ラスト盤の『Out of the Loop』
ブレッカー兄弟が立ち上げ、エレ・ジャズ・ファンクの代表的バンドとして、一世を風靡した「ブレッカー・ブラザーズ」。1994年にて活動を停止、2007年には、弟のマイケルが骨髄異形性症候群から進行した白血病によって逝去。このマイケルの逝去によって、「ブレッカー・ブラザーズ」は永久に活動停止となった。
The Brecker Brothers『Out of the Loop』(写真左)。1992年4月〜8月の録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (sax,,EWI), Randy Brecker (tp, Flh), George Whitty (key), Dean Brown (g), James Genus (b), Steve Jordan (ds), Steve Thornton (perc) 辺りが主要メンバー。ここに、Chris Botti (key), Eliane Elias (key, vo), Larry Saltzman (g), Armand Sabal-Lecco (b), Shawn Pelton (ds), and more が、ゲストとして入っている。
ブレッカー・ブラザーズの実質上の最後のアルバムになる。1982年に一旦、活動を停止し、ソロ活動を展開。しかし、1990年初頭に活動を再開、1992年に『Return of the Brecker Brothers』をリリース。そして、次いでリリースしたのが、この『Out of the Loop』になる。
活動再開後のブレッカー・ブラザーズの音志向は「硬派な大人のファンキー・フュージョン」。この『Out of the Loop』では、前作のファンキー・フュージョンな雰囲気から、メインストリーム・ジャズ志向が強くなって、ファンキー・フュージョンというより、ライトでポップ、クロスオーバー志向の「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」に深化している。
聴いていて面白いのは、ランディのトランペットが入ってくると、思わず、1980年代の、マイルスのカムバック後の「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」を想起させる雰囲気にガラッと変わるところ。そこにマイケルのサックスが入ると、さらに、マイルスのカムバック後の「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」な雰囲気がより濃厚になる。
と言っても、マイルスのカムバック後の「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」は、硬派で純ジャズなエレ・ファンクなんだが、ブレッカー・ブラザーズの方は、1990年代仕様の、ライトでポップ、大衆的でクロスオーバー志向のエレ・ファンク。と言って、単純にフュージョン・ジャズでは括れない、コンテンポラリーで、メインストリーム志向のアレンジが実に硬派で正統派。
このアルバムは、最優秀コンテンポラリー・ジャズ・パフォーマンスと最優秀インストゥルメンタル作曲(African Skies)の2つのグラミー賞を獲得しているのも頷ける、洗練されたアーバンでポップな「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」志向の内容。1970年代のブレッカー・ブラザーズの発展形。
ブレッカー兄弟って、マイルスが好きだったんやないのかなあ、とこのアルバムを聴いていて、ふと思った。マイルスの逝去が1991年9月28日。この『Out of the Loop』の録音が1992年4月〜8月の録音。ブレッカー兄弟として、マイルスライクな「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」がやりたかったんやないかなあ。と僕は想像しています。
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