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2016年7月13日 (水曜日)

Brad Mehldau Trio の新作

ブラッド・メルドーは現代のジャズ・ピアニストのお気に入りの一人である。リーダー作デビューの頃からずっと聴き続けている。
 
もはや完全にジャズ・ピアノのスタイリストの一人だと思うんだが、ジャズ者ベテランの方々からはなぜか「受けが悪い」。意外と「ミュージシャンズ・ミュージシャン」なところがあって、プロのジャズメンにメルドーのフォロワーが多く存在する。

さて、今回リリースされたメルドーの最新作が、Brad Mehldau『Blues and Ballads』(写真左)。2012年のリリース『Ode』『Where Do You Start』以来久々、約4年ぶりのトリオ作になる。ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。録音日は、2012年12月と2014年5月に別れる。

録音日に2年の隔たりがあるとはいえ、このアルバムに収録された Brad Mehldau Trio の音は全く変わりが無い。それぞれの曲に Brad Mehldau Trio の個性が散りばめられていて、意外と聴き心地の良いアルバムに仕上がっている。

恐らく、アルバムの制作サイドからしても、2回の録音音源をアルバムに仕上げてみたら、意外と良い雰囲気、トリオの個性通りの音世界が表現出来たので、思い切ってリリースに踏み切った様な感じである。特別、何かにチャレンジした、とか、何かのトリビュートだとか、の特別な制作テーマは今回は無い。
 

Brad_mehldau_blues_and_ballads

 
逆にかえって、それが良い結果に繋がっているのではないだろうか。決してテクニックに走ること無く、何か特別な制作テーマに拘ることも無く、難しいことを考えずに、普通に心のおもむくままに演奏した、そんな感じのシンプルで優しい展開の演奏が詰まっています。

前作の4枚組ソロアルバムが、強烈なインパクトを与えた代物なので、どうも今回のトリオ盤は分が悪いみたい。しかも、ブルース&バラード集なので、エモーショナルな側面が欠けているとか、革新性に乏しいとか、俗っぽいとか、厳しい評価も多く聞かれるのが残念。

このトリオ盤、聴いてみたら判るんだが、Brad Mehldau Trio の音の個性がしっかりと押さえられていて、最近のトリオ盤の中でも「メルドー・トリオ入門盤」として、ジャズ者初心者の方々にお勧め出来る内容だと僕は思います。まずは自らの耳で聴いてみることをお勧めします。意外と良い感じですよ。

さあ、ブラッド・メルドーは次作はどこに行くのだろう。今回のトリオ盤は「踊り場で休憩」の様な穏やかな盤。ミュージシャンズ・ミュージシャン」なブラッド・メルドー。まだまだ目が(耳が)離せませんね。

 
 

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2013年8月30日 (金曜日)

メルドーを感じるに最適な盤

今日、ジャズCDのデータベースを最新にした。このところ、精神的に余裕が無かったので、データベースの更新が滞ってしまった。今日は約5時間を使って、やっとのことで、ジャズCDのデータベースが最新になった。満足満足。

ジャズのデータベースを更新していて、つくづく思ったのだが、ジャズのスタイル、トレンドの変遷って面白い。それぞれの時代時代によって、ジャズの演奏のスタイルには流行り廃りが確実にある。

ここ5年来のジャズ・ピアノのトレンドは、確実に、この人のスタイルが中心になっているように思える。この人とは「Brad Mehldau」。1970年8月生まれ。今年で43歳。ジャズ界での中核をなすピアニストの一人である。この人のピアノは、確実に今のジャズ・ピアノのトレンドを担っていると思う。

この人のピアノは、意外と評論家には受けが悪い。ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。この「ショーケース的なところ」が「あかん」のやろなあ。でも、ジャズが出現して、最早100年が経とうとしているこの時代、たった一つの個性で勝負できるほど、ジャズの世界は甘くないし、個性のネタは尽きている。

まあ、評論家っていうのは、自分でピアノを弾く訳では無いので、結構、勝手で適当なことを言うのは仕方が無い。少しでもピアノが弾ければ、個性を発揮する為のテクニックがどれだけ必要なのかが良く判って、ジャズ・ピアニストは、確実にリスペクトの対象になる。そういう意味で、ジャズを評論するには、やはり少しでも楽器が弾けた方が良いし、少なくとも、ミュージシャンに対して、リスペクトの念は欠かさないことが大切なんだろう。
 

Ode

 
しかし、そんな評論家受けのちょっと悪いことなど、お構い無しに、現在の若手〜中堅どころのジャズ・ピアノは、彼のスタイルに追従し、彼のスタイルに端を発したバリエーションの展開が主流だと感じている。ブラッド・メルドーは、言わば、ミュージシャンズ・ミュージシャンなんだ、と僕は感じている。

ブラッド・メルドーの非凡なところは、その「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」が単なる物真似になっていないところ。そして、個性のごった煮的雰囲気なんだが、演奏のトーンがバラバラにならずに「一貫性」を保っている。「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」を自らのものにして、自らの個性を反映し、一貫性を保った、独特の弾き回しになっている。

そんなメルドーの現時点での最近作の一枚が『Ode』(写真左)。このリーダー作は、メルドーの個性を感じるのに最適なアルバムだと思っている。トリオの最近作とは言っても、収録された全11曲中8曲は2008年、3曲は2011年と録音時期に幅があり、この7年間におけるトリオ活動の集大成の様な内容になっている。

ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。鉄壁のピアノ・トリオである。非常に柔軟度の高い、それでいて、リズム&ビートは、メインストリーム・ジャズのど真ん中を行く、明らかに正統なもの。奇をてらったところは全く無い。この正攻法なインプロビゼーションが、このトリオの素晴らしいところ。

今までも、これからも、ブラッド・メルドーのピアノからは目が離せない、というか、耳が離せない。確実に現代ジャズ・ピアノのトレンドを形成し、錬成していく様を確認することは、ジャズ者にとって、新しいアルバムがリリースされる毎の楽しみである。 

 
 

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2013年4月24日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・33

ブラッド・メルドーは非常に面白い個性をしている。ジャズの歴史の中で、現在までの優秀な「スタイリスト」と呼ばれる、自らの個性を確立したジャズ・ピアニストの個性を集約した様な「個性」をしている。

ある部分はビ・バップであり、ある部分はモードであり、ある部分はフリー。そして、ある部分はセロニアス・モンクであり、ある部分はビル・エバンスであり、ある部分はキース・ジャレットであり、ある部分はチック・コリアだったりする。マッコイ・タイナーの「シーツ・オブ・サウンド」的な奏法も披露するし、レニー・トリスターノの様な「クール奏法」もちらりと顔を出す。

つまり、ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。しかし、ブラッド・メルドーの非凡なところは、その「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」が単なる物真似になっていないところ。そして、個性のごった煮的雰囲気なんだが、演奏のトーンがバラバラにならずに「一貫性」を保っている。

ブラッド・メルドーのピアノは、「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」を自らのものにして、自らの個性を反映し、一貫性を保った、独特の弾き回しになっているのだ。これが素晴らしい。

僕のジャズ・ピアノの基準のひとり、ブラッド・メルドー。彼が率いるトリオ「Art Of The Trio」が素晴らしい。パーソネルは、Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jorge Rossy (ds)。このトリオが素晴らしい。

その「Art Of The Trio」は、シリーズで、Vol.5までのアルバムを立て続けにリリースした時代があった。そのシリーズでリリースされた、Vol.5までのアルバムがこれまた素晴らしい。
 

Art_of_the_trio_vol4

 
そのシリーズでリリースされた盤、どれもが素晴らしい出来だが、僕はこの4枚目の、Brad Mehldau『Art Of The Trio, Vol. 4: Back At The Vanguard』(写真左)が一番、ブラッド・メルドーのピアノを愛でるに相応しい、「Art Of The Trio」としての最高の出来を示した逸品だと思う。1999年1月5〜10日、NYはヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。

メルドーのピアノはストイックで堅実。理知的な響きでペダルも適度。キース・ジャレットの様に、ペダル豊かにロマンチシズムに流れることは無い。ユニゾン&ハーモニーにはモンク的な不協和音的な響きが混在する。これはキースには無い。一時、メルドーはキースのフォロワーであり後継者である、なんていう、とんでもない勘違い的な評論がもてはやされた時期があったがとんでも無い。メルドーのピアノとキースのピアノは非なるもの、である。

右手と左手、別々の旋律を弾くという離れ業も十二分に聴かせてくれる。やはり、スタンダードが良い。スタンダードを聴くと、メルドーの個性が浮かび上がってくる。他のピアニストに無い、複合的な個性。テクニックも非常に優秀。破綻の非常に少ないところは天下一品。

冒頭の「All the Things That You Are」にメルドーの独特の個性をふんだんに聴くことが出来る。4曲目の「Solar」はマイルスの名曲。6曲目の「I'll Be Seeing You」の出来も良好。ラストの「Exit Music (For A Film)」はRadioheadの作。いわゆるニュー・スタンダードである。メルドーの先取性は素晴らしい。やはり、個性を確認するにはスタンダードやなあ。

弾きまくるメルドー。バッキングに回ったベースとドラムも素晴らしい出来。ジャズ・ピアノのダイナミズムをも同時に体験出来る。メルドー初期の傑作ライブ盤である。ヴィレッジ・ヴァンガードらしいデッドな音もグッド。でも、ジャケット・イマイチで、ちょっと損をしている。でも、内容は素晴らしい。メルドーのピアノを聴き込みたい時のヘビロテ盤。

Brad Mehldau『Art Of The Trio, Vol. 4: Back At The Vanguard』を謹んで、ピアノ・トリオの代表的名盤にノミネートしたい。

 
 

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2012年10月 2日 (火曜日)

ブラッド・メルドーの攻略法・3

このアルバムは、ブラッド・メルドーの代表作の一枚だと思う。1998年5月27・28日ニューヨーク・ライトトラック・スタジオにて録音。タイトルは『The Art Of The Trio, Vol. 3』(写真左)。

このアルバム全体を覆う雰囲気は「マイナーな哀愁」。ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。しかし、このアルバムは、その「ショーケース的なところ」を広く「マイナーな哀愁」でラッピングしている。

このアルバムを聴いて、全面に押し出されている雰囲気は「マイナーな哀愁」。徹頭徹尾、冒頭の「Song-Song」から、ラストの「Sehnsucht」まで、どっぷりと「マイナーな哀愁」。マイナーに暮れなずむ「夕暮れ時のダークな雰囲気」。哀愁感を増幅させるエコー・ペダル。哀愁感を際立たせるマイナーコードの羅列。

このアルバムを覆う「マイナーな哀愁」は、決して、ファンキーなマイナーさでは無い。アフリカン・アメリカンのネイティブな響き、ファンクネス漂うマイナー調とは全く異なる。クリスタルで色づけの無い、ヨーロピアンなマイナー調。クラシックを感じさせる、ジプシーなどの大道芸的な「哀愁感だけが漂う」マイナー調。

 

The_art_of_trio_vol3

  

ブラッド・メルドーは、1970年8月23日フロリダ州マイアミで生まれる、とある。それでも、彼のピアノの音は「欧州」そのもの。決して、アメリカン・ジャズの代表的雰囲気である、アフリカン・アメリカンな響きは実に希薄。そういう雰囲気は、以前のジャズ、そうキース・ジャレットの響きに似ている。

しかし、キースは時に、ゴスペルチックでアーシーなアフリカン・アメリカンな旋律に音を染める。しかし、メルドーには、アフリカン・アメリカンな旋律に音を染めることは決して無い。といって、耽美的でリリカルが全面に押し出た「欧州的」な旋律とはちょっと異なる響き。つまりは、ブラッド・メルドーのピアノって、決して「隅に置けない」ということ。

聴けば聴くほど、このアルバムを覆う「マイナーな哀愁」が、単純な「哀愁感」では無いことが判ってくる。聴く度に角度を変えるように、ニュアンスを変える、ブラッド・メルドーの「マイナーな哀愁」。聴き応え十分。

ブラッド・メルドーの「トリオの芸術」。アルバム全体で醸し出すアーティスティックな雰囲気は、メルドー独特な個性。「ショーケース的なところ」を広く覆い尽くしながら、全面に押し出された「マイナーな哀愁」。ブラッド・メルドーのピアノの個性の最初の到達点である。見事なピアノ・トリオなアルバムである。

 
 

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2012年10月 1日 (月曜日)

ブラッド・メルドーの攻略法・2

そのジャズ・ピアニストの個性を感じるには、当然、ジャズは即興なんだから、ライブが良い。加えて、他のピアニストと比較するには、スタンダードを題材とした演奏が良い。

Brad Mehldau『The Art of the Trio, Vol. 2 - Live At the Village Vanguard』(写真左)。ブラッド・メルドーの個性を感じるにピッタリのアルバムである。
 
このライブ盤は、1997年7月と8月の録音。ニューヨークは、ライブハウスの老舗、ビレッジ・バンガードでのライブ録音になる。ちなみにパーソネルは、 Brad Mehldau (p), Larry Grendier (b), Jorge Rossy (ds)。鉄壁のトリオである。

収録された曲は、メルドーの自作曲は一曲も無い。コール・ポーター、セロニアス・モンクといったジャズ・スタンダード名曲がズラリと並ぶ。この多くのジャズ・ピアニストが挑戦してきたジャズ・スタンダードの名曲をメルドーがどう弾きこなすか、という一点にこのアルバムの興味は集約される。

ブラッド・メルドーは非常に面白い個性をしている。ジャズの歴史の中で、現在までの優秀な「スタイリスト」と呼ばれる、自らの個性を確立したジャズ・ピアニストの個性を集約した様な「個性」をしている。

ある部分はビ・バップであり、ある部分はモードであり、ある部分はフリー。そして、ある部分はセロニアス・モンクであり、ある部分はビル・エバンスであり、ある部分はキース・ジャレットであり、ある部分はチック・コリアだったりする。マッコイ・タイナーの「シーツ・オブ・サウンド」的な奏法も披露するし、レニー・トリスターノの様な「クール奏法」もちらりと顔を出す。
 

The_art_of_the_trio_vol2

 
つまり、ブラッド・メルドーのピアノの個性は、それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性のショーケース的なところ。
 
しかし、ブラッド・メルドーの非凡なところは、その「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」が単なる物真似になっていないところ。そして、個性のごった煮的雰囲気なんだが、演奏のトーンがバラバラにならずに「一貫性」を保っている。

ブラッド・メルドーのピアノは、「それまでのジャズ・ピアノのスタイリスト達の個性」を自らのものにして、自らの個性を反映し、一貫性を保った、独特の弾き回しになっているのだ。これが素晴らしい。
 
だからこそ、ブラッド・メルドーは、他の現代のジャズ・ピアニストから注目され、目標にされる。所謂「ミュージシャンズ・ミュージシャン」である所以である。

ピアノ・トリオとしての展開は、ピアノ、ドラム、ベースとそれぞれが独立性を保った自由度の高いインプロビゼーション中心の展開。アプローチの基本は、キース・ジャレットのスタンダーズや、スコット・ラファロとのビル・エバンス・トリオと同じ、というか、スタンダーズやビル・エバンス3に比べて、インプロビゼーションの自由度の高い展開が「クール」。さすが、現代を代表するピアノ・トリオの一つである。

ブラッド・メルドーのピアノの個性を確認するに最適な一枚だと思います。ビレッジ・バンガードのライブの雰囲気も良く、聴いていて、なかなかに心地良さを感じることが出来ます。良いライブ盤です。

 
 

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2011年10月10日 (月曜日)

ブラッド・メルドーの攻略法・1

ジャズ・ピアノについては、既に40年以上、聴き続けている。初めて、聴いたジャズ・ピアニストはビル・エバンス。クラシック・ピアノの延長線上で、ジャズ・ピアノを教えて貰っていた時の「教材」のレコードであった。

それ以来、40年以上、ジャズ・ピアノを聴いているが、僕のジャズ・ピアノ鑑賞の「幹の部分」、つまりはジャズ・ピアノの基準の部分を占めるアーティストは、歴史的に順を追って挙げると、オスカー・ピーターソン、ビル・エバンス、チック・コリア、ミシェル・ペトルチアーニ、そして、ブラッド・メルドーである。

この5人のピアニストが僕の基準である、この基準の周りに、時代時代のトレンド、スタイルを彩る、お気に入りのジャズ・ピアニストが多々いる。しかし、「松和のマスタ−、ジャズ・ピアノとは」と問われれば、僕は、この基準となる5人のジャズ・ピアニストを挙げる。

21世紀を迎えた、僕の今のジャズ・ピアノの基準は、チック・コリアとブラッド・メルドー。キーボーティストという総合的な面を含めて、チック・コリアは未だに重要だと思うし、アコ・ピアノ専門の伝統的なジャズ・ピアノという面では、ブラッド・メルドーは絶対に無視できない。というか、伝統的なジャズ・ピアノという点では、ブラッド・メルドーは現時点での「基準」をなす、ジャズ・ピアニストだろう。

といって、いきなりブラッド・メルドーに飛びついて、その良さに心酔して、ジャズ・ピアノが理解出来た、と思うのは早計である。ブラッド・メルドーのピアノは、歴史的に著名なスタイリストの要素を多角的に取り入れつつ、自らの個性を添付しているスタイルなので、ブラッド・メルドーを理解するには、ジャズ・ピアノの歴史を理解する必要がある。
 
Brad_mehldau_art_of_the_trio1
 
そういう意味で、オスカー・ピーターソン、ビル・エバンス、チック・コリア、ミシェル・ペトルチアーニの理解は絶対に外せない。この「幹の部分」のジャズ・ピアノを理解することで、ブラッド・メルドーの本質が理解出来るという寸法。ブラッド・メルドーだけを聴き込んだだけで、ブラッド・メルドーの本質は理解しにくい。どころか、表面だけ聴くと、様々なジャズ・ピアノのスタイルとパクリ、というとんでもない勘違いをしてしまうことも「ままある」ので、ご注意願いたい(笑)。

そんなブラッド・メルドーの本質が本当に良く判るアルバムが、Brad Mehldau『The Art of the Trio, Vol. 1』(写真左)。メルドーのファースト・アルバムでは無いが、「The Art of the Trio」シリーズの第一弾。ジャズ・ピアノについて、メルドーがどう考え、どう表現し、どう個性を表出するのか。このアルバムこそが「メルドーの考えるジャズ・ピアノ」である。

ピアノのボイシング、ユニゾン、ハーモニーなどの「響き」の個性、そして、トリオ演奏としての「アレンジメント」の個性、そして、スタンダード曲の「解釈」の個性。この「The Art of the Trio」シリーズの第一弾には、メルドーのジャズ・ピアノに対する「基本的考え方」がギッシリと詰まっている。

優れた極みにある芸術は判り易い。このメルドーのジャズ・ピアノ・トリオはとても判り易い。だからと言って、いきなりブラッド・メルドーに飛びついて、その良さに心酔して、ジャズ・ピアノが理解出来た、と思うのは早計である。しっかりとジャズ・ピアノの歴史を押さえてから、メルドーにチャレンジして頂きたい。そうすれば、それはそれは、また違った素晴らしい音世界が広がること請け合いです。

「急がば回れ」という諺があります。ブラッド・メルドーを理解する為のキーワードだと、僕は思います(笑)。

 
 

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