2024年7月 5日 (金曜日)

米国ジャズでの「ジョンアバ」

ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie、以降「ジョンアバ」と略)。基本、ECMレーベルのハウス・ギタリスト的位置付け。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。

John Abercrombie『Route Two』(写真左)。1981年の作品。Landslideレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g), Gary Cambell (sax), Jeremy Steig (fl), Dan Wall (org), Joe Chambers, David Earle Johnson (ds)。ECMを離れての、米国録音でのジョンアバのギターが聴ける。

ECMのハウス・ギタリストのジョンアバと、オルガン奏者のダン・ウォール、ドラムのデヴィッド・アール・ジョンソンによるトリオの1981年作品。

ジェレミー・スタイグのフルート、ゲイリー・キャンベルのサックスが客演、ドラムのジョー・チェンバースがサポートで入っている(ジョンソンがパーカッションを担当する時、チェンバースがドラムを代役しているようだ)。
 

John-abercrombieroute-two

 
1981年の録音なので、当時大流行のフュージョン・ジャズな内容かと思いきや、さにあらず。クロスオーバー寄り4ビートのオルガン・ジャズから16ビートのジャズ・ファンクまで、当時の米国東海岸のコンテンポラリー・ジャズが展開される。意外とメインストリーム志向、クールでホットな演奏内容にしばし感心する。

ジョンアバのギターは、サスティーンは効いてはいるものの、エレギの弾きっぷりは「流麗なバップ」。ちょっとくすんで伸びのある音で、バップなフレーズやモーダルなフレーズを流麗に飄々と弾きまくる。ECMの録音の時の様に、耽美的にリリカルに展開したり、音の広がりと伸びを活かした、知的で内省的な展開したりすることは全く無い。ジョンアバは米国NY出身のジャズ・ギタリストであることを再認識する。

米国東海岸のコンテンポラリー・ジャズに興じるジョンアバのエレギも十分にイケる。ジョンアバのジャズ・ギターの基本は他の例に漏れず、バップなギターが基本。

ジョンアバのテクニックと表現力が卓越しているが故、録音時のレーベルの音の傾向やプロデューサーの音志向に関する要望に的確に応えることが出来る、ということを再認識する。一流ジャズマンについては、その音志向は基本的にバリエーションが豊かである。
 
 

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2024年6月12日 (水曜日)

チックの異色盤『Septet』です

僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。

よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。

Chick Corea『Septet』(写真左)。1984年10月、L.A.の「Mad Hatter Studios」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Steve Kujala (fl), Peter Gordon (french horn), Ida Kavafian, Theodore Arm (violin), Steven Tenenbom (viola), Fred Sherry (cello)。

チックのピアノ、クジャラのフルート、ゴードンのフレンチ・ホルンに加えて、弦楽四重奏が入った七重奏団=「Septet」。ECMレーベルらしいコンセプト盤だが、この盤のプロデューサーは、ECMの総帥マンフレート・アイヒャーでは無く、チック・コリア自身。録音スタジオは、チックの「マッド・ハッター・スタジオ」。

アルバムのコンセプトはECMの理念に沿う、しかし、その音作りはチック自身に任せる。アイヒャーとしては思い切ったことをした。
 

Chick-coreaseptet

 
しかし、この盤に詰まっている音は、明らかに「ECMミュージック」であり、アイヒャーイズムの音作りである。逆に、チックの自己プロデュース能力の高さを再認識する。

さて、その内容であるが、弦楽四重奏が入っているので、雰囲気は明らかにクラシック。しかし、それぞれの曲には、チック独特のフレーズ、チックらしい硬質でメロディアスなタッチが随所に聴くことが出来て、伝統的なクラシックの七重奏という雰囲気では無い。

とにかく、チックのピアノが映えに映えていて、この盤の七重奏は、チックのソロ・ピアノに、フルートとフレンチ・ホルンと弦楽四重奏がクラシックなバッキングをすることにより、よりチックのソロ・ピアノが引き立つ、そんな感じの音作り。クラシック風ではあるが、純粋なクラシックでは無い。

チックの個性を反映した、チックの優れた「作曲&編曲」の才能の成果がこの『Septet』。クラシック寄りの即興のピアノ・ソロに一捻り加えた、チックの考える「ECMミュージック」がこの盤に詰まっている。

ECMレーベルだからこそ成し得た、チックの考える「ECMミュージック」。アイヒャーの期待に応えたチックの「作曲&編曲」の才能。一期一会、唯一無二な音世界。チック者にとっては、外すことの出来ない「異色盤」です。
 
 

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2024年2月19日 (月曜日)

Jazz Lab と The Cecil Taylor 4

ドナルド・バードのリーダー作の落穂拾い、当ブログで「未記事化」のアルバムをピックアップしていて、不思議なアルバムに再会した。ハードバップど真ん中とフリー・ジャズの先駆け、2つの全く志向の異なる演奏スタイルのユニットの不思議なカップリング。どういう感覚で、こういうカップリング盤を生み出したのやら。

The Gigi Gryce-Donald Byrd ”Jazz Laboratory” & The Cecil Taylor Quartet『At Newport』(写真)。1957年7月5–6日、ニューポート・ジャズフェスでのライヴ録音。

パーソネルは、以下の通り。1〜3曲目が「The Cecil Taylor Quartet」で、Cecil Taylor (p), Steve Lacy (ss), Buell Neidlinger (b), Denis Charles (ds)。 4〜6曲目が「Jazz Laboratory」で、Donald Byrd (tp), Gigi Gryce (as), Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Osie Johnson (ds)。

このライヴ盤は20年ほど前に初めて聴いたのだが、前半1〜3曲目の「セシル・テイラー・カルテット」のフリー・ジャズの先駆け的な、反ハードバップ的なちょっとフリーな演奏の「毒気」にやられて、後半の「ジャズ・ラボ」の純ハードバップな演奏もそこそこに、このライヴ盤は我が家の「お蔵入り」と相なった。
 

The-gigi-grycedonald-byrd-jazz-laborator

 
が、今の耳で聴き直すと、まずこの「セシル・テイラー・カルテット」が面白い。テイラーのピアノが、硬質でスクエアに高速スイングするセロニアス・モンクっぽくて、意外と聴き易い。レイシーのソプラノ・サックスは、テイラーのピアノのフレーズをモチーフにした、擬似モーダルなフレーズっぽくて、これも意外と聴き易い。反ハードバップな、ちょっとアブストラクトな演奏だが、整っていて、しっかりジャズしている。意外と聴ける。

逆に初めて聴いた時にはしっかり聴かなかったジジ・グライスとドナルド・バードの「ジャズ・ラボ」の演奏だが、これは、このライヴ盤の前、ジャズ・ラボのデビュー盤『Jazz Lab』(2024年2月18日のブログ参照)の内容、ライヴなので、スタジオ録音よりも演奏はアグレッシヴ。演奏レベルと寸分違わない、それまでにない響きとフレーズの「新鮮なハードバップ」が展開されている。

フリーの先駆け的な、反ハードバップで、ちょっとアブストラクトな「The Cecil Taylor 4」。それまでにない響きとフレーズが新鮮なハードバップの「Jazz Lab」。当時はどちらも新しいジャズの響きだったのだろう。

今回、改めて聴いてみると、当時の先進的なハードバップの好例として、この2つのユニットの演奏は違和感無く聴ける。今回も、ジャズ盤って、時を経ての聴き直しって必要やな、と改めて感じた。
 
 

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2024年1月15日 (月曜日)

中間派の名演『Walking Down』

トロンボーンのホンワカした丸いフレーズと力感のある低音のブリリアントな響きが好きだ。ビ・バップからハードバップ畑には、J.J.ジョンソン、カーティス・フラーらがいる。また、スイング・ジャズからハードバップ手前まで進化した「中間派」には、ベニー・グリーンがいる。

特に、中間派のベニー・グリーンについては、ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイが独特の個性。そんな個性をしっかりと表出しつつ、ハードバップには無い、小粋で味のあるスインギーなフレーズを吹きまくる。この朴訥としたスインギーなトロンボーンがとても素敵なのだ。

Bennie Green『Walking Down』(写真左)。1956年6月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eric Dixon (ts), Lloyd Mayers (p), Sonny Wellesley (b), Bill English (ds)。ベニー・グリーンのトロンボーンとエリック・ディクソンのテナーがフロント2管のクイテット編成。
 
ブルーノートでのリーダー作が好盤のベニー・グリーンだが、プレスティッジにも良い内容のリーダー作を残している。この盤はそんな中の一枚。この盤は、中間派のベニー・グリーンのトロンボーンとエリック・ディクソンのテナーを心ゆくまで愛でることの出来る好盤である。
 

Bennie-greenwalking-down

 
ベニー・グリーンのトロンボーンは、味のあるホンワカ、ほのぼのとして暖かく優しいフレーズが個性なのだが、この盤では、意外にダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いトロンボーンを聴かせてくれる。しかし、そのフレーズはハードバップっぽくない。スイングっぽく、ハードバップ一歩手前、いわゆる「中間派」のフレーズ。

ベイシー楽団のエリック・ディクソンがテナーを担当しているが、このディクソンのテナーがとても良い。思う存分、テナーを吹きまくっている様で、彼のテナーはダンディズム溢れ硬派で切れ味の良いテナー。このディクソンのテナーに呼応して、ベニー・グリーンのトロンボーンが、ダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いトロンボーンに変身している様なのだ。

と言って、ダンディズム溢れる硬派で切れ味の良いベニー・グリーンのトロンボーンが悪い訳で無い。要所要所では、持ち味の「ホンワカしたトロンボーンならではの音色とスイング・スタイルを踏襲した伝統的なフレーズと味のあるブルージーなプレイ」をしっかり散りばめ、表現の幅を広げている。

リズム隊は無名に近いが、意外と良い音を出している。スイングでもハードバップでも無い、その間の「中間派」のブルージーで小粋なフレーズの数々。ビ・バップでもハードバップでも無い「中間派」の名演。これもジャズ、である。
 
 

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2024年1月 9日 (火曜日)

八代亜紀『夜のアルバム』再聴

演歌の代表的女性歌手・八代亜紀さんが昨年12月30日に逝去していたとの報道が流れた。なんてことだ。

八代亜紀さんは、1973年に「なみだ恋」のヒットででメジャーに。その後「愛の終着駅」「もう一度逢いたい」「おんな港町」「舟唄」など数々のヒット曲をリリース、1980年には「雨の慕情」で第22回日本レコード大賞の大賞を受賞している。とにかく歌が上手い。声量、テクニック、申し分なく、演歌がメインでありながら、心を揺さぶられる様な情感溢れる歌声は、ジャンルを超えて、僕は好きだった。

情報によると、八代亜紀さんは若い頃、ジャズ・ボーカルもやっていた、とのこと。昔取った杵柄のひとつの「ジャズ・ボーカル」を、還暦過ぎて、もう一度やってみようじゃないの、というノリだったのだろうか、ジャズ・ボーカルの企画盤を2枚、リリースしている。

当ブログでも、以前、八代亜紀さんのジャズ・ボーカル盤についての記事をアップしている。が、2013年3月のことで、すでに10年以上が経過している。今回、以前のブログ記事に加筆修正を加えたリニューアル記事をアップして、八代亜紀さんの逝去を悼みたいと思います。

八代亜紀『夜のアルバム』(写真左)。2012年のリリース。ちなみにパーソネルは、八代亜紀 (vo), 有泉一 (ds), 河上修 (b), 香取良彦 (p, vib), 田辺充邦 (g), 岡淳 (as, ts) がメインのバンド編成。八代亜紀のボーカルに、サックス、ギター入りのクインテットがバックに控える。

加えて、曲ごとにゲストが入る。ゲストについては、渡辺等 (b) <3>, 布川俊樹 (g) <5>, 田ノ岡三郎 (accordion) <6>, 松島啓之 (tp) <8>, 山木秀夫 (ds) <9>, 江草啓太 (p), 織田祐亮 (tp), 藤田淳之介 (as), 石川善男 (fh) <12>, 木村 "キムチ" 誠 (perc) <4,7,9>, CHIKA STRINGS (strings) <4,9>。

演歌の女王、八代亜紀さんがジャズ・ボーカルに挑戦した企画盤がこの『夜のアルバム』。その内容はなかなかのもの。さすが、若い頃、ジャズ・ボーカルにも手を染めていただけはある、堂々とした歌いっぷり。もともと、歌が素晴らしく上手い歌手である。とにかく上手い。情感を込めて、きめ細やかに、隅々にまで心配りをしながら、魅力的なジャズ・ボーカルを披露してくれる。
 

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2曲目の「クライ・ミー・ア・リヴァー」や、5曲目の「サマータイム」、ラストの「虹の彼方に」の、英語の歌詞での歌いっぷりを聴くと、これが素晴らしい出来で、もう「参りました」と謝ってしまいそうな位、素晴らしい歌唱。完璧なジャズ・ボーカル。味わいも豊か、情感がこもっていて、それはそれは素晴らしい。

それぞれが大スタンダード曲で、何百人何千人というボーカリストが唄った、いわゆる「手垢が付いた」曲で、独特の個性を出しつつ唄いこなすには難しい曲ばかりなんだが、演歌出身など関係なく、今までに無い独特の個性を発揮しつつ、完璧にこれらの大スタンダード曲を朗々と唄い上げている。

逆に、このアルバムには、日本語の歌詞のボーカル曲が幾つかある。冒頭のジャズ・スタンダード曲「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、途中で日本語の歌詞に変わる。ちょっとズッこけるが、これは「ご愛嬌」。

リリィの「私は泣いています」、松尾和子の「再会」、伊吹二郎の「ただそれだけのこと」のカヴァーであるが、純ジャズ風のアレンジに乗って、魅力的なボーカルで唄い上げていく。ただ、出来映えは素晴らしいのだが、日本の歌謡曲のカヴァー故、ジャズ・ボーカルというよりは、ジャズ風のムード演歌風に聴こえる。ジャズ・スタンダード曲と混在させると、ちょっと「浮いて」聴こえるのが「残念」。

これならば、日本語の歌詞のボーカル曲なんか織り交ぜずに、完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲で勝負すれば良かったのに、と思ってしまうのは僕だけだろうか。完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲だけで勝負して欲しかったなあ。なんせ、ジャズ・ボーカル歌手専門として、十分やっていける位、英語の歌詞での歌いっぷり、どの曲も本格的で素晴らしいんですから。

良い内容のジャズ・ボーカル盤。八代亜紀さんのジャズ・ボーカリストとしてのポテンシャルが並外れたものであることは良く理解出来る。日本の女性ジャズ・ボーカル盤の優秀盤です。
 
 

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2023年6月30日 (金曜日)

クラシック・オケとジャズロック

ECMレコードのアルバムがお気に入り。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、ニュー・ジャズ&欧州ジャズの担い手として、我が国でもECMブームが沸き起こっていた。

といっても、ECMのアルバムについては、明らかに「好き嫌い」が分かれる。米国ジャズ、特に東海岸ジャズが絶対とする「東海岸ジャズ者」の方々からは「ECMはジャズでは無い」と毛嫌いされていた。まあ、大凡、硬派なジャズ喫茶ではECMのレコードをリクエストするのには相当な勇気がいった。米国が本場のジャズについては、米国ジャズが絶対で、欧州ジャズはジャズでは無い、とされていた。

しかし、である。僕はECMレコードのアルバムがお気に入り。もともとクラシック音楽もいろいろ聴いていて、クラシック音楽の雰囲気が漂う、端正な欧州ジャズについては違和感が無い。ロックではプログレ小僧だったので、ニュー・ジャズの類については、プログレっぽくて違和感を感じない。そういうところから、ECMレコードのアルバムに違和感が無く、良いものは良い、の精神で、ECMのアルバムについては、延々と50年弱、聴き続けていることになる。

そんなECMのアルバムをカタログ番号順に聴き始めて、早5年。ECM1001〜1100番までの「ECM1000番台」のアルバムについては、明らかに現代音楽な内容のアルバムを除いて、ほぼ聴き終えた。ほぼ、というのは、3枚ほど入手出来ないでいたアルバムがあった。が最近、やっとのことで音源を確保することが出来た。あと3枚、しっかりと聴いた。3枚とも初聴きである。

Gary Burton Quartet『Seven Songs for Quartet and Chamber Orchestra』(写真左)。1973年12月、ハンブルグでの録音。ECMの1040番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Mick Goodrick (g), Steve Swallow (b), Ted Seibs (ds), NDR Symphony Orchestra conducted by Michael Gibbs。
 

Gary-burton-quartetseven-songs-for-quart

 
当時のゲイリー・バートンのカルテットに、NDRのオーケストラがバックに就く布陣。クラシック・オーケストラの演奏を伴奏に、ゲイリー・バートンのヴァイブをメインとするジャズ・カルテットの演奏が展開される、如何にもニュー・ジャズっぽい、クラシックにも精通するECMレーベルのアルバムらしい内容。

クラシック・オーケストラの伴奏も、なかなかのもので、ありがちな米国ジャズの取って付けたような、チープなクラシック・オーケストラでは決して無い。オーケストラだけでも十分に聴ける。

そんな充実したクラシック・オケをバックに、まずは、ゲイリー・バートンのヴァイブがソロで乱舞する。バートンのヴァイブは、いかにもECMのニュー・ジャズっぽい雰囲気満載。バックのオケの伴奏に乗って、映えに映える。良い雰囲気、いかにも欧州ジャズ。

曲が進むにつれて、バートンのソロから、バートンのカルテットの演奏に展開していく。これがなかなかのもので、当時のバートン・カルテットの個性である、アーシーでジャズロック風のフレーズ、ゴスペルっぽい米国ルーツ・ミュージック風のフレーズが漂ってきて、クラシックな雰囲気が強かった出だしからすると、一気にニュー・ジャズっぽい、バートンお得意のアーシーなジャズロック風のフレーズが実に格好良い。

欧州っぽいクラシック・オケと米国ルーツ・ミュージックとジャズロックの融合音楽。いかにもECMらしい取り合わせ。聴く前は、クラシック・オケをバックにしたバートン・カルテットってなあ、と敬遠気味だったのだが、聴いてみると意外と良い。やはり「聴かず嫌い」は良く無いなあ、と改めて思った次第。意外性のあるECM好盤です。
 
 

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2023年6月 5日 (月曜日)

欧州ジャズのスコフィールド

ジョン・スコフィールド(以降、略して「ジョンスコ」)は、流麗に捻れて、流麗でデコボコ・ゴツゴツな、素敵にアップダウンするフレーズが個性。どう聴いても、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズのエレギでは無い。確実に、メインストリーム志向の純ジャズに向いたエレギである。

Solal, Konitz, Scofield, Ørsted-Pedersen『Four Keys』(写真)。1979年5月8日の録音。独の名門ジャズ・レーベルMPSからのリリース。ちなみにパーソネルは、Martial Solal (p), Lee Konitz (as), John Scofield (el-g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。仏の重鎮ジャズ・ピアニスト、マーシャル・ソラールが、実質リーダーの、ドラムレス・カルテット編成。

ダイナミックで躍動感のある華麗な演奏が味わえる、欧州的な素敵なジャズ・ピアノのマーシャル・ソラール。クールで切れ味の良い、力感溢れる流麗アルト・サックスのリー・コニッツ。NHØPとしても知られる、硬派で正統派なデンマークのベーシストのニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン。そして、流麗に捻れて、流麗でデコボコ・ゴツゴツな、素敵にアップダウンするエレギのジョン・スコフィールド。
 

Solal-konitz-scofield-rstedpedersenfour-

 
ピアノのソラールとベースのペデルセンが欧州、コニッツのアルト・サックスとジョンスコのエレギが米国。まず、米国のジャズ・レーベルでは見ることが出来ないであろう、ユニークな面子での、しかも、ドラムをオミットした、ドラムレスのカルテット。ドラムをオミットして、相当に自由度の高い、モーダルな即興演奏が展開されて見事。

徹頭徹尾、アーティスティックでストイックな純ジャズ志向。クールで静的に「熱気溢れる」インタープレイが展開されている。それも、それぞれが無勝手に展開するのではなく、ソラールのピアノが演奏全体をしっかりコントロールし、それに従って、演奏の「底」のリズム&ビートをペデルセンが供給、そんなリズム隊をバックに、コニッツのアルト・サックスとジョンスコのエレギが存分にアドリブ・パフォーマンスを披露している。

演奏全体を包む雰囲気は、確実に「欧州ジャズ」。聴衆の嗜好に合わせたコマーシャルな雰囲気は皆無。米国ではフュージョン・ジャズの全盛期に、こってこて「アーティスティックでストイックな純ジャズ」が展開される。緩んだところ、拠れたところは全く無し。演奏全体の心地良いテンションの下、創造的な即興演奏が見事。好盤です。
 
 

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2023年5月26日 (金曜日)

ブルーノートの4200番台始め 『Joyride』

ブルーノートの4200番台は、1965年から1969年までのリリース。ハードバップを基本として、聴き手のニーズに合わせた「ジャズ多様化」の時代は去り、1964年2月にビートルズが米国に上陸して以降、ロックやポップスが聴き手の心を掴む反面、その反動で、聴き手の「ジャズ離れ」が始まりだした時代に、4200番台は録音され、リリースされている。

ジャズ界の中では、フリー・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズが台頭し、一般の聴き手を置き去りに、公民権運動などとリンクして、政治色も濃厚だった時代で、1967年7月には、ジャズ界を牽引してきた一人、ジョン・コルトレーンが逝去し、スイング時代から綿々と進化してきたジャズが1つの「潮目」を迎えた時代でもある。

Stanley Turrentine『Joyride』(写真左)。1965年4月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Kenny Burrell (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds)。バックに、オリヴァー・ネルソン率いるジャズ・オーケストラが付いている。ブルノートの4200番台の栄えある第一弾、4201番である。
 

Stanley-turrentinejoyride

 
ゴージャズなジャズ・オケ入りのムーディーな「ファンキー&ソウル・ジャズ」。アレンジは当時、一番モダンな、聴けば直ぐに判る、オリヴァー・ネルソン。ブルース感覚濃厚なジャズ・オケをバックに、これまた、こってこてブルージーでファンキーなタレンタインのテナーが、ちょっとライトにアーバンに吹き上げられる、ムード満点の「ファンキー&ソウル・ジャズ」。

面白いのは、ハービー・ハンコックのピアノが、当時お得意の「モーダルなピアノ」ではなく、デビュー当時に立ち返った様な「理知的なファンキー・ピアノ」をお洒落に弾いていること。タレンタインとバレルの「ファンクネス&ソウル」にしっかり合わせて、弾き分けている。ハービーのテクニックの豊かさ、引き出しの多さに、思わず感心する。

プロデューサーはまだ「アルフレッド・ライオン」。ブルーノートの総帥プロデューサー自ら、聴き手の心を掴むべく、ジャズ・オケがバックの、ややイージーリスニング・ジャズ志向のアルバムを指揮しているところに時代を感じる。しかし、そこはブルーノート、内容的にはとても良く出来たモ「ファンキー&ソウル・ジャズ」で、俗っぽいところ、手を抜いたところは全くありません。
 
 

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2023年5月23日 (火曜日)

不思議なトロンボーンの企画盤 『Trombone By Three』

プレスティッジ・レーベルは、アルバムの編集方針が曖昧というか、気分次第でアルバム化している様で、同一セッションの演奏でも、切り売りして、あっちこっちのアルバムに雰囲気で入れたりして、1つのアルバムに複数のセッションが入っているなんてザラである。それぞれのジャズマンの力量や進化を推し量る上で、時系列で演奏が並んでいないのはちょっと困る。プレスティッジのアルバムを聴く時は、そのアルバムの「録音情報」は絶対に欠かせない。

J J Johnson, Kai Winding, Benny Green『Trombone By Three』(写真左)。 プレスティッジのPRLP 7023番。タイトル通り、3人のトンボーン奏者がリーダーを務めるセッションをそれぞれ収録している。異なるセッションを1つのアルバムに収録するという、プレスティッジの荒技なんだが、何故、この様なカップリングにしたのか判らない。が、3人それぞれのトロンボーンの特性を一気に比較出来て、それそれのトロンボーンの個性が良く判る。

まずは、J J Johnson(JJ・ジョンソン、以降、略して「JJ」)。1949年5月26日の録音。ちなみにパーソネルは、J J Johnson (tb), Kenny Dorham (tp), Sonny Rollins (ts), John Lewis (p), Leonard Gaskin (b), Max Roach (ds)。JJのトロンボーンとドーハムのトランペット、そして、ロリンズのテナーの3管フロント。リズム隊は、ピアノにジョン・ルイス、ベースのガスキン、ドラムにマックス・ローチ。収録された演奏曲は「Elysee」「Opus V」「Hilo」「Fox Hunt」。CDでの1〜4曲目になる。

続いて、Kai Winding(カイ・ウインディング、以降、略して「カイ」)。1949年8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Kai Winding (tb), Brew Moore (ts), Gerry Mulligan (bs), George Wallington (p), Curly Russell (b), Roy Haynes (ds)。カイのトロンボーンとムーアのテナー、マリガンのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにウォリントン、ベースにラッセル、ドラムにヘインズ。収録された演奏曲は「A Night On Bop Mountain」「Waterworks」「Broadway」「Sid's Bounce」CDでの7〜10曲目になる。

最後は、Benny Green(ベニー・グリーン、以降、略して「ベニグリ」)。1951年10月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Davis, "Big Nick" (ts), Rudy Williams (bs), Teddy Brannon (p), Tommy Potter (b), Art Blakey (ds)。ベニグリのトロンボーン、デイヴィスのテナー、ウィリアムスのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにブラノン、ベースにポッター、ドラムにブレイキー。収録された演奏曲は「Green Junction」「Flowing River」「Whirl-A-Licks」「Pennies From Heaven」。CDでの5,6,11,12曲目になる。
 

J-j-johnson-kai-winding-benny-greentromb  

 
録音年月日もバラバラ、録音は辛うじてNYでの録音だが、パーソネルは全て総替え。ただし、フロント3管+リズム・セクションのセクステット編成は3セッション共通。収録された演奏曲も平等に4曲ずつを収録。演奏編成と演奏曲が平等に割り当てられているので、不思議とアルバム全体で統一感がある。まるで、事前に周到に計画され実現した「3トロンボーンの比較盤」の様に聴こえるから、これまた不思議。

演奏編成が一緒なので、それぞれのトロンボーンの個性の比較がし易い。録音当時、1949年〜1951年は「ビ・バップ」の最終期であり、中間派と呼ばれるスイング・ジャズの発展形が流行していた時代。アレンジはシンプルで、フロント楽器のソロのスペースは平等に与えられておる。ビ・バップ、またはスイングのアレンジを基本的に踏襲しているので、アーティスティックな捻りは無い。トロンボーンのパフォーマンスに耳を傾けやすい演奏編成である。

ビ・バップ仕込みの切れ味の良い、テクニック確かなトロンボーンはJJ。バルブ・トロンボーンを駆使して、流麗なフレーズを吹き上げるカイ。そして、ゆったりとしたスイング・マナーで、ぼのぼのとしたトロンボーンが心地良いベニグリ。それぞれ4曲のみの収録だが、どの曲のトンボーン演奏も良好。個性豊かなトロンボーン3態である。

そして、それぞれ3セッションのサイドマンを見渡せば、当時のジャズ・シーンで活躍していた、錚々たるメンバーがバックを務めている。超有名どころとしては、トラペットのケニー・ドーハム、テナーのソニー・ロリンス、バリサクのジェリー・マリガン、ピアノのジョン・ルイス・ジョージ・ウォリントン、ドラムのマックス・ローチ・ロイ・ヘインズ・アート・ブレイキー等が名を連ねている。道理で、結構、ダイナミックで締まった演奏に仕上がっているのはその為か、と改めて感心する。

アルバムの編集方針もトロンボーン奏者のカップリングも、全く要領を得ない、プレスティッジの悪しき企画盤ではある。が、3人のトロンボーンのそれぞれの個性を楽しむことが出来ること。また、それぞれのセッションのサイドマンの演奏が好調で、それぞれ、ビ・バップ最後期、もしくは中間派の流行期のジャズ演奏として、意外と内容が充実していること。この2点から、このプレスティッジの不思議な企画盤は、意外とトロンボーンを楽しめる好盤として成立している。プレスティッジのアルバム編集方針の不思議である(笑)。
 
 
 
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2023年5月13日 (土曜日)

マクパーランドのピアノの個性

マリアン・マクパートランドは女性ジャズ・ピアニストのパイオニア。スイング期からビ・バップ期を始めとして今日まで、ジャズの歴史のほとんどをリアルタイムで活躍した本格派のジャズ・ピアニスト。また、ジャズ版 「徹子の部屋」みたいな感じのラジオ番組「The Mariian McPartlland Piiano Jazz radiio shows」の司会としても有名。

Marian McPartland & George Shearing『Great Britain's』(写真)。1曲目から4曲目まで1952年4月21日、5曲目から7曲目まで1952年12月22日の録音で、Marian McPartland (p) 。8, 11, 12, 14曲目が1947年12月23日、9, 10, 13, 15曲目が1947年2月3日の録音で、 George Shearing (p)。全てトリオの演奏。

まとめると、前半7曲がマクパーランドがピアノを担当、後半8曲がシアリングが担当している。タイトルが「偉大なる英国」。録音は全てNY。かなりやっつけのアルバム編集である(笑)。

しかし、この「やっつけ盤」を聴くと、マリアン・マクパーランドのピアノの個性が実に良く判る内容となっているから面白い。前半7曲がマクパーランドのピアノなんだが、弾きっぷりは見事なバップ・ピアノ。そこはかとなくロマンティシズム漂う耽美的な響きが特徴的。

バド・パウエルの様に、硬質なタッチでバリバリとダイナミックに弾きまくるのでは無く、端正なタッチでテクニックよろしく耽美的に弾きまくるのが、マクーパートランドのピアノ。そんな彼女独特の個性が良く判る。
 

Marian-mcpartland-george-shearinggreat-b

 
「オスカー・ピーターソンの女性版」と評されたこともあるマクパーランドのピアノであるが、このアルバムの弾きっぷりを聴いていると、思わず、なるほどなあ、と思う。とにかく上手い。速いフレーズも難なく弾きこなす。スイング感が半端ない。筋金入りの「バップ・ピアノ」である。

後半の8曲はジョージ・シアリングのピアノであるが、こちらは1947年の録音で、シアリングが「バップ・ピアノ」を弾いているのだが、米国のビ・バップを真似するのでは無く、アート・テイタムの弾きっぷりをベースに、欧州的な、ちょっとクラシック的な弾き回しを反映した、重厚な弾き回しになっている。

マクパーランドと比較すると、切れ味とスピード感はマクパーランドだが、ジャジーでブルージーなフレーズはシアリングに色濃い。マクパーランドの独特の個性は「ロマンティシズム漂う耽美的な響き」がそこはかとなく潜んでいるところ。逆に、シアリングは圧倒的にジャジーでブルージー。

タイトルの『Great Britain's』は、マクパーランドもシアリングも英国出身なので、このタイトルがついたのだろう。どういう意図でこういう企画盤に仕上げたのか、良く判らないアルバムだが、マクパーランドのピアノの個性がとても良く判る作りになっているのが、この盤の一番の価値だと僕は思う。
 
 

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