2023年3月11日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・260

小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ・シーンでは、ほとんど名前が売れていないジャズマンの好盤に出くわすことが多い。

こんなに優れたアルバムを出すジャズマンを僕はこれまで知らなかったのか、と思って慌ててネットでググって見ると、ほとんどが、ビッグバンドで長年活躍していたり、サイドマンがメインで活躍していたジャズマンで、ビッグバンドなど所属するバンドの中に埋没して、その個人名が表面に出てこないのだ。

David Kikoski『Sure Thing』(写真左)。2016年2月3日、ブルックリンでの録音。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), Boris Kozlov (b)。耽美的でリリカル、バップでモーダルなデヴィッド・キコスキーのピアノと、堅実実直なボリス・コズロフのベースとのデュオ作品になる。

デヴィッド・キコスキーは、1961年、ニュージャージ生まれのジャズ・ピアニスト。今年で62歳のベテランである。1985年辺りから、NYで活動。様々な人気ジャズマンのグループに参加、特に、ミンガス・ビッグ・バンド等の活躍がよく知られるピアニストとのこと。僕はランディ・ブレッカーのグループで、キコスキーの名前を薄らと覚えているが、彼のピアノをじっくりと聴いたことはなかった。

本作は全8曲。キコスキーのオリジナルが4曲、その他の曲は、ジャズメン・オリジナルやスタンダード等。ベースのコズロフは、キコスキーと同じ、ミンガス・ビッグバンドの一員で、ビッグバンドの活動の中で共演している、お互いのことを良く知った間柄。まず、キコスキーのオリジナル曲では、キコスキーとコズロフの2人が、素敵なアレンジの下、お互いの音をよく聴き、お互いの音を引き立たせ、適度なテンションの中、気心知れた即興演奏の妙を繰り広げている。
 

David-kikoskisure-thing

 
ジャズメン・オリジナルは、チック・コリアの「Quartet #1」、ジョン・コルトレーンの「Satellite」を取りあげている。どちらの曲も「ピアノとベースのデュオでやる曲か」と思ったが、聴いてみて、とても上手くアレンジされていて、原曲の雰囲気も残っていて、デュオ演奏としても秀逸。スタンダード曲は「Sure Thing」。これもなかなかにマニアックな選曲だと思うのだが、バップっぽく演奏されていて、これも良い出来だ。

そして、ビックリしたのが「Fugue from “The Endless Enigma”」。聴いていて「これは昔かなり聴いた曲、これはロック」と思って、しばらく聴いていて、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)の4th.盤『Trilogy(トリロジー)』の中の「永遠の謎」であることに気がついた。即、ネットで調べて見て「ビンゴ!」。このフーガは注目度大。

資料によると、『Trilogy(トリロジー)』は、キコスキーが 12~13歳の頃のお気に入りのアルバムで、ロック・ミュージシャンがブルースやロックンロール、ブギウギやクラシックまでを演奏することに感動、自分もそのようなキーボード奏者になりたかったそうだ。いつかこの曲を演奏をしたかったとのこと。

このEL&PのFugue from “The Endless Enigma”」、キコスキーが言うように、かなりこの曲を聴き込んでいたのが、とても良く判る。原曲のイメージをしっかり押さえつつ、ジャズ化〜デュオ化のアレンジも秀逸、ジャズらしくアドリブ展開も良好、ロック曲の単なるカヴァーでは無い、良好にジャズ化されている。

キコスキーのピアノと、コズロフのベースとのデュオ演奏だが、キコスキーのピアノが前面に出ていて、キコスキーのピアノの個性がじっくりと味わえるバランスになっている。コズロフはキコスキーのフロントとしての演奏のベースラインと、演奏全体のリズム&ビートのコントロールを担っていて、地味ではあるが、堅実なベースで、このデュオ演奏に貢献している。

良いデュオ盤です。ジャズ盤紹介本や、ジャズ雑誌にそのタイトルが上がることがほぼ無い、それでいて、こういう優れた内容のジャズ盤がまだまだ沢山あると思ってます。小粋なジャズ盤の探索は止められませんね。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年2月 9日 (木曜日)

納浩一『琴線/ The Chord』です

もともと、ジャズ・ライフ誌は、日本のジャズの新盤を結構多く扱っているので、その時その時の日本のジャズの活性度合いや活躍度合いが良く判る。「Disc Grand Prix 年間グランプリ」でも、日本のジャズ・ミュージシャンの優秀盤が結構な数、上がっている。頼もしい限りである。

納浩一『琴線/ The Chord』(写真左)。2006年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、納浩一 (b), クリヤ・マコト (p), 則竹裕之 (ds), 小沼ようすけ (g)。「納浩一」=おさむ こういち、と読む。納浩一はベーシスト。和ジャズでは珍しいベーシストのリーダー作。2006年の作品なので、ちょっと古いが、内容は現代の耳にも十分に訴求する優れた内容。

収録曲各曲で、納浩一のベースがしっかりとした存在感を出しつつ、演奏のベースラインをガッチリと支えている。とにかく、納浩一のベースラインが力強く流麗で端正。フロントのフレーズを邪魔すること無く、納浩一のベースラインがクッキリ浮き出てくる。ベースの弾き方が素晴らしくハイテクニックなんだろう。
 

The-chord

 
そして、この盤、選曲が凄く良い。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半より、リアルタイムで聴いた、新しい世代の名曲がズラリと並ぶ。「Bud Powell」「Three Views Of A Secret」「Some Skunk Funk」「I Wish」などは、原曲がスッと思い浮かぶほどの愛聴曲。これを、シュッとしたクールなアレンジでカヴァーされる。そして、その底に、しっかりとハイテクニックな納浩一のベースがしっかりと流れている。

フロントを担うクリヤ・マコトが、溌剌としてエッジが快く立って、バリバリと躍動感溢れるピアノを弾きまくる。これがかなり「聴きもの」である。そして、ゲストで2曲に参加している小沼ようすけのギターが小粋で良い。たった2曲の参加だが、とても良いアクセント。冒頭の「Actual Proof」と6曲目の「Some Skunk Funk」で、バンバン弾きまくっている。

ベーシストのリーダー作として、内容優秀な好盤。何より選曲が良い。選曲が良くて演奏が良い。日本のジャズのみならず、グローバルなレベルで、このベーシストのリーダー作は高く評価されて然るべき内容だと思う。
 
 

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2023年1月19日 (木曜日)

禅問答の様なピアノ・トリオ

ピーター・アースキン(Peter Erskine)と言えば、伝説のエレジャズ・バンド「Weather Report」の黄金期のドラマーなので、フュージョン・ジャズ畑のドラマーという先入観があるんだが、どうして、硬派なメインストリーム系の純ジャズで叩かせても、相当の腕前を持っていることが判る。

Peter Erskine featuring John Taylor and Palle Danielsson『Juni』(写真左)。1997年7月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Taylor (p), Palle Danielsson (b)。ドラマーのピーター・アースキンがリーダーのピアノ・トリオ編成。

ピアノにジョン・テイラーが座る。ジョン・テイラーのピアノは昔から好きで、当ブログではあまり記事にしないが、ちょくちょくとその名を思い出しては聴いている「お気に入りのピアニスト」の一人である。そこにスウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソンがいる。英国のピアニストと北欧のベーシスト、そして、アースキンは米国のドラマー。録音はECM。ということで、出てくる音は、ECM印の欧州ジャズ・トリオな音。
 

Peter-erskinefeaturing-john-taylorand-pa

 
水墨画を見る様なトリオ演奏である。「侘び寂び」を忍ばせつつ、硬質でクリスタルで深いエコーを伴って、幽玄な拡がりをもって、力強く漂う楽器の音。ビートをしっかり効かせた、限りなく自由度の高いモーダルな展開。禅問答の様な、集中してお互いの音に耳を傾けながら、打てば響く響いては打つ、一体感溢れる高度なインタープレイ。現代音楽に通じる前衛的なタッチでフリーの如く迫る即興演奏。

独特の響きを湛えたピアノ・トリオ演奏である。北欧ジャズ風ではあるが、北欧ジャズほど流麗でリリカルでは無い。ジョン・テイラーのタッチはどこかバップ、そして、前衛風。アースキンのドラムは柔軟度が高く、ポリリズミックなドラミングは変幻自在であり硬軟自在。ダニエルソンのベースは、しっかりと安定したビートを効かせて、バンド全体の自由度の高いインプロを破綻させることは無い。

「禅問答の様なトリオ」と形容されるこのピアノ・トリオ、その特徴と個性がこの盤に溢れている。現代ジャズにおける、ニュー・ジャズな響きを宿したピアノ・トリオとして「ピカイチ」の出来だろう。あまり話題に上らないピアノ・トリオだが、ECMで4枚のアルバムをリリースしていて、どれもが秀逸な出来。もっと注目されてもいいピアノ・トリオのパフォーマンスである。
 
 

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2023年1月14日 (土曜日)

ライヴ「不思議の国のミンガス」

チャールズ・ミンガスのリーダー作を聴き継いでいると、曲毎のテーマでのフロント楽器の奏でるフレーズを聴くと、すぐに「これはミンガスの音」だと判る。ミンガス・ミュージックの音の響きは独特の個性があって、これは、あの偉大なジャズ界のレジェンド、デューク・エリントンの音に通じるもの。

ミンガスはエリントンを一生敬愛していたと言い伝えれれる位、ミンガスはエリントン・ミュージックの信奉者で、ミンガス・ミュージックは、エリントン・ミュージックの継承とも言えるだろう。ミンガスは事あることに、エリントンに対する「畏怖」を表明し、エリントン・ミュージックを効果的に借用する。

Charles Mingus『Jazz Portraits: Mingus in Wonderland』(写真左)。1959年1月16日、NYの「Nonagon Art Gallery」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), John Handy (as), Booker Ervin (ts), Richard Wyands (p), Dannie Richmond (ds)。

ジョン・カサベテスの映画処女作「アメリカの影」のために書かれた曲(「Nostalgia in Times Square」と「Alice's Wonderland」)などをミンガス流にアレンジしてライヴ録音したもの。フロント2管+リズム・セクションのクインテット編成。わずか5人で演奏しているとは思えないほど、演奏される音は「分厚く迫力がある」。
 

Jazz-portraits-mingus-in-wonderland

 
フロント2管のユニゾン&ハーモニーに厚みがあって、リズム隊のピアノとドラムの低音が効果的に重なって、その底に「超重量級」のミンガスのブンブン・ベースが鳴り響いて、分厚い音圧の高い演奏が耳に飛び込んでくる。これが、ミンガス・ミュージックの真骨頂。ミンガスのアレンジの成せる技である。

ジョン・ハンディのアルト、ブッカー・アーヴィンのテナー2管が好調で、特に、ジョン・ハンディが絶好調。ミンガスはフロント管のメンバーのスカウトに長けているが、この二人も、ミンガス・ミュージックの「分厚い音圧の高い」音世界に大きく貢献している。このフロント2管が活き活きと吹き回している様が実に「ジャズしている」。

このライヴ・パフォーマンスは、バンド全体が適度なテンションの中、良い意味でリラックスして、演奏を楽しんでいる様子が良く判る。そんな良い雰囲気の中、ミンガス御大もリラックスした、伸び伸び自由なベースラインをブンブン、低音を鳴り響かせながら、弾きまくっている。ほんと、全編、楽しそうに演奏している。

このライヴ盤では「ミンガス流のジャングル・ミュージック」をしっかりと感じ取れる。アルバム全体の収録時間はちょっと短くて物足りなさは残るが内容は良い。
 
 

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2023年1月10日 (火曜日)

1955年のミンガス・コンボ

ジャズ・ベーシストのリーダー作を整理している。ジャズの歴史上に名を残している一流ベーシストについては、リーダー作の殆どは押さえておきたい。そう思って整理していると、まだ、しっかりと聴いていなくて、このブログに感想記事をアップしていないアルバムが結構ある。

そもそも、他の楽器に比べて、ジャズの歴史上に名を残している一流ベーシストの数が少ない。チャールズ・ミンガス、レイ・ブラウン、ロン・カーター、ポール・チェンバース、ジミー・ギャリソン、パーシー・ヒース、チャーリー・ヘイデン、最近では、クリスチャン・マクブライド、ジャコ・パストリアス、マーカス・ミラー、と、これくらいしか浮かばない。

ぼやきはさておき、先ず手始めに「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」の整理。意外と聴きかじったままのリーダー作が沢山ある。ディスコグラフィーを確認していて、かの有名な1956年の『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』以前のリーダー作については、聴いたことが無いリーダー作もあることが判明。これはいけない、ということで、早速、真剣に聴き直し。

Charles Mingus『Mingus at the Bohemia』(写真左)。1955年12月23日、NYのカフェ・ボヘミアでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b, cello), George Barrow (ts), Eddie Bert (tb), Mal Waldron (p), Willie Jones (ds), Max Roach (ds, on "Percussion Discussion" only)。名盤『直立猿人』(1956年)リリース前年のライブ録音になる。
 

Charles-mingusmingus-at-the-bohemia

 
この頃のミンガスといえば『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』ばかりがクローズアップされるが、どうして、このカフェ・ボヘミアのライヴのパフォーマンスも「直立猿人」に勝るとも劣らない内容。もうこの頃、既に「ミンガス・ミュージック」は確立されていたことが良く判る。

冒頭の「Jump Monk」は、後の「直立猿人」に似た構造をした秀曲。初めて聴いた時は「直立猿人」かと思いましたぜ。よく聴くとちょっと違う。でも、ベースのオスティナートから始まり、2管のアンサンブルが被さり、シンコペーションで進み、テーマをバーッと展開して、後はブレイキング・コーラスからアドリブというところなんぞ、雰囲気はそっくり。

他の曲、特にスタンダード曲の「Serenade in Blue」「Septemberly」「All The Things You C#」のアレンジと演奏が秀逸。他のハードバップなアレンジとは一味もふた味も違う、ミンガス・オリジナルなアレンジが見事。ミンガスはリーダー作をオリジナル曲で固めることが多いが、スタンダード曲を扱わせても「超一級品」。この盤でもその才能を遺憾なく発揮している。

ダニー・リッチモンド、ジミー・ネッパー、エリック・ドルフィーといった強烈な曲者ジャズマンを従えたミンガスの「黄金のコンボ」以前のパフォーマンスなんだが、その「黄金のコンボ」には及ばないにせよ、予想外に充実しているのには感心した。マイルス同様、当時のミンガス周りのジャズのレベルは高い。
 
 

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2022年12月11日 (日曜日)

"キング・オブ・カルテット" である

コロナ禍でどうなることかと思ったが、現代ジャズはコロナ禍に負けること無く、その活動と深化を継続している。コロナ禍当初は、スタジオ録音が出来なかったり、ライヴ演奏が出来なかったりで、ジャズのみならず、音楽活動というものが潰えてしまうのでは無いか、と不安になったが、何とか厳しい時期を乗り越えた様だ。

その現代ジャズであるが、深化は脈々と続いている。21世紀に入って、ネオ・ハードバップの成熟、クールで静的なスピリチュアル・ジャズ、21世紀版フュージョン&スムース・ジャズの充実など、1950年年代〜1960年代のジャズに回帰すること無く、モダン・ジャズの「クラシック化」は進んでいない。

Redman Mehldau McBride Blade『LongGone』(写真左)。2019年9月10–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。現代ジャズのおける「若きレジェンド」が集結した、レッドマンのサックスが1管のワンホーン・カルテットの編成。

2020年リリースの前作『RoundAgain』は強烈だった(2020年10月8日のブログ参照)。モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっていた。振り返って見ると、2020年までのモダン・ジャズの総括的な内容だった気がしている。

今回のアルバムは、その先を行くものと認識した。落ち着いた、クールで静的なネオ・ハードバップ。しかし、録音年月日を見てみると、前作『RoundAgain』と同一録音ではないか。そして、ラストに「2007年のSFJAZZの25周年記念のライブ演奏」から1曲追加して、今回の新作となっている。う〜ん、前作と同じ録音なのか〜。
 

Redman-mehldau-mcbride-bladelonggone

 
今回の新作と前作と基本的な雰囲気が全く違う。前作はエネルギッシュに、2020年までのモダン・ジャズの総括し、今回の新作は、これからのモダン・ジャズをクールに静的に落ち着いた雰囲気で披露する。

しかも、今回はラストのライヴ音源以外、全6曲がジョシュア・レッドマンのオリジナルで固められている。そういう意味では、このカルテット、ジョシュアがリーダー的立場なんだろうな。

この新作を聴いて、痛く感心したのが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏がメインなんだが、フレーズや音の響きの新鮮さ。決して、過去のジャズの焼き直しでは無い、「どこかで聴いたことがある」感が無い、鮮烈で機微に富むモーダルなフレーズがこれでもか、と出てくる。

前作でもそう感じたが、この新作では更に、フレーズや音の響きの新鮮さが増している。さすが、現代ジャズにおける「キング・オブ・カルテット」である。

アルバム全体の雰囲気が「落ち着いた、クールで静的」な演奏がメインだったので、ちょっと地味ではないのか、と感じたのは最初だけ。聴き込めば聴きこむほど、このカルテットの演奏は滋味深い。

このカルテットの演奏、しばらく、続けて欲しいなあ。聴く度に、現代のモダン・ジャズの到達点のひとつを確認出来る。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・ハードバップの最高レベルの演奏のひとつである。
 
 

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2022年11月 7日 (月曜日)

傑作ライヴ盤『8:30』を聴き直す

このライヴ盤は売れた。内容的にも充実している。ウェザー・リポートのメンバーが、やっと、テナー・サックスのワンホーンに、キーボード+ベース+ドラムのリズム・セクションの4人について、最適のメンバーが顔を揃え、最適なメンバーで固定された記念すべきライヴ盤である。

Weather Report『8:30』(写真)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (el-b), Peter Erskine (ds)。 ほとんどの曲がザヴィヌル作であり、大ヒットアルバム『Heavy Weather』の人気曲をメインに、他のアルバムから、同傾向の音志向の人気曲が選曲されている。WRが一番、フュージョン・ジャズに接近したライヴ盤である。

このライヴ盤は売れた。選曲は『Heavy Weather』と他のアルバムの人気曲が選ばれており、ポップでキャッチャーな楽曲ばかりが並んでいる。そりゃ〜当時は売れただろうな、と思う。しかし、今の耳で聴き直せば、ジャズとしての即興演奏の妙は、ジャコのベース・ソロ曲と、ショーターのサックス・ソロ曲だけに留まっていて、他の楽曲は既定路線に乗った、金太郎飴の様な聴き馴れたアレンジで統一されている。

前作の『Mr,Gone』からの選曲は全く無く、如何に前作がセールス的に「問題作」だったかが窺い知れる。が、このライヴ盤で、このライヴ盤『8:30』をジャズの範疇に留めているのは、ジャコのベースとアースキンのドラムである。このライブ盤の全編に渡って、この二人のリズム&ビートは半端ない。それまでのWRの人気曲に躍動感を与え、ジャジーな自由度を拡げている。どの曲もオリジナルよりもテンポが速く、ベースラインもドラミングも複雑極まりない。
 

Wr-830

 
加えて、何時になく、ショーターがサックスを吹きまくっている。吹きまくり、とはこのこと。しかも、誰にも真似できない、ショーターならではの宇宙人的に捻れたフレーズが満載。どの収録曲もザヴィヌルの楽曲で、ショーターの音志向である「エスニック&ミステリアス」な音は希薄でありながら、である。恐らく、ジャコとアースキンのリズム隊の「賜物」だろうと思う。ジャコとアースキンが、ショーターの「ジャズ魂」に火を付けたのだ。

一方、ザヴィヌルのキーボードは安全運転、というか、聴き馴れたフレーズばかりで、可も無く不可も無く。まるでスタジオ録音の演奏を聴いているようだ。せっかくのライブ音源なのに、もっと自由度を拡げて、もっと魅力的なフレーズを弾きまくって欲しかった。

なお、LP時代のD面のスタジオ録音については、発売当時、1980年代のジャズを予言するものとして、持てはやされたものだが、今の耳で聴くと、完成度は「道半ば」、ブラッシュアップ中の未完な雰囲気が漂っていて、僕はあまり評価していない。これをLP時代のLP2枚目のD面に入れるのなら、他の曲のライヴ音源を追加して欲しかった。今となっては、このLP時代のD面の存在意義が良く判らなくなっている。

ショーターとジャコ、アースキン。この3人の卓越したテクニックの下、ジャジーで自由度の高い、変幻自在な演奏が、このライヴ盤を「ジャズ」の範疇に留め、未だ、エレ・ジャズの傑作ライヴ盤の1枚としての評価を維持しているのだ。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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2022年10月19日 (水曜日)

アヴィシャイのピアノ・トリオ盤

ベースやドラムは「リーダーの担当楽器」として前面に押し出すのが難しく、いきおい、ベーシストやドラマーがリーダーのアルバムは少ない。特にベーシストがリーダー作はかなり数が限られる。

ジャズ・ベーシストのリーダー作は幾つかのケースに分かれるが、リーダーとして自分の音世界をプロデューサーの様に創造していくケースが一番多い。自らはその音世界の創造を支える側に回って、自らのベースはあまり前面に出ることは無い。それでも、その音世界の表現が素晴らしい、つまり、ベーシストのセルフ・プロデュースの能力が優れていると、ジャズ・ベーシストのリーダー作として成立する。

Avishai Cohen『Shifting Sands』(写真左)。2021年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (b), Elchin Shirinov (p), Roni Kaspi (ds)。イスラエル出身天才ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのリーダー作。前作はオーケストラを率いた重厚な盤だったが、今回は、シンプルにピアノ・トリオな編成でまとめている。収録されている曲は、パンデミック中にエルサレム近郊の自宅でアヴィシャイ・コーエンがピアノで作曲したもの、とのこと。

内容的には、いわゆる「イスラエル・ジャズなピアノ・トリオ」である。フレーズの中に、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」が、そこかしこに感じられる。全体の音志向は「哀愁を帯びたイスラエルな独特の響きと多様性を感じるクールなビート」を核とした、現代のネオ・モーダルなジャズである。
 

Avishai-cohenshifting-sands

 
まず、アゼルバイジャン出身のピアニスト、エルチン・シリノフの独特なタッチに耳を奪われる。「誰だ、これ」と思わず思うくらい、独特なタッチ。恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう、シリノフのフレージングも独特。欧州ジャズにも米国ジャズにも無いピアノ。独特の哀愁感が豊かなエコーによって増幅されて、固くて幽玄な音世界がこれまた独特。

新加入の若手の女性ドラマー、ロニ・カスピのドラミングも個性的。伸び伸び元気よく小気味良いドラミングを披露する。そう小気味が良いのだ。力感溢れるドドドンな迫力満点なドラミングでは無い。切れ味良く、ピッチが正確で、とにかく小気味の良いドラミング。これが、哀愁感溢れる固くて幽玄なシリノフのピアノと対照的で、双方の相乗効果で、唯一無二のインタープレイを展開する。

アヴィシャイのベースは、そんな2人のパフォーマンスの底をガッチリと支え、リードする。アビシャイの弾き出すフレーズも独特なもので、これも、恐らく、イスラエルをメインとするルーツ音楽やクラシック音楽の「音要素」の影響だろう。しかも、アヴィシャイのベースは硬質で切れ味良く、胴鳴りが良い。良い意味で、もっと騒がれても良い、優れた現代ジャズ・ベースである。

現代イスラエル・ジャズをベースとしたピアノ・トリオ演奏の代表盤の1枚として、もはや無視出来るレベルでは無い。しっかりと認知して、しっかり聴き込んで頂きたいアヴィシャイのピアノ・トリオ盤である。
 
 

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2022年10月11日 (火曜日)

ブロンバーグのベース・ソロ盤

ベーシストがリーダーのアルバムには、テクニックを重視した、その特徴的な演奏テクニックを全面に押し出した内容のものも多くあるのだが、ベース・ソロだけのアルバムは殆ど無い。

その理由として、ベースの場合、速いフレーズのソロを取りにくいこと、そして、リズム&ビートを醸し出すのが、基本的に難しいこと、その2点が上げられるだろう。

Brian Bromberg『Hands』(写真)。2008年7月録音。ちなみにパーソネルは、Brian Bromberg (ac-b)のみ。副題の「Solo Acoustic Bass」とある。 2009年4月にリリースされた、ブライアン・ブロンバーグのアコベのソロ盤。全編、風呂バーグのベース・ソロのみの演奏が収録されている。

ブライアン・ブロンバーグ(Brian Bromberg)は、米国アリゾナ州ツーソン出身。1960年生まれなので、今年で62歳になるベテランのベーシスト。1986年にスムース・ジャズのジャンルで初リーダー作。僕は21世紀に入るまで、ブロンバーグの存在を知らなかった。ブロンバーグの存在を知ったのは、神保彰とのプロジェクト、JBプロジェクトを通じてで、つい最近である。

ブロンバーグのベースは、相当に高いテクニックと豊かなスイング感、骨太でソリッドな切れ味の良い重低音、存在感抜群のベースである。そんなアコベらしいアコベで、ソロ・パフォーマンスを展開するのだから、聴く方としては興味津々。

これまでに、ブロンバーグはリーダー作の中で、ベース・ソロのアルバムを何枚か出している。どれもが優れた出来ばかりなので、どの盤から聴き始めても良いのだが、僕はこの『Hands』の収録曲のユニークさに惹かれる。
 

Brian-bromberghands

 
レッド・ツェッペリン(以降、Zepと略)の「Black Dog」、ビートルズのメドレー「Day Tripper-Yesterday-Eleanor Rigby」、スティングの「King of Pain」とロック畑の曲を選んでいる。スタンダード曲も沢山あって聴きどころ満載。そして、エレベのイノベーター、ジャコ・パストリアスの名曲「Teen Town」をアコベでカヴァーしている。

特に、Zepの「Black Dog」はハードロックの名曲で、速くて難度の高いフレーズがてんこ盛りなんだが、このややこしい曲をアコベ一本で弾き切っている。ベース一本でロックンロールのビートは「どうするんじゃぃ」と半信半疑で聴いたが、これが見事で、弾き進めるフレーズに強弱のビートを付けて、ロックなオフビートを出しているのだ。これ、テクとセンスが無いと出来ない技である。

そして、ジャコの「Teen Town」。ジャコのベース・ソロはエレベだった。弦の響きを電気的に増幅するので、速いフレーズも弾けた訳だが、これをブロンバーグはアコベでやっている。アコベは弦の電気的な増幅が出来ないので、手でしっかりと弦を弾かなければならない。当然、しっかり弾く分、速いフレーズは苦手なはずだが、ブロンバーグはほぼジャコの様に、アコベで「Teen Town」をカヴァーしている。いやはや素晴らしいテクニックだ。

ロックな曲も、ジャコの曲も、スタンダード曲もし全てアコベ一本で弾き切る。どの曲も、リズム&ビートは、フレーズを弾き進める際、フレーズに強弱を付け、「ため」を織り込むことで、フレーズを弾き進める中で、リズム&ビートを同時供給している。これ、結構、難しいテクニックのはずで、これだけ見事に、フレーズを弾き進める中でリズム&ビートを同時供給するベースを僕は余り知らない。

全編、アコベのソロだけ、なんだが、そんな高度なテクニックを駆使して、歌心よろしく、リズム&ビートをソロ・フレーズと同時供給していく奏法が功を奏して、全編、全く飽きが来ない。録音状態も良く、ブロンバーグの生々しいアコベの低音が生々しく耳に迫ってくる。

ジャズ・ベースが好きなジャズ者の方々にお勧め。特に、実際にベースを弾いたことがあるジャズ者の方に聴いて頂きたい、ブロンバーグのソロ盤である。
 
 

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2022年9月20日 (火曜日)

意味深なエルヴィンとギャリソン

ポリリズミックなレジェンド・ドラマー、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)のリーダー作を聴き直しているのだが、エルヴィンのリーダー作の基本コンセプトは「モード・ジャズ」。

それも、インパルス・レーベルからのリリースの『Coltrane』辺りの、自由度の高い、シーツ・オブ・サウンドと歌心のバランスが取れた「モード・ジャズ」。エルヴィンは「この時代のコルトレーン・ミュージック」が大好きだったんだろうなあ、とつくづく思ったりする。

Elvin Jones & Jimmy Garrison『Illumination!』(写真)。1963年8月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jimmy Garrison (b), McCoy Tyner (p), Sonny Simmons (as, English Horn), Charles Davis (bs), William Prince Lasha (cl, fl)。

改めて、この盤を聴き直してみた。エルヴィン・ジョーンズと、ベースのジミー・ギャリソンの双頭リーダー盤。ピアノのマッコイ・タイナーが入っているので、これは、当時のコルトレーンの伝説のカルテットから、親分のコルトレーンを抜いたリズム・セクションになる。そして、フロントは、アルト・サックス or ホルン、バリトン・サックス、そして、クラリネット orフルートのフロント3管。全体でセクステット編成。

パーソネルを見渡して面白いのは、「コルトレーンの伝説のカルテット」のリズム・セクションがそのまま、この盤にスライドしているからか、律儀に親分コルトレーンの担当楽器であるテナー&ソプラノ・サックスをしっかり抜いて、フロント3管を形成している。

演奏の基本は「モード・ジャズ」。それも、親分コルトレーンの得意技「シーツ・オブ・サウンド」抜きの、モード・ジャズど真ん中の時代の「コルトレーン・サウンド」。
 

Elvin-jones-jimmy-garrisonillumination

 
限りなく高い自由度を追求したモーダルな演奏と「音楽」としての歌心を踏まえたメロディアスなフレーズを前提とした「コルトレーン・サウンド」で、ほどよくアレンジされた「ユニゾン&ハーモニーが」聴いて楽しい雰囲気を加えている。

この6重奏団の演奏、コルトレーン・サウンドを踏襲しているのだが、しっかりと親分の担当楽器と得意技をしっかり抜いている。コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当している、

エルヴィン、ギャリソン、タイナーが、コルトレーンに「親分、一緒にどうですか、こんなモード・ジャズは。俺たちは、親分と一緒にやる、こんなモード・ジャズが好きなんです」と誘っている様な雰囲気を感じるのは僕だけだろうか。

この盤の録音の後(リリースは1964年)、コルトレーンは、1963年11月に『Impressions』をリリースしていて、その内容は、グループサウンドを横に置いて、唯我独尊、フリー一歩手前の自由度の高いモーダルなフレーズを、高速シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるという内容をライヴ録音で披露している。

コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションを担当していた、エルヴィン、ギャリソン、タイナーは戸惑ったのでは無いか。この『Impressions』の演奏内容を振り返ると、リズム・セクションは、リズム&ビートだけ正確に供給してくれるならば、誰だって良い、という感じなのだ。実はそうではないのだが、この時期のコルトレーンは、自らの志向を追求することに集中した「唯我独尊」的なパフォーマンスに偏っていた。

グループ・メンバーで、グループサウンドを楽しみながら演奏する、という、バンド・セッションの基本を、このエルヴィン&ギャリソンの『Illumination!』ではしっかりと踏襲している。きっと、ここに戻りたかったんだろうなあ、と僕はこの盤を聴く度に思うのだ。
 
 

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