2019年8月 7日 (水曜日)

トッキーニョの50周年記念盤

暫く我慢していたんだが、やっぱり夏は「ボサノバ&サンバ」やなあ、と思う。今朝、CTIレコードの『Gilberto With Turrentine』を聴いていて、つくづく思った。しかし、何故だろう。何故、酷暑の夏には「ボサノバ・ジャズ」が心地良く響くのか。そう言えば「レゲエ」もそうだ。夏の酷暑には「ボサノバ・ジャズとレゲエ」が一番だ。

ということで早速、ボサノバ・ジャズのアルバムを物色する。が、コレクションのフォルダに、まだボサノバ・ジャズのアルバムを集めていない。う〜ん困ったなあ、と探していたら、昨年の新盤の中に、トッキーニョのアルバムを見つけた。トッキーニョは、ブラジルのポピュラー音楽界を代表するギタリストの一人。

そのアルバムは『Toquinho - 50 Anos de Carreira (Ao Vivo)』(写真左)。1966年のデビュー作品『o violão do TOQUINHO』から数えて、トッキーニョのキャリア50周年を記念したライヴ作品である。2016年サンパウロWTC劇場での録音。2016年のライブ録音にしては、ちょっと「やっつけ風」で、なかなかに臨場感溢れる、生々しく荒々しい録音が魅力的。
 
 
Toquinho-50  
 
 
トッキーニョは我が国では、マイナーな存在に甘んじている。記憶しているのは、渡辺貞夫さんとの共演。この共演盤でこの「トッキーニョ」の名前を知り、それ以来、トッキーニョの名前に新盤に出会う度に、触手を伸ばしてはトッキーニョのギターと歌声を耳にしてきた。このライブ盤は自らのキャリアの50周年記念ということで、リラックスした、観客と一体となった演奏と歌唱が実に良い感じ。

ゲストも豪華で、旧友の Mutinho,Paulo Ricardoの名も確認出来、Anna Setton, Tie, Veronica Ferriani といった若い女性ヴォーカリスト達が華を添えている。ボサノバ&サンバというブラジルのポピュラー音楽が実に良い雰囲気で録音されている。このアルバムについては「これはジャズなのか」と問う前に、ボサノバ&サンバという演奏をとても楽しく聴き通すことが出来る。

リズム&ビートが効いている分、ボサノバ・ジャズとして聴いても良い雰囲気。まあ、こういう素敵なボサノバ&サンバな演奏を前にして、音楽のジャンル分けなんて野暮である。このライブ盤って「ボサノバ&サンバの今」を感じるのに最適なもの。トッキーニョのギターが特に魅惑的に響きます。ステージングのテンポも良く、一気に聴き切ってしまいます。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月27日 (水曜日)

ブルーノート流ボサノバ・ジャズ

ブルーノート・レーベルは「1500番台と4000〜4300番台」と呼ばれる有名なシリーズの他に、その後を継ぐ、幾つかのカタログが存在する。BN-LAシリーズもその1つで、1967年、経営不振からリバティにレーベルを売却、総帥アルフレッド・ライオンが引退し、後を継いだフランシス・ウルフが1971年に亡くなった後、ジョージ・バトラーが拠点をロス(LA)に移し、ブルーノートの再起を図ったシリーズである。
 
このシリーズ、ブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズであり、ベテラン・ジャズ者の方々からは、鬼っ子のように忌み嫌われてるシリーズでもある。我が国の場合、ブルーノート・レーベルの「1500番台と4000〜4300番台」をあまりに高く評価し過ぎな傾向になって、それ意外は「聴く価値なし」と評価する、ベテラン・ジャズ者の方々も多いと聞く。
 
しかし、聴いてみると判るんだが、意外と真っ当メインストリーム・ジャズなアルバムが多い。ほぼ1970年代を網羅しているシリーズであるが、その時代ならではのアルバムが多くを占めており、それらは全てブルーノート色を色濃く保持しているところが実にニクい。ジャズロックやクロスオーバー、フュージョンなジャズが嫌いな人は仕方ないが、そうでなければ、このBN-LAシリーズは是非とも聴いて欲しいシリーズである。
 
It-could-only-happen-with-you-duke-pears  
 
Duke Pearson『It Could Only Happen With You』(写真左)。1970年の2月と4月の録音。1974年のリリース。ちなみに、Duke Pearson (ac-p, el-p), Burt Collins, Joe Shepley (tp), Kenny Rupp (tb), Hermeto Pascoal (f, g, b), Jerry Dodgion, Al Gibbons (as, alto-flute), Frank Foster (ts), Lew Tabackin (ts, fl), Bob Cranshaw, Ron Carter (b), Mickey Roker (ds), Flora Purim (vo)。新旧混成のメンバー編成。
 
しかし、そんな取り留めの無いメンバー編成ではあるが、アルバムの中身は「上質でライト感覚なボサノバ盤」という印象が強い。特にピアソンのエレピが端正で軽快、フローラ・ピュリムのボーカルが清々しく爽やかだ。フロントのテナーやトランペット、トロンボーンの音は意外と旧来のハードバップを踏襲していて、演奏の全体的な雰囲気は、ライトで軽妙なボサノバ・ジャズなんだが、フロントのテナーやトランペットについては意外と硬派で、ソフト&メロウ面はほどんと聴くこと出来ない。
 
意外と硬派なボサノバ・ジャズな内容で、リーダーのピアソンについては、特にエレピの弾きっぷりが見事。ボサノバ・ジャズという新しくかつ俗っぽいジャズの演奏の中で、大いに目立っている。硬派なボサノバ・ジャズとして、この盤は完成されており、内容は意外と濃い。適度なテンションも心地良く、この盤で聴かれる「ブルーノート流ボサノバ・ジャズの在り方」に関して、実に興味深い内容となっている。
 
 
 
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2018年10月31日 (水曜日)

纐纈歩美のボサノバ・ジャズ

日本のジャズ・シーンについて、若手ミュージシャンについては「女高男低」。女性のジャズ・ミュージシャンは優れものがどんどん出てきたが、男性はさっぱりである。何故かなあ。もともと男尊女卑的な感覚は持ち合わせてはいないので、それでも良いかなあ、と最近は思う。何故ならこの10年にデビューした女性ジャズ・ミュージシャンの中で、今でもコンスタントにアルバムをリリースしている「現役」は、皆、優れた中堅として活躍している。

纐纈歩美『O PATO』(写真左)。2018年10月17日のリリース。女性ボサノバ・ミュージシャンの草分け、小野リサがプロデュースを担当している。ちなみにパーソネルは、纐纈 歩美(as), フェビアン・レザ・パネ (p), 馬場 孝喜(g),  佐藤 慎一(b), 藤井 摂(ds), 小野リサ(produce,arrange,g)。パーソネルやアルバム・ジャケットを見れば「これはボサノバ・ジャズの企画盤やな」と想像がつく。いかにもボサノバって感じのジャケットが良い。

纐纈歩美(こうけつあゆみ)は1988年生まれ。今年で30歳。ジャズ界ではやっと中堅の仲間入りを果たしたところか。纐纈(こうけつ)は女性でありながら、チャラチャラしたところが無い。堅実質素、シュッとした出で立ちで、硬派なアルト・サックスを吹くのだ。纐纈のアルトは「正統であり本格派」なもの。そのアルトの音が纐纈のものであると知らされなければ、日本男性の優れたアルト奏者の音だと感じると思う。
 

O_pato_kohketsu  

 
それほどまでに「正統で本格的」なアルトを吹く。が、ボサノバ・ジャズを吹くには、この「正統で本格的な」アルトが必須なのだ。ボサノバ・ジャズの旋律は鼻歌を唄うように吹く。といって、適当に緩やかに吹けば良いというものでは無い。旋律をしっかりと表現するには、緩やかに力強くアルトを吹く必要がある。これには結構なテクニックを要するのだ。特に呼吸。纐纈は男性ばりの呼吸でアルトを吹く。音の濃淡や強弱がしっかり出る。

この纐纈のアルトがボサノバ・ジャズに最適。この最新作のボサノバ・ジャズ集については、どの曲についても、纐纈のアルトの素性の良さ、テクニックの確かさが実感出来る。うっかり聴いていると、ナベサダさんのボサノバ・ジャズ集かしら、と間違えてしまうほど。ほんと、纐纈はジャズとして、素性の良い、確かなアルト・サックスを吹く。聴いていても心地良く、清々しさを感じるほどだ。

演奏全体の雰囲気は「しっかりとボサノバしている」。それもそのはず、プロデュースとアレンジを小野リサが担当している訳で、この小野リサの起用が全面的に成功している。誰にでも出来そうで、誰にでも出来ないボサノバ・ジャズ。特に金管楽器の奏者にとっては、自らの素性とテクニックを試される、実は厄介な音楽ジャンル。そんなボサノバ・ジャズを相手に纐纈のアルト・サックスは十分に適応している。

 
 

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2017年5月15日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その30

「ボサノバ」とは、ブラジル音楽のジャンルのひとつ。ブラジル音楽と言えば「ボサノバ」である。1950年代後半に発祥し、1950年代終盤にはブラジルで大ヒットし、ブラジルのポピュラー音楽に革命を起こし、世界中の国へ飛び火した。

米国では1960年代前半、テナーのスタン・ゲッツがいち早く、ボサノバをジャズに取り入れ大ヒット。以降、ボサノバ・ジャズは、いつの時代にも必ずあり、幾枚かのアルバムは必ずヒットする。ボサノバ・ジャズは今やジャズのポピュラーな演奏形式のひとつとなっている。

Eliane Elias(イリアーヌ・イリアス)。1960年生まれだから、今年で57歳。ブラジル出身の美貌のジャズ・ピアニスト&ボーカリストである。我が国では「イリアーヌ」とファースト・ネームだけで呼ばれることも多い。トランペッターのランディ・ブレッカーの元嫁。現在の夫はベーシストのマーク・ジョンソン。現代の「ボサノバ・ジャズ」の代表格である。

イリアーヌといえば「ボサノバ&サンバ」。とにかく、ボサノバ主体のリーダー作が多い。とにかく多い。このところ、さすがに食傷気味になってきた。時々、ビル・エバンスやチェット・ベイカーへのトリビュート企画盤を出したりするが、他は基本的に「ボサノバ&サンバ」。
 

Dance_of_time1

 
初期の頃は、ジャズ主体の「ボサノバ&サンバ」だったが、以降、歳を重ねるにつれ、純粋な「ボサノバ&サンバ」に傾倒していった。これではもはやジャズとは言えなくなるなあ、と思っていたら、前作の「Made in Brasil」でちょっとジャズ寄りに修正してきた。そして、今回のこの新作である。

今年のイリアーヌの新作は、Eliane Elias『Dance of Time』(写真左)。「ボサノバ&サンバ」ジャズの集大成的なアルバムである。イリアーヌのボーカル&ピアノの素晴らしさもさることながら、この盤では、それぞれの曲に施されるアレンジ、そして、バンド全体のグループ・サウンドのテクニックの高度さと精度の高さが素晴らしく、「ボサノバ&サンバ」ジャズをアートの高みへと誘っている。

アルバム全般に渡って、緩みは破綻は全くないどころか、完璧に近いくらい「理路整然」としている。形式美が個性のアーティステックな「ボサノバ&サンバ」ジャズな盤である。イリアーヌの「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤の中でも、この盤の完成度は群を抜いている。

イリアーヌの「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤の「けじめ」とも言える一枚。これ以上の「ボサノバ&サンバ」ジャズ盤を望むには無理上がる。それほど、この盤は完成度が高い。さて、イリアーヌの次作は何処へ行くのだろう。イリアーヌの次作への展開が実に楽しみである。

 
 

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2016年10月31日 (月曜日)

秋深まる季節にボサノバ・ジャズ

この秋深まる季節に「ボサノバ・ジャズは合わないよな」と思うのは性急ではある。確かに、この秋真っ只中の季節、朝と夜はちょっと寒い。寒い中で聴くボサノバ・ジャズは「殺風景」である。軽妙洒脱のリズム&ビートが寒々と感じる。

しかし、である。この秋深まる季節、ちょっと暖かな「小春日和」な昼下がり、ホンワカ暖かい部屋の中で、ブラック珈琲を傾けながら聴くボサノバ・ジャズは、意外に「オツなもの」である。昼ご飯をお腹いっぱい食べた後、ちょっと眠くなってきて微睡みながら聴くボサノバ・ジャズは、一時の「至福の時」である(笑)。

微睡みながら聴くボサノバ・ジャズは、微睡みの「至福の時」を妨げる様な、難しい演奏はいけない、複雑な演奏もいけない。イージーリスニング一歩手前の、ほとんどイージーリスニングでも良い、聴いていて心地良い、難しいことを考えず、聴く耳をそばだてることも無い、聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズが良い。

そんな聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズ盤を選盤する。Laurindo Almeida『Guitar From Ipanema』(写真左)。1964年の作品。ローリンド・アルメイダは、1917年生まれのブラジルのギタリスト。惜しくも1995年7月逝去しました。アルメイダは、生粋のボサノバ系ギタリストというよりは、ボサノバ・ジャズ系のギタリストという印象が強い。テクニックはかなり高く、聴いていて爽快かつ深みのあるギター。
 

Guitar_from_ipanema

 
ジャック・マーシャルの口笛をフィーチャーしているのが面白い。口笛をフィーチャーすれば、もはやこれは純ジャズでは無いだろう。しかし、このジャック・マーシャルの口笛が心地良い。「The Girl From Ipanema」の口笛の気持ちよさ、「 Old Guitaron」のボーカルの愛らしさ。

とにかく全編に渡ってユルユルの緩さ。この緩さが堪らなく心地良い。ボサノバのリズム&ビートは純正で、ボサノバ・ジャズ独特のライトさと心地良さ満点。メインストリーム・ジャズとは対極の「ユルユル」イージーリスニングなジャズである。
 
硬派なジャズ者の方々からすると「けしからん」ボサノバ・ジャズ盤でしょう。でも、そういう時は、この盤はイージーリスニング盤と解釈して耳を傾けていただければ、と思います。

ジャケットも全くジャズらしからぬ「ユルユルさ」。でも、この緩さが堪らない。この秋深まる季節、ちょっと暖かな「小春日和」な昼下がり、ホンワカ暖かい部屋の中で、ブラック珈琲を傾けながら聴くボサノバ・ジャズは、意外に「オツなもの」。固いこと抜きで、この盤に詰まっている、聴き心地がライトでシンプルなボサノバ・ジャズを楽しみましょう。

 
 

震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年10月 4日 (火曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その29

時は10月は4日。台風が来ていて、更に前線を通過する低気圧の影響で夏の空気が流れ込み、今日は「真夏日」。夕方、日が暮れても、周りの空気は「もわっ」として、ほとんど夏の雰囲気。もう10月だというのに通勤の服装は半袖である。

これだけ蒸し暑くなると、やはり純ジャズを聴くのは辛い。ということで、今日は「夏はボサノバ・ジャズ」リターンズである(笑)。この夏、聴き残したボサノバ・ジャズのアルバムをあれこれ、ごそごそ漁って、選んだアルバムがこれである。

Ivan Lins『América, Brasil』(写真左)。昨年4月のリリース。イヴァン・リンスのキャリア45年におよぶ新旧自作曲から、セルフ・カバーをテーマにした作品。こんなアルバムが聴き残し盤で残っていたとは。全くもって面目無い。

イヴァン・リンスとはブラジル出身のミュージシャン。ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック(MPB)やジャズ界で主に活動。流麗なメロディーと繊細で雅なボーカル。このアルバムは、ボサノバ、サンバ、いわゆるブラジリアン・ミュージックの良いところが「てんこ盛り」。
 

America_brasil

 
良い雰囲気のボサノバ・サンバ調のジャズで、さすが本場ブラジルの演奏するボサノバ・サンバ調のジャズは、米国のジャズメンが演奏する雰囲気とはちょっと違う。まず、リズム&ビートの取り方と雰囲気が違う。恐らく、ブラジル人の「血」が成せる技なのだろう。普通に演奏していて、全くもって、正調なボサノバ・サンバ調のジャズになる。

ゲスト参加のギタリストのレオナルド・アムエドも、1曲ではあるが「 Que Quer De Mim. Part. Leonardo Amuedo」で、良い雰囲気を醸し出している。そうそう、もう一人のゲスト参加、ジャズ・ハーモニカ奏者グレゴリー・マレットも哀愁感溢れるフレーズで、我々聴き手の心を揺さぶる。ラストのメドレー「De Nosso Amor Tão Sincero / Vitoriosa」は絶品である。

アルバムのジャケット・デザインも美しく、上質のボサノバ・サンバ調のジャズとして注目盤。イヴァン・リンスはこの盤を録音した時点で70歳。70歳にしてこの歌声は素晴らしいの一言。ボサノバ・サンバ調のジャズがお気に入りのジャズ者の方々にはお勧めの好盤です。

 
 

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2016年8月28日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その28

ボサノバ・ジャズは純粋なボサノバでは無い。でも、ボサノバ・ジャズを聴けば、リラックスできるし、ストレス解消にもなる。ボサノバ・ジャズは、純ジャズとの補完関係にあると思っていて、特に、夏の暑い時期、純ジャズを聴くに辛い時、ボサノバ・ジャズはそれを補ってくれる。

ボサノバ・ジャズはある程度、耳当たりが良いことが大切。シビアな純ジャズ風で耳に迫る風だと、夏の暑い時期、ちと辛い。イージーリスニングに陥ること無く、聴き応えと聴き易さを両立させるバランス感覚が大切になる。

基本的に純ジャズをメインに展開している日本のジャズ・レーベルに「ヴィーナス・レーベル」がある。日本人好みの純ジャズをプロデュースし続けていて、ジャズ者ベテランの方々を中心に、熱心なファンを持つレーベルである。そんなレーベルなんで、ボサノバ・ジャズなんてやらんやろう、と思ってカタログを見ていたら、幾枚かあるではないか。

そんなヴィーナス・レーベルからリリースされた、ボサノバ・ジャズな一枚が、Joe Beck『Brazilian Dreamin'』(写真左)。2005年の録音。Joe Beckはエレクトリックとガット・ギターで、Ira Colemanのベース、Thierry Arpinoのドラムスというトリオ編成。2曲だけGregoire Maretのハーモニカが加わりますが、基本的にはギター・トリオというシンプルな編成。
 

Brazilian_dreamin

 
アルバム・タイトルどおり、ボサノバを中心にしたブラジル風味で統一されたアルバムで、聴き心地のとても良いものです。耳当たりが良く、リズム・セクションはしっかりとしていて、聴いていて飽きがくることはありません。純ジャズの基本とボサノバの雰囲気をしっかりと押さえていて、その出来は良い。

ジョー・ベックのギターについては、やはりエレクトリック・ギターが良い。ボサノバ・ジャズの雰囲気に合わせた、気味良く柔らかで官能的なエレギの音色は個性的。Antonio Carlos Jobimの名曲の旋律をクッキリと印象付けていきます。柔らかで典雅ではあるが甘くは無い、いわゆる「クール」なエレギの音色です。

このアルバムの収録曲の中でユニークなのは、ジョン・コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドの名曲「Giant Steps」が収録されていること。ボサノバを中心にしたブラジル風味で統一されたアルバムの中に、メカニカルな複雑なコード進行を持つ超難曲が入っている。思いっきり違和感を覚えますが、殆ど「換骨奪胎」、原曲、元演奏の雰囲気は微塵も無い、歌心満載のボサノバ・チューンに変身しています。話題性は無いと思われます。

ボサノバ・ジャズのアルバムとしては、まずまずの出来で、純ジャズの基本とボサノバの雰囲気をしっかりと押さえた「ボサノバ・ジャズ」の一枚として、コレクションに加えるのには良い盤では無いでしょうか。

 
 

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2016年8月26日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・65

ジャズ畑のミュージシャンがボサノバをやっても、最終的には純粋なボサノバにならない、と言われる。確かにそうで、根本的にリズム&ビートの捉え方と叩き出し方が違う様なのだ。タッチのアクセントもちょっと違うし、ボサノバにはファンクネスは基本的に無縁だ。

それでは、ジャズ・ボサを作った男と言われる名ドラマーがいる。そんな彼がジャズ・ピアノ・トリオでボサノバをやったら、どうなるのだろう。その具体的な答えの一つが、このアルバム『Milton Banana Trio』(写真左)。ミルトン・バナナは、ボサノバのトップ・トラマー。そんなミルトン・バナナがリーダーとなって、ジャズ・ボッサをピアノ・トリオのフォーマットで演奏する。

冒頭の有名曲「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」を聴けば、その個性が良く判る。確かに、リズム&ビートの扱い方、アクセントの置き方が違う。加えて、ファンクネスは皆無。乾いていて切れ味が良い。そして、全く「甘い」ところが無い。軽音楽のボサノバは甘いところを前面に押し出しているが、本格的なボサノバは決して「甘く」は無い。
 

Milton_banana_trio1

 
2曲目以降、「プリミチーヴォ」「サマー・サンバ」などなど、ボサノバの名曲がズラリと並ぶ。そして、それぞれのジャズ・ボッサの演奏は、実に硬派で聴き応え十分。実に切れ味良く、ほどよい趣味の良い苦みのある演奏で、聴き込み甲斐がある。そして、クールで硬派な演奏の背後に、ホットな音世界が見え隠れするところも聴き逃せない。

聴いていて面白いのは、米国東海岸、西海岸、はたまた欧州のジャズとは全く雰囲気が異なるジャズ・ボッサの音世界で、ブラジルの人が、南米のラテンな血がジャズをやるとこんな感じになるのか、と思わず感じ入ってしまう。特に、リーダーのミルトン・バナナのドラミングは秀逸で、ピアノ・トリオの演奏とはいえ、知らず知らずのうちに「ドラミングの妙」に聴き入ってしまう。

こういうピアノ・トリオがあるとは、ジャズ・ボッサの演奏があるとは、全く思わなかった、と、目から鱗では無い、耳から鱗な「このアルバム」の存在を知ったのは、今から10年ほど前。今では、CDやダウンロード音源で入手出来て、気軽に聴くことが出来る様になったのだから素晴らしい。ほんと、長生きはしてみるものである(笑)。

 
 

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2016年8月20日 (土曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その27

お盆を過ぎて天候が不安定である。いきなり台風が複数個発生したと思えば、関東地方をかすめ通ったり、関東地方直撃コースを伺ったり。今日などは、朝から激しい雨が降ったと思えば、いきなり厳しい陽射しが差し込んで、思いっきり蒸し暑くなり、またまた、激しい雨が降ったりする。

もはや温暖湿潤気候の日本の気候では無い。亜熱帯性気候の雰囲気である。とにかく思いっきり蒸し暑い。少し歩くと気持ち悪くなる位だ。厳しい蒸し暑さって、かなりのストレスになる。身体は疲れるし、心も疲れる。そんな時、聴く音楽は「ボサノバ・ジャズ」。

イージーリスニングだとか軽音楽だとか揶揄されようが、こんなに厳しい蒸し暑さの中で聴く、ストレス解消の心地良いリズム&ビートな音は「ボサノバ・ジャズ」なのだ。それも、飛び切りイージーリスニング・ジャズ仕様な「ボサノバ・ジャズ」が良い。

ということで、Paul Winter『RIO』(写真左)を聴く。1962年9月の録音。リオデジャネイロの建都400年にあたる1964年に、リオの若きコンポーザーたちへの敬意と感謝を込めて作られたアルバム。
 

Paul_winter_rio

 
このアルバムに詰まっている音が、真の「ボサノバ」とは思ってはいない。ボサノバの音の要素を上手く取り込んだジャズである。リズム&ビートも純正の「ボサノバ」では無い。明らかにジャジーなリズム&ビート。それでも、ボサノバ曲の持つ独特のアンニュイで開放的な響きと、ボサノバ独特の心地良く踊るように心に響くリズム&ビートな刻み方が、ジャジーな演奏をボサノバ的雰囲気に染め上げている。

加えて、ポール・ウィンターのサックスの音が良い。ボサノバの雰囲気にピッタリなサックス。ファンクネスとは無縁の、開放的で乾いたメロディアスなサックス。ボサノバ・ジャズのサックスはこういう「AORチックなフュージョン風サックス」が良い。清々しく爽やかでスムーズ。硬派な純ジャズからすると、完全に「軟弱」なサックスになるが、ボサノバ・ジャズにはこれが良い。

ジャケットもしっかりと「ボサノバ」していて魅惑的。1962年当時のジャズのジャケットとしては明らかに「異端」。聴き流しに最適なボサノバ・ジャズだが、ところどころ「おぉっ」と思わせるフレーズが出てくるので、部分的にしっかり聴き耳を立ててしまう。そんな良質のボサノバ・ジャズ盤です。

 
 

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2016年8月19日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・64

The Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)って、ジャズ盤の紹介本で挙がるアルバム以外に、こんなアルバムを作ってたんや、とか、こんなアルバムあったんや、とビックリするほどの充実した内容の「隠れ好盤」は結構ある。そんな中の一枚がこれ。

The Modern Jazz Quartet with Laurindo Almeida『Collaboration』。MJQがブラジル出身のアコースティック・ギターの名手ローリンド・アルメイダ(写真右)と共演した、ボサノバ&サンバ中心の好盤である。両者の共演はまさにモダン・ジャズとボサノバ&サンバが理想的な形で融合した好例といって良い内容です。

まず、ローリンド・アルメイダの存在が鍵で、アルメイダがギターをつま弾くだけで、その演奏の音世界は「ボサノバ&サンバ」の色に染まります。真の「ボサノバ&サンバ」のリズムを刻みつつ、生ギター独特の繊細で爽快な音色がとても印象的です。

そんなギターに絡むのが、The Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)。さすがはMJQで、単純に「ボサノバ&サンバ」な生ギターに絡まない。秀逸なジョン・ルイスのアレンジを武器に、ジャジーな雰囲気も活かしつつ、MJQでしか為し得ない「ボサノバ&サンバ」なジャズを表現する。
 

Collaboration1  

 
ファンクネスを奥に忍ばせつつ、軽妙に「ボサノバ&サンバ」な雰囲気に追従するミルト・ジャクソンのヴァイブ。ジャジーな「ボサノバ&サンバ」なリズム&ビートを刻むコニー・ケイの職人芸的なドラミング。シンプルなフレーズが「ボサノバ&サンバ」にピッタリなジョン・ルイスのピアノ。そして、「ボサノバ&サンバ」なジャズを底で支えるパーシー・ヒースのベース。

MJQの個性と良さを前面に押し出しながら、アルメイダの純正「ボサノバ&サンバ」なリズム&ビートに助けられながら、MJQならではの「ボサノバ&サンバ」なジャズを展開する。タイトル通り、本当に良質な「コラボレーション(協同作業)」である。アルメイダのギターとMJQとの相乗効果がこのアルバムを聴いていて、とても良く判る。

しかし、「アランフェス協奏曲」や「ワン・ノート・サンバ」などの人気曲も含んでいながら、この盤はなかなかCD化されなかったし、ボサノバ&サンバ・ジャズの代表盤として紹介されることが無い。我が国では「知る人ぞ知る」的な好盤に甘んじているのが信じられない。再評価を望みたい好盤である。

 
 

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