最近のトラックバック

2018年5月 9日 (水曜日)

ネイチャー・ジャズの見分け方

ジャズ系のアルバムで、ジャケットが「夕焼け」のイメージをモチーフとしたものは、高い確率で「ネイチャー・ジャズ」であることが多い。「ネイチャー・ジャズ」とは僕の造語で、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンスを指す。

Edward Simon『Sorrows & Triumphs』(写真左)。おお、印象的な夕焼け空のジャケットではないか。リーダーのEdward Simon(エドワード・サイモン)は、ベネズエラ出身、NYで活動しており、米国のコンテンポラリー・ジャズ界の重要なピアニストの一人である。うむむ、ジャケットを見れば見るほど、これは「ネイチャー・ジャズ」の好盤だと思えてくる。

冒頭の「Incessant Desires」を聴けば確信する。ファンクネス皆無の透明度の高いクールなリズム&ビート、豊かなエコーを湛えた印象的なアコピの音、その傍らで、地味にブンブンと胴を響かせるアコベの音。そして、そこに女性のクールで透明度の高いスキャットが響き渡る。これ良いなあ。紛れも無い「ネイチャー・ジャズ」である。
 

Sorrows_triumphs  

 
ちなみにパーソネルは、コアとなるカルテットが、Edward Simon (ac-p & key), David Binney (as), Scott College (b), Brian Blade (ds)。要のドラムに「ブライアン・ブレイド」が座っている。硬軟自在、変幻自在のポリリズミックな陰影のあるドラミングが、ネイチャー・ジャズの響きを増幅させている。リーダーのサイモンはエレピも弾いていて、これがまた趣味の良いエレピで、なかなかに聴かせてくれる。

フロントのブラスはデヴィッド・ビネイのアルト・サックス。これが自由度の高いモーダルなブログから、フリーなスピリチュアルなブロウまで幅広い表現で、このベネズエラ出身のピアニストが表現するネイチャー・ジャズを、更にバリエーション豊かなものにしている。そこに、Gretchen Parlato (vo), Adam Rogers (g), Rogelio Boccato, Luis Quintero (perc)が絡む。音の厚みと奥行きがグッと豊かになる。

「ネイチャー・ジャズ」志向のコンテンポラリーな純ジャズである。じっくり聴き応えがあって、聴いていて清々しい気分になる。ネイチャー・ジャズの良いところである。コンテンポラリーでドラマチックな展開の曲が魅力的。リーダーのサイモンのコンポーザー/アレンジャーとしての才能が遺憾なく発揮されている。有名どころでは無いが、聴き応え十分の好盤である。

 
 

東日本大震災から7年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年5月 8日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・97

ニュージーランドを旅していて、時折、店の中でジャズが流れていた。ニュージーランドでも店のBGMはジャズなんや、と感心した。そして、思う。あれ、ニュージーランド出身のジャズ・ピアニストがいたなあ、誰だっけ。最近は、ある程度のグレードのホテルだと無料のWIFIが使える。ということで、ネットで調べる。で、この名前に突き当たる。Stephen Small(スティーヴン・スモール)。
 
そうそう、この人この人。以前、喜多郎の「シルクロードのテーマ」が聴きたくなって、喜多郎をググっていたら、この名前に突き当たった。2013年に喜多郎の楽曲をオーケストラ用にアレンジ、2014年2月からスタートした喜多郎のワールドツアーに参加し、喜多郎と共に公演を続けている。そして、このピアニストのプロフィールを見て、へぇ〜ニュージーランド出身のジャズ・ピアニストがいるんや、とビックリした。

さて、改めてこの「スティーヴン・スモール」、ニュージーランド出身のピアニストであり、作曲家兼アレンジャー。ロンドンのギルドホール音楽学校でクラシックピアノを学び、音楽理論修士号、音楽芸術博士号を取得。ピアニストとして、ロンドン交響楽団やチェコ・ナショナル交響楽団のレコーディングへ参加している。当初はクラシック・ピアニストだったみたいです。
 

Stephen_small_slow_drag

 
その後、米国の人気歌手ベリンダ・カーライル、英国の歌手レオ・セイヤー、ボニー・テイラーとの共演を経て、現在は、オーケストラ用に楽曲をアレンジする編曲家として、スタジオミュージシャンや音楽プロデューサーとして精力的に活動中とか。そんなスティーヴン・スモールがジャズ・ピアニストとして制作したアルバムの一枚がこれ。ピアノをメインとしたベース、ドラムのトリオ編成のジャズである。

Stephen Small『Slow Drag』(写真)。2008年の作品。ジャケットが3種類くらいあって、ジャケット・イメージだけでは特定が難しい。冒頭は欧州的な緩やかなピアノからの出だしに、この盤ってリリカルなニュー・ジャズかしら、と思いきや、途中からジャズファンクな雰囲気に早変わり。ウエザー・リポートの様でもあり、マハビシュヌ・オーケストラの様でもあり、今風のスピリチュアルなジャズファンクの様でもあり、エレ・ジャズの最先端のトレンドをごった煮にしたような音世界に驚いたり、感心したり。

内容的に充実しており、決して米国本国のエレ・ジャズにひけを取らない、上質のジャズ基調のエレ・ファンクがこの盤に詰まっています。テンションも適度で飽きることはありません。特に、リーダーのスティーヴン・スモールの奏でるキーボードのセンスが抜群の良い。ジャズファンク者のみならず、ロックのプログレ者でも楽しめる、エレ・ファンクな好盤です。

 
 

東日本大震災から7年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年3月30日 (金曜日)

ECMの「困ったチャン」な盤

ECMレーベルは、欧州のジャズ・レーベルなんだが、1969年の設立なので、ニュー・ジャズと呼ばれる類の内容のアルバムが多くある。中には「これ、どう聴いても、現代クラシックでしょう」な内容のアルバムもあって、こうなるともはやジャズ盤としては扱えない。困ったものである。それでも、ECMレーベルのカタログにはしっかりと存在している。ECMレーベルの音を理解する為にも、一聴する必要はある。

例えば、Keith Jarrett & Jan Garbarek『Luminessence』(写真左)。1974年4月29, 30日の録音。ECM1049番。パーソネルを見渡すと、Jan Garbarek (sax), Südfunk Symphony Orchestra Stuttgart とだけ。シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏をバックに、ガルバレクのサックス・ソロという内容である。あれ、アルバムのジャケットにあるのは「Keith Jarrett と Jan Garbarek」。キースは何処にいった。

回答、キースは作曲だけで、ピアノを弾いていないので注意! である。シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏は、全てキースの作曲によるもの。看板に偽りあり、という感じだが、意外と内容は良い。このアルバム、ガルバレクのフリー・インプロビゼーションがメインで、ガルバレクのサックスが、キース作の美しい弦楽の中で印象的に響いている。ガルバレクのフリー・インプロがメインということで、辛うじて、この盤は「ジャズ盤」として愛でている。
 

Keith_jan_in_the_light

 
次に、Keith Jarrett『In The LIght』(写真右)。1973年2月の録音。ECM 1033/34番。LP時代、2枚組の大作。ちなみにパーソネルは、一応、Keith Jarrett (p), Willi Freivogel (fl), Ralph Towner (g) と名を連ねてはいるが、ここでも、Südfunk Symphony Orchestra Stuttgart, The Fritz Sonnleitner Quartet(弦楽四重奏), The American Brass Quintet の名前が挙がっている。

そう、この盤も、基本的には、キース作曲の楽曲が、シュトゥットガルト放送交響楽団の演奏をメインに、弦楽四重奏や金管四重奏の演奏によって繰り広げられるユニークなもの。キースのピアノが入るものもあるが、その時のキースのピアノはクラシックもしくは現代音楽的なタッチ。さすがに僕は、この盤は「ジャズ盤」としては扱えない。といって、クラシックもしくは現代音楽としては、ちょっと「過剰」な内容で、繰り返し聴くにはちょっと辛い。

但し、さすがにキースの作曲なる楽曲は、それぞれ、しっかりとキースの音の個性、節回しが反映されている。ピアノ・インプロビゼーションに置き換えたら、さぞかし映えるだろうなあ、という曲がズラリと並ぶ。ECMの総帥、マンフレート・アイヒャーはちょっと変わり者。そして、キース・ジャレットも音楽家としてちょっと変わり者。変わり者同士が意気投合してジャズ・レーベルに残した「不思議な困ったチャン」な盤。キース者として、キースを深く知るには一聴の価値あり。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年3月25日 (日曜日)

ECMの「音の迷宮」の奥は深い

ジャズ盤を聴くのに、ガイド役として、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用することは大変大切なことではある。しかし、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介される盤は、それぞれ結構似通っている。記事を担当した評論家の手抜きなのか、はたまた、編集に携わった編集者の陰謀なのか、確かにジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されるジャズ盤は「聴く価値あり」だが、「聴く価値あり」のジャズ盤はそれだけではない。

ジャズ盤を聴き進めて行くと、このジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用する方法がどこかで行き詰まる。すると、自分で聴く価値のある盤を探すことが必要なのに気付く。やはり、ジャズ盤は自分の耳で聴いて、自分の耳で、自分にとっての「良し悪し」を判断することが一番大切なことに気付く。

Mal Waldron『The Call』(写真左)。1971年2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (el-p), Jimmy Jackson (org), Eberhard Weber (el-b), Fred Braceful (ds, perc)。ECM傘下のレーベル JAPOからのリリース。さすがECM系の録音。これは珍しい。骨太硬派のピアニスト、マル・ウォルドロンが全編エレピを弾いた作品である。
 

The_call_2

 
僕はこの盤の存在については、ECMレーベルのカタログを紐解いていて発見した。この盤について、その評論や感想が書かれたジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を見たことが無い。しかも、あの硬派で骨太な硬質ピアニスト、マル・ウォルドロンである。そんなマルが、こともあろうにエレピを全編に渡って弾きまくるのだ。許せない、と硬派のジャズ者の方々が憤慨して、この盤を亡きものにした感覚も判らなくは無い。

内容的には録音当時、ジャズ界の先端のトレンドのひとつだった「エレジャズ」。いわゆるジャズロックの雰囲気が大勢を占め、後半の途中あたりから、アブストラクト〜フリーな演奏が展開される。後半のアブストラクト〜フリーな演奏は納得できるが、欧州ジャズの環境下でのジャズロックはちょっとした驚き。しかし、それなりにまとまっていて今の耳にも十分に耐えます。特にマルのエレピについては合格点。エレピの特徴をよく掴んでいて、聴き応えがあります。

現代のスピリチュアル・ジャズファンクに直結するマルのエレピ。バックのオルガン=エレベ=ドラムのリズム・セクションも良好で、こんなアルバムあったんや〜感が強い。アルバム・ジャケットも当時のデザイン・センスからすると突出していて、こういうアルバムをリリースするって、ECM恐るべし、である。実はECMレーベルには、こういう異端なジャズ盤がゴロゴロしている。ECMの「音の迷宮」の奥は深い。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年2月26日 (月曜日)

チャーリー・ラウズの白鳥の歌

最近は良い世の中になったなあ、と感じる。ネットを徘徊していると、様々なジャズ盤と出会うことが出来る。ジャズを聴き初めて、早40年。アルバムを聴き込んだ枚数も相当数になるんだが、ジャズの世界は奥が深く、裾野が広い。今でも時々「こんなアルバムあったんや」と感じ入る好盤に出会うことがある。

Charlie Rouse 『Epistrophy - The Last Concert』(写真)も、そんな「こんなアルバムあったんや」と感じ入った好盤の一枚。1988年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Don Cherry (tp), Buddy Montgomery (vib), George Cables, Jessica Williams (p), Jeff Chambers (b), Ralph Penland (ds)。

収録曲はセロニアス・モンクの有名曲ばかり。それもそのはずで、サンフランシスコでの「1988 Jazz in the City! Festival」での、セロニアス・モンクのバースデー・トリビュートでのライブ録音。もともと、チャーリー・ラウズは、1959年から1970年まで、セロニアス・モンクのカルテットで活動、その間モンクの側近中の側近の存在で、モンクに一番近いジャズメンである。
 

Epistrophy_last_recording   

 
演奏内容はと言えば、さすがにモンクの側近中の側近の存在、モンクズ・チューンを朗々と吹き上げていく。ラウズの演奏するモンクの曲は説得力があって、本物っぽく聴こえる。やはり、10年以上もモンクと共にしたラウズである。モンクの曲のイメージを誰よりも理解しているのだろう。本当に素晴らしいパフォーマンスだ。

もう一人素晴らしいと感じ入ったのは、このライブ演奏での「モンク役」を担った、ピアノのジョージ・ケイブルスである。多弁なピアニスト・ケイブルスであるが、モンクの楽曲でアドリブ・フレーズを叩き出し、ラウズのテナーやチェリーのトランペットのバッキングをする雰囲気は、かなりのところ「モンク」。良い雰囲気の楽しいピアノである。

あれっと思って調べてみたら、ラウズの命日が1988年11月30日。このライブ盤の録音が1988年10月。ラウズの逝去の約1ヶ月半前の「ラスト・レコーディング」であった。肺がんのため、と聞いているが、このライブ盤のブロウの力強さを聴くと、肺がん末期のブロウとは思えない。このライブ盤は、ラウズの「白鳥の歌」。聴く度に万感の想いがこみ上げる。

 
 

東日本大震災から6年11ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年1月29日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・96

久し振りに「マッコイ・タイナー」が聴きたくなった。マッコイ・タイナーと言えば、1960年代、ジョン・コルトレーンの「黄金のカルテット」のピアニストとして、その名を轟かせ、コルトレーン亡き後、特に1970年代は、そのメリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」によって、大人気ピアニストとなった。

1980年代以降、ジャズ者に飽きられたのか、その人気は鳴りを潜めたが、ピアニストとしての力量は昔のまま。奏法も買えること無く、流行に迎合することも無く、コルトレーンの「黄金のカルテット」からの、メリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」は一切、変えることは無い。実に硬派で実直な職人的ピアニストである。

そんなタイナーにも若かりし頃はあった訳で、まだまだ、彼の個性である、メリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」の萌芽は聴かれるには聴かれるが、まだ個性として確立していない、発展途上のタイナーもなかなかに味わい深いところがある。若々しいというか、瑞々しい堅実なタッチのタイナーが、1962年から1964年の「Impulse! レーベル」の諸作に聴くことが出来る。
 

Mccoy_tyner_plays_ellington

 
このアルバムは、そんな「Impulse! レーベル」の諸作の最後のリーダー作になる。McCoy Tyner『Plays Ellington』(写真左)。1964年12月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Willie Rodriguez, Johnny Pacheco (Latin-perc)。コルトレーンの「黄金のカルテット」からコルトレーンを抜いた、リズム・セクションの演奏。

1964年12月と言えば、コルトレーンの「黄金のカルテット」は、かの傑作『A Love Supreme』を録音した時期、この『Plays Ellington』は、この『至上の愛』を録音する直前のリズム・セクションの演奏を捉えたものになる。この直後、『至上の愛』を録音するとは思えないほど、堅実でオーソドックスなピアノ・トリオ演奏。エリントンの曲を十分に理解し、タイナーなりに個性を活かしつつ上手くアレンジした、実に趣味の良い演奏が繰り広げられている。

特に尖ったところはないんだけど、とっても誠実で堅実なピアノ・トリオの演奏で、エリントン・トリビュートの企画盤としても、優れた内容の盤になっている。が、我が国では、なかなかジャズ盤紹介本などで採り上げられることが殆ど無い、知る人ぞ知る「隠れ好盤」である。いかついジャケットに怯まず、一度は耳にして欲しい好盤である。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年1月26日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・95

毎年のことではあるが、雑誌「ジャズライフ」のディスク・グランプリ、「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を読むと、へぇ〜、こんなアルバムが出てたんや〜、なんて、思わず感心してしまう盤が何枚か、絶対に出てくる。今年も何枚かあって、最近、ちょっとヘビロテで楽しんでいる。

そんな中の1枚がこれ。Megapteras『Full Throttle(フル・スロットル)』(写真左)。Megapteras=メガプテラス と読む。メガプテラスは、黒田卓也(tp)、西口明宏(ts, ss)、宮川純(p, key)、中林薫平(b)、柴田亮(ds)からなるユニット。2011年結成。この盤は、2016年10月、メンバー全員がニューヨークに渡り録音した、気合いの入ったアルバムである。

雰囲気は、コンテンポラリーな純ジャズ、若しくは、現代の尖ったスムース・ジャズ。どっかで聴いたことがあるなあ、と思ったら、そうそう、ロバート・グラスパー等の現代ジャズ・シーンの音のトレンドにフィットしている。但し、やっぱり面白いのは、純日本人バンドの場合、ファンクネスは漂ってはいるんだが「乾いている」。乾いたファンクネスが、日本人らしくて良い。
 

Full_throttle

 
冒頭のタイトル曲から、緩やかではあるが、テンションは適度に張っていて、楽々に演奏しているようで、実はかなりハイテクニックな演奏になっていて、聴き進めていくうちに、飽きるどころか、適度なテンションを保ったまま、徐々に惹き込まれていく。なんでかなあ、と思って聴いていたら、どうも「中林、柴田のリズムが、太い音色でビートを刻む」ところにありそうですね。

リズム&ビートのグルーブ感が半端ない。黒田と西口の2管フロントの存在感が抜群で、ソロ、ユニゾン&ハーモニー、ともに充実している。相性が良いのだろう。そして、音を最後にバッチリと決めているのが、宮川のキーボード。エレピ、アコピ共に良い味出している。心地良いグルーブ感。この雰囲気の演奏は現代のコンテンポラリーな純ジャズだろう。

現在NYのシーンで熱い注目を集める、チリ出身の注目シンガー、カミラ・メザが参加した、ボーカル付きの演奏などは、スムース・ジャズの雰囲気濃厚。それでも、バックの演奏は結構尖っていて聴き応えがある。いや〜、良いアルバムですねえ。こんなアルバムが出ていたなんて、全然、知らなかった。今、我がバーチャル音楽『松和』で、ちょくちょく、かかっています。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年12月21日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・94

僕の大のお気に入りのエレジャズ・バンド「Weather Report(=略してWR)」。印象的なフレーズや美しい旋律を伴った秀曲が多々あるのだが、徐々にカバーが増えてきている。ジャズって、1950年代からスタンダード曲というものがあるんだが、新しい時代の、いわゆる「ネオ・スタンダード」と呼ばれる曲があまり出てこない。印象的なフレーズや美しい旋律を伴ったWRの曲なんて、カバーに最適だと思うんだがなあ。

と思っていたら、こんなピアノ・トリオ作が出た。クリヤ・マコト, 納浩一, 則竹裕之『Acoustic Weather Report』(写真左)。2015年の作品。改めてパーソネルは、クリヤ・マコト (p), 納浩一 (ac-b), 則竹裕之 (ds)。純日本編成のピアノ・トリオ。WRの音楽を、あえて生楽器、それもピアノ・トリオでリアレンジすることにより、元祖WRの魅力を再発見しようというコンセプトで始ったとのこと。

WRの音世界の魅力は、電気楽器による、サイケデリックかつダイナミックな表現、分厚いユニゾン&ハーモニーなんだが、ピアノ・トリオ化に当たって、この魅力をバッサリ切り捨て、曲の持つ「印象的なフレーズや美しい旋律」を前面に押し出す、なんとも大胆かつ繊細なアレンジが見事である。
 

Acoustic_weather_report_2

 
しかし、よくまあアレンジを「やり切ったなあ」と感心する。もともとWRの曲は構造的に「難曲」が多く、コピーする分になんとかなるのだが、ピアノ・トリオなどでカバーする場合、WRの曲の持つ「複雑な構造」をどうアレンジし、表現するかが鍵になる。実はこの「複雑な構造も持つ」ところが、WRの曲の最大の個性でもあるのだ。これを省略したり、アレンジし損ねると、演奏自体が、何をやっているのか、判らなくなる危険性がある。

とにかく完コピしていないところが潔い。WRの曲が持つ個性的な部分だけを取り出して、シンプルに演奏する。この「潔さ」がこの盤の「キモ」である。トリオ演奏自体のレベルも相当に高い。上質のピアノ・トリオ。演奏を聴いていると、本場米国の有名なピアノ・トリオの演奏なのかと思ってしまうのだが、これがまあ「純日本製」なのだ。思わず口元が綻び、思わず胸を張りたくなる様な素晴らしい演奏。

収録されたどの曲も魅力的な演奏ばかりだが、とりわけ、冒頭の「キャノン・ボール」、2曲目の「エレガント・ピープル」、7曲目の「ヤング・アンド・ファイン」辺りが、かなりの「聴きもの」。アレンジが優秀なので、何度聴いても飽きが来ない。今回の収録曲以外の「他の曲」をカバーした「続編」を期待したい。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年12月11日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・93

最近のネットのダウンロード・サイトって、とっても便利。時々、サイトの中を彷徨って、これは、という盤に出会ったら、試聴をかまして吟味する。そうやって「こんなアルバムあったんや〜」とビックリするやら、感心するやら、今まで聴いたことの無い盤に出会って、感謝感謝である。

Allan Holdsworth『Blues for Tony』(写真左)。そうやって、ダウンロード・サイトで出会った好ライブ盤。2009年のリリースになる。かつてホールズワースが在籍していた、トニー・ウィリアムス・ニューライフタイムの再現ライブ。トニーは1997年2月に亡くなっているので、このライブは、亡くなったトニーに捧げる演奏を記録したものになる。

2007年5月のヨーロピアン・ツアーの模様を収めたもので、パーソネルは、Allan Holdsworth (g), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds), Jimmy Haslip (b) のカルテット構成。凄まじいばかりのハイテクニックを駆使してのエレ・ジャズではあるが、決してフュージョンでは無い。演奏を聴けば判るが、明らかに硬派な純ジャズ系のエレ・ジャズ。
 

Blues_for_tony

 
収録曲は、ホールズワースが在籍していた、トニーのニューライフタイム名義のアルバム『Believe It』に収録されている「Fred」「Proto-Cosmos」「Red Alert」を中心に、メンバーのオリジナル曲を併せて全11曲。CD2枚組のボリュームですが、全演奏時間は90分程度で、演奏のテンションが高くて、内容もバラエティに富んでいるので、一気に聴いても飽きることは無い。充実にライブ演奏です。

スピード感を十分、それぞれの楽器の音もタイトで切れ味良く、とても気持ち良く聴けます。特にホールワースのギターは絶好調で、切れ味良く、クイックに捻れ、ポジティブな音は「ホールワースやなあ」と感心し笑みがこぼれるばかりの強烈な個性です。パスクアのキーボードも素敵に歪みつつ、切れ込むような疾走感を伴ってガンガン弾きまくります。

この弾きまくるホールワースは、あらゆるロック・ギターの演奏を吹っ飛ばしてしまうばかりの迫力とテクニック。しかも、アドリブ・フレーズにも聴きどころ満載で、こんなライブ盤が2009年にリリースされていたなんて、とにかくビックリしました。以前のニューライフタイムの演奏よりも緻密で高度。聴きどころ満載の好ライブ盤です。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月15日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・92

昔のジャズ盤紹介本を読み返してみると、「この盤は聴いたことが無い」というものに出会う時がある。そもそも、縁が無かったのか、もともとジャズ盤紹介本に挙がることが殆ど無いのか、大体が「こんなアルバムあったんや」と感心する盤が大多数である。そして、聴いてみるとなかなかの内容の盤がほとんど。

3ヶ月ほど前に、このブログでご紹介した盤なんだが、例えばこの盤なんか、ジャズ盤紹介本に挙がっているのを見た時、「こんなアルバム見たこと無い」が最初の印象。内容の紹介文を読んで「こんなアルバムあったんや」と思わず唸る。

Stéphane Grappelli『Live In San Francisco』(写真左)。ジャズ・バイオリンの名手、ステファン・グラッペリの1982年7月7日、サンフランシスコでのライブ音源。

ステファン・グラッペリは、フランスのジャズ・ヴァイオリニスト。ジャズ・ヴァイオリニストの第一人者として、長年に渡って晩年まで第一線で活躍した。1908年生まれ、1997年に89歳にて逝去。このサンフランシスコでのライブ音源は1982年のものなので、グラッペリが74歳、晩年の演奏になる。
 

Stephane_grappelli_live_in_san_fran

 
選曲はスタンダード曲がメイン、これが良い。グラッペリのジャズ・ヴァイオリンの素性の良さとテクニックの確かさがグッと浮き出てくるのだ。まるで鼻歌を歌うが如く、軽快に爽快にアドリブを展開する。緩急自在、抑揚が効いていて、グラッペリのテクニックは「神業」である。74歳の演奏とは思えない。

ギターはグラッペリ・バンドで一躍有名になったギター・マン、若きマーティン・テイラーである。テイラーは1956年生まれなので、このライブの時点で弱冠26歳の若さ。26歳の若さなのに、意外と小粋なバッキングを繰り出すのだから、これまたビックリする。グラッペリとは48歳の差があるのだが、全く違和感が無い。優れたジャズメンの組合せとはそういうものなんだろう。

ジャズ・ヴァイオリンとは如何なるものか、この盤を聴けばその極上なパフォーマンスを体験することが出来る。素晴らしいライブ盤である。ちなみに、LPでの初出の時の盤(写真左)と、現在、CDでリイシューされている盤(写真右)とジャケットが大きく異なる。LP時代のジャケットの方がシンプルでジャズ盤らしい雰囲気。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

保存

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

AOR | ECMレーベル | jazz | Miles Reimaginedな好盤 | Pops | R&B | rock | SteepleChaseレーベル | The Great Jazz Trio | Yellow Magic Orchestra | こんなアルバムあったんや | ながら聴きのジャズも良い | アキコ・グレース | アダムス=ピューレン4 | アブドゥーラ・イブラヒム | アラウンド・マイルス | アル・ディ・メオラ | アンドリュー・ヒル | アート・ブレイキー | アート・ペッパー | イエス | イスラエル・ジャズ | イタリアン・ジャズ | イタリアン・プログレ | インパルス!レコード | イーグルス | ウィントン・ケリー | ウィントン・マルサリス | ウェイン・ショーター | ウェザー・リポート | ウェス・モンゴメリー | ウエストコースト・ジャズ | エリック・クラプトン | エリック・ドルフィー | エルトン・ジョン | エンリコ・ピエラヌンツィ | オスカー・ピーターソン | オーネット・コールマン | カシオペア | カーラ・ブレイ | キャノンボール&ナット・アダレイ | キャンディド・レーベル | キング・クリムゾン | キース・ジャレット | ギル・エバンス | クインシー・ジョーンズ | クイーン | クリスマスにピッタリの盤 | クロスオーバー・ジャズ | グラント・グリーン | グレイトフル・デッド | ゲイリー・バートン | コンテンポラリーな純ジャズ | サイケデリック・ジャズ | サザンロック | サンタナ | ザ・クルセイダーズ | ザ・バンド | ジャケ買い「海外女性編」 | ジェフ・ベック | ジミ・ヘンドリックス | ジャキー・マクリーン | ジャズ | ジャズの合間の耳休め | ジャズロック | ジャズ・アルト | ジャズ・オルガン | ジャズ・ギター | ジャズ・テナー | ジャズ・トランペット | ジャズ・トロンボーン | ジャズ・ドラム | ジャズ・ピアノ | ジャズ・フルート | ジャズ・ボーカル | ジャズ・レジェンド | ジャズ・ヴァイオリン | ジャズ喫茶で流したい | ジョニ・ミッチェル | ジョン・コルトレーン | ジョン・スコフィールド | ジョン・レノン | ジョージ・ハリソン | ジョー・ヘンダーソン | スタン・ゲッツ | スティング | スティング+ポリス | スティービー・ワンダー | スピリチュアル・ジャズ | セロニアス・モンク | ソウル・ミュージック | ソニー・ロリンズ | ソロ・ピアノ | タンジェリン・ドリーム | チック・コリア | チューリップ | デイブ・ブルーベック | デイヴィッド・サンボーン | デクスター・ゴードン | デュオ盤 | デューク・ジョーダン | デヴィッド・ボウイ | トミー・フラナガン | トランペットの隠れ名盤 | ドゥービー・ブラザース | ハンプトン・ホーズ | ハービー・ハンコック | バリトン・サックス | パット・メセニー | ビッグバンド・ジャズは楽し | ビル・エバンス | ビートルズ | ビートルズのカヴァー集 | ピアノ・トリオの代表的名盤 | ファンキー・ジャズ | フィル・ウッズ | フェンダー・ローズを愛でる | フュージョン・ジャズの優秀盤 | フリー | フリー・ジャズ | フレディー・ハバード | ブッカー・リトル | ブラッド・メルドー | ブランフォード・マルサリス | ブルース・スプリングスティーン | ブルーノート | ブレッカー・ブラザース | プレスティッジ・レーベル | プログレッシブ・ロックの名盤 | ベーシストのリーダー作 | ホレス・シルバー | ボサノバ・ジャズ | ボビー・ハッチャーソン | ボブ・ジェームス | ポップス | ポール・サイモン | ポール・マッカートニー | マイケル・ブレッカー | マイルス・デイヴィス | マッコイ・タイナー | マンハッタン・ジャズ・クインテット | ミシェル・ペトルチアーニ | ミルト・ジャクソン | モダン・ジャズ・カルテット | ヤン・ハマー | ラテン・ジャズ | ラリー・カールトン | リトル・フィート | リンダ・ロンシュタット | リー・リトナー | レイ・ブライアント | レジェンドなロック盤 | レッド・ガーランド | レッド・ツェッペリン | ロック | ロッド・スチュワート | ローランド・カーク | ヴィーナス・レコード | 上原ひろみ | 北欧ジャズ | 吉田拓郎 | 和ジャズの優れもの | 四人囃子 | 夜の静寂にクールなジャズ | 天文 | 天文関連のジャズ盤ジャケ | 太田裕美 | 寺井尚子 | 尾崎亜美 | 山下達郎 | 山中千尋 | 旅行・地域 | 日本のロック | 日本男子もここまで弾く | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 欧州ジャズ | 歌謡ロック | 渡辺貞夫 | 渡辺香津美 | 米国ルーツ・ロック | 荒井由実・松任谷由実 | 西海岸ロックの優れもの | 趣味 | 青春のかけら達・アーカイブ | 音楽 | 音楽喫茶『松和』の昼下がり | 高中正義 | 70年代のロック | 70年代のJポップ

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2018年5月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ