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2017年5月15日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その30

「ボサノバ」とは、ブラジル音楽のジャンルのひとつ。ブラジル音楽と言えば「ボサノバ」である。1950年代後半に発祥し、1950年代終盤にはブラジルで大ヒットし、ブラジルのポピュラー音楽に革命を起こし、世界中の国へ飛び火した。

米国では1960年代前半、テナーのスタン・ゲッツがいち早く、ボサノバをジャズに取り入れ大ヒット。以降、ボサノバ・ジャズは、いつの時代にも必ずあり、幾枚かのアルバムは必ずヒットする。ボサノバ・ジャズは今やジャズのポピュラーな演奏形式のひとつとなっている。

Eliane Elias(イリアーヌ・イリアス)。1960年生まれだから、今年で57歳。ブラジル出身の美貌のジャズ・ピアニスト&ボーカリストである。我が国では「イリアーヌ」とファースト・ネームだけで呼ばれることも多い。トランペッターのランディ・ブレッカーの元嫁。現在の夫はベーシストのマーク・ジョンソン。現代の「ボサノバ・ジャズ」の代表格である。

イリアーヌといえば「ボサノバ&サンバ」。とにかく、ボサノバ主体のリーダー作が多い。とにかく多い。このところ、さすがに食傷気味になってきた。時々、ビル・エバンスやチェット・ベイカーへのトリビュート企画盤を出したりするが、他は基本的に「ボサノバ&サンバ」。
 

Dance_of_time1

 
初期の頃は、ジャズ主体の「ボサノバ&サンバ」だったが、以降、歳を重ねるにつれ、純粋な「ボサノバ&サンバ」に傾倒していった。これではもはやジャズとは言えなくなるなあ、と思っていたら、前作の「Made in Brasil」でちょっとジャズ寄りに修正してきた。そして、今回のこの新作である。

今年のイリアーヌの新作は、Eliane Elias『Dance of Time』(写真左)。「ボサノバ&サンバ」ジャズの集大成的なアルバムである。イリアーヌのボーカル&ピアノの素晴らしさもさることながら、この盤では、それぞれの曲に施されるアレンジ、そして、バンド全体のグループ・サウンドのテクニックの高度さと精度の高さが素晴らしく、「ボサノバ&サンバ」ジャズをアートの高みへと誘っている。

アルバム全般に渡って、緩みは破綻は全くないどころか、完璧に近いくらい「理路整然」としている。形式美が個性のアーティステックな「ボサノバ&サンバ」ジャズな盤である。イリアーヌの「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤の中でも、この盤の完成度は群を抜いている。

イリアーヌの「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤の「けじめ」とも言える一枚。これ以上の「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤を望むには無理上がる。それほど、この盤は完成度が高い。さて、イリアーヌの次作は何処へ行くのだろう。イリアーヌの次作への展開が実に楽しみである。

 
 

震災から6年2ヶ月。決して忘れない。まだ6年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年10月31日 (月曜日)

秋深まる季節にボサノバ・ジャズ

この秋深まる季節に「ボサノバ・ジャズは合わないよな」と思うのは性急ではある。確かに、この秋真っ只中の季節、朝と夜はちょっと寒い。寒い中で聴くボサノバ・ジャズは「殺風景」である。軽妙洒脱のリズム&ビートが寒々と感じる。

しかし、である。この秋深まる季節、ちょっと暖かな「小春日和」な昼下がり、ホンワカ暖かい部屋の中で、ブラック珈琲を傾けながら聴くボサノバ・ジャズは、意外に「オツなもの」である。昼ご飯をお腹いっぱい食べた後、ちょっと眠くなってきて微睡みながら聴くボサノバ・ジャズは、一時の「至福の時」である(笑)。

微睡みながら聴くボサノバ・ジャズは、微睡みの「至福の時」を妨げる様な、難しい演奏はいけない、複雑な演奏もいけない。イージーリスニング一歩手前の、ほとんどイージーリスニングでも良い、聴いていて心地良い、難しいことを考えず、聴く耳をそばだてることも無い、聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズが良い。

そんな聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズ盤を選盤する。Laurindo Almeida『Guitar From Ipanema』(写真左)。1964年の作品。ローリンド・アルメイダは、1917年生まれのブラジルのギタリスト。惜しくも1995年7月逝去しました。アルメイダは、生粋のボサノバ系ギタリストというよりは、ボサノバ・ジャズ系のギタリストという印象が強い。テクニックはかなり高く、聴いていて爽快かつ深みのあるギター。
 

Guitar_from_ipanema

 
ジャック・マーシャルの口笛をフィーチャーしているのが面白い。口笛をフィーチャーすれば、もはやこれは純ジャズでは無いだろう。しかし、このジャック・マーシャルの口笛が心地良い。「The Girl From Ipanema」の口笛の気持ちよさ、「 Old Guitaron」のボーカルの愛らしさ。

とにかく全編に渡ってユルユルの緩さ。この緩さが堪らなく心地良い。ボサノバのリズム&ビートは純正で、ボサノバ・ジャズ独特のライトさと心地良さ満点。メインストリーム・ジャズとは対極の「ユルユル」イージーリスニングなジャズである。
 
硬派なジャズ者の方々からすると「けしからん」ボサノバ・ジャズ盤でしょう。でも、そういう時は、この盤はイージーリスニング盤と解釈して耳を傾けていただければ、と思います。

ジャケットも全くジャズらしからぬ「ユルユルさ」。でも、この緩さが堪らない。この秋深まる季節、ちょっと暖かな「小春日和」な昼下がり、ホンワカ暖かい部屋の中で、ブラック珈琲を傾けながら聴くボサノバ・ジャズは、意外に「オツなもの」。固いこと抜きで、この盤に詰まっている、聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズを楽しみましょう。

 
 

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2016年10月 4日 (火曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その29

時は10月は4日。台風が来ていて、更に前線を通過する低気圧の影響で夏の空気が流れ込み、今日は「真夏日」。夕方、日が暮れても、周りの空気は「もわっ」として、ほとんど夏の雰囲気。もう10月だというのに通勤の服装は半袖である。

これだけ蒸し暑くなると、やはり純ジャズを聴くのは辛い。ということで、今日は「夏はボサノバ・ジャズ」リターンズである(笑)。この夏、聴き残したボサノバ・ジャズのアルバムをあれこれ、ごそごそ漁って、選んだアルバムがこれである。

Ivan Lins『América, Brasil』(写真左)。昨年4月のリリース。イヴァン・リンスのキャリア45年におよぶ新旧自作曲から、セルフ・カバーをテーマにした作品。こんなアルバムが聴き残し盤で残っていたとは。全くもって面目無い。

イヴァン・リンスとはブラジル出身のミュージシャン。ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック(MPB)やジャズ界で主に活動。流麗なメロディーと繊細で雅なボーカル。このアルバムは、ボサノバ、サンバ、いわゆるブラジリアン・ミュージックの良いところが「てんこ盛り」。
 

America_brasil

 
良い雰囲気のボサノバ・サンバ調のジャズで、さすが本場ブラジルの演奏するボサノバ・サンバ調のジャズは、米国のジャズメンが演奏する雰囲気とはちょっと違う。まず、リズム&ビートの取り方と雰囲気が違う。恐らく、ブラジル人の「血」が成せる技なのだろう。普通に演奏していて、全くもって、正調なボサノバ・サンバ調のジャズになる。

ゲスト参加のギタリストのレオナルド・アムエドも、1曲ではあるが「 Que Quer De Mim. Part. Leonardo Amuedo」で、良い雰囲気を醸し出している。そうそう、もう一人のゲスト参加、ジャズ・ハーモニカ奏者グレゴリー・マレットも哀愁感溢れるフレーズで、我々聴き手の心を揺さぶる。ラストのメドレー「De Nosso Amor Tão Sincero / Vitoriosa」は絶品である。

アルバムのジャケット・デザインも美しく、上質のボサノバ・サンバ調のジャズとして注目盤。イヴァン・リンスはこの盤を録音した時点で70歳。70歳にしてこの歌声は素晴らしいの一言。ボサノバ・サンバ調のジャズがお気に入りのジャズ者の方々にはお勧めの好盤です。

 
 

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2016年8月28日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その28

ボサノバ・ジャズは純粋なボサノバでは無い。でも、ボサノバ・ジャズを聴けば、リラックスできるし、ストレス解消にもなる。ボサノバ・ジャズは、純ジャズとの補完関係にあると思っていて、特に、夏の暑い時期、純ジャズを聴くに辛い時、ボサノバ・ジャズはそれを補ってくれる。

ボサノバ・ジャズはある程度、耳当たりが良いことが大切。シビアな純ジャズ風で耳に迫る風だと、夏の暑い時期、ちと辛い。イージーリスニングに陥ること無く、聴き応えと聴き易さを両立させるバランス感覚が大切になる。

基本的に純ジャズをメインに展開している日本のジャズ・レーベルに「ヴィーナス・レーベル」がある。日本人好みの純ジャズをプロデュースし続けていて、ジャズ者ベテランの方々を中心に、熱心なファンを持つレーベルである。そんなレーベルなんで、ボサノバ・ジャズなんてやらんやろう、と思ってカタログを見ていたら、幾枚かあるではないか。

そんなヴィーナス・レーベルからリリースされた、ボサノバ・ジャズな一枚が、Joe Beck『Brazilian Dreamin'』(写真左)。2005年の録音。Joe Beckはエレクトリックとガット・ギターで、Ira Colemanのベース、Thierry Arpinoのドラムスというトリオ編成。2曲だけGregoire Maretのハーモニカが加わりますが、基本的にはギター・トリオというシンプルな編成。
 

Brazilian_dreamin

 
アルバム・タイトルどおり、ボサノバを中心にしたブラジル風味で統一されたアルバムで、聴き心地のとても良いものです。耳当たりが良く、リズム・セクションはしっかりとしていて、聴いていて飽きがくることはありません。純ジャズの基本とボサノバの雰囲気をしっかりと押さえていて、その出来は良い。

ジョー・ベックのギターについては、やはりエレクトリック・ギターが良い。ボサノバ・ジャズの雰囲気に合わせた、気味良く柔らかで官能的なエレギの音色は個性的。Antonio Carlos Jobimの名曲の旋律をクッキリと印象付けていきます。柔らかで典雅ではあるが甘くは無い、いわゆる「クール」なエレギの音色です。

このアルバムの収録曲の中でユニークなのは、ジョン・コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドの名曲「Giant Steps」が収録されていること。ボサノバを中心にしたブラジル風味で統一されたアルバムの中に、メカニカルな複雑なコード進行を持つ超難曲が入っている。思いっきり違和感を覚えますが、殆ど「換骨奪胎」、原曲、元演奏の雰囲気は微塵も無い、歌心満載のボサノバ・チューンに変身しています。話題性は無いと思われます。

ボサノバ・ジャズのアルバムとしては、まずまずの出来で、純ジャズの基本とボサノバの雰囲気をしっかりと押さえた「ボサノバ・ジャズ」の一枚として、コレクションに加えるのには良い盤では無いでしょうか。

 
 

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2016年8月26日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・65

ジャズ畑のミュージシャンがボサノバをやっても、最終的には純粋なボサノバにならない、と言われる。確かにそうで、根本的にリズム&ビートの捉え方と叩き出し方が違う様なのだ。タッチのアクセントもちょっと違うし、ボサノバにはファンクネスは基本的に無縁だ。

それでは、ジャズ・ボサを作った男と言われる名ドラマーがいる。そんな彼がジャズ・ピアノ・トリオでボサノバをやったら、どうなるのだろう。その具体的な答えの一つが、このアルバム『Milton Banana Trio』(写真左)。ミルトン・バナナは、ボサノバのトップ・トラマー。そんなミルトン・バナナがリーダーとなって、ジャズ・ボッサをピアノ・トリオのフォーマットで演奏する。

冒頭の有名曲「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」を聴けば、その個性が良く判る。確かに、リズム&ビートの扱い方、アクセントの置き方が違う。加えて、ファンクネスは皆無。乾いていて切れ味が良い。そして、全く「甘い」ところが無い。軽音楽のボサノバは甘いところを前面に押し出しているが、本格的なボサノバは決して「甘く」は無い。
 

Milton_banana_trio1

 
2曲目以降、「プリミチーヴォ」「サマー・サンバ」などなど、ボサノバの名曲がズラリと並ぶ。そして、それぞれのジャズ・ボッサの演奏は、実に硬派で聴き応え十分。実に切れ味良く、ほどよい趣味の良い苦みのある演奏で、聴き込み甲斐がある。そして、クールで硬派な演奏の背後に、ホットな音世界が見え隠れするところも聴き逃せない。

聴いていて面白いのは、米国東海岸、西海岸、はたまた欧州のジャズとは全く雰囲気が異なるジャズ・ボッサの音世界で、ブラジルの人が、南米のラテンな血がジャズをやるとこんな感じになるのか、と思わず感じ入ってしまう。特に、リーダーのミルトン・バナナのドラミングは秀逸で、ピアノ・トリオの演奏とはいえ、知らず知らずのうちに「ドラミングの妙」に聴き入ってしまう。

こういうピアノ・トリオがあるとは、ジャズ・ボッサの演奏があるとは、全く思わなかった、と、目から鱗では無い、耳から鱗な「このアルバム」の存在を知ったのは、今から10年ほど前。今では、CDやダウンロード音源で入手出来て、気軽に聴くことが出来る様になったのだから素晴らしい。ほんと、長生きはしてみるものである(笑)。

 
 

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2016年8月20日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その27

お盆を過ぎて天候が不安定である。いきなり台風が複数個発生したと思えば、関東地方をかすめ通ったり、関東地方直撃コースを伺ったり。今日などは、朝から激しい雨が降ったと思えば、いきなり厳しい陽射しが差し込んで、思いっきり蒸し暑くなり、またまた、激しい雨が降ったりする。

もはや温暖湿潤気候の日本の気候では無い。亜熱帯性気候の雰囲気である。とにかく思いっきり蒸し暑い。少し歩くと気持ち悪くなる位だ。厳しい蒸し暑さって、かなりのストレスになる。身体は疲れるし、心も疲れる。そんな時、聴く音楽は「ボサノバ・ジャズ」。

イージーリスニングだとか軽音楽だとか揶揄されようが、こんなに厳しい蒸し暑さの中で聴く、ストレス解消の心地良いリズム&ビートな音は「ボサノバ・ジャズ」なのだ。それも、飛び切りイージーリスニング・ジャズ仕様な「ボサノバ・ジャズ」が良い。

ということで、Paul Winter『RIO』(写真左)を聴く。1962年9月の録音。リオデジャネイロの建都400年にあたる1964年に、リオの若きコンポーザーたちへの敬意と感謝を込めて作られたアルバム。
 

Paul_winter_rio

 
このアルバムに詰まっている音が、真の「ボサノバ」とは思ってはいない。ボサノバの音の要素を上手く取り込んだジャズである。リズム&ビートも純正の「ボサノバ」では無い。明らかにジャジーなリズム&ビート。それでも、ボサノバ曲の持つ独特のアンニュイで開放的な響きと、ボサノバ独特の心地良く踊るように心に響くリズム&ビートな刻み方が、ジャジーな演奏をボサノバ的雰囲気に染め上げている。

加えて、ポール・ウィンターのサックスの音が良い。ボサノバの雰囲気にピッタリなサックス。ファンクネスとは無縁の、開放的で乾いたメロディアスなサックス。ボサノバ・ジャズのサックスはこういう「AORチックなフュージョン風サックス」が良い。清々しく爽やかでスムーズ。硬派な純ジャズからすると、完全に「軟弱」なサックスになるが、ボサノバ・ジャズにはこれが良い。

ジャケットもしっかりと「ボサノバ」していて魅惑的。1962年当時のジャズのジャケットとしては明らかに「異端」。聴き流しに最適なボサノバ・ジャズだが、ところどころ「おぉっ」と思わせるフレーズが出てくるので、部分的にしっかり聴き耳を立ててしまう。そんな良質のボサノバ・ジャズ盤です。

 
 

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2016年8月19日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・64

The Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)って、ジャズ盤の紹介本で挙がるアルバム以外に、こんなアルバムを作ってたんや、とか、こんなアルバムあったんや、とビックリするほどの充実した内容の「隠れ好盤」は結構ある。そんな中の一枚がこれ。

The Modern Jazz Quartet with Laurindo Almeida『Collaboration』。MJQがブラジル出身のアコースティック・ギターの名手ローリンド・アルメイダ(写真右)と共演した、ボサノバ&サンバ中心の好盤である。両者の共演はまさにモダン・ジャズとボサノバ&サンバが理想的な形で融合した好例といって良い内容です。

まず、ローリンド・アルメイダの存在が鍵で、アルメイダがギターをつま弾くだけで、その演奏の音世界は「ボサノバ&サンバ」の色に染まります。真の「ボサノバ&サンバ」のリズムを刻みつつ、生ギター独特の繊細で爽快な音色がとても印象的です。

そんなギターに絡むのが、The Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)。さすがはMJQで、単純に「ボサノバ&サンバ」な生ギターに絡まない。秀逸なジョン・ルイスのアレンジを武器に、ジャジーな雰囲気も活かしつつ、MJQでしか為し得ない「ボサノバ&サンバ」なジャズを表現する。
 

Collaboration1  

 
ファンクネスを奥に忍ばせつつ、軽妙に「ボサノバ&サンバ」な雰囲気に追従するミルト・ジャクソンのヴァイブ。ジャジーな「ボサノバ&サンバ」なリズム&ビートを刻むコニー・ケイの職人芸的なドラミング。シンプルなフレーズが「ボサノバ&サンバ」にピッタリなジョン・ルイスのピアノ。そして、「ボサノバ&サンバ」なジャズを底で支えるパーシー・ヒースのベース。

MJQの個性と良さを前面に押し出しながら、アルメイダの純正「ボサノバ&サンバ」なリズム&ビートに助けられながら、MJQならではの「ボサノバ&サンバ」なジャズを展開する。タイトル通り、本当に良質な「コラボレーション(協同作業)」である。アルメイダのギターとMJQとの相乗効果がこのアルバムを聴いていて、とても良く判る。

しかし、「アランフェス協奏曲」や「ワン・ノート・サンバ」などの人気曲も含んでいながら、この盤はなかなかCD化されなかったし、ボサノバ&サンバ・ジャズの代表盤として紹介されることが無い。我が国では「知る人ぞ知る」的な好盤に甘んじているのが信じられない。再評価を望みたい好盤である。

 
 

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2016年8月15日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その26

ボサノバとジャズとは相性が良い。ボサノバもジャズも音作りにおいて、リズム&ビートが大きなウエイトを占める。そういうところが「相性が良い」という大きな理由だろう。

ボサノバ・ジャズを評する折、ボサノバ専門の方々からは「リズムがなっていない」とバッサリ切り捨てられる時がある。確かにボサノバのリズムは独特のものがあって、確かにこの独特のリズムをジャズがしっかりと踏襲することが難しいことがある。といって、ボサノバそのもののリズムになると、その演奏はボサノバそのものになる訳で、その度合いとバランスが難しい。

さて、この人のボーカルは、そんな理屈を越えたところにある。この人のボーカルがあるだけで、そのアルバムはきっちりと「ボサノバ」になる。バックがジャジーな演奏であれば、きっちりと「ボサノバ・ジャズ」になる。決して、上手なボーカルではないんだが、味があり、雰囲気がある。そんなこの人のボーカル。

そんな「この人」とは、Astrud Gilberto(アストラット・ジルベルト)。ブラジル出身ではあるが、もともとはボーカリストでは無い。ボサノバの生みの親の一人、ジョアン・ジルベルトの嫁はんである。たまたま、アルバム『ゲッツ/ジルベルト(Getz/Gilberto)』の録音の折、彼女の歌声にプロデューサーのクリード・テイラーが目をつけ、彼女は一躍、ボサノバ・ジャズのボーカリストとして脚光を浴びる。

1963年に初録音を果たして以来、1970年代初頭まで、彼女は「ボサノバ・ジャズ」の歌い手として人気者となる。ほとんど1年に一枚のアルバムをリリースしており、それぞれのアルバムのセールスは結構良かった。実は、彼女のボーカルは、ブラジル国内ではほとんど実績を残していないことから、ボサノバの歌い手としては評価が低い。逆に「ボサノバ・ジャズ」の歌い手としては一定の評価を得ていると言って良い。
 

Astrud_beach_samba

 
さて、そんな彼女のアルバムで、今年、我がバーチャル音楽喫茶『松和』でよくかかるアルバムが、Astrud Gilberto『Beach Samba』(写真左)。1967年の作品。

このアルバムのバックの演奏を聴くと判るのだが、ボサノバ/サンバの演奏とは全くかけ離れた、ジャジーでソフトロック的な、かつイージーリスニング的な音作りになっている。口笛、スキャットも織り交ぜたカラフルなサウンドが特徴で、パーソネルを見渡せば、ハーモニカのトゥーツ・シールマンスやブラジルのSSWであるマルコス・ヴァーリも参加している。

しかし、そこにアストラットのボーカルが入ってくると、その音世界がガラッと「ボサノバ・ジャズ」の雰囲気に変わるのだから面白い。アストラットにしか表現出来ない「ボサノバ・ジャズ」の音世界。時代は1967年なので、ちょっとクロスオーバーな雰囲気が漂うところがなかなか良い。

明らかに、このアルバムの音世界は「アストラット・ジルベルトの音世界」であり、決してボサノバでは無く、ジャズと言えばジャズなんだが、そういう音楽ジャンルを超えた、アストラットでしか表現出来ない音世界がここにある。

暑い夏にエアコンが効いた涼しい部屋で、ボヤ〜ッとしながら、聴き流すのが一番心地良い。上質のイージーリスニング・ボサノバ・ジャズである。

 
 

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2016年8月 8日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その25

European Jazz Trio『Saudade』(写真左)。邦題『黄昏のサウダージ』。2007年のリリース。収録曲を眺めると、A.C.ジョビン、ルイス・ボンファ、ジョルジュ・ベン、イヴァン・リンスの心癒される楽曲を中心に、マイケル・フランクス、カーペンターズ、ポール・マッカートニーのカヴァー曲が並ぶ。

「ボサノバ」をコンセプトの中心に持ってきたアルバムと解釈するのが相当な内容である。基本的にミッドテンポからスローテンポな演奏で締められ、かつアレンジは聴き易く判り易いもの。硬派なジャズ者の方々からは「イージーリスニング」のレッテルを貼られそうなムーディーな内容。

ヨーロピアン・ジャズ・トリオ(EJT)は、オランダのジャズ・ミュージシャン3人で結成されたジャズ・ピアノ・トリオ。哀愁漂うリリカルでムーディーなサウンドと欧州の気品、クラシックの影響を感じさせるシンプルで判り易いアレンジが特徴。クラシック、ミュージカル、歌謡曲、童謡、ポップス、ロックの有名な楽曲のカバーが特徴。この辺から「イージーリスニング」と揶揄されるEJTの個性が良く判る。

しかし、演奏については、確かに「イージーリスニング」な感じなのだが、ギリギリのところで、ジャジーなリズム&ビートとアドリブの展開が存在しており、演奏を聴けば判るのだが、基本的には、しっかりとしたピアノ・トリオなジャズであることが良く判る。そういう意味で、このEJTの音は「イージーリスニング・ジャズ」として評価して良いと思う。
 

Saudade1

 
聴けば確かに聴きやすいピアノ・トリオなジャズが延々と続く訳で、内容の薄い演奏であれば、途中で飽きてしまうんですが、意外とこのアルバムの演奏は飽きない。そういう意味でも、この盤の内容は単なる「イージーリスニング」では無い。このEJTの音は「イージーリスニング・ジャズ」として評価して良いでしょう。 

ちなみにパーソネルは、Marc van Roon (p), Frans van der Hoeven (b), Roy Dackus (ds)。いずれもテクニックは確か、演奏内容もしっかりしたもの。決して、イメージ先行のピアノ・トリオでは無いし、レコード会社が作り出した、企画型のピアノ・トリオでも無い。「イージーリスニング・ジャズ」をやる、というだけで敬遠するには勿体ないピアノ・トリオである。

さて、この 『Saudade』というアルバム、やはり、ボサノバ&サンバ曲のカバーの出来が良い。レオン・ラッセルやマイケル・フランクスのポップ・ヒット、さらにはポール・マッカートニーのシングル曲までを取りあげているが、その出来は「まあまあ」。ジャズ化についてはちょっと無理のある楽曲もあり、やはり、このアルバムは徹頭徹尾「ボサノバ&サンバ・ジャズ集」で統一したほうが良かったと思う。

こういう「イージーリスニング・ジャズ」もたまには良い。猛暑の夏、聴き易く耳に優しいジャズが良い。聴きやすい「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で暑気払いである。早く涼しくならないかなあ。

 
 

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2016年8月 1日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・39

スタン・ゲッツは「ラッキー・マン」であった。1961年、当時注目されていたブラジル音楽のボサノバを採り入れたアルバム『ジャズ・サンバ』をチャーリー・バードと共に録音。それによってジャズ界におけるボサノバ奏者の第一人者となる。1963年には『ゲッツ/ジルベルト』を録音し、グラミー賞4部門を独占。

スタン・ゲッツ=ボサノバ・ジャズという図式が出来上がった。ここまで来ると、ゲッツは商売人である。そこで、ゲッツは大量にボサノバ・ジャズのアルバムを量産する。まるで「ボサノバの商人」である。ボサノバの第一人者達とのコラボを繰り広げ、様々なフォーマットでボサノバ・ジャズを録音する。

Stan Getz『Big Band Bossa Nova』(写真左)。1962年8月の録音。ボサノバ・ジャズの雄、スタン・ゲッツがジャズ・ビッグバンドをバックに吹き込んだアルバムである。Gary McFarland(ゲイリー・マクファーランド)のアレンジでのビッグバンド。ビッグバンドをバックにしたボサノバ・ジャズで「もう一発当てよう」という、ゲッツとレコード会社の魂胆がみえみえである(笑)。
 

Big_band_bossa_nova1  

 
バックのビッグバンドが良い音を出している。ギターの名手ジム・ホールが参加しているが、このアルバムでは、全編ガットギターで主にコード弾きに徹していて、前面に出て目立つことは無い。が、しっかりとボサノバのリズムを小気味良く刻んでいる。ボサノバのギターのコード弾きというより、ジャズのギターのコード弾きでボサノバの雰囲気を出す、という感じが実に印象的。

そこにスタン・ゲッツのテナーが入ってくる。スタン・ゲッツのボサノバ・テナーは相変わらずで、マンネリ感が漂う感じが否めなくも無い。スタン・ゲッツのボサノバ・テナーを聴くというよりは、マクファーランドの優れたビッグバンドがボサノバ・ジャズを演奏する中に、スタン・ゲッツのテナーが客演する、と形容した方がピッタリする内容だと僕は思う。

それほど、このアルバムでのビッグバンドは良く鳴っている。マクファーランドのアレンジが良いのだろう。ボサノバ・ジャズを題材にしたビッグバンド・ジャズの好例ではないだろうか。

 
 

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