2023年11月29日 (水曜日)

ホールズワースの個性全開

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のリーダー作の落穂拾い。というか、当ブログ記事として扱っていなかった、ホールズワースのリーダー作を聴き直している。見直してみたら、ホールズワースのリーダー作の半分以上が、当ブログの記事として扱っていない。思わず、計画立てての聴き直しである。

Allan Holdsworth『Metal Fatigue』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Paul Williams (vo, tracks 1, 4), Paul Korda (vo, track 6), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds, tracks 1–4), Gary Husband (ds, track 5), "Mac Hine" (drum machine, track 6), Jimmy Johnson (b, tracks 1–4, 6), Gary Willis (b, track 5)。基本的に知らない名前ばかり(笑)。

ホールズワースの4枚目のリーダー作。まだ、一部では「悪名高い」SynthAxe(シンタックス)には手を染めていない、純粋にエレギ一本で勝負している。しかも、ホールズワースのエレギが「捻れに捻れている」。変態拗れ(ねじれ)エレギと形容されるホールズワースのエレギだが、この盤では、とても気持よく、清々しいばかりに「捻れている」(笑)。
 

Allan-holdsworthmetal-fatigue  

 
ハーモナイザーとディストーションを効かせたヘビーなサウンドがメインで、曲によってはボーカルが入っていて、どこか「英国プログレッシヴ・ロック(プログレ)」風な響きがユニーク。さすが、ジャズとロックの境目が曖昧な英国クロスオーバー+フュージョンである。それでも、ホールズワースの変態捻れギターは、当時の英国プログレには存在しないので、これは「プログレ」ではないな、ということになる。

しかし、ホールズワースのエレギは気持ちよく捻れている。アタッチメントの選び方、使い方が上手くて、ホールズワースにしか出せない音がとんでもなく個性的。収録された曲それぞれがなかなかの出来で、様々な志向&嗜好がてんこ盛りな内容にも関わらず、曲の良さ、という点でアルバム全体に統一感がある不思議なアルバムである。

3つのセッションを合わせて作成したアルバム。色々な音の要素が散りばめられている「万華鏡」の様な内容だが、ホールズワーズの変態捻れエレギの個性は、それぞれの曲の中で一貫していて、どこから聴いても「ホールズワースしか作れない」アルバムに仕上がっているところが、このアルバムの「肝」。ホールズワースの名盤の一枚。
 
 

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2023年9月27日 (水曜日)

「CASIOPEA-P4」の2nd.盤

日本のフュージョン・ジャズ(和フュージョン・ジャズ)の名盤・好盤を聴き直していると、必ず、ぶち当たるフュージョン・ジャズのグループが2つある。ひとつは、1977年結成の「CACIOPEA(カシオペア)」、もうひとつは、1976年結成の「T-SQUARE(ティー・スクエア)」。和フュージョン・ジャズの老舗中の2つの老舗バンド。

その老舗バンドのひとつ、カシオペアは、バリバリ硬派な、思いっ切りハイ・テクニックな、疾走感と切れ味抜群のフュージョン・バンドだった。デビューは1977年。幾度かのメンバー変遷と2006年から2011年までの活動休止期間を経て、第1期〜第2期「CACIOPEA」、第3期「CASIOPEA 3rd」、第4期「CASIOPEA-P4」とバンド名をマイナーチェンジしながら、現在も活動中。

CASIOPEA-P4『New Beginning(Live at EX THEATER ROPPONGI Dec.11.2022)』(写真左)。2022年12月11日、EX THEATER ROPPONGIでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 大高清美 (key), 鳴瀬喜博 (b), 今井義頼(ds)。CASIOPEA-P4名義の2枚目のアルバムになる。

もともと、カシオペアは、フロント楽器がギターで、バックにリズム・セクションという編成で、長らくギター・サウンドが前面に押し出された「ギター・バンド」志向なフュージョン・ミュージックが身上だった。
 

Casiopeap4_new-beginning

 
が、CASIOPEA-P4になって、野呂のギターはそのままだが、大高のキーボードがフロントの一定の割合をコンスタントに担う様なサウンド構成に変化している。今回のこのライヴ盤は、そんなギター+キーボードが双頭フロントのバリバリ硬派な、思いっ切りハイ・テクニックな、疾走感と切れ味抜群のフュージョン・バンドのパフォーマンスが、CD2枚組の中にギッシリ詰まっている。

CASIOPEA-P4名義の初アルバム『NEW TOPICS』では、キーボードがかなり前面に出ていた印象があるが、このライヴ盤では、イーブン・イーブンの割合になっていて、バランスが取れている印象。

1970年代のプログレッシブ・ロック、もしくは、キーボードがメインのジャズ・ロックの様な音志向に変化はしたが、このライヴ盤を聴く限り、デビュー当時のバンドのキャッチ・フレーズである「スリル・スピード・スーパーテクニック」はしっかり踏襲されている。

逆に、キーボードが前面に出たことによって、アダルト・オリエンテッドな雰囲気が濃厚になって、大人のフュージョン・ジャズという雰囲気がとても魅力的。まだまだ、我が国における、最高峰のエレ・ジャズ・バンドの位置をキープしている。僕はこのCASIOPEA-P4の音を好ましく聴いた。
 
 

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2023年9月26日 (火曜日)

T-SQUARE45周年記念アルバム

最近、日本のフュージョン・ジャズ(和フュージョン・ジャズ)の名盤・好盤を聴き直しているのだが、意外と内容充実の盤が多い。演奏テクニックは申し分無く、歌心もあり、オリジナルの楽曲もメロディーラインの魅力的な佳曲ばかりで、十分、世界と渡り合えるレベルのアルバムを量産していたことを再認識している。

そんな和フュージョンの名盤・好盤を聴き直していくと、必ず、ぶち当たるフュージョン・ジャズのグループが2つある。ひとつは、1977年結成の「CACIOPEA(カシオペア)」、もうひとつは、1976年結成の「T-SQUARE(ティー・スクエア)」。和フュージョン・ジャズの老舗中の2つの老舗バンド。フュージョン・バンド・ブームの中、この2つのグループで人気を二分して大いに盛り上がっていた。

T-SQUARE『Vento De Felicidade 〜しあわせの風〜』(写真左)。2023年5月31日のリリース。T-SQUARE45周年記念アルバム。現メンバーの伊東たけしと坂東慧に加え、歴代のメンバーの中から、安藤正容、河野啓三、仙波清彦、久米大作、田中豊雪、長谷部徹、則竹裕之、須藤満、本田雅人、松本圭司、宮崎隆睦、サポート・メンバーの田中晋吾、白井アキト、外園一馬、山崎千裕が顔を揃えている。加えて、ゲストとして、渡辺香津美と鳥山雄司、TOKUが参加。
 

Tsquarevento-de-felicidade

 
『WISH』では、確実にスムース・ジャズ化したT-SQUARE。アルバムの出来はそつなく優秀、よく聴けば、T-SQUAREらしさは押さえられている。しかし、今回の「スムース・ジャズ志向」の耳当たりの良いサウンドは、恐らく「賛否両論」だろう、と感じた。ポップス度、ロック志向が強かったサウンドが、一気にスムース・ジャズ化したのだから無理は無い。

以前は「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」とは言っても、ジャズ度はほどよく漂い、演奏のフレーズには、どこかジャズ・ライクな捻りや「引っ掛かり」があったりして、ポップでロックな雰囲気はあるが、基本的にはフュージョン・ジャズの音志向を貫いていたと思う。と思っていたら、この最新盤では、そんな従来からのT-SQUAREサウンドが戻って来ている。

爽快感に溢れた、落ち着いた雰囲気の、大人の「ポップでロックなフュージョン・ジャズ」、大人のT-SQUAREサウンドが、実に心地良く響いてくる。従来からのT-SQUAREサウンドが戻って来て、安心して聴ける、T-SQUARE45周年記念アルバム。もう結成から45年経ったなんて思えない、フレッシュで若々しい明るいサウンドが、とても気持ち良い。気分爽快な和フュージョン・ジャズ盤である。
 
 

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2023年9月11日 (月曜日)

ジャズロック志向にロックオン

ハードバップ時代に、彗星の如く現れたトランペットの若き天才、リー・モーガン。1956年、初リーダー作『Indeed!』でデビューしたのが、なんと弱冠18歳。そしてこの初リーダー作が素晴らしい出来。以来、人気トランペッターとして第一線を走ってきたモーガン。1960年代の「ジャズの多様化」の時代は、22歳〜31歳の若手だが、彼のプレイは既に成熟し完成されていた。

Lee Morgan『The Rumproller』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4199番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Ronnie Mathews (p), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモーガンのトランペットとジョーヘンのウネウネ捻れモードのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

編成はオーソドックス。奇をてらったところが無いのはモーガンのリーダー作の良いところ。録音年は1965年。ジャズは多様化の時代のピーク。前作『Search for the New Land』で、モーガン流のモード・ジャズを確立した訳だが、今回の『The Rumproller』は、前々作『The Sidewinder』の内容に戻している。
 

Lee-morganthe-rumproller

 
冒頭のタイトル曲「The Rumproller」は、怒濤のジャズ・ロック。大ヒット曲「The Sidewinder」に比肩するファンキーでロックな出来。以降、モード有り、ラテン〜ボッサ有り、リリカルなミュートによるバラード有り、とバラエティーに富んだ内容に仕上がっている。この辺も大ヒット盤『The Sidewinder』を踏襲している。

この頃のモーガンは「ジャズ多様化の時代」の中で、どの方向に自らの音志向を持っていこうと、いろいろ迷っていた時代だったのではなかろうか。そして、この『The Rumproller』で、ジャズ・ロックをベースに定め、ジャズ・ロック志向の演奏の中で、モーダルなアドリブや、こってこてハードバップなフレーズなど、ジャズ・トランペットの演奏トレンドや演奏志向を展開する、そういう方向に舵を定めたのでは、と感じている。

話題としては「Desert Moonlight」、我々日本人にとってはお馴染みの童謡「月の沙漠」のジャズ化が2曲目にある。なかなかのアレンジで、日本の童謡を上手くジャズ化している。こういう器用さもモーガンの良き個性。次作『The Gigolo』以降、ジャズロックをベースとした演奏志向を追求〜深化していく。モーガンの鯔背なトランペットが映えに映える。
 
 

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2023年9月 2日 (土曜日)

ショーター独自のエレ・ジャズ

ウェザー・リポート(Weather Report・WRと略)が解散したのが1986年。実にあっけない幕切れだった。

『Weather Report(1981)』のリリース後、ベースのジャコ・パストリアス、ドラマーのピーター・アースキンが抜けて、新生WRは明らかにザヴィヌル志向の音作り。アルバムを重ねる毎に、この「ザヴィヌル志向」は強くなり、ラストの『This Is This!』では、双頭リーダーの相棒、ショーターは名前を連ねているだけになっていた。

このWRのラスト『This Is This!』の音作りを聞けば、ザヴィヌルのサウンド志向は良く判る。ファンク・グルーヴを湛えたワールド・ミュージック志向なジャズロック。エスニック、アフリカンな響きが特徴。ザヴィヌルはWR解散後、ウェザー・アップデート、ザヴィヌル・シンジケートと次々にバンドを結成し、後期WRの影を追い続けた。

Wayne Shorter『Atlantis』(写真左)。1985年の録音・リリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts), Joseph Vitarelli (key), Michael Hoenig (syn), Yaron Gershovsky, Michiko Hill (ac-p), Larry Klein (el-b), Ralph Humphrey (ds), Alex Acuña (ds, perc), Lenny Castro (perc), Jim Walker (fl)。

このアルバムには有名ジャズマンはいない。ショーターのソロアルバムには、必ずと言って良いほどその名を連ねていた、盟友のハンコックすら無関係である。これには驚いた。セッションへの参加ジャズマンは沢山いるが、演奏全体の印象は「ショーターのワン・ホーン・アルバム」。全面的にショーターの作曲と、ショーターのサックスの音を聴くアルバムである。
 

Wayne-shorteratlantis

 
それほど、この盤は「ショーターで一杯」。それまでのショーターの「ニュー・ジャズ」における個性である、ブラジリアン、プログレ、コズミック、そして黒魔術。そんなショーターの嗜好が理路整然と反映されたショーターのソロ・アルバムである。

WRの双頭リーダーの片割れ、ウェイン・ショーターはどんなサウンドを追求するのか。この答えがこのショーターのリーダー作にある。実はこのアルバム、WRのラストの『This Is This!』の前にリリースされている。WRもショーターも同じレコード会社Columbia。どうして、こういう順番のリリースになったのか、当時は戸惑ったものだ。

それもそのはず、この『Atlantis』の音志向の基本はWR。それも、後期WRから「ザヴィヌル志向」を消して、当時のジャズ最先端、マイルスなどが追求していた、コンテンポラリーでメインストリームなエレ・ジャズの音志向を反映している。その音志向の中で、ショーター独自のモーダルなフレーズ、展開が散りばめられていて、これが実は「真の後期WRの音」じゃなかったのか、と強く感じるくらい、インパクトある音世界だった。

ショーターは自伝に「海(航海)を大きなテーマに全体を統べたハンコックの『処女航海』のように、コンセプチュアルなアルバムでもある」とショーターは自伝に書いているが、全体を聴き通してみて、ふ〜んそうなんか、と思うくらい。それでも、それぞれの演奏が実に充実していて、何回聴いても、聴く度に新しい発見があって、なかなか「飽きない」。

ショーターのリーダー作の中でも、エレ・ジャズの歴史の中でも地味な存在なアルバムだが、どうして、これ「エレ・ジャズの名盤」の1枚かと。とにかく聴いていて楽しいし心地良い。良いエレ・ジャズです。
 
 

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2023年8月27日 (日曜日)

ハバードのブルーノート最終作

ハイテクニックな伝説のトランペッターのフレディ・ハバード。22歳の若さで初リーダー作『Open Sesame』をリリースして以来、ブルーノート・レーベルには、鍛えられ、教えられ、一流のトランペッターに成長させてもらったのでは、と思っている。特に、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンには本当に世話になっただろう。

ハバードはテクニックが抜群に優れているがゆえ、どんなジャズでも、どんなスタイルでも吹き切ってしまう。いわゆる「器用貧乏」なところがあって、何でも出来るよ〜、というアプローチが見え隠れするところを、ライオンがグッと手綱を引いて、時にファンキー・ジャズ、時に、モード・ジャズの名盤をハバードに残させた。

また、ハバードには「目立ちたがり屋」なところがあって、先輩ジャズマンとのセッションでは前へ前へ出て、自分の凄さをアピールしようと頑張りすぎるところがある。逆に、仲の良い同輩や後輩ジャズマンとのセッションでは、一歩引いて、同輩・後輩を前に出させて、ハイテクニックなトラペットでしっかりサポートする「男気」ある振る舞いをするところもある。

ライオンは、こういったハバードの長所・短所をしっかり把握して、時にはセッションのメンバーの人選に工夫を凝らしたり、ハバードをしっかりコントロール出来る、リーダー肌の先輩ジャズマンを充てたり、ハバードのテクニックが映える選曲をしたり、とにかく、ハバードが持っている才能を良い方向に発揮出来るよう、様々なプロデュースをしていたように思う。

Freddie Hubbard『Blue Spirits』(写真左)。ブルーノートの4196番。フレディ・ハバードのブルーノートでの最終作である。ブルーノートとしては珍しく、3つのセッションから成る。
 

Freddie-hubbardblue-spirits

 
1965年2月19日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Clifford Jarvis (ds), Big Black (congas), Kiane Zawadi (euphonium)。

1965年2月26日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), James Spaulding (as, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Pete LaRoca (ds), Kiane Zawadi (euphonium)。

1966年3月5日のセッションは、Freddie Hubbard (tp), Joe Henderson (ts), Hosea Taylor (as, bassoon), Herbie Hancock (p, harpsichord), Reggie Workman (b), Elvin Jones (ds)。

パーソネルに一貫性が無いが、やっているジャズは「ジャズ・ロック志向」。ベッタベタなウケ狙いのジャズ・ロックでは無く、そこはブルーノート、「Corny(陳腐な)」なジャズロックは回避して、ファンキー志向のジャズロック、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロックを「格調高く」やっているのはさすが。

ただ、肝腎のハバードが、どの志向の、どのテイストのジャズロックで行くか、迷っている風でもあり、メンバーを取っ替え引っ替え、演奏の志向、スタイルも取っ替え引っ替え、大凡3種類やっている。ただ、一貫しているのは「メインストリームな純ジャズ志向のジャズロック」はしっかり根っこにあるので、アルバム全体の統一感はしっかり維持されている。さすが、ブルーノートである。

内容的にもチャレンジブルで、大衆受けをする俗っぽい8ビートのジャズロックは横に置いておいて、ファンクネスは全ての演奏の統一の味付けに使いつつ、モダンで硬派な8ビートの下、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロック、ハードバップなジャズロックを志向している。

ジャズロックに手を染め始めた頃のハバードが記録されている、聴いていて意外と面白いハバード盤。ハバードはこの盤を最後にブルーノートからアトランティックに移籍する。メインストリーム志向のブルーノートのハバードは過去のものとなり、途方も無くハイテクニックな持ち主がゆえ、イケイケではっちゃけた、何でもござれのハイテクニックなトランペッターとして弾けていく。
 
 

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2023年8月 7日 (月曜日)

ハンク・モブレーの『転換点』

ブルーノートの4100番台は、カタログ順に聴き進めていると意外と面白い。ジャズの多様化の時代、1950年代のハードバップが成熟し、そのハードバップな演奏に留まる者。逆に、ハードバップから新しい演奏トレンド、モード・ジャズやフリー・ジャズに進化する者、

はたまた、ジャズの大衆化に沿って、大衆のジャズに対するニーズに応えるべく、ファンキー&ソウル・ジャズにステップアップする者、それぞれ、苦心して、ジャズに対する新しいニーズに応えようとしているのが、実に見事に記録されている。

Hank Mobley『The Turnaround!』(写真左)。1963年3月7日(#2-3)、1965年2月4日(#1, 4-6)の2セッションからの収録。ブルーノートの4186番。

ちなみにパーソネルは以下の通り。1963年3月7日の録音は、Hank Mobley (ts) Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Philly Joe Jones (ds)。1965年2月4日の録音は、Hank Mobley (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。

1965年7月、LPでの初リリース時は全6曲。収録曲は以下の通り。

1. The Turnaround
2, East of the Village
3. The Good Life (Sacha Distel, Jack Reardon)
4. Straight Ahead
5. My Sin
6. Pat 'n' Chat
 

Hank-mobleythe-turnaround

 
ちなみにCDリイシュー時、1989年のCDリイシューはLP時の収録曲のシークエンスに対応しておらず、1963年のセッションが省略され、1965年2月5日のセッションが収録された。これは酷い。 
 
我が国では、2014年11月に限定SHM-CDでリリース。オリジナルのLPシーケンスに加え、『ストレート・ノー・フィルター』のCD版に収録されていた1963年のセッションの2曲、および1965年のセッションの残りのトラックで構成されている。この記事では、1965年7月、LPでの初リリース時の6曲シークエンスを前提に話を進める。

2曲目「East of the Village」と3曲目「The Good Life」が、クールなハードバップ志向。1963年3月7日の録音で、ドラムがフィリージョー。ピアノにハンコックがいるが、ドラムが「こってこてハードバップ」のフィリージョーだとモードに走る訳にはいかない。ただ、録音年が1963年だとすると、内容的には「手垢が付いた」と感じるところは否めない。

1曲目「The Turnaround」と、6曲目「Pat 'n' Chat」がジャズロック志向。アドリブにモードなフレーズが見え隠れ。4曲目「Straight Ahead」と5曲目「My Sin」がモード・ジャズ志向。モブレー固有のモーダルなテナーが聴ける。ただし、ちょっとやりにくそう。逆にフロントの相棒、ハバードは喜々としてモダールなフレーズを吹きまくっている。

タイトルの「The Turnaround」は「転換点」を意味するのか。とあれば、この盤は、モブレーの「転換点」を記録した番と解釈出来る。1963年3月7日のクールなハードバップ志向、1965年2月4日の録音のジャズロック&モード志向。この2つの録音の間にある「転換点」をこの盤で表現しているのか。

そうであれば、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンのアルバム企画力には脱帽。確かに、明らかに、この盤では、2つの「顔」のモブレーが確認出来る。
 
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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2023年7月28日 (金曜日)

過渡期のフレディ・ハバードです

フレディ・ハバードは、そのテクニックは卓越したものがあるのだが、如何せん、吹きすぎる盤が多い。メンバーによるのだが、自分から見て後輩のメンバーばかりの時は、アニキ風を吹かせるのか、後輩に花を持たせて、自分は抑制の効いた、余裕あるブロウを展開する。これは良い。優れたテクニックの持ち主でありながら、抑制の効いた、余裕あるブロウを披露するハバードは凄みすらある。

逆に、メンバーが同年代から先輩になる時は、とにかく目立ちたいのか、吹きに吹きまくる。「俺は凄いんだぞ」と言わんばかりに、ハバードの持つ卓越したテクニックを最大限に発揮して、五月蠅いくらいに吹きまくる。他のメンバーとのバランスや対比など、全くお構い無し。これは困る。優れたテクニックが、悪い印象に作用して、ただ五月蠅いトラペットになったりするのは困る。

Freddie Hubbard『High Blues Pressure』(写真左)。1967年11月13日の録音。アトランティック・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), James Spaulding (as, fl), Bennie Maupin (ts, fl), Herbie Lewis (b), Roman "Dog" Broadus (conga)、ここまでは全曲参加なんだが、Weldon Irvine (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2-6), Freddie Waits (ds, tracks 1-3), Louis Hayes (ds, tracks 4-6), Howard Johnson (bs, tuba, tracks 2-6), Kiane Zawadi (tb, euphonium, tracks 2-6)。

前作『Backlash』で転身したジャズロック路線を踏襲したアルバムになる。しかし、面白いのは曲が進むにつれて、ジャズロック色は薄れていって、後半は「新伝承派」のモード・ジャズになっている。ハバードのトランペットにはジャズロックが合うんだがなあ。この盤の時点では、まだハバードには迷いがあったように感じる。意外とハバードは他のジャズマンからの評価を気にするタイプだったのかもしれない。
 

Freddie-hubbardhigh-blues-pressure

 
前半のジャズロック志向の演奏は実に良い。ハバードのトランペットには8ビートが良い。卓越した速いフレーズう吹きまくるに、速い8ビートがちょうど良い。そして、ジャズロックの十八番である「テーマのユニゾン&ハーモニー」では、抑制が効いて余裕あるハバードの吹きっぷりが実に良い響き。やっぱり、ハバードのトランペットには「ジャズロック」が良く似合う。

後半のモード・ジャズも良い演奏なんだが、ジャズロックのハバードに比べて、ハバードの悪い癖、驚異的なテクニックで吹きすぎるハバードが目立ちに目立つので、折角のハバードの優秀テクニックのトランペットが、ちょっと五月蠅く響く。しかも録音年は1967年。モード・ジャズは最初の成熟期を迎えていて、ハバードのモード・ジャズには「新しい発見」は無いのが惜しい。

テクニックが優秀なので、優れたジャズロックも出来るし、優れたモード・ジャズも出来る。俺は何でも素晴らしい演奏が出来るんだ、という自信がちょっと裏目に出た盤。アルバム全体の印象がちょっと散漫になっている分、この盤は損をしている。ジャズロック志向に専念するかどうか、少し迷っている「過渡期」的な内容ではある。

それでも、ジャズロックの部分は、ハバードの特質が100%活かされていて良い出来。前作『Backlash』と併せて、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」ということを証明したハバードのリーダー作である。しかし、アトランティック・レーベルのプロデューサーって何をしてたのかなあ。ハバードに「おんぶに抱っこ」な印象で、全くもって勿体ない盤である。
 
 

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2023年7月 1日 (土曜日)

北欧ジャズの「ジャズ・ロック」

欧州のジャズ・レーベルの老舗、ECMレーベル。アルバムのリーダーを張るミュージシャンは、米国ジャズとはかなり異なる。

大きく分けて、北欧、ドイツ、イタリア、東欧、最近ではイスラエル。レーベルの音のカラーとして、耽美的でリリカル、現代音楽的でスピリチュアルな「統一された音志向」があるので、米国ジャズを踏襲した音志向の欧州ミュージシャンが選ばれることは無い。

北欧ジャズは、明らかにECMレーベルの音志向にぴったり合致する音の個性を持っていて、ECMレーベルからかなりの数のリーダー作をリリースしている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドと偏り無く、リーダー人材を発掘し、ECMらしい音志向のリーダー作をリリースしている。

逆に、8ビートが主体のリズム&ビートの効いたクロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックはほとんど無いのが、これまた、北欧ジャズの個性と言えば個性。

Arild Andersen『Clouds in My Head』(写真)。1975年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Knut Riisnæs (ts, ss, fl), Jon Balke (p), Pål Thowsen (ds)。リーダーは、ノルウェー出身のベーシスト、アリルド・アンデルセン。残りの3人も全員ノルウェー出身。オール・ノルウェーの1管フロントのカルテット編成。

僕は今まで、このアルバムを聴いたことが無かった。今回、ECMのリリースで、北欧ノルウェー出身のカルテットの演奏なので、さぞかし、北欧ジャズっぽい、耽美的で透明感溢れる、リリカルで静的なモード・ジャズが展開されるのだろう、と予想して聴き始めたら、思わず仰け反った。
 

Arild-andersenclouds-in-my-head

 
北欧ジャズっぽさが希薄。といって、ファンクネスは皆無。ビートは8ビートが入っている。これって、クロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロック志向の音作りではないか。

よくよく聴くと、出てくるフレーズは、明るくはあるが耽美的でリリカル、テナーの音などはスッと伸びた透明感溢れる音色で、リーダーのアンデルセンのベースはソリッドで切れ味抜群。

ジョン・バルケのピアノは、躍動感溢れ、ビートが効いてはいるがリリカルで透明度高く硬質なタッチ。ポール・トーセンのドラムは、自由度と柔軟度の高い拡がりのあるリズム&ビートを叩き出す。この4人の出す音って、基本は北欧ジャズであることが判る。

この盤、北欧ジャズを基本としたクロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロックだと感じる。アップテンポの4ビートの演奏などは、米国ジャズの新主流派を彷彿とさせるのだが、ファンクネス皆無、北欧ジャズの個性を宿した楽器の音が、米国ジャズとは絶対的に「一線を画している」ところが興味深い。

ECMには似合わない、タイトなリズム&ビートの効いたクロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロック、そして、米国ジャズの新主流派的な音世界。

しかしながら、この北欧ジャズの個性を宿した楽器の音と演奏の雰囲気が、辛うじてこの盤をECM盤として成立させている。きっと、アイヒヤーはしぶしぶリリースしたんじゃないかな。でも、良い内容、良い雰囲気の好盤だと思います。
 
 

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