2020年3月30日 (月曜日)

ギリシャのピアニスト盤である

ジャズには「ジャケ買い」という言葉がある。ジャケット・デザインの優れたアルバムは、基本的に内容の優れたアルバムである確率が高い、という「格言」。自らの体験を振り返ると、確かにその傾向は強い。そのリーダー作の名前について全く知らなくても、直感的にジャケット・デザインが良いと思って衝動買いしたら、かなりの確率で、その内容は良好なものが多い。

George Kontrafouris Trio『The Passing』(写真左)。2020年2月のリリース。ニューヨークの伝説的なバードランドでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、George Kontrafouris (p), Kimon Karoutzos (b), Jason Wastor (ds) 。ピアノ・トリオ。リーダーはピアニスト。ギリシャ出身のベテラン ・ピアニスト、ジョージ・コントラフォーリス(=George Kontrafouris)とのこと。

全く知らないピアニストだ。実はこの盤、ジャケット・デザインに妙に惹かれて、いきなりゲットした、いわゆる「ジャケ買い」盤なのだ。リーダーのジョージ・コントラフォーリスは、ジャズ・ピアニスト、オルガニスト、教育者として欧州のジャズ・シーンの主要人物の一人。多くの有名なミュージシャンとの共演歴もあり、ニューヨークを拠点に活動しているとのこと。いやはや、ジャズ・ミュージシャンの裾野は広い。
 
 
The-passing
 
 
コントラフォーリスのピアノは明らかに欧州ジャズの音傾向を踏襲している。クラシック・ピアノの素養がベースにあって、前奏などの弾き回しの手癖は明らかにクラシックの影響大。テーマからアドリブ部の弾き回しは、ビル・エヴァンスに通じる耽美的でリリカルな音。タッチは流麗。テクニックに走らず、弾き回しの流麗さを基に、音の広がりと音の重なりを優雅に聴かせる。

バックに付いたベースとドラムのリズム隊のレベルも高い。適度なテンションが心地良い、インテリジェンス溢れるインタープレイ。野趣溢れるアドリブ・プレイ。木訥にシンプルにリズム&ビートをキープし、フロントの旋律を司るピアノをサポートする。ジャズ、ブルース、そして、時々、「恐らくは」であるが、ギリシャのネイティヴな旋律を織り交ぜて、どこか、ギリシャを感じさせる音世界が独特な響きとして伝わってくる。

ジャズは国際的な音楽になったんやなあ、とこの盤を聴きながら再認識。特に欧州ジャズならではの豊かで流麗な響きがこのピアノ・トリオの一番の個性。そして、ところどころに織り交ぜられる、ギリシャのネイティヴな旋律がユニーク。米国ジャズ、日本のジャズには絶対に無いこの音世界は様々な発見があって、繰り返し聴いても飽きることが無い。今回の「ジャケ買い」、大成功である。
 
 
 

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2020年3月25日 (水曜日)

トミフラ「こんな盤あったんや」

長年、ジャズを聴いて、アルバムをコレクションして、ブログを書いていても、ジャズのレジェンド級のジャズマンについて、その存在を知らなかったり、聴き逃していたリーダー作が突然、出てきたりする。聴き逃しはまだ良いが、その存在を知らなかった、というのは、長年ジャズ者をやって来て、いやはや、まだまだ勉強不足ということを実感する。ジャズは意外と奥が深い。

Tommy Flanagan『Flanagan's Shenanigans』(写真左)。1993年4月2日の録音。パーソネルについては、Tommy Flanagan (p), Jesper Lundgaard (b), Lewis Nash (ds) のピアノ・トリオがメインで、Jesper Thilo (ts) が1〜4曲目まで、Henrik Bolberg Pedersen (tp), Steen Hansen, Vincent Nilsson (tb), Jan Zum Vohrde (as, fl), Uffe Markussen (ts, ss, b-cl), Flemming Madsen (bs, b-cl) が、1〜3曲目まで参加している。

リーダーのピアニスト、トミー・フラナガン(以下、トミフラと呼ぶ)が、デンマークのジャズバー賞を受賞した時に行ったライヴを収録した音源。ヤスパー・ルンゴー(b)とルイス・ナッシュ(ds)との味のある、職人芸的ピアノ・トリオの演奏をベースに、現地の優れものジャズメンが参加したノネット編成での、重厚でダイナミックで整然としたビッグバンドの様な演奏が冒頭から3曲、続く4曲目の「For Lena and Lennie」のみ、テナーのイェスパー・シロが参加したカルテット編成。
 
 
Flanagans-shenanigans  
 
 
5曲目以降、ラストの大団円「Tin Tin Deo」まで、トミフラのピアノ・トリオの演奏になる。まず、この盤、このピアノ・トリオ演奏の部分が秀逸である。トミフラのピアノが実に良い音している。もともと歯切れの良い、明確なタッチなんだが、この盤では、それに加えて、躍動感が際立つ。そして、流麗でジャジーで粋なアドリブ・フレーズ。そう、トミフラのアドリブ・フレーズは「粋」なのだ。聴いていて惚れ惚れする。

1曲目「Eclypso」から「Beyond the Bluebird」「Minor Mishap」の3曲は、ノネット編成の演奏なのだが、これが全て、トミフラの自作曲。こうやって、ビッグバンド風のアレンジで聴いてみて、トミフラの自作曲って良い曲なんだなあ、と再認識する。ノネット自体の演奏も、ビッグバンド風で迫力と疾走感があって、聴いていて清々しい気分になる。トミフラのピアノは、ノネットの中に入って伴奏に回った時、これまた「伴奏上手のトミフラ」の真価を発揮する。

ヤスパー・ルンゴー(b)とルイス・ナッシュ(ds)のサポートも見事。こんなトミフラ盤があったなんて、僕は今まで意識したことがなかった。トミフラは僕のお気に入りのピアニストの一人なので、彼のディスコグラフィーはしっかり確認していたのになあ。恐らく、1990年代のトリオ盤に注目するあまり、冒頭がノネット編成のライブ盤を見落としたと思われる。いやはや、サブスクの音楽サイトに感謝である。
 
 
 

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2020年3月18日 (水曜日)

「この盤の内容」侮るなかれ

ジャズには、興味深いエピソードを携えた「話題のアルバム」というものが幾つかある。例えば「マイルスとモンクのクリスマスの夜の喧嘩セッション」。これは作り話ということで一件落着しているが、作り話としても、このエピソードは面白い。ロリンズの数回に渡る「雲隠れ騒動」だってそうだ(これは事実だけど)。意外とジャズ盤って、その録音にまつわるエピソードが豊富にある。これはこれで面白いのだが、その盤の音の評価にはあまり影響しないと思うのだが。

Michel Legrand『Legrand Jazz』(写真)。1958年の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいが、様々な有名ジャズメンが集結して、ビッグバンド形式で録音しているので、主だった名前だけ列挙しておきたい。Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Bill Evans (p), Ben Webster (ts), Hank Jones (p), Art Farmer (tp), Donald Byrd (tp), Paul Chambers (b), Herbie Mann (fl), Phil Woods (as) 等々。

ミシェル・ルグランは、仏映画音楽界の巨匠。「シェルブールの雨傘」「華麗なる賭け」「おもいでの夏」など、手掛けた有名曲は多数。そして、優秀なジャズ・ピアニスト兼アレンジャーでもあった。本場米国のジャズマンや批評家からも高く評価されていたというから立派なものだ。そんな彼の最初のジャズ・アルバムにして最高傑作の1つがこのアルバムになる。
 
 
Legrand-jazz   
 
 
1958年の晩春。ルグランは米国旅行に出かけます。名目は新婚旅行。しかし真の目的は、様々な有名ジャズメンを集めて、自らのアレンジによるジャズ盤を録音すること。ちゃっかりしてますね。当時、既に超売れっ子だったルグランだから、我が儘も通ったのだろう。集まったジャズメンを見渡すと、錚々たるメンバーである。そして、驚くことに、かのマイルス・デイヴィスが参加している。但し、有名ジャズメンを集めた「お気楽な企画盤」では無い。

冒頭の「The Jitterbug Waltz」を聴くだけで、この盤は当時の米国ジャズとは全く異なる、クラシックに比肩する優雅さと繊細さを兼ね備えていることが判る。マイルスやビル・エヴァンス、コルトレーンという超一流のジャズメンが演奏するのだ。優雅さと繊細さの中に、グッと一本の「ジャズの音の芯」が通っているのがよく判る。やはり、先の「The Jitterbug Waltz」を含め、マイルスが参加の楽曲「Django」「Wild Man Blues」「'Round Midnight」が飛び抜けて出来が良い。

この盤、米国ジャズメンで演奏された欧州ジャズである。この手の音世界は米国ジャズには無い。しかし、ここまで一本の「ジャズの音の芯」が通っ優雅さと繊細さを兼ね備えた純ジャズは、欧州のジャズメンにはまだ難しいところがあったと思う。ルグランはそこに目をつけて、米国旅行の折に、録音のチャンスを見出し、それを実現したと思われる。しかし、さすがは「仏映画音楽界の巨匠」、クールな聴き易さをしっかりと付加している。ルグランのアレンジの才が如何に優れていたか。この盤の内容が証明している。
 
 
 

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2020年3月13日 (金曜日)

この盤、パチモン盤では無い。

フュージョン・ジャズと言っても、後のスムース・ジャズの様に「ソフト&メロウ」を前面に押し出した、聴き心地重視のものより、純ジャズやR&B寄りの、ファンキーでグルーヴ感濃厚なものの方が好みである。バンドで言えば「スタッフ(Stuff)」や「クルセイダーズ(The Crusaders)」そして「ブレッカー・ブラザース(Brecker Brothers)」あたりが好みである。

Cornell Dupree『Saturday Night Fever』(写真左)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、Cornell Dupree (el-g), Buster Williams (b), Doug Wilson (ds), Mario E. Sprouse (key), Alex Foster (sax), Kiane Zawadi (tb), Earl Gardner (tp), Sally Rosoff (cello), Elliot Rosoff, Irving Spice (vln)。伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のギタリスト、コーネル・デュプリーのリーダー作になる。

実はこの盤、タイトルを見れば、僕達の世代の人達は直ぐに判ると思うが、当時のソウル・ヒットのギター・インスト・カヴァーを多数収録〜カヴァーした企画盤なのだ。なんせタイトルが「サタデー・ナイト・フィーバー」である。あのジョン・トラボルタの映画で有名な「それ」である。僕はこの盤については、端っから「パチモン」と決めてかかっていた。
 
 
Saturday-night-fever_20200313195201
 
 
これが、である。フュージョン・ファンクの味付け濃厚な、秀逸なカヴァーになっているのだから、やはり、アルバムっていうのは、聴かなければ「判らない」(笑)。「パチモン」カヴァーとして危惧したのは「Stayin' Alive(Saturday Night Feverのテーマ曲)」「Slip Slidin' Away(Simon&Garfunkelのヒット曲)」そして「It's So Easy(Linda Ronstadtのヒット曲)」。この曲のタイトル見れば、フュージョン・ジャズの味付けのイージーリスニングか、って思いますよね。

が、これがそうはならない。コーネル・デュプリーの「ファンクネス濃厚でグルーヴ感溢れる」エレギのノリで、原曲の良いフレーズをファンキーに崩して、原曲のイメージを仄かに感じる位にデフォルメしている。このデュプリーのデフォルメが実に絶妙なのだ。これは譜面に書けるものではない。デュプリーの天性の「どファンキーなノリ」の成せる技である。「Slip Slidin' Away」なんて原曲のイメージはほとんど崩されているし、「It's So Easy」は力業での崩しで思わず納得。それでも原曲のフレーズはちゃんと残っているのだから隅に置けない。

この盤、「パチモン」盤だなんてとんでもない。コーネル・デュプリーの「ファンクネス濃厚でグルーヴ感溢れる」エレギを体感するのに、また、コーネル・デュプリーの「どファンキーなノリ」による崩し方を体感するのに適した盤だと思う。一部、弦が入ってポップなアレンジも見え隠れするが、コーネル・デュプリーのファンキーなエレギが入ってきたら、途端にそこは「ファンキーでグルーヴ感濃厚」なフュージョン・ファンクの音世界。素敵です。
 
 
 

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【更新しました】2020.03.02
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【更新しました】2020.03.08
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2020年3月 2日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・126

マイルスが始めた「エレクトリック・ジャズ(エレ・ジャズ)」。ジャズ本には、このマイルスが始めたエレ・ジャズが、クロスオーバー・ジャズに発展、フュージョン・ジャズに進化した、と書かれることが多いが、僕はそうは思わない。マイルスのエレ・ジャズは、あくまで「メインストリーム・ジャズ」であり、軸足はしっかりと「ジャズ」側にある。クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズは、ジャズに置いた軸足が、どんどん他のジャンルの音楽の側に移動している。

Jack DeJohnette & Dave Holland『Time & Space』(写真左)。1973年6月16日、東京のイイノホールでの録音。トリオ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ac-p, el-p, org, Melodica, Marimba, vo, ds, perc), Dave Holland (ac-b, el-b, vo, perc)。パーソネルの担当楽器を見れば、この盤、多重録音でのエレクトリック・ジャズであることが想像出来る。

ジャック・デジョネットは、現代ジャズ・ドラマーのレジェンド。彼の叩き出すポリリズムと8ビートは唯一無二。マイルスのバンドに在籍し、マイルスのエレ・ジャズをしっかりと体験している。マイルスが欲しくて欲しくてたまらなかったドラマーの一人であるが、デジョネットは長期のツアーが嫌で辞退している。デジョネットは優れたドラマーであるが、優れたピアニストでもある。この盤では、ドラマーとピアニスト、一人二役をこなしている。
 
 
Time-space  
 
 
デイブ・ホランドは、英国出身のベーシスト。マイルスがエレ・ジャズを主宰した際、ベーシストとして参加し、『In A Silent Way』や『Bitches Brew』といった重要作に参加している。その後、チック・コリアと「サークル」を結成したりと、モードからフリーまで柔軟に適応する、演奏の底を押さえるテクニックが素晴らしいベーシストである。

さて、この『Time & Space』は、エレ・ジャズである。どこかマイルスのエレ・ジャズの雰囲気が漂う。マイルスのエレ・ジャズから「スリリングで高いテンション」を差し引いて、適度に脱力した遊び心が見え隠れする、穏やかで印象的なエレ・ジャズ。モーダルで時々フリー。あくまで「メインストリーム・ジャズ」の範疇でのエレ・ジャズ。デジョネットのキーボードが大活躍。ホランドのベースが演奏の底をガッチリと押さえていて、とても多重録音のアルバムとは思えない。

デジョネットのキーボードの腕前はさることながら、デジョネットとホランドのリズム隊って、やっぱり凄いなあと思うのだ。アルバム全編に渡って、硬軟自在、変幻自在、遅速自在のリズム&ビートは素晴らしい。ずっと耳で追っていて、やっぱり凄い。そんなリズム隊を得て、面白くて、どこかホノボノとするエレ・ジャズ。この盤、日本のトリオ・レコードからのリリース。もともとはデジョネット側からの企画だったそう。なんか納得。
 
 
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東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月17日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・125

ジャズは良い意味で「何でもアリ」な音楽ジャンルである。そういう意味で自由度の高い、融通の利く音楽ジャンル、と言える。クラシックともポップスとも違う。もちろん、ロックとも違う。クラシックは極力、譜面通りに演奏するのが基本だし、ポップスやロックは「繰り返し」の音楽だ。ジャズは、必要最低限の決め事の下での即興が基本で、ベースとなるフォーマットやビートは自由。つまりは「やったもん勝ち」という志向が強い。

Monty Alexander『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』(社員左)。2019年の作品。セロニアス・モンクの楽曲にスカやレゲエなどのジャマイカのテイストを加えた作品。タイトルの「Wareika Hill」とは、ラスタファリアンの聖なる山のこと。モンティの本気度が窺い知れる。しかし、あのジャズの中でも、とびきりユニークな楽曲の作り手、セロニアス・モンクの楽曲をスカやレゲエのリズム&ビートでジャズるとは。これは実にユニーク。

さて、リーダーのピアニスト、モンティ・アレキサンダーは、1944年6月6日、ジャマイカのキングストン生まれ。クラシック・ピアノを学び、ハイスクール入学後はポピュラー系もこなしつつ、ニューヨークへ進出。演奏スタイルはラテン的フレーズを宿しつつ、パワフルでハッピー。とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多い。ジャズ者によっては「五月蠅い」と敬遠する向きもあるくらいである。しかし、そんなフレーズは品格が漂い、決して俗っぽくない。
 
 
Wareika-hill-rastamonk-vibrations-1  
 
 
モンクの楽曲は「間とタイミング」を活かした楽曲が多く、そんな楽曲に2拍子のレゲエ・ビートを当てて、ピアノを弾きまくるのだが、面白いのは、とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多いモンティ・アレキサンダーのピアノが、2拍子に当てるが故に、適度に音が散って、適度に音が間引かれて、モンクの楽曲のユニークなフレーズがくっきりと浮かび上がるのだ。これは面白い。

モンクの楽曲をレゲエ・ビートでアレンジするなんて発想が凄い。もともとモンティ・アレキサンダーはジャマイカのキングストン生まれ。もちろん、レゲエは子供の頃から親しんだビートだろうし、ボブ・マーリーはヒーローだろう。しかし、ボブ・マーリーの楽曲をジャズにするのでは無く、モンクの楽曲をレゲエ・ビートでジャズるなんて。モンティの品格漂うパワフルなピアノ・タッチと相まって、ツービートに乗って、明るく陽気に唄うモンクス・ミュージック。

モンクス・ミュージックとレゲエ、絶対合わない様な感じがするんだが、こうやってアレンジしてみると、しっかりと融合してジャズになるのだから、ジャズの懐の深さ、融通度の高さに改めて感じ入るばかりである。レゲエのビートに乗って、パワフルでハッピー、多弁で陽気なモンティのピアノがポジティヴに印象的に響き渡る。この盤、モンティのピアノを愛でるのにも良い好盤である。いや〜、今回は面白いチャレンジを聴かせて貰った。
 
 
 
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2020年2月13日 (木曜日)

ネオ・ハードバップなアルト合戦

ハードバップ時代には、大人数のジャム・セッションや、同じ楽器が複数本、フロントで凌ぎを削るバトル・セッションなどの「聴いて楽しい企画盤」が結構あったやに記憶している。録音してアルバムにする方としても、ジャズメンを多く集めて、打合せをして「せーの」で演奏させて「ハイ上がり」という手っ取り早さもある。

1980年代後半の純ジャズ復古以降、そういった「大人数のジャム・セッション」や「フロントで凌ぎを削るバトル・セッション」をメインとした企画盤を見なくなった。ジャズの演奏技術が進歩して、様々な演奏フォーマットで演奏することが可能になったことと、演奏する側も録音してアルバム化する側も、アルバムを作るということに真摯に向き合うようになったこととが併せ持ってそうなったのだと思っている。

Vincent Herring, Bobby Watson & Gary Bartz『Bird at 100』(写真左)。2019年8月30, 31日 & 9月1日、NYの「SMOKE Jazz Club」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Gary Bartz (as), Vincent Herring (as), Bobby Watson (as), David Kikoski (p), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。アルト・サックスが3本フロント+ピアノ・トリオのリズム・セクション。
 
 
Bird-at-100-1  
 
 
『Bird at 100』のタイトルを見て、Bird=Charlie Parkerで、この盤は「チャーリー・パーカー」のトリビュート盤かな、と当たりを付ける。収録された曲名を見て、その「当たり」が確信に変わる。収録曲9曲中、チャーリー・パーカーの作品が3曲、パーカーが好んで演奏した曲が3曲で「3分の2」を占める。フロントの3人はアルト・サックス奏者。3者共通の憧れであり目標である「チャーリー・パーカー」。

3人のアルト・サックス奏者のパフォーマンスを聴いていると、3人ともチャーリー・パーカーに対する敬愛の情について相当なものがあると感じる。伝説の巨人「チャーリー・パーカー」と真っ直ぐに対峙して、3者3様、個性を発揮して、しっかりとパフォーマンスしている。バックのリズム・セクションもしっかりとハードバップな響きを宿していて素晴らしい。

1940年代後半から1950年代前半のビ・バップ〜ハードバップ時代の音世界の雰囲気をしっかりと押さえつつ、演奏内容はストレートな21世紀の「ネオ・ハードバップ」。3人のアルト・サックスのバトルを聴くことが出来る、ジャッキー・マクリーン作の「Bird Lives」など、手に汗握る名演である。良い内容の企画盤である。
 
 
 
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2020年2月10日 (月曜日)

ECM流フュージョン・ジャズ

先週の後半から、いきなり冷え込んだ。というか、凄く寒い。今年の冬は暖冬傾向だっただけに、この寒さは体に悪い。と思っていたら、いきなり体調を崩した。7年前に大病をして大手術の末、生還した訳だが、その時の後遺症が久々に出た。今日になってやっと回復した。それでもまだ寒い。これだけ寒い時のジャズは「ECMレコード」盤と決めている。

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。凛とした無調のフレーズ。いわゆる「ニュー・ジャズ」である。ファンクネスは皆無、即興演奏という面が、ECMレコードのアルバムを「ジャズ」というジャンルに留めている。ECMの音のモットーは「the most beautiful sound next to silence」=「沈黙に次いで最も美しい音」。

Collin Walcott『Grazing Dreams』(写真左)。1977年2月、ノルウェーはオスロのTalent Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Collin Walcott (sitar, tabla), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni), John Abercrombie (g, el-mandolin), Palle Danielsson (b), Dom Um Romão (perc, tambourine, berimbau)。
 
 
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リーダーのコリン・ウォルコットは「シタール、タブラ」奏者。シタールはインドの伝統弦楽器、タブラはインドの伝統打楽器。これがリーダーの楽器である。それでジャズをやるのだ。いや〜ビックリである。ニュー・ジャズの旗手、ECMレコードの面目躍如。そして、周りを固めるのが、フリージャズ・トランペッターのドン・チェリー、捻れエレギのジョンアバ、北欧のベースの雄ダニエルソン、そして、ドラムは、ブラジルのドラマー、ドン・ウン・ホマォン。

インドど真ん中のウォルコット、東洋志向に転身しつつあったドン・チェリー、バリバリの西欧志向のアバークロンビーが絡み合う、無国籍の幻想的な浮遊感溢れるフレーズ。ホマォンのドラムとダニエルソンのベースがしっかりビートを刻む中、ウォルコットのシタールとタブラが独特の、唯一無二な音空間を創り出している。東洋志向に傾くフレーズをジョンアバの西洋志向のエレギが中和する。

いわゆる「異種格闘技」的ジャズ・セッション。ECM流の「フュージョン・ジャズ」。欧州ジャズのフュージョン(融合)の音世界。摩訶不思議な即興演奏。ECMレコードならでは、というか、ECMレコードでしか為し得ない「ニュー・ジャズ」。実験色が強い内容であるが、しっかりジャズしているから素晴らしい。
 
 
 
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2020年2月 6日 (木曜日)

真摯な演奏、真摯な録音です。

最近、昔聴いた懐かしい盤がリイシューされていて楽しい。日本人ジャズの往年の好盤がリイシューされている。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半の日本人ジャズ盤が懐かしい。こうやって聴き直してみると、良い盤が多かったんやなあ、と感心する。1970年代後半と言えば、フュージョン・ジャズ全盛の時代。そんな時代に、硬派で真摯な純ジャズの好盤が多々リリースされていたとは、日本のジャズ・レーベルも捨てたもんじゃない。

八城一夫『SIDE by SIDE』(写真左)。1974年2月20日、1974年3月8日の録音。ちなみにパーソネルは、八城一夫 (p), 潮先 郁男 (g), 原田 政長 (b), 五十嵐武要 (ds)。ピアノの名器「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」との聴き比べの企画盤。A面をベーゼンドルファー、B面をスタインウェイで収録されている。名器と呼ばれるピアノの違いによる聴き較べが出来るという趣向。

懐かしいなあ。僕はこの盤を1980年、大学近くの例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った。「ベーゼンドルファー」と「スタインウェイ」の音の違いが明確に分かるので、とにかく面白くて、何度もリクエストしたことを覚えている。自分でもピアノは弾くので、ピアノによって音が違うのは理解していたが、名器と呼ばれるピアノでもこんなにも音が違うんだ、とちょっとビックリした。
 
 
Side-by-side
 
 
さて、ピアニストの八城一夫は、明確で硬質なタッチが清々しい。日本人ジャズであるが故の、ファンクネスが希薄、端正で素性の良いピアノの音が特徴で、ピュアで自然な音でスイングする。日本人ジャズ・ピアニストに共通の個性が既にこの時代に現れていたことに、ちょっと驚く。1974年の録音であることを知らなければ、現代の、今の時代の日本人ジャズ・ピアニストのリーダー盤と紹介されても、すんなり納得する様な音である。

選曲もジャズ者にとって楽しいものになっている。取り上げられているのはどれもスタンダードの名曲。ムーディーな雰囲気が素敵な「Stardust」「Manhattan」、スイング感が心地良い「St. Thomas」「Stella by Starlight」、雰囲気のある「Love Letters」「Come Rain Come Shine」等々、スタンダードの名曲が良い雰囲気でアレンジされて、聴き応えがある。聴いていて、思わず口元が緩む。

1970年代、高級オーディオ評論家、菅野沖彦氏が録音された作品。40年ぶりくらいで聴き直した盤であるが、とにかく音が良い。スッキリとシンプルな音が素敵な録音である。楽器の音が素直にすんなり良く判る。変に音に個性が着いていないところが僕は気に入った。純ジャズには良い録音で、こういう音もありやな、と説得力のある録音である。
 
 
 
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2020年2月 1日 (土曜日)

テナー・サックス+弦楽四重奏

ジャズは様々なジャンルの音楽と融合する。他のジャンルの音楽はある特定の音楽ジャンルと融合することはあっても、ジャズの様に複数の音楽ジャンルと何の違和感も無く融合する音楽ジャンルは他に無い。ジャズと他の音楽ジャンルとの融合の歴史を振り返ると、まず1950年代にジャズとクラシック音楽との融合の流行があった。ジャズの融合の歴史の中で、一番歴史があるのは「クラシックとの融合」であろう。

Joshua Redman & Brooklyn Rider『Sun on Sand』(写真左)。ちなみにパーソネルは、ジャズのカルテットとして、Joshua Redman (ts), Scott Colley (b), Satoshi Takeishi 武石 聡 (ds)。弦楽四重奏の名前は「Brooklyn Rider」。弦楽四重奏のメンバーとして、Colin Jacobsen, Johnny Gandelsman (violin), Nicholas Cords (viola), Eric Jacobsen (cello)。2015年4月29,30日,5月1日NYCのSear Sound録音。

パーソネルを見渡して、この盤、異色の企画盤になる。ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽。アルバム全体の雰囲気として、ジャズらしいノリ・スリルと現代クラシックらしい荘厳さとがバランスよく融和している。パトリック・ジマーリのアレンジが実に効いている。ストリングスの一糸乱れぬ精緻なアンサンブルをバックに、メインストリーム・ジャズな、即興&自由度の高いカルテット演奏が展開される。この「一糸乱れぬ精緻」と「即興&自由度の高い」の対比がこの盤の「肝」である。
 
 
Sun-on-sand  
 
 
ジョシュア・レッドマンのテナーについては、正統派で端正で品行方正。ジャズ・テナーのモデルにしても良い位の「品行方正」さで、メインストリーム・ジャズの中で演奏すると、余りの端正さが故に、余りに優等生的なテナーで、ちょっと面白く無い雰囲気が漂うことがある。逆に、今回の「ジャズとクラシック(弦楽四重奏)が織りなす融合音楽」の様に、異種格闘技風セッションにおいて、ジョシュアのテナーがその個性を最大限に発揮する傾向にある。

この盤でのジョシュアのテナー・サックスは良く鳴り、流麗にアドリブ・フレーズを吹き上げる。ジョシュアのテナー・サックスの一番良いところが、この盤で溢れている。この盤の一番の注目ポイントは、このジョシュアのテナーの伸び伸びとしたブロウ。このジョシュアの即興&自由度の高い「ジャズらしいサテナー」を、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルで弦楽四重奏がガッチリと受け止めている。

とにかく、ジョシュアのテナーが良い意味で「目立つ」。そして、弦楽四重奏の演奏が「耳につかない」。というのも、弦楽四重奏が一糸乱れぬ精緻なアンサンブルでありながら、リズミカルなビートに乗せたジャジーなフレーズを連発しているのだ。そんなジャジーな弦楽四重奏のお陰で、ジョシュアのテナーの良いところが「目立つ」。この企画盤、実は、ジョシュアのテナー・サックスを愛でるのに最適なアルバムである。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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