2023年2月15日 (水曜日)

「たなかりか」のボーカルが良い

前のブログで「Disc Grand Prix 年間グランプリ」でも、日本のジャズ・ミュージシャンの優秀盤が結構な数、上がっている」と書いた。このジャズ・ライフ誌の年間グランプリは、ジャズ評論家の方々が、忌憚の無い、自らが良いと感じたアルバムをノミネートしている雰囲気が伝わってきて、ノミネートされたアルバムに関して、以前の様な商業主義は殆ど感じ無い。

たなかりか『Japanese Songbook "Winter" with Jazz standards』(写真左)。2022年の作品。ちなみにパーソネルは、たなかりか (vo), 鈴木正人 (b), ハタヤテツヤ (key), 小沼ようすけ (g), 坂田 学 (ds)。ジャパニーズ・ポップスを日本語のままジャズ・カバーする、たなかりかのプロジェクト「ジャパニーズ・ソングブック」の10周年を記念した企画盤。

ジャケット・デザインを見て、ちょっと「眉をひそめる」。これって、バブル時代に量産された、聴き心地が良いだけの「お洒落なイージーリスニング・ジャズ」では無いのか。でも、それでは、ジャズ・ライフ誌の年間グランプリにそのタイトルが上がる筈が無い。でもなあ、このジャケはなあ。でも、パーソネルを見れば、現代の和ジャズの腕利き達がズラリと並ぶ。やっぱり、これは大丈夫や、と聴き始める。

アルバム構成は2枚組で、Disc1:ジャパニーズ・ポップス“冬”の名曲。Disc2:プロジェクト初収録のジャズ・スタンダード。Disc1に収録されたジャパニーズ・ポップスは「冬」をテーマに選曲。Disc2は、人気のジャズ・スタンダード曲集。どちらも、ライトでコンテンポラリーな純ジャズ志向にアレンジされていて、聴き応え十分。

Disc1は「12月のエイプリル・フール(EPO)」から始まって、冬の定番「恋人がサンタクロース(松任谷由実)」、そして、「氷の世界(井上陽水)」「白い恋人達(桑田佳祐)」「ネイティブダンサー(山口一郎)」「恋人よ(五輪真弓)」と続き、「CHRISTMAS TIME IN BLUE(佐野元春)」で締める。
 

Japanese-songbook-22winter22-with-jazz-s

 
ジャパニーズ・ポップス“冬”の名曲の選曲が、僕にとっては素晴らしい。全て学生時代から社会人の生活の中でリアルタイムに聴いた名曲ばかりで「僕好み」の曲が並ぶ。それらが、ライトでコンテンポラリーな純ジャズ志向にアレンジされて、たなかりかが軽快に情感込めて唄い上げる。「恋人がサンタクロース」「氷の世界」「恋人よ」など、涙涙の絶品、絶唱である。

そして、Disc2の人気のジャズ・スタンダード曲集が、これまた絶品。「Fly me to the moon」「My favorite things」「L-O-V-E」「Come rain or come shine」「Bye bye blackbird」「Devil may care」「That’s all」の全7曲。これまた「僕好み」のスタンダード曲がズラリ。特に「Fly me to the moon」「L-O-V-E」「Bye bye blackbird」など、涙涙の絶品、絶唱である。

たなかりかのボーカルは素姓良く、力感もあり、アーバンでスマート。ストレートな歌唱は、現代のコンテンポラリーな純ジャズ志向のアレンジにピッタリで、違和感無く適応している。表現力も豊かで、決して単調にならず、CD2枚組、全14曲を一気に聴かせるパワーを秘めている。

良質な「現代の和ジャズのコンテンポラリーなボーカル」を聴かせてもらった気分。「ジャパニーズ・ソングブック」10周年は「伊達では無い」。バックのリズム・セクションも素晴らしい。フロントのボーカルとバックのリズム隊が一体となった、たなかりかのボーカルの力量がダイレクトに伝わってくる好盤である。
 
 

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   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
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2022年12月14日 (水曜日)

クリスの "バードランドの子守唄"

ベツレヘム・レーベルのアルバムを、Bethlehem 6000 series (12 inch LP)」のカタログから、カタログ番号順に聴き直している訳だが、カタログを見渡すと、ジャズ・ボーカルのアルバムが散見される、というか、資料によると、全カタログの4分の1がジャズ・ボーカルのアルバムとのこと。他のジャズレーベルと比べると、かなりボーカル盤が多いということになる。

ベツレヘムの創始者、ガス・ウィルディは、他社とは違うことをやらなければ、レコード・ビジネスで勝負していけない、と思っていたらしく、その切っ掛けは、レーベル初期の「クリス・コナーのアルバムのヒット」だろう。このクリス・コナーのアルバムのヒットによって、ボーカル重視路線が固まったと思う。しかも、ベツレヘム・レーベルは、名の売れたボーカリストよりは、新人を発掘して世に出すことに力を入れていた、とのことだが、カタログを見渡すとその傾向が良く判る。


Chris Connor『Sings Lullabys of Birdland』(写真)。録音日時とパーソネルは3つ分かれる。1-5曲目が、1954年8月9 & 11日の録音で、バックは、Ellis Larkin (p) Trio。6-8曲目が、1953年12月17 &18日の録音で、バックは、Sy Oliver (arr.cond) 's Orchestra。9ー14曲目が、1954年8月21日の録音で、バックは、Vinnie Burke (b) Jazz String Quartet。録音場所は全てNY。
 

Chris-connorsings-lullabys-of-birdland

 
この盤が、その「クリス・コナーのアルバムのヒット」の1枚。聴くと判るが、とても馴染み易い、女性ジャズ・ボーカルである。正統派なジャズ・ボーカルの特徴である、フェイクやビブラート、シャウトなどがほとんど無い。クリスの声はハスキーで明確、パワフルでメロー。耳に優しく、耳に馴染む、しっとりした、どこか爽やかな歌声。

選曲も良い。3つのセッション(3つの10" LP盤)の寄せ集めではあるが、クリスのボーカルを前面に出した録音がメインなので、それぞれアレンジやバックの演奏が異なるのだが、しっかりとした統一感があって、寄せ集め感が無いのも良い。1曲当たり、3分程度と短いが、クリスのボーカルを愛でる上では気にならない。とにかく、聴いていて心地良い女性ボーカル盤である。

聴き終えて、クリスのボーカルの良さが沁みてくる、なるほどクリスの代表盤、と感心する内容です。良い意味で「ながら聴き」も出来るジャズ・ボーカル盤。当時、クリスのボーカルは、ジャズファン以外の他のジャンルのボーカル好きにも訴求したのではないか、と思います。当時、ヒットしたのが良く判りますね。
 
 

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2022年9月28日 (水曜日)

歌伴上手なシアリングである

やっと涼しくなってきた。日中、陽射しが強い日はまだまだ蒸し暑かったが、今日は強い北風が日中から吹いて、カラッとした秋らしい好天となった。涼しくなってくると、夜、ジャズ・ボーカルを聴く気になってくる。しかし、ベッタベタ、重厚で本格的なジャズ・ボーカルは苦手なので、健康的で明るいキュートな歌声を探すことになる。

The George Shearing Quintet with Nancy Wilson『Swingin's Mutual』(写真左)。1960年6ー7月、1961年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Nancy Wilson (vo), George Shearing (p), Dick Garcia (g), Warren Chiasson (vib), Ralph Peña (b), Vernel Fournier (ds), Armando Peraza (perc)。ナンシー・ウィルソンのボーカルとジョージ・シアリング・クインテットとの共演である。

小粋なジャズ盤を探索していて、ストックしておいた盤の中に、ボーカル盤は無いか、と探したら、この盤が最初に目に付いた。ナンシー・ウィルソンか。1960年、キャノンボール・アダレイの後押しでメジャー・デビュー。後に米国の国民的スターになったウィルソンの24歳の時、デビュー盤からの3作目。

ナンシーのボーカルは、パワフルで軽快、スイング感溢れ、情感豊かに可憐に歌い上げる、エレガントなボーカル。癖が無く、「こぶし」も回らず、ストレートな歌唱。これが良いのですね。癖を前面に出して、ビブラート豊かに「こぶし」を回して唄う、ジャズ・ボーカルはちょっと苦手です。
 

George-shearing-with-nancy-wilsonswingin

 
そして、バックに控えるのが、ジョージ・シアリング率いるクインテット。シアリングは1912年生まれ。クール・ジャズの第一人者として活躍した盲目のピアニスト。スイングから中間派、そして、ハードバップとジャズの数々のスタイルを弾きこなした職人的ピアニストである。

シアリングのピアノには「癖」がない。端正で流麗、緩急自在で揺らぎは無い。元祖「総合力勝負」のピアニストだと思うのだが、この歯切れの良いタッチでの端正さと流麗さが個性といえば個性。アドリブも端正で癖が無い。この元祖「総合力勝負」なピアニストは歌伴にも優れている。この盤でも「歌伴上手」なシアリングのピアノが、全編に渡って、とても印象的に響いている。

冒頭には、僕の大好きなスタンダード曲「On Green Dolphin Street」が入っているから、更に良い。この曲、演奏するにも唄うにも難曲の類だと思うんだが、ナンシーは全く揺らぐこと無く、しっかりビートに乗って、端正に流麗にメリハリをバッチリ効かせて唄い上げていく。この1曲だけでもこの盤は「買い」ですね(笑)。

ナンシーの魅力的でキュートな歌唱、スインギーで端正で流麗なシアリングの歌伴。聴きどころ満載で一気に聴き切ってしまう。スッキリとした味わい深いボーカル盤。シアリングのピアノを楽しむにも恰好の「小粋なジャズ盤」である。
 
 

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2022年7月11日 (月曜日)

『この素晴らしき世界』を聴く

今日は猛暑がぶり返した千葉県北西部地方。湿度も高くて、朝からグロッキー気味。これだけ暑いとシビアなジャズは聴けない。ボサノバ・ジャズも良いんだが、選盤としては「ありきたり」。最近、ネットを徘徊していて、この人のアルバムを見つけた。ルイ・アームストロング、愛称は「サッチモ」。久し振りに、サッチモのボーカルを聴きたくなった。

Louis Armstrong『What a wonderful world』(写真左)。1968年、NYとラスベガスでの録音。パーソネルは、Louis Armstrong (vo, tp), Tyree Glenn (tb), Joe Muranyi (cl), Marty Napoleon (p), Buddy Catlett (b), Danny Barcelona (ds)。伝説のトランペッター&ボーカリスト、ルイ・アームストロング(愛称:サッチモ)の大ベストセラー盤。

邦題『この素晴らしき世界』。ベタな話だが、冒頭のタイトル曲がダントツに良い。味のあるダミ声、ダミ声だが優しい響き、音程のしっかりとれたボーカル。ジャズを聴き始めた頃、僕はサッチモのボーカルが苦手だった。ダミ声がどうにも駄目で、暫く遠ざけていた。サッチモのボーカルが「良い」と感じたのは、40歳を過ぎる頃だったか。ジャズ・ボーカルに対する「耳」も肥えて、サッチモのボーカルの良さをダイレクトに感じることが出来た。
 

Louis-armstrongwhat-a-wonderful-world

 
さて、このタイトル曲『What a wonderful world(この素晴らしき世界)』、ポジティヴな哀愁感漂う伴奏に乗って、優しいダミ声、正統派なサッチモのボーカルが流れてくる。聴けばいつも、心がホッとし、気分が明るくなり、なんだか晴れ晴れする。聴くといつも思うんだが、サッチモのボーカルは説得力がある。声という「楽器」を聴いているが如く、である。

冒頭のタイトル曲ばかりがもてはやされるが、2曲目「Cabaret」以降、ラストの「Hellzapoppin'」まで、聴き応えのあるサッチモのボーカルとバックの小粋な伴奏が続く。どの曲も良くアレンジされ、サッチモのボーカルも好調、ダレた曲、平凡な出来の曲は全く無く、心地良いテンションの中、心ゆくまで、サッチモのボーカルを堪能することが出来る。

サッチモ入門盤としてお勧めの内容。久し振りに聴いて、改めて、その内容の良さに感心した。ちなみに愛称「サッチモ」の由来であるが、WIkipedia等によると、サッチモという愛称は「satchel mouth」(がま口のような口)というのをイギリス人記者が聞き違えたとする説と「Such a mouth!」(なんて口だ!)から来たとする説などがあるそうです。とにかく、ルイの印象的な「口」に関するニックネームみたいですね。お後がよろしいようで(笑)。
 
 

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2022年7月 2日 (土曜日)

ウィスパー・ヴォイスの妖精

暑い。とにかく暑い。酷暑である。この3日間、日中、外出するのは憚れる。夜になっても熱帯夜の連続。エアコンが無ければ、とうの昔に干上がっている(笑)。来週月曜日以降は、台風の影響で天気が悪化し、陽射しが滞るので、酷暑は一旦回避出来るとのこと。ほんまかいな、とも思うが、台風の影響が出てくることは間違い無い。

これだけ暑くて湿度が高くなると、エアコンの効いている部屋の中とは言え、熱気溢れるジャズや、難度の高いジャズは聴くのがしんどくなる。フリー・ジャズや激しいスピリチュアル・ジャズなど以ての外。リラックスして聴けるボサノバ・ジャズや、ライトなジャズ・ボーカル、爽やかなフュージョン・ジャズが良い。

『Blossom Dearie』(写真左)。1956年9月11–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Blossom Dearie (p, vo), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Jo Jones (ds)。誰が呼んだか、良い意味で「元祖かまととシンガー」(笑)、ウィスパー・ヴォイスの妖精、ブロッサム・ディアリーのデビュー盤である。
 
ブロッサム・ディアリーは、米国のジャズ・シンガーであり、ピアニスト。「ビ・バップのベティ・ブープ(アニメの架空の少女キャラクター)」と評される、キュートでチャーミングな歌唱が個性。
 

Blossom-dearie_1

 
従来の女性ジャズ・ボーカルは、しっかりと音の座った、少し太めの中音域中心の力強い歌声が主流だった。もちろん、歌唱テクニックは相当に高い。パワフルな声量と圧倒的な歌唱力がメインだったが、ディアリーの歌声はその「正反対」。硬派なジャズ・ボーカル者の方々からすると、「認めたくない」ボーカリストの類だろう。

ディアリーの歌声はキュートであり、可愛らしい子供のような、チャーミングを絵に描いたような独特の歌声が特徴。聴いていて爽やかであり、温和であり、心地良くジャジー。

ややもすれば、歌唱の「凄み」に欠けるところがあるディアリーのボーカルだが、その「凄み」の部分をバックの一流ジャズマン達がしっかりと補い、ディアリーのキュートなボーカルの良いところを前面に押し出し、ディアリーのボーカルのキュートな雰囲気によって、甘きに流れそうな演奏全体のイメージを、キッチリと引き締めている。

ディアリーのキュートで個性的なボーカルと控えめだがツボを押さえたピアノ、そして、バックのリズム隊の演奏の水準の高さによって、この盤はライトでリラクゼーション溢れる、爽やかで聴いていて心地良いボーカル・アルバムに仕上がっている。酷暑の夏に聴くに相応しい、女性ボーカルの優秀作だと思う。
 
 

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2022年2月20日 (日曜日)

サッチモのディズニー・ソング集

ルイ・アームストロング(Louis Armstrong・愛称「サッチモ」)に関連するトリビュート盤を聴きながら、サッチモの盤で、今まで一番聴いてきた盤ってどれかな、と考え始めた。『Ella and Louis』(1956年)か、いや『Louis Armstrong Plays W.C. Handy』(1954年)もよく聴いた。しかし、一番よく聴いたのは、この盤だろう。

Louis Armstrong『Disney Songs The Satchmo Way』(写真)。邦題『サッチモ・シングス・ディズニー』。1968年5月、ロサンゼルスでの録音。ディズニー映画の主題歌や挿入歌をチョイス、ニューオーリンズ・ジャズ・スタイルのアレンジで、サッチモの味のあるボーカルと相まって、とても楽しい内容になっている。

サッチモのダミ声っぽい渋いボーカルが、ディズニー・ソングに合うのだろうか、という疑義が頭を掠めるが、これが意外とマッチしている。サッチモの歌声の「暖かさ」と「優しさ」が、ディズニー映画のキャラや主題歌に合うんだと思う。これって大人も子供も楽しめる雰囲気で、とにかく聴いていて、とても楽しい気分になること請け合いである。
 

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サッチモのトランペットも良い音していて、ディズニー・ソングに花を添える。サッチモのトランペットは、とてもジャジー。このトランペットの音ひとつで、このディズニー・ソングのカヴァー集を「ジャズ」に染める。サッチモのトラペットが鳴り響くからこそ、このディズニー・ソングのそれぞれは「ジャズ」の楽曲として成立している。

特に、『白雪姫』より「Heigh-Ho(ハイ・ホー)」、『メリー・ポピンズ』より「Chim Chim Cher-ee(チム・チム・チェリー)」、『シンデレラ』より「Bibbidi-Bobbidi-Boo(ビビディ・バビディ・ブー)」、『ピノキオ』より「 When You Wish Upon A Star(星に願いを)」などが、サッチモのボーカルにバッチリ合っていて、何回聴いても楽しい。

この盤、僕がジャズを本格的に聴き始めた今から40数年前、某大手レコード屋の「ジャズの初心者向け入門盤」の一覧リストの中にあって、ディズニー・ソングが好きな僕は思わず購入してしまった思い出の盤。冒頭の「Zip-A-Dee-Doo-Dah」でのサッチモのダミ声ボーカルに初めて出会った時、仰け反ってしまった記憶がある(笑)。でも、直ぐに愛聴盤の一枚になりました。サッチモのボーカルの良さが判って「よかった、よかった」である。
 
 
 
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2021年12月25日 (土曜日)

アビー・リンカーンの代表作

改めて、リヴァーサイド・レーベルのカタログを眺めていると、なかなか他のレーベルでは聴けない、リヴァーサイド・レーベルならでは、のアルバムを結構あることが判る。リヴァーサイドの総帥プロデューサー、オリン・キープニュース、結構、良い仕事してます。

Abbey Lincoln『That's Him!』(写真左)。1957年10月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Abbey Lincoln (vo), Kenny Dorham (tp), Sonny Rollins (ts), Wynton Kelly (p, (except "Don't Explain"), b, ("Don't Explain")), Paul Chambers (b, (except "Don't Explain"), Max Roach (ds)。当時、新進気鋭の女性ヴォーカリスト、アビー・リンカーンの2枚目のリーダー作。

まず、パーソネルが凄い。当時の「ビッグ・ネーム」なジャズマンばかり。よく集めましたねえ。リーダーのアビー・リンカーンが一番マイナーな存在なのが面白い。ちなみにアビー・リンカーンは1930年生まれ。この盤の録音時は27歳。まだまだ若手の駆け出しである。

3大女性ジャズ・ヴォーカリストと称される「サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ」のネクスト世代。ちょっとこぢんまりした印象は否めない。が、この盤では、堂々とガッツのあるヴォーカルを聴かせてくれる。この盤にも参加しているマックス・ローチのレコーディングに多数参加、ローチの強い政治色の影響を受け、後に結婚している(1970年に離婚)。
 

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アビー・リンカーンのヴォーカルは、力感溢れる、ストレートで豪快な唄いっぷり。唄いっぷりを聴いていると、ビリー・ホリディの影響を強く受けているのが良く判る。強い政治的思想を持った人で、彼女の歌には、そんな信念と情念を感じる。強い説得力を持ったアビー・リンカーンのボーカルは聴き応え満点。そんな彼女の唄いっぷりは、冒頭の有名曲「Strong Man」で、十分に確認出来る。

バックのスーパーなメンバーも当然、凄い音を連発。特に、ロリンズのテナー・サックスは、充実していて、大きい音で、大らかでダンディズム溢れる、力強いフレーズを連発。後に「夫君」となるマックス・ローチも、何時になく変幻自在なドラミングで、その高いテクニックを惜しみなく披露している。

ただ、この盤を聴いていて「偉いなあ」と思うのは、そんなスーパーなバック・メンバーだが、アビーのヴォーカルの邪魔は絶対にしない。逆にアビーを引き立てる役割を積極的に買って出ているようなのだ。ウィントン・ケリーのピアノも、変幻自在、硬軟自在なバッキングをしていて、こんなに歌伴上手なピアニストだったんだ、と改めて感心した次第。

実はこの盤には面白いエピソードがあって、ラストの「Don't Explain」の録音時、ベーシストのポール・チェンバースが泥酔状態に陥り、演奏不能状態になってしまった。誰がベースをやるのか、と思いきや、ピアノのウィントン・ケリーがベースを代理演奏している(よってバックにピアノはいない)。これが、ちょっと単調だが味のあるベースで、意外と「聴きもの」なのが、これまた面白い。
 
 
 
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2021年12月16日 (木曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・3

今年の暮れは「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」に触手が伸びる。「夏はボサ・ノヴァ・ジャズで爽やかに」というのが定番なのだが、寒い冬、暖かい部屋の中でリラックスして聴く「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」も意外と良い雰囲気。ほんわかウォームなボサ・ノヴァ系のヴォーカルが、冬の寒い雰囲気の中で心地良く響くから面白い。

Tania Maria『Brazil With My Soul』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Tania Maria (vo, p), Alain Hatot (ts, fl), Alfred Housepian (tp, flh), Zezito, J.F. Jenny-Clark (b), Hubert Varron (cello), Aldo Romano (ds), L.C. Fuina (ds, perc), Clovis Lobâo (perc)。

Tania Maria(タニア・マリア)は、ブラジル出身の女性ボーカリスト&ピアニスト。1948年生まれなので、今年で73歳。この『Brazil With My Soul』を録音した時点では30歳。若さ溢れる、バリバリのパフォーマンスが見事。彼女のキャッチフレーズは「パッション溢れるピアノ・タッチと流麗で爽やかなボーカル&スキャット」。
 

Brazil-with-my-soul

 
彼女の音志向は「ブラジル音楽、ジャズ・フュージョン、クラシックを鮮やかに融合した音作り」で一貫している。ボサ・ノヴァやサンバを基調としているが、リズム&ビートはジャジーであり、ボサ・ノヴァ・ジャズの特徴である「爽やかで、ほんわかウォームな、リズミカルではあるが、どこかアンニュイが漂う」ところが意外と希薄。エネルギッシュでダンサブルな面が前面に出ているところが個性。

この盤には、ジャズを基調として、ボサ・ノヴァ、サンバ、というブラジル音楽の要素はふんだんに入っているが、アフロラテン、ポップス、ソウルな音楽の要素もしっかり反映されていて、1978年の作品である様に、この盤の音の雰囲気は、明らかに「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」。しかも、タニアの優れたボーカルが入った、フュージョンに珍しい「フュージョン・ボーカル盤」である。

良い雰囲気のフュージョン・ジャズ。チック・コリアやフローラ・プリムのフュージョン盤に通じる、ラテン系の音世界を色濃く反映した「融合(フュージョン)」の音楽は、聴いていて爽快、ユートピア志向に通じる、凛としたロマンティシズムも良い方向に作用している。「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」の名盤の1枚。
 
 
 
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2021年12月15日 (水曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・2

12月に入って、グッと寒くなった。それでも時々、暖かい日があったりで、気温の乱高下が辛い。昨日の様に、冷たい寒い雨の日は、暖かい部屋の中に籠もって、ジャズ盤を聴くことが多くなる。そんな時、シビアで硬派な純ジャズをガンガン聴くのも良いが、ライトでスムースなフュージョンや、ホンワカ柔らかなボサ・ノヴァ・ジャズを聴くのも「乙なもの」である。

Astrud Gilberto『I Haven't Got Anything Better To Do』(写真左)。1969年2月3, 4日の録音。ストリングス入りのジャズ・オーケストラをバックに、ボサ・ノヴァ・ジャズの歌姫、アストラッド・ジルベルトがウォームに唄い上げる佳作。ボサ・ノヴァ・ジャズでありながら、真冬に録音されているからか、ライナーノーツでは、アストラッド・ジルベルトはこのアルバムを「暖炉のアルバム」と呼んでいるそうだ。

1960年代後半、ヴァーヴ・レコードお得意の「イージーリスニング・ジャズ」の一環となる盤。しっかりとアレンジされたジャズ・オーケストラにストリングスが入って、なかなかに洒落て優美なサウンドをバックに、アストラッド・ジルベルトのウィスパー・ヴォイスがバッチリ填まった好盤。
 

I-havent-got-anything-better-to-do_1

 
基本はバラード曲中心、時々、ノリの良いギター&パーカッションを交えた楽曲や、ロマンチックなスィートなボサ・ノヴァ・ジャズがアクセント良く挿入されている。バラード曲中心なので、ちょっと不安定な感じのする、アストラッド・ジルベルトの「ウィスパー・ヴォイス」で大丈夫なのか、上手く唄い上げられるのか、と心配になるが、意外と杞憂に終わっている。

バックのストリングス入りのジャズ・オーケストラのアレンジが良好で、アストラッド・ジルベルトの「ウィスパー・ヴォイス」を上手く支えている。不思議と説得力のあるヴォーカルに仕上がっていて、聴いていて、何だかほのぼの、ほんわか、適度にリラックス出来る。ボサ・ノヴァ系のボーカルの不思議である。

夏のボサ・ノヴァ系のボーカルは「爽やかで軽快」。夏はボサ・ノヴァが良く似合うというが、ボサ・ノヴァは意外と冬にも似合うところがあって、冬のボサ・ノヴァ系のボーカルは「ウォームで軽快」。ボサ・ノヴァのボーカルって、ほのぼのとした「暖かみ」を感じる。この盤のライナーノーツでジルベルトが形容した「暖炉のアルバム」って、この盤を聴けば、何となくその雰囲気が良く判る。
 
 
 
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2021年12月 7日 (火曜日)

ノラ・ジョーンズ、初のライブ盤

以前より、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)のボーカルが気に入っている。デビュー当時からずっとアルバムを追いかけているが、声そのものも良いが、ノラの唄う音世界が良い。

最初はコンテンポラリー・ジャズっぽい音世界だったが、少しずつ幅を拡げて、米国ルーツ・ミュージックをベースとしたものになり、加えて、米国ルーツ・ロックの要素も交えて、現代のフュージョン・ジャズっぽい、1970年代であれば、アダルト・オリエンテッド・ロック(AOR)ぽい音世界にもなっていて、これはこれで「クールじゃないか」という感じで、愛でている。

Norah Jones『'Til We Meet Again』(写真左)。今年4月、ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、
基本セットとして、Norah Jones (vo, key, g), Pete Remm (org), Christopher Thomas, Jesse Murphy (b), Brian Blade (ds), Jesse Harris (g),Jorge Continentino (fl), Marcelo Costa (perc) という感じ 。

このライヴ盤の選曲については、ノラ・ジョーンズのキャリア初となるライヴ・アルバムである。2017~19年に行ったライヴから、ノラ自身の手で「お気に入りのテイク」が選ばれている。選曲を見れば、オールタイム・ベスト的なラインナップになっている。これが実に良い。ベスト・アルバムというよりは、充実のライブ盤という趣。
 

Til-we-meet-again

 
2002年のデビュー作『Come Away With Me』以来、ライヴ盤が無かったというのは意外だったが、素晴らしい内容のライヴ盤に気分は「ウハウハ」である(笑)。冒頭、ハンク・ウィリアムス作の名曲「Cold, Cold, Heart」のカヴァーから始まり、基本的に音楽仲間との共作も含むノラ自身のオリジナル曲で占められている。

ラストに(日本盤には、大阪城ホールで録音された「サンライズ」が追加されているが)、もう一曲カヴァー曲「Black Hole Sun」が入っている。2017年に亡くなったクリス・コーネルへの追悼として、コーネルがサウンドガーデンとして最後にライヴを行なった会場、米ミシガン州デトロイトのフォックス・シアターで録音された音源。これが実に良い。いやいや、ノラってカヴァーが上手い。原曲の良さを更に引き出して、しみじみと聴かせてくれる。

バンド・サウンドとしては、まず、ノラのキーボードが上手い。改めて「こんなに上手かったんだ」と感心した。そして、リズム&ビートをグッと占めているのが、僕の最近のお気に入りのドラマー、ブライアン・ブレイド。曲によって、ジャジーに、ブルージーに、そして、ファンキーに、変幻自在のリズム&ビートを供給して、ノラのボーカルを引き立てている。

このライヴ盤のタイトルが『'Til We Meet Again』。訳せば「また会える日まで」。コロナ禍の現在において、実に心に響くタイトルだ。ライヴを容易に開催することができない時代に、ノラからの臨場感溢れる、優れた内容のライヴ盤である。
 
 
 
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