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2018年6月 8日 (金曜日)

見事な技、見事な表現力である

パット・メセニーがサイドマンのアルバムを聴いている。パットは伴奏上手。パットのギターは自らがリーダーのアルバムとサイドマンで参加したアルバムとで、雰囲気がガラッと変わる。特にサイドマンの時は、参加したそのセッションのリーダーの楽器を惹き立てるように、また、同じ雰囲気でユニゾン&ハーモニーをかまし、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げる。

その好例がこのアルバム。Joni Mitchell『Shadows And Light』(写真)。1979年9月、カルフォルニアはSanta Barbara Bowlでのライブ録音。ジョニ・ミッチェルは米国の女性シンガーソングライターの草分けで、その浮遊感と神秘性のある歌詞と曲が彼女の最大の個性。その音楽性は複雑で高難度。通常のロック畑のスタジオ・ミュージシャンではちょっと不足な面が出てしまう。

そこで、ジョニは思い切って、ジャズ畑の一流ミュージシャンを招聘することを思い立つ。1970年代、1972年リリースの『For the Roses』から、クロスオーバー・ジャズ畑から、ジャズメンを採用し始める。そして、1979年の『Mingus』では、参加ミュージシャンは全てがジャズ畑からの招聘となった。確かに、彼女の複雑で高難度な音楽性を的確に表現出来るのは、ジャズ端のミュージシャンをおいて他に無い、と思う。
 

Shadows_light

 
さて、このジョニのライブ盤『Shadows And Light』の、バックバンドのパーソネルは、Pat Metheny (g), Jaco Pastorius (b), Don Alias (ds, perc), Lyle Mays (el-p, syn), Michael Brecker (sax)。いやはや、錚々たるメンバーでは無いか。録音当時、ジャズ界では、これらのメンバーは、人気&実力、共に既に超一流。そんなメンバーがバックを務めるのだ。悪かろう筈が無い。

そんなサイドメンの中で、特筆すべきは、ギターのパットとエレベのジャコ。この2人のテクニックと表現力は群を抜いている。ジョニの複雑で高難度な音楽性を、高度なテクニックと表現力で、的確に表現していく。特に彼女の楽曲が持つ浮遊感と神秘性をパットはギターシンセで、ジャコはフラットレスのエレベで表現していく。これがこのライブ盤での最大の聴きもの。ジョニの楽曲を惹き立て、ジョニのボーカルを浮き立たせるバッキング。

パットもジャコも自分たちの音を出すより、ジョニの楽曲にあった、ジョニの楽曲が表現する音世界を具現化するような音を選び、フレーズを紡ぎ上げる。見事な技であり、見事な表現力である。さぞかし、フロント・ボーカルを張ったジョニは唄いやすかっただろう。このライブ盤でのパットとジャコのバッキングは何度聴いても飽きないし、聴く度に感動する。

 
 
 

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2018年5月30日 (水曜日)

パット・メセニーの正式初録音盤

パット・メセニー(Pat Metheny)のサイドメン参加のアルバムを聴き進めている。メセニーと言えば、今や、押しも押されぬ現代ジャズ・ギターのレジェンドである。1970年代以降の「ニュー・ジャズ」の範疇でのエレクトリック・ギターは第一人者のポジションを維持している。スインギーな4ビート・ジャズとは全く対極のニュージャズの寵児であるメセニー。

そんなメセニーについては、サイドメン参加に回った時のプレイの方が、メセニーのエレギの特性を強く感じることが出来るのでは無いか、という仮説の下に、パット・メセニーのサイドメン参加のアルバムを聴き始めた。これが、どうも当たりみたいで、サイドメンのプレイの方が、リーダーの音のイメージという「規制」がの下で個性を表出しなければならない、という条件下で、メセニーの個性が強くでるみたいなのだ。

Gary Burton Quintet with Eberhard Weber『Ring』(写真左)。1974年7月の録音。ECMの1051番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Goodrick (g), Pat Metheny (g, el-12-string g), Steve Swallow (b), Eberhard Weber (b), Bob Moses (ds, perc)。パット・メセニーが、録音アルバムに名を連ねた、最初の正式盤である。
 

Ring

 
メセニーの師匠格であるゲイリー・バートン。バートンの慧眼恐るべしである。1970年代前半、当時、ニュー・ジャズの推進者であたゲイリー・バートン。彼の音楽性に対して、パット・メセニーのエレギはピッタリの存在だったことがこの盤を聴いて良く判る。メロディアスでフォーキーなソロから、怜悧でクールなフリー・インプロビゼーションまで、メセニーの持つ「ギターの個性」が、このバートンのイメージする音世界にピッタリなのだ。

ダブル・ベースにダブル・ギター。編成からして規格外である。この盤でのメセニーのギターについても「規格外」。恐らく、当時、過去を振り返っても、聴いたことの無いエレギの音とインプロビゼーションだったと推察する。バートンのヴァイブのバックで、シャープにウネウネ蠢くエレギの音は明らかにメセニーである。

この頃のバートンの音世界は「クロスオーバー・ジャズの最後期」の音。メセニーはちょっと歪んで捻れたエレギをウネウネ弾きまくる。とは言え、メセニーの後の個性はまだまだ。とにかく、当時のトレンドのエレギを必死で弾いている、という面持ちが微笑ましい。音の個性の確立はもっと後になるが、その萌芽はこの盤でしっかりと感じ取れる。まだ、あまり個性が目立たない、貴重な若き日のメセニーのパフォーマンスである。

 
 

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2018年5月 6日 (日曜日)

ネイチャー・ジャズの極みを聴く

昨日より「ネイチャー・ジャズ」の特集。1970年代に発生した「ニュー・ジャズ」の範疇の中で、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンスが存在します。僕はこういうジャズを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んでいます。

そんなネイチャー・ジャズの最右翼は「パット・メセニー」。特に、1970年代〜80年代のPMGは、基本「ネイチャー・ジャズ」の響きが満載。そんな中、PMGでは無い、共同名義のアルバムがそんな「ネイチャー・ジャズ」の好盤の中で、ピカイチの存在のアルバムがある。

Pat Metheny & Lyle Mays『As Falls Wichita, so Falls Wichita Falls』(写真左)。邦題『ウィチタ・フォールズ』。1981年、ECMレーベルからのリリース。パットと盟友ライル・メイズとの共同名義のアルバムである。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (el/ac 6-and 12-string g, b), Lyle Mays (p, syn, el-org, autoharp), Naná Vasconcelos (berimbau, perc, ds, vo)。パットがギターとベースを掛け持ちする変則トリオ編成。
 

As_falls_wichita_so_falls_wichita_f  

 
アルバムの隅から隅まで「ネイチャー・ジャズ」の音世界で埋め尽くされている。パットとメイズが共存しているPMGよりも「ネイチャー・ジャズ」の雰囲気が色濃い。恐らく、パットとメイズの共通の音のイメージがこのアルバムに提示されているのであろう。スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンス。

郷愁を誘い、センチメンタルに傾き、スピリチュアルであり、クールでもある。目を閉じれば、様々な自然のシーンが脳裏に浮かび、思わず心が癒される。そんな「ネイチャー・ジャズ」な音世界。パットのギター、メイズのキーボードが、そんな音世界をイマージネーション豊かに表現していく。クールなエモーショナルで内省的な音世界。独特である。

ナナ・バスコンセロスのパーカッションが印象的かつ効果的。パットとメイズのデュオだけだと、自然独特の動きや躍動感が単調になるきらいがある。ここにバスコンセロスのパーカッションが絡むことによって、躍動感に奥行きとバリエーションが付加されて、演奏に深みが出る。これがこの「ネイチャー・ジャズ」盤の優れた所であり、聴きどころである。「ネイチャー・ジャズ」ここに極まれり、である。

  
  

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2017年11月27日 (月曜日)

ECMレーベルらしい音・4

僕はこのアルバムで、パット・メセニーに出会った。大学の友人宅で聴かせて貰った。当時、ロックしか知らない音楽野郎で、ジャズは全く知らなかった。そして、その友人は「お前のキャラからするとECMやなあ」とブツブツ良いながら、このアルバムをかけてくれた。スピーカーから出てきた音は、今までの音楽体験の中で、全く、聴いたことの音世界だった。

Pat Metheny『Watercolors』(写真左)。1977年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g, 12-string g, 15-string harp-g), Lyle Mays (p), Eberhard Weber (b), Danny Gottlieb (ds)。Pat Metheny Group(PMGと略)で盟友となるピアノのライル・メイズとの初共演盤になる。

こんなジャズがあったんや、と感動した。それまでのジャズの印象とは全く違う、というか、全く新しいジャズの形だと思った。ファンクネスは皆無。黒さは全く感じられず、逆に米国ルーツ・ミュージックの1つである「フォーク、カントリー、ポップス」の要素を取り込み、自然の風景や気候を感じさせる、フォーキーでメロディアスなフレーズが特徴。僕は勝手に「ネーチャー・ジャズ」と形容している。
 

Watercolors

 
タイトルが「色とりどりの水」なので、全編聴き通すと「水」にまつわる様々な景色、模様が浮かんできます。面白いです。印象画の様なコンテンポラリー・ジャズとでも言いましょうか、穏やかではあるが、濃密かつ親密な音世界がとても魅力的です。音で情景を紡ぎ上げていく。そして、適度に豊かなエコー。典型的な「ECMレーベル」の音世界です。

ゴットリーブのドラムが印象画の様な音世界に適した「躍動感」を与えている。ウェーバーの柔軟で流麗なアコベとエレベが、パットのギターのベース・ラインに寄り添って、パットのギターをグッと浮き立たせ、グッと惹き立たせている。そして、ライル・メイズのピアノは「言わずもがな」、パットのギターに最適なピアノの音を止めども無く供給し続ける。とにかくリラックス出来る好盤。

フォーキーでメロディアスなフレーズが爽やかで優しい。パットの切れ味良く、やや捻れ気味にウォームなエレギの音は一度聴いたら忘れられないほど「個性的」。このパットのギターの音色とひねり出すフレーズが気に入るか、気に入らないかで、パットの評価は正反対に二分されるだろう。で、僕はパットのギターが大好きです。ジャズを聴き始めた頃に、この『Watercolors』に出会ったことは、僕にとって実に幸運な出来事でした。

 
 

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2017年2月25日 (土曜日)

バートンとメセニーの師弟関係

ジャズ・ヴァイブといえば、まずは「ミルト・ジャクソン」だろう。これには誰も異論は無いと思う。ジャズ・ヴァイブの第一人者で、今は亡き「レジェンド」である。それでは「その次」は誰か。僕にとっては「ゲイリー・バートン」である。

ゲイリー・バートン(Gary Burton)は、米国インディアナ州出身。 1943年生まれなので、今年で74歳。レッド・ノーヴォが始めた4本マレット奏法を洗練し、ヴァイブの新たな奏法として確立させたジャズ・ヴァイブのイノヴェーターである。僕は、このバートンとは、チックとのデュオ『クリスタル・サイレンス』で出会った。

スピーカーから出てくるヴァイブの音はにわかに理解出来なかった。ヴァイブなのに和音が出ている。通常ヴァイブは同時に音が2音しか出ないのだが、スピーカーから最大4音出てくる。最初は多重録音かと思った(笑)。ライナーノーツかジャズ雑誌の記事を読んで「4本マレット奏法」の仕業だということが判った。

この「4本マレット奏法」のお陰で、バートンのヴァイブは表現力が豊かである。ファンクネスが希薄で、雰囲気は「クラシカルでクリスタル」。透明度があって硬質、和音が入るのでヴァイブの音に深みが出る。一聴して「バートンのヴァイブ」と判る位の個性である。僕は、このバートンのヴァイブが大好きで、1978年に出会って以来、ずっと聴いている。

そんなバートンのヴァイブを気楽に聴けるアルバムがこれである。Gary Burton『Reunion』(写真左)。1989年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Pat Metheny (g), Mitchel Forman (p, key), Will Lee (b), Peter Erskine (ds, per)。うへ〜、このパーソネルを見れば、このアルバム、聴く前から内容は保証されたようなもの。
 

Reunion

 
バートンはパット・メセニーを世に送り出したことで有名。メセニーの才能を見出し、マイアミ大学を中退させ、ボストンのバークリー音楽院に招き入れた。そして、1974年、バートンの『リング』でデビュー。1976年までバートンと活動を共にした。以降、メセニーは現代ジャズ・ギターの代表格の一人として大活躍。

つまり、バートンとメセニーは、いわゆる「師弟関係」である。この師弟関係が復活したのが、1988年のモントリオール・ジャズ祭での再会をキッカケに翌年録音された本作である。よって、この盤のタイトルが「Reunion(再会)」。

しかし、この師弟関係って、この盤を聴くと、なるほどなあ、と思う。ギター・シンセなどで前へ前へ出てくるエレギのメセニーが、一歩引いてサイドマンに徹しているのだ。これが良い。バッキングに徹するメセニーのギターとフロントで乱舞するバートンのヴァイブとの相性が抜群に良い。

ユニゾン、ハーモニー、チェイス、どれもが良い響きで惚れ惚れする。そこに、リズム&ビートをしっかりと支える、繊細でシャープなピーター・アースキンのドラミングが、これまた良い感じである。

爽やか叙情派な、ちょっと感傷的なネイチャージャズ系のフュージョン・ジャズ。僕はこの盤の雰囲気が大好きで、気分がイライラする時、このアルバムを良く聴く。聴くとスッとイライラした気分が落ち着く、そんな精神安定剤の様な内容に、聴く度に惚れ惚れする。純ジャズの雰囲気を残した、爽やかなフュージョン・ジャズ。良い感じです。

 
 

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2017年1月21日 (土曜日)

「パット個人の音」の原点回帰

パット・メセニーの聴き直しは続く。が、パット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group, PMGと略す)名義としては、このアルバムが最新になる。いよいよである。Pat Metheny Group『The Way Up』(写真左)。2005年のリリースである。

パーソネルは以下の通り。Pat Metheny (g), Lyle Mays (p, key), Steve Rodby (b), Cuong Vu (tp), Grégoire Maret (harmonica, perc), Antonio Sánchez (ds)。鉄壁のレギュラー・メンバーである。

前作『Speaking of Now』で、PMGは原点回帰した。米国の大自然を彷彿とさせる、フォーキーでネイチャー・ジャズ(僕が勝手に名付けている)な音の響き。独特の浮遊感と疾走感。あの「Still Life」の頃の音が、PMGならではの個性的な音世界に立ち戻った。

そして、今回のこの現時点での最新作『The Way Up』においては、前作でPMGとしての音世界の原点回帰を実現したことを踏まえて、このアルバムではリーダーのパット・メセニー個人としての原点回帰を実現していると感じる。

もともと、パットは活動初期の頃から、パット個人としての活動とPMGとしての活動の「二足の草鞋」を履いていた。今回は、このパット個人としての活動の色合いが濃い。アルバムの名義が「パット・メセニー with PMG」と形容して良い位の音作りになっている。
 

The_way_up1

 
その音世界の構成が壮大である。序章+3部構成となるコンセプト・アルバムとなっていて、これはもうジャズという範疇からは逸脱しているかもしれない。便宜上、序章+3部構成という4つのパートに分かれてはいるが、曲としては、ひとつの流れを持つ全72分の大曲である。全くもっての力作である。

音世界はPMGの音を基本にはしているものの、PMGのポップな部分をそぎ落として、結構シリアスな、メインストリーム・ジャズを基調としている。そんな音を前提に、ジャズの交響組曲の様な壮大でシリアスな演奏が展開される。

当然、ファンクネスは皆無。米国の大自然を彷彿とさせる、フォーキーでネイチャー・ジャズも基本的に抑制されている。前衛的な音世界も見え隠れして、これは明らかに初期の頃のパット・メセニー個人としての音世界である。

2002年の『Speaking of Now』の時点で48歳、この『Speaking of Now』の時点で、51歳。50歳という人生の節目の前後で、パットはPMGとパット個人の音世界を原点回帰させたことになる。理屈好きなパットらしい話ではある。

 
 

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2017年1月18日 (水曜日)

ジックリと聴き耳を立てる盤

パット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group=PMGと略)に、専門のトランペッターが参入したのが、1995年リリースのアルバム『We Live Here』で、Mark Ledfordであった。このトランペットの参入は、PMGの音世界の彩りをワンステップ拡げた。ちょっとジャズっぽくなった。

そして、2002年リリースの『Speaking of Now』から、専門のトランペッターは、Cuong Vu(クオン・ヴー)に交代した。このクオン・ヴーが当たりで、PMGの音世界にピッタリな音色と音の拡がりに、初めて聴いた時はちょっと驚いた。パットのギターシンセとのユニゾン&ハーモニーが素晴らしい。PMGの唯一無二な音世界である。

そんなクオン・ヴーがリーダーとなってトリオを結成、そこに親分のパット・メセニーがギターで参加する、という、それって実はPMGとちゃうん、みたいなアルバムが出た。『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』(写真左)である。昨年の5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Cuong Vu (tp), Stomu Takeishi (b), Ted Poor (ds), Pat Metheny (g)。

それって実はPMGとちゃうん、と思っていた『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』であるが、パーソネルを見て気が変わった。これは第2のPMGを狙った盤では無い。まず、PMGの音の要であるライル・メイズに該当するキーボードが無い。とすれば、PMG十八番のフォーキーでネイチャーなフュージョン・ジャズは期待薄である。
 

Cuong_vu_trio_meets_pm

 
そもそもクオン・ヴー・トリオからして、トランペット+ベース+ドラムのピアノレス・トリオ。フロント楽器(ここではトランペット)がリーダーでのピアノレス・トリオの主な目的は「限りなく自由度が高い」ということ。心情の趣くままに限りなく自由にフロント楽器を吹きまくりたい。そういう欲求が前面に押し出たのがピアノレス・トリオ。

そんな「限りなく自由度の高い」ピアノレス・トリオにパットがギターで参入する。ということは、PMGな音世界では無く、パット個人な音世界が狙いとなるだろう。そう、このアルバムは「限りなく自由度の高い」メインストリーム・ジャズである。部分的にはフリー・ジャズと言い切ってよいだろう自由でアブストラクトなアドリブ・フレーズが宙を舞う。

録音テクニックが優れていることもあって、4人編成の演奏ではあるが、音がとても厚い。フロント楽器がトランペットとギターであるが、音がとても厚くて豊か。この盤は、現代の硬派なメインストリーム・ジャズとして聴いた方が良い。戸惑うこと無く、この盤の素晴らしい演奏を堪能出来る。逆に、PMGな音世界を前提とすると、まず戸惑うだろう。

現代のメインストリーム・ジャズの好盤です。決して甘くは無い、どちらかと言えば硬派でシリアスな内容で、聴き流しなどには合いませんね。ある程度のボリュームで、良好なステレオ装置に相対して、ジックリと聴き耳を立てて聴き込むタイプのアルバムだと思います。

 
 

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2017年1月13日 (金曜日)

PMGの原点回帰的なアルバム

これだけ寒くなると、どんなに激しいジャズを聴いても汗をかかない。これだけ寒くなると、透明度の高いフュージョン・ジャズが耳に映える。基本的に冬はジャズ鑑賞に適したシーズンであると言えるのでは無いか。

ということで、Pat Metheny Group(以降PMGと略)の聴き直しを進めている。切れ味良く、透明度の高いフュージョン・ジャズ。PMGの真骨頂である。そんなPMGの音が僕は大好きである。で、一昨年から聴き直しを進めていて、結構、こちらの時代に近づいてきた。

Pat Metheny Group『Speaking of Now』(写真左)。2002年のリリース。ベーシスト兼ヴォーカリストにリチャード・ボナを起用している。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g), Lyle Mays (key), Steve Rodby (b), Antonio Sanchez (ds), Cuong Vu (tp), tRichard Bona (ac-g,b,vo,per)。魅力的なメンバー構成です。出てくる音に期待感が高まりますね。

で、出て来る音を聴けば、往年のPMG者からすると、涙涙のPMGの原点回帰である。米国の大自然を彷彿とさせる、フォーキーでネイチャー・ジャズ(僕が勝手に名付けている)な音の響き。独特の浮遊感と疾走感。あの「Still Life」の頃の音が、PMGならではの個性的な音世界が、この『Speaking of Now』に戻って来ている。
 

Speaking_of_now1

 
音世界の基本は「Still Life」の頃なんだが、音の広がりが違う。この『Speaking of Now』のほうが音の広がりがある。ぶわ〜と横に奥に広がる様な、山水画の様な音の広がり。そこに、パットのエレギがズバっと切り込んでくる。クオン・ブーのトランペットがそれに反応する。官能的で印象的なメイズのキーボードが彩りを添え、ボナのボーカルが郷愁を誘う。

リズム・セクションが実に個性的だ。PMGの音世界の基本的骨格を担う、サンチェスのドラムとロドヒーのベース。この二人の複雑でありながらシンプルなリズム&ビートが、まさに明らかにPMGのリズム&ビートなのだ。この複雑でありながらシンプルなリズム&ビートは他のフュージョン・バンドには無い。

全ての曲の曲調に統一感があって、トータル・アルバムとして聴き応え十分。そういえばこの盤、グラミーのBest Contemporary Jazz Albumを受賞してますよね。ジャズの重要要素である「ジャジーな雰囲気」「ファンキーな雰囲気」が希薄で、米国の大自然を彷彿とさせる様な、ネイチャーな音世界。僕はこの「PMGの原点回帰」的なアルバムが大好きです。

 
 

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2017年1月10日 (火曜日)

ワールド・フュージョンな音世界

パット・メセニーの聴き直しを進めている。パット・メセニーがお気に入りだ、と言うと、「え〜っ、マスター、パットがええの?」と聞き返されることが時々ある。どうも、パット・メセニーは、ジャズ者の方々の中では、かなり極端に好き嫌いが分かれるようだ。

確かに、ジャズの重要要素である「ジャジーな雰囲気」「ファンキーな雰囲気」が希薄で、特にパット・メセニー・グループ(以降PMGと略す)米国の大自然を彷彿とさせる様な、ネイチャーな音世界が特徴。これが、硬派なジャズ者の方々には「これはいかん」ところで、パットは好きじゃない、ということになる。

そんなパット・メセニーは、PMGでのパットと単独のパットと、これまた演奏する内容が全く異なったりするから、これがまた嫌われる要素になる。硬派なジャズ者の方々から「二股かけんなよ」ということで、パットは好きじゃない、ということになる(笑)。

さて、PMGの音世界の最大の特徴が「米国の大自然を彷彿とさせる様な、ネイチャーな音世界」であるが、その雰囲気が一番、極端に触れたアルバムが、このアルバムである。Pat Metheny Group『Imaginary Day』(写真左)。1997年10月のリリース。

このアルバムは、明らかにワールド・ミュージックに大々的に取り入れた「ワールド・フュージョン」と呼んで良いほどの内容である。世界の様々な地域の音世界が取り込まれていて、聴いていてとても楽しい。
 

Imaginary_day

 
というのも、僕はワールド・ミュージックが大好きで、ワールド・ミュージック好きの僕にとって、このアルバムは「とても美味しい」。オリエンタルな響きあり、ケルト音楽を彷彿とさせる響きあり、牧歌的な響きあり、様々な国の音楽の香りがとても芳しい。

そして、何より、このアルバムが優れている点は、この様々な国の音楽、いわゆるワールド・ミュージックな要素をしっかりとPMGの音世界として取り込み昇華させているところである。聴き応え満点である。

このPMGの音世界をジャズとするかどうか、という議論もあるみたいだが、バックのリズム&ビートはジャズっぽくもあり、もともとジャズは融合の音楽である、と言う観点からしても、ワールド・ミュージックに大々的に取り入れた「ワールド・フュージョン」的なアプローチは「ジャズらしい」と僕は感じていて、これはこれで「アリ」かな、と。

1950年代の4ビートのハードバップを「純ジャズ」とするなら、このPMGのアルバムはその対極に位置する内容ですね。これもジャズ、されどジャズ。肩肘張らずに、極上の「ワールド・フュージョン」を愛でるのもよいものです。

 
 

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2015年10月18日 (日曜日)

ジョンスコとパットの邂逅です。

新作ではないんですが、このアルバムも初めて入手した類。リーダーのジャズメンはお気に入りなのに、なかなか縁がないのか、入手に至らない盤ってたまにある。特にこのアルバムは双頭リーダーの二人とも大のお気に入りギタリスト。今まで手にしなかったのが不思議。

そのアルバムとは、John Scofield & Pat Metheny『I Can See Your House From Here』(写真左)。1993年12月ニューヨーク、パワーステーションで録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield & Pat Metheny (g), Steve Swallow (b), Bill Stewart (ds)。メンバー的には、ジョンスコのトリオにパットが参加したような感じ。

バックのベースの大御所スティーブ・スワロー、ドラムのビル・スチュワート共にかなりの優れもので、フロントで主役の2人のギタリストのパフォーマンスをガッチリ受け止め、がっちりサポートしている様は、実に安定感があり、実に説得力がある。

フロントの二人、主役の二人、ジョンスコとパットであるが、これがまあ、素晴らしいコラボレーションを聴かせてくれている。ぶつかったり、エゴを出し合ったりすることは皆無。お互いの音を聴きながら、しっかりと相手と対話し、しっかりと自らの個性を発揮し、しっかりとユニゾン&ハーモニーする。実に大人のコラボである。
 

John_scofield_pat_metheny

 
サウンド的には、ジョンのAS-200とパットのES175がぶつかり、ユニゾン&ハーモニーするんだが、サウンド的にもお互いの邪魔はしない。どころか、異なるギターの音色がとっても上手く重なり合って、聴いていて、実に心地良いユニゾン&ハーモニーを醸し出す。これは目から鱗。ジョンスコとパットのギターがこんなに相性が良いなんて思ってもみなかった。

曲のよって、ジョンスコとパット、同じ雰囲気の音を出し合って、双子の兄弟の様な、音色の傾向が同じなユニゾン&ハーモニーを醸し出す曲もあれば、ジョンスコとパット、それぞれの個性を前面に押し出して、ジョンスコ色とメセニー色に真っ二つに分かれる曲もある。バリエーション豊かで決して飽きない、優れた内容である。

タイトルは聖書の中の言葉で『わざわざその地に行かずとも私にはそなたの家の様子が手に取るようにわかる』の意。なるほど、ジョンスコとパット、お互いの音を頭で理解すること無く、感覚で解り合えるということか。確かにこのアルバムを聴くとそれがなんとなく納得出来る。それほど、ジョンスコとパットのコラボは息が合っている。

決して、伝統的なジャズ・ギターでは無いが、コンテンポラリーなジャズ・ギターとして、必聴のアイテムでしょう。演奏されるフレーズが親しみ易いものが多いので、ジャズ者初心者の方々にもお勧めです。ちょっと変ちくりんなジャケットに怯まず、手にしても良い佳作です。

 
 

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