2020年9月17日 (木曜日)

メセニー者には避けて通れない

孤高のアメリカン・ルーツなギタリスト、パット・メセニーも今年で66歳。もはや大ベテラン、若しくはレジェンドの域に達している。そして、盟友のキーボード奏者、ライル・メイズが今年の2月に亡くなって、パット・メセニー・グループ(PMG)は開店休業状態。盟友を亡くしてさぞかし落胆しているだろうと思っていたら、6年振りのスタジオ録音盤が今年の2月にリリースされた。

Pat Metheny『From This Place』(写真)。ちなみにパーソネルは、コアとなるパットのグループとして、Pat Metheny (g, key), Gwilym Simcockv(p), Linda May Han Oh(b, voice), Antonio Sanchez (ds)。そこに、Meshell Ndegeocello (vo), Gregoire Maret (Harmonica), Luis Conte (perc) がゲストで加わり、ストリングスとして「The Hollywood Studio Symphony」が参加している。

今回のパットの新盤、ストリングスを大々的に取り入れていて、素直に聴いていると「ジャズ臭さ」が希薄で、リズム&ビートも決してジャジーでは無いし、ストリングスのアレンジも従来型で平凡。ストリングを活かしたイージーリスニングなフュージョン・ミュージックという雰囲気が濃厚になっている。ここまでストリングスを取り入れ、スインギーなビートを押さえた内容については、ジャズと呼んで良いものか、という疑問を持ってしまった。
 
 
From-this-place  
 
 
しかし、ギターの音色、フレーズについては、明らかにパット・メセニーで、ジャズか否かと思う前に、濃厚な「パット・メセニー節」に包み込まれる。フォーキーで、米国の自然の風景を彷彿とさせる「ネイチャー」な響きの音世界。スイング感やファンクネスを排除した、ニュー・ジャズなリズム&ビート。冒頭の「America Undefined」のギターを聴くだけで、この盤はパットのリーダー作だと判るのだから、その個性たるやユニークかつ濃厚。

それでも、演奏全体の雰囲気については、ジャズらしさは希薄である。従来のライル・メイズが存命の頃のパット・メセニー・グループ(PMG)の音世界とは打って変わって、今回の新盤の音世界は、壮大で叙事詩的な、イージーリスニングなフュージョン・ミュージックと僕は解釈した。ここまでジャズっぽさを排除して、パット・メセニーの音世界だけを全面に押し出した盤は今回が初めてだろう。

ジャズの醍醐味である「即興演奏やインタープレイの妙」もこの新盤の中ではほとんど聴かれず、しっかりと譜面に書かれたであろう、壮大なオーケストラ・ミュージックが展開される。音楽としてはしっかりと聴き応えがある。この盤はジャズか否かということを考えず、パット・メセニー独特の音世界をしっかりと楽しむ、パット・メセニー者の方々には避けて通れない新盤だろう。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 

  ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.09.02 更新。
 
  ・『Restless Nights』 1979
 
 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.09.02 更新。
 
  ・『The Best of The Band』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.09.02 更新。
 
  ・僕達は「タツロー」を発見した
 
 
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2020年2月12日 (水曜日)

追悼「ライル・メイズ」です。

パット・メセニー・グループ(PMG)の重鎮キーボード奏者、ライル・メイズ(Lyle Mays)が再発性疾患との長い戦いの末に亡くなった。昨晩、Twitterからの情報から、パット・メセニーのオフィシャル・サイトでその詳細を知った。ライル・メイズは米国ウィスコンシン州出身。1953年11月生まれなので、享年66歳。早過ぎる逝去である。

僕がライル・メイズの名前を知ったのは、Pat Methenyの『Watercolors』というアルバムだった。まだ、パット・メセニー・グループ(PMG)が存在しない時代、パット・メセニーのソロ盤で、耽美的で透明感抜群なピアノと印象的なエコーと伸びのシンセの音に耳が釘付けになった。そのピアノとシンセが「ライル・メイズ」であった。そう、あれは1978年の秋だったと記憶している。以来40年以上、PMG共々、ライル・メイズのキーボードを聴き続けてきた。

Lyle Mays『Fictionary』(写真左)。1992年4月23日ニューヨーク、パワーステーションでの録音。ちなみにパーソネルは、Lyle Mays (p), Marc Johnson (b), Jack DeJohnette (ds) のトリオ編成。このパーソネルを見ただけで、このトリオ演奏はその内容が保証されたようなもの。耽美的で透明感抜群、クリアで硬質なタッチでモーダルに弾きまくるメイズにとっては、最高のリズム隊である。
 
 
Fictionary-1  
 
 
このトリオ盤、ライル・メイズのピアノ&キーボードの個性を知るには格好の盤である。冒頭の「Bill Evans」を聴くと、メイズのアコースティック・ピアノの個性が手に取るように判る。耽美的ではあるが、そのタッチは硬質でクリア。ファンクネスは皆無。透明感が強く流麗なフレーズ。耽美的なジャズ・ピアノ、いわゆる「エヴァンス派」にいそうでいない、唯一無二の耽美的ピアノの個性である。

そして、2曲目の「Fictionary」から3曲目の「Sienna」を聴くと、PMGのキーボード・ワーク、キーボード・フレーズの音作りは、ライル・メイズ主導であることが良く判る。このトリオ演奏に、パットのギター・シンセが絡んだら「PMG」そのものである。適度なエコーがかかった、透明度が強く流麗なフレーズが乱舞する。ライル・メイズのピアノとは「これ」である。

ライル・メイズは生涯で、数枚のソロ・アルバムしかリリースしなかった。メイズの活動の大凡は「PMG」。しかし、今回のソロ・セカンド盤『Fictionary』とソロのファースト盤『Lyle Mays』(2010年6月27日のブログ参照)は、メイズを知る上で必聴のソロ・アルバムである。このソロ・アルバム2枚でライズ単体の音の個性を掴みつつ、PMGの一連の好盤を聴く。これが「ライル・メイズ」の楽しみ方である。ご冥福をお祈りしたい。
 
 
 
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2020年1月21日 (火曜日)

意味深なジャコとメセニーの共演

このアルバムは、パット・メセニーのディスコグラフィーを紐解くと必ず最初に出てくるのだ。メセニーのリーダー作でも無いのに、何故か必ず出てくるが、メセニーのリーダー作では無いので、ずっとうっちゃっておいた。しかし、やはり気になる。今回、メセニーのアルバムを聴き直す中で、やっとこの盤を聴くことが出来た。

Jaco Pastorius, Pat Metheny, Bruce Ditmas, Paul Bley『Jaco』(写真)。1974年の録音。メセニーもジャコもまだ単独でリーダー作を出していない頃。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (el-p), Jaco Pastorius (b), Bruce Ditmas (ds), Pat Metheny (el-g)。並列名義のアルバムだが、目立った順に並べると以上の様になる。ジャズ・ピアノの鬼才、ポール・ブレイがアコピではなく、全編エレピを弾いている。

このブレイのエレピが「エグい」。自由度の高い、切れ味の良い、メロディアスなエレピ。フリーキーなフレーズも見え隠れしつつ、モーダルでちょっと前衛に傾いた、テンションの高いエレピ。このブレイのエレピが、アルバム全編に渡ってグイグイ迫ってくる。このブレイのエレピを聴いていると、このアルバムの主導権はブレイが握っていたと思われる。
 
 
Jaco  
 
 
さて、気になるメセニーと言えば、ちょっと目立たない。しかし、メセニーのギターの音が出てくると、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。逆に、メセニーのギターの個性は、ブレイのエレピとは相性が良くないことが聴いて取れる。水と油の様で上手く融合しない。この盤では、メセニーはブレイが前面に出て弾きまくっている時、そのフレーズに絡むことはほとんど無い。

逆に、ジャコのベースはブレイのエレピに適応する。ジャコについても、まだ単独でリーダー作を出していないのに、既に音の個性は完全に確立されているのにビックリする。フリーキーなフレーズにも、モーダルなフレーズにも、前衛に傾いたテンションの高いフレーズにも、クイックに対応する。それどころか、ブレイの自由度の高い弾き回しに、絡むようにエレベのラインを弾き回す。ブレイのエレピとの相性は良い。

しかし、ブレイのエレピは従来のブレイのアコピの延長線上にあるが、ジャコのベースとメセニーのギターはそれまでに無い新しい「何か」である。それまでのジャズには無いフレーズと弾き回し。アドリブ・フレーズに対する取り回しが「新しい」。つまり、ジャコやメセニーにとって、ブレイのエレピでは「変革」は起きない、ということ。後に、ジャコ、メセニー共に、それぞれの新しい個性を増幅させてくれるキーボード奏者と出会って、大ブレイクしていくのだ。
 
 
 
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2019年3月17日 (日曜日)

ECMを感じるに絶好の一枚

欧州ジャズの老舗レーベルであるECM。ECMには独特の音の傾向がある。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

米国のブルーノート・レーベルの「統一感」に勝るとも劣らない、芸術という観点でのレーベル運営をECMに感じることが出来る。アイヒャーの監修・判断による、アイヒャー独裁による強烈な「美意識」。"The Most Beautiful Sound Next to Silence" この「沈黙に次いで最も美しい音」を基本とするECMレーベルの「音の統一感」は、"Produced by Manfred Eicher" のクレジットの下に徹底されている。

そんなECMレーベルには、専属、もしくは専属に近いミュージシャンが多くいる。例えば、ヴァイブのゲイリー・バートン(Gary Burton)などは、ECMの「お抱えミュージシャン」の代表格。当然、ECM時代のバートンの数々のリーダー作の音は、典型的なECMレーベルの音世界で充満している。
 

Dreams_so_real  

 
Gary Burton『Dreams So Real - Music of Carla Bley』(写真)。1975年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Mick Goodrick (g), Pat Metheny (g), Steve Swallow (b), Bob Moses (ds)。ギターは若き日のパット・メセニーとバークリーの師匠格のグッドリックとが、曲によって弾き分けている。副題を見れば「カーラ・ブレイの作品集」であることが判る。

典型的なECMの音世界である。バートンの革新的な4本マレット・ヴァイブが効いている。硬質で透明度の高いクリスタルな響き。転がる様に流麗なアドリブ・フレーズ。若き日のパット・メセニーのエレクトリック12弦ギターも良い。ファンクネスは皆無、切れ味の良い、西洋クラシックの香りのするストローク・プレイ。「静謐な熱気」を伴った、適度なテンションが心地良いインプロビゼーションの数々。

この盤、どの収録曲についても演奏のレベルが高い。1曲たりとも「緩演」や「駄演」が無い。「静謐な熱気」と「適度なテンション」を伴ったグループの個性とメロディアスなカーラの曲とのマッチングが絶妙。現代芸術的なECMオリジナルの統一感を強く感じるアルバム・ジャケットのアートワークも良好。ECMの音世界を感じるに絶好の好盤です。

 
 
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2018年10月28日 (日曜日)

作り手と聴き手の評価が違う盤

音楽のアルバムって、作った本人の感覚と聴いた人との感覚とが全く異なることがある。おおよそ、作った本人が「失敗作」とした盤が、聴き手には「好盤」に感じるケースが多い。逆に作った本人が「好盤」と感じるのに、聴き手が「失敗作」というケースは少ないだろう。この場合は作った側が、客観的に自分の音楽的成果を評価出来ない場合に限るからだ。

実はパット・メセニーにも、そんな作り手と聴き手、それぞれの評価が乖離している盤がある。Pat Metheny『Rejoicing』(写真)。1983年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g), Charlie Haden (b), Billy Higgins (ds)。曲名を見渡すと判るが、パットが敬愛する「オーネット・コールマン」集である。

パットはこの盤を「最悪のレコード」と評し、ECMレーベルを離れる切っ掛けになった盤としている。パットは1983年7月より、この盤と同じパーソネルで北米ツアーを敢行している。かなり内容の充実したツアーだったらしく、パットは満足の極致にあったそう。しかし、そこにECMの総帥アイヒャーが無理な録音スケジュールを押し付けて、無理矢理アルバムをレコーディングした。この時のレコーディングの雰囲気は最悪だったそうだ。
 

Rejoicing

 
しかも、この盤の内容から判る様に、オーネット・コールマン集である。ECMレーベルの録音の個性、いわゆる「限りなく静謐で豊かなエコー」をかけるのは、直感的に悪趣味に近いと感じる。しかし、アイヒャーは自らの主義を貫いた。この盤の音は静謐感溢れるクラシカルなオーネット・コールマンに仕上がった。これがパットの逆鱗に触れる。そして、アイヒャーとの間に確執が生まれたらしい。

しかし、パットが言うほど酷い無い様では無い。パット=ヘイデン=ヒギンズのトリオの奏でる「オーネット」の音世界は自由度高く、アドリブ展開の幅が深く広がる。その素晴らしい「オーネット」な即興演奏を、ECMの音作りは、静謐感溢れ、クラシカルで、アート感豊かな音に昇華させている。演奏の音のエッジの切れ味の良さも、個々の演奏の深みも十分に表現されていて、ECMレーベルの「オーネット」な音として、とてもユニークな出来に仕上がっている。

ちなみに冒頭の「Lonely Woman」は、かの有名なオーネット作のものではなく、ホレス・シルバー作のもの。パットのインテリジェント溢れる悪ノリなんだが、こういうところがパットの「面倒くさい」ところ。しかし、2曲目以降は全て「オーネット」作で、パット以下のトリオ演奏は素晴らしい成果を残している。結果として、プロデューサーとしてのアイヒャーの感覚が勝った訳だが、この盤の後、ほどなくパットはGeffenレーベルに移籍する。

 
 

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2018年10月26日 (金曜日)

PMGのピークを捉えたライブ盤

パット・メセニーは従来のジャズの臭いがしない、新しいタイプのジャズ・ギタリストだった。まず、ファンクネスが皆無。そして、オフビートが軽い。1970年代のフュージョン・ジャズのギターであれば、ジャズ・ファンク風に弾きまくるのだが、パットは違う。パットのギターは軽やかで爽快。当時、明らかに「ニュー・ジャズ」な音世界は賛否両論の議論を生んだ。
 

今でも「パット・メセニーが嫌い」というジャズ者の方々も結構いる。「あれはジャズじゃない」とバッサリ。別にジャズか否かを決めつける必要な無いと思うんだが、確かに従来のジャズの音世界では無いのは事実。しかし、即興演奏をメインとする演奏の展開は、やはりジャズだろう。ファンクネスが皆無なジャズは欧州に多く存在し、オフビートが軽いジャズについては、例えば日本のジャズがそうである。

Pat Metheny Group『Travels』(写真)。1983年のリリース。改めてパーソネルは、Pat Metheny (g), Lyle Mays (key), Steve Rodby (b), Danny Gottlieb (ds)。Nana Vasconcelos (perc)。1982年7月から11月にかけてのツアーから、フィラデルフィア、ダラス、サクラメント、ハートフォードでのライブ音源が収められている。
 

Travels1_2  

 
素晴らしい内容のライブ盤である。音も良い。演奏も良い。PMGのピークを捉えた名ライブ盤である。PMGの音世界は2つの側面がある。1つは米国の田舎の風景、広がりのある高い空、小麦畑、牧場、遠くに連なる山々を想起させるもの。僕はこれを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んでいる。そして、PMGの音世界のもう一つの側面は、アダルト・オリエンテッドで小粋なフュージョン・ジャズ。

PMGの2つの音世界が程良くブレンドされて、タイトで躍動感溢れる演奏と相まって、素晴らしい音世界が展開されている。パットのアドリブ展開もイマージネーション溢れる素晴らしいもの。この即興性は明らかにジャズである。ファンクネス皆無、軽やかなオフビート。従来のジャズの音世界では無いが、明らかに新しい響きのする「ニュー・ジャズ」である。

ちなみにこのライブ盤が日本で初めてリリースされた時の帯紙のキャッチコピーが「いつかどこかで、君が感じたあの想い、あの香り」。なんじゃこりゃ〜。こういうことをしているから、パット・メセニーはジャズじゃない、と言われるんだ。当時のトリオレコードの責任は大きいよな〜。

 
 

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2018年6月 8日 (金曜日)

見事な技、見事な表現力である

パット・メセニーがサイドマンのアルバムを聴いている。パットは伴奏上手。パットのギターは自らがリーダーのアルバムとサイドマンで参加したアルバムとで、雰囲気がガラッと変わる。特にサイドマンの時は、参加したそのセッションのリーダーの楽器を惹き立てるように、また、同じ雰囲気でユニゾン&ハーモニーをかまし、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げる。

その好例がこのアルバム。Joni Mitchell『Shadows And Light』(写真)。1979年9月、カルフォルニアはSanta Barbara Bowlでのライブ録音。ジョニ・ミッチェルは米国の女性シンガーソングライターの草分けで、その浮遊感と神秘性のある歌詞と曲が彼女の最大の個性。その音楽性は複雑で高難度。通常のロック畑のスタジオ・ミュージシャンではちょっと不足な面が出てしまう。

そこで、ジョニは思い切って、ジャズ畑の一流ミュージシャンを招聘することを思い立つ。1970年代、1972年リリースの『For the Roses』から、クロスオーバー・ジャズ畑から、ジャズメンを採用し始める。そして、1979年の『Mingus』では、参加ミュージシャンは全てがジャズ畑からの招聘となった。確かに、彼女の複雑で高難度な音楽性を的確に表現出来るのは、ジャズ端のミュージシャンをおいて他に無い、と思う。
 

Shadows_light

 
さて、このジョニのライブ盤『Shadows And Light』の、バックバンドのパーソネルは、Pat Metheny (g), Jaco Pastorius (b), Don Alias (ds, perc), Lyle Mays (el-p, syn), Michael Brecker (sax)。いやはや、錚々たるメンバーでは無いか。録音当時、ジャズ界では、これらのメンバーは、人気&実力、共に既に超一流。そんなメンバーがバックを務めるのだ。悪かろう筈が無い。

そんなサイドメンの中で、特筆すべきは、ギターのパットとエレベのジャコ。この2人のテクニックと表現力は群を抜いている。ジョニの複雑で高難度な音楽性を、高度なテクニックと表現力で、的確に表現していく。特に彼女の楽曲が持つ浮遊感と神秘性をパットはギターシンセで、ジャコはフラットレスのエレベで表現していく。これがこのライブ盤での最大の聴きもの。ジョニの楽曲を惹き立て、ジョニのボーカルを浮き立たせるバッキング。

パットもジャコも自分たちの音を出すより、ジョニの楽曲にあった、ジョニの楽曲が表現する音世界を具現化するような音を選び、フレーズを紡ぎ上げる。見事な技であり、見事な表現力である。さぞかし、フロント・ボーカルを張ったジョニは唄いやすかっただろう。このライブ盤でのパットとジャコのバッキングは何度聴いても飽きないし、聴く度に感動する。

 
 
 

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2018年5月30日 (水曜日)

パット・メセニーの正式初録音盤

パット・メセニー(Pat Metheny)のサイドメン参加のアルバムを聴き進めている。メセニーと言えば、今や、押しも押されぬ現代ジャズ・ギターのレジェンドである。1970年代以降の「ニュー・ジャズ」の範疇でのエレクトリック・ギターは第一人者のポジションを維持している。スインギーな4ビート・ジャズとは全く対極のニュージャズの寵児であるメセニー。

そんなメセニーについては、サイドメン参加に回った時のプレイの方が、メセニーのエレギの特性を強く感じることが出来るのでは無いか、という仮説の下に、パット・メセニーのサイドメン参加のアルバムを聴き始めた。これが、どうも当たりみたいで、サイドメンのプレイの方が、リーダーの音のイメージという「規制」がの下で個性を表出しなければならない、という条件下で、メセニーの個性が強くでるみたいなのだ。

Gary Burton Quintet with Eberhard Weber『Ring』(写真左)。1974年7月の録音。ECMの1051番。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Goodrick (g), Pat Metheny (g, el-12-string g), Steve Swallow (b), Eberhard Weber (b), Bob Moses (ds, perc)。パット・メセニーが、録音アルバムに名を連ねた、最初の正式盤である。
 

Ring

 
メセニーの師匠格であるゲイリー・バートン。バートンの慧眼恐るべしである。1970年代前半、当時、ニュー・ジャズの推進者であたゲイリー・バートン。彼の音楽性に対して、パット・メセニーのエレギはピッタリの存在だったことがこの盤を聴いて良く判る。メロディアスでフォーキーなソロから、怜悧でクールなフリー・インプロビゼーションまで、メセニーの持つ「ギターの個性」が、このバートンのイメージする音世界にピッタリなのだ。

ダブル・ベースにダブル・ギター。編成からして規格外である。この盤でのメセニーのギターについても「規格外」。恐らく、当時、過去を振り返っても、聴いたことの無いエレギの音とインプロビゼーションだったと推察する。バートンのヴァイブのバックで、シャープにウネウネ蠢くエレギの音は明らかにメセニーである。

この頃のバートンの音世界は「クロスオーバー・ジャズの最後期」の音。メセニーはちょっと歪んで捻れたエレギをウネウネ弾きまくる。とは言え、メセニーの後の個性はまだまだ。とにかく、当時のトレンドのエレギを必死で弾いている、という面持ちが微笑ましい。音の個性の確立はもっと後になるが、その萌芽はこの盤でしっかりと感じ取れる。まだ、あまり個性が目立たない、貴重な若き日のメセニーのパフォーマンスである。

 
 

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2018年5月 6日 (日曜日)

ネイチャー・ジャズの極みを聴く

昨日より「ネイチャー・ジャズ」の特集。1970年代に発生した「ニュー・ジャズ」の範疇の中で、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンスが存在します。僕はこういうジャズを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んでいます。

そんなネイチャー・ジャズの最右翼は「パット・メセニー」。特に、1970年代〜80年代のPMGは、基本「ネイチャー・ジャズ」の響きが満載。そんな中、PMGでは無い、共同名義のアルバムがそんな「ネイチャー・ジャズ」の好盤の中で、ピカイチの存在のアルバムがある。

Pat Metheny & Lyle Mays『As Falls Wichita, so Falls Wichita Falls』(写真左)。邦題『ウィチタ・フォールズ』。1981年、ECMレーベルからのリリース。パットと盟友ライル・メイズとの共同名義のアルバムである。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (el/ac 6-and 12-string g, b), Lyle Mays (p, syn, el-org, autoharp), Naná Vasconcelos (berimbau, perc, ds, vo)。パットがギターとベースを掛け持ちする変則トリオ編成。
 

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アルバムの隅から隅まで「ネイチャー・ジャズ」の音世界で埋め尽くされている。パットとメイズが共存しているPMGよりも「ネイチャー・ジャズ」の雰囲気が色濃い。恐らく、パットとメイズの共通の音のイメージがこのアルバムに提示されているのであろう。スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンス。

郷愁を誘い、センチメンタルに傾き、スピリチュアルであり、クールでもある。目を閉じれば、様々な自然のシーンが脳裏に浮かび、思わず心が癒される。そんな「ネイチャー・ジャズ」な音世界。パットのギター、メイズのキーボードが、そんな音世界をイマージネーション豊かに表現していく。クールなエモーショナルで内省的な音世界。独特である。

ナナ・バスコンセロスのパーカッションが印象的かつ効果的。パットとメイズのデュオだけだと、自然独特の動きや躍動感が単調になるきらいがある。ここにバスコンセロスのパーカッションが絡むことによって、躍動感に奥行きとバリエーションが付加されて、演奏に深みが出る。これがこの「ネイチャー・ジャズ」盤の優れた所であり、聴きどころである。「ネイチャー・ジャズ」ここに極まれり、である。

  
  

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2017年11月27日 (月曜日)

ECMレーベルらしい音・4

僕はこのアルバムで、パット・メセニーに出会った。大学の友人宅で聴かせて貰った。当時、ロックしか知らない音楽野郎で、ジャズは全く知らなかった。そして、その友人は「お前のキャラからするとECMやなあ」とブツブツ良いながら、このアルバムをかけてくれた。スピーカーから出てきた音は、今までの音楽体験の中で、全く、聴いたことの音世界だった。

Pat Metheny『Watercolors』(写真左)。1977年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g, 12-string g, 15-string harp-g), Lyle Mays (p), Eberhard Weber (b), Danny Gottlieb (ds)。Pat Metheny Group(PMGと略)で盟友となるピアノのライル・メイズとの初共演盤になる。

こんなジャズがあったんや、と感動した。それまでのジャズの印象とは全く違う、というか、全く新しいジャズの形だと思った。ファンクネスは皆無。黒さは全く感じられず、逆に米国ルーツ・ミュージックの1つである「フォーク、カントリー、ポップス」の要素を取り込み、自然の風景や気候を感じさせる、フォーキーでメロディアスなフレーズが特徴。僕は勝手に「ネーチャー・ジャズ」と形容している。
 

Watercolors

 
タイトルが「色とりどりの水」なので、全編聴き通すと「水」にまつわる様々な景色、模様が浮かんできます。面白いです。印象画の様なコンテンポラリー・ジャズとでも言いましょうか、穏やかではあるが、濃密かつ親密な音世界がとても魅力的です。音で情景を紡ぎ上げていく。そして、適度に豊かなエコー。典型的な「ECMレーベル」の音世界です。

ゴットリーブのドラムが印象画の様な音世界に適した「躍動感」を与えている。ウェーバーの柔軟で流麗なアコベとエレベが、パットのギターのベース・ラインに寄り添って、パットのギターをグッと浮き立たせ、グッと惹き立たせている。そして、ライル・メイズのピアノは「言わずもがな」、パットのギターに最適なピアノの音を止めども無く供給し続ける。とにかくリラックス出来る好盤。

フォーキーでメロディアスなフレーズが爽やかで優しい。パットの切れ味良く、やや捻れ気味にウォームなエレギの音は一度聴いたら忘れられないほど「個性的」。このパットのギターの音色とひねり出すフレーズが気に入るか、気に入らないかで、パットの評価は正反対に二分されるだろう。で、僕はパットのギターが大好きです。ジャズを聴き始めた頃に、この『Watercolors』に出会ったことは、僕にとって実に幸運な出来事でした。

 
 

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  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
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