい」をする、お茶目なレーベルでもある。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年6月19日 (金曜日)

ジャズのシンガーソングライター

ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)の新作が出た。4年振り、2016年の『Day Breaks』以来のオリジナル・フルアルバムになる。昨年の『Begin Again』は全編28分のミニアルバムだった。しかも当面の間は、バンドプロジェクト、ガールズ・バンドの「プスンブーツ」の活動に専念すると思っていたので、今回は「ビックリぽん」である。

ノラ・ジョーンズは、2002年、デビューアルバム『Come Away with Me』で大ブレイク。しかし、このデビュー盤がリリースされた当時は、この盤については「これはジャズか?」と揶揄され、「ボーカルだけが目立つ」と散々な評価もあった。ジャズの老舗レベール「ブルーノート」からのリリースだから、やむなくジャズ盤としている、なんてことも言われた。しかし、この盤は世界的には2,500万枚を売り上げた。

ノラのボーカルだけが目立つからジャズでは無い、というのは暴論だろう。ノラ・ジョーンズは、ジャズで初のシンガーソングライターである。自作自演の曲で固めたジャジーなボーカル。そりゃあ目立つだろう。もともとジャズ・ボーカルというものは極力「小作自演」を避けてきた。コンポーザーでは無く、シンガーに徹してきたところがある。シンガーとは「声」が楽器。他の楽器と同列なので、ボーカルだけが突出して目立つことは無い。
 
Pick-me-up-off-the-floor  
 
Norah Jones『Pick Me Up off the Floor』(写真左)。今年6月のリリース。全て、ノラ・ジョーンズの自作自演(11曲中4作は共作)。ノラ自身はピアノを弾き、そして唄う。他のメンバーについては、彼女と親交が深いドラマー、ブライアン・ブレイドとのセッションをベースにしているものの、メンバーは固定せず、ジョン・パティトゥッチ(b)、ネイト・スミス(ds)など、総勢20名以上の名うてのジャズマンが立ち代わり登場する。

しかし、アルバム全編に渡って不思議な統一感がある。ピアノ・トリオをベースとしているが、やはり目立つのはノラの歌声。凄い存在感と説得力のあるボーカル。唄われる曲の雰囲気は穏やかでスピリチュアルなものばかり。しかし、ノラのボーカルが唄われる内容に合わせて、トーンや表現が変わる。これがまた見事に「変わる」ので、全編、音的にも不思議な統一感に支配されているにも関わらず、飽きが来ることは全く無い。

ノラの音世界は「ジャズ・ボーカルとシンガーソングライターとの融合」。自作自演なのだ。ボーカルだけが目立つのは当たり前。しかも、自作自演だからこそ、不思議な統一感が存在し、存在感と説得力が増すのだ。この盤を聴いて思う。従来のイメージを前提にした「これはジャズなのか、ジャズではないのか」の評価は不要だな。今回のノラの新作も「良い音楽」だと評価している。心地良いボーカルと演奏が蕩々と流れていく。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・『Bobby Caldwell』 1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・太田裕美『心が風邪をひいた日』
 

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2020年5月15日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・169

僕のお気に入りのトランペッターについては、絶対的存在として「マイルス・デイヴィス」。そのマイルスの次にお気に入りになったのが「リー・モーガン」。

彼のリーダー作『Candy』を聴いて、一発でお気に入りになった。ブラスが響く様に鳴るトランペット。驚異的なテクニック。そして、フレーズの途中でキュッと締める「音の絞り」、フレーズの終わりをヒュッと押し上げる「音の捻り」。フレーズの「癖」が実に鯔背(いなせ)なのだ。これにはホトホト参った。

高校時代はロックが専門だった。大学に入ってからジャズに鞍替えしたんだが、そういう背景もあって、基本的に4ビートよりは8ビートの方が好きだった。ジャズで8ビートと言えば、まず浮かぶのが「ジャズ・ロック」。1960年代半ば辺りから、ロックの台頭に呼応して、ジャズもこのロックのビート、いわゆる「8ビート」を採用し「ジャズ・ロック」という演奏トレンドを編み出した。そのジャズ・ロックを初めて体験したのが「この盤」。

Lee Morgan『The Sidewinder』(写真左)。1963年12月21日の録音。ブルーノートの4157番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。リリース当時、ビルボード・チャートで最高25位を記録し、ブルーノート・レーベル空前のヒット盤となった。ジャズ史上においても、屈指のヒット盤である。
 
 
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冒頭のタイトル曲「The Sidewinder」が突出して出来が良い。8ビートを取り入れた「ジャズ・ロック」の走りで、実はブルースなんだが、8ビートに乗っているので、スピード感溢れる切れの良いブルースに仕上がった。これが「小粋」で「鯔背」なのだ。シュッとしていて格好良い。イントロから格好良くて、フロント2管+ピアノのユニゾン&ハーモニー、ブレイク後のクランショウの短いベース・ソロ。「粋」である。

この盤、「いち早くロックのリズムを取り入れ、それに成功したジャズ盤」とされるが、冒頭のタイトル曲は確かに8ビートだが、2曲目以降、4ビートの曲もあるし、6拍子の曲もあって、様々なリズム・アプローチを試みたハードバップ盤の様相である。このアプローチについては全曲ほぼ成功を収めており、全編に漂うファンクネスを踏まえて、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」と言える。

全編8ビートの「ジャズ・ロック」が満載だと勘違いすると、この盤は辛い。しかし、冒頭の「The Sidewinder」だけでも、この8ビート採用のジャズ・ロック曲だけでも、インパクトは絶大。しかし、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」。決してコマーシャルなジャズ盤では無い。

冒頭のジャズ・ロック曲「The Sidewinder」だけで満足するのは勿体ない。全編聴き通して、意外と硬派でファンキーで純ジャズな演奏を心ゆくまで楽しんで欲しい。ハードバップの発展しきった、ハードバップの最高地点の音の1つを聴くことが出来ます。お勧めです。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年5月 3日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・169

ジャズ・トランペットの好盤の聴き直し、というか、トランペットの好盤の中で、このブログでご紹介しそびれていた盤を選んで聴き直している。14年もブログを運営していて、このトランペットで「ブログでご紹介しそびれていた盤」が結構数ある。

もともと、一番好きな楽器がピアノ、そして、サックス、その次がトランペットなので、取り扱いの優先順位が低かったからかなあ、と思っている。

『The Magnificent Thad Jones』(写真左)。1956年7月の録音。ブルーノートの1527番。ちなみにパーソネルは、Thad Jones (tp), Billy Mitchell (ts), Barry Harris (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。CDリイシューで追加された、ラストの7曲目「Something to Remember You By」にだけ、Kenny Burrell (g) が入る。

ジョーンズ3兄弟の次男、トランペッターのサド・ジョーンズの3枚目のリーダー作。一応、ビリー・ミッチェルとの2管フロントではあるが、明らかにサドのトランペットがフィーチャーされている。全編に渡って、このサドのトランペットが良い音を出している。速いフレーズは無いが、ミッド・テンポからスロー・テンポの曲で、少し丸い、伸びの良いブリリアントなトランペットの音が素敵だ。
 
 
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加えてアレンジが良い。どの収録曲も、この優秀なアレンジが、その曲の持つイメージをしっかりと惹き立たせている。バックのリズム・セクションもムーディーで良い雰囲気を醸し出している。ブルーノート・レーベルには珍しいトリオ構成で、職人肌バップ・ピアノのバリー・ハリス、職人肌の堅実ベースのパーシー・ヒース、そして、バップ・ドラマーのレジェンド、マックス・ローチ。雰囲気のある、上品で質感豊かなリズム&ビートを繰り出している。

CDのボートラ(ボーナス・トラックの略)については、LP時代のオリジナル盤の統一感を損ねるといった否定的な意見が多いが、この盤については「I've Got a Crush on You」「Something to Remember You By」どちらも雰囲気的に申し分無い。特に、後者には漆黒ブルージーなバレルのギターが加わっていて、ジャジーで小粋でスインギーな雰囲気がさらに色濃くなっている。

実は、僕はジャズを聴き始めた、かなり早い時期から、この盤を所有している。しかし、速いテンポのアグレッシブな演奏のが皆無の、ミッド・テンポからスロー・テンポの曲ばかりのこの盤がどうにも苦手だった。若い頃の自分にとっては、刺激不足でノンビリした雰囲気に感じた。

しかし、歳を取るにつれて、この盤のテンポとアレンジが心地良く感じる様になった。今では完璧な「お気に入り盤」。特にこの「ミッド・テンポからスロー・テンポの曲ばかり」のこの盤は、ジャズ喫茶の昼下がりに最適である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月22日 (水曜日)

安心・安定の熟成されたテナー

ブルーノート・レーベルには、ほとほと感心する。よく、こんなジャズマンのパフォーマンスを記録していたもんだ、と思う盤がごまんとある。リーダー盤として記録されたジャズマンのほとんどが一流ジャズ・ミュージシャンに成長している。レーベルのカタログに載る盤のリーダーを任せるのである。外れたら目も当てられないのだが、ブルーノートには外れが無い。総帥のプロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼の成せる技なんだろう。ほとほと感心する。

Clifford Jordan『Cliff Craft』(写真左)。1957年11月10日の録音。ブルーノートの1582番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan (ts), Art Farmer (tp), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。

リーダーのテナー・サックス奏者、クリフォード・ジョーダンとトランペット担当のアート・ファーマーとの2管フロントのクインテット構成。バックのリズム・セクションは、哀愁のバップピアニスト、ソニー・クラークをメインに、職人肌のタッカーのベースとヘインズのドラムで「鉄壁のリズム隊」。

リーダーのクリフォード・ジョーダンは、1931年生まれ。惜しくも1993年3月に鬼籍に入っている(享年61歳)。この盤を録音した時、ジョーダンは26歳。少し歳はいっているが、まだまだ若手のジャズマンである。そんなジョーダンに、ブルーノートはリーダー作としての録音の機会を与えているのだ。しかも、共演ミュージシャンについても、申し分の無い、渋い玄人好みの人選で録音に臨んでいる。
 
 
Cliff-craft-cliff-jordan  
 
 
そして、その内容は「絵に描いた様なハードバップ」であり「典型的なブルーノートの音」。録音年は1957年、確かにハードバップ時代ど真ん中なんだが、それにしても、ハードバップの特徴・個性、そして「美味しいところ」がこの盤にギッシリと詰まっているのだ。テーマ部のユニゾン&ハーモニー、アドリブへの展開、アドリブの受け渡し、アドリブの節回し、どれをとっても「ハードバップ」である。

ジョーダンのテナーは「端正」「整然」「穏健」。テナーの音に乱れが無い。しっかり吹き切っている。そして、旋律の音の一つ一つを丁寧に紡ぎ上げる。例えば、ダブルタイムを殆ど吹かないし、婉曲的な節回しは無い。そして、そのブロウはしっかりと抑制されている。人の耳に聴き心地の良い音の大きさ、滑らかさでテナーを吹く。激情に任せた激しいブロウは皆無。26歳のプレイとは思えない、安心・安定の「熟成されたテナー」である。

バックのソニー・クラークのピアノも好調。良く鳴るフレーズをそこはかとないファンクネスを偲ばせて、ジョーダンのテナーにピッタリと寄り添っている。タッカーのベースとヘインズのドラムのリズム隊も、堅実に躍動的に、バンド・サウンド全体に対して、爽快なリズム&ビートを供給する。

クリフ・ジョーダンは地味な存在ではあるが、彼のリーダー作でのテナー・サックスのプレイは「端正」「整然」「穏健」。典型的なハードバップな演奏の中で、安心・安定の「熟成されたテナー」を聴かせてくれる。ジャズ者初心者の方々にもお勧めの「飽きの来ない好盤」です。
 
 
 
《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.18更新。

  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月14日 (火曜日)

60年代末期のジャズの雰囲気

コロナウィルスによる非常事態宣言が発効されて1週間が経つ。自らが積極的に感染防止に努めるべき、と思っているので、1週間に2回の食料の買い出しと一日に一回の散歩以外は人と出会うことは無いし、会話を交わすことも無い。どうしても人と会話をする時、買い物にスーパーへ入る時はマスクは必須だし、外出から戻った後の手洗いは絶対だ。

家に居る時間が飛躍的に多くなったので、いきおい音楽に関わる時間が多くなる。今は、ジャズ盤紹介本と特定ミュージシャンの自伝が中心の読書とアルバム・ライブラリーの整理がメイン。アルバム・ライブラリーを整理していると、日頃、なかなか聴けなかった盤に気付いて、聴き直すことが出来る。とにかく、今の「逆境」を逆手に取って、今の「引きこもりの暮らし」を楽しんでいる。

Reuben Wilson『Blue Breakbeats』(写真左)。1969年の録音。ブルーノート・レコードには珍しく、トラック毎にバラバラの録音年月日になっている。ちなみにパーソネルは、当然、パーソネルも、リーダーのリューベン・ウィルソンのオルガン以外はトラック毎にバラバラ。目立ったところでは、ギターにグラント・グリーン、トランペットにリー・モーガン、テナーにジョージ・コールマンという、人気ジャズマンの名前が入っている。
  
 
Blue-breakbeats-1    
  
 
1969年というジャズにとっては厳しい時代ではあるが、内容的には、その時代のトレンドをしっかりと押さえている。ジャズ・ロック+ソウル・ジャズ、ところどころに、スピリチュアルな表現、フリーな表現が入って、サイケデリック・ジャズ一歩手前の様な雰囲気も見え隠れして、1969年という時代を強く感じる。まさしく、この盤に詰まっている音は「1960年代末期」の音である。

この盤の良いところは、いつもはボヤ〜とした緩いオルガンを弾いているリューベンが、結構、カッチリとした硬派で流麗なオルガンを聴かせていること。この盤のリューベンのオルガンには、そのアドリブ・フレーズ毎に思わず「おおっ」と感じることがしばしば。明るくバイタルで鯔背なトランペットは聴けば直ぐ判るモーガンである。

そして、パッキパキのファンキーなギターはもちろん、グラント・グリーンだ。他のジャズメンも好演していて、トラック毎にバラバラの録音年月日、録音パーソネルなんだが、不思議と統一感のある演奏で、曲毎の違和感は全くない。ジャズ盤紹介本にその名が挙がる盤では無いが、ソウル・ジャズとしてなかなかの内容で、1960年代末期のジャズ・トレンドを感じるには格好の好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.29
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ ELP「恐怖の頭脳改革」である

【更新しました】2020.04.01
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップのセカンド盤の個性

 

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2020年3月 8日 (日曜日)

タイナーの「アレンジの才」

マッコイ・タイナー逝去の悲しみは癒えない。今日は朝から「マッコイ・タイナー祭り」。初期のリーダー作、特に、ブルーノート・レーベルに残した諸作を順に聴き返しては溜息をついている。やはり、ジャズを聴き始めた頃からずっと40年以上、折に付け聴いてきたレジェンドが亡くなると精神的に堪える。自分にとっても、そろそろ身近な問題だけに辛いものがある。

Mccoy Tyner『Tender Moments』(写真左)。1967年12月1日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Lee Morgan (tp), Julian Priester (tb), Bob Northern (french horn), Howard Johnson (tuba), James Spaulding (as), Bennie Maupin (ts)。タイナーがメインのピアノ・トリオに、フロントがトランペット、トロンボーン、アルト、テナーの4管、そこにフレンチ・ホルンとチューバが加わる「ノネット(9人編成)」。

この盤はタイナーを理解する上で重要な盤の一枚。コルトレーンのモード・ジャズを継承しつつ、タイナーならではの解釈を交えて「タイナー・ミュージック」とでも形容すべき、タイナーならではの個性的な音世界を確立している。そして、そのタイナーならではの音世界を確立させているのが、タイナーの「アレンジの才」である。
   
  
Tender-moments  
 
 
まず、この盤はノネット(9人編成)での演奏になる。ピアノ・トリオのリズム・セクションにフロントが4管、そこにホルンとチューバが加わる。この9人編成の音を以て、タイナーのアレンジの才により、独特な「タイナー・ミュージック」を実現している。コルトレーン・ミュージックをベースとしながらも、フリーに走らず、モード・ジャズをより高度に洗練した響きは独特なもの。

このノネットを統率して、モーダルな響きを心地良く響かせ、フロント楽器のソロ展開をしっかりと浮き立たせ、かつ、自らのピアノによるインプロビゼーションを際立たせるアレンジには思わず唸る。コルトレーンの下、『Africa/Brass』でドルフィーとアレンジの才をふるった実績はあるが、マッコイ・タイナーの「アレンジの才」が確立された感のある『Tender Moments』である。

録音年は1967年。12月の録音なので、コルトレーン逝去後、5ヶ月が経った頃の録音。まだまだコルトレーンを失った悲しみは癒えない時期ではあっただろう。しかし、そんな悲しみの中で、この盤にじゃ「コルトレーンの音楽と精神は自分が継承していく」という明快な決意めいたものを感じる。この盤は、タイナーの優れた「アレンジの才」を心から愛でることの出来る好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.08
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ 荒井由実『COBALT HOUR』

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2020年2月16日 (日曜日)

異色のモーガンを聴くには面白い

録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズの「Blue Note Classic LT series」。当時、何故かお蔵入りになった音源については、やはり当時のブルーノート・レーベルの専属ジャズマン、御用達ジャズマンのリーダー音源は多い。つまり、御用達の人気ジャズマンについては録音回数も多くなるので、お蔵入り音源になる確率も高くなるのだろう。

Lee Morgan『Taru』(写真)。LT-1031番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。実際には1968年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), John Hicks (p), George Benson (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。リーダーは、当時30歳、キャリアとしては既にベテランの域に入った、トランペット担当のリー・モーガンである。

脇を固めるサイドマンの面子が物々しい。テナーのベニー・モウピン、ピアノのジョン・ヒックス、ベースのレジー・ワークマン、ドラムのビリー・ヒギンス。いずれも若手の「新主流派」の面子である。いわゆる「モード・ジャズ」の担い手ばかり。そこに、後のソフト&メロウの「歌って弾きまくる」フュージョン・ギタリストであるジョージ・ベンソンが参加している。
 
 
Taru  
 
 
当時のブルーノート・レーベルとしては、尖ったパーソネルによる演奏なので、さぞかし、硬派でビターな「モード・ジャズ」が展開されるのか、と予想する。そこにモーガンが割って入って弾きまくるのか。で聴き始めると、アップ・テンポのキャッチーな曲、バラッド、ジャズ・ロック調のナンバーで構成されているのに気が付く。今までの「硬派で鯔背なモーガン」とはちょっと異質の雰囲気。

お得意のファンキー・チューン「Get Youself Together」、流麗でポップなジャズ・バラードのタイトル曲「Taru」、モーガンには珍しい、3拍子ジャズの「Haeschen」、ポップで鯔背なモーガンが格好良い。しかしながら、この「ポップな」モーガンは、どうにもらしくない。面白いのは、サイドマンの中では、ギターのベンソンだけが、この「ポップな」音作りにマッチした弾きっぷりなのだ。

他の「新主流派」の猛者たちはちょっと不完全燃焼の面持ちである。この盤、このパーソネルからすると、ちょっと「ポップに過ぎる」感じがする。聴き流すには良いが、スピーカーと対峙して聴き込むにはちょっと「お尻がこそばゆい」。異色のモーガンを聴くには面白い内容だが、硬派で鯔背なハードバッパー、モーガンとしてはちょっと異質。その辺が、録音当時、お蔵入りになった理由かなあ。でも客観的に聴くと内容は良い。モーガンの本質に合わないと感じるだけ。
 
 
 
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2020年2月15日 (土曜日)

聴き易いアンドリュー・ヒル

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズで、1950年代後半から1960年代のお蔵入り音源なのだが、基本的に内容は折り紙付き。この不思議な音源をカタログ番号順に聴き直している。

このシリーズ、何故かお蔵入りになった音源ばかりなのだが、時々、聴いていて「ああ、これは恐らく、この辺が問題になったんだろうなあ」とふと感じる盤が幾枚かある。演奏自体には全く問題無い。どころか熱演、好演ばかり。つまりはプロデュース側の立場から見た時に「何か気になる点」があったんでしょうね。ブルーノート・レーベルの凄いところは、このお蔵入りセッションについても、しっかりギャラを払っているところ。

Andrew Hill『Dance With Death』(写真)。LT-1030番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。1968年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Charles Tolliver (tp), Joe Farrell (ss, ts), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。パーソネルを見ても、録音時期を見ても、これはバリバリ硬派なモード・ジャズだろうな、と当たりをつける。
 
 
Dance-with-death  
 
 
さて、聴いてみると「あれっ」と思う。聴き易いアンドリュー・ヒル。結構、良いメロディーの曲が並ぶ。良いメロディーが印象的なので、スタンダード曲なんだろうな、と思って資料を見ると、これがまあ、全曲、アンドリュー・ヒルのオリジナル曲なのだ。へ〜、あのアンドリュー・ヒルがこんなに良いメロディー満載のオリジナル曲を作るのか。意外と言えば意外である。

アンドリュー・ヒルのピアノは、一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じ。加えて、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が個性なのだが、この盤ではその個性が、良いメロディー満載のオリジナル曲によって、中和されているのが気になると言えば、気になる。

この盤のタイトル、日本のキング盤での黒が基調の怪しげなジャケット(写真右)、ヒルのピアノの個性、を頭の中に入れながらこの盤の音を聴くと、基本的に「戸惑う」。やはり、ヒルには「尖った限りなく自由度の高いモード・ジャズ」が良く似合う。ヒルという名を聴いて頭の中に浮かぶイメージとこの盤に詰まっている「良いメロディーの曲」とのギャップが、確かに引っ掛かる。そういう意味では敢えてリリースする必要が無い盤(お蔵入り盤)なのかなあ、と思うのだ。
 
 
 
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月11日 (火曜日)

摩訶不思議な響きのハードバップ

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズ、と評価されてはいるが、中には「まあ、これはお蔵入りの理由が何となく判るなあ」という音源もある。といっても、演奏レベルに問題がある訳では無い。プロデューサーの視点での「お蔵入り」の判断である。

Lou Donaldson『Midnight Sun』(写真)。LT-1028番。1960年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds), Ray Barretto (congas, tracks 1 & 3-7)。1980年の発掘リリース。〈発掘男〉マイケル・カスクーナの監修&解説。録音した時期は、ハードバップが枝分かれして、それぞれの進化を始めた時期。

ハードバップは、大衆化志向では「ファンキー・ジャズ〜ソウル・ジャズ」、アート志向では「モード・ジャズ」そして「フリー・ジャズ」と、多様化というキーワードの基で、それぞれに進化していった訳だが、この盤では「モード・ジャズ」である。パーソネルを見渡せば、パーラン=タッカー=ヘアウッドのリズム・セクションは、明らかに「新進気鋭のモード・ジャズの担い手」である。
 
 
Midnight-sun  
 
 
さて、これだけバックに「モード・ジャズ」を配して、古参のバップなアルト・サックス奏者、ルー・ドナルドソン、愛称ルーさんはどんなパフォーマンスを聴かせてくれるのか。ちょっとドキドキするのだ。で、聴いてみると。一言で演奏の印象は「モーダルな演奏が得意な若手ピアノ・トリオをバックに、ルーさんが我が道を行く」。バックがモード・ジャズ志向であっても、ルーさんのアルト・サックスは変わらない。

ルーさんのアルト・サックスは、相変わらずご機嫌でポジティヴな、バップなフレーズを吹き上げている。モードなど何処吹く風。あろうことか、バレットのコンガが入ってファンキーな雰囲気が漂ったりする。モードにコンガ、モードにバップなアルト・サックス。異種格闘技的な独特な雰囲気が漂う。ハードバップ、ファンキー・ジャズ、モード・ジャズのチャンポン。但し、融合までは至っておらず、特別な化学反応は起こっていないようだ。

モードはモードで優れた演奏を繰り広げ、ルーさんはルーさんでバップな優れたブロウを披露、バレットのコンガは殊の外ファンキー。それぞれの個性がしっかり主張していて、摩訶不思議な雰囲気が漂う「異種格闘技ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスをメインとして考えた時、バックは敢えて「モード・ジャズ」である必要は無い。そういう観点で「お蔵入り」になったのではないか。しかし、演奏内容は充実している。不思議な響きを宿したハードバップである。
 
 
 
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