2023年11月24日 (金曜日)

『Con Alma』を傾聴する。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)』と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がる。ただ、この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

レイ・ブライアントの活動期間は、リーダー作ベースで見ても、1955年から1999年と、約半世紀に渡る。そんなレジェンド級のジャズ・ピアニストの代表盤が、1956年リリースの『Ray Bryant Trio』(Prestige)と、1959年リリースの『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚だけというのは、ちょっとなあ、と思う。レイ・ブライアントのリーダー作を全部聴けば、もっとブライアントらしい代表盤があるんだが....。

Ray Bryant『Con Alma』(写真)。1960年11月25日と1961年1月26日の録音。大手Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Arthur Harper (b, tracks 2 & 4), Bill Lee (b, tracks 1, 3, 5 & 7–9), Mickey Roker (ds, tracks 1–5 & 7–9)。基本はピアノ・トリオ編成。ブライアントの自作曲「Cubano Chant」1曲だけ、ピアノ・ソロ。
 

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この盤は、全9曲中、スタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが7曲。ブライアントの自作曲も「Cubano Chant」はスタンダード志向のミュージシャンズ・チューンなので、この盤の全体の雰囲気は「ブライアントのスタンダード曲集」と解釈して良いだろう。スタンダード曲も選曲が良い。「Milestones」「Round Midnight」「Django」「Autumn Leaves」など、ブライアントが弾いたらどうなるか、と興味を強く引く選曲なので、聴いていて面白い。

ブライアントのピアノの個性である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」で、スタンダード曲を弾き進めると、そのブライアントのピアノの個性がより濃厚に伝わってくる。アレンジに、もひと工夫もふた工夫もしていて、それぞれのスタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが、明確にブライアント仕様になっている。

ブライアントのピアノは基本的に「ファンキー・ジャズなピアノ」。そんなブライアントの個性と特徴が、この「ブライアントのスタンダード曲集」で明確に理解できる。僕が思うに、この『Con Alma』も、レイ・ブライアントの代表盤である。
 
 

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2023年11月23日 (木曜日)

『Little Susie』を聴き直す。

レイ・ブライアントは、僕の大のお気に入りのピアニスト。オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴンゴーンと入れて、ベースラインに強烈なファンクネスとアーシーなビートを醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる弾き回し。そんな「ブライアント節」僕は大好き。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本やジャズ盤紹介記事では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がるが、これには僕は「疑問符」である。どうして、そうなるのか、理解に苦しむ。

この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、柄にもなく、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

Ray Bryant『Little Susie』(写真)。1959年12月10日と1960年1月19日の録音。大手のColumbiaレコードからのリリース。『Ray Bryant Plays』(Signature) から、僅か1ヶ月後の録音。ちなみに、パーソネルは、Ray Bryant (p) Tommy Bryant (b) Oliver Jackson (ds)。一ヶ月前の録音の『Ray Bryant Plays』と同じ面子での録音。
 

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『Ray Bryant Plays』(Signature) の録音から、たった1ヶ月後なのに、こちらの『Little Susie』は内容が濃い。収録曲すべてにおいて、ブライアントのピアノの個性が、特徴が乱舞している。恐らく、プロデュースの問題だろう。ブライアントのピアノの個性が最大限に発揮されていて、聴いていてとても楽しい。

特に、冒頭1曲目の表題曲「Little Susie」は、ブライアントの愛娘の為に作った曲なんだが、実に愛らしく躍動的なテーマをベースに、ブライアントのピアノの特徴である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」が心ゆくまで堪能できる。ブライアントのピアノの個性と特徴はこの1曲に集約されている、と言って良いほどの演奏。これ、本当に「良い」。

2曲目以降の演奏も、冒頭の「Little Susie」に勝るとも劣らない、ブライアントのピアノの特徴である、右手のアドリブの展開も特徴的で、オフビートを強調しつつ、右手の取り回しに含みと間を持たせつつ、一気にフレーズを弾き切るというドライブ感を増幅させる弾き方が「てんこ盛り」。

愛娘とのツーショットの写真も微笑ましいアルバム・ジャケットも良好で、このアルバムは、僕の大のお気に入り。アルバム全編に渡って、ブライアントのピアノの個性と特徴がしっかりと感じ取ることが出来る。僕が思うに、これぞ代表盤、である。
 
 

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2023年11月17日 (金曜日)

R・ブライアントの初リーダー作

ジャズ演奏の中では、ピアノの演奏が一番お気に入り。子供の頃、10年間ほどピアノを習っていたということもあって、ピアノについては聴くだけでは無く、弾く難しさも多少理解できるので、ジャズ・ピアノは他の楽器より、その内容が理解し易い。そういう点からも、ジャズ・ピアノが一番好きなんだろうな、と思う。

ジャズ・ピアニストについては、好きなピアニストは多々いるが、ジャズを聴き始めた50年ほど前から、レイ・ブライアントがお気に入りのピアニストの一人。で、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」を追い求めていたのだが、やっとその音源を確保することが出来たのが5年ほど前。今日は、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」のお話を。

Betty Carter And Ray Bryant『Meet Betty Carter And Ray Bryant』(写真)。1955年5月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Betty Carter (vo), Ray Bryant (p), Jerome Richardson (fl), Wendell Marshall (b), Philly Joe Jones (ds)。レイ・ブライアントのディスコグラフィーからすると、この盤が初リーダー作になるという。

この盤の構成が面白くて、ブライアントのトリオ演奏と、ベティ・カーターのボーカル入りのトリオ演奏と交互に入っている。ベティ・カーターも共同名義のアルバムなので、年齢からして、ベティ・カーター先攻で始まると思って構えていたら、ブライアントのトリオ演奏が冒頭に来るので、ちょっと拍子抜け(笑)。

しかし、この冒頭のトリオ演奏「Sneaking Around」はブライアント作の曲で、これがなかなか「イケる」。この冒頭の「Sneaking Around」から、3曲目「What Is This Thing Called Love?」のブライアント・トリオの演奏を聴いていると、レイ・ブライアントのピアノの演奏スタイルは、この初リーダー作時点で確立されていたことが判る。
 

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オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴーンと入れて、演奏のベースラインに強烈なファンクネスとアーシーな雰囲気を醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる。このアーシーでダウン・トゥ・アースなピアノの弾き回しが僕は大好き。そんな「ブライアント節」が、この初リーダー作のトリオ演奏に既にしっかりと存在している。

そして、ベティ・カーターについても、この盤が初リーダー作になるらしいが、そんな雰囲気は微塵もない。既にベテランの様な堂々とした唄いっぷり。ボーカルに張りとパンチがあって歯切れが良いところは「若さ」から来るのか、とも思うが、とにかく唄いっぷりは堂々としている。そんな堂々とした唄いっぷりを支えているのが、ブライアント・トリオの小粋なバッキング。

レイ・ブライアントは伴奏上手、という印象は以前から持っているが、この初リーダー作にして、その「伴奏上手」が炸裂しているとは思わなかった。確かに「伴奏上手」。カーターのボーカルを邪魔することなく、効果的にサポートし鼓舞する。カーターはとても唄いやすそうで、自然体で流れる様に唄い上げている。

最後に、この盤は当初。LPでのリリース時には、収録曲は全12曲。CDリイシューの際に、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDと、ボーナストラックを加えて、曲順もLP時代と全く変えてリイシューしているCDとある。

この盤を聴く時は、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDを聴いて欲しい。サブスクの場合は、冒頭の1曲目が「Sneaking Around」で始まり、12曲目が「Can't We Be Friends?」のもの。これ、ボートラが後ろにくっついている場合があるが、このボートラは無視して下さい(笑)。
 
 

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2020年5月31日 (日曜日)

1980年代半ばの和ジャズ好盤

1980年代はバブル景気の時代。我が国では1980年代半ばに差し掛かる頃から、バブル景気に乗って、ジャズはお洒落な音楽として捉えられる様になる。イージーリスニング・ジャズ風の毒にも薬にもならない、聴き心地の良さだけを追求した、流行を過ぎたフュージョン・ジャズが横行した。それでも、1980年半ばからの「純ジャズ復古」の動きに乗って、硬派な純ジャズが復活してきた。

大森明『Back to The Wood』(写真左)。1986年8月9日の録音。DENONレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Akira Ohmori (as), Ray Bryant (p), Yoshio Suzuki (b), Yoshiyuki Ohtsuka (ds)。ファンキー・ピアノの雄、レイ・ブライアントが参加しているのが目を引く。ベースに鈴木良雄、ドラムに大塚義之 といった、当時の和ジャズの中堅どころが座る。今回、改めての「聴き直し」である。

日本人アルト・サックス奏者である大森明が渡米生活を終えて帰国、1987年に録音したリーダー作第2弾。大森明は1949年生まれ。録音当時は37歳(今年で71歳になる)。ジャズマンとしてちょうど中堅に差し掛かる充実した年齢。バークリー音楽院に学び、在学中からソロイストとして活躍。卒業後8年間、ニューヨークにて活動。印象に残っているのは、ミンガスの晩年のリーダー作『Me Myself An Eye』と『Somethin’ Like A Bird』に参加している。
 
 
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この大森の『Back to The Wood』、ジャケットこそ、お洒落なイラスト・イメージの「バブリーな」ものだが、中身はしっかりとしたメインストリーム・ジャズである。大森のアルト・サックスは爽快でブリリアント。躍動感があって端正この上無い。疾走感もあるし、スイング感も申し分無い。このちょっと優等生的なアルト・サックスを、ファンキー・ジャズ・ピアノの雄、レイ・ブライアントは支え鼓舞し、ファンクネスを注入している。

大森のアルト・サックスとブライアントのピアノの組合せが見事。適度なファンクネスが加味されて、それまでの日本人の純ジャズにはあまり聴かれなかった、ファンキーなネオ・ハードバップ調のカルテット演奏になっている。とにかく、伴奏上手と言われたブライアントのバッキングが見事。大森の爽快でブリリアントなアルト・サックスの個性を損なうこと無く、いつになく爽快でブリリアントなバッキングに終始して、大森のアルト・サックスを効果的に引き立てている。

バブリーなお洒落なイラストに惑わされるなかれ。ファンキー・ピアノの雄、ブライアント+日本人中堅リズム隊のピアノ・トリオのバッキングも見事、大森のアルト・サックスは、純ジャズの王道を行く「爽快でブリリアント、躍動感があって端正」。意外とこの盤には、当時のメインストリーム・ジャズの「良いところ」がギュッと詰まっている。1980年代の和ジャズにおける「純ジャズ」の好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

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 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2019年2月13日 (水曜日)

「即興」の音楽の面白さの1つ

クラシックは「再生」の音楽だという。譜面があって、そこに音符が書かれていて、弾くスピードは指定され、フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類まで、克明に指定されている。ピアニストはその譜面を理解し、その譜面通りに弾こうとする。譜面通り弾くことこそが作曲者の意図するピアノ曲だ、ということ。譜面通り弾くことが基本。よって「再生」の音楽である。

ジャズは「即興」の音楽。譜面は基本的に無い。あってもテーマ部のアンサンブルの楽譜のみ。アドリブ部の譜面は基本的に無い。弾くスピード。フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類などはいずれも全く指定されていない。その曲をピアノで表現するイメージは、ピアニストの感性とテクニックに委ねられる。その曲を弾く、その時その時でイメージが変わる。よって「即興」の音楽である。

よって、ジャズの世界では「再生」というキーワードは基本的に無い。例えば、ジャズピアニストの数だけ、その曲を弾く、タッチやイメージ、解釈が存在するのだ。クラシック・ピアノの場合、その曲を弾くイメージは基本的にどのピアニストも同じ。同じイメージの中でピアニスト毎の解釈があって、微妙なニュアンスのレベルなんだが、しっかりと個性が発揮される。
 

Ray_bryant_1956

 
このところ、オスカー・ピーターソンのピアノ・トリオの聴き直しているのだが、その合間に別のピアニストのトリオを聴く。こんなに違うんだ、と改めてビックリする。今日、ピーターソンの合間に聴いたピアノ・トリオ盤が『Ray Bryant Trio(1956年)』(写真左)。パーソナルは、Ray Bryant (p), Wyatt Ruther (b), Kenny Clarke (ds, tracks 2, 4, 8 & 9), Osie Johnson (ds, tracks 3, 10 & 12), Jo Jones (ds, tracks 1, 5–7 & 11), Candido (perc, tracks 1 & 7) 。2トラックだけパーカッションが入るが、基本はピアノ・トリオ。

このトリオ盤は、レイ・ブライアントのピアノをとことん愛でる盤。ファンクネスがほど好く漂い、右手のタッチは明快でよく回る。左手は低音がゴーンと伸びる様に響いて、粘りがあってリズミカル。両手で奏でるユニゾン&ハーモニーはゴスペル風な哀愁を仄かに帯びた響きが漂う。特に彼の個性はラテン風の曲やブルース曲で発揮される。これがたまらない。

オスカー・ピーターソンとレイ・ブライアント。同じ曲を弾く二人のジャズ・ピアニスト。ピアノ・トリオとしての演奏の展開は同じハードバップで同じ曲を演奏しているのに、そのイメージ、弾くスピード。フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類など、全く異なる。それでも、ピアノ・トリオとしての演奏の展開は同じハードバップ。これがジャズの面白さの1つであり、即興音楽の面白さなのだ。

 
 

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2016年6月10日 (金曜日)

時代が生んだ「俗っぽい」盤

レイ・ブライアントは、僕のお気に入りの上位のピアニストである。力強いタッチと粘るゴスペル・フィーリング、力感溢れる左手、ファンキーに良く回る右手。逆に、繊細なバラード展開や歌伴もいける。とにかくファンキーでゴスペルチックなピアノは、聴いていて思わず身体が揺れ、独特の和音の手癖に惚れ惚れする。

とまあ、ここまでお気に入りのピアニストになると、どんなリーダー作でも聴き込んでしまうし、全く飽きることもない。つまりは、よっぽどの駄作で無い限り、全てが愛聴盤であり、全てが好盤である(笑)。マニアという者は「冷静さを欠く」訳で、でも、それはそれで良いではないか、とも思う今日この頃。

今日久し振りに聴いたブライアントのアルバムがこれ。Ray Bryant『Lonesome Traveler』(写真左)。1966年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Clark Terry (flh), Snooky Young (flh), Ray Bryant (p), Jimmy Rowser (b), Richard Davis (b), Freddie Waits (ds)。

トランペット2本にフロントにいて、バックにブライアントのピアノ・トリオが控える。不思議な編成なんだが、これがこれで、なかなかいけてる。とにかく思いっきりファンキーであり、思いっきりポップである。
 

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録音年は1966年。ジャズが大衆化して、軽音楽風に扱われることも多くなった時代。そんな環境下で、ブライアントは、黒人独特のゴスペル風のファンキーで格好良いメロディ・ラインを、思いっきりキャッチャーに聴かせてくれる。俗っぽいと言われてもしかたの無いくらい、あっけらかんと判り易くノリ易いアドリブ・ラインをこれでもかというくらいに繰り出していく。

ジャズにアーティスティックな側面を求める向きには「眉をひそめたくなるような」俗っぽいキャッチャーさなんだが、これが聴いていて心地良い。聴いていて思わず身体が揺れ、ついつい足でリズムを取ったりする。ゴスペルチックな独特の和音の手癖も、米国ルーツ音楽好きの僕には堪らない訳で、このアルバム、意外とお気に入りの一枚。

しかし、冷静になって考えてみると、このブライアントのアルバムの音って「俗っぽい」。アーティスティックなジャズとは対極の俗っぽいジャズ。硬派なジャズ者の方々からすると、思わず眉をひそめたくなるような「俗っぽさ」。でも、これが良い。この俗っぽさが良い。

思えば、ジャケットもちょっと変。夕陽の橙色に染まった列車に、不思議なオリエンタルな顔立ちの美女が一人。ん〜、これってジャズのジャケットではないよな〜。時は1966年。ジャズは大きな曲がり角に差し掛かっていた。そんな時代だからこそ、このゴスペルチックで俗っぽくてポップなジャズ盤が出来たんやな〜、なんて改めて感心する今日この頃。

 
 

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2015年8月11日 (火曜日)

ブライアントのソロ・ピアノ盤

少し暑さが和らいだ千葉県北西部地方。暑さが和らいでくれば、ジャズも聴き易くなる。聴き易くなってくると、聴きたくなるのが、得意ジャンルのジャズ・ピアノ。

もともと、子供の頃、8年ほどクラシック・ピアノを習っていたこともあって、ピアノは今でも少し弾ける。ジャズを聴きはじめて、やはり自ら弾ける楽器に親近感を覚える。ということで、ジャズを聴き始めて37年。37年間、ずっとジャズ・ピアノは僕の得意ジャンルである。

好きなピアニストは結構いるが、このレイ・ブライアントなどは僕の大のお気に入りのピアニスト。ブライアントが両掌を開いた印象的なジャケ写で有名な、ソロ・ピアノの大名盤『Alone At Montreux』に出会ってファンになって以来、ずっとお気に入りのピアニスト。

僕はこのブライアントのソロ・ピアノが好きで、良く唄うジャジーな右手にビートの効いた的確で重量級の左手、上品なファンクネス濃厚、ジャジーなスイング感良好なフレーズは、一度填まったら、その魅力から逃れることは出来無い。ジャズの良いところがてんこ盛りのソロ・ピアノ。

そんなブライアントのソロ・ピアノ盤で、僕が愛して止まない盤がもう一枚ある。そのアルバムとは、Ray Bryant『Alone With The Blues』(写真左)。1958年12月の録音。もちろん、パーソネルはピアノのレイ・ブライアントただ一人。
 

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ブルースを弾くというコンセプトが明瞭なこのアルバム、ブルージーでファンキーなピアノを弾くブライアントの個性を十分に感じ取ることができる好盤である。右手でブルースの旋律を唄い、左手でブルースのリズム&ビートを的確に雄弁に叩き出す。上品なメリハリを効かせたビハインド・ザ・ビート。

悪名高きプレスティッジ/ニュージャズからのリリースなので、アルバム・ジャケットのデザインはイマイチ。それでもコーティングの効いたブルー一色のブライアントのポートレイトは、このアルバムに詰まっているピアノの音のイメージを的確に伝えている。

エバンスやピーターソンの様に、大向こうを張る様な目を見張るようなテクニックや仰々しいまでのフレーズの展開はありませんが、印象的な左手、黒くてファンクネス溢れる右手のフレーズは、いぶし銀の様な滋味溢れる、「小粋」で小気味良い雰囲気満載です。ドラムとベースが不在でも十分にスイングしているところが凄い。

良いジャズ・ピアノ、良いソロ・ピアノです。派手派手の『Alone At Montreux』も大好き、でも、このいぶし銀の様な滋味溢れる『Alone With The Blues』も大好き。この2枚で、まずはレイ・ブライアントのピアニストとしての個性の主な部分を十分に感じ取ることが出来ます。お勧めの「隠れ名盤」です。

 
 

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2013年1月 8日 (火曜日)

レイ・ブライアントとの出会い

レイ・ブライアント(Ray Bryant)は、僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの一人なんだが、レイ・ブライアントとの最初の出会いって、どのアルバムなんだろうと想い出を手繰ってみた。

僕が大学に入ってジャズを聴き始めたのが1978年。大学の近くの「隠れ家のような優雅な喫茶店」の存在に気が付いて、その喫茶店に通い出したのが、1979年、大学2回生の夏である。その「隠れ家の様な優雅な喫茶店」で、僕はレイ・ブライアントに出会った。

出会いのアルバムは、Ray Bryant『Alone at Montreux』(写真)である。このアルバムが、この「隠れ家の様な優雅な喫茶店」でかかっていたのが、1979年の秋、晩秋の頃であったと記憶する。

喫茶店に足を踏み入れて、直ぐにこのアルバムがかかった。冒頭の「Gotta Travel On」のソロ・ピアノに仰け反った。凄い迫力。ゴスペル・フィーリングを踏まえたファンキーでソウルフルなフレーズ。ノリノリのインプロビゼーション。合いの手の様に叩き付ける左手の重低音。30秒も聴けば直ぐ判る、ピアノ・テクニックの確かさ。

続く「Blues #3 - Willow Weep For Me」で、もう僕はメロメロである。こんなファンクネス漂う、ゴスペルチックな「Willow Weep For Me(柳よ泣いておくれ)」を聴いたことが無い。オフビートを強調した左手の低音に思わず唸る。凄いピアノ・ソロだ。思わず、カウンターに駆け寄り、このアルバムのジャケットを確認させて貰った。この「隠れ家の様な優雅な喫茶店」の妙齢のママさんと初めて声を交わした瞬間でもあった(笑)。
 

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改めて、このRay Bryant『Alone at Montreux』は、1972年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのピアノソロ・ライブの音源である。実は、当初、ブライアントはモントルー・ジャズ・フェスティバルで演奏の予定は無かったそうだ。当初の予定はオスカー・ピーターソン。そのピーターソンが急遽、出演不可となり、主催者サイドが慌ててその代役を探していたところ、その代役の「白羽の矢」が立ったのが、レイ・ブライアントだったらしい。

当然、ブライアントは気合いが入る。ピーターソンの代役、役に不足は無い。やってやろうじゃないか。そんな気合いを胸に冒頭の「Gotta Travel On」を弾き始める。なるほど、そういう出演背景があったので、この「Gotta Travel On」の演奏の迫力とテンションが並大抵では無い訳だ。とにかく凄い迫力とテンション、そしてタッチ。前のめりというか、もう前ががりで「ひっくり返りそう」な程の強くてポジティブなノリ。

そのノリにのって、どんどんブライアントは、ソロ・ピアノを弾き進めていく。ソロ・プレーヤーが演奏しているとは感じられない程の、手数の多い音の洪水。決して喧しくない音符の連鎖。それに応える様に、曲が進むにつれ、聴衆もどんどん盛り上がる。ブライアントのノリと聴衆の盛り上がりが手に取るように判る、秀逸なライブ盤である。

ソロ・ピアノのライブ音源なので、心ゆくまで、レイ・ブライアントのピアノの個性を堪能することが出来る。ゴスペルチックなブルース・フィーリング溢れる、レイ・ブライアントの代表盤であり、ピアノ・ソロの名盤である。ジャズ者であれば一度は聴いて頂きたい。

ちなみに、このアルバムを仲の良いジャズ喫茶でリクエストする時は、ジャケット写真のブライアントの様に、両手の手のひらを無言で突きだせば、リクエストOK(笑)。「隠れ家の様な優雅な喫茶店」の妙齢のママさんに、幾度と無くやりましたねえ(笑)。

 
 

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2013年1月 6日 (日曜日)

オーディオ的なリファレンス盤

レイ・ブライアント(Ray Bryant)。僕の大好きなジャズ・ピアニストのひとりである。1931年、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。惜しくも、2011年6月に逝去した。逝去して暫くは、ブライアントが他界したショックで、ブログなどでブライアントの事を語ることが出来なかった。

逝去して1年半が経過し、やっとブライアントが他界したショックも癒えた。そんな時、自分自身もちょっと命が危ない状態があって、その状態を癒すプロセスで、やはり好きな音楽を聴くことは絶対に必要で、そんな時は、やはり、ジャズ・ピアニストとしては、レイ・ブライアントを選択したりするのだ。

最近、バーチャル音楽喫茶『松和』のオーディオ環境をちょっと改善した。改善した効果を確認するのに、リファレンスとなるCDがある。やはり、自分自身、アコピを弾いていた経験があるので、オーディオ的なリファレンスCDは、ジャズの場合、ピアノ・トリオのアルバムが主になる。

そんなジャズ・ピアノ・トリオのオーディオ的リファレンス盤の一枚に、レイ・ブライアント(Ray Bryant)の『Plays Basie & Ellington』(写真左)がある。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Rufus Reid (b), Freddie Waits (ds)。1987年のリリース。 ジャズの老舗レーベルのひとつである、エマーシー・レーベルが復活した時の第1弾として、当時、レイ・ブライアントの7年ぶりのトリオ演奏となったアルバム。
 

Ray_bryant_baisie_ellington

 
ブライアントのピアノは、高度なテクニックに裏打ちされた、良く回る右手が特徴のハッピー・スインガーではあるが、重低音を活かした左手のビートが限りなくファンキー&ブルージーで、メリハリが効いたノリの良い明るいタッチの中にそこはかとなく漂う哀愁が特徴。ポジティブなタッチと大らかで懐深い幅広な展開が心地良く、とにかく聴き応えがある。

そんなブライアントが、デューク・エリントンとカウント・ベイシーの曲を中心に据えて制作したピアノ・トリオ盤が、この『Plays Basie & Ellington』。ポジティブなタッチと大らかで懐深い幅広な展開が、デュークやベイシーの楽曲のフレーズにピッタリである。ピアノ・トリオとしての演奏と、ブライアントのソロ・ピアノの両方が楽しめるところも、この盤の「おいしい」ところ。

職人肌のリードのベースとウエイツのドラムのサポートも申し分無い。ピアノ・トリオにおけるベースとドラムのバッキングは「かくあるべし」的な演奏で、堅実かつダイナミックなベースとドラムのサポートを得て、ブライアントが実に心地良くピアノのフレーズを紡ぎ上げている様子がアルバムの演奏を通じて良く判る。

加えて、ピアノの音、ベースの音、ドラムの音、どれをとっても実に良い響きをしており、この盤の録音の良さを堪能することが出来る。とにかく親しみのある内容のピアノ・トリオ盤で、ジャズ者初心者からベテランまで、幅広くお勧め出来る。肩肘張らずにリラックスして気軽に楽しめる好盤である。

 
 

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2011年6月10日 (金曜日)

ブライアント・僕のお気に入り

今週は「レイ・ブライアント追悼」週間だった。今日はその最終日。昨日までは、ブライアントの「常識的な優秀盤」を中心に、ブライアントのピアノを堪能できる基本的なラインナップをご紹介した。

改めて思うんだが、ブライアントの正式リーダー作には「駄盤」が無い。一定水準以上のアルバムばかりである。ブライアントのピアノは、基本的に奏法や理論を追求した「テクニック追求派」では無く、演奏を趣味として、娯楽として「聴かせる派」なので、基本的に「外れ盤」が無い。

そんな中でも、僕が既に30年以上に渡って聴き込んでいる、レイ・ブライアントのピアノ・トリオ盤の中から、とっておきの2枚をご紹介しておきたい。

まずは『Little Susie』(写真左)。1959年12月の録音。昨日、ご紹介した『Ray Bryant Plays』から、僅か1ヶ月後の録音。ちなみに、パーソネルは、Ray Bryant (p) Tommy Bryant (b) Oliver Jackson (ds)。当然、『Ray Bryant Plays』と同じ面子。

たった1ヶ月後の録音なのに、こちらの『Little Susie』は内容が濃い。収録曲すべてにおいて、ブライアントのピアノが乱舞している。恐らく、プロデュースの問題だろう。ブライアントのピアノの個性が最大限に発揮されていて、とても楽しい。

冒頭の表題曲「Little Susie」は、ブライアントの愛娘の為に作った曲。実に愛らしく躍動的なテーマをベースに、ブライアントのピアノの特徴である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」が心ゆくまで堪能できる。

2曲目以降の演奏も、冒頭の「Little Susie」に勝るとも劣らない、ブライアントのピアノの特徴である、右手のアドリブの展開も特徴的で、オフビートを強調しつつ、右手の取り回しに含みと間を持たせつつ、一気にフレーズを弾き切るというドライブ感を増幅させる弾き方が「てんこ盛り」。愛娘とのツーショットの写真も微笑ましいアルバム・ジャケットも良好で、このアルバムは、僕の大のお気に入り。
 

Ray_susie_heres

 
もう一枚は、1976年1月の録音になる。『Here's Ray Bryant』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p) George Duvivier (b) Grady Tate (ds)。アルバム・ジャケットは、ちょっと殺風景だが、中身は素晴らしい。

ブライアントのリーダー作を見渡すと、特にトリオ作の場合、ベーシストとドラマーが第一線の名の通った一流どころでは無く、ほとんど無名に近いベーシストとドラマーをチョイスしていたことを不思議に思う。まあ、ブライアントのピアノ・トリオ盤の場合、ほとんど、ブライアントのピアノの独壇場になるので、まあ、ええっちゃあええんやけど・・・。

しかし、この『Here's Ray Bryant』は、ベースはジョージ・デュビビエ、ドラムはグラディ・テイトと、一流どころの人選で、しかも実に渋いチョイス。正直、この『Here's Ray Bryant』は、この一流どころのリズム・セクションのお陰で、実に締まった内容の、実に奥行きのある、上質のピアノ・トリオ盤に仕上がっている。

冒頭の「Girl Talk」は、ブライアントのピアノが前のめり過ぎて、かなりのオーバードライブな演奏になっているので、この曲の演奏だけ聴くと「残りの曲は大丈夫なのか」と不安になる方もいらっしゃるでしょうが、心配いりません。2曲目の「Good Morning Heartache」でしっかり落ち着きます。残りのハイテンポの曲も大丈夫。品の良いファンキー・ピアノで、それはそれは絶品です。

この『Here's Ray Bryant』は1976年の録音。パブロ・レーベルからのリリースで、僕がジャズ者初心者の頃、手に入り易いアルバムだったので、これは良く聴きました。スタンダード曲中心なんだけど、その選曲がなかなか粋で、ちょっと地味な曲もあるが、ファンキーでメリハリが効いたブライアントのダイナミックなピアノとがちょうど良い塩梅になって「良い感じ」。

ブライアントのピアノ・トリオ盤を聴き直して、彼のピアニストとしての個性は、実にユニークなものだった、と改めて思った。アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手。惜しいピアニストを亡くした。
 
 
 
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