2020年3月 8日 (日曜日)

タイナーの「アレンジの才」

マッコイ・タイナー逝去の悲しみは癒えない。今日は朝から「マッコイ・タイナー祭り」。初期のリーダー作、特に、ブルーノート・レーベルに残した諸作を順に聴き返しては溜息をついている。やはり、ジャズを聴き始めた頃からずっと40年以上、折に付け聴いてきたレジェンドが亡くなると精神的に堪える。自分にとっても、そろそろ身近な問題だけに辛いものがある。

Mccoy Tyner『Tender Moments』(写真左)。1967年12月1日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Herbie Lewis (b), Joe Chambers (ds), Lee Morgan (tp), Julian Priester (tb), Bob Northern (french horn), Howard Johnson (tuba), James Spaulding (as), Bennie Maupin (ts)。タイナーがメインのピアノ・トリオに、フロントがトランペット、トロンボーン、アルト、テナーの4管、そこにフレンチ・ホルンとチューバが加わる「ノネット(9人編成)」。

この盤はタイナーを理解する上で重要な盤の一枚。コルトレーンのモード・ジャズを継承しつつ、タイナーならではの解釈を交えて「タイナー・ミュージック」とでも形容すべき、タイナーならではの個性的な音世界を確立している。そして、そのタイナーならではの音世界を確立させているのが、タイナーの「アレンジの才」である。
   
  
Tender-moments  
 
 
まず、この盤はノネット(9人編成)での演奏になる。ピアノ・トリオのリズム・セクションにフロントが4管、そこにホルンとチューバが加わる。この9人編成の音を以て、タイナーのアレンジの才により、独特な「タイナー・ミュージック」を実現している。コルトレーン・ミュージックをベースとしながらも、フリーに走らず、モード・ジャズをより高度に洗練した響きは独特なもの。

このノネットを統率して、モーダルな響きを心地良く響かせ、フロント楽器のソロ展開をしっかりと浮き立たせ、かつ、自らのピアノによるインプロビゼーションを際立たせるアレンジには思わず唸る。コルトレーンの下、『Africa/Brass』でドルフィーとアレンジの才をふるった実績はあるが、マッコイ・タイナーの「アレンジの才」が確立された感のある『Tender Moments』である。

録音年は1967年。12月の録音なので、コルトレーン逝去後、5ヶ月が経った頃の録音。まだまだコルトレーンを失った悲しみは癒えない時期ではあっただろう。しかし、そんな悲しみの中で、この盤にじゃ「コルトレーンの音楽と精神は自分が継承していく」という明快な決意めいたものを感じる。この盤は、タイナーの優れた「アレンジの才」を心から愛でることの出来る好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

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【更新しました】2020.03.08
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東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月16日 (日曜日)

異色のモーガンを聴くには面白い

録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズの「Blue Note Classic LT series」。当時、何故かお蔵入りになった音源については、やはり当時のブルーノート・レーベルの専属ジャズマン、御用達ジャズマンのリーダー音源は多い。つまり、御用達の人気ジャズマンについては録音回数も多くなるので、お蔵入り音源になる確率も高くなるのだろう。

Lee Morgan『Taru』(写真)。LT-1031番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。実際には1968年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Bennie Maupin (ts), John Hicks (p), George Benson (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。リーダーは、当時30歳、キャリアとしては既にベテランの域に入った、トランペット担当のリー・モーガンである。

脇を固めるサイドマンの面子が物々しい。テナーのベニー・モウピン、ピアノのジョン・ヒックス、ベースのレジー・ワークマン、ドラムのビリー・ヒギンス。いずれも若手の「新主流派」の面子である。いわゆる「モード・ジャズ」の担い手ばかり。そこに、後のソフト&メロウの「歌って弾きまくる」フュージョン・ギタリストであるジョージ・ベンソンが参加している。
 
 
Taru  
 
 
当時のブルーノート・レーベルとしては、尖ったパーソネルによる演奏なので、さぞかし、硬派でビターな「モード・ジャズ」が展開されるのか、と予想する。そこにモーガンが割って入って弾きまくるのか。で聴き始めると、アップ・テンポのキャッチーな曲、バラッド、ジャズ・ロック調のナンバーで構成されているのに気が付く。今までの「硬派で鯔背なモーガン」とはちょっと異質の雰囲気。

お得意のファンキー・チューン「Get Youself Together」、流麗でポップなジャズ・バラードのタイトル曲「Taru」、モーガンには珍しい、3拍子ジャズの「Haeschen」、ポップで鯔背なモーガンが格好良い。しかしながら、この「ポップな」モーガンは、どうにもらしくない。面白いのは、サイドマンの中では、ギターのベンソンだけが、この「ポップな」音作りにマッチした弾きっぷりなのだ。

他の「新主流派」の猛者たちはちょっと不完全燃焼の面持ちである。この盤、このパーソネルからすると、ちょっと「ポップに過ぎる」感じがする。聴き流すには良いが、スピーカーと対峙して聴き込むにはちょっと「お尻がこそばゆい」。異色のモーガンを聴くには面白い内容だが、硬派で鯔背なハードバッパー、モーガンとしてはちょっと異質。その辺が、録音当時、お蔵入りになった理由かなあ。でも客観的に聴くと内容は良い。モーガンの本質に合わないと感じるだけ。
 
 
 
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2020年2月15日 (土曜日)

聴き易いアンドリュー・ヒル

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズで、1950年代後半から1960年代のお蔵入り音源なのだが、基本的に内容は折り紙付き。この不思議な音源をカタログ番号順に聴き直している。

このシリーズ、何故かお蔵入りになった音源ばかりなのだが、時々、聴いていて「ああ、これは恐らく、この辺が問題になったんだろうなあ」とふと感じる盤が幾枚かある。演奏自体には全く問題無い。どころか熱演、好演ばかり。つまりはプロデュース側の立場から見た時に「何か気になる点」があったんでしょうね。ブルーノート・レーベルの凄いところは、このお蔵入りセッションについても、しっかりギャラを払っているところ。

Andrew Hill『Dance With Death』(写真)。LT-1030番。1980年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。1968年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Charles Tolliver (tp), Joe Farrell (ss, ts), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。パーソネルを見ても、録音時期を見ても、これはバリバリ硬派なモード・ジャズだろうな、と当たりをつける。
 
 
Dance-with-death  
 
 
さて、聴いてみると「あれっ」と思う。聴き易いアンドリュー・ヒル。結構、良いメロディーの曲が並ぶ。良いメロディーが印象的なので、スタンダード曲なんだろうな、と思って資料を見ると、これがまあ、全曲、アンドリュー・ヒルのオリジナル曲なのだ。へ〜、あのアンドリュー・ヒルがこんなに良いメロディー満載のオリジナル曲を作るのか。意外と言えば意外である。

アンドリュー・ヒルのピアノは、一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じ。加えて、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が個性なのだが、この盤ではその個性が、良いメロディー満載のオリジナル曲によって、中和されているのが気になると言えば、気になる。

この盤のタイトル、日本のキング盤での黒が基調の怪しげなジャケット(写真右)、ヒルのピアノの個性、を頭の中に入れながらこの盤の音を聴くと、基本的に「戸惑う」。やはり、ヒルには「尖った限りなく自由度の高いモード・ジャズ」が良く似合う。ヒルという名を聴いて頭の中に浮かぶイメージとこの盤に詰まっている「良いメロディーの曲」とのギャップが、確かに引っ掛かる。そういう意味では敢えてリリースする必要が無い盤(お蔵入り盤)なのかなあ、と思うのだ。
 
 
 
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2020年2月11日 (火曜日)

摩訶不思議な響きのハードバップ

ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズ、と評価されてはいるが、中には「まあ、これはお蔵入りの理由が何となく判るなあ」という音源もある。といっても、演奏レベルに問題がある訳では無い。プロデューサーの視点での「お蔵入り」の判断である。

Lou Donaldson『Midnight Sun』(写真)。LT-1028番。1960年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds), Ray Barretto (congas, tracks 1 & 3-7)。1980年の発掘リリース。〈発掘男〉マイケル・カスクーナの監修&解説。録音した時期は、ハードバップが枝分かれして、それぞれの進化を始めた時期。

ハードバップは、大衆化志向では「ファンキー・ジャズ〜ソウル・ジャズ」、アート志向では「モード・ジャズ」そして「フリー・ジャズ」と、多様化というキーワードの基で、それぞれに進化していった訳だが、この盤では「モード・ジャズ」である。パーソネルを見渡せば、パーラン=タッカー=ヘアウッドのリズム・セクションは、明らかに「新進気鋭のモード・ジャズの担い手」である。
 
 
Midnight-sun  
 
 
さて、これだけバックに「モード・ジャズ」を配して、古参のバップなアルト・サックス奏者、ルー・ドナルドソン、愛称ルーさんはどんなパフォーマンスを聴かせてくれるのか。ちょっとドキドキするのだ。で、聴いてみると。一言で演奏の印象は「モーダルな演奏が得意な若手ピアノ・トリオをバックに、ルーさんが我が道を行く」。バックがモード・ジャズ志向であっても、ルーさんのアルト・サックスは変わらない。

ルーさんのアルト・サックスは、相変わらずご機嫌でポジティヴな、バップなフレーズを吹き上げている。モードなど何処吹く風。あろうことか、バレットのコンガが入ってファンキーな雰囲気が漂ったりする。モードにコンガ、モードにバップなアルト・サックス。異種格闘技的な独特な雰囲気が漂う。ハードバップ、ファンキー・ジャズ、モード・ジャズのチャンポン。但し、融合までは至っておらず、特別な化学反応は起こっていないようだ。

モードはモードで優れた演奏を繰り広げ、ルーさんはルーさんでバップな優れたブロウを披露、バレットのコンガは殊の外ファンキー。それぞれの個性がしっかり主張していて、摩訶不思議な雰囲気が漂う「異種格闘技ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスをメインとして考えた時、バックは敢えて「モード・ジャズ」である必要は無い。そういう観点で「お蔵入り」になったのではないか。しかし、演奏内容は充実している。不思議な響きを宿したハードバップである。
 
 
 
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2020年2月 5日 (水曜日)

他と遜色ない尖ったモード演奏

ジャズについては、どんどん深化していると感じているので、新盤を聴くのがとても楽しい今日この頃。最近の新盤はニュー・ジャズ系、いわゆる、ネオ・ハードバップ、ネオ・モード、ネオ・スピリチュアルなど、時代の先端を行く新しい音のジャズが花盛り。こんな新盤ばっかり聴いていると、ふと、昔のこってこてのハードバップやこってこてのモード・ジャズが無性に聴きたくなる。

そんな時、最近、お世話になるのが、ブルーノートの未発表音源シリーズが「Blue Note Classic LT series」。略称は「BNLT」。録音当時、何故かお蔵入りになった音源ばかりを発掘してリリースしたシリーズで、1950年代後半から1960年代のお蔵入り音源なのだが、基本的に内容は折り紙付き。この不思議な音源をカタログ番号順に聴き直している。

Bobby Hutcherson『Spiral』(写真)。1968年11月11日の録音。Blue NoteのLT 996番。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib, marimba), Harold Land (sax), Stanley Cowell (p), Reggie Johnson (b), Joe Chambers (ds)。6曲目の「Jasper」、これだけが何故か1965年4月3日の録音。この6曲目だけ異質なので、ここではコメント対象から割愛する。
 
 
Spiral  

 
1979年、ジャズ音源の「発掘男」マイケル・カスクーナによる発掘リリース。1968年のヴァイブの改革者、ボビー・ハッチャーソンのお蔵入り音源。ハッチャーソンは、1967年から1969年の間に、この未発表盤も合わせて、6枚ものアルバムを作成している。どの番もポスト・バップ〜モーダル〜スピリチュアルな演奏の数々。同一傾向のアルバムが続くのを懸念したのだろうか。

この未発表盤、その内容については、とても優れたポスト・バップ〜モーダル〜スピリチュアルな演奏の数々。今の耳で聴いても、当時、どうしてお蔵入りになったのか、理解に苦しむ。ヴァイブの伸びのある音を上手く活かしたモーダルな演奏がハッチャーソンの真骨頂。ハロルド・ランドとの双頭クインテットのセッションで、ピアノのスタンリー・カウエル共々、一癖あって、正統派ではあるが、かなり尖ったモード・ジャズを展開している。

振り返れば、Stanley Cowellがピアノを弾いた「Patterns」「Spiral」「Medina」の3セッションはすべてお蔵入り。何か気になることがあったんでしょうね。しかし、このお蔵入り音源についても、他のリリース音源と全く遜色ない、限りなく自由度の高い、モーダルでスピリチュアルな演奏が展開されていて聴き応えがある。
 
 
 
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2020年1月27日 (月曜日)

新しいヴァイブ奏者の出現である

ジャズのヴァイブ(ヴィブラフォン)は絶滅種だと思っていた。ミルト・ジャクソンから始まり、ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ロイ・エアーズ、マイク・マイニエリが出現し、もうこれで終わりだ、と思っていた。我が国では、平岡精二、増田一郎が有名だが、新しい有望なヴァイブ奏者は現れ出でてはいない。

まあ、マイナーで扱いづらい楽器ではあるからね〜、と思っていたら、なんと、新しい有望なヴァイブ奏者が現れ出でたのである。ジョエル・ロス(Joel Ross)。名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者。シカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動。トレードマークのドレッドヘアー、スタイリッシュなファッション。現代の若きジャズマン。

Joel Ross『Kingmaker』(写真左)。ジョエル・ロスのデビュー・アルバム。2019年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Ross (vib), Immanuel Wilkins (as), Benjamin Tiberio (b), Jeremy Dutton (ds), Jeremy Corren (p)。ヴィブラフォンとアルト・サックス、対照的な音色のフロント2楽器のクインテット構成。ジョエル・ロスをはじめ、このクインテットのメンバーについては全く知らない。
 
 
Kingmaker-joel-ross  
 
 
全員、初めて出会ったメンバーである。まず、ジョエル・ロスのヴァイヴが個性的。今までの歴代のヴァイブ奏者の良いところを全て融合した、新しいヴァイブの響きとフレーズ。奇をてらったり、アブストラクトに走ったりすることは全く無い。メインストリームなジャズを引き継いだ、明確にジャジーな響き。切れ味良く明快で、ポジティブな響きを伴った、硬質で柔軟でしなやかなヴァイブの響き。

展開するフレーズはモーダルなもの。新主流派のモーダルな雰囲気に、現代のクールなスピリチュアル・ジャズの雰囲気を融合した、新しい雰囲気のネオ・ハードバップな演奏の数々。音の太くてダイナミックなアルト・サックスが絡むことで、ジョエル・ロスのヴァイブの特質が、更に明確に浮かび上がる。Gretchen Parlat (vo) の参加も、スピリチュアルな側面を増幅する役割を果たしていて効果的。

正統なメインストリーム・ジャズ。スピーカーの前に座って、じっくりと耳を傾けるべき、新しいヴァイブの演奏。選曲については、12曲中11曲はロスのオリジナルで構成されている。テクニックは確か、歌心も満載。ヴァイブの良いところを全て引きだした様な演奏が素晴らしい。今から次作が楽しみになる、充実した内容のデビュー盤。繰り返し、じっくり聴き込みたいアルバムです。
 
 
 
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2020年1月11日 (土曜日)

デックスの「充実のお蔵入り盤」

1979年、UA社のレコード部門をEMIが買収したのを好機と捉え、音源発掘男マイケル・カスクーナはキャピトルと談判、ブルーノートの未発表音源を発掘した。「Blue Note Classic LT series」である。1979年から1981年の間にLP40数タイトルが発表されたのだが、その時のジャケットの左上の虹入りの斜め線のイメージから「レインボー・シリーズ」とも呼ばれる。

今回は、Dexter Gordon『Clubhouse』(写真左)。1965年5月27日の録音。ブルーノートのLT-989番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Bob Cranshaw, Ben Tucker (b), Billy Higgins (ds)。ベースのみが2人のベーシストで役割分担しているが、フロントがテナーとトランペットのクインテット構成。

1960年代のデックス(Dexter Gordonの愛称)のリーダー作には駄作が無い。 1950年代は麻薬禍のため活動が低迷、大部分の期間を麻薬更生施設で過ごしたが、1960年代初頭から渡欧、フランスやデンマークを拠点に活動し、カムバックを果たす。このカムバック後のデックスはとても充実している。もともとジャズ演奏のトレンドを追いかけること無く、自らのスタイルを貫くタイプなので、演奏内容にブレが無い。
 
 
Clubhouse  
 
 
この『Clubhouse』も内容的には充実している。1965年の録音なので、トランペットのハバードは「天狗状態」で目立ちたがり。とにかく優秀なテクニックに任せて、五月蠅いくらいに吹きまくるのが耳につくところが玉に瑕だが、それ以外は、グループサウンドとしてバランスが取れていて、上質のハードバップ盤として仕上がっている。

デックスのテナーは申し分無い。豪放にてジェントル、歌心豊かな朗々としたプレイが身上。自作曲4曲、スタンダード2曲だが、特に自作曲は躍動感溢れ、明朗なテナーを吹く傾向があって、これがまた聴きどころとなっている。鼻歌を唄うようにテナーを吹き上げるデックス。こんなに内容充実の音源が、録音当時はお蔵入りとは。逆に、マイケル・カスクーナがよく発掘しリリースしてくれたと思う。

今の耳で聴き直してみると、完璧な内容の「ハードバップ」。1965年は新主流派(モード・ジャズ)の時代。内容が時代にちょっと合わなかったか、というのと、他のデックスのリーダー作が同様に内容充実しているので、当時、ブルーノートの総帥ライオンは「類似」を避けたのかも知れない。避けている内にその存在を忘れたのではないか、と想像している。とにかく「お蔵入り音源」とは思えない内容である。
 
 
 
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2020年1月10日 (金曜日)

BNLTシリーズの聴き直しは楽し

ブルーノート・レーベルは1967年、リバティに買収される。当然、ブルーノートの録音テープは全てリバティのものになった。1970年代に入り、純ジャズは過去の音楽資産になった。ブルーノート・レーベルは忘れ去られた存在になる。しかし、ジャズはそう簡単に「死なない」。1979年、UA社のレコード部門をEMIが買収したのを好機と捉え、音源発掘男マイケル・カスクーナはキャピトルと談判、ブルーノートの未発表音源を発掘した。

BNLTシリーズである。1979〜81年に発掘盤ばかりLP40数タイトルが発表された時にはビックリした。まだ、こんな純ジャズな音源が残っているんやなあ、とジャズの懐の深さに感心することしきりであった。このBNLTシリーズは、もともとはブルーノート・レーベルの下、総帥のアルフレッド・ライオンが録音したにはしたが、何らかの理由でLPとしての発売を見送った(お蔵入りの)音源のアルバム化である。お蔵入りの音源なので、通常のジャズ・レーベルでは演奏自体に問題があるものばかりなのだが、ブルーノートの場合はそうではない。

お蔵入りの音源とはいえ、一定以上の演奏水準を保ったものばかりで、「何故この音源がリリースされなかったのか」が判らない優れた内容の音源も多々ある。このブルーノートのBNLTシリーズを順番に聴き直すのが、最近の密かな楽しみである。意外と優れた演奏が多いのだ。しかも、リラックスして聴けるものが多く、肩肘張らずに楽しめる。シビアなジャズを聴いた後、ちょっと箸休めの感じで、このBNLTシリーズのアルバムを聴くのは、なかなか「オツ」なものである。
 
 

Jackie_mclean_consequence
 
 
今日のBNLTシリーズのアルバムは、Jackie Mclean『Consequence』(写真)。1965年12月の録音。LT-994番である。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Lee Morgan (tp), Harold Mabern (p), Herbie Lewis (b), Billy Higgins (ds)。ハードバップ時代からのベテランの二人、マクリーンとモーガンをフロントに据え、当時、まだ若手だったリズム・セクションを起用した、新旧ジャズメンの邂逅的なアルバムである。

新旧ジャズメンの邂逅とは言え、何か特殊な化学反応が起こったかと言えばそうではない。フロントのマクリーンとモーガンが絶好調で、明らかにベテランのフロント二人の「勝利」である。とにかく、この絶好調のベテラン二人がこのアルバムに収録されたセッションを牽引している。演奏の内容が徹頭徹尾「良質なハードバップ」で占められている。録音された時期が1965年なので、この徹頭徹尾「良質なハードバップ」という内容は逆に違和感がある。

この演奏が1960年前後に録音されていたら、それはそれで座りが良いのだが、1965年という録音時期、そして、バックのリズム・セクションが当時の優れた若手陣を採用していることから、「良質なハードバップ」な中身は明らかに時代遅れと取られても仕方が無い。でも、今の耳で振り返ると、この未発表音源の内容って「優れたハードバップ」で、これはこれで内容のあるアルバムだと僕は思う。

絶好調なマクリーンのアルト、そして、モーガンのトランペットは溌剌としていて、1960年前後でもこれだけ吹きまくる二人の演奏にはなかなか出会わないだろう。1965年の優れたハードバップ盤として、今の耳には好盤の一枚です。リラックスして聴けるハードバップ盤として、ジャズ者ベテランの方々にお勧めの一枚でしょうか。BNLTシリーズって、聴き直すと新しい発見が結構あったりして面白いですよ。
 
 
 
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2019年12月 3日 (火曜日)

ジャス喫茶で流したい・156

こういうジャズ盤に出会うと思わず頬が緩む。というか、緩みっぱなしになる。テナー・サックス+オルガン+ドラムスの「オルガン・トリオ」。ジャズにオルガンは良く似合う。古くは1950年代のハードバップの時代から、オルガン・ジャズは人気である。そんなオルガン・ジャズが、現代の、21世紀の今でも「ある」のだ。嬉しいではないか。

James Carter Organ Trio『Live From Newport Jazz』(写真左)。2018年 Newport Jazz festivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、James Carter (ts), Alwx White (ds), Gerard Gibbs (org)。実は、僕はリーダーの「James Carter(ジェームス・カーター)」を良く知らない。

ジェームス・カーターとは誰か。ジェームス・カーターは、1969年1月3日生まれ。今年でちょうど50歳。ジャズの世界では中堅からベテランに差し掛かる年齢。出身が「ジャズメンの古都」デトロイトというのが良い。若かりし頃は、ジョシュア・レッドマンの好敵手として注目を集めた強烈な個性をもつテナーマンである。
 
 
Live-from-newport-jazz  
 
 
さて、このライブ盤は、ジャンゴ・ラインハルトによって作曲された、または彼に関連した6つの楽曲を収録。そういう意味で、演奏自体が浮ついていなくて、実に渋く実に粋である。カーターのテーマ部は堅実で正統派、アドリブ部は野性味溢れるアブストラクトでフリーな展開。これが実に心地良い。いずれの楽曲もスピリチュアルでエモーショナルで、「ハートに染み入る」演奏である。

オルガンが効いている。オルガンの音は嫌が応にも演奏全体をジャジーな雰囲気で染め尽くす。そこにソウルフルなドラミングがフロントのテナーを鼓舞し煽る。カーターのテナーは自由奔放に激情豊かに、思いっ切りテナーを吹き上げる。そして、それが耳に付かない。流麗でキャッチャーで「フリーなアドリブ展開」。そして、オルガンがジャズのグルーヴの大本をしっかり押さえる。

カーターいわく「オルガン・サウンドはアフリカ系アメリカ人のルーツの一端を担っている。これらはスピリチュアル・ジャズからソウル、ネオ・ソウルへと繋がり、ジャズの魂を表現する不可欠な要素になっている」。なるほど、そんな理屈をこのライブ盤ではしっかりと音で、立派に表現している。このライブ盤、掘り出し物です。
 
 
 
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2019年11月25日 (月曜日)

モブレーを理解する「第一歩」

40年以上前、ジャズを聴き始めてから、ずっと「ハンク・モブレー(Hank Moblay)」が良く判らなかった。1930年7月生まれ。1986年5月、55歳にて没。活躍したのは、1955年から1970年辺りの約15年余り。ブルーノートでのリーダー作は華々しい限り。1957年には8枚ものリーダー作を録音している。しかし、1972年の『Breakthrough!』以降はリーダー作もサイドマンとしての客演も無く、全く地味な晩年だった。
 
ハンク・モブレーの代表作3部作『Soul Station』『Roll Call』『Workout』は良く聴いたが、他のアルバムについては、モブレーって好不調の波が結構あるので、ある盤では「これは結構凄いなあ」と感じる反面、ある盤では「なんじゃこれ、元気ねえなあ」なんてちょっと首を傾げたくなる盤もあるので、選盤が面倒くさくなる。結局、他のテナーマンのリーダー盤に走ったりして、しばらくモブレーの事は忘れていた。
 
最近、ふと思った。何故、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンはモブレーを重用したのか。マイルスは何故、コルトレーンの後任にモブレーを据えようと考えたのか。どうにも、代表作3部作を聴くだけではよく判らない。ということで、今まで「つまみ食い」的に聴いてきたモブレーのリーダー作をガッツリと全て聴き直すことにした。
 
 
Hank-mobley-4  
 
  
『Hank Mobley Quartet』(写真左)。1955年3月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Doug Watkins (b), Art Blakey (ds)。リリース当時は10" LP仕様。アルバム全体でも26分という短さ。しかし、アルバムというもの、収録時間の長さが価値では無い。その中に記録されているパフォーマンスの出来である。
 
この盤はモブレーの初リーダー作。録音当時は24歳のモブレーのワンホーン・カルテット。バックを支えるリズム・セクションも当時の精鋭メンバーで充実のサポート。そんな充実のカルテット編成で、モブレーは溌剌とテナーを吹きまくる。しっかりと芯の入った骨太なブロウ。テクニック良く流れる様なアドリブ・フレーズ。この盤のモブレーは、テナーマンとしての類い希な才能と素性の良さを大いに感じさせてくれる。
 
そして、この盤で判るのは、モブレーの「作曲の才」。5曲目の「Love for Sale」以外、他の5曲はモブレーの作曲。どの曲も出来は上々。この作曲の才って、当時、凄いことなのだ。そうそう自作曲を多数、用意できるジャズマンはいない。モブレーの最大の個性は、この「卓越したコンポーザー」としての才能ではなかったか。その才の上に、テナー・インプロバイザーとしての才がある。モブレーを理解する上で、最初に聴くべき好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、 ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で、不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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