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2018年10月 3日 (水曜日)

ミンガスは「ながら」に向かない

昔から「ながら族」であった。中学の頃から、音楽を聴きながら勉強すると能率が上がった。学生の頃は音楽を聴きながら、本や論文を読むと能率が上がった。この「ながら」の音楽については向き不向きがある。基本的にフュージョン・ジャズは向くが純ジャズは向かない。音楽の良し悪しとは比例しない。逆に良い音楽の方が「ながら」に向く。

逆に「ながら」に絶対に向かない音楽もある。ジャズで言えば、チャールズ・ミンガスの諸作は絶対に「ながら」に向かない。しっかりとステレオの前に陣取り、スピーカーに対峙して、しっかり聴き込むことが必要になる。ミンガスの音楽はそういう類のものである。アルバムや演奏には必ずテーマがあり、そのテーマについてジャズの演奏で語るように表現する。それがミンガスの音楽である。

つまり、ミンガスの音楽を楽しむということは、ミンガスによる様々な音の表現を楽しむことであり、ミンガスの作曲能力と演奏におけるリーダーシップを愛でることである。それには「ながら」は向かない。よって、ジャズを聴き始めてミンガスの音楽に出会って以来、ミンガスのリーダー作は「ながら」で聴いたことが無い。
 

The_clown_mingus  

 
Charles Mingus『The Clown』(写真左)。1957年2月と3月の録音。ちなみにパーソネルは、    Charles Mingus (b), Shafi Hadi (as, ts), Jimmy Knepper (tb), Wade Legge (p), Dannie Richmond (ds), Jean Shepherd (narration)。演奏についてはクインテット構成。たった5人でこれだけ分厚くて濃厚な音を出すのだから、ミンガスのアレンジ能力も素晴らしいものがある。

傑作である。全曲、ミンガスの作曲なので統一感が抜群。全編に渡って、ミンガスの重量感溢れるベースが大活躍。ミンガスのベーシストとしての実力と個性を確認するのにも好適なアルバムでもある。冒頭の有名な「ハイチ人の戦闘の歌」を聴けば、このアルバムの音世界の傾向が如実に判る。フロント2管とドラムも攻撃的で重量感抜群。加えて、タイトル曲の「道化師」などはナレーション入りで、現代ジャズのトレンドを50年以上も先取りしている。

ミンガスの音楽は「新しい」。現代ジャズの世界にもダイレクトに通用する、先進的なフレーズや仕掛けが施されていて、聴くとその内容の先進性に驚く。ミンガスのアルバムを聴く度に「ジャズはアートである」という感覚を噛みしめる。1957年時点で既にフリー・ジャズの片鱗も聴かせてくれており、ミンガスの音楽が如何に先取性に溢れていたか、を再認識する。ミンガスの音楽は「ながら」に向かない。しっかりと対峙して聴くべし。

 
 

東日本大震災から7年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月27日 (木曜日)

ウェザー・リポートのフォロワー

昔からベーシストのリーダー作を聴くのが好きである。ベースのテクニックをメインにした盤は当たり前なんだが、ベースという楽器のポジションを活かした「グループ・サウンド」をプロデュースしコントロールした盤が良い感じだ。ベーシストの好みの音の傾向、音の個性をバンドメンバーに浸透させ、グループ・サウンドを創成する。これがなかなかに味わい深い。

今日聴いたベーシストのリーダー作が『ARC Trio』(写真左)。つい先月のリリース。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Scott Kinsey (key), Gergö Borlai (ds)。ベーシスト、ジミー・ハスリップがリーダーのトリオ作。ジミー・ハスリップは、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとしても知られる腕利きベーシストである。

ジミー・ハスリップは1951年生まれなので、今年で67歳。大ベテランの域である。しかし、この盤ではエレベを現代ジャズにおける最新の音で弾きまくる。音だけ聴くと30歳代の若手中堅バリバリのベーシストの弾く音かと思った。さすがベーシストがリーダーの盤、適度に捻れた、ベースの特徴あるフレーズが前面に出ていて、聴いていてとても楽しい。
 

Arc_trio_album

 
ハスリップのベースは、ジャコほどのバカテクでは無いが、相当に高度なテクニックを駆使しながら、コンテンポラリーで流麗なアドリブ・ラインを事も無げに弾き回している。このクールで熱いアドリブ・ラインが良い。キンゼイのキーボードが凄い。その表現力と音の厚みの出し方、流麗な弾き回し、素晴らしいの一言。そこに、現代の最新のポリリズムが聴いて楽しいボーライのドラム。

この盤を一言で表現すると「現代のウェザー・リポート」。ウェザー・リポートのジャコ期の音の個性がそこはかとなく漂う。しかも、これがトリオの演奏か、と驚く位に音の厚みがある。音の厚みがありながら、シンプルでクールに疾走する躍動感。このトリオにショーターばりのテナーが入れば、完璧にウェザーの音。このウェザーの音を彷彿とさせる展開が意外と「新しい」。

ウェザーのジャコ期が1970年代後半から1980年代初頭だから、あれからもう既に約40年経つ。この盤の音はウェザーをパクったのでは無く、正統なウェザー・リポートのフォロワーの音である。音の重ね方や音の捻り方などは現代のジャズの香りが充満していて、ウェザーのフォロワーな音とは言え、古さは全く感じ無い。現代のコンテンポラリーな純ジャズとしての秀作である。

 
 

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2018年9月 1日 (土曜日)

適用性の高さこそが最大の個性

何もジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集のアルバム紹介に挙がる盤ばかりが「好盤」では無い。最近ではジャズに関する単行本が結構、出版されるようになったので、この単行本からも「好盤」の情報を得ることが出来るようになった。しかし、最終的には、自分の目と手でアルバムを探索し、自分の耳で聴いて、自分なりの「好盤」を探し出す。これが、ジャズ盤コレクターの醍醐味である。

この盤は、ジャズ・ベーシストのリーダー作を物色していた時、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)の名に出くわし、このベーシストのリーダー作を聴き進めていって、出会った盤である。John Patitucci『Sketchbook』(写真左)。凄腕ベーシスト、パティトゥッチ、この盤では、エレクトリック・ベースによるプレイがメイン。超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがソロが魅力的。

1990年のリリース。時代は純ジャズ復古の後、メインストリームな純ジャズと、フュージョン〜スムース・ジャズがバランス良く存在していた時代。ちなみにパーソネルは、John Patitucci (b), Michael Brecker (ts), John Scofield (g), Peter Erskine (ds), Vinnie Caliuta (ds), Terri Lyne Carrington (ds), Alex Acuna (per), John Beasley (p), David Witham (synth), Jon Crosse (ss), Dori Caymmi (vo), Ricardo Silveira (g), Paulinho Da Costa (per), Judd Miller (synth)。

 

John_patitucci_sketchbook  

 

フュージョン・ジャズ系の強者どもを集めた力作。個人的にはまだまだやりたいジャズのイメージが沢山あったみたいで、この盤について、かなりバリエーションに富んだ内容になっている。明確なフュージョン・ジャズあり、コンテンポラリーな純ジャズ風の演奏あり、といろいろやっているのだが、パティトゥッチのエレクトリック・ベースの個性は、どんな内容のジャズにおいても一貫しているので、アルバム全体の統一感は損なわれていない。

彼のエレベはこの盤で聴くと、ほぼ完成の域に達した、といって良いだろう。彼の超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがアルバム全体でフィーチャーされていて、彼のベーシストとしての力量が良く判る内容になっている。あれもできる、これもできる、で器用貧乏とか、八方美人的とか、一貫性が無いとか揶揄されるが、僕はそうは思わない。その多様性、適用性の高さこそが、パティトゥッチのベースの最大の個性だろう。

これだけ適用力の高いベーシストであれば、フロントを張る楽器も活き活きとしたパフォーマンスを発揮する。この盤でも、テナーのマイケル・ブレッカー、エレギのジョン・スコフィールドが胸のすくような快演を展開している。そうそう、ビニー・カリウタのドラムもパティトゥッチのベースに触発されて躍動感抜群。演奏のリズム&ビートを支える役割のベース。演奏全体の出来不出来は、このベースに依るところが結構あるんだろう。そういう意味で、この盤はベーシストのリーダー作として優れた内容の好盤と言える。

 
 

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2018年8月28日 (火曜日)

これも魅力的なジャズ・ベース盤

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、聴き応えがあるのは、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースだろう。自らのベースはあまり前面に出ることは無くて、ベースのテクニックを披露するのは要所要所に留める。自らはその音世界の創造を支える側に回るのだが、セルフ・プロデュースの手腕が優れていればいるほど、優れたジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

例えば、この盤はそういう系統のジャズ・ベーシストのリーダー作だろう。Tom Kennedy『Just Play』(写真左)。2012年9月25日の録音。2013年のリリース。トム・ケネディは、アコベとエレベの両刀使い。特にこの盤ではアコベが素晴らしい。ちなみにパーソネルは、Tom Kennedy(b) Dave Weckl(ds) Renee Rosnes(p) George Garzone(ts)のカルテットをメインに、Mike Stern, Lee Ritenour(g) Tim Hagens(tp) John Allred(tb) Steve Wirtsz(ts)が曲毎に客演しています 。

中堅どころの強者揃い。これだけのメンバーが揃えば、アルバムの良し悪しについては、後はリーダーのプロデュース能力次第ということになるのですが、この盤、トム・ケネディのリーダーシップについては申し分ありません。それぞれの楽器が、それぞれの個性通りに魅力的なパフォーマンスを展開してくれています。これは、このレコーディング・セッションの「狙いと基本的考え方」が明確で、メンバー全員の一致した理解によるものだと思います。
 

Just_play  

 
この盤では、リーダーのトム・ケネディはアコースティック・ベースに専念しているのだが、このアコベが実に良い。音も良い、テクニックも良好、特に、演奏の底を支えるビート感が抜群に良い。これはフロントに立つ楽器としてはやりやすいでしょうね。それが証拠に、この盤、選曲としては、スタンダード曲+ジャズメン・オリジナル曲で構成されていますが、特にスタンダード曲のクールな躍動感が魅力的です。トム・ケネディのアコベのビートが実に見事に効いています。

リズム・セクションのパートナーとしては、共演歴の長いデイヴ・ウェックルがドラムを担当し、理知的でリリカルなピアノにリニー・ロスネスが座ります。このリズム・セクションが強力で、堅実でオーソドックスなリズム&ビートを供給しつつ、意外と今の新しいネオ・ハードバップの響きを供給してくれています。意外とファンクネスがしっかり漂うところも良いなあ。

最近の純ジャズって、ファンクネス排除、スイング感排除な音作りが多いのですが、この盤は例外で、かなりオーソドックスな純ジャズの響きです。冒頭からの「Airegin」「Moanin' 」「he Night Has A Thousand Eyes」の大スタンダード曲3連発は何度聴いてもグッときますね。あまりに「どスタンダード」なので、聴く前はちょっと警戒しますが、聴いてみて、かなり今の新しいネオ・ハードバップな音がメインで、ホッとします。好盤です。

 
 

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2018年8月27日 (月曜日)

スタンリーの「RTF」な最新作

ベーシストのリーダー作は聴いていて面白い。ベースという楽器の性格上、ジャズ演奏において、フロント楽器を担うことは無い。音のバリエーションが狭いので、旋律弾きを担当することはあるが、相当なテクニックの持ち主に限る。リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求するケースがほとんどになる。

Stanley Clarke Band『The Message』(写真左)。今年6月のリリース、フュージョン・ジャズ系のベーシストのレジェンド、スタンリー・クラークの4年振りの新作。スタンリー・クラークと言えば、1960年代後半、ニュータイプの純ジャズ・ベーシストとして頭角を現し、1970年代前半には、チック・コリアのReturn to Forever(RTF)を結成。アコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベーシストとして人気を博した。

1970年代後半には、ジャズ・ファンクをメインにスタイルを鞍替え。1980年代に入ると、ほとんどブラコン化して、ジャズ・ベーシストとしての面影は無くなった。同時に僕自身、彼のベースには全く興味が無くなって、その名前も忘れ去っていた。が、この5〜6年前から、コンテンポラリーな純ジャズに戻って来たみたいで、まだまだブラコンの影がちらつくが、まずまずのリーダー作をリリースし始めた。そして、今回の最新作である。聴いて思わず「ニンマリ」。
 

Stanley_clarke_the_message

 
これって「RTF」やん。昔々、自分のリーダー作では「もうRTFの音は追求しない。RTFの音はチックの音だ」なんて拗ねていた。しかし、彼のアコベとエレベの両刀遣いのバカテク・ベースは、RTFの音の中でこそ活きる、というか、RTFの音の中でこそ映える。ブラコン的な音の中では、他のバカテク・ベーシストとの違いが出てこない。しかもパターンが画一化していて、はっきり言って面白く無い。

若手メンバーを中心にしたメンバー構成で、これもスタンリー・クラークには珍しいこと。今までは、気心知れた先輩〜同年代のミュージシャンとの共演がほとんどだったので、彼がリーダーとして、若手ジャズメンとガップリ組んだアルバムを作るとは思わなかった。そう、スタンリー・クラークは、このアルバムで「リーダーとして、グループサウンズにケアしつつ、自分のやりたいジャズの演奏トレンドを追求」しているのだ。

この最新作に詰まっている、現代の「RTFの音」のイメージに思わず、ウキウキ。コンテンポラリーな純ジャズに回帰した様なスタンリー・クラークの最新作はなかなか良い内容だ。スタンリーいわく「私の話より、バンド・メンバーの話を紹介してほしいんだ」。確かに、若手メンバーをメインにした演奏はなかなかのレベル。次の作品が期待出来ます。

 
 

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2018年8月 6日 (月曜日)

The Chuck Rainey Coalition

チャック・レイニー(Chuck Rainey)。米国のベーシスト。セッション・ベーシストとして、ソウル、R&B、ジャズ、クロスオーバーを中心に幅広いジャンルで活躍。ボーダーレスなベースで、それぞれの音楽ジャンルに適したフレーズを弾き分ける。それでいて、音色と手癖はレイニーなれではのもので、セッション・ベーシストとしても、純粋にベーシスト単独としても優れた才能の持ち主であった。

Chuck Rainey『The Chuck Rainey Coalition』(写真左)。1972年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Rainey (b), Bernard Purdie, Herb Lovelle, Jim Johnson, Ken Rice (ds), Billy Butler, Cornell Dupree, Eric Gale (g), Richard Tee (org,p), George Stubbs (p), Montego Joe, Specs Powell, Warren Smith (per), Trevor Lawrence (ts), Melvin Lastie (tp) 。

パーソネルはじっくり眺めると、後の「伝説のフュージョン・バンド」、スタッフの主要メンバーが名を連ねている(ドラムのスティーヴ・ガッド以外)。他のメンバーもクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの強者ばかりで、このアルバムのセッション、結構、充実していたんやろうなあ、と思う。本当に皆、楽しそうに演奏しているのが良く判る。
 

The_chuck_rainey_coalition_1  

 
録音年は1972年。クロスオーバー・ジャズが台頭していた頃。演奏のアレンジはまだ「もったり」していて、洗練されていない。切れ味も不足しているし、メリハリも弱い。それでも、レイニーのベースをメインに、演奏全体のグルーヴ感は、後のフュージョン・ジャズに直結するものだ。

楽曲とアドリブ・フレーズの「ソフト&メロウ感」も、後のフュージョン・ジャズを先取りした様な雰囲気。こういう演奏が1972年にリリースされていたことに驚く。鑑賞前提の演奏、ながら聴きをしながら演奏テクニックに興ずる。そんなフュージョン・ジャズのプロトタイプがこのアルバムの中に詰まっている。

それにしても、チャック・レイニーのベースはいつ聴いても「痺れる」。ピチカートのグルーヴ感、裏ビートを効果的に使った個性的なフレーズ、印象的なピッキング・ハーモニクス。どれもが、後のエレクトリック・ジャズにおけるエレベの先進的奏法を先取りしている。アルバムの演奏の内容は発展途上だが、後のフュージョン・ジャズの演奏の基本形が、このアルバムのセッションでほぼ固まっている。面白い盤である。

 
 

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2018年7月30日 (月曜日)

ブロンバーグの「ジャコ称賛」盤

ベーシストがリーダーのアルバムは面白い。ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くある。テクニックの多彩さを追求するものもあれば、ベースの楽器自体のバリエーション(ピッコロ・ベースやチェロなどの活用)を追求したものもあって、聴いてみるとなかなかに面白い。

Brian Bromberg『Portrait of Jaco』(写真左)。2002年のリリース。当時のファーストコール・ベーシストの一人、ブライアン・ブロンバーグの「ジャコ・パストリアス名演作品集」。ジャコはエレベのイノベーターであり、早逝のレジェンドである。そんなジャコの作品をメインに、ブロンバーグがベースを弾き倒したアルバムである。

これだけ徹底的にジャコの作品を弾き倒したトリビュート盤はあまりない。ブロンバーグの優れたところは、ジャコの作品をジャコ風にベースを弾くのでは無く、自分流に置き換えて、ジャコのそれぞれの作品を弾き倒している。この自分流に置き換えて、というところがミソ。ジャコの作品を取り上げることで、ジャコをトリビュートしつつ、自分流のベースを弾くことで、ちゃっかり、ブロンバーグのベースを全面に押しだして、アピールしている。
 

Portrait_of_jaco_1  

 
ブライアンは様々なタイプのベースを駆使している。ピッコロ・ベースをはじめ各種ベースを採用して、それぞれのタイプのベースの可能性を改めて引き出している。テクニックは申し分無い。ジャコはエレベのイノベーターであったが、ここでのブロンバーグはアコベも弾いているところが面白い。アコベならではの響きや音が、ジャコのエレベとは違ったニュアンスに聴こえて、とっても興味深い。

バックを支えるミュージシャンも、Bob Mintzer (sax)、Alex Acuna (per)、Jeff Lorber(el-p) などの名手もゲスト参加していて、コンテンポラリーな純ジャズな、端正で締まった内容の演奏が繰り広げられている。グループ・サウンドとしても質が高く、聴き応えがある。単なるベーシストのテクニックのショーケース的な盤に留まっていないところが、好感度ポイントである。

このアルバム、「低音シリーズ」の一枚らしく、ベースについては、しっかりとした質の良いの良い重低音で録音されている。ベースを弾き倒しているアルバムなので、これだけしっかりとベースの音が録音されていると、ベースの音色、テクニック双方を十分に堪能できる。ジャズ・ベースの音に魅力を感じるジャズ者の方々にお勧めの好盤。

 
 

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2018年7月29日 (日曜日)

「ネオ・スピリチュアル」の先駆

ベーシストがリーダーのアルバムを聴くのが好きだ。ベーシストがリーダーのアルバムは面白い。ベーシストがリーダーのアルバムには2つの傾向がある。ひとつはベースの演奏自体が非常に特徴的な場合で、その特徴的な演奏内容を全面に押し出したスタイル。もうひとつは、ベーシストが卓越した作曲能力、編曲能力を有する場合で、この作曲能力、編曲能力にスポットを当てて、リーダー・アルバムを演出するケースである。

ベーシストがリーダー作で面白いのは後者で、この後者の代表的ベーシストが「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」。ジャズ・ベーシストの伝説のレジェンドであり、卓越したコンポーザー・バンドリーダーである。この「コンポーザー・バンドリーダー」の部分がミンガスの場合、突出していて、聴きどころのあるリーダー作を多くリリースしている。どれもが独創的で全くマンネリが感じられない。非常に優れた成果ばかりである。

『Mingus Mingus Mingus Mingus Mingus』(写真左)。1963年1月&9月の録音。最近、久し振りに聴き直したミンガスのリーダー作である。ビッグバンド構成&アレンジの楽曲がメインで、心ゆくまで、ミンガス・ミュージックを堪能することが出来る。ミンガスの音楽は重心が低く、4ビートが基調であるが、フリー一歩手前で留まりながらも自由度は限りなく高い。フレーズの展開も多彩で、バリエーション豊か。マンネリズムなど無縁である。
 

Mingus_mingus_mingus

 
収録曲を見渡すと「当時の新曲ばかりやなあ」と思うが、演奏を聴くと「あれっ」と思う。この盤、実はタイトル違いの再演の曲が多く収録されている。アレンジの焼き直し、アドリブ展開の洗い替えがメインなので、オリジナルの演奏に比べて、確実にバージョンアップされており、それが理由でこの盤、聴いていてかなりの充実度を感じる。

例えば、 冒頭の「II B.S.」は『The Clown』収録の「Haitian Fight Song」。5曲目の「Better Get Hit in Yo' Soul」は『Mingus Ah Um』収録の「Better Git It In Your Soul」。6曲目の「Theme for Lester Young」は同じく『Mingus Ah Um』収録の「Goodbye Pork Pie Hat」。7曲目の「Hora Decubitus」が『Blues & Roots』収録の「E's Flat Ah's Flat Too」。いずれもアレンジ、演奏内容共に、オリジナルの演奏を凌駕している。聴き応え満点である。

今の耳で聴くと、ラップの様なボイスの活用あり、ゴスペルを応用したファンクネス溢れるユニゾン&ハーモニーあり、最近流行の「ネオ・スピリチュアル」なジャズの雰囲気が漂っている。この盤の録音は1963年。今を去ること約55年前に、キャッチャーで構築美溢れる「ネオ・スピリチュアル」なジャズの先駆的な音が残されていたとは。ミンガスの先進性に改めて敬意を表した次第。好盤です。

 
 

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2018年5月 7日 (月曜日)

ネイチャーな響きは「ECM」盤

「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズと言えば、欧州ジャズ、特に「ECMレーベル」の諸作を思い出す。ECMレーベルには、自由度の高い「ニュー・ジャズ」傾向の、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるアルバムが多数存在する。

特に1970年代、1960年代からのメインストリーム・ジャズ、1960年代終わり頃から現れ出でたクロスオーバー・ジャズ、そして、1970年代半ばからのジャズ界最大のブームとなった、フュージョン・ジャズが渦巻く中で、ECMレーベルはそんなジャズ界のトレンドには我関せず、ECMレーベル独特の音世界を有した「ニュー・ジャズ」なアルバムをリリースし続けた。

そんなECMレーベルのアルバムの中に、メインの演奏トレンドとして存在する「ネイチャー(自然)」な響きを持つニュー・ジャズ。スイング感や4ビート感に全く依存しない、欧州独特のジャズの音世界。ECMレーベルの真骨頂とも言うべき音世界で、これに填まると、とことんである。実は私もこのECMレーベルの「ネイチャー(自然)」な響きを持つニュー・ジャズにゾッコンである。
 

The_colours_of_chloe

 
Eberhard Weber『The Colours of Chloë』(写真左)。1974年の作品。ECM1042番。ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b, cello, ocarina, voice), Rainer Brüninghaus (p, syn), Peter Giger (ds), Ralf Hübner (ds,track 2), Ack van Rooyen (flh), Gisela Schäuble (voice), celli of the Südfunk Orchestra, Stuttgart。完全に欧州系ニュー・ジャズの担い手中心の布陣と見受けられる。ほどんど馴染みの無い名前ばかり。

ECMレーベルらしい音が詰まった好盤である。フォーキーでネイチャーな響きが芳しい、ファンクネス皆無の即興演奏。欧州ジャズ的な響き。ECM独特のエコーが美しい。そして、演奏の底をウェーバーのベースが支える。アルバム全体に、ジャズだけでは無い、ジャズ・ロックやプログレ、ミニマル・ミュージック、果ては環境音楽まで、様々な音の要素が渾然一体となって、独特の音世界を形成している。

「ネイチャー(自然)」な響きを持つジャズは、ECMの十八番。この『The Colours of Chloë』は、その代表的な一枚。ECMレーベルの音を感じるには最適な一枚でしょう。ジャケットもユニーク。ジャズ盤なのか現代音楽盤なのかプログレ盤なのか、一見、判断に苦しむ、絵画風のアート・ワークはウェーバーの妻マイヤによるもの。これも僕は以前より気に入っています。

 
 

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2018年4月 4日 (水曜日)

ECMレーベルの録音の個性

ジャズ・レーベルの中でも、ブルーノートとECMは録音された音の個性がとっても強い。どんな盤でも暫く聴いていると「これって、ブルーノートちゃう?」とか「これってECMでしょ」となるほど、録音された音の個性が強い。これは、レーベルの総帥プロデューサーの明確な音への意向とそれに応える録音エンジニアの成果である。

例えば、Dave Holland Quartet『Conference of the Birds』(写真左)。1972年11月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Holland (b), Sam Rivers, Anthony Braxton (reeds, flute), Barry Altschul (perc, marimba)。ピアノレスのサックス2管フロントの変則クインテット。しかも、フロント2管がリバースとブラックストン。濃い。めっちゃ濃いフロントである。

冒頭の「Four Winds」を聴けば、恐らく、ジャズ者中級者の方はECMレーベルの音と判るのではないか。それほど、個性的な音である。演奏内容としては、モードジャズを極端に適用して自由度を最大限に増幅した「ニュー・ジャズ」的な演奏と、欧州ジャズお得意のファンクネス皆無な、クールで切れ味の良い怜悧なフリー・ジャズ的な演奏が交互に出てくるもの。
 

Conference_of_the_birds

 
欧州的なファンクネス皆無な、クールで切れ味の良い怜悧な自由度の高いインプロビゼーション中心の純ジャズって、他のレーベルでもよくあるもの。それでいて、なぜECMだけが聴き分けられるのか。僕の場合は「演奏に被るエコー」と「ドラムやパーカッションの音の粒立ちと倍音の奥行き」を判断基準としている。つまりは独特の録音環境と、レーベルとして厳格に仕様を定めた「個性的なミックスとマスタリング」にあると睨んでいる。

この盤もフロント2管、リバースとブラックストンのテナーにかかるエコーが独特である。米国ジャズ盤にない、深くて濃いエコー。これがまあトゥーマッチ寸前、絶妙のレベルでのエコー。これ素晴らしい仕事です。そして、アルトシュルのパーカッションの粒立ちの良さと響きの奥行き。これがECMレーベル独特のものなのだ。長年ECMレーベルを聴き親しんでいると必ず判別できる。

そんな音の個性を纏って、ファンクネス皆無な、クールで切れ味の良い怜悧なフリー・ジャズ的な演奏が展開されるこの盤。欧州ジャズの美味しいところがギッシリ詰まっていて、初期のECMレーベルの音を明確に表現している好盤として良いかと思う。しかし、その自由度の高い演奏はジャズ者初心者の方々にはちょっと重荷かも。この盤は謹んで、ジャズ者中級者以上の方々にお勧めしたい。

 
 

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