2023年3月29日 (水曜日)

ルーさんとオルガンとギターと

1950〜1960年代のブルーノート・レーベルには、レーベルにずっと所属した「お抱えジャズマン」がいた。アルト・サックスのルー・ドナルドソンとジャキー・マクリーン、テナー・サックスのアイク・ケベック、ピアノのホレス・シルヴァー、トランペットのドナルド・バードなど、ブルーノートをメインにリーダー作をリリースし続けた強者共である。

ブルーノート・レーベルは中小規模の零細レーベルだったので資金力は無い。営業力も弱い。よって、ストリングスを交えてのゴージャズな編成での録音や、ビッグバンドなどの大人数編成の録音が出来ない。アルバムを米国全土で売り上げる営業力も期待出来ない。

それをやりたければ、期待するならば、大手のジャズ・レーベルに移籍する必要があった。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに見出されて、メジャーな存在になったジャズマンの中で、そういう大手レーベルに移籍していったジャズマンも多くいる。

それでも、ライオンは自らが見出したジャズマンの大手レーベルへの移籍を喜んだ。自分が見出したジャズマンが大手のレーベルに認められて、メジャーな存在になっていく。それがライオンにとっては無上の喜びだったそうだ。ライオンは「ジャズマン・ファースト」なレーベル経営者であり、プロデューサーであったことが良く判る。

しかし、逆に、そのライオンのプロデュースの手腕とジャズマンに対する真摯な対応にほだされて、ブルーノートの「お抱えジャズマン」として、ずっと残ったジャズマンも多くいるのも事実。ライオンの人柄に惚れて惹かれてブルーノートに留まり、ライオンが引退した後も、1970年代半ば、ブルーノートが活動停止するまで、ずっと「お抱えジャズマン」であり続けた。
 

Lou-donaldsongood-gracious

 
Lou Donaldson『Good Gracious!』(写真左)。1963年1月24日の録音。ブルーノートの4125番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Grant Green (g), Big John Patton (org), Ben Dixon (ds)。ブルーノートのお抱えアルト・サックス奏者のルー・ドナルドソンがリーダー、ピアノレス、代わりにオルガンが入ってベースレス(ベースラインはオルガンが代替)、ギターを加えたカルテット編成。

もともと、ルーさんのアルト・サックスは、バップでファンキー、音は明るくフレーズは爽快。アーティスティックな面を突き詰めたジャズより、ポップで聴き心地の良いソウルフルなジャズに向くアルト・サックス。そんなルーさんのアルト・サックスは、ジョン・パットンの正統でどこかポップなファンキー・オルガンとの相性抜群。バップでご機嫌な演奏を繰り広げる。

そして、グリーンのパッキパキ硬質なシングルトーンが個性のファンキー・ギターとの相性も抜群。ルーさんのアルト・サックスは流麗で爽快。それに相対するグリーンのギターは、シングルトーンで硬質でバッキバキと真逆。そんなお互い真逆の音が、溢れるようなファンクネスという「共通項」を基に、ソウルフルでご機嫌な演奏を繰り広げる。

ディクソンのファンキーなドラミングは、そんなアルト・サックス、オルガン、ギターを、ソウルフルに鼓舞して、引き立てる。このディクソンもドラミングも、この盤の「キモ」。

あまり、ブルーノート盤の紹介に出てこないルーさんのリーダー作なんですが、内容は「間違いの無い」、バップでファンキーでソウルフルな「ご機嫌なオルガン・ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスもその個性が十分に輝いていて、この盤、ファンキー&ソウル・ジャズの好盤だと思います。お勧め。
 
 

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2023年3月28日 (火曜日)

BNのお蔵入り音源「4122番」

 

ブルーノート・レーベルは、有名なカタログとして、1500番台、そして、4000番台〜4300番台があるが、ブルーノートって几帳面だったんだなあ、と思うのは、この有名なカタログ番号に「飛び番」がないこと。きっちりとそれぞれのカタログ番号に100枚のアルバムが、それぞれしっかりと割り当てられている。これには感心することしきりである。

Stanley Turrentine『Jubilee Shout!!!』(写真左)。1962年10月18日の録音。ブルーノートの4122番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Tommy Turrentine (tp), Kenny Burrell (g), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Al Harewood (ds)。

タレンタイン兄弟、スタンリーのテナー、トミーのトランペット、そして、バレルのギターがフロントのセクステット編成。実はこの盤、カタログ番号、ジャケットまで用意されていて「お蔵入り」になった盤になる。世の中に出たのは1986年になる。録音から22年もの間、倉庫に眠っていた訳で、当時のブルーノートでは、ままあること。

お蔵入り音源だから、内容的に問題があったり劣ったりしているのか、と思うのだが、この盤についても、何回聴いても「お蔵入り」になった理由が判らない。内容的には、タレンタイン兄弟の2管+バレルのギターがフロントを張った、スッキリとしたハードバップな演奏に仕上がっている。

1962年の録音なので、ジャズは多様化の時代に差し掛かりつつあって、この盤の様な、スッキリハッキリした典型的なハードバップな演奏は、古くなっていたのかもしれない。まあ、アルバムってコストをかけてリリースするからには売れないといけないからなあ。当時のブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンはそういう判断をしたのかもしれない。
 

Stanley-turrentinejubilee-shout

 
しかし、今の耳で聴くと、とっても聴き心地の良い、スッキリハッキリとしたハードバップ演奏なんですよね。それぞれの楽器の演奏も、テクニック的にも歌心的にも優れていて、リズム&ビートもカッチリまとまっていて、それぞれの収録曲のアレンジも良好。成熟、完成したハードバップ演奏と言ってもよい位、実に出来の良いパフォーマンスにほとほと感心する。

タレンタインのテナーは、どっぷりファンキーなんだが、意外と軽快。デビュー当時の様な重厚感はちょっと後退して、スッキリハッキリ、そして流麗にフレーズを吹き上げていく。ちょっとライトにポップになったと言っても良いくらいの軽快さ。しかし、これが実に良い雰囲気なのだ。このタレンタインの軽快なテナーがこの盤の一番の聴きどころだろう。

フロントの他のメンバー、トミーのトランペット、バレルのギターも好調。ソニー・クラークのピアノを中心とした、ワーレンのベース、ヘアウッドのドラムのリズム・セクションも快調にリズム&ビートを供給している。本当に、この盤、スッキリハッキリした典型的なハードバップな演奏がてんこ盛りなのだ。

つまりは、この盤、今の耳で聴くと、なんで「お蔵入り」になったのかが皆目判らない内容で、まあ、これはブルーノートでは、ままあること、なので、「お蔵入り」音源だから、どこかに内容的に問題があるぞ、とか、どこかに劣った部分があるぞ、とかで聴き耳をたてると疲れるだけです(笑)。でも、アルフレッド・ライオンが生きていたら、この盤の「お蔵入り」の理由、しっかりと訊いてみたいものである。
 
 

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2023年3月27日 (月曜日)

テキサス・テナーの雄の好盤

ブルーノートの4100番台は、1962年〜1965年に渡ってリリースされたアルバムで全100枚。1962年~1965年と言えば、ジャズの世界はハードバップ全盛期を経て、多様化の時代に突入していた。そして、ブルーノートはこの4100番台で、この「ジャズの多様化」にしっかりと応えている。

多様化とは、ハードバップからジャズのアーティスティックな部分にスポットを当てた「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」「スピリチュアル・ジャズ」が、ポップで大衆向けの音楽として「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」「ラテン・ジャズ」と、ハードバップから、様々な志向毎にジャズ演奏のトレンドが派生したことを指す。

Don Wilkerson『Elder Don』(写真左)。1962年5月3日の録音。ブルーノートの4121番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts), John Acea (p), Grant Green (g), Lloyd Trotman (b), Willie Bobo (ds)。テキサス・テナーの雄、ドン・ウィルカーソンのテナーと、グラント・グリーンのぱっきぱきシングル・トーンなファンキー・ギターがフロントのクインテット編成。

ドン・ウィルカーソンは、1932年、米国ルイジアナ州マローヴィル生まれの、R&Bとソウル・ジャズのテナー奏者&バンド・リーダー。テキサス・テナーの雄として知られる。テキサス・テナーとは、ブルースを基調とした、骨太で気合いや根性を優先、豪快なブロウを身上とした、米国南部の男らしい荒くれテナーのこと。
 

Don-wilkersonelder-don

 
そんなテキサス・テナーが心ゆくまで楽しめる。少しラテンなリズムが入ったダンサフルで躍動感のあるテナー、アーシーでブルージーで、ややゴスペルっぽいテナー、R&B基調のソウルフルでガッツのあるテナー、そんなテキサス・テナーをウィルカーソンが全編に渡ってガンガンに吹きまくっている。

そして、フロントの相棒、グラント・グリーンのパッキパキ・ファンキー・ギターが、このウィルカーソンのテキサス・テナーにばっちり合っている。グリーンのギターは切れ味の良い、骨太なシングルトーンが身上なんだが、ウィルカーソンの骨太テキサス・ギターとの相性抜群。

そして、ファンクネスだだ漏れのグリーンのギターが、ウィルカーソンのテナーと交わって、ソウルフルなギターに変身したりして、これがまたまた聴き応えがある。このウィルカーソンのテナーとグリーンのギターの化学反応も聴きものである。

ジャズ多様化の時代に、こういうテキサス・テナーがメインのリーダー作をリリースしてくるブルーノートって、懐深く、なんて粋なんだろう。だからこそ、ブルーノートの4100番台は、当時のジャズの演奏トレンドを幅広く捉えていて、聴いて楽しく、聴いて勉強になる。そして、ジャズって本当に他の音楽ジャンルに対して「懐が深い」なあ、と再認識した次第。
 
 

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2023年3月26日 (日曜日)

スリー・サウンズの音の変化

ブルーノートの4100番台の聴き直しを再開した。4100番台のカタログをチェックしていたら、まだまだ、当ブログにアップしていない盤がかなりあることに気がついた。どうも、4000番台について、全てのアルバムの記事をアップして、全部終わった気になったとみえる(笑)。で、この盤から再開である。

The Three Sounds『It Just Got To Be』(写真左)。1960年12月13–14日の録音、1963年のリリース。ブルーノートの4120番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」の好盤。従来の聴き易い、ストレート・アヘッドなピアノ・トリオから、新しいイメージへの変化の兆しが聴ける。

それまでは、ストレート・アヘッドでハードバップなピアノ・トリオ。アレンジが優れていて、スタンダード曲をライトに聴き易く仕立て上げていて、とても趣味の良い、小粋で聴き応えのある盤をリリースしてきた。が、ここに来て、リーダーのピアニスト、ジーン・ハリス(写真右)は、この「スリー・サウンズ」の音を、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換を図りだしている。

録音が1960年12月なので、この転換については判断が早い方。1960年終わりと言えば、まだソウル・ジャズは兆しがあるくらい。リリースが伸びて1963年6月にになったのも頷ける。1963年6月であれば、ソウル・ジャズが流行始めた頃なので、このリリース時期については合点がいく。
 

The-three-sounds_it-just-got-to-be

 
冒頭の「One For Renee」から、ファンキー・ジャズが基本で、そこかしこにソウル・ジャズの雰囲気が漂う演奏でダンサフル。もともとのスリー・サウンズが持っていた「アレンジ良好で趣味の良い、小粋で聴き応えのある」雰囲気はそのままに、ソウルフルなイメージが濃厚になっている。

ジーン・ハリスのピアノのフレーズは、躍動感がさらに増し、ファンクネスが濃厚になり、グルーヴ感が増強されている。ソウル・ジャズへの転換の準備はすっかり整っている様なソウルフルなピアノ。もともとファンキーなピアノを弾くが、オフビートのタッチが強調されていて、ソウル、もしくはR&B基調のピアノに変化し始めている。

そして、シンプキンスのベースとダウディー のドラムのリズム隊は、もともとファンキーなリズム&ビートを叩きだしていたが、この盤ではそこにソウルフルなグルーヴ感が追加されていて、ソウルフルなピアノに転身しつつあるハリスのピアノを、効果的にサポートし鼓舞している。

このファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換は、このスリー・サウンズのメンバー3人の能力の高さと優秀なアレンジ力が故に出来ること。新しいイメージを3人の共通の認識として、それぞれが新しいイメージへの転換を図っていて、それが「板につきつつある」。それが、この盤の「聴きどころポイント」だろう。聴き心地が良いトリオ盤です。
 
 

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2023年2月14日 (火曜日)

メリッサ・アルダナを初めて知る

毎月、新しくリリースされる盤を聴いていると、ジャズは生きているなあ、と実感する。未だに、ジャズの新人はコンスタントにデビューしてくるし、新人の有望株は着実にリーダー作を重ねて、中堅にステップアップしている。中堅ジャズマンは、着実に経験と年齢を重ねて、ベテラン・ジャズマンへと昇華していく。

Melissa Aldana『12 Stars』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Melissa Aldana (ts), Sullivan Fortner (key), Pablo Menares (b), Kush Abadey (ds), Lage Lund (g)。メリッサ・アルダナのブルーノート・レーベルのデビュー作である。

メリッサ・アルダナ(Melissa Aldana)は、チリのサンチャゴ出身。ブルックリンを拠点に活動する33歳の女流テナー・サックス奏者。ソニー・ロリンズを聴いて、テナーを持ったと聞く。

初リーダー作は2010年。マイナー・レーベルのインナーサークルからのリリースだった。そして、今回、メジャー・レーベルのブルーノートからのリリースである。メリッサの「ジャイアント・ステップ」である。
 

Melissa-aldana12-stars

 
メリッサのテナーを初めて聴いたが、テクニックは申し分無し。それでいて、そのテクニックをひけらかす様な、シーツ・オブ・サウンドを吹き回すことはしない。排気量の大きい車が、悠然とゆっくりと走る様な、良い意味での「余裕」を感じる吹きっぷり。これって、ベテランの吹きっぷりやん、と突っ込みを入れたくなる(笑)。

各曲の演奏自体の「組立て、展開、トーン選び」がしっかりしていて感心する。テナーを技倆良く吹くだけでなく、演奏のオーガーナイザーとしての才能もしっかり持っていると聴いた。近い将来、アレンジ&コンポーズにも長けた、総合力で勝負するテナー奏者に成長するのではないか、という「伸びしろ」をこの盤を聴いていて感じる。

ギターのラージ・ルンドの存在も良いアクセント。音の志向としては、メリッサと同じ志向をしている様で、思索的で瞑想的な「静的なスピリチュアル」な響きが実に印象的。そんなルンドが、この盤のプロデュースを担当しているもの興味深い。

静的なスピリチュアル・ジャズを志向している様なメリッサの新盤。とても思索に富み、とても考慮に富んでいる、数々のフレーズを聴いているうちに、ついつい引き込まれていく。不思議な魅力を持ったメリッサの新盤である。
 
 

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2023年1月23日 (月曜日)

レイジのブルーノート盤・第2弾

数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリスト。パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、それでも、他にありそうでない、ワン・アンド・オンリーな個性が見事である。そのギタリストとは「Julian Lage(ジュリアン・レイジ)」。

官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」は、ジュリアン・レイジのギターの独特な個性。テクニックはもちろん卓越したものだが、その「超絶技巧」を売りにした様な、派手派手しい弾き回しは無い。逆に、レイジの超絶技巧な弾き回しはとてもクールで流麗。うっかりすれば、レイジのテクニックのレベルの高さに気がつかないくらいである。

あくまで、ネオ・ハードバップな、モーダルなフレーズを聴かせる中で、そこはかとなく「ハイ・テクニック」が見え隠れする程度の奥ゆかしいもの。この「奥ゆかさ」が実に好ましい。この「奥ゆかしい」クールで流麗な弾き回しが、実は凄みがあって、聴き応えがある。

Julian Lage『View With A Room』(写真左)。2022年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), Jorge Roeder (b), Dave King (ds) と前作同様のトリオ編成。そして、この盤では、このトリオに、米国ルーツ音楽に根ざした「捻れギター」のレジェンド、Bill Frisell (g) がゲスト参加している。ギターのメインは、当然、リーダーのレイジ。"レジェンド" フリゼールは伴奏に徹している。
 

Julian-lageview-with-a-room

 
このレイジとフリゼールのギター2本の絡みがこの盤の聴きどころ。レイジとフリゼールは音色が似通っているので、音が重なると訳が判らなくなるのだが、この二人はそんなリスクを容易く回避していく。フリゼールの伴奏フレーズはレイジと決してぶつからない。レイジの音の間を埋めて、レイジと重なる時は、印象的なハーモニーで重なる。そうすることで、レイジの個性である「くすんだ音色」を際立たせている。

レイジのもう1つの個性である「前のめりでアグレッシブなフレーズ」については、フリゼールが少しずらして応答し、レイジのフレーズを前面に押し出す。そして、ホルヘ・ローダーのベースとデイヴ・キングのドラムが、クイックに効果的に、緩急自在に硬軟自在に反応する。

このレイジのリズム隊に対する「呼びかけ」に対するリズム隊の応答のリズム&ビートが、このレイジの「前のめりでアグレッシブなフレーズ」に効果的に響いていて、盤全体に心地良いグルーヴを醸し出している。

レイジのフレージングはアイデア満載で、今までに聴いたことの無いフレーズがどんどん飛び出してきて、聴いていてとても面白い。この盤でも、前作同様、フリゼールと合わせて、ジャズをはじめ、ロック、ブルース、カントリーなど、米国ルーツ・ミュージックの音要素を引用されていて(これが僕には堪らない)、レイジ独特の音世界が展開されている。この盤で、ジュリアン・レイジは確実に、僕のお気に入りギタリストになった感じがする。次作がもう楽しみになっている。
 
 

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2023年1月18日 (水曜日)

エレ・バードの未発表ライヴ盤

ネットでジャケットを見た時は、最初はCDリイシューかと思った。ドナルド・バードの1973年のモントルー・フェスでのライヴ音源。ジャケットが、以前にブルーノートからリリースされた一連の「ライヴ:クッキン・ウィズ・ブルーノート・アット・モントルー」のシリーズと全く同じデザイン。これじゃあ、CDリイシューだと思いますわね(笑)。

ロニー・フォスター、マリーナ・ショウ、ボビー・ハッチャーソン等の優れた内容の「モントルー・ライヴ盤」があって、なんだドナルド・バードのライヴもあったんか、と思っていたが、薄らとした記憶を辿って、それは違うなあ、とネットでググってみたら、なんと「新たな発掘音源」だった。まだ、こんな優れた内容のライヴ音源が眠っていたのか。

Donald Byrd『Live: Cookin’ With Blue Note At Montreux』(写真左)。1973年7月5日、スイスで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh, vo), Fonce Mizell (tp, vo), Allan Barnes (ts, fl), Nathan Davis (ts, ss), Kevin Toney (el-p), Larry Mizell (syn), Barney Perry (el-g), Henry Franklin (el-b), Keith Killgo (ds, vo), Ray Armando (congas, perc)。ライヴ録音されたマスター・テープはブルーノートの保管庫に眠っていたらしい。
 

Donald-byrdlive-cookin-with-blue-note-at

 
マイゼル・ブラザーズやネイサン・デイヴィスなど10人によるエレクトリックなバンド編成。あのバードのエレクトリック・ジャズの名盤『Black Byrd』の録音の翌年のモントルー・ジャズ・フェスでのライヴ音源。さすが、マイゼル・ブラザーズ擁するバードのエレ・バンド。エレクトリックな楽器が乱舞する、熱狂&強烈なジャズ・ファンクが展開されている。

エレ・ジャズ・ファンクの名曲「Black Byrd」は、スタジオ録音よりも熱気溢れる良い内容。未録音のバードのオリジナル曲「The East」「Kwame」「Poco-Mania」の収録は貴重だし、これまた良い内容。そして、最大の聴きものは、スティーヴィー・ワンダーの「You've Got It Bud Girl(悪い娘)」のカヴァー。これがまた素晴らしい出来。ジャズ・ファンクの名カヴァーである。

以前から我が国では人気はイマイチみたいだが、ドナルド・バードのエレ・ファンクは、マイルスのエレ・ファンクを判り易くポップにした様な内容で、ちょっと俗っぽく下世話なところがあるが、これはこれで十分に内容のあるエレ・ファンクだと思っている。

そのライヴ音源が、こうやって50年の時を経て耳にすることが出来た。ライヴ音源を聴いてみて、やっぱりバードのエレ・ファンクは良い、と再評価である。しかし、こんなライヴ音源を眠らせていたなんて。ブルーノート、もっともっと音源発掘に力を入れて欲しいなあ(笑)。
 
 

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2023年1月15日 (日曜日)

硬質で尖ったチックの鍵盤楽器

当ブログで「チックのフリーへの最接近」の一連の記事の中で、チックとブラックストンが結成した「Circle(サークル)」。チック率いるリズム・セクションの奏でる「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」と、ブラックストンのリード楽器が奏でる「完全フリーな演奏」の融合を図ったバンドだったが、その融合のチャレンジは想像する以上に無理があったと思われる、と語った。

では、チック率いるリズム・セクションの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」はどんな内容のものだったのか。それは2枚のチックのリーダー作に残されている。

Chick Corea『The Song of Singing』(写真左)。1970年4月7, 8日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, key), Dave Holland (b), Barry Altschul (ds)。パーソネルを見れば、このチック率いるトリオは、「Circle(サークル)」のリズム・セクションそのもの。

当初リリースは全6曲だったが、CDリイシューの度にボートラが追加され、1987年リイシュー時は全8曲。1989年リイシュー時は全9曲。ちなみにどのバージョンを聴いても、その内容に優劣は無い。どのバージョンのアルバムを入手しても、「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」は如何なるものだったかを感じ取る事が出来る。

今でもこの盤は「チックのフリー・ジャズ」として捉えられている向きがあるが、これはフリー・ジャズでは無い。
 

Chick-coreathe-song-of-singing

 
フリー・ジャズって、①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れる、いわゆる「フリー」になって演奏するジャズ演奏の事なんだが、このチック盤は①〜④まで、何れの要素の束縛からは逃れていない。

時々、フリーなインプロに走る瞬間もあるが、演奏の基本は「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」。この盤で聴けるフリーなインプロは、確実に現代音楽の要素を踏襲していて、いわゆる「フリー・ジャズ」な表現とは異なる。モードからフリーへ走る瞬間も、フリーからモードへ戻る瞬間も、きっちり「予定調和」していて、明らかに「調性音楽」な内容である。

といって、この盤の「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」はとても優れている。これだけ硬派で尖ったモーダルな演奏は当時見当たらない。特にチックのピアノは凄い。確実にこの頃のチックは「キレて」いる。プツンとキレて、硬質で尖った、それでいてハイテクニックで流れる様な、妖気溢れるモーダルなフレーズを弾きまくっている。

その妖気溢れるモーダルなフレーズは、ショーター作曲の名曲「Nefertiti」で最高潮に達する。もの凄い鬼気迫る弾き回し。それでいて「クールでヒップ」。そんなプツンとキレて、硬質で尖ったチックの鍵盤楽器が聴けるのは、この盤が最右翼だろう。

当時、マイルスがチックを重用し、チックの悪口は絶対に言わなかった事が何となく判った様な気がした『The Song of Singing』である。
 
 

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2023年1月14日 (土曜日)

ライヴ「不思議の国のミンガス」

チャールズ・ミンガスのリーダー作を聴き継いでいると、曲毎のテーマでのフロント楽器の奏でるフレーズを聴くと、すぐに「これはミンガスの音」だと判る。ミンガス・ミュージックの音の響きは独特の個性があって、これは、あの偉大なジャズ界のレジェンド、デューク・エリントンの音に通じるもの。

ミンガスはエリントンを一生敬愛していたと言い伝えれれる位、ミンガスはエリントン・ミュージックの信奉者で、ミンガス・ミュージックは、エリントン・ミュージックの継承とも言えるだろう。ミンガスは事あることに、エリントンに対する「畏怖」を表明し、エリントン・ミュージックを効果的に借用する。

Charles Mingus『Jazz Portraits: Mingus in Wonderland』(写真左)。1959年1月16日、NYの「Nonagon Art Gallery」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), John Handy (as), Booker Ervin (ts), Richard Wyands (p), Dannie Richmond (ds)。

ジョン・カサベテスの映画処女作「アメリカの影」のために書かれた曲(「Nostalgia in Times Square」と「Alice's Wonderland」)などをミンガス流にアレンジしてライヴ録音したもの。フロント2管+リズム・セクションのクインテット編成。わずか5人で演奏しているとは思えないほど、演奏される音は「分厚く迫力がある」。
 

Jazz-portraits-mingus-in-wonderland

 
フロント2管のユニゾン&ハーモニーに厚みがあって、リズム隊のピアノとドラムの低音が効果的に重なって、その底に「超重量級」のミンガスのブンブン・ベースが鳴り響いて、分厚い音圧の高い演奏が耳に飛び込んでくる。これが、ミンガス・ミュージックの真骨頂。ミンガスのアレンジの成せる技である。

ジョン・ハンディのアルト、ブッカー・アーヴィンのテナー2管が好調で、特に、ジョン・ハンディが絶好調。ミンガスはフロント管のメンバーのスカウトに長けているが、この二人も、ミンガス・ミュージックの「分厚い音圧の高い」音世界に大きく貢献している。このフロント2管が活き活きと吹き回している様が実に「ジャズしている」。

このライヴ・パフォーマンスは、バンド全体が適度なテンションの中、良い意味でリラックスして、演奏を楽しんでいる様子が良く判る。そんな良い雰囲気の中、ミンガス御大もリラックスした、伸び伸び自由なベースラインをブンブン、低音を鳴り響かせながら、弾きまくっている。ほんと、全編、楽しそうに演奏している。

このライヴ盤では「ミンガス流のジャングル・ミュージック」をしっかりと感じ取れる。アルバム全体の収録時間はちょっと短くて物足りなさは残るが内容は良い。
 
 

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2023年1月 5日 (木曜日)

素敵なエレ・ジャズ・ファンク

ジャズといっても、なにも1950年代から60年代にかけての「ハード・バップ」が全てでは無い。ハード・バップは現代モダン・ジャズの源と言っても良いが全てでは無い。ハード・バップから、モード、ファンキー、ソウル、フリー、スピリチュアル、そして、電気楽器を活用したクロスオーバー、フュージョンなど、様々なバリエーションのジャズが派生している。

ジャズの好盤と言っても、なにもジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の名盤紹介にタイトルが上がるアルバムだけが好盤では無い。確かに、ジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介に上がるジャズ盤は基本的に間違いが無い。

しかし、それらが全てでは無い。最近ではネットでのジャズ関連のブログやtwitterのツイートに上がるジャズ盤にも好盤、名盤の類がごまんとある。

ジャズに使用する楽器だって、なにもアコースティックな楽器だけが良い訳では無い。エレクトリックな楽器だって、良好なジャズは演奏出来る。以前は硬派なジャズ者の方々が「アコ楽器が全て、エレ楽器なんて認めない」なんて言いまくるもんだから、素直なジャズ者初心者の方々は、アコ楽器のみのジャズ盤を聴き漁る傾向にあるが、ジャズという音楽ジャンルは、楽器についても懐が深い。ジャズは基本的に楽器を選ばない。
 
Gene Harris『Nexus』(写真左)。1975年5月〜6月の録音。ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (key), Al Aarons (tp), George Bohanon (tb), Mike Altschul, Fred Jackson, Jr. (reeds), Lee Ritenour (g), John Rowin (g, el-b), Chuck Rainey (el-b), Kenneth Rice (ds), Ronaldo N. Jackson, Gerald Steinholtz (perc)。
 

Gene-harrisnexus

 
いわゆる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。エレピ、シンセ大活躍。ゴスペルを基本に、ソウル、ソフト&メロウ、コズミックな音要素がごった煮の、こってこてドープなエレ・ジャズ。ファンクネスだだ漏れ、それでいて俗っぽくなく、ちょっと品が良くてスマートでアーバン。

ゴスペルの要素が強く出て、パーカッションがファンクネスを掻き立て、コズミックな音要素が面白い「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。R&Bなコーラスが魂を揺さぶり、ソフト&メロウな音世界が心を和ませる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」。

1950年代から60年代前半は、ブルーノートのお抱えジャズ・トリオ「スリー・サウンズ」で、正統派ファンキー・ジャズなピアノで有名になったジーン・ハリス。1970年代は、様々なエレクトリック・キーボードを趣味良く駆使し、正統派なモダン・ジャズ・ピアノのリリカルな響きを覗かせつつ、フュージョン・ジャズの音要素と上手く同化しながらの「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」が見事。

確かに、この盤でのジーン・ハリスのキーボードの使い方は趣味が良く、センスがある。当時のキーボード使いの中でもトップレベルの使いこなし。これが我が国では殆ど注目されず、殆どスルーされていた訳だから、当時の我が国の「ハードバップ偏重、アコ楽器偏重」も度が過ぎていたんやなあ、と妙に感心する。

今の耳で聴けば、とても内容の濃い、上質の「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。これも素敵なジャズである。
 
 

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