2021年2月20日 (土曜日)

ハートマンの歌唱が素晴らしい

ジャズの男性ボーカルは、フランク・シナトラ、メル・トーメ、ナット・キング・コールが専らの「お気に入り」。他のボーカリストについてはあまり聴かない、というか、他にメジャー・な存在がほとんどいないといえばいない。よって、この盤も最初は共演パートナーに惹かれてゲットした盤ではある。

『John Coltrane and Johnny Hartman』(写真左)。1963年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Hartman (vo), John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。ジョン・コルトレーンの「伝説のカルテット」に、ボーカルのジョニー・ハートマンが客演したイメージの共演盤である。

ジョニー・ハートマンは、1923年7月、米国ルイジアナ州生まれのジャズ・ボーカリスト。アール・ハインズ、エロル・ガーナーとの共演で頭角を現し、カントリーなどにも適応するが、メインはジャズ・ボーカル。この共演盤を録音した時点で40歳。ボーカリストとして油の乗りきった中堅でのパフォーマンスである。
 
 
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コルトレーンにとっては、名盤『Ballads』と同じ系統のアルバムになる。激しいシーツ・オブ・サウンドやフリーなブロウを封印し、内省的で耽美的でスローなブロウをメインに据えたパフォーマンスに終始している。この盤でのコルトレーンは限りなく美しく唄う様にブロウし、ハートマンに対抗するようにブロウする。

ハートマンについてはマイペース。バックがコルトレーンの「伝説のカルテット」なのだが、全く緊張感も気負いも感じられない。ただただ自然体で、ハートマンの個性を振り撒いて唄い上げていく。この盤でのハートマンの唄いっぷりは素晴らしく、聴き惚れるばかり。特に緩やかなバラードの歌唱は素晴らしい。

この盤、コルトレーンのテナーにばかり話題が集中するが、どうして、この盤はハートマンのバラードの歌唱が頭1つ抜きんでている。どうも、コルトレーンの「伝説のカルテット」は歌伴は似合わない。エルヴィンのドラムも不完全燃焼っぽい。マッコイのピアノだけがなんとか上手くハートマンの伴奏をしているのが微笑ましい。
 
 
 
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2021年2月19日 (金曜日)

朗々なベネットに歌伴エヴァンス

ボーカルものを聴き進めている。前にも書いたが、ジャズ・ボーカルについては、伝統的スタイルの「こぶし」やヴィブラートを効かした唄い方にどうしても馴染めなくて、ジャズ初心者の頃から常に後回しにしてきた。が、聴かず嫌いは良く無い。21世紀に入ってから、有名盤については努めて聴く様にしている。

『The Tony Bennett / Bill Evans Album』(写真左)。1975年6月10−13日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Bennett (vo), Bill Evans (p)。男性ジャズ・ボーカリストの代表格の1人、トニー・ベネットと、ジャズ・ピアニストのレジェンド、ビル・エヴァンスとのデュオ盤である。

トニー・ベネットは男性ジャズヴォーカリスト界を代表する存在で, 「I Left My Heart in San Francisco」などの世界的なヒットで知られている。ビル・エヴァンスは、ジャズ・ピアノのスタイリスト。トリオのインタープレイの祖であり、モーダルなバップ・ピアノの基本である。

ベネットのボーカルは「朗々」と唄い上げるもの。フェイクもギミックも無い。男性らしい声でストレートに朗々と唄う。こういうボーカリストの伴奏は難しい。朗々と唄うものを邪魔してはいけないし、かといって、キーになる音やビートは唄い手にしっかり伝えないといけない。目立たずに、でも存在感は必要。
 
 
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しかし、そこは「伴奏上手」のエヴァンス。心得たものである。エヴァンスは、ピアノ・トリオでの弾き回しは、明快なタッチで明らかにバップな弾きっぷり。フレーズはしっかり浮かび上がるし、ビートはしっかり前面にでる。しかし、歌伴に回ると、エヴァンスの弾き回しは明らかに変わる。

ボーカルを決して邪魔せず、それでいて、唄い手が唄い易い様に、キーになるフレーズやビートを明確に伝える。変にモードに傾かず、しっかりとコードとビートを供給する。これがこの盤での聴きどころになる。実に上手い「歌伴」だ。

デュオの中では、ベネットが朗々と唄い上げるタイプのボーカリストなのでリードする方に回るし、エヴァンスは当然、フォローする方に回る。リードする方とフォローする方、主従の関係が時々交代すれば、何か「化学反応」でも起こる可能性もあるのだが、このベネットとエヴァンスのデュオではそれは無い。だからそれを期待するのは「筋違い」だろう。

この盤、気持ち良い伴奏を得て、朗々と気持ち良く唄うベネットと、そんな気持ちの良い伴奏を供給する、伴奏上手のエヴァンス、その両方をそれぞれ確認し楽しむ盤だと思う。
 
 
 

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2021年2月 7日 (日曜日)

ケイコ・リーの素敵なライヴ盤

これはこれは、コンテンポラリーなジャズ・ヴォーカルの好盤が出現した。今までは何故か、我が国のジャズ・ヴォーカルのアルバムは、旧来の「スタンダード曲」が絶対メインであった。1970年代以降のポップス曲をジャズ・スタンダード化した「ニュー・スタンダード曲」もあるにはあったが、それは「彩り」のレベルで留まったか、それ以前のレベルだった。

Keiko Lee『Live at jazz inn LOVELY』(写真左)。ケイコ・リーの活動の原点、名古屋の老舗クラブ「Jazz Inn Lovely」で、2020年2月、彼女の誕生日に行われたライヴを収録。ちなみにパーソネルは、ケイコ・リー (vo), 野力奏一 (p), 岡沢章 (b), 渡嘉敷祐一 (ds)。ケイコ・リーのライヴ盤としては、2006年リリースの『Live at BASIE with Hank Jones』以来となる3作目。

ケイコ・リーのデビュー25周年とケイコ・リーの活動の原点とも言うべき名古屋の老舗ジャズ・クラブ jazz inn LOVELYの開館50周年が重なった、良い意味での「奇しき因縁」のライヴ盤である。こういう「何周年記念」盤というものは、奇をてらわず、無難に旧来の習わしに従った旧来の「スタンダード曲」をメインに据えるのだが、この盤は違う。 
  
 
Live-at-jazz-inn-lovely
 
 
冒頭のクイーンの名曲「We Will Rock You」、レノン=マッカートニーの「Oh! Darling」「Come Together」、山下達郎の「あまく危険な香り」、クルセイダーズの「Street Life」、キャロル・キングの「.You've Got A Friend」そして、ジョン・レノンの「Imagine」。我々、1970年代ロック〜フュージョン・ジャズをリアルタイムで体験した世代には「ウハウハ」の選曲。

なんと、ニュー・スタンダード曲が素晴らしい出来でズラリと並ぶ、旧来に無い、新しい雰囲気のボーカル盤の出現である。こういうニュー・スタンダード曲って、アレンジが難しいらしく、原曲をジャジーなビートで置き換えて終わりという、なんとも工夫の無いものが多かったが、このライヴ盤は違う。しっかりとジャズにアレンジし、ジャジーな演奏でバッキングするという素敵な内容のボーカル盤。

ケイコ・リーの歌唱力は既に「折り紙付き」で、これらのニュー・スタンダード曲を素敵に、魅力的に唄い上げてくれる。これぞまさに「コンテンポラリー」なジャズ・ヴォーカルだと感じる。バックのお馴染みのリズム・セクションも好演につぐ好演。このリズム・セクションがあるからこそ、安心してケイコ・リーはその素晴らしい歌唱を発揮できるのだ、と思わせてくれる。好盤である。
 
 
 
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2021年1月22日 (金曜日)

邦題「フレッド アステアを歌う」

若い頃、ジャズ者初心者の頃、ジャズ・ボーカルが苦手だった僕も、今ではそこそこジャズ・ボーカルは聴くようになった。女性ボーカルは基本的に「コンテンポラリーな」ボーカルを好んで聴く。例えば、ダイアナ・クラールやケイコ・リーなど。男性ボーカルは「正統派な」ボーカル、例えば、フランク・シナトラやメル・トーメを好んで聴く傾向にあるようだ。

『Mel Tormé Sings Fred Astaire』(写真左)。1956年11月10-11日、ロスでの録音。西海岸ジャズに強い「ベツレヘム・レーベル」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Mel Tormé (vo), Marty Paich (arr, cond), Herb Geller (as), Jack Montrose (ts), Jack DuLong (bs), Pete Candoli, Don Fagerquist (tp), Max Bennett (b), Alvin Stoller (ds), Bob Enevoldsen (valve-tb), Vince DeRosa (French horn), Albert Pollan (tuba)。

邦題「フレッド アステアを歌う」。ミュージカル映画の大スター、フレッド・アステアが歌った、ガーシュインやアービングバーリン作品を、マーティー・ペイチ楽団のバッキングで、メル・トーメが歌う企画盤。マーティー・ペイチのアレンジが好調で、アルバム全体の音作りは、明らかに米国西海岸ジャズの雰囲気をふんだん湛えている。
 
 
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メル・トーメについては、一般的な知名度はシナトラに譲るが、ジャジーな歌のうまさは抜群。朗々として健康的な唄声はシナトラの対極に位置して、実に個性的。「ベルベット・ヴォイス」と称されるトーメの唄声は、その卓越した表現力や歌唱力と合わせて、実に魅力的なもの。そんなトーメが、ガーシュイン兄弟5曲、アービング・バーリン4曲を含む12曲を唄いまくる。

白人独自のヴォーカルを洗練させていったトーメの面目躍如である。とにかく「二枚目」な唄声は聴き易く判り易い。もともと、フレッド・アステアのリズム感に溢れ、判り易い歌唱スタイルは、後進のメル・トーメらに多大なる影響を与えた、とされる。そんな話を実感出来るトーメの歌唱である。ポップでソフト&メロウな歌唱はずっと聴いていても飽きない。

バックのマーティー・ペイチ楽団の演奏も名手揃いで、何気に優れていて良い感じ。アレンジも正統派なもので安心して聴ける。グルーヴィー&スウィンギンなバッキングは、この盤の聴きどころのひとつ。ジャケットがかなりレトロなので、なかなか触手が伸びないが、内容はポップで判り易い。ジャズ・ボーカルの好盤の一枚としてお勧め。
 
 
 

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2020年12月 3日 (木曜日)

「メローなロンドンの週末」

もともとはマイルス・バンドに呼ばれる位に、先進的でロック寄りのジャズ・エレギを弾く新進気鋭のギタリストだった。そして、1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの大ブームの中で、ソフト&メロウを「ウリ」にしたギタリストとして有名になる。そして、遂にはソフト&メロウなフュージョンの中で歌を披露するようになる。

で、この歌が「とても素晴らしい」。ギタリストなのに歌も上手い。唄って弾きまくるギタリストとなり、遂には、上手いギターも弾くボーカリストになった。しかし、この人、ギターを弾かせると超一流な腕前なんだけどなあ。僕は今でも、この人のギターが大好きで、ギター弾きまくりの1970年代のリーダー作を、今でも好んで聴いているくらい。

George Benson『Weekend in London』(写真左)。先月のリリース。ジャズ・ギターのレジェンド、ジョージ・ベンソンが2019年、ロンドンの老舗ジャズ・クラブ、Ronnie Scott'sで行ったライヴを収録。このジャズ・クラブのキャパは250人。小さなジャズ・クラブでのライブならではの、熱気がダイレクトに伝わる、デッドな音空間が素敵なライヴ盤である。
 
 
Weekend-in-london
 
 
収録曲はベンソンの「ベスト集+カヴァー集」的なもの。まず「Give Me The Night」からスタートするところが良い。1980年に全米TOP5ヒット曲、懐かしい。十八番の代表曲「Love X Love」や「In Your Eyes」の選曲も良い。カヴァー曲は渋い選曲で、ダニー・ハサウェイの「The Ghetto」なぞ、思わず感嘆の声を上げてしまう。

このライヴ盤のベンソンの基本的スタンスは「上手いギターも弾くボーカリスト」。冒頭から唄いまくっている。時々、間奏のレベルでギターを弾くが、これが流石に「上手い」のだが、物足りない。しかし、ラストの「Cruise Control」ではスキャットは入るが、久し振りにセミアコを弾きまくっている。これが圧巻。やっぱり、ベンソンには「ギター弾きまくり」だけのアルバムを出して欲しいなあ。

ベンソンは1943年生まれなので、今年で77歳。もう大御所も大御所、レジェンドもレジェンド過ぎる年齢ではあるが、このライヴ盤での歌声は「まだまだ現役バリバリ」。衰えは全く感じ無い。ギターについても堂々とした弾きっぷりで、指が縺れることは全く無い。いやはや、凄いジャズ・ギター&ボーカルのレジェンドである。
 
 
 

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2020年11月27日 (金曜日)

久し振りにフライド・プライド

Fried Pride(フライド・プライド)は日本のジャズ・デュオ ユニット。ギターとボーカルの2人組。類まれな歌唱力を持つボーカリストShihoと超絶技巧のギタリスト横田明紀男の2人からなるジャズユニット。日本のみならず、世界的に見て、ジャズの世界で「ギターとボーカル」のパーマネント・ユニットはとても珍しい存在だった。

以前、デビュー作を聴いて、これがまあ、唖然とするくらい凄いギターとボーカルで、こいつは凄いユニットがデビューしたもんだ、と思った。しかし、2012年に横田明紀男が脳梗塞にて入院、その後回復したが、2016年12月23日をもって活動終了。活動期間は15年。アルバムは12枚をリリース。どれもが、「ギターとボーカル」のユニットの特性を最大限に活かした、ユニークな内容のものばかり。愛聴してましたねえ。

Fried Pride『Musicream』(写真左)。タイトルは「ミュージックリーム」と読む。フライド・プライドの6thアルバム。2006年6月のリリース。改めて、ちなみにパーソネルは、Shiho (vo), 横田明紀男 (g)。タイトル「Musicream」は「最上級の」という意味である「Cream」と「Music」の合体造語。つまりフライド・プライドによる「最上級な音楽」を意味する、とのこと。
 
 
Musicream-fried-pride  
 
 
日本語ボーカルが秀逸である。言っておくが、ボーカルのShihoは日本人。しかし、以前、デビュー・アルバムを聴いたときは、Shihoは絶対にハーフかクォーターで、英語圏で長年生活してきたネイティヴだと思ったくらい、英語でのボーカルが上手い。が、この盤では、フライド・プライド始まって以来であると思われる、日本語ボーカルが興味深い。日本語での「コンテンポラリー・ジャズ・ボーカル」が見事。

例えば、2曲目「リバーサイド・ホテル」(井上陽水)、3曲目「接吻 KISS」(Original Love)、7曲目「Midas Touch」(山下達郎)、8曲目「永遠に」(The Gospellers)など、Jポップの名曲を日本語ボーカルでカヴァーしていくのであるが、これがかなり良くできていて感心する。

日本語ボーカルでのカヴァーだと、どうしても歌謡曲的な雰囲気が漂って「いけない」のではないか、と思ったが、テンション溢れ切れ味の良いギター・アレンジと、ジャジーで情感豊かなボーカルで、これは「かなりイケる」。特に、井上陽水の「リバーサイド・ホテル」には参りました。久し振りに聴き返したのだが、やはり「フライド・プライド、侮り難し」である。
 
 
 

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2020年10月30日 (金曜日)

フィッツジェラルドの代表盤

エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)の完全未発表音源『Ella: The Lost Berlin Tapes』がリリースされる記事を読んでいて、エラのライヴ盤でベルリンでのやつがあったよなあ、とボンヤリ思った。ボンヤリ思ったというのも、僕はジャズ・ボーカルが長い間、苦手であった。21世紀に入って以降、それなりに有名盤、好盤を聴き進めてはいるが、苦手感は払拭できないでいる。

特に、トラディショナルな正統派ジャズ・ボーカルのほとんど、特に女性ボーカルが苦手。エラなんか最たるもので、基本的にはずっと「聴かず嫌い」であった。が、人間、歳を取ると「許容度」が増すらしく、21世紀に入った頃から、トラディショナルな正統派ジャズ・ボーカルも少しずつ聴く様になった。エラも何枚か有名盤を聴く機会があって、ベルリンのライヴ盤『Mack The Knife - Ella In Berlin』は聴いたことがある。

Ella Fitzgerald『The Complete Ella In Berlin : Mack the Knife』。1960年2月13日、ベルリン(録音当時は西ベルリン)での録音。ちなみにパーソネルは、Ella Fitzgerald (vo), Jim Hall (g), Paul Smith (p), Wilfred Middlebrooks (b), Gus Johnson (ds)。エラ・エラ・フィッツジェラルド with ポール・スミス・カルテットである。
 
 
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伝説のベルリン公演でのライヴ録音。エラは絶好調。バンドと一体となり猛烈にスイングする様は圧巻。楽しい公演だったのだろう、ここでのエラは結構シンプルで判り易い歌唱。収録曲も取っ付き易いスタンダード曲ばかりで、ジャズ・ボーカルの初心者にも入り易い内容。バラードの「Misty」や「The Man I Love」は絶品。そして、得意の「スキャット」を駆使して、ご機嫌なアドリブ・パフォーマンスを展開する「How High The Moon」や「The Lady Is A Tramp」等は「エラの真骨頂」。

ボーカル盤の場合、バックのバンドの良し悪しが重要になるのだが、この盤でのポール・スミス・カルテットのパフォーマンスは全く申し分無い。エラのスピード感溢れるボーカルにしっかり反応するところなど、良いバックやなあ、とほとほと感心する。要所要所でジム・ホールのギターが効いている。このバック・バンドだからこそ、これだけエキサイティングなライヴが展開出来るのだろう。

このCDはオリジナルLPの収録曲に4曲を追加して「The Complete」盤としている。が,このうち2曲「Love For Sale」と「Just One Of Those Things」は実は1956年8月のHollywood Bowlでの録音とのこと。ただ、こちらも「with ポール・スミス・カルテット」なので違和感が無いし、ライヴの熱気・雰囲気もほぼ同じ。誤認しても仕方が無い。逆にこのライヴ盤に関しては、敢えて「The Complete」盤を選択しなくても、オリジナルLP収録盤を選択しても遜色は無い。どちらのヴァージョンでも、エラの歌唱が堪能出来る。
 
 
 

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2020年10月 4日 (日曜日)

ダイアナの「リピューマ追悼盤」

21世紀に入って、やっと、ジャズ・ボーカルを聴く様になった。もともとジャズを聴き始めた動機が、高校時代はプログレ小僧だった僕が、ロックに見切りをつけて、英語の歌詞なんて、どうせ何を唄っているのか良く判らないので、インスト中心の音楽が良い。ということでジャズに走ったので、ジャズについても「ボーカル」にはあまり触手が伸びなかった。

ジャズ・ボーカルについては、男性ボーカルはフランク・シナトラとメル・トーメ。基本的にこの2人がメイン。女性ボーカルについては、いろいろ聴くが、オールド・スタイルの歌手は苦手。1960年代以降のポップでクロスオーバーな女性歌手が好みで、ディーディーやリンカーン、バートンなどを良く聴く。そして、この人の盤もよく聴く。

Diana Krall『This Dream Of You』(写真左)。コンテンポラリーな女性ジャズ・ボーカルの代表格、ダイアナ・クラールの3年振りのアルバムになる。ちなみにこの盤は新録では無い。前作『Turn Up The Quiet』(2017年)と同時期に録音された未発表音源の中から、選りすぐった内容になっている。
 
 
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Diana Krall (p, vo)をリーダーに、3つの編成でのパフォーマンスになる。1つは、John Clayton (b), Jeff Hamilton (ds), Anthony Wilson (g) とのクァルテットで録音したもの。もう1つは、Christian McBride (b) とRussell Malone (g) とのトリオ編成による録音。そして、3つ目は、Tony Garnier (b), Karriem Riggins (ds), Marc Ribot (g), Stuart Duncan (fiddle) というユニークな編成。

ダイアナ・クラールいわく、2017年3月に逝去した、ダイアナの才能を見出し、長年の制作パートナーである名匠トミー・リピューマとの思い出と対峙して、今回のアルバムを仕上げ、改めて音楽に向き合ったという。ダイアナ本人が特に「アウト・テイクには程遠くて、放置するにはもったいない」と感じていた2016年からのレコーディングからの選りすぐりである。どの曲も充実の内容。

とてもとても未発表音源を集めた盤とは思えない。この盤のダイアナの歌唱を聴いていると、リピューマのプロデュースが不可欠であると強く感じる。実にしっくりくるのだ。この盤は明らかに、ダイアナのリピューマに対するトリビュート。そして、この盤のクレジットには「ALL SONGS PRODUCED BY DIANA KRALL & TOMMY LIPUMA (2016-2017)」と書かれている。
 
 
 

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2020年8月11日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・182

昨日、Diane Schuur(ダイアン・シューア)の新盤をご紹介したんだが、ボーカルものついでに、John Pizzarelli(ジョン・ピザレリ)の現時点での新盤もご紹介した。2019年、昨年のリリースで、入手して聴いて「これは良いなあ」と感心したんだが、どうも、当ブログでご紹介するのを失念していたらしい。

John Pizzarelli Trio『For Centennial Reasons: 100 Year Salute to Nat King Cole』(写真左)。2019年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、John Pizzarelli (g, vo), Mike Karn (b), Konrad Paszkudzki (p)。ギター弾き語りの名手ジョン・ピザレリのリーダー作である。ピザレリの弾き語りの妙技を堪能できる、ドラムレスのシンプルなトリオ構成。

ナット・キング・コールの生誕100周年記念の「ナッキンコール」トリビュート盤である。ピザレリはトリビュートものが大好きみたいで、これまで、デューク・エリントンやジョニー・マーサー、ポール・マッカートニーにフランク・シナトラ、アントニオ・カルロス・ジョビンのトリビュート盤をリリースしている。まあ、アルバムのテーマを明快に設定することは良いことである。
 
 
For-centennial-reasons
 
 
ナット・キング・コールの名曲をピザレリ流にアレンジしたものなのだが、これがなかなか洒落ている。「The Very Thought Of You」「It's Only A Paper Moon」「Body And Soul」「When I Fall In Love」などが選曲されているが、どらもが
ナット・キング・コールの歌唱で有名なものばかり。それらをピザレリはコールに似せるのでは無く、ピザレリ流に焼き直して、お洒落に聴かせてくれる。

ピザレリのボーカルについては、スインギーでムード満点。加えて、ギターとお得意のスキャットはスイング感満点。曲毎にしっかりと情感を込めて歌い込む様は素晴らしいの一言。この手のコンテンポラリーなジャズ・ボーカルって、やっぱり良いな、と思う。ピザレリは1960年生まれだから、この盤の録音時は59歳。ベテラン・ジャズマンの域に達しつつあり、この盤の歌唱は特に堂に入ったもの。

ナット・キング・コールのトリビュート盤ゆえ、このピザレリ・トリオの構成は、ドラムレスのピアノ、ギター、ベースの構成になっている。これって、ナット・コール・トリオが広めた構成。今では殆ど見かけ無くなったが、1950年代に入る頃まで、ピアノ・トリオと言えばこの「ドラムレス構成」が主流だった。こんなところにも、この盤に対するピザレリの拘りが垣間見えて面白い。
 
 
 

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Never_giveup_4
 

2020年8月10日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・181

グローバルな視点で見ると、ジャズでは、毎月、新しい若手がメジャー・デビューしているみたいで、まだまだジャズを志すミュージシャンがいるんやなあ、と嬉しくなったりする。そんな中で、ジャズを聴き始めた頃にデビューした「当時の若手ジャズ・ミュージシャン」が、今ではバリバリのベテラン・ミュージシャンの類になっている訳だが、突如、リーダー作をリリースするのに出くわすと、これまた、とても嬉しくなったりするのだ。

Diane Schuur『Running on Faith』(写真左)。今年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Diane Schuur (vo, p), Ernie Watts (ts, ss), Kye Palmer (tp, flh), Thom Rotella (g), Bruce Lett (b), Kendall Kay (ds)。現代メインストリーム・ジャズの名手達がバックをしっかり担って、ダイアン・シューアのボーカル&ピアノをガッチリとサポートした好盤である。

小粋なピアノ、ハッピーな人柄で魅了するダイアン・シューア。1953年12月、米国ワシントン州オーバーン生まれ。生まれて間もなく失明。9歳の時から歌を、16歳で作詩作曲を始める。1982年『Pilot of My Destiny』でデビュー。僕は1987年リリースの『Diane Schuur & the Count Basie Orchestra』で彼女のボーカルを知った。
 
 
Running-on-faith  
 
 
正統な唄いっぷりでありながら、どこかポップで今様。様々な有名ジャズマンと共演し、様々なポップ曲をカヴァーしている。適応力がずば抜けて高いのだろう。どの共演もどのカヴァーもその出来は良い。あまり着目されないが、彼女の小粋なピアノも聴きもの。正統なジャズ・ピアノで小粋に弾き回すのだから、聴いていてとても楽しい。そんな自前のピアノに乗って自らが唄うのだ。良いに決まってる。

この盤では、そんな彼女の特質の全てがギッシリと詰まっている。Percy Mayfieldの「Walking on a Tightrope」と「The Danger Zone」では彼女のアレンジ能力の高さを垣間見る。お得意のポップス曲のカヴァーについては、Paul Simonの「Something So Right」と ビートルズの「Let it Be」をチョイスしている。これがまたご機嫌な出来なのだから堪らない。

ラストの「Swing Low Sweet Chariot」の唄いっぷりを聴けば、ああジャズはやっぱり米国ルーツ・ミュージックの根幹をなすものなんやなあ、ということを再認識したりする。ダイアン・シューア健在。この新盤を聴いて、まだ彼女は元気、まだまだ彼女は第一線の女性ジャズ・ボーカリストだということを確信する。ジャジーでポップな現代のジャズ・ボーカルである。好盤です。
 
 
 

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