アップル・レコードのMJQ・2
ビートルズで有名なAppleレコード。レジェンドなカルテット、モダン・ジャズ・カルテット(The Modern Jazz Quartet・MJQと略)は、この「場違い」なAppleレコードに2枚のアルバムを残している。
その経緯は僕は知らないが、昔、Appleレコードのカタログを眺めていた時、MJQのアルバムを見つけた時は思わず「え〜っ」と声を上げた。なんで、純ジャズ最高のグループの音源が、Appleレコードからリリースされていたのか。謎である。
The Modern Jazz Quartet『Space』(写真)。 1969年、ロンドンの「Trident Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), John Lewis (p, harpsichord), Percy Heath (b), Connie Kay (ds) の鉄壁のカルテット。Appleレコードでの2枚目のリリースになる。
アルバム・タイトルを見て「?」。収録曲のタイトルを見て、冒頭の2曲が「金星からの訪問者」「火星からの訪問者」。どうも宇宙を意識した企画曲っぽい。録音年の1969年と言えば、アポロ計画、月面着陸など、世界の人々が宇宙へと想いを馳せた時代。
そんな時代背景に影響を受けて、この2曲のコンセプト曲を作ったのだろうか。聴いてみると、非常にアーティスティックで創造的な、そして、こかクラシック&プログレ的な、理路整然とした組曲の様な音世界。
そんなガッチリと組み込まれたアレンジの中を、ファンクネスを封印した、無機質な響きの浮遊感溢れる流麗なミルトのヴァイブが飛翔する。そして、ジャジーな響きとは無縁の冷たくメタリックなタッチのルイスのピアノ。ジャズをしっかりと知る者が聴けば、思わず仰け反る、成熟したMJQだから為し得るコンセプト曲。
しかし、この宇宙を想起するコンセプト曲2曲の後に「Here's That Rainy Day」「Dilemma」と有名なジャズ・スタンダード曲が続き、ラストに長尺の「Concierto de Aranjuez(アランフェス協奏曲)」。
この如何にも純ジャズらしい有名曲3曲が素晴らしい出来。この3曲は「いつものMJQ」で、1969年の音楽の時代背景をバックに、高速でテクニカルで、珍しくファンクネス微少な「MJQらしい演奏」を聴くことが出来る。
冒頭2曲の宇宙的なコンセプトがメインなのか、後半の有名スタンダード曲の1969年的な解釈がメインなのか、よく判らないプロデュース。中途半端な印象は拭えない盤ではあるが、MJQの演奏内容は相当に高度で素晴らしい。アルバムが表現しかったコンセプトなどという難しいことは考えずに、高度でテクニカルな、成熟したMJQを楽しむのに好適。
MJQの推薦盤に全くタイトルが上がらない、かつ、不可思議でジャズらしくないジャケなので、触手がなかなか伸びないとは思うが、とりわけ、MJQ者の方々には一度は聴いて欲しい良好盤である。
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