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2018年10月 9日 (火曜日)

品の良い端正なソウルジャズ盤

ブルーノート・レーベルは硬派なジャズ・レーベルだと思われているが、実はそれぞれの時代のトレンドをいち早く押さえた、先取的なレーベルでもある。1960年代後半からのジャズ・ファンク、1970年代「ニューノート」の異名で知られる70年代のフュージョンの時代にユニークな盤がてんこ盛りである。同時代のソウルやファンクとも共鳴する新しい感覚のブラック・ミュージックを積極的にアルバム化している。

ということで、ファンキーなソウルジャズ盤である。The Three Sounds『Soul Symphony』(写真左)。1969年8月の録音。ブルーノートの4341番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Henry Franklin (b), Carl Burnett (ds) のピアノ・トリオが「The Three Sounds」、このピアノ・トリオをメインに、David Duke, Art Maebe (french horn), Buddy Collette (fl), Fred Robinson (g), Alan Estes (perc)が客演する。

ブルーノートの栄えある1500番台のラスト、1600番で鳴り物入りレビューした、ジーン・ハリス(写真右)率いるピアノ・トリオ「The Three Sounds」。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオとして鳴らしてきたスリーサウンズが、なんとこってこてファンキーなソウルジャズに変身している。僕はこの盤を初めて聴いた時、スリー・サウンズとは全く判らなかった。アルバム・ジャケットを見てビックリ。
 

Soul_symphony

 
ファンキーなソウルジャズとは言っても、1969年なのでまだまだ端正で品の良いソウルジャズである。ストリングスが入ったり、コーラスが入ったりで、アレンジも豪華。それでも、ファンクネスはタップリ、オフビート芳しい、ユルユルなノリのミッドテンポ。思わず、ゆらゆらと体が揺れる。品の良い端正なソウルジャズ。そんなジャズロックをアコースティックなピアノ・トリオをメインにやるのだから、その音はかなりユニーク。

タイトル曲の「Soul Symphony」は26分越えの大作。端正で品の良いソウルジャズなんが、演奏の途中、何度もファンキーな転調を経て、バラエティーに富んだ展開が素晴らしい。そんなソウルジャズな演奏がてんこ盛りなんだが、ピアノ・トリオがしっかりとジャジーな音を展開させているところが良い。そこが「品の良い」という印象を受けるところなんだと思う。

じっくり聴くも良し、ながらで聴くも良し、とっても聴き心地の良いソウルジャズです。アルバム・ジャケットは、1969年のリリースなんで、もはやブルーノートらしさは全く無い「ふぁんき〜」なデザインなんだが、このデザインに怯んではならない。我が国の硬派なジャズ者の方々からは忌み嫌われるソウルジャズですが、決して俗っぽくはありません。中身の音は素性の良いソウルジャズです。

 
 

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2018年9月 2日 (日曜日)

1970年代の先駆け的ギタリスト

昨日から涼しくなった千葉県北西部地方。今日などは半袖でじっとしていると肌寒いくらいだ。台風が西日本に接近しつつあるので、天気は良くないのだが、これだけ涼しくなると、ジャズ盤鑑賞の幅も広がるし、ジャズを聴いていても汗ばむことも無い。今年の夏は酷暑続きだったので、ジャズ鑑賞も辛かったですね。というか、まず体調が思わしく無い日が多かったなあ。

そこで、ジャズ・ギターである。熱く弾きまくるジャズ・ギター、クールに弾き進めるジャズ・ギター。様々なパターンのジャズ・ギターを聴き比べたくなる。ジャズ・ギターは、エレギとそのアタッチメントの進歩によって、表現の幅が広がった。今ではホーン楽器と変わらない、音のバリエーションと強弱を手に入れている。

そんなジャズ・ギター、ギタリストによって個性が明らかに異なるので、聴いていて楽しい。今日は、George Benson『Giblet Gravy』(写真左)を選盤。1968年2月の録音。1968年の録音とは言え、曲毎にミュージシャンを選んで録音する、という、1970年代の録音手法が取られていて、録音時、リーダー以外、パーマネントなメンバーは存在しない。
 

Giblet_gravy

 
それでもパーソネルを見渡すと、Eric Gale (g), Herbie Hancock (p), Ron Carter, Bob Cranshaw (b), Billy Cobham (ds) らの名前が確認出来て、ジャズロック〜クロスオーバーな音が顕著である。フュージョン・ジャズ全盛時にはソフト&メロウなフュージョン・ギターがウリのベンソンではあるが、この盤が録音されたのは1968年。まだまだバリバリに弾きまくっている。

そう、ベンソンは1960年代後半はソウル・ジャズ、ラテン・ジャズに大活躍。かなりハードなエレギに惚れ惚れする。これだけハードだとジャズよりはちょっとロックに寄っている雰囲気。聴き応え抜群である。特に、アドリブ展開におけるグルーヴ感とドライブ感が半端ない。このエレギの音を聴くと、当時、マイルスがセッションに呼んだ理由が理解できるような気がする。

ジャケ写を見れば時代を感じるんだが、若き日のギラギラしたベンソンが実に精悍。この頃のベンソンについては、単にウエス・モンゴメリーの後継者という切り口では無く、ハードバップを越え1970年代への橋渡しとなる、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズなエレギの先駆者という位置づけで、もっと語られるべきギタリストであると僕は思う。

 
 

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2018年7月 5日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・123

ECMレーベルは実にユニークなレーベル。1969年の設立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。ビ・バップやハードバップの影響を全く感じさせない、ポスト・モダンな「ニュー・ジャズ」を録音し、アルバムをリリースする。

Terje Rypdal『Whenever I Seem To Be Far Away』(写真左)。1974年の作品。ECMの1045番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g), Sveinung Hovensjø (b), Pete Knutsen (mellotron, el-p), Odd Ulleberg (French horn), Jon Christensen (per)。ギター、キーボードにベースとドラムがリズム&ビートを担うカルテット構成にフレンチ・ホルンとシンフォニーが絡む。

リーダーでギター担当のテリエ・リピダルはノルウェーのギタリスト兼作曲家。ビ・バップやハードバップの影響が皆無な、ニュー・ジャズを聴かせてくれる。ギター・プレイのメインは「アブストラクト&フリー」。判り易いフレーズを繰り出す、従来のジャズ・ギターとは正反対の内容。明快に「欧州ジャズ」な雰囲気をバッチリ聴かせてくれる。
 

Whenever_i_seem_to_be_far_away  

 
しかし、このアルバムはそんなリピダルの個性を越えた、実にユニークな内容に思わず耳をそばだてる。聴けば判るのだが、これって「プログレッシブ・ロック」。3曲目「Whenever I seem to be far away」では、クラリネットやオーボエ、弦楽アンサンブルが絡んでくる辺り、そして、暴力的でもある、流麗で高テクニックなエレギと合わせて、まるで「キング・クリムゾン」である。

1曲目の「Silver Bird is Heading for the Sun」では、メロトロンが大活躍。ジャズにメロトロン。これにはビックリするやら、嬉しいやら。ここまでくると、リピダル、明らかに当時の「プログレッシブ・ロック」を意識しているに違いない。しかしながら、プログレをやっても、アドリブの展開などは複雑かつ高テクニックで、その演奏内容は明らかにジャズ。

プログレッシブ・ジャズロックというか、プログレッシブ・フュージョンな内容は、1970年代のプログレ者からすると、実に興味深い。テリエ・リピダルのギターも相当に「エグい」。「アブストラクト&フリー」に行こうとするところを押しとどめ、限りなくフリーに近い、複雑にメロディアスなフレーズを連発していて聴き応えがある。内藤忠行の手になる、美しいジャケット写真も素晴らしい。明らかにECMレーベルらしい内容。好盤である。

 
 

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2018年6月29日 (金曜日)

この季節にピッタリの爽快感

1970年代後半、ジャズを聴き始めた訳だが、硬派なジャズ者は「純ジャズ」がメイン。当時、キワモノとされたクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズなど以ての外で、口が滑って「クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズが好き」などと言おうものなら、硬派なジャズ者の方々からボッコボコに反論された。しかし、である。

Donald Byrd『Places & Spaces』(写真左)。1975年のリリース。ビ・バップ時代から活躍してきたドナルド・バードが、43歳の時にリリースした、クロスオーバー・ジャズなアルバムである。ビ・バップ〜ハード・バップ時代に活躍してきたトランペッターが、ファンクネス豊かなクロスオーバー・ジャズに大変身。当時は、日和ったとか、寝返ったとか、散々、叩かれた様である。

じっくり聴けば、この盤が俗っぽくて聴くに値しない、軟弱なジャズ盤だという評価は当たらない、ということが良く判る。とても爽やかで躍動感のあるアレンジの下で、活き活きとしたバードのトランペットが響き渡る。ビートは8ビート、ラリー・マイゼルの高揚感たっぷりのサウンドがメイン。“Sky High Production”という形容がピッタリの爽やかファンキーなフュージョン盤。
 

Places_and_spaces

 
この盤はブルーノートからのリリース。これまた驚きだった。ブルーノートと言えば、正統な「純ジャズ」がメイン。が、1970年代のブルーノート盤は、後のクラブ・シーンでサンプリングのネタ元として大いに活用される、ファンクネス豊かな、ビートの効いたジャズ・ファンクな内容のものを多くリリースしている。ドナルド・バードはいち早く、このファンクネス豊かな、ビートの効いたジャズ・ファンク〜クロスオーバー・ジャズに鞍替えし、成功を収めている。

日本では「キワモノ」扱いされて、この様なジャズ・ファンクな盤は徹底的に排除されたように記憶している。しかし、聴けば判るのだが、チャック・レイニーとハーヴィー・メイソンのリズム隊がドライブ感抜群にビートを繰り出し、フロントのバードのトランペットが乱舞する。なかなかの内容のクロスオーバー・ファンクなのだ。

聴かず嫌いは良く無い。メロディアスで爽快感抜群、ファンクネス豊かでパンチの効いた8ビート。芳しいメロディと清々しいフレーズ。大人のクロスオーバー・ジャズ。青空に浮かぶ飛行機と雲の動きをコマ落としでとらえたジャケットも爽快で、アルバムの中身の内容を如実に表している。この季節にピッタリの爽快感がとても心地良い。

 
 

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2018年6月27日 (水曜日)

明かにクロスオーバー・ジャズ

1970年代後半から80年代前半、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズについては「キワモノ」扱いであったが故、情報不足からリリースされた重要作を見過ごし、正しく評価出来なかった時代が続いた。というか、レコード会社が売れそうな盤はリリースするが、そうでもなさそうな盤は無視。それも個人的な感覚で「売れる、売れない」を判断していたのだから困る。

Tom Scott & L.A.Express『Tom Cat』(写真左)。1975年のリリース。ちなみにパーソネルは、Tom Scott (sax), Robben Ford (g), Max Bennett (b), John Guerin (ds), Larry Nash (key)。このグループの存在は知っていたが、このアルバムを手にして、音を聴くことが出来たのは、21世紀に入ってからだ。AmazonとかHMVで外盤がネットで容易に入手出来る様になってからである。

トム・スコットのサックスはスムース・ジャズとして聴いたのが始めて。このL.A.Express名義で、クロスオーバー・ジャズど真ん中の、エモーショナルでハイテンションなサックスを吹いていたなんて知らなかった。このL.A.Expressでのトム・スコットのサックスは凄い。テクニック優秀、エモーショナルではあるが破綻することは無い。活き活きとポジティヴに明るいサックスを吹きまくる。
 

Tom_cat  

 
ベースのマックス・ベネットは、ノリノリのファンキー・ジャズ。こってこてファンキーではあるが、決して下品にはならない。典雅に小粋にファンクネスを振り撒きながら、堅実なベースラインを刻んでいく。そこに、疾走感溢れる、端正でノリの良い、ョン・ゲランのドラムがビートの底を支える。鉄壁のクロスオーバーなリズム・セクション。

ラリー・ナッシュのキーボードがお洒落だ。特にアープ・シンセの使い方が小粋で格好良い。純ジャズでは無い、と言ってロックでも無い。ジャジーなノリではあるが、ロックの様に明朗なシンセのフレーズが今の耳にも新しい。そして、ロベン・フォードのギターが明らかに「クロスオーバー」。ノリの良い、ロックの様であるが、フレーズの底は明らかにジャジー。8ビートではあるが、きめ細かくスインギー。

それぞれの楽器が明らかに「クロスオーバー・ジャズ」していて、ノリはジャジー。後のフュージョン・ジャズとはちょっと違う、明かにクロスオーバー・ジャズな演奏に、何度聴いてワクワクする。疾走感溢れる、明朗ファンキーなクロスオーバー・ジャズは他にありそうで無い。さすが米国西海岸。クロスオーバー・ジャズをしても、明らかに「西海岸」の音が眩しい。

 
 

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2018年4月23日 (月曜日)

ロックとジャズとR&Bと

ジャズの合間の耳休めには、あんまりジャズからかけ離れない様にしている。70年代ロックを本格的に聴く時は、初めにジャズは聴かない。いきなり70年代ロックで入る。ジャズを聴いている合間の耳休めは、ジャズからあんまり離れない。クロスオーバー系のロックや、フュージョン系のロックを聴く。

1960年代終わり頃から1970年代にかけて、ブラス・ロックなるジャンルがあった。フロント楽器が金管楽器。3〜4管編成で、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニーが特徴。バックのリズム・セクションがロック系のエレギ、エレベ、そしてドラム。このブラス・ロックをベースにジャズとR&Bの要素を織り交ぜた、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックがあった。Blood, Sweat & Tears(以降、BS&Tと略)である。

Blood, Sweat & Tears『Child Is Father to the Man』(写真)。邦題『子供は人類の父である』。1968年のリリース。ちなみに、当時のBS&Tのメンバーを並べてみると、Randy Brecker (tp, flh), Bobby Colomby (ds, perc), Jim Fielder (b), Dick Halligan (tb), Steve Katz (g), Al Kooper (key), Fred Lipsius (as), Jerry Weiss (tp, flh)。ランディー・ブレッカーがおる。アル・クーパーがおる。フロントのブラスが4管。いわゆる「ブラス・ロック」の編成である。
 

Child_is_father_to_the_man  

 
音の味付けは「R&Bとジャズ」。ブラス・ロックの音の傾向は「クロスオーバー・ジャズ」。しかし、リズム&ビートはロック。このBS&Tの音世界はシカゴと並んで、ロックとジャズとR&Bのクロスオーバー・ミュージックの創始であった。ロック基調な分、ファンクネスは控えめだが、ブルージーな雰囲気は色濃く、フレーズはシンプルで判り易い。ボーカルもクセの無いストレートな歌唱で、これまた判り易い。

1968年のリリースという背景もあって、当時のミュージック・シーンの混沌とした感じやサイケデリックな音が、ところどころ顔を出す。この辺が純粋なジャズと全く異なるところで、ヒッピー・ムーブメントの影響をダイレクトに感じるのだ。アルバム・ジャケットを見てもそれを強く感じる。

アル・クーパーのボーカルが魅力的。明らかにロックのボーカルで、ジャズの様にこってこてファンキーでウェットな歌唱にはならない。しかし、このアルバム、聴くべきは「ブラス・ロック」の真髄の部分。洒落たホーンアレンジ、ジャジーなアドリブ展開、重厚なブラスのユニゾン&ハーモニー。「ブラス・ロック」は、ジャズの合間の耳休めに最適な音楽ジャンルのひとつである。

 
 

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2018年4月 5日 (木曜日)

クロスオーバーは奥が深い。

1970年前半から中盤にかけて、ジャズの最先端のトレンドは「ジャズとロックの融合」。誰が名付けたか「クロスオーバー・ジャズ」。リズムの基本は「8ビート」。ギターはエレギ、キーボードはエレピ、ベースはエレベ。つまりは電気楽器がメインの、ロックの手法を前面に押し出したジャズ。どこがジャズなのか。即興演奏の存在が「ジャズ」。

The Eleventh House featuaring Larry Coryell『Aspects』(写真左)。クロスオーバー・ジャズの典型的な演奏例がギッシリ詰まった好盤である。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), Terumasa Hino (tp, flh), Mike Mandel (key), John Lee (b), Gerry Brown (ds)。おお、日本が誇るトランペッター、日野皓正が参加している。

冒頭の「Kowloon Jag」のイントロのエレギのフレーズを聴いたら、この盤ってハードロックの盤だっけ、と思わず、ジャケットを再確認する。イントロのエレギの歪んだハードで硬質なエレギの音は紛れもなく「ロック」のエレギの音そのもの。これが、高速8ビートに乗って、超絶技巧なテクニックを駆使して、ラリー・コリエルがエレギを弾きまくる。
 

Aspects_1

 
うかっと聴いていると、この盤、ハードロックやん、と思うんだが、聴き込み出すと明らかにロックとは違うことに気付く。まず、コードが複雑。そして、ビートが複雑。ロックをシンプルとすると、ジャズはコンプレックス。そして、必ず、即興演奏的なインプロビゼーションが展開される。これはロックには無いもの。勢い演奏時間は長くなる。大体5〜8分位が平均だろうか。

ゲストとして、ブレッカー兄弟や泣きのサンボーン、パーカッションのムトゥーメなどが参加して、演奏の底にそこはかとなく、濃厚なファンクネスが横たわる。なんとなくブルージーでなんとなくファンキーな要素が見え隠れする。この辺がこの盤の演奏が「ジャズ」である所以。そして、それをバックで支えるジョン・リーのベースとゲイリー・ブラウンのドラムの「超絶技巧な高速8ビート」がとても素晴らしい。

何の戸惑いもなく、ハードロック風のプレイに真摯に取り組むコリエルのエレギが最大の聴きもの。そして、超絶技巧な高速8ビート。これが「クロスオーバー・ジャズ」。優れたクロスオーバー・ジャズは今の耳で聴いても新鮮に響き、聴き込めば聴き込むほど、様々な仕掛けや音色に気がつく。クロスオーバー・ジャズって意外と奥が深いのだ。

 
 

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2018年3月25日 (日曜日)

ECMの「音の迷宮」の奥は深い

ジャズ盤を聴くのに、ガイド役として、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用することは大変大切なことではある。しかし、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介される盤は、それぞれ結構似通っている。記事を担当した評論家の手抜きなのか、はたまた、編集に携わった編集者の陰謀なのか、確かにジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されるジャズ盤は「聴く価値あり」だが、「聴く価値あり」のジャズ盤はそれだけではない。

ジャズ盤を聴き進めて行くと、このジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を活用する方法がどこかで行き詰まる。すると、自分で聴く価値のある盤を探すことが必要なのに気付く。やはり、ジャズ盤は自分の耳で聴いて、自分の耳で、自分にとっての「良し悪し」を判断することが一番大切なことに気付く。

Mal Waldron『The Call』(写真左)。1971年2月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (el-p), Jimmy Jackson (org), Eberhard Weber (el-b), Fred Braceful (ds, perc)。ECM傘下のレーベル JAPOからのリリース。さすがECM系の録音。これは珍しい。骨太硬派のピアニスト、マル・ウォルドロンが全編エレピを弾いた作品である。
 

The_call_2

 
僕はこの盤の存在については、ECMレーベルのカタログを紐解いていて発見した。この盤について、その評論や感想が書かれたジャズ盤紹介本やジャズ雑誌を見たことが無い。しかも、あの硬派で骨太な硬質ピアニスト、マル・ウォルドロンである。そんなマルが、こともあろうにエレピを全編に渡って弾きまくるのだ。許せない、と硬派のジャズ者の方々が憤慨して、この盤を亡きものにした感覚も判らなくは無い。

内容的には録音当時、ジャズ界の先端のトレンドのひとつだった「エレジャズ」。いわゆるジャズロックの雰囲気が大勢を占め、後半の途中あたりから、アブストラクト〜フリーな演奏が展開される。後半のアブストラクト〜フリーな演奏は納得できるが、欧州ジャズの環境下でのジャズロックはちょっとした驚き。しかし、それなりにまとまっていて今の耳にも十分に耐えます。特にマルのエレピについては合格点。エレピの特徴をよく掴んでいて、聴き応えがあります。

現代のスピリチュアル・ジャズファンクに直結するマルのエレピ。バックのオルガン=エレベ=ドラムのリズム・セクションも良好で、こんなアルバムあったんや〜感が強い。アルバム・ジャケットも当時のデザイン・センスからすると突出していて、こういうアルバムをリリースするって、ECM恐るべし、である。実はECMレーベルには、こういう異端なジャズ盤がゴロゴロしている。ECMの「音の迷宮」の奥は深い。

 
 

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2018年3月16日 (金曜日)

ジャズの「最新の音」のひとつ

ブルーノート・レーベルは、ジャズ界最高のジャズ・レーベル。その充実したカタログ、アルバムの内容、そして歴史。ジャズ・レーベルの総合力第一位である。1970年代後半、一旦活動を停止したが、1980年代後半、純ジャズ復古のムーヴメントを受けて復活。以降、安定した活動を継続し、今に至る。

ブルーノート・レーベルの特徴は、ジャズのその時代その時代の演奏のスタイルやトレンドをいち早く察知し採用、それをしっかりと音に残す。そして、ジャズのその時代その時代の代表的ミュージシャンをいち早く発掘し、その若き時代の演奏をいち早く記録する。しかも、音が良い。伝説の録音技師・ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音がメインで、ブルーノート独特の音がある。これが、また良い。

そんなブルーノート、現在でも活発に活動していて、ジャズ界で重要な位置を占める演奏のトレンドの採用と録音、新しい才能のいち早い発掘と録音が得意中の得意。ブルーノートの昔ながらの特徴・個性を21世紀になった今でも保持しているのだ。これって素晴らしいことだ。復活後の社長にブルース・ランドヴァルを迎え入れ、現在の社長はドン・ウォズ。
 

Parking_lot_symphony

 
Trombone Shorty『Parking Lot Symphony』(写真左)。2017年5月のリリース。トロンボーンが主役、トロンボーン・ショーティーのリーダー作。トロンボーン・ショーティー、本名はトロイ・アンドリュース。ニューオーリンズ出身の新世代トロンボーン奏者。トロンボーンの腕前は天下一品。名前の通りトロンボーンをメインに、トランペット、ヴォーカル、ラップもこなす。

この盤はとても魅力的。基本はジャズ・ファンク。トロンボーンをメインとしたブラスのユニゾン&ハーモニーは、とっても良くアレンジされたファンキー・ジャズの響き。ボーカルは明らかにソウル。トランペットをメインに据えたアドリブ展開は従来からの純ジャズ。これが実に新しい響きを宿していて感心する。ゆったりとしたテンポのバラード調な曲は意外にロック・テイスト。要所要所に配される女性コーラスはスピリチュアルな響き。

つまりは今までのジャズの歴史を振り返って、その時代その時代のジャズの要素をしっかりと解釈して、今のジャズに応用している。見事だ。一言で言うと「R&B、ソウル、ファンク、ロック、ヒップホップなどさまざまなジャンルを融合したブラス・サウンド」。そして、ジャズの「今」を反映したアレンジと演奏内容。

 
 

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2018年3月15日 (木曜日)

これも「逆・ジャケ買い」な盤

ジャズ盤には「これは」と目を見張るほどの格好良いジャケットがある。しかし、逆に「このジャケットはな〜、買えんな〜」という劣悪なジャケットもある。これは得てして、かなりの確率で内容も悪い。しかし、劣悪では無い、デザイン的にも「アリ」なんだが、あまりに奇抜なデザインで、これはな〜、という盤もある。

僕はこういう盤を「逆・ジャケ買い」と呼んでいる。この「逆ジャケ買い」盤については、購入に至るまでに相当の努力を必要とする(笑)。そういう「逆・ジャケ買い」盤を、昨日、Ramsey Lewis『Salongo』をご紹介した。ん?ラムゼイ・ルイス? そう言えば、ラムゼイ・ルイスと言えば、まだあるぞ。あるある。凄いのが・・・(笑)。

これである。Ramsey Lewis『Sun Goddess』(写真)。1974年のリリース。邦題『太陽の女神』。内容は明らかにエレクトリックがメインのジャズ・ファンクである。冒頭のタイトル曲は、Earth, Wind & Fire(いわゆる「アース」)との共演。ラムゼイ・ルイスのアースのリーダー、モーリス・ホワイトとは同じバンドで行動を共にした仲。思い切り、ファンクな内容に思わず、体が動く。
 

Sun_goddess_3

 
この盤でのジャズ・ファンクは、決して、重量級のファンクネスが鳴り響く訳ではない。この盤に響き渡るのは、趣味の良い、ちょっとライトなファンクネス。そして、トコトンまでジャズ・ファンクせずに、アドリブ展開の時のキーボードが、一昔前の「ファンキー・ジャズ」の雰囲気を湛えたフレーズを弾きまくったりするところが、絶妙にマッチする。

バンドの面々の演奏力を凄まじいものがある。ハットが疾走するグルーヴィーなリズム。限りなく爽快感溢れるカッティングギター。浮遊感ハンパない、ファンクネス溢れるシンセ。ファンキーで柔らかいコーラスが絡む、極上のメロウ感溢れるグルーヴ。そう、この盤のリズム&ビートは、明確に「グルーヴィー」。この流麗でライトなグルーヴ感が心地良い。

しかし、この盤のジャケットは凄い。どうやったら、こういうデザインになるのか。少なくともインパクトはでかい。このジャケットでは、内容が「ジャズ・ファンク」だとは思わないだろう。しかし、この盤、当時のビルボードのブラックチャートで1位、ポップチャートでも12位というヒットを記録したのだがら、「逆・ジャケ買い」盤は恐ろしい(笑)。

 
 

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