2022年1月15日 (土曜日)

ブルーノートの懐の深さを感じる

ブルーノート・レーベル4000番台は、純粋にジャズ出身のミュージシャンばかりで無く、R&B畑出身のミュージシャンにもリーダー作のチャンスを与えている。こういうところは、本当にブルーノートって懐が深い。他のレーベルとは異なり、レーベルとして、商業主義とはかけ離れた、確固たるアルバム制作の方針があるからだろう。

Fred Jackson『Hootin' 'n Tootin'』(写真左)。1962年2月5日の録音。ブルーノートの4094番。ちなみにパーソネルは、Fred Jackson (ts), Earl Van Dyke (org), Willie Jones (g), Wilbert Hogan (ds)。フレッド・ジャクソンは、R&B出身のテナー・サックス奏者。ジャクソンのテナーがフロント1管、ギター、オルガン、ドラムがリズム隊の変則カルテット編成。

リトル・リチャーズのバンド出身という変わった経歴を持つテナー奏者のリーダー作である。確かに、どっぷりジャズなテナー・サックスでは無い。どこかポップ、ブルージーでソウルフルなテナー・サックスで、後の「ソウル・ジャズ」の先駆け的な、ファンキーでR&B志向のジャズを聴くことが出来る。決して、メインストリームなジャズでは無い。
 

Hootin-n-tootin

 
全曲オリジナルというところも、メインストリームなジャズっぽく無い。どの曲もファンキーでソウルフルな演奏で、1950年代にジャズ界を席巻した「ハードバップ」や、マイルスが先鞭をつけた「モード・ジャズ」などとは、音の雰囲気が全く異なる。ジャクソンのテナーもR&B志向のファンクネス漂う、ブルージーで、どこか親しみ易いキャッチャーな音が特徴的。聴いていて「楽しい」テナー・サックスである。

後のモータウンの人気オルガン奏者、アール・ヴァン・ダイクのプレイも聴きどころ。これまた、ジミー・スミスなどの、いかにもストイックでジャジーなオルガンとは全く異なる、親しみ易くソウルフルな、そして、どこかポップなオルガンは、純ジャズの世界には無い響き。そして、素姓は良く判らないが、ウィリー・ジョーンズのこってこてソウルフルなギターも良い味を出している。

このジャクソン盤はどう聴いても、ハードバップでも無ければ、ファンキー・ジャズでも無い。明らかに後のソウル・ジャズの先駆的な音と言える。収録された曲は全てジャクソンのオリジナルで固められ、ジャズ・スタンダード曲は皆無。そういう面でも、この盤は、ブルーノートにおける「異色作」であり、逆にジャクソンの意欲作であり、ソウル・ジャズの先駆け的な好盤と言える。
 
 
 
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2022年1月14日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・227

ブルーノート・レーベル4000番台の凄いところは、当時のハードバップの最先端や流行をしっかり押さえ、かたや、有望な新人のリーダー作をもしっかり押さているところ。しかも、そんな中、モダン・ジャズ以前のジャズ、例えば、スイング・ジャズや中間派ジャズもしっかり押さえているところが凄い。

当時のジャズの上質な「ショーケース」であり、ブルーノートを聴けば「その時代のジャズの全貌が判る」というのも頷ける。当然、一般ウケしないアルバムもあるし、どう考えても売れないアルバムもある。しかし、そんな「商業主義」からはみ出たアルバムも含めて、当時のジャズの上質な「ショーケース」を形成しているブルーノートは、やはり尊敬に値する存在。

Ike Quebec『Heavy Soul』(写真左)。1961年11月26日の録音。ブルーノートの4093番。ちなみにパーソネルは、Ike Quebec (ts), Freddie Roach (org), Milt Hinton (b), Al Harewood (ds)。リーダーのアイク・ケベックのテナーがフロント1管のカルテット編成。ピアノの代わりにオルガンが入っているところが「ミソ」。
 

Heavy-soul

 
オルガンが入っているので、ファンキー・ジャズな内容かと思うが、リーダーのケベックのテナーは絶対に「ファンキー・ジャズ」では無い。ケベックは当時のジャズのトレンドからは「超越している」存在。ケベックのテナー・サックスはどう聴いても「スイング」若しくは「中間派」。ファンキー・ジャズでは無いが、ケベックのテナーはファンクネス濃厚。

どっぷりジャジーでブルージーな普遍的なジャズがここにある。オルガンが入ることによって、どこかゴスペルっぽくもあり、厳かな教会音楽風でもあり。しみじみとマイナー調のテナーを引き立てるローチのオルガンの存在は大きい。そして、ケベックのテナー・サックスの魅力が最大限に愛でることが出来る。オルガンのファンクネスが、ケベックのテナーのファンクネスを増幅させている。

当時、最先端のハードバップの様に垢抜けてないし、ポップでもないし、キャッチャーでもない。でも、しみじみと、切々とジャズを感じさせてくれるテナーなんですよね。「Just One More Chance」や「The Man I Love」などのスタンダード曲での太い音だが繊細で豊かなニュアンスの「スイング」若しくは「中間派」のテナーが秀逸。いつ聴いても惚れ惚れする内容です。
 
 
 
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2022年1月13日 (木曜日)

BN4000番台の「異質」な存在

ブルーノート・レーベルは、ニューヨークに拠点を置く老舗ジャズ・レーベル。当然、東海岸の「モダン・ジャズ」がメイン。しかし、1500番台にも、4000番台にも、ブルーノートのカタログの中で、明らかに異質なアルバムが「1枚だけ」存在する。これが実に不思議な存在で、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの、カタログに入れた「真実」を訊きたい気持ちで一杯である。

1500番台では、Gil Melle『Patterns In Jazz』、ブルーノートの1517番が有名な「異質なアルバム」だろう。東海岸のハードバップの最先端のアルバムがひしめく中で、爽やかでお洒落なウエストコースト・ジャズ。西海岸で録られた音源を持って来たのかと思いきや、1956年4月の録音だが、しっかりと、Hackensackの「Van Gelder Studio」で録音されている。ブルーノートの確固たる意志で録音されたものだが、1500番台のアルバムの中で明らかに違和感がある。

Kenny Clarke, Francy Boland & Co. 『The Golden 8』(写真左)。1961年5月、西ドイツ(当時)のケルンでの録音。ルディ・ヴァン・ゲルダーはマスタリング担当。ブルーノートの4092番。ちなみにパーソナルは、Kenny Clarke (ds), Francy Boland (p), Dusko Gojkovic (tp), Raymond Droz (alto horn), Derek Humble (as), Karl Drevo (ts), Chris Kellens (euphonium), Jimmy Woode (b)。
 

The-golden-8  

 
ケニー・クラークをリーダーとしたオクテット編成。音の雰囲気はもはや「ビッグバンド」。ブルーノートの4000番台は、ハードバップの多様化をタイムリーに捉えたアルバムがてんこ盛りなのだが、そんな中に、やや古風な「ビッグバンド」志向なオクテット編成の演奏がいかにも「異質な存在」である。しかもバリバリ正統派なビッグバンド志向の音に、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

リーダーでドラムのクラークとベースのウッドは米国出身だが、ピアノのボランはベルギー、トランペットのゴイコヴィッチはボスニア、アルト・ホルンのドローはスイス、アルト・サックスのハンブルは英国、テナー・サックスのドレヴォはオーストリア、ユーフォニウムのケレンスはベルギー。米国2人、欧州6人の欧州ジャズのオクテットなので、出てくる音にファンクネスは殆ど感じられない。端正で統制の取れた、如何にも欧州らしい「ビッグバンド」志向な音が、これまた、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

メンバーの中に、若き日のバルカンの至宝トランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチが参加していたり、オクテットの演奏レベルは高い。アフロキューバンなリズムとモードを採用しているところが、欧州ジャズの中ではユニークで、ここから、クラーク=ボラン・ビッグバンドに発展していく、記念すべき盤でもある。しかし、欧州ジャズな「ビッグバンド」志向なオクテットは、ブルーノート4000番台の中では「異質」ではある(笑)。
 
 
 
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2022年1月10日 (月曜日)

ソニー・クラークの遺作盤です

ブルーノート・レーベルには「お抱えのジャズマン」が何人かいる。ほとんどブルーノート・レーベル専属に近い状態で、ブルーノートのカタログにその名前が、リーダーにサイドマンに結構な数が上がるジャズマンである。基本的に、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」である。

Sonny Clark『Leapin' and Lopin'』(写真左)。1961年11月13日の録音。ブルーノートの4091番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Tommy Turrentine (tp, except track 2), Charlie Rouse (ts, except track 2), Ike Quebec (ts, track 2 only), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。基本は、トミタレのトランペット、ラウズのテナーのフロント2管のクインテット編成。

ソニー・クラーク(以降「ソニクラ」と略)は、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」の1人。本職のピアノもさることながら、どうも、ソニクラの書く曲が大好きだった節がある。それでも、31年の短い生涯の間のリーダー作11作のうち、9作がブルーノートからのリリースである。
 

Leapin-and-lopin

 
確かに、収録された全6曲中、3曲を占めるソニクラの曲は、突出してアーバンでブルージーで魅力的な曲ばかり。そんな「ジャジーでブルージー」な曲を、ソニクラの「流麗ではあるがファンクネス漂い、マイナーで哀愁感溢れる」黒いバップなピアノが奏でるのだ。むっちゃジャジーな雰囲気が堪らない。

この盤は、実はソニクラの遺作になる。この盤の録音の1年2ヶ月後、ソニクラは、ヘロインの過剰摂取により、帰らぬ人となる。恐らく、そんな事、当の本人は思ってもいなかったと思われる。なぜなら、この盤のソニクラのピアノは、モーダルで新しい響きを宿した、ハードバップなフレーズを連発していて、次のステップへ進化しようとする「意欲」が聴いてとれるのだ。

初リーダー作『Oakland, 1955』(Uptown)以外、今、聴くことの出来るソニクラのリーダー作は10枚。どれもが、ソニクラらしい、ブルーノートらしい音が詰まった秀作揃い。特に、この遺作の『Leapin' and Lopin'』については、ソニクラのジャズマンとしての「前進する姿」を捉えた好盤だと言える。それにしても享年31歳、実に惜しい早逝であった。
 
 
 
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2022年1月 6日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・12

ジャケットを見るだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。アルバムの1曲目を聴くだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。パーソネルを確認するだけで、これはきっと名演だろうな、と想像出来るアルバムがある。そんなアルバムは「ブルーノート・レーベル」に沢山ある。

Sonny Clark『Cool Struttin'』(写真左)。1958年1月5日の録音。ブルーノートの1588番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Jackie McLean (as), Art Farmer (tp), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーは、早逝の哀愁ファンキー・ピアノ、ソニー・クラークがリーダー。マクリーンのアルト・サックス、アート・ファーマーのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

最初に、この盤は「モダン・ジャズ」を強烈に感じることの出来る名盤である。特にハードバップの良いところが「てんこ盛り」。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの重ね方&響き、ソニクラのピアノに、ポルチェンのベース、フィリージョーのドラムが叩き出す、切れ味良い、躍動感溢れる、クールなファンキー・ビート。ソニクラの書く名曲のキャッチャーなマイナー調のメロディー。
 

Cool-sreuttin_1

 
このアルバムに収録されている全ての演奏が「モダン・ジャズ」と言い切って良いかと思う。とにかく、リーダーのソニクラの書く曲が絶品。マイナー基調でファンキーで流麗。印象的なメロディーとキャッチャーなフレーズ。そのソニクラの書く秀曲の間で演奏されるスタンダード曲の選曲も実に良い。アルバム全体を包む「マイナーでファンキーで小粋なハードバップ」な雰囲気が実に芳しい。

演奏上の工夫も、どれもが「モダン・ジャズ」らしい。ユニゾン&ハーモニーとチェイスの合わせ技、切れ味の良いベースとドラムの効果的ソロ、ピアノ伴奏の印象的なコンピング、どれもがハードバップで培われた演奏上のテクニックなんだが、これらが実に良いタイミングで、要所要所に散りばめられていて、聴いていてとても楽しい。聴いていて「ジャズってええなあ」って思う。

最後にジャケットも本当に「秀逸」。この『Cool Struttin'』のジャケについては、語り尽くされた感があるが、とにかく「ジャズ」している。白黒基調の。妙齢の女性のスラッとした足だけのジャケ写、そして、絶妙なバランスで配置されるタイポグラフィー。この盤に詰まっている音が、このジャケットを通して聴こえてくる様だ。大名盤である。
 
 
 
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2022年1月 5日 (水曜日)

「モード・ジャズ」の名盤の1枚

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1954年から1990年の36年間、活動し続けた伝説のジャズ・バンド。リーダーはアート・ブレイキー。しかし、リーダー以外の他のメンバーはそれぞれの時代で、総替えイメージで入れ替わる。そして、このジャズ・メッセンジャーズに所属して活躍したジャズマンは、皆、一流のジャズマンとして独り立ちしている。

このジャズ・メッセンジャーズの、それぞれの時代毎の演奏のスタイル、トレンドを聴けば、ハードバップ系のジャズの演奏スタイルの変遷、1950年代前半のハードバップ誕生〜ファンキー・ジャズ〜モード・ジャズ〜1970年代のハードバップ〜新伝承派ジャズ〜ネオ・ハードバップまで、それぞれの時代の「音楽監督」の存在と共に、ジャズ演奏のスタイル、トレンドを押さえることが出来る。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Mosaic』(写真)。1961年10月2日の録音。ブルーノートの4090番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Jymie Merritt (b)。ハバード〜フラー〜ショーターの「伝説のフロント3管」のセクステット編成。この時点でのメッセンジャーズの音楽監督は、テナーのウェイン・ショーター。
 

Mosaic

 
僕はこの時代のメッセンジャーズの音が大好きだ。テクニック優秀、歌心もあり、出て来る音も迫力満点の「伝説のフロント3管」のユニゾン&ハーモニーは官能的でファンキー。ソロ・パフォーマンスに入れば、バリバリ「モーダルな」インプロビゼーション。メンバーそれぞれが自作曲を持ち寄り、モーダルなアレンジを施して演奏される「モーダルなハードバップ」演奏の数々。

モード・ジャズは、即興演奏の幅を拡げ、アドリブ・フレーズの類似化を避け、高度な演奏テクニックを要求する、とっても「ジャズ」らしい演奏スタイル。この難度の高いモード・ジャズを、物の見事に、何事も無いかの様にやってのける。バックのブレイキー〜ウォルトン〜メリットのリズム隊も、フロント3管のモーダルな演奏をガッチリとサポートしていて見事。

この盤については、モード・ジャズの名演を収めた、モード・ジャズの代表的名盤の1枚と言って良いだろう。音楽監督のショーターの手腕と、それを実現するブレイキーのリーダーシップの成せる技。ジャケットもブルーノートらしくて、良き時代のジャズをビンビンに感じさせてくれる。
 
 
 
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2021年12月28日 (火曜日)

「進化のジャズマン」を体感する

ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)は「進化のジャズマン」。1931年に生まれ、2006年に74歳で鬼籍に入っている。ちょうど、1955年のハードバップ初期から、1999年のネオ・ハードバップの初期の時代まで、約50年もの間、ジャズの第一線で活躍。しかも、その50年の間に、ジャズは様々な演奏トレンドや奏法を生み出し変化していった訳だが、マクリーンはその「変化」に積極的に追従していった。

Jackie McLean『Fickle Sonance』(写真左)。1961年10月26日の録音。ブルーノートの4089番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Tommy Turrentine (tp). Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのマクリーンのアルト・サックスと、トミー・タレンタインのトランペットが2管フロントのオーソドックスなクインテット編成。ベースとドラムは新進気鋭、残り3人はハードバップ期の人気ジャズマン。

前リーダー作『Bluesnik』で、ハードバップの成熟した高度な演奏を披露したマクリーン。この次のリーダー作では、はやくも新しい演奏トレンドに触手を伸ばしている。冒頭の「Five Will Get You Ten」を聴けばそれが良く判る。前奏のユニゾン&ハーモニーも不協和音を織り交ぜていて不穏な響き。アドリブに入れば、コルトレーンの様な、少しフリーキーで自由度の高いモーダルな吹きっぷり。
 

Fickle-sonance_1

 
マクリーンのチャレンジ精神が横溢している。フロント2管の相棒、トミー・タレンタインのトランペットは、どちらかというと、ハードバップなスタイルに留まっているのだが、マクリーンは1人でチャレンジしている。新進気鋭の若手のリズム隊、ウォーレンのベース、ヒギンスのドラムについては、マクリーンの進歩的なフレーズに難なく反応。マクリーンのチャレンジをしっかりサポートし、成立させている。

興味深いのは、ピアノのソニー・クラーク。バリバリ、ハードバップなピアニストかと思いきや、マクリーンのプログレッシヴなフレーズにしっかりと反応し、新しい表現の中での個性の表出にチャレンジしている様子。しかし、そんなソニー・クラーク、この盤の録音の約1年2ヶ月後に帰らぬ人になっている。作曲の才にも長けたソニー・クラーク。モーダルな名曲を生み出す可能性もあっただけに、残念なことである。

マクリーンは進化のジャズマンだ、ということがとても良く判る好盤です。マクリーンの代表盤では無いし、ハードバップの名盤でも無い佳作ですが、この盤の底に流れる「溌剌としたチャレンジ精神」は清々しくもあり、積極的にチャレンジしているのが良く判る「溌剌としたアドリブ・パフォーマンス」が見事で、聴いていて爽快です。僕はこの盤の「爽快感」が好きで、この盤、今でもリピートしてます。
 
 
 
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2021年12月27日 (月曜日)

どスタンダード曲の 3 Sounds

どスタンダード曲の3 Sounds

ブルーノート・レーベルには、意外とピアノ・トリオ盤が少ない。もともと、米国人はフロント管が入ったジャズ盤を好む傾向があったらしく、ピアノ・トリオが地味という理由で、あまりウケが良く無かったそうだ。逆に我が国では、結構、ピアノ・トリオは好まれる。ブルーノート・レーベルはイマイチだ、と評するジャズ者の方々は、意外とこの「ピアノ・トリオの少なさ」を指摘する。

が、そこはさすがに、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオン。これはというピアニストには、ピアニストの個性が良く判る、優れた内容の「トリオ盤」を制作している。そして、レーベルとしての企画型のピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」をプロデュースしている。

The 3 Sounds『Here We Come』(写真左)。1960年12月13–14日の録音。ブルーノートの4088番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノート・レーベルのプロデュース、唯一のお抱えピアノ・トリオ「The 3 Sounds(スリー・サウンズ)」である。
 

Here-we-come

 
収録曲を見ると「どスタンダード曲」のオンパレードなので、ちょっと引く。この盤こそ、売らんが為のポップなイージーリスニング風のトリオ盤なのでは、と危惧する。が、そこはレーベルとしての企画型のピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」。決して、イージーリスニング風のトリオ演奏には陥らない。

まず、それぞれの「どスタンダード曲」に施されるアレンジが意外と「プログレッシヴ」。これだけ「ドスタンダード」だと、ちょっとポップで甘めの聴き易いアレンジをしがちだが、スリー・サウンズは違う。結構、新しい響きで、聴き応えのある、切れ味の良いアレンジを施している。これはいつ聴いても流石だなあ、と思う。

レーベルが企画したピアノ・トリオだからといって、売らんが為のポップなイージーリスニング風のトリオと誤解しては損をする。そこはさすがブルーノート、唯一の企画型ピアノ・トリオ、普通のアプローチで来るわけが無い。確かに、このピアノ・トリオは意外と「プログレッシヴ」。そういうところにも、ブルーノート・レーベルの矜持を感じる。
 
 
 

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2021年12月11日 (土曜日)

ジャズの音表現のポテンシャル

ジャズは「娯楽の音楽」である。が、アーティスティックな「表現の音楽」でもある。楽しく聴けるジャズも良し。アートとしてジックリと聴き込むジャズも良し。ジャズの音表現のポテンシャルは高い。演奏するスキル&テクニックが優秀である前提はあるが、ジャズの音表現のバリエーションは無限であるように感じる。

Terence Blanchard『Absence』(写真左)。2021年10月、ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Terence Blanchard (tp), Fabian Almazan (p), Charles Altura (g), David Ginyard (b), Oscar Seaton (ds), with The Turtle Island String Quartet。来年、還暦を迎える大ベテラン・トランペッター、テレンス・ブランチャード率いるバンド「E-Collective」に Turtle Island Quartetも加えた3年振りの力作。

ブランチャードが尊敬してやまない、ジャズ・レジェンド、ウェイン・ショーターへのオマージュ作品。収録曲は、ショーターが書いた作品と、ブランチャードと彼のバンドのメンバーによるオリジナルの作曲で構成されているが、楽曲の雰囲気とイメージは明らかに「ウェイン・ショーターの音世界」オンリーである。
 

Absence_1

 
ブランチャードの「E-Collective」のギター入りクインテットに、ジャズ志向の弦楽四重奏が加わった、音の厚みと表現力の幅が素晴らしい演奏ばかりで思わす圧倒される。音の迫力はジャズ・ビッグバンドを聴いているかの様な「分厚い」もの。それでいて、音の切れ味と歌心溢れるフレーズに、思わず耳が釘付けになる。ジャズって、ここまで音による表現の可能性があるんだなあ、と再認識する。

ウェイン・ショーターの楽曲は、コズミック、ネィチャー、そして、呪術的。楽曲の持つフレーズは、一捻りも二捻りもしていて、必要となる演奏力は格段に高い。しかし、ショーターの楽曲の持つ音の「拡がり、深み、自由度、表現力」は圧倒的。そんな難曲をガンガンに、アーティステックに演奏していく。この「E-Collective」+「The Turtle Island String Quartet」の演奏力と表現力は凄まじいものがある。

コマーシャルな要素、ポップな要素とは全く無縁。全編に渡って、硬派でアーティステック、モーダルで、しっかりと統制の取れた厚みのある音が満載。現代ジャズを構成する奏法、演奏トレンドが総動員、現時点での「ジャズの音表現」の全てが詰まっている。ネット上ではあまり話題になっていない盤ではあるが、ジャズ者ベテランであれば一聴の価値あり、と思う。
 
 
 
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2021年12月 7日 (火曜日)

ノラ・ジョーンズ、初のライブ盤

以前より、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)のボーカルが気に入っている。デビュー当時からずっとアルバムを追いかけているが、声そのものも良いが、ノラの唄う音世界が良い。

最初はコンテンポラリー・ジャズっぽい音世界だったが、少しずつ幅を拡げて、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたものになり、加えて、米国ルーツ・ロックの要素も交えて、現代のフュージョン・ジャズっぽい、1970年代であれば、アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)ぽい音世界にもなっていて、これはこれで「クールじゃないか」という感じで、愛でている。

Norah Jones『'Til We Meet Again』(写真左)。今年4月、ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、
基本セットとして、Norah Jones (vo, key, g), Pete Remm (org), Christopher Thomas, Jesse Murphy (b), Brian Blade (ds), Jesse Harris (g),Jorge Continentino (fl), Marcelo Costa (perc) という感じ 。

このライヴ盤の選曲については、ノラ・ジョーンズのキャリア初となるライヴ・アルバムである。2017~19年に行ったライヴから、ノラ自身の手で「お気に入りのテイク」が選ばれている。選曲を見れば、オールタイム・ベスト的なラインナップになっている。これが実に良い。ベスト・アルバムというよりは、充実のライブ盤という趣。
 

Til-we-meet-again

 
2002年のデビュー作『Come Away With Me』以来、ライヴ盤が無かったというのは意外だったが、素晴らしい内容のライヴ盤に気分は「ウハウハ」である(笑)。冒頭、ハンク・ウィリアムス作の名曲「Cold, Cold, Heart」のカヴァーから始まり、基本的に音楽仲間との共作も含むノラ自身のオリジナル曲で占められている。

ラストに(日本盤には、大阪城ホールで録音された「サンライズ」が追加されているが)、もう一曲カヴァー曲「Black Hole Sun」が入っている。2017年に亡くなったクリス・コーネルへの追悼として、コーネルがサウンドガーデンとして最後にライヴを行なった会場、米ミシガン州デトロイトのフォックス・シアターで録音された音源。これが実に良い。いやいや、ノラってカヴァーが上手い。原曲の良さを更に引き出して、しみじみと聴かせてくれる。

バンド・サウンドとしては、まず、ノラのキーボードが上手い。改めて「こんなに上手かったんだ」と感心した。そして、リズム&ビートをグッと占めているのが、僕の最近のお気に入りのドラマー、ブライアン・ブレイド。曲によって、ジャジーに、ブルージーに、そして、ファンキーに、変幻自在のリズム&ビートを供給して、ノラのボーカルを引き立てている。

このライヴ盤のタイトルが『'Til We Meet Again』。訳せば「また会える日まで」。コロナ禍の現在において、実に心に響くタイトルだ。ライヴを容易に開催することができない時代に、ノラからの臨場感溢れる、優れた内容のライヴ盤である。
 
 
 
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