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2017年6月21日 (水曜日)

『Birds of Passage』が素敵だ

いや〜大荒れの一日でしたねえ、我が千葉県北西部地方。外出も叶わぬ大荒れの日、部屋の中で聴くのはジャズ。さて、今日は、ナベサダさん(渡辺貞夫)のアルバムの聴き直しをもう一枚。僕はこのアルバムを聴いた時、これは「スムース・ジャズ」でも「フュージョン・ジャズ」でもない、これは、硬派なコンテンポラリーな純ジャズだ、と思った。

渡辺貞夫『Birds of Passage』(写真左)。1987年の作品。発売当時のキャッチフレーズが「追い求めた"渡辺貞夫の音楽"を遂に完成! そして数々の旅の想いがこのアルバムに・・・。"旅"がテーマとなった曲を再演奏した1枚」。なるほど、このキャッチフレーズの言うとおりである。いいキャッチフレーズやなあ。

この頃のナベサダさんは、米国でスムース・ジャズの先駆けとして成功を収め、ナベサダさんの音楽と言えば「スムース・ジャズ」だった。が、この盤は違う。前奏をパッと聴いた雰囲気は電気楽器を上手く活用したフュージョン・ジャズかスムース・ジャズか、と思うんだが、ナベサダさんのアルトが出てくると、雰囲気はガラッと変わる。ほんと、ガラッと変わるのだ。
 

Birds_of_passage

 
テクニック優秀、歌心溢れ、力強いアルトの旋律。この力強さと音の「伸び」が素晴らしい。そこにテクニック&疾走感溢れるアドリブ・フレーズが展開される。甘さは一切排除され、ファンクネスは皆無、切れ味良い爽快感と歌心溢れるフレーズは「コンテンポラリーな純ジャズ」である。説得力抜群で聴き応え満点である。

『California Shower』以降「ナベサダはフュージョンに魂を売った」などと揶揄されることもあったが、ナベサダさんの「スムース・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」は超一級品。揶揄されるレベルでは無い。しかも、このアルバムに至っては、まず「スムース・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」の類では無い。「コンテンポラリーな純ジャズ」である。真摯で意欲的な「新しい響きのジャズ」がこの盤に詰まってから素敵だ。

バックを固めるフュージョン・ジャズ時代からの強者共の好演も良い。特にドラムのビニー・カリウタは凄い。"旅"がテーマとなった曲の再演盤という色合いが濃いが、収められている演奏を聴けば単なる再演でないことが痛いほど判る。新しい響き、新しい展開を伴ったコンテンポラリーな純ジャズ」が、新しい雰囲気の新しい「純ジャズ」の形がここにある。

 
 

東日本大震災から6年3ヶ月。決して忘れない。まだ6年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年6月20日 (火曜日)

素のまま暖かくてゆったりと

ナベサダさん(渡辺貞夫)のアルバムの聴き直し。前回は何時だったか、思い出せないほど時間が空いた。調べてみたら、2016年7月7日のブログ、アルバムは『MAISHA(マイシャ)』。1985年のリリース。ナベサダさんの初プロデュース盤。なんだ、まだ1年前か。

で、今回は、渡辺貞夫『Good Time for Love』(写真左)。1986年のリリース。ナベサダさんの陽気な、上半身の姿が写っているだけの、あまりにシンプルで味気ないジャケット・デザインで意外と損をしている盤である。あまりに地味なジャケット・デザインなので、とにかく目立たない。

しかし、である。冒頭のレゲエ・ナンバー、タイトル曲でもある「Good Time for Love」を聴くと、前作『MAISHA』までとは異なる雰囲気に気がつく。ゆったりしている、というか、自然体というか、素のままというか、暖かくてメリハリの効いた、昔、聴き馴れた「ナベサダ」フュージョンな音である。
 

Good_time_for_love1

 
2曲目「Love Birds Whisper In My Ear」を聴き進めるにつれ、その意を強くする。そして、6曲目の「Pogo」に至っては、うか〜っと聴いていると、あれ、これって「California Shower」かも、なんて思ってしまう位に雰囲気が似たハッピーな曲。これって、フュージョン・ジャズに本腰を入れ出した1970年代後半の「ナベサダ・ワールド」な音世界である。

前作と音の雰囲気がガラッと変わったのは、このアルバムから、ナベサダさんの音楽活動のベースを日本にシフトしたことと大いに関係があると思っている。バックを支えるミュージシャンも日米混合。日本人ミュージシャン達が帰ってきた。ナベサダさんのアルトは、バックが米国だろうが日本だろうが、そのブリリアントな音色は変わらないが、雰囲気がガラッと変わる。

アーバンで小粋な大人のフュージョン、素のまま暖かくてゆったりと親しみのあるフュージョン、どちらのナベサダ・ワールドも捨てがたい。そして、この盤、なによりもナベサダさんのアルトがバリバリに鳴っている。これだけ鳴りの良い暖かみのあるアルトの音を僕は他に知らない。肩肘張らない、普段着の素のままのフュージョン・ジャズ。良い雰囲気、良い音世界です。

 
 

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2016年7月18日 (月曜日)

『Live in Nemuro 1977』

このところ、ナベサダさんのアルバムをよく聴く。定期的にマイ・ブームがやってくる訳だが、そんな中、タイミング良く、発掘ライブ音源がリリースされたとの報を聞き、即ゲット、即聴き込みである。

その発掘ライブ音源とは、渡辺貞夫『Live in Nemuro 1977』(写真左)。1977年10月8日に根室市公民館にてライヴ録音。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫(as, sopranino, perc), 福村博 (tb), 本田竹広 (p), 岡田勉 (b), 守新治 (ds)。純日本ジャズメンのメンバー構成。

1977年と言えば、ナベサダさんのフュージョン・ジャズの大傑作『カリフォルニア・シャワー』のリリースの前年になる。『カリフォルニア・シャワー』の録音が、確か1978年3月だった筈で、この根室でのライブ音源は、ナベサダさんがロスに飛ぶ直前のものになる。そうなれば、ナベサダさんの音楽活動の歴史の中で、節目となる音源であろう。

その内容と言えば、アフリカ音楽に影響を受けたクロスオーバーなジャズがメインではある。やはり、「Massai Talk」「Hunting World」などの演奏はその内容共に秀逸。ナベサダさん十八番のボサノバ・ジャズ「Bossa Na Praia」もとっても良い雰囲気である。
 

Live_in_nemuro_1977_1  

 
しかし、このアルバムはさすがに当時のライブ音源である。「Chelsea Bridge」「On Green Dolphin Street」「Rythmaning」などのスタンダード曲を選曲し、ストレート・アヘッドなジャズをガンガンに演奏しまくっている。ホットで高度な演奏に、当時の日本ジャズの演奏力の高さに思わず目を見張る。

バックの本田竹広 (p), 岡田勉 (b), 守新治 (ds)のリズム・セクションが素晴らしいバッキングを繰り広げていて立派だ。フロントのナベサダさんのアルト、福村博のトロンボーンを含め、このクインテットの演奏はほぼ「飽和状態」に達している雰囲気があり、翌年、ナベサダさんが、一躍ロスに飛んで、フュージョン・ジャズに転身したことも頷ける。

ライブ録音なので、ライブならではの演奏の荒い部分や、ちょっとスベる部分はあるが、これは「ご愛嬌」。これはこれで臨場感があって、このライブ音源を通じて、1977年10月8日の根室でのコンサートを追体験できる雰囲気が良い。まあ、ジャズ者初心者の方々には、敢えてこの音源はお勧めしなくても良いかな。

 
 

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2016年7月15日 (金曜日)

通算70作目のリーダーである

このアルバムは、昨日ご紹介した『Come Today』と対のなすアルバムだと解釈している。ニューヨークの才気煥発なミュージシャン達と奏でたアコースティック・ジャズ。こちらのアルバムは、2009年9月のリリース。

そのアルバムとは、渡辺貞夫『Into Tomorrow』(写真左)。ナベサダさんの御年76歳の演奏。通算70作目のリーダー作になる。ちなみにパーソネルは。Sadao Watanabe (as, fl), Gerald Clayton (p), Ben Williams (b), Johnathan Blake (ds)。メンバーは昨日ご紹介した『Come Today』と同じ。

こちらの『Into Tomorrow』の方が『Come Today』より録音が先になる。この『Into Tomorrow』で、ニューヨークの才気煥発なミュージシャン達とメインストリーム・ジャズ回帰を果たし、次の『Come Today』で更に充実度を深める。そんな図式である。

そういう録音順を踏まえて聴くと、この『Into Tomorrow』の方が、ニューヨークの才気煥発なミュージシャン達との関係が、まだ 一部ギクシャクしていて、それがかえって「新鮮」に響いている。モードやネオ・ハードバップ、現代のジャズのトレンドを踏襲しようとする若手、それを笑い飛ばしつつ、我関せずポジティブでシンプルなメインストリーム・ジャズを展開するナベサダさん。

怪我の巧妙というか、瓢箪から駒というか、大ベテラン、日本ジャズの至宝ナベサダさんと、ニューヨークの才気煥発なミュージシャン達とが偶発的な「化学反応」を起こしている、そんな千載一遇の機会を捉えたアルバムである。
 

Into_tomorrow1

 
清々しくも瑞々しい、ポジティブでシンプルなメインストリーム・ジャズが爽快である。ネオ・ハードバップの追求者がこぞって追体験するモードな演奏など全く眼中に無し。といって、1950年代のハードバップに回帰し、現代のジャズの響きを取り入れた「ネオ・ハードバップ」を追求する訳でも無い。

ただただハッピーでポジティブで清々しくも瑞々しい、ポジティブでシンプルな「ナベサダさんの考える」コンテンポラリーな順ジャズがこのアルバムの中にギッシリと詰まっている。このアルバムを聴いていてその感を強くする。ただただ、ナベサダさんの歌心溢れるハート・ウォーミングなアルト・サックスが鳴り響く。

僕は、この『Into Tomorrow』と昨日ご紹介した『Come Today』2枚のの、ナベサダさんの「原点回帰」の様な最近作がお気に入りです。このしっかりと芯の入った、ブラスの輝く様な響きを振り撒く、力強いアルト・サックス。これが良いんですね。加えて、亜アドリブ・フレーズは歌心満載。

このアルバムで鳴り響いているナベサダさんのアルト・サックスの音色は若々しい。限りなくポジティブだ。孫ほど歳の離れた若手ミュージシャンと違和感無く溶け込んでいる。というか、若手ミュージシャンがナベサダさんに影響され、引っ張られている。ナベサダさんの懐の深さ、柔軟性、適応力の素晴らしさ。脱帽である。

ご本人のベンによると「全てファースト・テイク、おまけにバラード曲はリハーサルなしのぶっつけ本番」。このアルバムには、本来の「ジャズの有るべき姿」が記録されています。好盤です。

 
 

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2016年7月14日 (木曜日)

音楽活動60周年記念アルバム

この方は日本ジャズの至宝である。このアルバムを聴けばそれが良く判る。2011年のリリース。その方とは、栃木県出身。1951年に上京し、プロとして音楽活動を始める。1961年の初リーダーアルバムの発表から50年。1965年にボストンから帰国した後、日本のジャズの発展に大いに寄与、その後もブラジル音楽やアフリカ音楽等を取り入れ、常に新しい音楽の可能性を追究してきた。

その名は「渡辺貞夫」。愛称「ナベサダさん」。僕はジャズを聴き始めた頃、40年前からずっとナベサダさんのアルバムを聴いてきた。アルバムだけでは無い。当時、FMの番組「マイ・ディア・ライフ」も毎週、エアチェックしながら欠かさず聴いていた。歌心溢れるハート・ウォーミングなアルト・サックスが絶品なのだ。

そんなナベサダさんが、ニューヨークの新進気鋭のミュージシャンらと組んで、ストレート・アヘッドなジャズに回帰したアルバムがこれ。渡辺貞夫『Come Today』(写真左)。2011年6月の録音。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as), Gerald Clayton (p), Ben Williams (b), Jonathan Blake (ds)。
 

Come_today

 
清々しくも瑞々しい、ポジティブでシンプルなメインストリーム・ジャズが爽快である。モードやフリーなど、難しいことは考え無い、シンプルに「ネオ・ハードバップ」な演奏が繰り広げられている。若手ミュージシャン達も、そんな雰囲気に引き摺られて、シンプルで明快でストレートアヘッドな演奏を展開している。

このアルバムの録音時は、たしか78歳(!)。このしっかりと芯の入った、ブラスの輝く様な響きを振り撒く、力強いアルト・サックスの音色。これが78歳の出す音色なのか。なるほど、楽器を理想的に鳴らすことに必要なものって「若さ」や無いんやね。楽器を鳴らすってこと、奥が深いなあ。

アップテンポの演奏も良し、バラード演奏もしみじみと心に沁みて良し。バックのピアノ・トリオも若々しくて良し。このバックのピアノ・トリオ、シンプルで明確で流麗でダイナミックな展開がなかなかいけます。とにかく溌剌としているところが良い。ナベサダさんのアルト・サックスの雰囲気にピッタリです。

 
 

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2016年7月 7日 (木曜日)

「サハラ砂漠の旅日記」です。

僕はナベサダさん(渡辺貞夫)のアルトが大好きだ。ナベサダさんのアルバムはほぼ全て聴いて来た。で、最近、また聴き直している。今は1980年代のアルバムを中心に聴き直している。

日本ではナベサダ人気は、1980年の『How's Everything』、武道館ライブ辺りがピークで一端終息に向かった。しかし、ナベサダさんの快進撃はこれからで、米国に渡っての1980年代のフュージョン・ジャズからスムース・ジャズの時代に優れた内容のアルバムがズラリと並ぶ。

日本では、ナベサダはスムース・ジャズに走った、と揶揄され、硬派なジャズ者の方々からはあまり評価されなかった。が、米国では違う。スムース・ジャズのジャンルで、ナベサダさんのアルバムは売れた。これがまた、日本の硬派なジャズ者の方々にしたら気に入らない。老舗ジャズ雑誌でも大きく採り上げられることは無かった。

しかし、1980年代のナベサダさんのアルバムはどれもが良い内容だ。特に、フュージョン者の僕からすると、確かに1980年代のアルバムについては全部好きで、当時から良く聴く。

今回は、渡辺貞夫『MAISHA(マイシャ)』(写真左)に聴き惚れる。1985年のリリース。このアルバムは発売当時から大好きなアルバムの一枚。演奏の全てにおいて破綻が無く、ポップでハッピー。ポジティブな内容で翳りは全く無い。ナベサダさんのアルトはスッと一直線に伸びて、流麗にアドリブフレーズを吹き上げる。
 

Maisya

 
主なパーソネルは、渡辺貞夫 (sa, fl, as), Don Grusin, Herbie Hancock (key), Harvey Mason (ds), Brenda Russell (vo) 他。ちなみに、このアルバムはナベサダさんの初プロデュース盤になる。確かに、音の作りがシンプルで楽器が良く鳴っている。ナベサダさんの考える「スムース・ジャズ」の音なんだろう。

とにかくナベサダさんのアルトが良く鳴っていて清々しい。アルトで唄っている様なアドリブ・フレーズは爽快。アレンジ優秀でどの曲も聴き応えがある。バックの強者どもの演奏も秀逸だが、ナベサダさんのアルトは頭一つ抜きん出ている。

この『マイシャ』は、ナベサダさんがC型肝炎から回復した後に旅した「サハラ砂漠の旅日記」というコンセプトに則ったアルバムとのことだが、収録された楽曲のタイトルを見ながら全ての曲を聴き通せば、そのコンセプトに至極納得する。ほんと、心地良い良い内容のスムース・ジャズ盤である。

ちなみに、このアルバム・ジャケットの女性の写真はナベサダさんの手によるもの。ナベサダさんはカメラの腕前も玄人裸足なんだが、この写真は殊の外素晴らしい。ベッピンさんである。このジャケットもこのアルバムの魅力のひとつ。

 
 

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2016年3月28日 (月曜日)

ナベサダさんのビッグバンド盤

2015年度も今月で終わり。先月辺りから、ジャズ界の2015年度を振り返って好盤を聴き直す、なんて、ジャズ雑誌みたいな事をやっている。

2015年度はボックス盤などの企画盤に目立ったものは無かったし、新譜も大々的な話題をさらった盤も無かったなあ、と思って、今年度はイマイチだったか、と思いながら選盤していたら、意外と多くの好盤がピックアップされた。案外、2015年度もジャズにとって良い一年だったのかも、と思いつつ好盤を順に聴き直している。

今日の好盤は、渡辺貞夫『I'm with You』(写真左)。014年12月14日Bunkamuraオーチャードホールにてライヴ録音。村田陽一ら日本のトップ・ホーン・プレイヤーによって構成されたスペシャルなビッグ・バンドとの共演。アルバムの宣伝文句を見ると「60年を越えるキャリアの中で初めて、自身のオリジナル曲で固めたビッグバンド盤」とか。へ〜そうなんや。

非常に洗練されたビッグバンドのアレンジ。ビッグバンドの音が邪魔にならない。ビッグバンドの音をバックに、ナベサダさんのアルト・サックスがクッキリと浮かび上がる。クッキリと浮かび上がると良く判る、ナベサダさんのアルト・サックスの音の伸びの良いこと。そして、アルト・サックスが実に良く「鳴っている」。ナベサダさん、まだまだ第一線現役である。
 

Im_with_you

 
バックのリズム・セクションが良い音を出している。この音の粘りと漂うファンクネスは日本人のものでは無い、と目安を付ける。そして、調べるとやっぱりと納得する。イエロー・ジャケッツのキーボード奏者である、Russell Ferrante (key)。ウェザー・リポートなどで活躍したドラマーである、Peter Erskine (ds)。そして、粘りのある骨太でファンキーなベース音が嬉しいベーシスト、Edwin Livingston (b)。

この外国人リズム・セクションがコンテンポラリーな良い音を出しているのだ。この外国人リズム・セクションの存在、彼らの奏でるコンテンポラリーな音が、このナベサダさんの、自身のオリジナル曲で固めたビッグバンド盤を決して「懐メロな盤」にさせない。この外国人リズム・セクションとナベサダさんのアルトだけでも、実にコンテンポラリーな純ジャズな音がする。カルテット構成、ナベサダさんのワンホーンで聴いてみたい。

この盤、2015年3月のリリースで、約半年ぶりに聴き直した訳ですが、やはり「良いものは良い」。ジャズがポップス音楽のひとつだと言うことを思い出させてくれる、楽しい演奏がギッシリ詰まっています。ジャズは聴いて楽しむ音楽なんだ、って改めて思いました。ナベサダさんの面目躍如なビッグバンド盤です。好盤です。

 
 

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2015年7月 9日 (木曜日)

ナベサダ・スムースジャズ事始め

このアルバムを聴けば、フュージョン・ジャズとスムース・ジャズの違いが「一聴瞭然」となる。スムース・ジャズとは、フュージョン・ジャズ、ポップ・ジャズの流れから進化したスタイルである。

フュージョン・ジャズよりも音作りを洗練し、聴き心地を優先した音の展開。楽器はしっかりとなり、テクニックは奥に偲ばせる感じで、それをひけらかすことは無い。クロスオーバー・ジャズの亜流であった、イージーリスニング・ジャズの発展形とも取れる。そんなスムース・ジャズの初期の成果というか、スムース・ジャズ初期の好盤がこの、渡辺貞夫『RENDEZVOUS(ランデブー)』(写真)。

1984年の録音。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as)・Steve Gadd (ds)・Marcus Miller (el-b, key)・Richard Tee (el-p)・Ralph MacDonald (per)・Eric Gale (g)・Anthony MacDonald (per)・Barry Eastmond (key)・William Eaton (arr)・Roberta Flack (vo)。基本的には前作の『Fill Up The Night』の人選を踏襲している。

冒頭のタイトル曲からして、この音の雰囲気はフュージョン・ジャズでは無い。ソフト&メロウな音作りがメインではあるが、とにかく聴き心地が良い。リチャード・ティーのフェンダー・ローズの「心地良く漂う様な揺らぐような」音が効いている。そっと切り込んでくるナベサダさんのアルト。う〜ん、洗練の極みである。
 

Rendezvous

 
この冒頭のタイトル曲の音作りが、このアルバム全体を支配している。ソフト&メロウな聴き心地優先の音作りながら、それぞれの楽器の演奏は、意外と硬派でタイトです。この「意外と硬派でタイト」というところが、他のスムース・ジャズ初期のアルバムの音作りと一線を画していて、ナベサダ・スムース・ジャズの個性です。

前作から引き継がれたリズム・セクションは、相変わらず重量感抜群で、耳当たりの良い雰囲気のフロントの旋律をガッチリと支えて固めます。逆に、重量感抜群のリズム・セクションをバックにしながら、そんなリズム・セクションの音に埋もれること無く、逆に浮かび上がる様な、切れ味の良いナベサダさんのアルトの音色は快感ですらあります。

このアルバムは全米で大ヒット、ビルボードのジャズチャート2位になったことも、今では懐かしい思い出です。ビルボードのジャズチャート2位ですよ。このニュースを聞いた時は喝采の声を上げましたね。で、このアルバムの音を初めて聴いた時、この「ビルボードのジャズチャート2位」は嘘じゃない、と確信しました。

発売当時は、まだ、スムース・ジャズという言葉は無く、それまでのフュージョン・ジャズとは音作りとコンセプトが異なる、ということは耳で感じてはいましたが、どこがどう違うのか、その理屈はまだまだ判らない、ジャズ者になって7年目の秋のことでした。

 
 

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2015年7月 8日 (水曜日)

1980年代のナベサダ・ジャズ

1980年代の渡辺貞夫を聴き直している。もともとフュージョン・ジャズの「僕のアイドル」。渡辺貞夫、僕は敬愛と親しみの念をこめて「ナベサダさん」と勝手に呼ばせていただいている。1970年代後半三部作である『My Dear Life』『California Shower』『Morning Island』を経て、1980年代に突入。

音的にはこの1970年代後半3部作の音を継承した『Orange Express』、そしてライブ盤『How's Everything』をリリース。ここで一旦、1970年代後半3部作の音を継承したシリーズは終了。ナベサダさんは、エレクトラ・レーベル移籍。フュージョン・ジャズから一歩進めて、スムース・ジャズへと進化し始める。

そのエレクトラ・レーベル移籍第一弾のアルバムが、渡辺貞夫『Fill Up The Night』(写真)。1983年3月の録音。ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as), Ralph MacDonald (per), Richard Tee (key), Marcus Miller (el-b), Steve Gadd (ds), Eric Gale (g), Paul Griffin (key), Jorge Dalto (p), Grady Tate (vo)。

パーソネルを見渡せば、フュージョン・ジャズのブームを泳ぎ切った、名うてのメンバー、当時最先端のリズム・セクションを含めた、フュージョン・ジャズを総括した錚々たるメンバーと共演したアルバムである。このアルバムを初めて聴いた時、日本人もここまでハイレベルなフュージョン盤を創造することが出来るんだ、と感慨に耽ったことを覚えている。 
 

Fill_up_the_night

 
冒頭の「Say When」から続く「Rosebud」とフュージョン・ジャズを更に洗練した、後のスムース・ジャズの雰囲気がしっかりと聴いて取れるところが憎い。抜群のセンス。そして続く「Fill Up The Night With Music」では、グラディ・テイトの渋いボーカルも聴ける。これが実にムーディーで、かつ意外と硬派で聴き応えがある。

ティー、ゲイル、ガッド、そしてマーカス・ミラーという驚愕のアンサンブルによる大人のコンテンポラリー・ジャズの音世界。意外とワイルドで硬派なところがこのアルバムをヘビーローテーションさせている所以で、メインストリーム・ジャズ好みの耳にも、意外と訴求するところが、ナベサダさんのスムース・ジャズの面白いところ。

リズム・セクションの良い意味での「重量感」が、このアルバムを硬派なスムース・ジャズとして成立させている。スムース・ジャズ初期の好盤である。当時、米ラジオ&レコード誌にてジャズ・チャート1位を記録した、というのも頷ける、派手さも甘さも控えめな、クールで硬派なスムース・ジャズ。聴き応え十分です。

 
 

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2015年5月13日 (水曜日)

日本ジャズの黎明期の志士たち

守安祥太郎の伝記『そして、風が走りぬけて行った』(植田沙加栄著)を読んだことがある。ジャズに対する思い入れと憧れが、今の時代と桁違いなレベルだったことが良く判る。ジャズという新しい、最先端の音楽に対する探究心と執着心。守安祥太郎というピアニストは、それが桁違いなレベルだった。

その時代のセッションを記録した音源がある。『幻のモカンボ・セッション’54(The Historic MOCAMBO Session'54)』(写真左)としてリイシュー・リリースされた。1998年8月のことであった。CD3枚組。1990年のリリース折にはCD2枚組だった。1998年はCD3枚組。1954年、横浜モカンボでの伝説的なセッション。

ちなみに、セッションに参加したパーソネルを列挙すると、守安祥太郎 (p), 渡辺明 (as), 渡辺貞夫 (as), 五十嵐明要 (as), 海老原啓一郎 (as), 山屋清 (as), 宮沢昭 (ts), 鈴木寿夫 (b), 滝本達郎 (b), 秋吉敏子 (b), 清水閨 (ds), 五十嵐武要 (ds), ハンプトン・ホーズ (p)。日本ジャズの黎明期の「志士」たちである。

冒頭の「I want to be happy」を聴けば、その時点での日本ジャズのレベルが掴み取れる。まず、宮沢昭のテナーに感心する。これって、もう米国西海岸に比肩するレベルではないか。そして、圧巻は守安のピアノ。長いアドリブ・フレーズに、一貫したブレの無い疾走感、バラツキの無い強靭なタッチ、弛むことのない展開。これが当時の日本ジャズのピアニストのレベルなのか。思わず、身を乗り出して聴き込んでしまう。
 

The_historic_mocambo_54

 
米国東海岸の優れたビ・バップの演奏について、テープレコーダーのない時代にレコードから正確に採譜したそうである。その成果が、このセッションに直結している。採譜をし、理論的にビ・バップを理解し、その上で、自らのプレイに臨んでいる。優れたプレイがてんこ盛りなのも合点が行く。凄まじい程の探求心、そして向上心。

手本がソニー・スティットとバド・パウエルのものだと言われている。が、このCDに記録されているセッションには、既に、日本人の日本人による日本人の為のジャズの個性が十二分に提示されている。

疾走感をそこはかとなく押さえつつ、高速フレーズの中で、独特の間を活かしたアドリブ・フレーズが新鮮だ。オフビートをそこはかとなく押さえつつ、適度に乾いたファンクネスは、日本人ジャズ独特のものである。

1954年のテープ録音である。音は良くない。しかし、聴き取ることの出来るレベルであり、このCDに収録されているセッションの内容の素晴らしさを感じれば、音の良し悪しは気にならないレベルである。まあ、しかし、ジャズ者初心者の方々にはちょっとしんどいかも。ジャズを十分に聴き馴れた、ジャズ者中堅の方々にお勧めである。一度は聴いて欲しい。

守安祥太郎というジャズピアニストがいた。大正13年に生まれ、戦後の日本のジャズを牽引したが、31歳で不慮の死を遂げた。しかし、その遺産は、穐吉敏子、渡辺貞夫を筆頭にしっかりと継承された。その「遺産」の記録である。

 
 

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