2023年9月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・265

この盤はジャズ者初心者の頃、バイト代を叩いて買った思い出の「名盤」。

当時、ブルーノートのLPは値が張った。他のレーベルでは「廉価盤」と銘打って、LPの通常の値段の千円ほど安い、手に入れやすい価格の盤があったのだが、ブルーノートにはそれが無い。

学生時代のバイト代では、ブルーノートのLPは1ヶ月に1枚がせいぜい。他のLPも買いたいので、これは「廉価盤」で数枚買う、という感じで、ブルーノートのLPは、ジャズ者初心者の僕にとっては、特別な存在だった。

Kenny Burrell『Midnight Blue』(写真左)。1963年1月8日の録音。ブルーノートの4123番。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Stanley Turrentine (ts), Major Holley (b), Bill English (ds), Ray Barretto (conga)。

リーダーのバレルのギターとタレンタインのテナーがフロント2管の、コンガ入り、キーボードレスのクインテット編成。バレルのギターとタレンタインのテナーの相性が抜群で、2つの楽器の相乗効果で、漆黒ファンクネスがだだ漏れ。
 

Kenny-burrellmidnight-blue

 
ブルージーでアダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズ。バレルの漆黒ギターとタレンタインの漆黒テナーが、アーバンな夜の雰囲気を醸し出す。コンガが良いアクセントとなった小粋な曲もあって、アルバム全体を通して、大人のファンキー・ジャズをとことん楽しむ事が出来る名盤。

とにかく、バレルのギターが良い。ブルージーでファンクネス濃厚。そして、どこか洗練された都会的な雰囲気が底に流れている。タイトルの「Midnight」が言い得て妙。都会の深夜のブルージーで漆黒な雰囲気がアルバム全体を覆っているのだ。

この盤は理屈で、蘊蓄で聴く名盤では無い。この盤は雰囲気で、直感で聴くべき名盤である。

特に、CDリイシュー時のボートラ含め、1963年1月8日のセッションの全てを欲しい。セッション全曲、捨て曲無し。充実仕切ったバレル・クインテットのセッションの全てを味わい尽くして欲しい。

この盤は、ジャズ者初心者、ジャズを聴き始めて2年位で手に入れた盤だが、まず、このジャケットに惚れた。そして、LPに針を落として、冒頭の名演「Chitlins con Carne」でドップリ感じ入り、そのまま、一気に聴き切った後、直ぐにA面の戻して、繰り返し聴き直した思い出のある名盤。

ジャズ者初心者でもこの盤の良さが直ぐに判る、ジャズ者初心者にとても優しいジャズ名盤である。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年9月13日 (水曜日)

機を見るに敏なバードの器用さ

ドナルド・バードというトランペッターは「機を見るに敏」なトランペッターだった。ジャズのその時代毎の流行、トレンド、志向を機敏に読み取り、リーダー作に反映した。もともと器用なトランペッターが故、採用した流行、トレンド、志向を深く掘り下げて極めるほど、深く追求せず、次から次へ、流行、トレンド、志向を乗り換えていったので、意外と決定打にかけるところが玉に瑕である。

ドナルド・バードのトランペットは素姓が非常に良い。テクニックも上々、拠れたり外したりすることが全く無い。音も大きく伸びが良く、ブリリアントに響く音色は、とにかくとても素姓が良い。どの流行、トレンド、志向の下でも、ドナルド・バードのトランペットは映える。とても、モダン・ジャズらしいトランペットである。

Donald Byrd『Free Form』(写真左)。1961年12月11日の録音。ブルーノートの4118番ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのドナルド・バードのトランペットとショーターのテナーの2管フロント。バックのリズム隊は、ハンコック率いる新主流派志向のリズム隊。

前リーダー作『Royal Flush』で、それまで進めていた理知的なファンキー・ジャズのファンキー度を更に上げ、「ファンク度が増した理知的なモード・ジャズ」な演奏志向にチャレンジした。そして、当盤である。
 

Donald-byrdfree-form

 
パーソネルを見渡して、「これは本格的な、新主流派のモード・ジャズを本格追求やな」と思って聴き始めると、冒頭の「Pentecostal Feelin」のジャズロックに思わず仰け反る。しかも、こってこてのジャズロックをショーターが吹いている。あらら、と思う(笑)。

しかし、2曲目のハンコックが書いたバラード「Night Flower」では、ハードバップ時代に戻った様な、リリシズム溢れるブリリアントなバードのトランペットが鳴り響く。あれれ、モードは何処へ行ったと思ったら、3曲目からこってこての「新主流派志向のモード・ジャズ」が展開される。

しかし、バードのモード・ジャズって、ショーターとハンコックに任せっぱなし、な印象。ハンコックとショーターが喜々としてモダールなフレーズを連発する中、バードが器用さにまかせて、癖の無い平易なモーダル・フレーズで、ショーターやハンコックに追従する、って感じの展開で終始している。

内容的には「機を見るに敏」なトランペッターの面目躍如的内容だが、ドナルド・バード流のモード・ジャズ、という切り口が希薄なのが残念。器用に新主流派なモード・ジャズを展開するのは「機敏」だが、借りてきた様な内容に終始するのはどうだろう。

モード・ジャズの好例として、この『Free Form』が話題に上ったことが無いのは、そういうことなんだろう。演奏内容は結構良いのに、「機を見るに敏」なバードの器用さだけが印象に残る残念な盤である。
 
 

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2023年9月11日 (月曜日)

ジャズロック志向にロックオン

ハードバップ時代に、彗星の如く現れたトランペットの若き天才、リー・モーガン。1956年、初リーダー作『Indeed!』でデビューしたのが、なんと弱冠18歳。そしてこの初リーダー作が素晴らしい出来。以来、人気トランペッターとして第一線を走ってきたモーガン。1960年代の「ジャズの多様化」の時代は、22歳〜31歳の若手だが、彼のプレイは既に成熟し完成されていた。

Lee Morgan『The Rumproller』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4199番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Ronnie Mathews (p), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモーガンのトランペットとジョーヘンのウネウネ捻れモードのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

編成はオーソドックス。奇をてらったところが無いのはモーガンのリーダー作の良いところ。録音年は1965年。ジャズは多様化の時代のピーク。前作『Search for the New Land』で、モーガン流のモード・ジャズを確立した訳だが、今回の『The Rumproller』は、前々作『The Sidewinder』の内容に戻している。
 

Lee-morganthe-rumproller

 
冒頭のタイトル曲「The Rumproller」は、怒濤のジャズ・ロック。大ヒット曲「The Sidewinder」に比肩するファンキーでロックな出来。以降、モード有り、ラテン〜ボッサ有り、リリカルなミュートによるバラード有り、とバラエティーに富んだ内容に仕上がっている。この辺も大ヒット盤『The Sidewinder』を踏襲している。

この頃のモーガンは「ジャズ多様化の時代」の中で、どの方向に自らの音志向を持っていこうと、いろいろ迷っていた時代だったのではなかろうか。そして、この『The Rumproller』で、ジャズ・ロックをベースに定め、ジャズ・ロック志向の演奏の中で、モーダルなアドリブや、こってこてハードバップなフレーズなど、ジャズ・トランペットの演奏トレンドや演奏志向を展開する、そういう方向に舵を定めたのでは、と感じている。

話題としては「Desert Moonlight」、我々日本人にとってはお馴染みの童謡「月の沙漠」のジャズ化が2曲目にある。なかなかのアレンジで、日本の童謡を上手くジャズ化している。こういう器用さもモーガンの良き個性。次作『The Gigolo』以降、ジャズロックをベースとした演奏志向を追求〜深化していく。モーガンの鯔背なトランペットが映えに映える。
 
 

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2023年8月28日 (月曜日)

The 3 Soundsのお蔵入り優秀盤

スリー・サウンズ(The 3 Sounds)は、ブルーノート・レーベル唯一のお抱えピアノ・トリオ。メンバーもブルーノートが選んで、ブルーノートがデビューさせている。スリー・サウンズのアルバムはその活動期間中のリリースとして30枚を超えるが、途中、ヴァーヴやマーキュリー・レコードやその傍系のライムライトからもアルバムを7〜8枚ほどリリースしたが、ブルーノートからのリリースが主。

ただし、スリー・サウンズの音作りは、リーダーのピアノのジーン・ハリスに委ねられていて、軽妙でハイ・テックニックなトリオ演奏をベースに、聴いて楽しいシンプルで判り易い音作り、ドライブ感溢れる、硬派で端正でファンキーなサウンドは、このジーン・ハリスによって育まれたもの。

The 3 Sounds『Out Of This World』(写真左)。1962年2月4日、3月7ー8日の録音。ブルーノートの4197番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ちなみにこの盤はブルーノートお得意の「何故かお蔵入り」盤。録音当時はリリース見送り、4年後の1966年になってようやく陽の目を見ている。
 

The-3-soundsout-of-this-world  

 
1962年の『Hey There』の後、何故かお蔵入りが続いた音源の中のひとつで、契約上の何かがあったかで、4年間、倉庫に眠っていた音源。聴けば判るが、聴いて楽しい、シンプルで判り易い、ドライブ感溢れ、硬派で端正でファンキーなスリー・サウンドの個性がこの盤に充満している。この音源の前後のセッションの演奏内容と比べて遜色が無いどころか、切れ味とアーティステックな雰囲気という点では、この周りのスリー・サウンドの中で、一二を争うほどの優れた内容である。

カクテル・ピアノ、ラウンジ・ピアノの類の演奏だが、決して、イージーリスニング志向では無い。かなり硬派でダイナミズム溢れるアーバンなアレンジが施されていて、決して「ながら聴き」に向いたトリオ演奏ではない。基本はファンキー・ジャズだが、アレンジがストイックでハイテクニック前提でアーティステック。意外と尖った内容に思わず耳を奪われる。

何があったか知らぬが、この盤の音源は「何故かお蔵入り」盤として扱われる様な無い様ではない。スリー・サウンズの成熟した完成形の様な音作りと展開が素晴らしい。アレンジが優秀で、ジャズ・スタンダード曲も新しい響きを宿していて新鮮に感じる。シンプキンスとダウディのリズム隊も堅実な素晴らしいリズム&ビートを供給していて立派。スリー・サウンズの優秀盤として、もう少し再評価されても良い盤かと思う。
 
 

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2023年8月27日 (日曜日)

ハバードのブルーノート最終作

ハイテクニックな伝説のトランペッターのフレディ・ハバード。22歳の若さで初リーダー作『Open Sesame』をリリースして以来、ブルーノート・レーベルには、鍛えられ、教えられ、一流のトランペッターに成長させてもらったのでは、と思っている。特に、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンには本当に世話になっただろう。

ハバードはテクニックが抜群に優れているがゆえ、どんなジャズでも、どんなスタイルでも吹き切ってしまう。いわゆる「器用貧乏」なところがあって、何でも出来るよ〜、というアプローチが見え隠れするところを、ライオンがグッと手綱を引いて、時にファンキー・ジャズ、時に、モード・ジャズの名盤をハバードに残させた。

また、ハバードには「目立ちたがり屋」なところがあって、先輩ジャズマンとのセッションでは前へ前へ出て、自分の凄さをアピールしようと頑張りすぎるところがある。逆に、仲の良い同輩や後輩ジャズマンとのセッションでは、一歩引いて、同輩・後輩を前に出させて、ハイテクニックなトラペットでしっかりサポートする「男気」ある振る舞いをするところもある。

ライオンは、こういったハバードの長所・短所をしっかり把握して、時にはセッションのメンバーの人選に工夫を凝らしたり、ハバードをしっかりコントロール出来る、リーダー肌の先輩ジャズマンを充てたり、ハバードのテクニックが映える選曲をしたり、とにかく、ハバードが持っている才能を良い方向に発揮出来るよう、様々なプロデュースをしていたように思う。

Freddie Hubbard『Blue Spirits』(写真左)。ブルーノートの4196番。フレディ・ハバードのブルーノートでの最終作である。ブルーノートとしては珍しく、3つのセッションから成る。
 

Freddie-hubbardblue-spirits

 
1965年2月19日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Clifford Jarvis (ds), Big Black (congas), Kiane Zawadi (euphonium)。

1965年2月26日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), James Spaulding (as, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Pete LaRoca (ds), Kiane Zawadi (euphonium)。

1966年3月5日のセッションは、Freddie Hubbard (tp), Joe Henderson (ts), Hosea Taylor (as, bassoon), Herbie Hancock (p, harpsichord), Reggie Workman (b), Elvin Jones (ds)。

パーソネルに一貫性が無いが、やっているジャズは「ジャズ・ロック志向」。ベッタベタなウケ狙いのジャズ・ロックでは無く、そこはブルーノート、「Corny(陳腐な)」なジャズロックは回避して、ファンキー志向のジャズロック、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロックを「格調高く」やっているのはさすが。

ただ、肝腎のハバードが、どの志向の、どのテイストのジャズロックで行くか、迷っている風でもあり、メンバーを取っ替え引っ替え、演奏の志向、スタイルも取っ替え引っ替え、大凡3種類やっている。ただ、一貫しているのは「メインストリームな純ジャズ志向のジャズロック」はしっかり根っこにあるので、アルバム全体の統一感はしっかり維持されている。さすが、ブルーノートである。

内容的にもチャレンジブルで、大衆受けをする俗っぽい8ビートのジャズロックは横に置いておいて、ファンクネスは全ての演奏の統一の味付けに使いつつ、モダンで硬派な8ビートの下、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロック、ハードバップなジャズロックを志向している。

ジャズロックに手を染め始めた頃のハバードが記録されている、聴いていて意外と面白いハバード盤。ハバードはこの盤を最後にブルーノートからアトランティックに移籍する。メインストリーム志向のブルーノートのハバードは過去のものとなり、途方も無くハイテクニックな持ち主がゆえ、イケイケではっちゃけた、何でもござれのハイテクニックなトランペッターとして弾けていく。
 
 

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2023年8月24日 (木曜日)

モード充実のメッセンジャーズ

一流ジャズマンの「登竜門的ジャズ・バンド」、一流ジャズマンに向けて鍛錬する「ジャズ道場」。そんな位置付けのバンド、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。1954年に結成、ホレス・シルヴァーから名前を引き継いで、アート・ブレイキーの単独リーダーで、1990年10月にブレイキーが亡くなるまで、36年の長きに渡って、モダン・ジャズの第一線で活躍した。

リーダーのブレイキーは若手の将来有望なジャズマンのスカウトに長けていて、このジャズ・メッセンジャーズ、歴代のバンド・メンバーの中で、一流になっていったジャズマンは数知れず。ウェイン・ショーター、リー・モーガン、ウィントン・マルサリス、フレディ・ハバード、テレンス・ブランチャード、ゲイリー・バーツ、ボビー・ワトソン、ビル・ピアース、ボビー・ティモンズ、シダー・ウォルトン、異色なところで、キース・ジャレット(!)などなど....。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Indestructible』(写真左)。1964年4月24日と5月15日の録音。ブルーノートの4193番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。モーガンのトランペットとフラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersindestruct

 
ウェイン・ショーターが音楽監督の時代、この3管フロント+ウォルトンのピアノのブレイキーのリズム隊の編成が、歴代のジャズ・メッセンジャーズの中で、一番、内容充実の時代では無かったかと思う。ジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズを完全に自分達のものとし、その音志向に則った作曲もアレンジも素晴らしい。

当然、演奏もハイレベルで、特にこの3管フロントのユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブ展開、リズム隊の繰り出す変幻自在でモーダルなリズム&ビート、バンド全体で繰り広げられるテンション高いインタープレイ。とにかく緩んだところが全く無い、淀んだところが全く無い、切れ味抜群、疾走感溢れるジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズが見事。もはや、この演奏は「アート」ですらある。

こんな充実した内容の音源だが、リリースは1966年。録音から2年の「お蔵入り」。ブルーノートお得意の「理由の判らないお蔵入り」音源なのだが日の目をみて良かった。当時としては、手垢の付いたジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズで、ちょっとマンネリと捉えられたのかもしれない。しかし、今の耳で振り返ると、とても内容充実のオリジナリティー溢れるモード・ジャズで、訴求力抜群。モード・ジャズの優秀盤の1枚です。
 
 

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2023年8月17日 (木曜日)

力強くも優しいオルガン・ジャズ

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。もともと、マイルスの紹介で、オルガンの神様「ジミー・スミス」をデビューさせ、ドル箱人気オルガニストに育て上げた実績があるブルーノートである。オルガン・ジャズには他のどのレーベルよりも造詣が深い。ニッチなジャズ・オルガンではあるが、ブルーノートのカタログには、多くのオルガニストのリーダー作が散見される。

オルガンジャズの神様、ジミー・スミス。デビュー当時は「思いっきり尖ったアグレッシブな、実に攻撃的な」オルガン。半ば辺りで、圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切る。そして、1962年、大手レーベルのヴァーヴ・レコードへ移籍する。

Jimmy Smith『Softly As A Summer Breeze』(写真左)。1958年2月26日の録音。ブルーノートの4200番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g, tracks 1–4), Eddie McFadden (g, tracks 5-6), Philly Joe Jones (ds, tracks 1–4), Donald Bailey (ds, tracks 5-6)。基本は、スミスのオルガンに、ギター、ドラムというオルガン・トリオ編成。

オリジナル盤は全6曲。1998年のCDリイシュー時に、1958年10月14日録音の4曲が追加されているが、オルガン・ジャズでありながら、何故か男性ボーカルが入っている、ちょっと違和感のある音源なので、ここでは割愛させていただく。以下、この盤の感想については、オリジナルの6曲で語りたいと思う。
 

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この盤はブルーノート・レーベルお得意の「理由が良く判らないが、何故かお蔵入り」な盤の1枚。リリースは1965年だが、この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」音源では無い。1958年の録音で、『The Sermon』と『Home Cookin'』の間に入る録音になる。ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の音源である。

雰囲気的には『Home Cookin'』の流れ。気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルとエディ・マクファデンのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルとマクファデンのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。

ドラムがフィリー・ジョーなのが珍しい。フィリー・ジョーのひかえめハードボイルドなバップ・ドラム。ジミー・スミスと言えば、ドラムは「ドナルド・ベイリー」なので、このフィリージョーのドラムは異色。ベイリーとは明らかに違う。それでも、さすがは名手フィリージョー、ブラシによるシンバル・ワークなど、ドラムの達人らしい技を披露しつつ、フロントのスミスのオルガンを引き立てる。

当時、1958年に録音されて8年間眠っていて、1965年になって発表された未発表音源。フィリー・ジョーとの共演が4曲しか無かったので、やむなくお蔵入りになったのかもしれない。力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」内容が素敵なオルガン・ジャズ盤です。
 
 

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2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

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2023年8月15日 (火曜日)

フレディ・ローチの「教会音楽」

ブルーノートの4100番台は、ハードバップが成熟した後の「ジャズの多様化の時代」を反映したラインナップが素晴らしい訳だが、4100番台の終わり頃には、「正」の多様化であるファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどがあれば、多様化の度が過ぎて、モダン・ジャズの範疇を飛び出た不思議な内容のアルバムも出現している。

Freddie Roach『All That's Good』(写真左)。1964年10月16日の録音。ブルーノートの4190番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Calvin Newborn (g), Clarence Johnston (ds), Marvin Robinson, Phyllis Smith, Willie Tate (vo)。

フレディ・ローチのオルガンは端正で堅実。「ハモンド・オルガン」らしい、くすんだ伸びのある音は、とてもファンキー。ブルノートで初リーダー作『Down to Earth』を録音して以降、『Mo' Greens Please』『Good Move!』と、その端正で堅実でファンキーなオルガンで、変な癖が無く、端正で堅実でファンキーで「聴き易いオルガン・ジャズ」盤のリリースを重ねてきた。

が、4枚目のリーダー作『Brown Sugar』から、その演奏の志向が大きく変化した。モーダルなソウル・ジャズを志向し始めた。モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開し始めた。

そして、ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』に参加。ここで、バードの「ホーリーでゴスペルチックな教会音楽志向のソウル・ジャズ」の感化された様で、この『All That's Good』は、そのバードの教会音楽志向のソウル・ジャズの流れを踏襲している様に感じる。
 

Freddie-roach_all-thats-good

 
この盤は、ジャケに写る様な女声コーラス隊が加わった、怪しげなゴスペル調の楽曲が目立つコンセプチュアルな内容のアルバム。この女性コーラス隊のゴズペル調のコーラスが正統なゴスペル風な歌声では無く、バンシー(banshee)=家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊の様な、軽妙で浮遊する様な歌声なところが、少し不気味でもあり、そこはかとなく「違和感」を感じるところ。これは、バードの『I'm Tryin' To Get Home』に酷似している。

この女性ボーカルの歌声が気に入るか否かで、この盤の評価は変わるだろう。ジャジーではあるが、この盤の内容はモダン・ジャズの範疇をはみ出して、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」な内容である。

ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』は、ビッグバンドのアレンジで、辛うじてモダン・ジャズの範疇に軸足を留めたが、このローチの『All That's Good』は、バックの演奏メンバーの顔ぶれも含めて、明らかにモダン・ジャズの範疇を飛び出している。この盤をジャズ盤としてリリースしたのは、ブルーノート・レーベルならではの仕業だろう。他のレーベルではちょっと難しかったのではないか、と思ってしまう。

ちなみにジャケに写る女性6人は、「Grandassa Models」と呼ばれる、1960年代から1970年台にかけて、NYのハーレムで開催されたアフリカ系アメリカ人女性の美を競うコンテストに参加した面々の中から選抜された6人らしい。

もしかしたら、このアルバム、そんなアフリカ系アメリカ人女性モデルの人気とタイアップした「教会音楽志向のソウル・ジャズ」だったのかもしれない。それならば合点がいく。いわゆる「一過性の流行音楽」。確かにこの後、このゴスペルチックな女性ボーカルを活かしたソウル・ジャズのフォロワーは現れ出でてはいない。
 
 

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2023年8月13日 (日曜日)

ジョーヘンの完全モーダルな盤

ジョー・ヘンダーソン(以降、ジョーヘン)のテナーは、コルトレーンでもなければ、ロリンズでも無い。ストレートな吹奏はコルトレーンの影は引き摺っているものの、ジョーヘンのテナーの響きとフレーズは唯一無二。ジョーヘン独特のテナーである。

ブルーノート・レーベルに初リーダー作『Page One』を録音して以降、『Our Thing』『In 'n Out』とブルーノートに立て続けにリーダー作を録音した。が、モーダルなジョーヘンを聴くことは出来るが、唯一無二のジョーヘンならではのモード・テナーにはなりきっていなくて、「ちょっと捻れた」独特のモーダルなテナーは中途半端。恐らく、フロント管のパートナー、ジョーヘンの育ての親を自認していたケニー・ドーハムへの遠慮というか、ドーハムに合わせたところが中途半端なモード・テナーになった理由だろう。

Joe Henderson『Inner Urge』(写真左)。1964年11月30日の録音。ブルーノートの4189番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。4枚目のリーダー作にして、フロント管がジョーヘンのテナー1管の「ワンホーン・カルテット」。しかも、バックのリズム隊はバリバリ、モードに精通した強者のトリオ。

それまで、フロント管のパートナーだったケニー・ドーハムと分かれて、ジョーヘンのテナー1本でのカルテット演奏。しかも、バックを固めるのが、タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」。
 

Joe-hendersoninner-urge

 
ジョーヘンは、このリーダー作第4弾にして、ジョーヘンの完全モーダルな、ちょっと捻れた「ウネウネ」テナーが、思う存分、自由自在に疾走する。タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」との相性もバッチリ。演奏の精度と密度は相当に高く、ブルーノートのアルバムの中でもその内容の充実度は上位に位置する。

ジョーヘンのモーダルなテナーは、ウネウネの振れ幅が穏やかで、ハードバップなリズム&ビートに良く「乗る」。例えば、ウェイン・ショーターのモーダルなテナーの「ウネウネ度合い」は振れ幅が大きくて、慣れていないとちょっと聴くに辛いところがある。

が、ジョーヘンは違う。ジョーヘンのモーダルなテナーのフレーズは、ハードバップのマナーに則った、従来のモダン・ジャズの枠内に収まったモーダルな展開で、聴いていて取っ付き易く聴き易い。

このブルーノートでのリーダー作第4弾は、ジョーヘンのモーダルなテナーを的確に捉えている。ジョーヘンも自由に、吹きたい様に吹きまくっている様が良く判る。ハードバップの延長線上にあるジョーヘンのモーダルな展開は、難解と思われているモード・ジャズを、とても聴き易いものにしている。これが、ジョーヘンのモード・ジャズの、他のジャズマンに無い個性だろう。この盤は、ジョーヘンのモーダルなテナーを理解するのに最適な盤。ジャケも小粋で良い。
 
 

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