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2019年8月14日 (水曜日)

実にECMらしいエレ・ジャズ

久し振りのECMレーベル。カタログ順の聴き直しも、はや66枚目。最近はCDの外国盤も入手し易くなったし、有料ダウンロード・サイトのジャズ盤のストックも充実度を増している。特に、ECMレーベルのカタログを Apple Musicに開放してくれたのは有り難かった。ECMレーベルの総帥マンフレート・アイヒャーに敬意を表したい。

Eberhard Weber『Yellow Fields』(写真左)。ECM1066番。1975年9月の録音。 ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b), Charlie Mariano (ss, shehnai, nagaswaram), Rainer Brüninghaus (p, syn), Jon Christensen (ds)。いかにもECMレーベルらしいラインナップである。ドイツ出身が2人、米国出身が1人、ノルウェー出身が1人という多国籍構成。
 
リーダーのエバーハルト・ウェーバーはベーシスト。彼のリーダー作はどれもが当時の「ニュー・ジャズ」。いかにも欧州らしい、ゆったりとした音の広がりと堅実かつ印象的なリズム&ビートをベースに、ECMレーベルらしいエレクトリック・ジャズを展開してくれる。米国のエレクトリック・ジャズの様にファンクに傾倒することも無く、激情に走ることも無い。
 
  
Yellow-fields-eberhard-weber
 
 
淡々と穏やかで印象的なビートと透明度の高い音色で、様々な印象の音世界を創り出していく。全曲エバーハルト・ウェーバーの作曲なのも特徴。スタンダード曲などは絶対にやらない。さすがドイツ出身のジャズマンらしく、全体のサウンドは破綻が無く、まとまりがとても良い。非常にきっちりとしている。大阪弁で言うと「シュッとしている」(笑)。
 
ホーンの伸びのある音、素敵やなあ、と思って、誰かしらと名前を確かめてみたら、なんと「チャーリー・マリアーノ」。穐吉敏子さんの元夫君でもあったアルト・サックス奏者。この盤では、ソプラノ・サックスとインドのシェーナイというリード楽器、そして、ナーダスワラムという南インドの二重葦の管楽器を使用している。これが効果的。欧州らしい典雅で透明度の高いエレ・ジャズに、ワールド・ミュージック的なヒューマンな響きを添えている。
 
ウェーバーのベースも重心が低く、的確なベースラインと躍動的なビートを供給していて、実に聴き応えがある。クリステンセンのドラムは切れ味良く透明度の高いドラミング。そんなリズム隊をバックに、ブリューニングハウスのピアノとシンセが印象的に響く。そこに絡む、マリアーノの印象的なホーンの響き。実にECMレーベルらしい、実に欧州ジャズらしい「ニュー・エレジャズ」である。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年5月17日 (金曜日)

東欧~中東的旋律が更に濃厚

現代のNYのジャズのトレンドの1つに「イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンの台頭」がある。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
イスラエル・ジャズの特徴はと言えば、ネットを紐解くと「イスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが特徴」とある。

Omer Avital『Qantar』(写真左)。昨年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Omer Avital (b), Eden Ladin (p, key), Ofri Nehemya (ds), Alexander Levin (ts), Asaf Yuria (ss, ts)。アヴィシャイ・コーエンと並びイスラエル出身2大ベーシストと称されるオメル・アヴィタルの最新作。同郷の盟友たちで結成された新ユニット「オメル・アヴィタル・カンター」のお披露目盤である。
 
 
Qantar-omer-avital  
 
 
2管フロントが映える、冒頭の「One Man’s Light Is Another Man’s Night」の疾走感。旋律の美しさが際立つ5曲目の「Beauty and the Beast」。アヴィタルの必殺ウォーキング・ベースが炸裂する、ラストの「Know What I Mean?!」。バンドメンバー、それぞれの演奏が抜群に上手い。その充実度合いは、聴き始めたら最後まで一気に聴き通してしまう位。
 
中でも、やはり、リーダーのアヴィタルのベースが素晴らしい。伝統を踏まえた、胴鳴りを伴った、鋼がしなるが如く響く弦の重低音。安定したビート。安定したピッチ。見事なジャズ・ベースである。このアヴィタルのベースが東欧~中東的旋律にグルーヴ感を与えている。エキゾチックなグルーヴ感。イスラエル・ジャズの面目躍如。
 
東欧~中東的旋律については更に濃厚になっている。全編、東欧~中東的旋律で埋められている、と言っても過言では無い内容。東欧から中東的旋律が好きなジャズ者にとっては堪らない内容になっている。いわゆる「中近東的エキゾチックな雰囲気」満載な好盤。イスラエル・ジャズ以外、他にありそうでない「東欧~中東的旋律が満載」のコンテンポラリーな純ジャズ。良いアルバムです。
 
 
 
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2019年5月 5日 (日曜日)

パティトゥッチのベースが凄い

ジャズの新盤を追いかけていると、お気に入りのジャズマンの成長の様が良く判る。まずはデビュー盤で、これは、と思って追いかけ始め、リーダー作の枚数を重ねる毎に、その成長の様を確認することは「ジャズ者冥利」に尽きる。逆にデビュー作を重ねること無く、消えていくジャズマンもいる。演奏する方も聴く方も「悲喜こもごも」である。
 
John Patitucci『Soul of the Bass』(写真左)。今回はこの天才ベーシストの一人、パティトゥッチの新作である。今年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、John Patitucci (elb,b), Nate Smith (ds), Greisun (vo), Isabella Patitucci, Sachi Patitucci (cello)。1987年の初リーダー作以来、既に10枚以上のリーダー作を数える。特にリーダー作は圧巻だった。6弦ベースの高音域での高速フレーズはギターのソロと肩を並べるほどだった。とにかく速弾きに優れる。
 
フュージョンからストレート・アヘッドなジャズまで幅広くこなすが故に、器用貧乏なイメージが付きまとうのだが、サイドメンに回ると、それはそれは優れたバッキングを披露する。つまり、パティトゥッチのベースは、テクニック優先なものでは無く、バランスの取れた優れたジャズ・ベーシストの一人なのだ。
 
 
Soul-of-the-bass-john-patitucci  
 
 
今回の新作は、そんな「バランスの取れた、優れたジャズ・ベーシスト」にスポットを当てた、というか、トータル・バランスの取れたジャズ・ベーシストのパフォーマンスがギッシリと詰まった、ベーシストの、ベーシストによる、ベーシストの為のリーダー作に仕上がっている。冒頭のタイトル曲「Soul of the Bass」を聴けば、パティトゥッチのベース・ソロのただならぬテンションに、思わず座り直してしまう。
 
とにかく、パティトゥッチのベースソロの楽曲が白眉の出来。これだけ、音色豊かでフレーズの拡がりが幅広のベースソロはそうそう無い。ベースソロというのものは、大体が単調で飽きるのだが、このパティトゥッチのベースソロは飽きない。ついつい聴き耳を立てて聴き入ってしまう。最近目立ってきた若手ドラマー、ネイト・スミスを加えた演奏でもパティトゥッチのベースの存在感は抜群。リズムキープから解放された分、ソロの自由度はただならぬものがある。
 
ベーシストがリーダーのアルバムって、特にベーシストのテクニックや弾きっぷりに焦点を当てたものは、もともとベースの音って単調で変化が乏しく、途中で飽きが来てしまうものが多い。しかし、このパティトゥッチの新作は違う。パティトゥッチの「音色豊かでフレーズの拡がりが幅広のベース」は、その天才的なテクニックも相まって飽きが来ない。好盤である。
 
 
 
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2019年3月 4日 (月曜日)

ヴィーナス・レコードの粋ジャケ

日本発のジャズ・レーベルに「ヴィーナス・レコード」がある。日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルで、個人が経営する独立系ジャズ・レーベルとしては現在、日本最大級の規模となっている。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

硬派なジャズ者の方々は、このヴィーナス・レコードからリリースされるアルバムのジャケットを揶揄される。殆どのジャケットが「セミヌードか下着姿の女性」があしらわれている。これがすこぶる評判が悪い。確かにちょっと品に欠けるところがある。この「セミヌード」ジャケットがLPサイズだったとして、平然とレコード屋のカウンターに持ち込めるか。否、である(笑)。

しかし、そんなヴィーナス・レコードのアルバムの中にも、小粋なジャケットで、小粋な内容な「隠れ好盤」が何枚かある。例えば、この盤などその一枚。Bill Crow Quartet『Jazz Anecdotes』(写真左)。1996年11月19 & 20日、New JerseyのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Bill Crow (b), Carmen Leggio (ts), Joe Cohn (g), David Jones (ds)。
 

Jazz_anecdotes_bill_crow  

 
リーダーのビル・クロウのベースが効いている。ビル・クロウはリーダー作の当アルバムともう一枚『From Birdland to Broadway』の2枚だけがヴィーナス・レコードからリリースされているだけだが、サイドマンとしてのキャリアは折り紙付き。ジェリー・マリガンとの共演が一番多く、スタン・ゲッツ、ズート・シムズ等々との共演が多数ある。

アルバム・タイトルの「ジャズ・アネクドーツ」 とは、ビル・クロウが書いたジャズ・マン達に知られざる逸話を集めたジャズ・ブックの名前。タイトルの由来からして「粋」。このアルバムの内容も、しっかりとしたハードバップな演奏で、音の作りは決してレトロでは無く現代的。演奏される曲はスタンダード曲がメイン。味のあるアレンジが施されていて飽きない。

ジャケットも「粋」。タイポグラフィーも良好、あしらわれている写真も良い雰囲気。このジャケットだけを見たら「ヴィーナス・レコード」からのリリースだとは思わないだろう。これなら、硬派なジャズ者の皆さんもヴィーナス・レコードを少しは見直してくれるかも、である。

 
 
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2019年1月26日 (土曜日)

冷たく燃える、典型的なECM盤

明快に「ECMレーベルの音」である。こんな音は米国には無い。オフビートながらファンクネスは皆無でクリアな楽器の音。自由度が高く、全く破綻の無いモーダルな演奏。フリーな演奏も必要最低限の規律があって、統率がとれている。この音は明らかに欧州ジャズの音である。

今日のECM盤は『Gateway』(写真)。1975年3月、ECMのTonstudioでの録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。欧州版捻れギターのアバークロンビー、重戦車ベースのホランド、変幻自在ドラムのデジョネットの3人が結成したグループ「Gateway」の1st.アルバムになる。

冒頭のホランド作「Back-Woods Song」が無茶苦茶に格好良い。ホランドの重戦車ベースのソロから始まるイントロ。デジョネットのリズムックなシャッフルが絡み、アバークロンビーのギターが捻れて入ってくる。演奏の底にファンクネスは皆無、それでいて躍動感溢れるオフビートはかなりジャジー。聴いていて、これは明らかに「欧州の純ジャズ」である。
 

Gateway  

 
このトリオの主役はやはりフロントのアバークロンビーのギターだろう。知的で内省的なハイテクニックな捻れギター。しかし、収録曲のほとんどがホランド作。演奏のリズム&ビートを支えているのはデジョネットのポリリズムックなドラム。3者がそれぞれの個性の強みを活かした、素晴らしいトリオ演奏である。

だが、である。このトリオ演奏全体をコントロールしているは、ホランドのベース。ホランドが繰り出す切れ味の良いロック的なビート、フリージャズ的な展開、演奏のボトムを支える重低音ベース。デジョネットの変幻自在のドラミングに瞬時に反応していくホランドのテクニックには驚嘆する。

これだけしっかりとしたリズム・セクションである。さぞかし、フロントのアバークロンビーのギターは弾いていて楽しかったろう。音の温度感は冷たいのだが、演奏の雰囲気は「ホット」そのもの。冷たく燃える3者対等なインプロビゼーション。深い独特のエコーはECMレーベル独特なもの。アーティスティックな雰囲気が色濃く漂う、上質の欧州ジャズである。

 
 

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2018年11月26日 (月曜日)

マクブライドの「新しいジャズ」

このところ、新しいタイプのスピリチュアル・ジャズが流行っている。今までのスピリチュアル・ジャズの印象は、感情のおもむくままに楽器を吹き鳴らし、精神性の部分を強調したフリー・ジャズのバリエーション、ということ。その激しいアブストラクトな吹奏は、時に「馬の嘶き」にも匹敵し、音楽鑑賞という行為の中では、かなりの苦行を強いられる。つまり、一般的に敬遠されがちなジャンルではあった。

しかし、最近、そのスピリチュアル・ジャズの印象がガラッと変わる、新しいタイプのスピリチュアル・ジャズが現れ出でつつある。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいアプローチ。これがなかなか良い感じなのだ。

『Christian McBride's New Jawn』(写真左)。今年10月のリリース。現代のファーストコール・ベーシストの一人、クリスチャン・マクブライドの新グループ「New Jawn」によるファースト盤である。「Jawn」とは、マクブライドの故郷フィラデルフィアのスラングで「=place, or thing」の意味らしい。つまり「新しい場所・事柄」=「新しいジャズ」と僕は解釈している。何が新しいのか。この盤に詰まっている演奏の全てが「モード」による演奏みたいなのだ。バンドを構成する楽器も、コード楽器を排したカルテット構成。
 

New_jawn  

 
ちなみにパーソネルは、Christian Mcbride (b), Josh Evans (tp), Marcus Strickland (ts, bcl), Nasheet Waits (ds)。まあ、簡単に言ってしまうと、ピアノ、もしくはギターという、コード楽器が無い編成である。演奏がコードに縛られる、アドリブ展開がコードに影響されるということが排除されることがメリットで、フリー・ジャズでは無いが、限りなく自由度の高い展開が期待出来る。確かに、このマクブライドの新盤では、そんな「限りなく自由度の高い」演奏が展開されていて見事だ。

限りなく自由度の高い演奏をベースにした、モーダルな演奏。その音世界は「スピリチュアルな」雰囲気が濃厚。この盤の演奏、これはマクブライドの考える「スピリチュアル・ジャズ」なのではないか。マーカス・ストリックランドのテーナーと、ジョシュ・エヴァンスのトランペットが織りなす複雑なアンサンブルとハーモニーが実にスピリチュアルなのだ。そして、マクブライドのベースとナシート・ウェイツのドラムが硬軟自在、痴漢自在な自由度の高いリズム&ビートが、その「スピリチュアルな要素」を増幅する。

実にユニークなメインストリーム・ジャズである。フリーフォームからハード・スウィングまで、モーダルな演奏の粋を尽くした展開が見事。今までに聴いたことの無い響きが面白い。ジャケットがアメリカン・コミック風のデザインなので、何かコミカルな内容なのか、と勘違いしそうなんだが、どうして、この盤に詰まっている音は、明らかに現代の「純ジャズ」の最先端である。

 
 

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2018年10月30日 (火曜日)

再掲『ジム・ホールの想い出 』

ベーシストのリーダー作は、なかなかに聴き応えがあるものが多い。ベースのテクニックをメインにした盤は当たり前なんだが、ベースという楽器のポジションを活かした「グループ・サウンド」をプロデュースしコントロールした盤が良い。リーダーであるベーシストの音楽性がとりわけ良く判る。特にライヴ盤では、リーダーのベーシストのテクニックと音楽性の両方が良く判る盤が多く、ベーシストのリーダー作はライヴ盤だったら、迷わず入手することにしています。

Ron Carter『In Memory of Jim』(写真左)。2014年1月20日、ブルーノート東京にてのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Larry Coryell & Peter Bernstein (g)。なかなか良い音で録れております。リーダーがベーシストのロン、パートナーのギタリストがコリエルとバーンスタイン。名前を見ただけで思わず触手が伸びる。ジャケット・デザインもなかなかグッドで、中の音が期待出来ます。

ちなみに「Jim」とは「Jim Hall(ジム・ホール)」のこと。プログレッシヴなレジェンド・ギタリストで、2013年12月に急逝。この盤は追悼盤の位置づけになります。ちなみに邦題は『ジム・ホールの想い出 』。ジム・ホールとロン・カーターは何枚か、デュオでの共演盤があって、そのデュオ演奏を聴けば判るのですが、相性は良く、どのデュオ盤も良い内容です。
 

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このトリビュート盤では、ジム・ホールの代わりを、ラリー・コリエルとピーター・バーンスタインが務めています。代わる代わる弾くのでは無く、ロンのベースに2ギターでのトリオ編成の演奏になっていて、意外とユニークで聴き応えがあります。「アローン・トゥゲザー」「セント・トーマス」など、ジムとのデュエットのレパートリーだった有名スタンダードを中心に演奏されていて、聴いていてとても楽しい内容。

実はこの盤、しばらく聴くのを躊躇っていました。それというのも、この盤のロンのベースはピッチが合っているか、そして、アコベの音をアタッチメントで増幅していないか、その2点が心配で、なかなか聴く勇気が出ませんでした。が、それは杞憂に終わったようで、ロンのベースのピッチは意外と合っていて聴ける。そして、アコベの音は電気的に増幅されておらず、アコベの生々しい骨太な響きが心地良い。

このライヴ盤、ロンのベースは「当たり」です。ギタリストのコリエルとバースタインとの相性も良いようで、かなり内容の濃い、適度なテンションの中、丁々発止とインプロビゼーションが展開されます。ロンはデュオが得意。ロンのベースはギターに上手く絡みます。それでいて、リーダーとして、アコベ演奏の主張はしっかりと前面に押し出す。ロンのベースの良い面がしっかり出た好盤です。

 
 

東日本大震災から7年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年10月25日 (木曜日)

全くの自然体のハードバップ

ジャズの定番スタイルといえば、やはり「ハードバップ」だろう。1950年代後半がピーク。ビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存した、いわゆる「俗っぽさ」と「芸術性」のブレンド。演奏のテクニックとしては「特にソロのアドリブ演奏面で、ホットでハードドライビングしながらも、メロディアスに洗練されたスタイル」である(Wikipediaより)。

ジャズが一番ジャズらしい演奏スタイルが「ハードバップ」。その後、モード、フリーと進化したが、進化の代償としてキャッチーさ、大衆性が失われたが故に1960年代後半以降、ハードバップは一旦衰退する。しかし、1980年代半ば、当時大流行の後、衰退を始めたフュージョン・ジャズと取って代わるように復活した。いまでは「ネオ・ハードバップ」として、一定のトレンドを維持している。

Joris Teepe『Bottom Line』(写真左)。1995年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Don Braden (ts), Tom Harrell (tp), Darrell Grant (p), Joris Teepe (b), Carl Allan (ds)。リーダーは「Joris Teepe」=ヨリス・テーぺ、と読む。オランダ出身の敏腕ベーシスト。ドン・ブラッデンのテナーとトム・ハレルとのトランペットの2管フロントのクインテット構成。
 

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ベーシストがリーダーのジャズ盤になる。ベースという楽器の性格上、ジャズ演奏において、フロント楽器を担うことは無い。音のバリエーションが狭いので、旋律弾きを担当することはあるが、相当なテクニックの持ち主に限る。リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求する。

この盤での演奏トレンドは「ネオ・ハードバップ」。コードをベースに展開する、伝統的なハードバップと、モード奏法をベースとしたモード・ジャズ。この2つのハードバップなジャズを混ぜ合わせた様な音世界。グループ・サウンドは端正かつ躍動的。メリハリがきっちり着いて、アドリブの展開は爽快。これが現代のハードバップ、そう「ネオ・ハードバップ」である。

1995年でこの演奏である。全くの自然体のハードバップ。素晴らしい。全く「作られた」感じが無い、自然体のハードバップ。この盤を聴くと、ハードバップって作られるものでは無く、生み出されるものなんだなあ、って思う。理屈で作るものでもなければ、頼まれて作るものでも無い。つまりは「ジャズ」ってそういうものなんだろう。この盤を聴いていて、つくづく思う。

 
 

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2018年10月16日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・131

最近、ジャズの新盤を聴いていると、意外とソロやデュオという少人数編成の演奏が、以前より目立つようになったと感じている。ジャズの少人数編成って、結構、テクニックを要するフォーマットで、演奏する方は結構大変ではないのかなあ。特にデュオは組む相手との相性の問題もあったり、楽器同士がぶつかり合ったりで、これまた意外と難しい。

Houston person & Ron Carter『Remember Love』(写真左)。2018年3月27日の録音。ベテランのテナー・サックス奏者のヒューストン・パーソンと、ジャズ・ベースのレジェンド、ロン・カーターのデュオ盤。久し振りに「聴いてみてビックリ」。これがまあ、素晴らしい内容のデュオ盤なのだ。

ヒューストン・パーソンは1934年生まれ。今年で84歳。しかし、このデュオ盤のテナーの音を聴けば、84歳の音とは思えない、溌剌していて、しっかりと重心が低く力強いブロウは聴き応え満点。ロン・カーターは1937年生まれ。今年で81歳。実はこのロンのベースの音に一番驚いた。今までのロンのベース音とは全く違う。
 

Remember_love_1

 
まず、ベースのピッチが合っている。実はロンのベースって、ピッチが合っていないことが多く、聴いていて気持ち悪くなることもしばしば。最初は恐る恐る聴いたのだが、この新盤ではこれがバッチリ合っている。力強く、速いフレーズも容易く弾きこなす。切れ味良く、鋼のソリッド感がダイレクトに感じる素晴らしいベース。これがロンとは、最初はにわかに信じ難かった。

そこに、ヒューストンの大らかで緻密で歌心のあるブロウが乗っかるのだ。素晴らしく心地良いデュオ演奏。本作はおなじみのスタンダード曲にそれぞれのオリジナル曲が1曲づつ収録されている。が、やはりスタンダード曲が良い。この途方も無い、素晴らしい内容のデュオ演奏に乗って、スタンダード曲がとても魅力的に聴こえる。

加えて、この盤、音が抜群に良い。調べてみたら、この新盤は、ルディ・ヴァン・ゲルダーの傍らで長年アシスタント・エンジニアを努めていたモーリン・シックラーが担当しているそうだ。この生々しく自然な音の響きは明らかにヴァン・ゲルダー・スタジオの音。高い天井の自然なリバーブが、デュオ演奏というシンプルな少人数編成の音をさらに魅力的なものにしている。ジャズ喫茶で流したい「格好の好盤」。

 
 

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2018年10月 3日 (水曜日)

ミンガスは「ながら」に向かない

昔から「ながら族」であった。中学の頃から、音楽を聴きながら勉強すると能率が上がった。学生の頃は音楽を聴きながら、本や論文を読むと能率が上がった。この「ながら」の音楽については向き不向きがある。基本的にフュージョン・ジャズは向くが純ジャズは向かない。音楽の良し悪しとは比例しない。逆に良い音楽の方が「ながら」に向く。

逆に「ながら」に絶対に向かない音楽もある。ジャズで言えば、チャールズ・ミンガスの諸作は絶対に「ながら」に向かない。しっかりとステレオの前に陣取り、スピーカーに対峙して、しっかり聴き込むことが必要になる。ミンガスの音楽はそういう類のものである。アルバムや演奏には必ずテーマがあり、そのテーマについてジャズの演奏で語るように表現する。それがミンガスの音楽である。

つまり、ミンガスの音楽を楽しむということは、ミンガスによる様々な音の表現を楽しむことであり、ミンガスの作曲能力と演奏におけるリーダーシップを愛でることである。それには「ながら」は向かない。よって、ジャズを聴き始めてミンガスの音楽に出会って以来、ミンガスのリーダー作は「ながら」で聴いたことが無い。
 

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Charles Mingus『The Clown』(写真左)。1957年2月と3月の録音。ちなみにパーソネルは、    Charles Mingus (b), Shafi Hadi (as, ts), Jimmy Knepper (tb), Wade Legge (p), Dannie Richmond (ds), Jean Shepherd (narration)。演奏についてはクインテット構成。たった5人でこれだけ分厚くて濃厚な音を出すのだから、ミンガスのアレンジ能力も素晴らしいものがある。

傑作である。全曲、ミンガスの作曲なので統一感が抜群。全編に渡って、ミンガスの重量感溢れるベースが大活躍。ミンガスのベーシストとしての実力と個性を確認するのにも好適なアルバムでもある。冒頭の有名な「ハイチ人の戦闘の歌」を聴けば、このアルバムの音世界の傾向が如実に判る。フロント2管とドラムも攻撃的で重量感抜群。加えて、タイトル曲の「道化師」などはナレーション入りで、現代ジャズのトレンドを50年以上も先取りしている。

ミンガスの音楽は「新しい」。現代ジャズの世界にもダイレクトに通用する、先進的なフレーズや仕掛けが施されていて、聴くとその内容の先進性に驚く。ミンガスのアルバムを聴く度に「ジャズはアートである」という感覚を噛みしめる。1957年時点で既にフリー・ジャズの片鱗も聴かせてくれており、ミンガスの音楽が如何に先取性に溢れていたか、を再認識する。ミンガスの音楽は「ながら」に向かない。しっかりと対峙して聴くべし。

 
 

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