2022年1月15日 (土曜日)

ブルーノートの懐の深さを感じる

ブルーノート・レーベル4000番台は、純粋にジャズ出身のミュージシャンばかりで無く、R&B畑出身のミュージシャンにもリーダー作のチャンスを与えている。こういうところは、本当にブルーノートって懐が深い。他のレーベルとは異なり、レーベルとして、商業主義とはかけ離れた、確固たるアルバム制作の方針があるからだろう。

Fred Jackson『Hootin' 'n Tootin'』(写真左)。1962年2月5日の録音。ブルーノートの4094番。ちなみにパーソネルは、Fred Jackson (ts), Earl Van Dyke (org), Willie Jones (g), Wilbert Hogan (ds)。フレッド・ジャクソンは、R&B出身のテナー・サックス奏者。ジャクソンのテナーがフロント1管、ギター、オルガン、ドラムがリズム隊の変則カルテット編成。

リトル・リチャーズのバンド出身という変わった経歴を持つテナー奏者のリーダー作である。確かに、どっぷりジャズなテナー・サックスでは無い。どこかポップ、ブルージーでソウルフルなテナー・サックスで、後の「ソウル・ジャズ」の先駆け的な、ファンキーでR&B志向のジャズを聴くことが出来る。決して、メインストリームなジャズでは無い。
 

Hootin-n-tootin

 
全曲オリジナルというところも、メインストリームなジャズっぽく無い。どの曲もファンキーでソウルフルな演奏で、1950年代にジャズ界を席巻した「ハードバップ」や、マイルスが先鞭をつけた「モード・ジャズ」などとは、音の雰囲気が全く異なる。ジャクソンのテナーもR&B志向のファンクネス漂う、ブルージーで、どこか親しみ易いキャッチャーな音が特徴的。聴いていて「楽しい」テナー・サックスである。

後のモータウンの人気オルガン奏者、アール・ヴァン・ダイクのプレイも聴きどころ。これまた、ジミー・スミスなどの、いかにもストイックでジャジーなオルガンとは全く異なる、親しみ易くソウルフルな、そして、どこかポップなオルガンは、純ジャズの世界には無い響き。そして、素姓は良く判らないが、ウィリー・ジョーンズのこってこてソウルフルなギターも良い味を出している。

このジャクソン盤はどう聴いても、ハードバップでも無ければ、ファンキー・ジャズでも無い。明らかに後のソウル・ジャズの先駆的な音と言える。収録された曲は全てジャクソンのオリジナルで固められ、ジャズ・スタンダード曲は皆無。そういう面でも、この盤は、ブルーノートにおける「異色作」であり、逆にジャクソンの意欲作であり、ソウル・ジャズの先駆け的な好盤と言える。
 
 
 
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2022年1月13日 (木曜日)

BN4000番台の「異質」な存在

ブルーノート・レーベルは、ニューヨークに拠点を置く老舗ジャズ・レーベル。当然、東海岸の「モダン・ジャズ」がメイン。しかし、1500番台にも、4000番台にも、ブルーノートのカタログの中で、明らかに異質なアルバムが「1枚だけ」存在する。これが実に不思議な存在で、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの、カタログに入れた「真実」を訊きたい気持ちで一杯である。

1500番台では、Gil Melle『Patterns In Jazz』、ブルーノートの1517番が有名な「異質なアルバム」だろう。東海岸のハードバップの最先端のアルバムがひしめく中で、爽やかでお洒落なウエストコースト・ジャズ。西海岸で録られた音源を持って来たのかと思いきや、1956年4月の録音だが、しっかりと、Hackensackの「Van Gelder Studio」で録音されている。ブルーノートの確固たる意志で録音されたものだが、1500番台のアルバムの中で明らかに違和感がある。

Kenny Clarke, Francy Boland & Co. 『The Golden 8』(写真左)。1961年5月、西ドイツ(当時)のケルンでの録音。ルディ・ヴァン・ゲルダーはマスタリング担当。ブルーノートの4092番。ちなみにパーソナルは、Kenny Clarke (ds), Francy Boland (p), Dusko Gojkovic (tp), Raymond Droz (alto horn), Derek Humble (as), Karl Drevo (ts), Chris Kellens (euphonium), Jimmy Woode (b)。
 

The-golden-8  

 
ケニー・クラークをリーダーとしたオクテット編成。音の雰囲気はもはや「ビッグバンド」。ブルーノートの4000番台は、ハードバップの多様化をタイムリーに捉えたアルバムがてんこ盛りなのだが、そんな中に、やや古風な「ビッグバンド」志向なオクテット編成の演奏がいかにも「異質な存在」である。しかもバリバリ正統派なビッグバンド志向の音に、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

リーダーでドラムのクラークとベースのウッドは米国出身だが、ピアノのボランはベルギー、トランペットのゴイコヴィッチはボスニア、アルト・ホルンのドローはスイス、アルト・サックスのハンブルは英国、テナー・サックスのドレヴォはオーストリア、ユーフォニウムのケレンスはベルギー。米国2人、欧州6人の欧州ジャズのオクテットなので、出てくる音にファンクネスは殆ど感じられない。端正で統制の取れた、如何にも欧州らしい「ビッグバンド」志向な音が、これまた、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

メンバーの中に、若き日のバルカンの至宝トランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチが参加していたり、オクテットの演奏レベルは高い。アフロキューバンなリズムとモードを採用しているところが、欧州ジャズの中ではユニークで、ここから、クラーク=ボラン・ビッグバンドに発展していく、記念すべき盤でもある。しかし、欧州ジャズな「ビッグバンド」志向なオクテットは、ブルーノート4000番台の中では「異質」ではある(笑)。
 
 
 
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2022年1月 4日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・226

現在のNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」には、キーになる音楽として、ジャズが出てくる。ルイ・アームストロング(愛称:サッチモ)が演奏し、ボーカルを取る「On The Sunny Side Of The Street」。今、放送中の2代目主人公(女性)の名前が「るい」。ルイ・アームストロングのファーストネームが名前の由来。その主人公が、大阪に出てきてトランペッターに出会う。

そのトランペッターは「サッチモ」ライクなトランペットを吹く。大阪、そして「サッチモ」ライクなトランペット。このトランペッターのモデルは「南里文雄」では無いかと思い立った。南里文雄は大阪出身の伝説のジャズ・トランペッター。彼は1953年にルイ・アームストロングと共演、その折、サッチモ本人から「日本のサッチモ」とあだ名が付けられたほど。和ジャズ初期の伝説のトランペッターである。

南里文雄『栄光のトランペット』(写真左)。1971年の作品。ちなみにパーソネルは、南里文雄 (tp), 前田憲男 (p, arr), 横内章次 (g), 原田政長 (b), 石川晶 (ds), with 宮間利之とニューハード。リーダーのトランペッター、南里文雄がフロント1管のギター入りクインテットがメイン、日本を代表するビッグバンドのひとつ「宮間利之とニューハード」がバックを務める。

アレンジは、ジャズな音の使い手、前田憲男が担当。デキシーランド・ジャズが基調の音世界なのだが、古さ、レトロさを感じさせない、意外と今風のモダンな「ビッグバンド・アレンジ」には、ほとほと感心する。
 

Golden-trumpet

 
この盤を聴けば、南里文雄のトランペットの個性が良く判る。基本は「デキシーランド・ジャズ(ニューオーリンズ・ジャズ)」。この盤のバックにはビッグバンドが控えるが、確かにビッグバンドをバックにすると、更に「映える」トランペットである。バップな影は全く無い。冒頭の「Battle Hymn Of The Republic(リパブリック讚歌)」を聴けば、それがとても良く判る。

テクニック優秀、歌心もバッチリ、端正で流麗、ブラスの音の輝きがキラキラ眩しい、凄く素敵なトランペットである。しかも、実に良く「鳴る」。3曲目の「Stardust」などのバラード演奏は「素晴らしい」一言。思わず、どこで聴いていても、足を止めて、じっくり聴き入ってしまうくらいだ。

南里のトランペットは確かにバップでは無い。また、ジャズの奏法のトレンド(例えばモードとかフリーとか)からは超然としている、普遍的な「純ジャズ」のトランペットである。

ジャズ・トランペットの基本的な音がこの盤に詰まっている。ジャズ者の方々には一度はこの盤に耳を傾けて欲しいな、と思っている。全編に渡って、南里のトランペットを心ゆくまで楽しめる名盤だと思う。
 
 
 
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2021年12月22日 (水曜日)

スティープルチェイスの異色盤

スティープルチェイス・レーベルは、1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。

そんな「欧州発ハードバップ」の宝庫にも、1970年代、当時にして新しい「コンテンポラリーな純ジャズ」なアルバムがあったりするから面白い。

Michael Carvin『The Camel』(写真左)。1975年7月8日の録音。スティープルチェイス・レーベルのSCS1038番。ちなみにパーソネルは、Sonny Fortune (as. ss), Cecil Bridgewater (tp, flh), Ron Burton (p), Calvin Hill (b), Michael Carvin (ds)。リーダーは、ドラムのマイケル・カーヴィン。フォーチュンのサックス、ブリッジウォーターのトランペットが2管のクインテット編成。

欧州ジャズの世界に、バリバリ、エレ・マイルスの世界で吹きまくっていたサックス奏者と、マックス・ローチの長年の右腕トランペッター、セシル・ブリッジウォーターを迎えてのレコーディング。
 

The-camel

 
冒頭「Osun」から、カリプソチックでトロピカルな雰囲気の、ワールド・ミュージック志向な「ニュー・ジャズ」が展開される。フォーチュンとブリッジウォーターがノリに乗って、陽気に吹きまくっているのが面白い。どう聴いたって「欧州ジャズ」の雰囲気じゃない(笑)。リーダーのカーヴィンのドラムもノリに乗っている。

2曲目の「Naima」は、コルトレーンのバラードの名曲。ゆったりと展開するリズム&ビートをバックに、フォーチュンが素敵なソプラノ・サックスを披露する。静的なフレーズから、ラストはサイケデリックでスピリチュアルなフレーズで締めくくる。コルトレーン・ジャズへのオマージュ的演奏。

アルバム全体の雰囲気は、当時の米国ジャズの最前線のコンテンポラリーな純ジャズ。ワールド・ミュージック志向のニュー・ジャズあり、コルトレーンのオマージュあり、スピリチュアルなバップ曲あり、で、当時の欧州ジャズのトレンドからは逸脱した、1970年代の米国に流行っていた「コンテンポラリーな純ジャズ」な雰囲気が面白い。

スティープルチェイス・レーベルの諸作の中では異色盤でしょう。ジャケット・デザインも「強面」なので、あまり人気が無いみたいですね。それでも、一度聴けば、意外と時々引っ張り出して来て聴く「息の長いヘビロテな盤」になるのではないでしょうか。意外と充実した内容の好盤です。
 
 
 
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2021年12月14日 (火曜日)

ユニークな英国のジャズロック

欧州ジャズと一派一絡げに言うが、欧州大陸とグレートブリテン島(英国)では、ジャズに対する考え方が違う。特に英国は独特である。ジャズと言えば「ビ・バップ」か「ハードバップ」。ハードバップから派生した、大衆ウケを狙ったファンキー・ジャズや、音楽として捉えるのに無理が伴うフリー・ジャズ、電気楽器を駆使したエレ・ジャズなどは、ジャズでは無い、と言い切る。

それでも英国にはジャズロックの痕跡は残っている。ロック畑のミュージシャンがジャズをやる、というアプローチ。高いテクニックが伴うので、そうそう現れ出でることは無かったが、プログレッシヴ・ロックのミュージシャンを中心に、ジャズロックへのアプローチが見られる。バンドとしては、Brand X, Soft Machine, Bill Bruford's Earthworks の3つが代表格。というか、この3つしかない(と思われる)。

Brand X『Morroccan Roll』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、John Goodsall (g), Robin Lumley (key), Percy Jones (b), Phil Collins (ds), Morris Pert (perc)。英国の数少ないジャズロック・バンド、ブランドXのセカンド盤。ドラムには、プログレバンド、ジェネシスのドラマー、フィル・コリンズが担当している。
 

Morroccan-roll

 
演奏を聴いてみて思うのは、これは「プログレッシヴ・ロック」では無い。リズム&ビートからジャズロックである。が、英国出身ということもあってか、ファンクネスは皆無。ジャジーな雰囲気もほとんど無く、インスト・メインの音作りからすると「プログレ」と判断されても仕方が無い。しかし、これは「クロスオーバーなジャズロック」である。

バカテクで疾走感溢れるインストはファースト盤『Unorthodox Behaviour』と変わらないが、このセカンド盤の方が、演奏自体が少しユッタリしていて、アドリブ展開にも余裕が感じられる。音的にも、タイトルからも想像出来る様に「エスニック」もしくは「アラビアン」な音の要素が散りばめられていて、音的にクロスオーバーな展開がこのセカンド盤の特徴。

まず、欧州大陸にはまず無い「ジャズロック」が、グレートブリテン島にはあった。英国にて突然変異的に現れたプログレが引き金だとは思うが、英国の「ジャズロック」はユニークだ。特にこのブランドXはロック色が強い。しかし、リズム&ビートは「ジャズロック」。何とも音志向の判断に戸惑う、英国の「ジャズロック」である。
 
 
 
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2021年12月12日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・224

僕のお気に入りのサックス奏者の1人だった「ボブ・バーグ(Bob Berg)」。ボブ・バーグが急逝したのが19年前、2002年12月5日のこと。バーグはニューヨーク州イースト・ハンプトンで自宅近くを運転中に、セメント・トラックに追突されて死亡した。51歳。ジャズ・ミュージシャンとしては「これから成熟度を増していく」年齢だった。

バーグのサックスは、メインストリーム系の「実直で正統な」もので、ダイナミックな吹きっぷりが個性。特に自由度の高いモーダルな展開における高い演奏力には一目置くべき存在。全音域を駆使しつつ、歌心のあるサックスは、実にオーソドックス。そのテクニックとともに、聴き始めると、ついつい引き込まれてしまうような、不思議な魅力のあるサックスである。

Bob Berg, Randy Brecker, Dennis Chambers, Joey DeFrancesco『The JazzTimes Superband』(写真左)。January 28 & 29, 2000年1月28, 29日、NYでの録音。コンコード・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、 Bob Berg (sax), Randy Brecker (tp, Flh), Dennis Chambers (ds), Joey DeFrancesco (org), Paul Bollenback (g)。

ボブ・バーグのサックス、ランディ・ブレッカーのトランペットがフロント2管のオルガン・カルテット(ベースはオルガンが兼ねている)。ギターのポール・ボーレンバックが客演の位置づけ。リーダーは取り立てて立てずに、メンバーそれぞれが並列の立場で参加している。
 

The-jazztimes-superband

 
スタジオ録音であるが、演奏の躍動感は半端ない。参加メンバーいずれもノリにノッている。すっきり切れ味のあるファンキーな演奏で、さしずめ「現代のファンキー・ジャズ」と表現して良い趣き。ボブ・バーグのダイナミックな歌心溢れるサックスが全編に渡って効いている。

ファンキーなランディのトランペット、バーグとのサックスとの相性がバッチリで、ユニゾン&ハーモニーは心地良く、ソロでは爽やかなファンクネスを撒き散らします。そして、デフランセスコのオルガンが実に効いている。モダンなフレーズが新鮮、演奏全体のファンクネスを増強する。そんな躍動感溢れる現代のファンキー・ジャズのリズム&ビートをコントロールしているのが、デニー・チェンバースのドラミング。

「Friday Night at The Cadillac Club」など、聴いていてとても楽しい。思わず体が左右に揺れ、足でリズムを取り始める。また聴いてちょっとビックリしたのが「Oleo」。こんな高速「Oleo」って聴いたことが無い。オルガン、ギター共に協奏をしているかように、競るような早弾きに思わず唖然とする。

ボブ・バーグは、リーダー作としては十数作しか残しておらず(サイドマンとしての参加盤は結構あるみたいだが)、見つけたら躊躇わず、必ず聴くことにしている。今回のこの『The JazzTimes Superband』については、全く縁が無く、半年前にやっと手にしたアルバムになる。聴いて満足。内容の濃い、ネオ・ハードバップな好盤である。
 
 
 

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2021年12月 6日 (月曜日)

マクリーンの息子のリーダー盤

1970年代の欧州ジャズは、メインストリームな純ジャズ路線を頑なに守っていたフシがある。エレクトリック・ジャズへのアプローチは必要最小限に留め、アコースティック楽器中心のハードバップか、新しいジャズの響きを求めた「ニュー・ジャズ」がメインだった。スティープルチェイス然り、エンヤ然り、ECM然り、である。

René McLean『Watch Out』(写真)。1975年7月9日、NYでの録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、René McLean (sax, fl), Danny Coleman (tp, flh). Nathan Page (g), Hubert Eaves III (p), Buster Williams (b), Freddie Waits (ds)。名アルト・サックス奏者、ジャキー・マクリーンの息子、ルネ・マクリーンの初リーダー作になる。

ルネ・マクリーンは1946年生まれ。マルチ・リード奏者。ワールド・ミュージック志向の純ジャズがメイン。教育者、プロデューサーとしての「顔」もあり、リーダー作は現在まで3枚に留まる。そんな寡作のリーダー作の一枚になる。脇を固めるサイドマンは米国のジャズマンで占められてはいるが、さすがジャズが斜陽の時代、名前がメジャーなサイドマンはベースのバスター・ウィリアムスくらいかな。
 

Watch-out

 
エレギが入ったコンテンポラリーな純ジャズ志向のエレ・ジャズになる。音の志向はあからさまではないが「ワールド・ミュージック」志向。アフリカやカリブやラテンなど、ワールドワイドな音の要素が色々と混ざっている。リズム&ビートの基本はハードバップ。モード・ジャズであるが、アフリカン・ネイティヴな音の雰囲気がそこかしこに感じられて、1970年代ならではのエレ・ジャズがこの盤に詰まっている。

ルネのサックスは「コルトレーンのフォロワー」の音であり、モーダルなフレーズ、シーツ・オブ・サウンドなアドリブ展開など、コルトレーンほど重厚では無いが、フットワーク良く軽快なブロウで、「コルトレーン・ライク」なサックスが展開される。バックがエレ・ジャズ志向なので、コルトレーンが1970年代も生きていて、エレ・ジャズをやるなら、こういう音になるのかな、という雰囲気。演奏テクニックも優秀で、収録されたどの楽曲も、良い感じの「力作」に仕上がっている。

このワールド・ミュージック志向のエレ・ジャズって、当時、意外と珍しく、ルネ・マクリーンについても、この志向のリーダー作が、続いて制作されなかったことは残念である。もっと突き詰め深化させていけば、なかなか面白いワールド・ミュージック志向のエレ・ジャズが成立したと思うのだがどうだろう。冒頭の「Bilad as Sudan (Land of the Blacks)」からタイトル含め、演奏にも力が入っていて、なかなか聴かせてくれる。
 
 
 
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2021年12月 4日 (土曜日)

ルイ・スミスの晩年の好盤です。

米国のジャズ・シーンの居心地が悪くなり、欧州へ移住した一流ジャズマンにリーダー作制作の機会を与え、数々の優秀盤を世に送り出したのが、スティープルチェイス・レーベル。そんな米国出身のジャズマンの中で「こんな人がスティープルチェイスにリーダー作を吹き込んでるんだ」とビックリする様な名前に出くわすことがある。

ルイ・スミス(Louis Smith)。1931年、テネシー州メンフィスの生まれ。ミシガン大学で勉強している間、大学に訪問してくる様々なジャズマンと共演を重ねたが、アトランタのブッカーT.ワシントン高校で音楽教育の仕事の傍らでの、パートタイムのジャズ・ミュージシャンの道を選択。しかしながら、ブルーノート・レーベルに『Here Comes Louis Smith』『Smithville』の2枚の好盤を残している。この2枚の優れたアルバムのお陰で、僕達は「ルイ・スミス」というトランペッターの名前を記憶しているのだ。

Louis Smith『The Bopsmith』(写真左)。2000年4月の録音。スティープルチェイスからのリリース。ちなみにパーソネルは、Louis Smith (tp), Jon Gordon (as), Michael Weiss (p), Jay Anderson (b), Joe Farnsworth (ds)。伝説の堅実誠実なトランペッター、ルイ・スミスのリーダー作。録音当時はリーダーのルイ・スミスは69歳。他のメンバーは、リーダーのルイ・スミスと親子ほど歳の違う30歳代〜40歳代前半。当時の中堅若手ジャズマンを従えたクインテット編成。
 

The-bopsmith_1

 
この盤の冒頭「Val's Blues」を聴けば、ルイ・スミスの堅実誠実なトランペットは、ブルーノートに録音した頃と全く変わってないなあ、と感慨深くなる。結構複雑なフレーズを事も無げに、流麗に堅実に吹き進めていく。とっても味のあるジャズ・トランペットで、ついつい聴き込んでしまうほど。トランペットの音のエッジは程良くラウンドしていて、とても聴き心地の良い音色である。ジャズ・トランペットの「お手本」の様な音はずっと聴いていても飽きない。

しかし、この盤でのルイ・スミス、とっても状態が良い。当時、69歳とは思えない、バイタルな吹きっぷりで、ユッタリしたミッドテンポの曲は、唄う様に説得力のあるフレーズを連発し、速いアップテンポの曲はバリバリと破綻無く、堅実なテクニックで速いフレーズを淀みなく吹き続けて行く。この盤、ルイ・スミスのトランペットを愛でる盤としては、1950年代のブルーノートの2作と比肩するレベルの好盤である。

ちなみに、ルイ・スミスは、1950年代にブルーノートに2作のリーダー作を残した後、1970年代に2枚、1990年代に6枚、2000年代に4枚、計12枚のリーダー作をスティープルチェイス・レーベルに残している。この事実を知った時にはちょっとビックリした。ブルーノートに残した2枚ばかりが「もてはやされている」が、スティープルチェイスのリーダー作についても、どれもがルイ・スミスのトランペットの個性が楽しめる、ハードバップな内容の好盤である。もっと聴かれても良いのではないか、と思う。
 
 
 
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2021年12月 2日 (木曜日)

久し振りの「パウエル節」である

昔に活躍したジャズマンを起用してスタンダード曲を演奏させる、そんな「昔の名前で出ています」的なアルバムを制作してリリースする。ヴィーナス・レコードの十八番であるが、そう言えば、欧州の老舗ジャズレーベル、スティープルチェイス・レーベルも同じ様なアルバム作りをしていたような気がしてきた。

米国のジャズ・シーンの居心地が悪くなり、欧州へ移住した一流ジャズマンにリーダー作制作の機会を与え、数々の優秀盤を世に送り出したのが、スティープルチェイス・レーベル。まあ、こちらの場合、日本人好みのスタンダード曲やバラード曲などは演奏させなかったが。ただ、アプローチは似たようなところがあって、僕はこのスティープルチェイスの「昔の名前で出ています」的なアルバムが好きだ。

Bud Powell Trio『1962 Stockholm Oslo』(写真左)。1〜5曲目が、1962年3月、ストックホルムでの録音。6曲目から9曲目までが、1962年11月、オスロでの録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Erik Amundsen (b), Ole Jacob Hansen (ds)。ベースのエリック・アムンゼン、ドラムのオレ・ヤコブ・ハンセンは、共にノルウェー出身。
 

1962-stockholm-oslo_20211202220501 

 
リーダーでピアノ担当のバド・パウエルは、お馴染み「モダン・ジャズ・ピアノの祖」と呼ばれる早逝の天才ピアニスト。パウエル派1959年、パリに移住している。その欧州滞在の機会を捉えて、スティープルチェイスは、パウエルのリーダー作を録音している。「at the Golden Circle」シリーズがつとに有名。今回の『1962 Stockholm Oslo』の前半5曲は、その「at the Golden Circle」シリーズの録音の2日前、同じく「Golden Circle」での録音とのこと。

このアルバムでのパウエルは体調はまずまずだったのでは無いか。寛いだ雰囲気で、お馴染みの癖のあるタッチとノリで、パウエルは鼻歌を唄うかの様にピアノを弾き進めている。全盛期の切れ味抜群、何かが取り憑いたようなイマージネーション溢れるアドリブは望むべくもないが、なかなか聴き心地の良い「パウエル節」を堪能させてくれる。難しいこと言いっこ無しで、パウエルらしい弾きっぷりを楽しませてくれる。

全盛期を過ぎたとは言え、パウエルの個性はまだまだ尖っていて、唯一無二のバップ・ピアニストという点で人後に落ちない。今回のアルバムや「at the Golden Circle」シリーズの様に、普段着の寛いだパウエルが、気持ちの赴くままに、バップなピアノを気持ちよさそうに弾く。それで良いではないか。歴史を変えるような名盤な内容では無いが、久し振りに「パウエル節」を楽しませてくれる好盤だと思う。
 
 
 
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2021年11月29日 (月曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・4

ヴィーナス・レコードのジャズ盤、というだけで、眉をひそめるベテラン・ジャズ者の方々がいたりするんだが、ヴィーナス・レコードには、本来の硬派なジャズ・レーベルの志向もしっかりとあって、1980年代以降に活躍した、欧州ジャズの優れたジャズマンを我が国に紹介してくれた、という功績もある。揶揄される「コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作り」な面もあるにはあるが、それはカタログ全体のごく一部だろう。

Stefano Bollani Trio『Falando De Amor』(写真左)。邦題『愛の語らい』。ほぼ直訳である(笑)。2003年2月、イタリア・ローマの「Studio Elettra」での録音。ちなみにパーソネルは、Stefano Bollani (p), Ares Tavolazzi (b), Walter Paoli (ds)。純イタリアのピアノ・トリオ編成。イタリア・ジャズの力量を直に感じられる好盤である。

改めて、この盤は、イタリアのジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラーニによる「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」である。しかし、この盤、通常の「聴き心地良く、ポップでお洒落」なボサノヴァ・ジャズの雰囲気では無い。安易にピアノ・トリオのポップで聴き易い「ジョビン集」という先入観で聴き出すと椅子から転げ落ちるかもしれない。
 

Falando-de-amor_1

 
「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」でありながら、ボサノヴァの名曲を、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズで解釈している、ある意味「痛快」な「ジョビン集」である。タッチは力強く、アドリブ・フレーズはストイックなまでに硬質、曲のテンポも速いものが多く、ほぼバップ志向なピアノである。が、そこはかとなく、ロマンティシズム漂うところが、いかにも欧州的、イタリア・ジャズらしいところ。

耽美的でリリカルではあるが「バップな」ピアノなところは、ビル・エヴァンスに通じるところはあるが、エヴァンスのフレーズの「エッジは骨太」だが、ボラーニのフレーズの「エッジは立っている」。ここが違う。ヴィーナス・レコードの独特のエコーと相まって、決して安易に甘きに流れない、とても欧州っぽいピアノの弾き回しがこの盤の大きな個性だと思う。

トリオのインタープレイも全編を通じて緩んだところは無く、この純イタリア・トリオの演奏力の高さが窺い知れる。ジョビンの名曲の数々をストレート・アヘッドなピアノ・トリオ演奏に変身させた「アレンジ」についてもかなり優れたものがある。スイング感も快適、こんな「ジョビン集」、聴いたのは初めて。やはり、ヴィーナス・レコードは隅に置けない。
 
 
 
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