2022年11月 7日 (月曜日)

傑作ライヴ盤『8:30』を聴き直す

このライヴ盤は売れた。内容的にも充実している。ウェザー・リポートのメンバーが、やっと、テナー・サックスのワンホーンに、キーボード+ベース+ドラムのリズム・セクションの4人について、最適のメンバーが顔を揃え、最適なメンバーで固定された記念すべきライヴ盤である。

Weather Report『8:30』(写真)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (el-b), Peter Erskine (ds)。 ほとんどの曲がザヴィヌル作であり、大ヒットアルバム『Heavy Weather』の人気曲をメインに、他のアルバムから、同傾向の音志向の人気曲が選曲されている。WRが一番、フュージョン・ジャズに接近したライヴ盤である。

このライヴ盤は売れた。選曲は『Heavy Weather』と他のアルバムの人気曲が選ばれており、ポップでキャッチャーな楽曲ばかりが並んでいる。そりゃ〜当時は売れただろうな、と思う。しかし、今の耳で聴き直せば、ジャズとしての即興演奏の妙は、ジャコのベース・ソロ曲と、ショーターのサックス・ソロ曲だけに留まっていて、他の楽曲は既定路線に乗った、金太郎飴の様な聴き馴れたアレンジで統一されている。

前作の『Mr,Gone』からの選曲は全く無く、如何に前作がセールス的に「問題作」だったかが窺い知れる。が、このライヴ盤で、このライヴ盤『8:30』をジャズの範疇に留めているのは、ジャコのベースとアースキンのドラムである。このライブ盤の全編に渡って、この二人のリズム&ビートは半端ない。それまでのWRの人気曲に躍動感を与え、ジャジーな自由度を拡げている。どの曲もオリジナルよりもテンポが速く、ベースラインもドラミングも複雑極まりない。
 

Wr-830

 
加えて、何時になく、ショーターがサックスを吹きまくっている。吹きまくり、とはこのこと。しかも、誰にも真似できない、ショーターならではの宇宙人的に捻れたフレーズが満載。どの収録曲もザヴィヌルの楽曲で、ショーターの音志向である「エスニック&ミステリアス」な音は希薄でありながら、である。恐らく、ジャコとアースキンのリズム隊の「賜物」だろうと思う。ジャコとアースキンが、ショーターの「ジャズ魂」に火を付けたのだ。

一方、ザヴィヌルのキーボードは安全運転、というか、聴き馴れたフレーズばかりで、可も無く不可も無く。まるでスタジオ録音の演奏を聴いているようだ。せっかくのライブ音源なのに、もっと自由度を拡げて、もっと魅力的なフレーズを弾きまくって欲しかった。

なお、LP時代のD面のスタジオ録音については、発売当時、1980年代のジャズを予言するものとして、持てはやされたものだが、今の耳で聴くと、完成度は「道半ば」、ブラッシュアップ中の未完な雰囲気が漂っていて、僕はあまり評価していない。これをLP時代のLP2枚目のD面に入れるのなら、他の曲のライヴ音源を追加して欲しかった。今となっては、このLP時代のD面の存在意義が良く判らなくなっている。

ショーターとジャコ、アースキン。この3人の卓越したテクニックの下、ジャジーで自由度の高い、変幻自在な演奏が、このライヴ盤を「ジャズ」の範疇に留め、未だ、エレ・ジャズの傑作ライヴ盤の1枚としての評価を維持しているのだ。
 
 

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2022年10月19日 (水曜日)

アヴィシャイのピアノ・トリオ盤

ベースやドラムは「リーダーの担当楽器」として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。特にベーシストがリーダー作はかなり数が限られる。

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースが一番多い。自らはその音世界の創造を支える側に回って、自らのベースはあまり前面に出ることは無い。それでも、その音世界の表現が素晴らしい、つまり、ベーシストのセルフ・プロデュースの能力が優れていると、ジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

Avishai Cohen『Shifting Sands』(写真左)。2021年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b), Elchin Shirinov (p), Roni Kaspi (ds)。イスラエル出身天才ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのリーダー作。前作はオーケストラを率いた重厚な盤だったが、今回は、シンプルにピアノ・トリオな編成でまとめている。収録されている曲は、パンデミック中にエルサレム近郊の自宅でアヴィシャイ・コーエンがピアノで作曲したもの、とのこと。

内容的には、いわゆる「イスラエル・ジャズなピアノ・トリオ」である。フレーズの中に、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」が、そこかしこに感じられる。全体の音志向は「哀愁を帯びたイスラエルな独特の響きと多様性を感じるクールなビート」を核とした、現代のネオ・モーダルなジャズである。
 

Avishai-cohenshifting-sands

 
まず、アゼルバイジャン出身のピアニスト、エルチン・シリノフの独特なタッチに耳を奪われる。「誰だ、これ」と思わず思うくらい、独特なタッチ。恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう、シリノフのフレージングも独特。欧州ジャズにも米国ジャズにも無いピアノ。独特の哀愁感が豊かなエコーによって増幅されて、固くて幽玄な音世界がこれまた独特。

新加入の若手の女性ドラマー、ロニ・カスピのドラミングも個性的。伸び伸び元気よく小気味良いドラミングを披露する。そう小気味が良いのだ。力感溢れるドドドンな迫力満点なドラミングでは無い。切れ味良く、ピッチが正確で、とにかく小気味の良いドラミング。これが、哀愁感溢れる固くて幽玄なシリノフのピアノと対照的で、双方の相乗効果で、唯一無二のインタープレイを展開する。

アヴィシャイのベースは、そんな2人のパフォーマンスの底をガッチリと支え、リードする。アビシャイの弾き出すフレーズも独特なもので、これも、恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう。しかも、アヴィシャイのベースは硬質で切れ味良く、胴鳴りが良い。良い意味で、もっと騒がれても良い、優れた現代ジャズ・ベースである。

現代イスラエル・ジャズをベースとしたピアノ・トリオ演奏の代表盤の1枚として、もはや無視出来るレベルでは無い。しっかりと認知して、しっかり聴き込んで頂きたいアヴィシャイのピアノ・トリオ盤である。
 
 

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2022年10月11日 (火曜日)

ブロンバーグのベース・ソロ盤

ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くあるのだが、ベース・ソロだけのアルバムは殆ど無い。

その理由として、ベースの場合、速いフレーズのソロを取りにくいこと、そして、リズム&ビートを醸し出すのが、基本的に難しいこと、その2点が上げられるだろう。

Brian Bromberg『Hands』(写真)。2008年7月録音。ちなみにパーソネルは、Brian Bromberg (ac-b)のみ。副題の「Solo Acoustic Bass」とある。 2009年4月にリリースされた、ブライアン・ブロンバーグのアコベのソロ盤。全編、風呂バーグのベース・ソロのみの演奏が収録されている。

ブライアン・ブロンバーグ(Brian Bromberg)は、米国アリゾナ州ツーソン出身。1960年生まれなので、今年で62歳になるベテランのベーシスト。1986年にスムース・ジャズのジャンルで初リーダー作。僕は21世紀に入るまで、ブロンバーグの存在を知らなかった。ブロンバーグの存在を知ったのは、神保彰とのプロジェクト、JBプロジェクトを通じてで、つい最近である。

ブロンバーグのベースは、相当に高いテクニックと豊かなスイング感、骨太でソリッドな切れ味の良い重低音、存在感抜群のベースである。そんなアコベらしいアコベで、ソロ・パフォーマンスを展開するのだから、聴く方としては興味津々。

これまでに、ブロンバーグはリーダー作の中で、ベース・ソロのアルバムを何枚か出している。どれもが優れた出来ばかりなので、どの盤から聴き始めても良いのだが、僕はこの『Hands』の収録曲のユニークさに惹かれる。
 

Brian-bromberghands

 
レッド・ツェッペリン(以降、Zepと略)の「Black Dog」、ビートルズのメドレー「Day Tripper-Yesterday-Eleanor Rigby」、スティングの「King of Pain」とロック畑の曲を選んでいる。スタンダード曲も沢山あって聴きどころ満載。そして、エレベのイノベーター、ジャコ・パストリアスの名曲「Teen Town」をアコベでカヴァーしている。

特に、Zepの「Black Dog」はハードロックの名曲で、速くて難度の高いフレーズがてんこ盛りなんだが、このややこしい曲をアコベ一本で弾き切っている。ベース一本でロックンロールのビートは「どうするんじゃぃ」と半信半疑で聴いたが、これが見事で、弾き進めるフレーズに強弱のビートを付けて、ロックなオフビートを出しているのだ。これ、テクとセンスが無いと出来ない技である。

そして、ジャコの「Teen Town」。ジャコのベース・ソロはエレベだった。弦の響きを電気的に増幅するので、速いフレーズも弾けた訳だが、これをブロンバーグはアコベでやっている。アコベは弦の電気的な増幅が出来ないので、手でしっかりと弦を弾かなければならない。当然、しっかり弾く分、速いフレーズは苦手なはずだが、ブロンバーグはほぼジャコの様に、アコベで「Teen Town」をカヴァーしている。いやはや素晴らしいテクニックだ。

ロックな曲も、ジャコの曲も、スタンダード曲もし全てアコベ一本で弾き切る。どの曲も、リズム&ビートは、フレーズを弾き進める際、フレーズに強弱を付け、「ため」を織り込むことで、フレーズを弾き進める中で、リズム&ビートを同時供給している。これ、結構、難しいテクニックのはずで、これだけ見事に、フレーズを弾き進める中でリズム&ビートを同時供給するベースを僕は余り知らない。

全編、アコベのソロだけ、なんだが、そんな高度なテクニックを駆使して、歌心よろしく、リズム&ビートをソロ・フレーズと同時供給していく奏法が功を奏して、全編、全く飽きが来ない。録音状態も良く、ブロンバーグの生々しいアコベの低音が生々しく耳に迫ってくる。

ジャズ・ベースが好きなジャズ者の方々にお勧め。特に、実際にベースを弾いたことがあるジャズ者の方に聴いて頂きたい、ブロンバーグのソロ盤である。
 
 

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2022年9月20日 (火曜日)

意味深なエルヴィンとギャリソン

ポリリズミックなレジェンド・ドラマー、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のリーダー作を聴き直しているのだが、エルヴィンのリーダー作の基本コンセプトは「モード・ジャズ」。

それも、インパルス・レーベルからのリリースの『Coltrane』辺りの、自由度の高い、シーツ・オブ・サウンドと歌心のバランスが取れた「モード・ジャズ」。エルヴィンは「この時代のコルトレーン・ミュージック」が大好きだったんだろうなあ、とつくづく思ったりする。

Elvin Jones & Jimmy Garrison『Illumination!』(写真)。1963年8月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jimmy Garrison (b), McCoy Tyner (p), Sonny Simmons (as, English Horn), Charles Davis (bs), William Prince Lasha (cl, fl)。

改めて、この盤を聴き直してみた。エルヴィン・ジョーンズと、ベースのジミー・ギャリソンの双頭リーダー盤。ピアノのマッコイ・タイナーが入っているので、これは、当時のコルトレーンの伝説のカルテットから、親分のコルトレーンを抜いたリズム・セクションになる。そして、フロントは、アルト・サックス or ホルン、バリトン・サックス、そして、クラリネット orフルートのフロント3管。全体でセクステット編成。

パーソネルを見渡して面白いのは、「コルトレーンの伝説のカルテット」のリズム・セクションがそのまま、この盤にスライドしているからか、律儀に親分コルトレーンの担当楽器であるテナー&ソプラノ・サックスをしっかり抜いて、フロント3管を形成している。

演奏の基本は「モード・ジャズ」。それも、親分コルトレーンの得意技「シーツ・オブ・サウンド」抜きの、モード・ジャズど真ん中の時代の「コルトレーン・サウンド」。
 

Elvin-jones-jimmy-garrisonillumination

 
限りなく高い自由度を追求したモーダルな演奏と「音楽」としての歌心を踏まえたメロディアスなフレーズを前提とした「コルトレーン・サウンド」で、ほどよくアレンジされた「ユニゾン&ハーモニーが」聴いて楽しい雰囲気を加えている。

この6重奏団の演奏、コルトレーン・サウンドを踏襲しているのだが、しっかりと親分の担当楽器と得意技をしっかり抜いている。コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当している、

エルヴィン、ギャリソン、タイナーが、コルトレーンに「親分、一緒にどうですか、こんなモード・ジャズは。俺たちは、親分と一緒にやる、こんなモード・ジャズが好きなんです」と誘っている様な雰囲気を感じるのは僕だけだろうか。

この盤の録音の後(リリースは1964年)、コルトレーンは、1963年11月に『Impressions』をリリースしていて、その内容は、グループサウンドを横に置いて、唯我独尊、フリー一歩手前の自由度の高いモーダルなフレーズを、高速シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるという内容をライヴ録音で披露している。

コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当していた、エルヴィン、ギャリソン、タイナーは戸惑ったのでは無いか。この『Impressions』の演奏内容を振り返ると、リズム・セクションは、リズム&ビートだけ正確に供給してくれるならば、誰だって良い、という感じなのだ。実はそうではないのだが、この時期のコルトレーンは、自らの志向を追求することに集中した「唯我独尊」的なパフォーマンスに偏っていた。

グループ・メンバーで、グループサウンドを楽しみながら演奏する、という、バンド・セッションの基本を、このエルヴィン&ギャリソンの『Illumination!』ではしっかりと踏襲している。きっと、ここに戻りたかったんだろうなあ、と僕はこの盤を聴く度に思うのだ。
 
 

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2022年8月27日 (土曜日)

パティトゥッチの初リーダー作

管楽器やピアノに比べると、その総数は少ないが、優秀なジャズ・ベーシストは、どの時代にも存在する。僕が最初に認識したジャズ・ベーシストは「ロン・カーター」。

そして、歴史を遡って「チャールズ・ミンガス」と「ポール・チェンバース」。ジャズを聴き始めてから、第一線の登場してきたベーシストも沢山いる。そんな中で、印象に残っている1人が「ジョン・ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)」。

『John Patitucci』(写真左)。1987年の作品。邦題『ジョン・パティトゥッチ・デビュー!』。ちなみにパーソネルは、John Patitucci (b), Michael Brecker (sax), hick Corea (p), John Beasley, Dave Whitham (syn), Dave Weckl, Vinnie Colaiuta, Peter Erskine (ds)。チック・コリアの「チック・コリア・エレクトリック・バンド」のメンバーだった時に制作されたパティトゥッチの初リーダー作。

ジョン・パティトゥッチは1959年12月生まれ。今年で63歳のベテランの域に達したジャズ・ベーシストである。アコースティック、エレクトリックのどちらのベースについても、超絶技巧なテクニックを駆使して、流麗なフレーズとビート感溢れるベースラインを弾き回す。特に、エレクトリックの6弦エレベのパフォーマンスは、エレギのパフォーマンスと間違えられるほどだった。

そんな超絶技巧で流麗でビート感溢れるパティトゥッチのベースが、心ゆくまで楽しめるのが、この『ジョン・パティトゥッチ・デビュー!』。音の雰囲気は、チック・コリア・エレクトリック・バンドを踏襲しているが、端正でメロディアスな楽曲をメインに、パティとウィッチの流麗なベース・ソロと、躍動感溢れるベース・ラインが全面に押し出されていて、なかなか聴き応えのあるフュージョン・ジャズ盤に仕立て上げられている。
 

John-patitucci-album

 
フロント楽器については、マイケル・ブレッカーのサックスとチック・コリアのキーボードがメインだが、マイケルとチックのバックに回った時のパティトゥッチのエレベは、超絶技巧なベースラインでありながら、しっかりとフロント楽器を支え、フロント楽器を引き立て、フロント楽器を鼓舞する。

リズム・セクションに回った時のそのベーシストとしての能力の高さは相当に高いものがる。当時、チックが、自らのバンドのベース担当として白羽の矢を立てた訳が良く判る。特に、管楽器や鍵盤楽器と同等の、高速なアドリブフレーズを駆使したインタープレイは、バンド・サウンドに新しい可能性を感じさせてくれる。

個性に乏しいとか、いろいろ言われた初リーダー作であるが、ベーシストとして、リズム・セクションに回った時の卓越した能力の高さ、テクニックの超絶技巧さはこのデビュー盤を通じて、とても良く理解出来る。

フレーズの弾き方とか、音色とか、音の大きさとか、明確な個性を求める向きも判らないわけではないが、リズム・セクションを構成する主要楽器のひとつであるベースに関しては、リズム・セクションに回った時の、しっかりとフロント楽器を支え、フロント楽器を引き立て、フロント楽器を鼓舞する、そんな卓越した能力の高さが、まずは一番注目される能力だろう。

そういう点では、このパティトゥッチの初デビュー作は合格点。パティトゥッチのベースの特徴が良く判って、意外と聴き応えがある。
 
 

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2022年8月20日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・247

ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba) は「キューバの至宝」と呼ばれるジャズ・ピアニスト。1963年5月、キューバはハバナの生まれ。今年で59歳、来年は還暦。もはや、キャリア的にはベテランからレジェンドの域に差し掛かっている。僕がゴンサロの出会ったのは、1990年『Discovery: Live at Montreux』を手にした時。あの頃、ゴンサロは弱冠27歳。あれから30年以上、ゴンサロのピアノの志向はブレていない。

ゴンサロのピアノは超絶技巧ではあるが、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールド・ミュージック的な雰囲気が漂い、カリプソな雰囲気も見え隠れする。回りくどいことは無く、判りやすい光速のパッセージでアプローチは意外と直線的。ビ・バップ・マナーの超絶技巧な高速ピアノと、間を活かした印象派マナーの耽美的でリリカルなピアノの双方を両立させた個性が特徴。

Gonzalo Rubalcaba Trio『Skyline』(写真左)。2021年の作品。ちなみにパーソネルは、Gonzalo Rubalcaba (p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。ゴンサロが若き日に師事したジャズメンと再会したいという長年の希望を受けて実現した再会セッションの記録。現代のアコベのレジェンド、ロン・カーターと、現代のポリリズミックなドラマーのレジェンド、ジャック・デジョネットがリズム隊で参入している。
 

Gonzalo-rubalcaba-trioskyline

 
ゴンサロのピアノの個性をしっかり記録しつつ、ゴンサロのピアノの成熟を聴いて取れる、内容の濃いピアノ・トリオ盤である。相変わらずの超絶技巧であるが、若かりし頃の「どうだ、凄いでしょ」的な大向こうを張った弾き回しでは無く、硬軟自在、緩急自在、音とリズムをしっかりと選びつつ、機微溢れる、クールでブルージーでモーダルなピアノをじっくり聴かせてくれる。弾きまくるゴンサロ、内省的なゴンサロ、ゴンサロのピアノの良いところがこの盤にしっかり記録されている。

ゴンサロの成熟したピアノの良いところをグイグイと引き出しているのが、ロンのベースとデジョネットのドラム。ロンのべースは、ゴンサロのモーダルなピアノの底をしっかりと支えて安定感抜群。デジョネットのポリリスミックなドラミングは、ゴンサロのピアノに推進力と変化のタイミングを与え続ける。素晴らしいインタープレイの応酬。ゴンサロのピアノが映えに映える。

ゴンサロ健在。ロンも健在、デジョネットも健在。凄まじく、内容濃く、新しい響きを湛えたインタープレイを繰り広げるレジェンド級のピアノ・トリオ。その演奏の数々は凄みが感じられるほど、硬派で切れ味の良いもので、まだまだ若手ピアノ・トリオには及ばない、様々な「粋」なアプローチと弾き回しは、後に名盤と呼ばれるに相応しい内容ではないかと感じて、聴いていて何だか「嬉しく」なりました。
 
 

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2022年8月18日 (木曜日)

小粋な Band of Other Brothers

フュージョン・ジャズは時代の徒花だった、あれは間違いだった、という声もあったが、現代のジャズをグローバルに俯瞰してみると、クロスオーバー&フュージョン・ジャズは、今も深化を続けている。新しいイノベーションが生まれる訳では無いが、演奏内容の精度や内容が「深まっている」。米国でも英国でも、クロスオーバー&フュージョン・ジャズはまだまだ「存命」である。

Band of Other Brothers『Look Up!』(写真左)。2021年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Will Lee (b), Keith Carlock (ds), Nir Felder (g) , Jeff Babko (key), Jeff Coffin (sax)。今年70歳。衰え知らずのフュージョン界のレジェンド・ベーシスト、ウィル・リーを筆頭に、LAやNYを拠点に活動するフュージョン畑の名手が集結。小粋なクロスオーバー&フュージョン・ジャズを繰り広げている。

バンド名が「Band of Other Brothers」。ドラムにキース・カーロックは、スティーリー・ダンのドラム担当で有名。ニア・フィルダーはコンテンポラリーな中堅ギタリスト。キーボードのジェフ・バブコはマーク・ジュリアナ’s BEAT MUSIC出身の鬼才。サックスのジェフ・コフィンはベラ・フレック&ザ・フレックトーンズの元メンバー。しかし、フュージョン畑の曲者ばかり集めていると感じる。

これだけの曲者の集まりだと、1つの「音の志向」にまとめるのが大変だと思うのだが、リーダー格のウィル・リーは、そこを上手くやっている様に感じる。とにかく、音のまとまりが素晴らしい。メンバー全員が1つの「音の志向」を見ていてブレが無い。よって、演奏には迷いやダレたところや手慣れたところが無く、適度なテンションの下、しっかりアレンジされ、しっかりまとまりのあるサウンドに仕上がっている。
 

Band-of-other-brotherslook-up

 
音の志向は、基本的には、仄かにファンクネスを感じる、アーバンでアダルトなフュージョン・ジャズ。音の雰囲気は、バブコのキーボードがリードしている。エレピ、アコピ共に、バブコ独特の音を出していて、これが、このバンドの「音の志向」作りに貢献している。とにかく、バブコのキーボードが目立つ。以前のフュージョン・ジャズの時代には無かった個性的な音だけに、このバンドのフュージョンな音作りは「新しく」感じる。

リズム&ビートは、ウィル・リーのベースとキース・カーロックのドラムの「賜」。ジャズ、ファンク、ブーガルーなグルーブを柔軟に適用し、心地良く8ビートにスイングする。カーロックのドラムがビートの前面に出る時は、音の雰囲気は「Steely Dan」っぽくなり、リーのベースがビートの前面に出る時は、音の雰囲気は「Crystal Green」っぽくなるから面白い。

メンバーそれぞれが「匠」の技を繰り出して演奏しているので、それぞれの収録曲の演奏は素晴らしく充実している。アレンジもこの曲者メンバーの集まりに見事に決まり、メンバーそれぞれの演奏がくっきり浮かび上がり、それがまた素晴らしい。かなり高いレベルのフュージョン・ジャズであり、フュージョン・ファンクである。

我が国では、あまり話題に上らなかった「Band of Other Brothers」の新盤であるが、 内容は素晴らしいので、フュージョン・ジャズ者の方々には是非お勧め。ながら聴きのフュージョン・ジャズ盤としてお勧めの優秀盤だと思います。そもそも「Band of Other Brothers」というバンド名も我が国では全く浸透していない。困ったもんです。
 
 
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2022年8月 7日 (日曜日)

ミンガス・ミュージックの確立

Charles Mingus(チャールズ・ミンガス)。モダン・ジャズにおける希有のベーシストである以上に、バンド・リーダーとして、アレンジャー&コンポーザーとしての実力が突出していると僕は感じる。何時の時代でも、ミンガス・バンドの構成力、演奏力、展開力は非常似高いレベルを維持しているのは立派だ。

Charles Mingus『The Clown』(写真左)。邦題『道化師』。1957年2月13日と3月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Shafi Hadi (as, ts), Jimmy Knepper (tb), Wade Legge (p), Dannie Richmond (ds), Jean Shepherd (narration, track 4)。

1956年の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』の次のリーダー作。パーソネルを見渡すと、前作からガラッとメンバーを入れ替えている。前作のパーソネルとの大きな違いは、この「道化師」は、あまり有名で無いメンバーが採用されている、ということ。この盤以降、ミンガス・バンドのリズム&ビートと預かるドラムのリッチモンドと、トロンボーンの盟友ネッパー以外は、有名どころのメンバーは見当たらない。

しかし、そんなちょっと地味なメンバーなので、この盤、前作の『直立猿人』と比べて、内容は劣るのだろうだろうと思いきや、前作の『直立猿人』の内容を上回るレベルの、ミンガス・バンド史上、ベスト5に入る位の内容の充実度を誇るのだから、ミンガスのバンド・リーダーとしてのバンド・サウンド作りの手腕の凄さ、そして、何より、メンバーの演奏力と個性を最大限に発揮させる、アレンジャー&コンポーザー賭しての実力の高さを実感する。
 

Charles-mingusthe-clown

 
この『道化師』というアルバム、ミンガス・ミュージックの個性と特徴の全てが反映されている、といって良い位の内容の充実度高さ。バンド・サウンドのアレンジの基本は「エリントン・ミュージック」ということは判るが、ミンガスのアレンジは、エリントン・ミュージックを更に発展させ、ミンガス独特の音の重ね方と響かせ方、そして、それぞれの楽器のアドリブ展開のスペースの絶妙な配置を施して、独特で唯一無二な「ミンガス・ミュージック」を確立させている。

アンサンブルの「音の塊」が整然と重厚に響き、ドラマチックな展開を増幅させる。整然としたジャジーでブルージーな響きは、否が応でも「ジャズ」を強烈に感じさせる。そして、特徴的なのは、ユニゾン&ハーモニー、アンサンブルが画一化せず、自由度が高く、バリエーションに富んでいるところ。サウンドのパーツそれぞれがカラフルなのは、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルの自由度が高く、バリエーションに富んでいるからだろう。

そんな「確立されたミンガス・ミュージック」がこの『道化師』にギッシリ詰まっている。前作『直立猿人』よりも旋律が美しく、展開がドラマチックで聴き易い。ミンガスのブンブン鳴り響く重低音ベースも心おきなく堪能出来る。

「ミンガス・ミュージック」は何たるか、を感じるには絶好の一枚が、この『道化師』。かなり重厚な内容のモダン・ジャズなので、その迫力に押されるかもしれないが、これが「ジャズ」である。スピーカーの前で、そこそこの音量で、この「ミンガス・ミュージック」を体で受け止めていただきたい。
 
 

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2022年7月31日 (日曜日)

『Cumbia & Jazz Fusion』再び

久々に「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」のリーダー作を一気に聴き直したくなった。ミンガスのキャリア初期の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』 を聴いて、雄大なオーケストラルな音世界、正統なモダン・ジャズのアレンジを踏襲した重厚な音作り、しっかりと統率されたグループ・サウンド、に感じ入って以来、節目節目でミンガス・ジャズを聴いてきた。

僕はミンガス・ジャズには、モダン・ジャズの「基本中の基本」の音作りが宿っていると感じている。エリントン・ジャズを踏襲し、当時のジャズの最新の演奏トレンドを積極的に取り込み、何時の時点でも、その時点での「先端を行くジャズ」を表現している。つまり、モダン・ジャズを常に進化させている訳で、これは音楽を創造していく上での「基本中の基本」で、ミンガス・ジャズはそれをアルバム毎に、メンバー一体となって表現している。

マイルスと同じレベルで、モダン・ジャズを進化させ続けたミンガス・ジャズ。そんなミンガス・ジャズをもう一度、網羅的に体験したいと思い立った。今回は、遺作からキャリア初期に遡って、ミンガスのリーダー作を聴き直していく。逆に、そのアプローチの方が、ミンガス・ジャズの進化を感じ取れ易いと考えた。

Charles Mingus『Cumbia & Jazz Fusion』(写真左)。1976年3月はローマ、1977年3月はNYでの録音。ビッグバンド編成に、バズーンやオーボエ、イングリッシュ・ホルン、バスクラなど、木管楽器や多くのパーカッションを参入させているので、パーカッションの表記はオミットさせていただく。ドラムに永遠の相棒、ミンガスのベースの最高のパートナーであり、最高のリズム隊を構成するドラマー、ダニー・リッチモンドはちゃんといる。

LP時代の正式な収録曲は2曲のみ。A面を占める「Cumbia and Jazz Fusion」とB面を占める「Music for "Todo Modo"」の2曲。CDリイシュー時のボートラである「Wedding March/Slow Waltz」と「Wedding March/Slow Waltz [alternate take]」は蛇足な追加収録として、本来のアルバム作品としては不要なので、常にオミットして聴いている。
 

Charles-minguscumbia-jazz-fusion

 
"Cumbia(クンビア)"とは、カリブ船沿岸の黒人たちが多く住みついた漁村を中心に広がった、南米の北端に位置するコロンビアを代表する音楽のことで、アフリカン・ネイティヴぽく長閑で土着的な響きが特徴。"Jazz Fusion"は、1970年代後半、「融合」のジャズとして一世を風靡した演奏トレンドのことを指すのだろうが、ここでは、ジャズの歴史的な演奏方法、演奏トレンドの全てが詰まっていて、それが違和感なくミックスされ、展開されていくミンガス・ジャズの「融合」を指すのだと思う。

1曲目の「Cumbia & Jazz Fusion」は、収録時間28分強、長尺の力作。その演奏は、クンビアの長閑でホンワカした演奏から、ハードなジャズ・オーケストラまで目眩く「ジャズ絵巻」。全体的にスピード感のある、非常に優れたジャズ・オーケストラ。クンビアの調べの存在が、この演奏には「ジャズのルーツ」を感じさせる、実に印象的な演奏になっている。クンビアとジャズの「融合」。僕はこの演奏が大好きだ。

2曲目の「Music For "Todo Modo"」は、トランペットやサックスのフロント楽器による映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏から入ります。それが5分ほど経つと、ちょっと捻りの入ったフリーキーな演奏に早変わり。再び、映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏に戻り、次にやって来るのは、正統派ハード・バップな演奏。ミンガスの骨太ベースが響き渡って、この2曲目の演奏は、ジャズの演奏トレンドの「融合」。ミンガス・ジャズの真骨頂である。

途中でダレない構成力と演奏力。この盤に詰まっているメロディーは、意外とキャッチャーであり、ソフト&メロウでもある。時に、フリーキーにアブストラクトにも展開するが、それはジャズが故の、即興演奏を旨とするジャズとしての必然でもある。ミンガスの考える「フュージョン・ジャズ」がこの盤に詰まっている。

ミンガスは、この素晴らしい内容の「融合」ジャズをものにしてリリースした後、翌年早々に鬼籍に入ることになる。潔いと言えば潔い、ミンガスと言えばミンガスらしい、最後のミンガス・ジャズの記録である。
 
 

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2022年6月21日 (火曜日)

ミンガスとホーズの邂逅の記録

昨日、書いたのだが、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤については、だいたい、新装リイシューされるタイミングで、その存在を思い出し、おもむろに聴き直して、再び感動する。のだが、実はこの盤も、そういった、20年ほど前に聴いたっきり、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になっていた類のものである。

Charles Mingus『Mingus Three』(写真左)。1957年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Hampton Hawes (p), Dannie Richmond (ds, tambourine (overdubbed))。米国西海岸からニューヨークへやってきたホーズが、ミンガスとたまたま出会って、リッチモンドを誘って録音した音源だそうだ。

「怒れるベーシスト」ミンガスは、大型のコンボやビッグバンドで演奏することが多く、ピアノ・トリオで録音するのは珍しい。トリオ演奏でのミンガスといえば、デューク・エリントンとマックス・ローチとの『Money Jungle』くらいしか思い浮かばない。逆にホーズはトリオでの演奏が多く、トリオ演奏でその個性と実力を発揮するタイプである。

全7曲中、2曲がミンガス作、1曲がホーズ作、他はスタンダード曲。ミンガス&ホーズ作の曲も良い感じだが、スタンダード曲のアレンジが、実にミンガスらしいもので感心する。
 

Charles-mingusmingus-three

 
他のスタンダードのアレンジとは、一風趣きが異なって、かなり聴き応えがある。音楽監督な役割が得意なミンガスの面目躍如。かなり「ノって」いたのだろう、ミンガスのベース・ソロも躍動感溢れ、変幻自在な重低音をブンブン響かせて絶好調である。

ホーズが何時になくバリバリ、バップなピアノを弾きまくっている。当時、西海岸では、洒落たアーバンな弾き回しのトリオ盤を出していた頃なので、このバリバリなバップらしい、カッ飛んだ弾きっぷりにはビックリ。しかし、このバリバリなバップ・ピアノがホーズの本質なんだろう。とてものびのびと弾きこなしている。タッチも切れ味が良く、ホーズも絶好調だ。

リッチモンドのドラムも硬軟自在で、ミンガスとホーズに追従する。タンバリンをオーバーダブしたりして、リッチモンドも絶好調。

発売65周年を記念して、貴重な未発表音源を収録したデラックス・エディションで、CDリイシューされて、そのタイミングで20年振りに聴き直した『Mingus Three』。その素晴らしい出来に思わずビックリ。名盤はいつ聴いてもやはり名盤だなあ、と感心することしきり、である。
 
 

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