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2019年3月 5日 (火曜日)

カールスルーエのペトルチアーニ

ペトが亡くなって、20年が経った。ペトとは「Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ)」。先天性疾患による障害を克服したフランス最高のジャズ・ピアニストである。1999年1月、36歳の若さで亡くなった。彼のピアノは超絶技巧、ダイナミックで耽美的。「タッチを切れ味良く明確にして、バリバリ弾くビル・エバンス」と僕は形容している。

ペトは僕のお気に入りピアニストの一人で、彼の正式盤はほとんど所有している。今でも時々、チョイスしては聴き流している。聴いた後、スカッとする素晴らしい弾きっぷりで、そのテクニックの確かさは清々しさすら感じる。そんなペトではあるが、亡くなって20年、まさか新盤がリリースされるとは思わなかった。

Michel Petrucciani『One Night in Karlsruhe』(写真左・右はbootleg)。1988年7月7日、ドイツのカールスルーエでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), Gary Peacock (b), Roy Haynes (ds)。ペトのピアノがメインの鉄壁のトリオ構成。資料を確認すると、このライブ盤、もともとはbootlegだったものをリマスター仕直し、音質を向上させて正式盤として発売したものらしい。
 

One_night_in_karlsruhe  

 
ペトのピアノがまず素晴らしい。絶好調とまではいかないまでも、かなりの好調さを維持している。切れ味の良い明快なタッチで、疾走感溢れるアドリブ・フレーズ。とにかくペトらしく、バリバリに弾きまくる。これが実に良い。バラードはダイナミズム溢れる明快なイメージ。スケールの大きい展開が聴いていてとても心地良い。

このライブ盤の面白味はベースとドラム。ベースがゲイリー・ピーコック。ドラムがロイ・ヘインズ。ペトのキャリアの中でも珍しい組合せではないか。ゲイリー・ピーコックはキース・ジャレットとのトリオ「スタンダーズ」のベーシストであるが、ペトとの共演では全く違ったベースを聴かせてくれる。骨太で鋼の様なしなやかなウォーキング・ベース。ロイ・ヘインズの硬軟自在なドラミングについては、ペトとの相性が実に良いようだ。

3者一体となったインタープレイはダイナミックでしなやかで明快。ペトは生き生きとしてプレイしている様子が頼もしい。こういうライブ盤が、今年の1月になってリリースされるとは驚きです。しかも、内容も確かな、音質も良好なライブ音源。ペトのダイナミックなピアノを聴いていて、ペトのアルバムを聴き直してみたくなりました。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年12月29日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・67

年の瀬である。今日でやっと本業の方が終わった。今年のジャズのアルバム鑑賞も大詰め。今年のブログの最後のアルバムは何にしようか、を考える。フッと思いついた名前が「ミシェル・ペトルチアーニ/Michel Petrucciani (1962年12月28日 – 1999年1月6日)」。ミシェル・ペトルチアーニ=愛称「ペト」。今年の締めは「ペト」だな。

Michel Petrucciani『Trio in Tokyo』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), Steve Gadd (ds), Anthony Jackson (b)。1997年11月に行われた「ブルーノート東京」でのライヴ演奏を収録した音源。ペトが亡くなる2年前の録音。良い音、良い雰囲気で収録されている。

生まれつきの骨形成不全症という障害を克服し、フランス最高のジャズ・ピアニストとなった「ペト」。障害のため、身長は成長期になっても1メートルほどにしか伸びず、しかも様々な病気にも悩まされ、同年代の普通の少年ができるようなことは一切できなかったため、彼の関心はもっぱら音楽、ジャズに向けられる。
 

Trio_in_tokyo  

 
ペトのピアノは素晴らしい。太く重く力強いタッチ、それでいて流麗かつメロディアス。フレーズの雰囲気はビル・エヴァンス直系だが、彼の奏でるフレーズは「唯一無二」。明らかにペトならではの個性が溢れている。暫く聴き進めると必ずペトと判る、唯一無二の個性。硬軟自在、千変万化、縦横無尽に、ペトはピアノを弾きまくる。

ガッドの縦ノリのダイナミックなドラミングに惚れ惚れする。ズトンズトトンと魅力的な縦ノリのビート。これがペトのフレーズを鼓舞しまくる。アンソニーの超弩級の野太いベースラインにも耳を奪われる。ペトのアドリブ・フレーズをポジティブに誘うグルービーなベースライン。躍動感溢れるリズム・セクションがこのライブ演奏のキモである。

CD1枚分、1時間ほどのパフォーマンスの記録しかないので、ちょっと物足りない。もっともっと聴いていたい。そんな気を強くさせる、とても優れたピアノ・トリオのライブ盤。オリジナル曲の中でただ一曲、とんでもなく異彩を放つ、マイルスの「So What」。硬派に捻れた「So What」。ペトの持つ才能の素晴らしさを僕達に教えてくれる。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年2月10日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・100

このアルバムは良い。聴いていてとても楽しい。しかも、聴いていて、双方のテクニックが優れていて、双方のアドリブ感覚が素晴らしい、ということが良く判る。ジャズって、聴いていて楽しいことがとっても大事。そういう意味では、このアルバムはジャズとして「満点」である。

Eddy Louiss & Michel Petrucciani『Conférence De Presse... L'Intégrale』(写真左)。  Eddy Louiss (org), Michel Petrucciani (p)。1995年、フランスは Dreyfus Jazz からのリリース。ありそうでなかなか無いオルガンとピアノのデュオ。

オルガンとピアノ。どちらも鍵盤楽器。鍵盤楽器同志がデュオをやったら、変に被ったらデュオの良さがすっ飛んでしまう。テクニックが優秀で、アドリブ展開での反応が優れていないと上手くいかない。そういう意味で、アドリブ展開の反応がとびきり優れているオルガン奏者って、なかなかいない。

Eddy Louiss(エディ・ルイス)は、フランスのオルガン奏者。僕はこのデュオ盤で、エディ・ルイスの存在を知った。テクニック優秀、オルガンの奏法として、かなりプログレッシブなオルガニストである。オーソドックスな奏法からアブストラクトな奏法まで、幅広くオールマイティーに弾きまくる、実に優れたオルガン奏者である。
 

Conference_de_presse

 
そんなエディ・ルイスが、ジャズ・ピアノの巨匠、ミシェル・ペトルチアーニとデュオを組んで、丁々発止とやりあう、ほんと、聴いていてとても楽しいデュオ盤である。ボリューム的にCD2枚組の分厚さ。トータル2時間ちょっとの収録時間なのだが、全く飽きない。聴き始めて、あっと言う間の2時間ちょっとである。

ピアノは打楽器と旋律楽器の両方を兼ねることが出来、ピアノだけで「ひとりオーケストラ」が出来る位の幅広い表現が可能な唯一の楽器なのだが、ペトルチアーニのピアノは、そのピアノの特性を最大限引き出し最大限の表現を見せつける。硬質なタッチに卓越したテクニック。耽美的でありつつダイナミズム満載。僕の大のお気に入りのピアニストの一人である。

ペトルチアーニのピアノが、ピアノの表現方法の全てを出しつつ、思いっきり疾走する。左手でベースラインを小粋に紡ぎ、右手でリズム&ビートを叩き出す。遠慮の無い全てを出し尽くペトルチアーニのピアノ。そこにルイスのオルガンが、あっさりとしたファンクネスを滴らせながら、官能的に弾き進んで行く。相性抜群。インタープレイの息もピッタリ。魅惑的なユニゾン&ハーモニー。

飽きない。全く飽きない。あっと言う間の2時間ちょっと。この優れたデュオ盤を聴いて、フランスは Dreyfus Jazz を改めて見直す。ジャズ喫茶の空間にピッタリの乾いたファンクネスが素敵な一枚。ジャズ喫茶御用達の一枚。

 
 

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2014年11月22日 (土曜日)

若きペトのソロ・ピアノ盤です。

僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの一人、Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ・以下ペトと略)。ペトのリーダー作は何時聴いても良い。ペトのピアノは季節的には秋から冬に「より映える」。ペトのピアノを愛でる季節になった。

ペトはフランス出身のジャズ・ピアニスト。遺伝的原因から、生まれつき骨形成不全症という障害を背負いながらも、その障害を克服しつつ、ジャズ・ピアニストとして、高い評価を得るまでになった。若い頃から体質上「寿命は20歳程度まで」と言われていたらしいが、実際にはそれよりはるかに寿命を長らえて活躍、NYで死去した時は36歳だった。

ジャズ・ピアニストの個性と特質は「ソロ・ピアノ」でより明らかになる。僕は、この一枚のソロ・ピアノのアルバムで、ペトのピアノの個性と特質を再認識した。そのソロ・ピアノのアルバムとは、Michel Petrucciani『100 Hearts』(写真左)。1983年6月のNY、RCAスタジオでの録音。ペトルチアーニ6枚目のアルバム。米国でリリースされたペトのファーストアルバムになる。

ペトが21歳の時のソロ・ピアノになる。若さ溢れんばかりのソロ・ピアノ。このソロ・ピアノの面白いところは、ペトのジャズ・ピアノの嗜好の全てが詰まっているところにある。はじめはブルースからスタートするんだが、どんどん色々な曲のバリエーションに発展していって、オーネット・コールマンの曲に展開し、遂にはロリンズの「セント・トーマス」が飛び出す。
 

Michel_petrucciani_100hearts

 
しかし、タッチはペトそのもの。ペトのスタイルは、ビル・エバンスに端を発するが、エバンスよりもタッチは硬質でエッジが立っている。欧州出身のジャズ・ピアニストに良くある特徴である「クラシック・ピアノの香り」がほのかにする端正なピアノが特徴。テーマ、インプロビゼーション共に旋律を追うことができるほどに美しく、ポジティブな響きが特徴。

そんなペトのスタイルがこのソロ・ピアノに詰まっている。栴檀は双葉より芳し、とは良く言ったもので、この21歳のペトのピアノの個性と特質が確立されている。明るいタッチ、ポジティブなフレーズ。若さ溢れんばかりのペトのピアノが煌めいている。

このソロ・ピアノのアルバム、Michel Petrucciani『100 Hearts』は、ペトルチアーニを理解するのに必須のソロ・ピアノである。が、意外とこのアルバム、ジャズ本や入門本で採り上げられることが少ない。遺憾である。

このペトのソロ・ピアノ盤は、ジャズ・ピアノ者の方々に是非とも聴いて貰いたいですね。切れ味の良い硬質なタッチにポジティブで明るい展開は、聴いていてとても心地良いものです。お勧めのソロ・ピアノ盤です。

 
 

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2012年3月20日 (火曜日)

ペトルチアーニのソロ・ピアノ

僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの一人、Michel Petrucciani(ミシェル・ペトルチアーニ、愛称ペト)。ビル・エバンス、チック・コリアに次いでのお気に入り。

ペトのピアノはポジティブ。「胸の空くような」スカッとする、爽快感抜群のピアノ。ペトの硬質な叩くような、それでいて耳障りにならないピアノ・タッチ、超絶技巧にとても回る右手と左手。歌心抜群の歌うようなフレーズ、ちょっとラテンチックで翳りのある響き。ペトのピアノの特徴は、素直にどれもが心に響く。

そんなペトがソロ・ピアノにチャレンジしたアルバムがある。ソロ・ピアノへの2度目のチャレンジになる『Promenade With Duke』(写真左)。1993年の録音。ソロ・ピアノのチャレンジに、デューク・エリントンにまつわる楽曲を持ってきたところに、ペトの心意気と高邁なチャレンジ精神を感じる。

このソロ・アルバムでのペトのタッチは、いつになく力強いタッチが印象に残る。タッチが強いとは言え、決して、耳につくことはなく、ポジティブにキラキラと輝く様な硬質なタッチは、聴く耳に爽快な印象を残してくれる。リズムを打つ左手と踊るような右手が、素晴らしく高度なテクニックと共に乱舞する。溜息が出るような素晴らしさ。

収録されたデューク・エリントンにまつわる楽曲は以下の通り。デューク作の超有名曲がずらりと並ぶ。

1 Caravan
2 Lush Life
3 Take the A Train
4 African Flower
5 In a Sentimental Mood
6 Hidden Joy
7 One Night in the Hotel
8 Satin Doll
9 C Jam Blues
 

Promenade_with_duke

 
どの楽曲もどっぷりと「デュークの世界」である。既に「ジャズ・スタンダード」として君臨している楽曲の中に、4曲目の「African Flower」や曲目の「Hidden Joy」や7曲目の「One Night in the Hotel」など、デュークを良く知るものならではの選曲が実に「にくい」。この「ならではの選曲」が実に良い。実に良い内容なのである。

既に「ジャズ・スタンダード」として君臨している楽曲については、ペトはひと工夫もふた工夫もしていて、新しい解釈とアレンジを加えている。そして、これがしっかりと成果を出している。ただでは終わらせない。平凡では終わらない。ペトのアレンジメントの才能を強く感じる。

このソロ・アルバムでのペトは、デューク・エリントンにまつわる楽曲を、それまでの過去の成果を忠実になぞるのではなく、ペトの個性をベースにペトとしての解釈とアレンジを持って、デュークの楽曲と対峙する。
 
デュークの楽曲の持つ独特のスイング感を左手で再現しながらも、右手の旋律はほのかにロマンチシズム漂うもの。このロマンチシズムの芳香はペトならではの解釈と感じる。 

打弦の力強さは、ペトとデュークのピアノの共通点。そして、ロマンチシズムの芳香はペトならではのもの。ペト自身、最も影響を受けたピアニストと言っていたデュークのピアノを敬意をもって再現しつつ、ペトの個性を漂わせて、このピアノ・ソロで固められた「デューク・エリントン楽曲集」は独特の輝きを放つ。

素晴らしいソロ・アルバムだと思います。ペトの個性が全開。ペトのアレンジの才能も全開。ロマンチシズムを漂わせながら、ピアノを「鳴らし切っている」その力強いタッチでの「デュークの世界」は素晴らしい。もっと評価されて然るべき、ピアノ・ソロの名盤です。

 
 

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2012年1月10日 (火曜日)

「赤ペト」の想い出

「赤ペト」とは、ジャズ・ピアノのミューズ、ミシェル・ペトルチアーニ(以降、ペトと呼ぶ)の18歳のときの公式デビュー盤。その名もズバリ『Michel Petrucciani』(写真左)。

ジャケット写真を見て頂くとお判りの通り、あざやかな赤が基調の、ペトの顔のアップがドーンとど真ん中。このジャケットのイメージから、このアルバムは「赤ペト」と呼ばれている。1981年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p), J.F. Jenny Clark (b), Aldo Romano (ds)。

確か、銀座の山野楽器で聴いたのが最初かと思う。冒頭の「Hommage A Enelram Atsenig」。速い演奏でも、上手く「間」を活かした展開。ビル・エバンスの流儀の踏襲。確かなテクニック。加えて、アフリカン・アメリカンのルーツ的個性であるファンキーな雰囲気、アーシーな雰囲気は基本的に希薄。
 
これはアフリカン・アメリカンのピアニストでは無い。実にヨーロピアンなピアニスト的雰囲気でありながら、そこはかとなくジャジー。初めて聴いた時は、チック・コリアかと思った。
 

Michel_petrucciani

 
が、少し聴き進めると、チックよりもタッチが強くて太い。電光石火の力強さでは無く、重量級の太いタッチ。そして、チックの場合、アブストラクトにフリーキーにインプロビゼーションが展開する傾向があるんだが、それが全く無い。不協和音を敢えて避けている様に、クラシック音楽の様に端正で整然としたインプロビゼーション。

2曲目のスタンダード曲「Days Of Wine And Roses」の優しくロマンティシズム溢れるフレーズ。しかし、その優しいフレーズを紡ぐタッチも強くて太い。しかも、チックにありがちな「スパニッシュ・フレーズ」の手癖が全く無い(笑)。

じゃあ、このピアノは誰なんだ。ということで、ジャズ・コーナーのカウンターに走って、このアルバムを手にとって、初めて知った名前がミシェル・ペトルチアーニ。名前からフランス人だと想像した。フランス人がこんなに端正で整然としたジャズ・ピアノを弾くんや、と妙に感心した。

この公式デビュー盤『Michel Petrucciani』、いわゆる「赤ペト」には、ペトの個性の全てが詰め込まれている。ペトの紡ぎ出す色彩豊かなフレーズは実に魅力的であり個性的。強くて太いタッチで紡ぎ出すダンディーなロマンティシズムも魅力。

ペトを感じ、ペトを理解するには、まず、この「赤ペト」から入ることをお勧めする。

 
 

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2011年2月 1日 (火曜日)

「ペト」の米国での到達点

ミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani・略称ペト)。先天性疾患による障害を克服し、フランス最高のジャズ・ピアニストと評価される。1981年にカリフォルニアに旅立って以来、1985年にNYに移り、1994年、母国のフランスに戻るまで、米国でのペトの成果は、この『プレイグラウンド(Playground)』(写真左)に凝縮されている。
 
ミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)の『プレイグラウンド(Playground)』は、米国におけるペトの集大成。ペトのピアノは限り無く美しい。次作の「Live」と併せて、ペトのピアノを心ゆくまで、愛でることが出来る。「ピアノのミューズ」がここにいる。
 
それまで、ペトの打楽器的な『打鍵の強さ』が心なしか和らいで、ピアノの響きがとても美しい。マナーは「エバンス派」。タッチの確かさは「チック譲り」。このアルバムでのペトの演奏は、トラディショナルな純ジャズを踏襲しているのではなく、コンテンポラリー・ジャズ的な演奏がギッシリと詰まっている。
 
11曲中10曲がペトルチアーニ自身による作曲。ペトの作曲と編曲の才能が、はち切れんばかりに輝いている。美しい。とにかくピアノの響きが美しい。ちなみにパーソネルは、Michel Petrucciani (p,syn), Adam Holzman (syn), Omar Hakim (ds omit 5), Steve Thornton (perc), Anthony Jackson (b), AldoRomano (ds on 5)。1991年の作品。収録曲は以下の通り。
 
Petrucciani_playground

  
1. September Second
2. Home
3. P'tit Louis
4. Miles Davis' Licks
5. Rachid
6. Brazilian Suite #3
7. Play School
8. Contradictions
9. Laws of Physics
10. Piango, pay the man
11. Like that
 
オマ・ハキム(Omar Hakim)のドラミングが生み出すビートが「要」の一端を担っている。スティーブ・ソーントン(Steve Thornton)のパーカッションも、ペト独特のビートを生み出す一端を担っている。そして、ベースのアンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson)。独特のベースラインが、これまた、ペト独特のビートの底を支える重要な役割を担っている。
 
聴けば判る。この『プレイグラウンド(Playground)』は、米国のペトの集大成。先天性疾患による障害で、いつ命が終わるのか判らない中、ペトは、通算13年の年月の中で、このペト独特の美しきジャズ・ピアノの響きを手に入れた。とてつもなく素晴らしい成果であった。
 
 
 
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2011年1月31日 (月曜日)

ペトのベスト盤的な「ライブ盤」

ジャズの中で、どの楽器が一番好きか、と問われたら、やっぱり「ピアノ」と応えるかな。昔、子供の頃、結構、真剣にクラシック・ピアノを習ったから、ちょっとだけピアノのことは判っているつもりでいる。そういう背景もあって、ジャズ・ピアノが一番好きだし、聴いていて、ちょっとだけ、ピアニストの気持ちが判る。
 
ジャズ・ピアニストの中で、好きなピアニストを挙げろと言われたら、先ずは、ビル・エバンス、次に、チック・コリア、そして3番目に、ミッシェル・ペトルチアーニ。この3人のピアニストは僕の中で「絶対」である。まあ、つまりは、エバンス派の流れの中で「チック系」がお気に入りということになる。
 
今日は久しぶりに、ミッシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani・以降略称「ペト」)の『Live』(写真左)を聴いた。ブルーノート時代のペトのライブ盤である。これが、ペトのベスト盤的な、格好の「ペト入門盤」的なライブ盤なのだ。1991年11月、仏の「The Arsenal in Metz」でのライブ録音。ちなみに、パーソネルは、Michel Petrucciani (p), Adam Holzman (key), Steve Logan (b), Victor Jones (ds), Abdou M'Boop (per)。
 
このライブ盤、ペトのピアニストとしての、そしてアレンジャーとしての「ペトの音」を実体験できる、素晴らしい内容のライブ盤です。ピアノのタッチは徹頭徹尾ペトのタッチ満載。そして、ビートを重視した「フュージョン的」アレンジはペト独特のもの。
 
Petrucciani_live
 
冒頭の「Black Magic」を聴けば、一目瞭然というか「一聴瞭然」。2曲目の「Miles Davis Licks」で、その「ビートを重視した」アレンジは、エレクトリック・マイルスの影響ということが露わになる。うむむ、ペトはエレ・マイルスが好きだったんだな。いいぞ(笑)。「ジャン・ピエール」がモチーフになって展開するなんて、ペトってエレ・マイルスが良く判ってらっしゃる(笑)。
 
このライブ盤では、ペトの打楽器的な『打鍵の強さ』が心なしか和らいでいる。心なしか穏やかで優しいペトのピアノ・タッチ。NYでの修行を経て、30歳を目前にして、万感の想いを抱いての、母国(仏)での凱旋ライブということも背景にあるのかも知れない。いや、仏と言えば「欧州」。欧州ジャズの雰囲気に合わせた「マイナーチェンジ」かも知れない。
 
清々しい爽快感抜群の、おなじみ「Looking Up」もちゃんと収録されているところも嬉しい。ライブだけに、メリハリの効いたタッチが実に美しい。躍動感溢れる、はち切れんばかりの「Looking Up」は聴きもの。純ジャズとはちょっと違う、やや「フュージョン的」なアレンジが個性的。ピアノの響きを最大限に活かして、演奏全体がキラキラしている。
 
良いライブ盤です。最後の名曲『Estate』以外は全てオリジナルで固めており、ペトの気合いを感じます。ペトのベスト盤的な「ライブ盤」としてお勧めです。ペトの入門盤としても良いと思います。まだ、ペトを体験していないジャズ者の方々、このライブ盤でペトを体験して欲しいと思います。
 
 
 
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2010年8月 4日 (水曜日)

凄い「一期一会」なプロジェクト

ジャズ・ミュージシャンって、自分の腕一本、自分の才能一つで勝負する「個人商店」的な面が強くて、ロックみたいに、ある一定期間、一緒に集まってバンドを組んで、一緒に演奏するということが、あまり無い。

逆に、ロックの世界では殆ど無いんだが、優れた「個人商店」的な強者が、ある一瞬、パッと集まって、凄いパフォーマンスを繰り広げて、あっと言う間に、また別れ別れ、バラバラで活動するということがジャズでは良くある。

この「The Manhattan Project」も、ジャズの世界特有の「一期一会」プロジェクトの一つ。プロジェクトを形成する「強者ども」とは、Wayne Shorter (ts, ss), Michel Petrucciani (p), Stanley Clarke (b), Lenny White (ds), Gil Goldstein, Pete Levin (key,syn)。うえ〜、凄いメンバーである。録音日は、1989年12月。メインストリーム・ジャズが復古を果たし、新生ブルーノートも軌道に乗った、ジャズ復権の時代である。その時代の環境が、この類い希な「一期一会」プロジェクトを生み出したといっていいだろう。

収録曲を見渡すと、

1. Old Wine, New Bottles
2. Dania
3. Michel's Waltz
4. Stella by Starlight
5. Goodbye Pork Pie Hat
6. Virgo Rising
7. Nefertiti
8. Summertime

結構、有名なジャズ・スタンダードが選曲されていて、どうせ、ジャズ・ミュージシャンが、ぱぱっと集まって、聴衆に迎合するように、ハードバップな演奏を繰り広げて、はい、一丁上がり的なオールスター・セッションではないの、と思ってしまうんだが、これがなんとまあ、ところがどっこい、ぎっちょんちょん、なのである(笑)。
 

The_manhattan_pj

 
まず、サックスのウェイン・ショーターが吹きまくっている。ブワーッ、ウネウネウネ〜、ブブブッ〜と、モーダルなインプロビゼーションを、渾身の力を込めて、吹きまくっている。ここまで吹きまくるショーターも珍しい。このブロウを聴けば、やはりウェインのその実力たるや、決して侮ってはいけない、と心から思ってしまう。

そして、ピアノのペトルチアーニが、ショーターに続く。渾身の力を込めて、これまた、モーダルなピアノソロをガンガンに弾きまくる。これが「モーダルなピアノソロなんじゃ〜」って感じで、弾きまくる弾きまくる。確かに、これがモーダル・ジャズ、これがモーダルなピアノソロだと感心してしまう。

加えて、リズム・セクションが凄い。ベースのスタンリー・クラークとドラムのレニー・ホワイト。ん〜っ、この二人って、第2期Return to Forever(リーダーはチック・コリア)のリズム・セクションやん。このリズム・セクションが凄い。全くハードバップな雰囲気は無視。スタンリー・クラークはエレベをベンベン、チョッパーをバシバシやりまくり、レニー・ホワイトは、4ビート基調なのか8ビート基調なのか判らん、とにかくビート最優先、ポリリズムをガンガンに渾身の力を込めて叩きまくる。

スタンダード曲に顕著な「斬新な曲想」、そして「捻りの効いた新鮮なアレンジ」。その新しいジャズのアプローチを基に繰り広げられる、職人芸的でハイテクニックな、新しい響き満載のアドリブ。冒頭の「Old Wine, New Bottles」から、ラストの「Summertime」まで、一気に聴き通してしまいます。それだけ、演奏内容に優れ、聴いていて楽しい、密度の濃い演奏。でも、決して疲れない。

それは、Gil Goldstein, Pete Levinの二人の電子キーボードが奏でる和音中心のバッキング。この二人のキーボードは、決してソロを弾かない、決してテーマを弾かない。和音でフロントモーダルなソロを、彩り豊かにサポートする。この二人のキーボードのバッキングが実に効いている。このキーボードのバッキングが、このライブ演奏を彩り豊かで、聴き易い雰囲気に染め上げでいる。

現在、廃盤状態みたいですが、どうして廃盤状態なのかなあ。米国amazonでは手に入るんですが・・・。DVDは入手可能な様ですね。聴けば判る。良いアルバムです。日本人からすると「ドキッ」とするプロジェクト名ですが、このプロジェクトの内容は凄まじいものがあります。
 
 
 
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2010年3月26日 (金曜日)

ペトの「カジュアルに美しい」盤

昨日に続いてミシェル・ペトルチアーニ(愛称・ペト)のアルバム紹介である。昨日は、ペトのオリジナル曲で固めた「硬派な」ジャズ・ピアノ・アルバムをご紹介した。今日は、ペトの「カジュアルに美しい」アルバムをご紹介したい。

そのアルバム名は『Music』(写真左)。パーソネルを見渡すと、Adam Holzman のシンセサイザー Gil Goldstein のアコーディオン、ペト自身のオルガン&シンセサイザーが目を惹く。所謂「硬派な」ジャズ・ピアノ・アルバムでは無い。しかし、適当に電気楽器に手を出した軟弱盤でも無い。

それは、冒頭の「Looking Up」を聴けば良く判る。ピアノの「ミューズ」と呼ばれたペト。前奏のピアノの豊かな響きと美しく煌めく、躍動感溢れるピアノの調べ。実に美しく聴き心地のあるピアノの音。シンセサイザーがその美しいピアノをしっかりと底から支える。しかし、暫くすると、そのピアノの音が、とてもリラックスしていることに気が付く。ペトは本当に心から楽しんでピアノを弾いている。

リラックスして、心から楽しんで弾いているピアノ。美しい。硬派なジャズ・ピアノでは無いが、裃脱いで、カジュアルな服装で、バンド・メンバーと楽しみながら、音を慈しみながら弾くピアノ。ここに、ピアノの「ミューズ」降臨である。

シンセサイザーなどの電気楽器を導入しているので、このアルバムがリリースされた当時は、ペトがフュージョンに挑戦、なんていう、完全に「的外れな」論評があったりした。思わず苦笑。なぜなら、3曲目の「 My Bebop Tune」などは題名通り、超絶技巧な硬派バップ・ピアノ。でも、そこはかとなく、微妙な余裕とポジティブな明るさが充満しているところが、このアルバムの最大の個性。
 

Mp_music

 
このアルバムに収録されたどの演奏も、純ジャズ路線ではあるが、ペト自身が、強度なテンションから自らを解き放ち、リラックスして、心から楽しんでピアノを弾いている。そのペトのピアノの明るくポジティブなピアノを電気楽器が、アコーディオンがしっかりと支えているだけ。このアルバムは決して「フュージョン」なアルバムでは無い。カジュアルでポジティブな明るさに満ちつつ「レイドバックした」純ジャズである。

8曲目の「Play Me」を聴いて欲しい。凄く格好良い、美しい響きのファンク・ジャズである。なんだか、「音数を抑えて間を大切にした」エレクトリック・マイルスがペトに降臨した様な、実に格好良い演奏である。しかも、ペトのピアノの響きの美しいこと美しいこと。思わず、ポジティブな溜息をついてしまう。これぞ「カジュアルに美しい」、ペト独特のエレクトリック・ファンク・ジャズ。ペトの個性が煌めいている。

ペトは「インプロビゼーション」の重要性を良く知っている。このアルバムでも、ペトのインプロのフレーズは、実に美しくキャッチャーである。ポジティブな飛翔感と爽快感と限りない美しさが混在する、ピアノの「ミューズ」が、このアルバムに降臨しているようだ。この「インプロビゼーション」の重要性が、このアルバムを「純ジャズ」たらしめている。

このアルバム『Music』は、ペトの「カジュアルに美しい」盤。昨日ご紹介した、ペトの純ジャズの本質を掴み取ることができる『Michel Plays Petrucciani』と併せて、表裏一体、光と影、兄弟の様なアルバムである。

ペトを手っ取り早く感じ取りたいのならば、この『Music』と『Michel Plays Petrucciani』を併せて一気に聴いて欲しい。ペトの唯一無二の個性をガッチリと掴み取ることが出来ると思います。ジャズ者初心者の方々に絶対のお奨めですね。 
 
 
 
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