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2018年4月 8日 (日曜日)

エバンスの評価基準の厳しさ

ジャズ・ピアノのレジェンドの代表の一人、ビル・エバンス。ビル・エバンスは生前、自分のパフォーマンスの評価には厳しかった人だったみたいで、アルバム一枚分のスタジオ録音の音源丸々、発売NGを出したり、特にライブ音源の評価には厳しかった。故に、生前に残した未発表音源は結構な数だったみたいで、1980年9月15日に逝去して以来、現在に至るまで、様々な種類の未発表音源がリリースされ続けている。

BIll Evans『Eloquence』(写真)。邦題『ビル エヴァンスの肖像』。録音時期は1973年11月〜1975年12月に渡る。4回の録音を集めた、いわゆる未発表音源集である。リリースは1982年。エバンスの死後、2年経ってのリリースである。しかし、パーソネルは固定されているところがエバンスの未発表音源らしい。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Eddie Gomez (b)。

この盤、全て未発表音源なのだが、演奏内容は、前半の1〜4曲目まで、エバンスとゴメスのデュオ演奏。エバンスの演奏史上、最高のパートナーでありベーシストであるゴメスとのデュオ。発表されている音源だけでも、その充実した内容については、このエバンスとゴメスのデュオは最高レベルのものであったが、この未発表音源についても、そのレベルは変わらない。
 

Evans_eloquence

 
変わらないどころか、この未発表音源の方が出来が良いのではないか、と思われる演奏もあって、ビル・エバンスの録音音源に関する評価基準の厳しさを改めて感じる。このデュオ演奏では、エバンスはエレピにも手を染めている。November 7-10, 1974年11月の録音分の「Gone With The Wind」「Saudade Do Brasil」の2曲なんだが、改めて聴くと、やはりエバンスのエレピって内容があると僕は思う。

そして、後半の5〜8曲目が、エバンスのソロ。特に、2種類のメドレーが素晴らしい。1973年11月録音の「When In Rome 〜 It Amazes Me」のメドレー。そして、1975年12月録音の「But Not For Me 〜 Isn't It Romantic 〜 The Opener」。エバンスのピアノ・ソロ、それもメドレー演奏は素晴らしい。このメドレーが未発表音源だったなんて信じられない。

この未発表音源集の『Eloquence』、収録された未発表音源の内容はとてもレベルが高いものばかり。恐らく、LP時代のアルバムの収録時間の関係で、アルバムに収録出来なかった演奏ばかりを集めたものでは無いかと推測している。でも、エバンスの中の何かの基準を持って、収録の可否を判断している訳で、この未発表音源の出来を改めて体験してみて、やっぱりエバンスの自分のパフォーマンスの評価の厳しさを再認識した次第。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年4月 6日 (金曜日)

エバンス異色のクインテット盤

ジャズ・ピアノの最大のレジェンドの一人「ビル・エバンス(Bill Evans)」。エバンスの場合、初リーダー作から、まずは「リヴァーサイド・レーベル」の諸作、続いて「ヴァーヴ・レーベル」の諸作。この辺までが人気の高い盤。次の「ファンタジー・レーベル」以降の盤については、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で、取り上けられることが少ないように感じる。

何故かなあ。エバンスの晩年、1974年から1977年の3年間、コンスタントにリーダー作をリリースしたファンタジー・レーベル。晩年の演奏だから初期〜中期に比べると衰えが見える気がするからなのか、はたまた、今でも一部で評判の悪いエレピの採用がいけないのか、どうにもファンタジー・レーベルの諸作は分が悪い。

でも、ですね。ファンタジー・レーベルの諸作って、粒が揃っていて、どの盤を聴いてもなかなかの出来なんですよ。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌であまり紹介されない、若しくは評判がイマイチな感じだからと言って、聴かず嫌いは良くありません。僕は、逆に、ファンタジー・レーベルの諸作は意外と好きです。エバンスのピアノは安定しているし、ゴメスのベースも成熟の域。悪かろう筈が無いんですけど・・・。
 

Quintessence

 
例えば、Bill Evans『Quintessence』(写真)。1976年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Harold Land (ts), Kenny Burrell (g), Ray Brown (b), Philly Joe Jones (ds)。エバンスには珍しい、フロントにランドのテナー、そしてバレルのギターを擁してのクインテット構成。しかも、ベースには大ベテランのレイ・ブラウン、ドラムにはこれまた大ベテランのフィリージョー。このメンバーで大丈夫なのか。

その不安は杞憂でした。エバンスのピアノがしっかり鳴り渡って、独特の耽美的でリリカルな雰囲気を反映した、質の良いクインテット演奏が繰り広げられています。ベースがブラウン、ドラムがフィリージョーと聴いただけで、目立ちたがり屋合戦が繰り広げられて、ドタバタ収集のつかないハードバップ演奏になっているかと思っていたのですが意外でした。

特に、フロントにテナーとギターが配されていて、テナーのバックの時、ギターのバックの時、それぞれちょっと異なる伴奏の雰囲気を感じることが出来て、伴奏上手のエバンスのその妙技が堪能できます。エバンスのディスコグラフィーの中では異色盤ですが、なかなか内容のある盤で、エバンス者の方々だけで無く、一般のジャズ者の方々にもお勧めの好盤です。とにかく、エバンスのピアノの響きが心地良し。

 
 

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2018年4月 1日 (日曜日)

エバンス=ゴメスのライブ好盤

ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイを可能にした、最初のピアノ・トリオが「ビル・エバンス・トリオ」。「ビート」は絶対、次に「旋律」が絶対、加えてリズムも十分供給出来る、という力量を持つベーシストが存在すること。これが、エバンス・トリオで「ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイ」を可能にするキーワードの1つ。

初代のベーシストは「スコット・ラファロ」。しかし、1961年7月6日、ニューヨーク州ジェニヴァ近郊のフリントで交通事故にて死去。その後、チャック・イスラエルが担当するが、「ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイ」を完璧に展開するには至らなかった。しかし、1966年から、エディ・ゴメスがベースを担当することになり、この「ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイ」を可能にするキーワードの1つ、を充足する。

エディ・ゴメスというベーシストを得ることにより、ビル・エバンス・トリオは、再び「ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイ」を完璧に展開することが可能になった。どころか、ゴメスの骨太で強靱な、それでいて多弁で流麗なベースによって、スコット・ラファロ時代よりも充実かつ高度なインタープレイを実現した。
 

Montreux

 
そして、そんなゴメスのベースは、ドラムの役割をも肩代わりすることが出来、エバンスとの充実のデュオをも可能にした。そんなエバンスとの充実のデュオの記録が、Bill Evans『Montreux III』(写真左)。1975年7月20日、モントルー・ジャズ・フェスでのライブ録音。改めてパーソネルは、Bill Evans (ac-p, el-p), Eddie Gomez (b)。エバンスとゴメスのデュオ。

ゴメスのベースが実に多弁。ドラムがいなくても、ビートの空間を埋める必要が無いくらいで、ゴメスのベース・ラインが独特のグルーヴを生んでいる。そんなゴメスの生み出すビートとグルーヴをバックに、とても気持ちよさそうに、エバンスはアコピとエレピを弾きまくっている。もともとエバンスは、特にライブで「バッパーなピアノ」を弾くのだが、エバンスが音符を沢山重ねても、ゴメスのベースは、そんなエバンスのピアノにピッタリと追従し、台頭に渡り合う。

ピアノとベースとのディオの濃密なインタープレイが見事である。二人のコール&レスポンスもバッチリ合って、ピアノ+ベースのデュオとしては優れた内容のライブ盤である。独特のグルーヴを生み出すゴメスのベース・ラインがどの曲にも効いていて、このライブ音源でのスイング感は半端ない。ジャズのデュオ好盤の一枚。

 
 

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2018年3月31日 (土曜日)

エバンスの最適なベーシスト

ジャズ・ピアノのレジェンドの一人、ビル・エバンス。後のジャズ・ピアニストの演奏スタイルに大きな影響を与えた、ジャズ・ジャイアントの一人でもあって、エバンスの影響下にあるジャズ・ピアニストは「エバンス派」と呼ばれる。そんな偉大なジャズ・ピアニストであるエヴァンスは、生涯、ピアノ・トリオを中心に活動を続けたことでも知られる。

ピアノ・トリオと言えば、ピアノ=ベース=ドラムの構成が基本になる。1940年代後半から1950年代前半までのオールド・スタイルのピアノ・トリオは、ピアノ=ベース=ギターであるが、1950年代後半、ハードバップ全盛期以降、ピアノ・トリオといえば、前者の構成が基本となる。そうなれば、リーダーのピアニストとしては、パートナーであるベーシスト、そしてドラマーとの相性が鍵になる。

エバンスの生涯に渡っての「最適なベーシスト」は、エディ・ゴメス(Eddie Gomez)になるだろう。1966年から1977年の間、11年間、エバンス・トリオに在籍した。「ビート」は絶対、次に「旋律」が絶対、リズムも十分供給出来る、というベーシストの力量。これが、エバンスが、ピアノ・トリオ3者対等なインタープレイを可能にする「キーワード」。
 

Intuition

 
そういう点では、ゴメスはエバンスにとって申し分の無いベーシストであった。エバンスのアドリブを支える「強靱で躍動感溢れるビート」を供給し、エバンスのイメージを受けて、ベースで「唄う様な旋律」を展開する。ゴメスはベースラインで「リズム」も供給することが出来るベーシストで、このアルバムではエバンス=ゴメスのデュオだが、演奏の雰囲気はピアノ・トリオそのものと変わらない。

Bill Evans『Intuition』(写真左)。1974年11月の録音。Fantasyレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (ac-p, el-p), Eddie Gomez (b)。マーサー・エリントン作の美しいバラード「Blue Serge」や、スティーヴ・スワロウ作の「Falling Grace」など、素晴らしいデュオの展開。そして、クラウス・オガーマン作の「A Face Without A Name」での、ゴメスのベースをバックに、エバンスの紡ぎ出す美旋律が素晴らしい。

エバンス=ゴメスの「二人の世界」にもはやドラマーは存在しない。ドラマーが存在しない分、リズムがシンプルに整理されて、エバンスの繊細なフレーズがよりクッキリと浮かび上がる。「ビート」は絶対、次に「旋律」が絶対、リズムも十分供給出来る、という「エバンスのベーシスト」としての条件を十分にクリアしたエディ・ゴメス。エバンスの生涯の中で「最適なベーシスト」である。

 
 

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2018年2月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・116

Impulse!レーベルって、コマーシャルなアルバムが殆ど無い。どちらかと言えば、硬派なところがあって、メインストリームど真ん中なジャズ盤を結構リリースしている。コルトレーンの後期〜逝去するまで、そして、コルトレーンの影響を受けたフリー・ジャズのアルバムが有名だが、それは、Impulse!レーベルを部分的にしか見ていないことになる。

Oliver Nelson『The Blues and the Abstract Truth』(写真)。邦題『ブルースの真実』。1961年2月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Oliver Nelson (as, ts), Eric Dolphy (fl, as), George Barrow (bs), Freddie Hubbard (tp), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Roy Haynes (ds)。凄いメンバーで固めた七重奏団である。

このアルバム、それまでのジャズの歴史を総括して、1961年時点でのジャズの一番良いところを取り出して、アルバムに仕立て上げた様な、非常にメインストリーム・ジャズした好盤である。基本はハードバップ。時々、アブストラクトに傾きかけたりするが、そこはグッとこらえて、非常に洗練された、自由度の高い「ハードバップ」な演奏が繰り広げられている。
 

The_blues_and_the_abstract_truth  

 
パーソネルを見渡せば、モード・ジャズの申し子的ジャズメン、例えば、ドルフィーとかハバードが名を連ねているが、この盤では決して、アブストラクト&フリーに走ることは無い。自らの技倆の最大限を尽くして、ユニゾン&ハーモニーを、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。どの演奏も上質のハードバップが繰り広げられていて、思わず惹き込まれる。

この盤のハードバップは、音の「質」がちょっと違う。理路整然としていて、アーティスティックな雰囲気漂うもの。これは、リーダーのオリヴァー・ネルソンのアレンジによるもの。タイトル通り、ブルースのムードや構造を探求してはいるが、ブルースにおけるハーモニーのシンプルさ・繊細さにフォーカスを当てていて、単純なブルース集になっていないところが実に「アーティスティック」である。

ソロを取らない、ジョージ・バローのバリサクが演奏全体の雰囲気の鍵を握る。Rudy Van Gelderの録音も良く、インパルスらしい太く芯の入った切れ味の良い音が、この優れたアレンジによるブルースな演奏をさらに惹き立てる。優れたアレンジによるメインストリーム・ジャズの好例である。

 
 

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2017年9月 4日 (月曜日)

エバンス者のマストアイテム盤

ビル・エバンスの未発表音源って、エバンス逝去後37年が経っているのに、まだまだ出てくる、出てくる。昨年『Some Other Time : The Lost Session From The Black Forest』が出た。1968年6月15日にライヴ録音された名盤『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』の5日後、1968年6月20日、ドイツでのスタジオ録音だった。

そして、である。今年は、Bill Evans『Another Time : The Hilversum Concert』(写真左)が出た。これは『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』のちょうど一週間後、先の『Some Other Time』の僅か2日後の6月22日、オランダのヒルフェルスムで行われたコンサートの音源とのこと。ラジオ局のスタジオでのライブ音源。

ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Jack DeJohnette (ds)。つまり、歴代のエヴァンス・トリオの中で、一番、残された音源が少ない、とされた「伝説のトリオ」。このエバンス、ゴメス、ディジョネットによるトリオは活動期間がわずか6カ月だった。だから残された音源はほとんど無いとされた。が、昨年から未発表音源として、出てくる、出てくる(笑)。
 

Another_time_bill_evans

 
しかも、約50年の年月を経て発掘された音源なんだが音が良い。特に、デジョネットのドラムの音が実に生々しい。これほど、デジョネットのドラミングのニュアンスやテクニックが生々しく聴けるアルバムはなかなか無いのではないか。ゴメスのベースが目立つアルバムは多いが、このライブ盤ではゴメスのベースよりもデジョネットのドラムである。

演奏内容については、どれもが充実している。ダレたところや抜けたところが全く無い。適度なテンション、漲る集中力。エバンス・トリオ十八番の、トリオの3者対等のインプロビゼーション。エバンスのバップなピアノが切れ味良く響き渡る。エバンスのピアノは、決して「耽美的」では無い。どちらかと言えば、ハード・バッパーなピアノ。その音の重ね方とアドリブの展開が思いっきり個性的でエバンスは数々のフォロワーを生んだ。

しかし、こういう未発表音源がいきなり発掘されるなんて、どうなってんでしょ(笑)。『Montreux』『Some Other Time』『Another Time』、この3枚のアルバムはビル・エバンス者にとってはマストアイテム。どれもが、このエバンス、ゴメス、ディジョネットによるトリオの特徴をしっかりと聴かせてくれます。恐らく、歴代のトリオの中で、一番「ハードで硬派」。良いライブ盤が出てきました。嬉しい限りです。

 
 

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2017年8月29日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・62

ジャズ者初心者の頃、このアルバムを初めて聴いた時は、そんなに凄いアルバムとは思わなかった。ピアノ・トリオなんだけど、何だかベースの音が多い。なんだかベースの音が多いなあ、というのが最初の印象(笑)。それでも、かのピアノ・トリオの雄、ビル・エバンス・トリオのライブ盤なので、有り難がって聴いていた。

なぜベースの音が多いのか。この盤が、ベースのスコット・ラファロの追悼盤の位置づけだということをその後、知った。なるほど、だからベースの音が多いのか。しかし、よくよくこのライブ盤を聴いていると、ピアノの音とベースの音とドラムの音が同じ割合を占めているのに気がついた。

このライブ盤とは、Bill Evans『Sunday at the Village Vanguard』(写真左)。1961年6月25日、NYのライブハウス、ビレッジ・バンガードでの伝説のライブ録音。改めて、ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Scott LaFaro (b), Paul Motian (ds)。かの伝説のピアノ・トリオである。

かのビル・エバンスの名ライブ盤『Waltz for Debby』と対をなすライブ盤である。今では、この1961年6月25日のビレバガでのライブ音源は、演奏順を忠実に守ったコンプリート・ボックス盤も出ているのだが、演奏の音の「密度」という点では、やはりこの『Sunday at the Village Vanguard』と『Waltz for Debby』の二枚構成が優れている。
 

Sunday_at_the_village_vanguard

 
この伝説のピアノ・トリオは、何が伝説かというと、それまではピアノ・トリオの場合、ピアノがメイン、ドラムとベースはバックでリズム&ビートを刻むというバランスが基本だった時代に、ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する、という今では当たり前のことを初めて実現し、レコーディングに残した、というのが伝説と呼ばれる所以である。

しかし、面白いのは、他の伝説のビル・エバンス・トリオのアルバムでは、なかなかこの「ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」が判り難い。逆に、このラファロの追悼盤の位置付けの『Sunday at the Village Vanguard』では、その「ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」がとっても判り易い。

ベースの音が他のアルバムと比べて多いからだろう。ベースの音は地味なので、ピアノの音やドラムの音と比べて、同じバランスに聴こえるには、このライブ盤くらい「なんだかベースの音が多いなあ」と感じる位のバランスが丁度良いのかもしれない。

そういう意味で、この『Sunday at the Village Vanguard』は、ピアノとベースとドラムが対等な立場でインプロビゼーションを展開する」を体感出来る格好のアルバムだと言える。

 
 

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2017年5月26日 (金曜日)

ファンタジーのビル・エバンス

毎日、ピアノ・トリオに耳を傾けている。ピアノ・トリオを聴き続けていると、結局、この二人のトリオ演奏に辿り着く。一人は「Bud Powell(バド・パウエル)」、もう一人は「Bill Evans(ビル・エバンス)」。どちらも、ピアノ・トリオを語る上で、絶対に外せない二人である。今日はその外せない二人のうちの一人「Bill Evans(ビル・エバンス)」のトリオ演奏を聴く。

このブログでずっとエバンスの聴き直しを進めて来たんだが、他意は無いんだけど、しばらく滞っている。ちょうど、そうファンタジー・レーベルの時代の入り口で停滞していることに気がついた。これは大変、即、再開である。

Bill Evans『Since We Met』(写真左)と『Re: Person I Knew』(写真右)。どちらも、January 11 & 12, 1974年1月11, 12日、ニューヨークのヴィレッジバンガードでのライブ録音。『Since We Met』は1976年の正式リリース、『Re: Person I Knew』は1981年のリリースで、エバンス逝去後の追悼盤としてリリースされた「落ち穂拾い」盤。

そういう意味で、この『Since We Met』と『Re: Person I Knew』は2枚合わせて聴かれるべき、兄弟盤である。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Eddie Gómez (b), Marty Morell (ds)。安定性抜群の魅力のトリオである。
 

Since_we_met_re_person_i_knew

 
聴けば判るのだが、徹頭徹尾、ビル・エバンスのピアノである。冒頭のタイトル曲「Since We Met」の前奏を聴くだけで、これはビル・エバンスのピアノと直ぐ判る。躍動感溢れる明確なタッチと、独特のヴォイシングで流麗かつ芯のあるアドリブ・フレーズを聴かせてくれる。リズム&ビートも躍動感溢れ、エバンス独特のスイング感が心地良い。

ファンタジー・レーベルのビル・エバンスは、あまりに流麗で完成度が高いが故、なかなかピアノ・トリオの紹介本や初回記事に上がることは少ないのだが、どうして、その内容は一級品。ベースのゴメス、ドラムのモレロも安定のバッキング。安定と堅実のインタープレイも心地良く、このライブ盤2枚の人気が低いのがよく理解出来ない。

ジャズとして受けの良い、ダイナミックでハイテクニックのアドリブ展開、一聴するだけで判る突出した個性という大仕掛けの展開が乏しいのが受けの悪い理由かな。でも、ジャズ者ベテランのエバンス者は、こういうほのぼのとした流麗で完成度の高い、安心安定のピアノ・トリオが意外とお気に入りなのだ。

他のジャズ者の方々に知られることなく、一人でそっと聴いて、そっと愛でる、それが楽しい。そんなファンタジー・レーベル時代の冒頭を飾るエバンスのライブ盤である。

 
 

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2017年3月10日 (金曜日)

エバンスの超驚愕の発掘音源

こういう充実した、ダイナミックかつ流麗な演奏を聴いていると、やっぱりビル・エバンスって良いなあ、と心から思う。やはり、この人のピアノは、ジャズ・ピアノの基本なのだろう。そのアドリブ・フレーズの展開、和音の重ね方、間の取り方、どれを取っても超一級のパフォーマンスである。

Bill Evans『Some Other Time : The Lost Session from the Black Forest』(写真)。昨年のリリース。ちなみにパーソネルは、 Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Jack DeJohnette (ds)。1968年6月20日の録音。

ネットの宣伝文句は「超驚愕の発掘音源!1968年、ビル・エバンス 幻のスタジオ録音」。確かに驚愕もので、あのビル・エヴァンスのライブ名盤『モントルー・ジャズ・フェスティバルのビル・エバンス』と同メンバーのトリオであり、そのライブ盤の録音から、たった5日後の「スタジオ録音」である。

このエバンス=ゴメス=デジョネットのトリオは、たった6ヶ月の活動で、今まで、正式な音源は、先の『モントルー・ジャズ・フェスティバルのビル・エバンス』のみ。この『モントルー』のエバンス=ゴメス=デジョネットのトリオのインタープレイが思いっきり「鳥肌モノ」だったので、このトリオのスタジオ録音の音源が発掘されたのである。期待するな、と言う方が無理な話。

しかも、録音されたスタジオが「西独の60年代MPSレーベルのスタジオ」である。音的にも期待大。MPSレーベルは、録音技術に定評のあるレーベルで、とりわけピアノの録音に優れた手腕を発揮。有名なところでは、オスカー・ピーターソン、ハンプトン・ホーズなどが挙げられる。そんなスタジオに、あのビル・エバンスである。期待するな、と言う方が無理な話。
 

Some_other_time

 
さて、その演奏内容はというと、そうですね〜、リラックスした平常心のビル・エバンスって感じでしょうか。気合い入れまくって、ダイナミックに弾き回すのでは無く、といって限りなく耽美的に印象派的な響きを増幅するのでも無く、平常心を保ちつつ、リラックスしつつ、ちょっとダイナミックで流麗な演奏を繰り広げている。

ところどころ、それまでのエバンスとしては目新しいアプローチを展開しており、新しい即興の展開を模索していたのかなあ、とも感じます。そんなチャレンジに、ゴメス=デジョネットは格好のパートナーだったんでしょうね。エバンスのピアノに関しては、新しい展開へのチャレンジもあり、普段着な演奏とは言いつつ、一聴の価値ありです。

逆に、録音バランスの問題なのか、リマスタリングの問題なのか、デジョネットのドラムがオフ気味であるのが惜しい。彼の独特なシンバルワークやポリリズミックなドラミングが目立たない。メインはエバンスのピアノとゴメスのベース、この二人の丁々発止のインタープレイに、デジョネットのドラムがちょこっと添えられている、そんな感じの録音。ちょっと残念な感じ。

それでも、このCD2枚組のスタジオ録音は一聴の価値がある。このエバンス=ゴメス=デジョネットのトリオは、インタープレイの柔軟度が半端無い。しかも、イマージネーションの拡がりが尋常で無い。相当高いレベルでの期待感が溢れんばかりで、このトリオの活動が6ヶ月足らずで終息してしまったのが実に惜しい。

CD2枚組のボリュームの演奏があっと言う間に過ぎていきます。ビル・エバンス者には必須のアイテム。一般のジャズ者の方々にも、優れたピアノ・トリオ盤のひとつとして一聴の価値ありです。

 
 

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2016年12月24日 (土曜日)

Xmas週間の「ジャズ喫茶盤」

クリスマス・イヴである。といって、クリスマス・ソングばかりをかけるのも野暮である。ジャズのアレンジだからといって、クリスマス・ソングというのは意外とシンプルなものが多いので、飽きるといえば飽きる。ということで、クリスマス週間だからといって、クリスマス・ソング関連のジャズばかりを聴いている訳では無い。

ただし、この時期にハードなモード・ジャズや、ましてや、アブストラクトなフリー・ジャズを聴くのも野暮である。この時期は、ちょっと敬虔な雰囲気のする、透明度の高いメロディアスなジャズが良い。ちょっと小粋な「ジャズ喫茶盤」。

ということで、この時期に聴くに適したアルバムの一枚を。Dave Pike『Pike’s Peak』(写真左)。1961年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Pike (vib), Herbie Lewis (b), Walter Perkins (ds), Bill Evans (p)。ジャズ・ヴァイブの名手、デイヴ・パイクの生涯最高の好盤。ビル・エバンスがバックを務めていることで有名な盤。

ヴァイブの硬質で透明感のある音は、ちょっと敬虔な雰囲気が漂う。加えて、ディブ・パイクのヴァイブは流麗で疾走感がある。ファンクネスが希薄でクリスタル感が高い。この季節にぴったりフィットする。内容的に普通であれば、それはそれで、この季節にピッタリなんて思わないのだが、この盤、内容的になかなか優れているから良いのだ。
 

Pikes_peak_2

 
当時、次世代を担うヴァイブ・プレヤーとして将来を期待され登場したアーティストの1人だったことが良く判る。特に、アドリブ・プレイのイマージネーションが豊かで、とめどもなく、新しいフレーズが湧き出てくるようだ。

伴奏のビル・エバンスも良い。バップなピアノでガンガン弾きまくる。ちなみにエバンスは耽美的なピアニストでは無い。基本的にはバップなピアニストである。この盤でもバップなピアノでバンバンに伴奏しまくる。エバンスは伴奏上手。フロントのパイクのヴァイブをしっかりと支える。

時代的にジャズ・ロック系やファンキー・ジャズ系に走りそうなんだが走らない。オーソドックスな、メンストリーム系のジャズな内容に好感度は上がる。アルバムでの選曲は、意外とポップな選曲からコルトレーンの「Impressions」と全く同じ曲があったりで、バラエティに富んではいますが、演奏が流麗なので、とても聴き易い。

ちなみに,Pike’s Peakはロッキー山脈の名峰であり,4000mを越える山頂まで登山鉄道で登ることができることで有名。その「Pike’s Peak」にかけた、このアルバム・タイトル。確かに、ディブ・パイクといヴィブラフォン奏者の最高作であることは間違い無い。良いアルバムです。

 
 

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