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2016年12月 1日 (木曜日)

WRのピアノ・トリオ盤が良い

昨日、ミロスラフ・ヴィトウスの新盤の話題で盛り上がった。ヴィトウスの言えば、かの伝説のエレジャズ・バンドのWeather Report(以下WRと略す)の初代ベーシスト。で、そう言えば、最近、このWRのカヴァー盤の記事を目にした様な、そんな気がしたんだけど〜。

そうそうジャズの月刊誌の記事で見たんでした。この新盤でした。クリヤ・マコト/納浩一/則竹裕之『Acoustic Weather Report』(写真左)。昨年、クリヤ・マコト(ピアノ)、納浩一(アコベ)、則竹裕之(ドラムス)の3人で結成された「アコースティック・ウェザー・リポート」。

かの伝説のエレジャズ・バンドのWRの名曲の数々をピアノ・トリオでカヴァー。徹頭徹尾、アコースティック楽器での硬派なメンストリーム・ジャズ。エレ楽器の持つ捻れた表現をバッサリ捨てて、楽曲の持つ「骨格となる旋律」を抜き出してアレンジすることで、WRの名曲の数々の「肝」の部分を再体験。

ピアノ・トリオという最小限の編成で、あのエレ楽器を活用することで「分厚い」アンサンブルを実現していたWRの音はどうなるのか。実に興味津々、逆に不安一杯のピアノ・トリオの企画盤です。
 

Acoustic_weather_report

 
で、これがですね。なかなか素晴らしい内容なんです。WRのアレンジを含めた「丸ごとカヴァー」では無い、ピアノ・トリオならではの独自で大胆な解釈が基本的に「成功」しています。特に、WRの中で印象的な旋律を持つ楽曲が良い出来です。冒頭の「Cannon Ball」や2曲目「Elegant People」、7曲目の「Young and Fine」が良い例です。

逆に、ジャコ・パストリアスの天才エレベやウェイン・ショーターのサックスが活躍する楽曲、「Teen Town」や「A Remark You Made」はちょっと苦しい展開。エレベとアコベは弾き方が全く異なるし、ジャコのエレベをピアノでカヴァーするのは余りに単純すぎる。また、ショーターの強烈個性のサックスの音をシンプルなピアノの音でカヴァーするのはちょっとしんどい。

ただ、ちょっと苦しいだけで、個性的で挑戦的なアレンジなどの工夫はしっかりと評価すべきでしょう。とにかくレンジを含めた「丸ごとカヴァー」では無く、ピアノ・トリオをしっかりと前提にして、ピアノ・トリオならではのフォーマットを活かすアレンジを施しているところに魅力を感じます。

WRを聴き込んだ「WR者」の方々は絶対に楽しめると思います。実は僕もこの新盤については興味津々で、この「アコースティック・ウェザー・リポート」トリオのアレンジの妙と演奏テクニックの高さに感心することしきりです。内容の濃い、聴いて楽しい企画盤です。

 
 

震災から5年8ヶ月。決して忘れない。まだ5年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年8月12日 (金曜日)

ジャコの個性と凄みを再認識する

ジャズ・ベースの革命児、特にエレキ・ベースの革命児であり、決定的レジェンドの存在が「ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)」である。彼のベース・プレイは明らかに天才のそれであり、明らかに伝説として語り継がれるべきものである。

そんなジャコの貴重なインタビュー集である「ワード・オブ・マウス ジャコ・パストリアス魂の言葉」が文庫本で発売されたので、本屋で見つけ次第、即ゲット。なかなか興味深い内容で思わず読み進めてしまう。そのBGMとして、ジャコのライブ盤を聴いたのだが、このブートの様なライブ盤の内容もなかなか興味深かった。

そのブートの様なライブ盤とは、Jaco Pastorius『Live in Italy』(写真左)。1986年12月、イタリアはローマでのライブ録音。ジャコは1987年9月に事故で亡くなっているので、無くなる約1年前のライブ・パフォーマンスになる。

ブートの様なライブ盤と書いたが、今までリリースされたジャコのCDを見渡して見ると、1986年暮れから1987年にかけてのBireli Lagreneとのヨーロッパ・ツアー時の音源は、1987年にJacoが亡くなって以降、何種類かリリースされている。この『Live in Italy』は、そんな中の一枚。

このBireli Lagreneneというギタリストとのコラボレーションが、ジャコのエレベの特質を判り易く伝えてくれている様で、僕はジャコのエレベの個性を確かめる際、この『Live in Italy』を良く聴く。好不調の差の激しさはあるものの、ジャコのエレベならではの素晴らしさは、他のベーシストとは明らかにその次元が異なります。
 

Jaco_live_in_italy

 
1曲目の「Improvisation, No. 1/Teen Town」を聴けば、ジャコのエレベの個性が如実に感じ取ることが出来ます。Bireli Lagreneneというギタリストは明らかにロック系で、ジャズ系の音や個性は微塵も無い、単純なプレイです。Deep Purpleの「Smoke On The Water」のリフを弾くおふざけから、下手くそなジミヘンという感じの脳天気でヘヴィなロック・テイストには思わず閉口します。

しかし、ジャコのエレベが入ってくると、その音世界は一変。演奏全体の雰囲気はジャコの個性のみに塗り替えられます。脳天気なBireli Lagreneneというギタリストの音はしていますが、全く影響はありません。「Teen Town」の部分のエレベの弾き回しが凄くて、ユニゾン&ハーモニーの部分では、逆にロック・ギタリストの方が、ジャコのエレベに引っ張られている感じがあります。

脳天気なロック・ギタリストが作ったヘビメタなロックの雰囲気を、ジャコのエレベのフレーズが、ガラッとジャズの音世界に変換させてしまう。それだけ、ジャコのエレベの個性は強烈です。あまり評判の良く無い、このLagreneとのヨーロッパ・ツアーのライブ音源ですが、ジャコのエレベの個性と凄みを再認識出来て、ジャコ者としては意外と楽しめます。

演奏全体の雰囲気は確かに課題の多い内容ですが、ジャコの個性を確認する分には格好のライブ音源だと思います。一般のジャズ者に対してはお勧め出来ませんが、ジャコ者(ジャコのファン)のジャズ者ベテラン方々に対しては一聴をお勧めしています。

 
 

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2016年2月19日 (金曜日)

ザビヌルのやりたかったこと

もう亡くなって9年にならんとしている。僕の大好きだったキーボード奏者、ジョー・ザビヌル(Joe Zawinul)。オーストリアのウィーン生まれのジャズ・フュージョン・ピアノ・シンセサイザー奏者。伝説の電子ジャズ・バンド、ウエザー・リポート(以降WRと略す)の双頭リーダーの一人。

彼の音楽的志向については、何となく感じていた。WRの4th作『Mysterious Traveller』からである。それまでは、忠実なエレ・マイルスのフォロワーだったWRが、突如、ワールド・ミュージックとの融合のアプローチを選択し始めた。あからさまではないが、このアルバムからザビヌルの音楽的志向が見え隠れする様になる。

つまりは「ザビヌルのやりたかったこと」。ワールド・ミュージックとの融合である。世界各国のワールド・ミュージックと融合しまくりたい。それが「ザビヌルのやりたかったこと」ではなかったか。でも、かたやバンドが売れに売れたい、というのもザビヌルの望み。ザビヌルのそれぞれの「望み」の、双方のバランスを取った、微妙な音表現の結果がWRの各アルバムである。

そんなWRを1986年に解散。自由の身になったザビヌルは、いきなり自分のやりたかったこと、に手を染める。その最初の音楽的成果がこのアルバムになる。Joe Zawinul『Diarects』(写真左)。1986年のリリース。WRを解散してその時にこのソロ・アルバムをリリースしている。
 

Joe_zawinul_diarects

 
このアルバムの音世界は、明らかにワールド・ミュージックとジャズの融合である。その「融合」をザビヌルがシンセサイザーのぶ厚いユニゾン&ハーモニーで唄い上げていく。WRで培ったぶ厚いユニゾン&ハーモニー。万華鏡の如く、様々なニュアンスを見せる、バリエーション溢れるソロ。

サイドメンはいるにはいるが、ザビヌルの一人舞台である。多重録音の様なザビヌル単独の音表現。様々な地域のワールド・ミュージックの要素をごった煮に融合している。それでいて、しっかりと音が統制されているのは、ザビヌルのワールド・ミュージックの対する造詣とその特質を見抜いた、卓越したアレンジ力の賜だろう。

僕はこのザビヌルの「ワールド・ミュージックとジャズの融合」の音世界が大好きである。このアルバムを初めて聴いた時には喝采の声を上げた。ワールド・ミュージック系の音って大好きなんですよ。ザビヌルのキーボードの音も大好きで、このアルバムの様なアプローチって、僕にとっては「願ったり叶ったり」という訳で(笑)。 

あまりにザビヌルのキーボード・ワークとワールド・ミュージック志向が突出しているので、これってジャズなん、ということで賛否両論なアルバムですが、この「ワールド・ミュージックとジャズの融合」も、これまたジャズだよな〜と感じています。僕にとっては「好盤」です。

 
 

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2016年2月 9日 (火曜日)

ウエザーリポートの2016年版

Peter Erskine(ピーター・アースキン)の名は、Weather Report(以降WRと略す)の黄金時代のドラマーとして知った。彼がWRに参加したのは、1978年の『Mr.Gone』から。エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラマーだった。

とにかく、その包容力は素晴らしい。なんせ、キーボードの魔術師、ジョー・ザビヌル。宇宙から来たテナーマン、ウェイン・ショーター。そして、エレベの天才、ジャコ・パストリアス。この途方も無い3人を相手にドラムを叩きまくるのだ。その包容力とタフさは並大抵のものでは無い。

WR解散後はフリーランスなドラマーとして活躍。アースキンは結構器用なドラマーでもあり、ジャズの様々な演奏フォーマットやスタイルで叩くことが出来る。フュージョン、純ジャズ、どちらもOK。どんなフォーマットでもスタイルでも、かなり高度な味のあるドラミングを披露してくれている。僕のお気に入りドラマーの一人でもある。

そんなアースキン、実に魅力的なアルバムをリリースした。そのアルバムとは、Peter Erskine『DR.UM(ドクター・アム)』(写真左)。今月の3日にリリースされた出来たてホヤホヤの新作である。僕のお気に入りドラマーの新作、さっそく聴いてみた。

冒頭の「Lost Page」を聴いて思わず叫ぶ「これってWeather Reportやん」。次の「Hawaii Bathing Suit」を聴いて、やっぱり「これってWeather Reportやん」。その次の「Borges Buenos Aires」を聴いて、結局「これってWeather Reportやん」(笑)。そう、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。WRが甦った様な音世界にワクワクする。
 

Dr_um

 
ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Beasley (key), Janek Gwizdala (el-b), Bob Sheppard (ts), Jeff Parker, Larry Koonse (g), Aaron Serfaty (per), Jack Fletcher (vo)。う〜ん知らん名前ばっかりやなあ。でも、このアルバムのメイン・コンセプトは「ウエザーリポートの2016年版」。参加メンバーのテクニックは相当に高い。

キーボードの音は、まさにジョー・ザビヌルそっくり。これだけザビヌルそっくりを貫けば、それは個性になる。エレベは控えめのジャコ。ドラムのアースキンがリーダーなので、アースキンのバックに回って、アースキンのドラムをしっかりと支える。テナーは目立たない。逆にエレギの存在が印象的。WRって、フロントはやはりエレギの方が良かったか。

このアースキンの新作『DR.UM』は、テナー抜きのWRという印象が強い。ショーターのいないWR。しかし、これがなかなか良い雰囲気なのだ。WRの個性のひとつ、ぶ厚いキーボードのアンサンブルを前面に押し出すには、テナーの音は邪魔だったのかもしれない。そんな思いを持たせてくれる、素晴らしい内容の「ウエザーリポートの2016年版」。

そんなアルバム・コンセプトの中で、アースキンのドラミングは実に素晴らしい。WRの音にはWRの音に合ったドラムの叩き方があるみたいで、このアルバムでのアースキンのドラミングは、まさに「水を得た魚」である。これぞアースキンという、エネルギッシュで多彩な音、滑らかなチェンジ・オブ・ペースが個性の疾走感と切れ味が素晴らしいドラミングを聴かせてくれる。

いやほんとに、このアルバムでのアースキンのドラミングは素晴らしい。アースキンのドラミングの中でも、この『DR.UM』は屈指のアルバムになるだろう。

 
 

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2015年10月24日 (土曜日)

ザヴィヌルのエスニックな音世界

1970年代から1980年代、一世を風靡したフュージョン・バンド、ウェザー・リポート(Weather Report)。僕はこのウェザー・リポートの大ファンな訳だが、幾つか気になることがあった。

4枚目の『Mysterious Traveller』から紛れ込んできた、ワールド・ミュージック系の音、アフリカン・ネイティブでアーシーな民俗音楽風の音は誰の趣味なのか。ショーターの趣味にしては、ワールド・ミュージックな雰囲気があからさますぎる。

ジャコ・パストリアスが参入してから、このワールド・ミュージック系の音、アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音がかなり幅をきかせ始めたので、ジャコの趣味かとも思ったが、ジャコ参加以前から、そこはかとなく、この音世界が漂っていたので、ジャコが発信源では無い。

実は、このアルバムを聴いた時、このワールド・ミュージック系の音、アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音は、ジョー・ザヴィヌルの趣味、仕業だったことに気がついた。そのアルバムとは、Joe Zawinul & The Zawinul Syndicate『Vienna Nights』(写真左)。

故郷ウィーンに開いた自己のクラブ「ジョー・ザヴィヌルズ・バードランド」でのライブ盤である。2005年のリリース。Weather Report解散後,ザヴィヌルのアフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音は段々と頭角を現し、このアルバムでは、もはや、アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音一色。
 

Zawinul_vienna

 
しかし、これほどまでに、ザヴィヌルがアフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音がお気に入りだったとは思わなかった。好きこそものの上手なれ、というが、確かに、このアルバムでの、アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音については、実に上手く創られている。

ザヴィヌルお得意のシンセサイザーによるユニゾン&ハーモニーが実に効果的に響いて、両立のアフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックなフュージョン・ジャズ盤に仕立て上げられている。ボーカル入りの曲も約半数を占め、肉声だけで無く、ボコーダーも有効に活用して、エスニック度濃厚な音世界が溢れんばかり。

アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音の展開が凄い迫力と内容。ザヴィヌルの本質はここにあったのか、と改めて再認識する。ジャズの原点を押さえた好盤ではあるが、アフリカン・ネイティブでアーシーでエスニックな音を前面に押し出した分、ある意味、通常のメインストリーム・ジャズを超えている。

ワールド・ミュージックがベースのフュージョン・ジャズ。ある意味、真のフュージョン(融合)な音楽であると言える。これほどまで、エスニックな音世界は唯一無二。ザヴィヌルは亡くなったが、彼の音楽は残った。

 
 

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2015年5月25日 (月曜日)

ショーターの評価に困るソロ盤

ジャズ・ミュージシャンって、判り易い人と判り難い人とはっきり分かれる気がする。判り易い人はとことん判り易い音楽を奏でるし、判り難い人はとことん判り難い展開をする。ジャズって、そういうところがハッキリしていて面白い。

僕にとって、判り難い人の筆頭が「ウェイン・ショーター(Wayne Shoter)」。この人はさっぱり判らん。ジャズ界のレジェンド、天才テナー奏者の誉れも高いショーターだが、どうにもこうにも、この人の音楽性と活動方針は判り難い。

もともとは、アート・ブレイキーとマイルス・デイヴィスに見出され、1960年代半ばから後半にかけて、マイルスの黄金のクインテットの一員として一世を風靡している。マイルスの薫陶の下では、モード奏法を駆使して、限りなく自由度の高いハードバップを展開した。

しかし、マイルスの下を離れてから、その活動内容は怪しくなる。エレクトリック・ジャズを良しとせず、マイルスの下を離れたが、モード奏法を駆使して、限りなく自由度の高いジャズを追求すべく、ジョー・ザビヌルと組んで「Weather Report」を結成した。が、この「Weather Report」はエレクトリック・ジャズが専門となった。

ファンクはいやだとか、エレクトリック・ジャズはいやだとか言いながらも、Weather Reportの『Sweetnighter』ではアーシーなリズム&ビートに手を染め、次の『Mysterious Traveller』では完全に地に足の着いたアーシーでエレクトリックな展開に変貌した。加えて、アフリカン・ネイティブでワールド・ミュージック的な音世界にも手を染めた。

そして、そのまま、アフリカン・ネイティブでワールド・ミュージック的な音世界をザビヌルとの「Weather Report」で展開すれば良いものを、なぜか、同時期にソロアルバムを発表し、その内容が、全くの「アフリカン・ネイティブでワールド・ミュージック的な音世界」バッチリの内容なのだ。この時点で、僕はショーターにとってのソロとバンドの位置づけが判らなくなった。

そのショーターのソロアルバムとは、Wayne Shorter『Native Dancer』(写真左)である。1974年のリリース。Weather Reportのアルバムに照らし合わせれば『Mysterious Traveller』と同時期に、ソロアルバムをリリースしたことになる。しかも、内容的には同じ雰囲気のもの。ええんかいな。
 

Native_dancer

 
パーソネルを眺めると判り易い。Wayne Shorter (ts,ss), Milton Nascimento (g,vo), David Amaro, Jay Graydon (g), Herbie Hancock (p,key), Wagner Tiso (org,p), Dave McDaniel (b), Roberto Silva (ds), Airto Moreira (per)。ミルトン・ナシメントの名前が目を惹く。これって、ショーター・ミーツ・ブラジルである。

冒頭の「Ponta de Areia」を聴くと、ブラジリアンというよりは、アフリカン・ネイティブでワールド・ミュージック的な音世界が展開されていてビックリする。土着なワールド・ミュージック的でネイティブな響き、アフリカンなリズム&ビート、野趣溢れるボーカル。これって、Weather Reportでの双頭リーダーの相方、ジョー・ザビヌルの得意ジャンルではないか。

この『Native Dancer』ってアルバム、ショーターにとってどういう意味を持つアルバムだったのだろう。Weather Reportでの双頭リーダーの相方、ジョー・ザビヌルのお株を奪うような『Native Dancer』の音世界。しかも、このソロアルバムの後、11年間、ソロアルバムをリリースすることは無かった。じゃあ、この『Native Dancer』って、ショーターにとって何だったのだろう。

ザビヌルに対する当てつけだったのかも。「Weather Report」を我が物の様に取り回すザビヌルに対する牽制だったのかも。俺もこれくらいのアルバムは一人で作れるんだぜ、なんて声が聞こえてきそうな、ショーターにとっての「ひとりでできるもん」なアルバムだったのかもしれない(笑)。

ショーターのキャリアと個性を鑑みると、この『Native Dancer』というソロアルバムは異端中の異端であり、ショーターがアフリカン・ネイティブでワールド・ミュージック的な音世界に手を染める必然性も感じられず、何ともはや、評価に困るソロアルバムではあります。世間では手放しで高い評価を与えられることの多い盤ですが、僕にはいまいち、ピンときません。  
 
いっそのこと、Weather Reportのアルバムとして、この『Native Dancer』が制作され、リリースされていたら、相当な名盤に仕上がっていたのではないか、と思っています。それほどまでに、Weather Reportの個性にピッタリの音世界が、この『Native Dancer』の中にギッシリと詰まっています。
 
 
 
震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2010年8月19日 (木曜日)

ここにはWeather Reportは無い

Weather Report(ウェザー・リポート)の後期、『Procession』から『Domino Theory』まで聴き進めて、僕は当時、これはもう「Weather Reportでは無いのでは」と思った。特に、1984年にリリースされた『Domino Theory』(写真左)。さすがに、このアルバムには「ガッカリ」した。もはや、このアルバムには、Weather Reportは全く存在しない、と感じた。

そして、1985年『Sportin' Life』である。これは実を言うと、リリース当時、僕は購入しなかった。とにかく、『Domino Theory』のショックが大きい。もうWeather Reportに対して、興味は失せていた。ジャズ雑誌は、相変わらず、絶賛していた、若しくは、次なる素晴らしいステップへの「前向きな過渡期」と好意的な評価をしていた。

この『Sportin' Life』を聴いたのは、リリース年から10年ほど経ってからである。冒頭のボーカル入りのシンセ中心の演奏を聴いて、ゲンナリした。『Domino Theory』よりも酷い。もう全く覇気の無い演奏である。デジタル・シンセの音がやたらに目立って、酷く凡庸なデジタル・シンセのフュージョン・ジャズを聴いているよう。

2曲目以降の楽曲にも、もはや「聴くべきもの」は無い。ビートは平凡というか、ビートは硬直し、ギターを入れたらファンキーな雰囲気になるとでも思ったのだろうか、ザビヌルのデジタル・シンセの雰囲気をなぞった、実に窮屈で、実にノリの悪いエレキ・ギターが虚しく響く。サックスのショーターは、ちょっとだけププッと吹くだけ。それも気持ちがこもっていないのが良く判る。

とても、Weather Reportとは思えない。ザビヌル個人のデジタル・シンセを駆使した、平凡なビートに乗った、平凡なシンセ・フュージョンの「デモテープ」を聴いているようだ。こんな演奏を、Weather Reportの正式盤でリリースするとは、ザビヌルの良心を疑いたくなる。Weather Reportに対して失礼である。何の変哲も無い、平凡なシンセ・フュージョンの響き。空虚なアルバム。

そして、Weather Report名義のラストアルバムが『This Is This!』(写真左)。1986年のリリース。このアルバムには、双頭リーダーだったウェイン・ショーターのサックスは全く参加していない。ザビヌルのデジタル・シンセだけが、やけに空虚に、やけに明るく響く。

Sportinlife_thisisthis

冒頭の表題曲「This Is This!」は、とにかく酷い。平凡極まりない、俗っぽい、平板なフュージョン・ジャズ。ギターも酷ければ、ザビヌルのシンセも酷い。空虚に響くシンセ。そして、平凡極まりないビート&リズム。これは、フュージョン・ジャズでも無い。ジャズのビートは皆無。今聴き直してみても、良いところが見当たらない。

この『This Is This!』ほど、Weather Reportの歴史を冒涜するアルバムは無いだろう。なぜ、こんなアルバムをリリースしたのか。契約があったことは理解するが、ザビヌルはペナルティーを払ってでも、この『This Is This!』は、Weather Report名義でリリースしてはならなかった。

このアルバムの存在が、ザビヌルにとって、Weather Reportは単なる一つの金稼ぎの道具に過ぎなかったのでは、という疑義を抱かせるに十分な「凡庸な内容」。これはWeather Reportのファンに十分に失礼な内容である。

これでWeather Reportのスタジオ録音のアルバムは全て聴き直したことになる。総括すると、Weather Reportは、1971年の『Weather Report』から、1982年の『Weather Report』までは、本当の意味でのWeather Reportと言える。1983年の『Procession』以降は、もはや、Weather Reportでは無い。ザビヌルの平凡な出来の「デモ・テープ」である。絶対にWeather Reportとは呼べない。

そして、1971年から1982年までのWeather Report時代のアルバムの中でも、1973年の『Sweetnighter』から、1974年の『Mysterious Traveller』、1975年の『Tale Spinnin'』の3枚についても、自分としては、Weather Reportの正式アルバムとしては、挙げたくないアルバムではある。

真のWeather Reportのスタジオ録音盤としては、デビューアルバム『Weather Report』『I Sing the Body Electric』『Black Market』『Heavy Weather』『Mr. Gone』『Night Passage』『Weather Report('81)』の7枚を聴けば十分。その他のアルバムは、Weather Reportのマニア向けでしょう。

ザビヌルって、Weather Reportの後期、後生に汚点となって残るアルバムをリリースしつつけたのだろう。そして、このWeather Reportの後期のアルバムほど、ジャズ評論家の意見は参考にはできるが、信じることは絶対に出来ない、という確信を持たしてくれたアルバムは無い。 
 
 
 
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2010年8月15日 (日曜日)

WR 終焉へのカウント・ダウン

1984年にリリースされた『Domino Theory』(写真左)。さすがに、このアルバムには「ガッカリ」した。もはや、このアルバムには、Weather Reportは全く存在しない、と感じた。

冒頭のCarl Andersonのボーカルが入った「Can It Be Done」。なんやこれ、と思った。今の耳にも、この「Can It Be Done」のアレンジのセンス、シンセの使い方のセンス、実にひどい。前奏なんぞ、噴飯ものである。ザビヌルは何を考えていたのか。電気ジャズのAORの線でも狙っていたのか(笑)。とにかく、この「Can It Be Done」を冒頭に配した感性が理解の範疇を超えている。

2曲目の「D-Flat Waltz」は、10分超のWRらしいインプロビゼーション中心の楽曲だが、このデジタル臭さはなんだ。特に、ザビヌルのシンセのデジタル臭さは何とかならんのか。金にあかして、当時の新機材をどんどん導入し、聴き馴れない、新しいシンセの音を使用して、なんとか、WRが従来より提示してきた、「斬新な音」を表現したかったのだろうが、平凡極まりない。ミュージシャンとしての「斬新な音」は、何も機材から供給されるものでもなかろう。

3曲目の「Peasant」は、デジタルシンセを駆使したワールド・ミュージック風な演奏であるが、ビートとリズムが奥に引っ込んでいて、実に平坦な音世界が8分も続く。退屈極まり無い、デジタルシンセの平凡な音。ここまで聴いてきて、ザビヌルはどうしてしまったのか、と思ってしまう。センスのかけらも、インテリジェンスのかけらも無い。これでは、新加入のベースのビクター・ベイリー、ドラムのオマー・ハキムが可愛そう。ザビヌルの影に隠れて、ザビヌルを目立たせるだけの為に、リズム・セクションがあるかのよう。

Domino_theory

以降、同傾向の曲が続く。退屈極まりないアルバム。当時、デジタルシンセの音が何となく新しい感じがしたが、今では、当時流行のデジタルな平凡な音ばかりで、古さばかりを感じる音ばかり。もともと、ザビヌルのシンセの使い方は見劣りがしたが、この『Domino Theory』でのシンセの使い方は酷い。ザビヌル一人の独裁バンドになった途端に、この酷さ。

加えて、なぜか前作『Procession』で、喜々としてサックスを吹いていたショーターも、このアルバムでは、まったく「いけていない」。ショーターらしいフレーズも無く、ただただ、ザビヌルに合わせて、ザビヌルの指示通りのフレーズを機械的に吹くだけ。人間味の無い、ミュージシャンシップのかけらも無い、サックスの音。

リズムも陳腐、ビートは効かず、キーボードの音色もフレージングはセンスのかけらも無い。テクニックがいかにあろうとも、このアルバムには「矜持」が無い。ひたすら、独裁リーダー・ザビヌルの自己満足だけがこのアルバムに蔓延している。そうでも解釈しないと、こんな内容のアルバム、プライドのあるリーダーだったらリリースしないでしょう。でも、当時の雑誌の評論は、まだ「絶賛」若しくは「新境地開拓」と、盲目的に評価していたんですよね。「どうもおかしい」、この頃からですね、評論家の方々の意見は参考にはするが、鵜呑みにしなくなったのは・・・。

この『Domino Theory』は、WR 終焉へのカウント・ダウン。もはや、ここに、ジャズの最先端を走っていたWeather Reportの姿は無い。残骸も無い。あるのは、平凡なザビヌルの音世界だけ。しかし、WRは、あと2枚ものアルバムをリリースするのだ。「矜持」のかけらも無い。WRはザビヌルの我が儘のお陰で「晩年を汚してしまった」のである。今の耳で聴き直しても、やはり「つまらない」。
 
 
 
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2010年8月14日 (土曜日)

自分の耳を信じよ 〜WRの迷走

ジャズは複雑な音楽で取っつき難い。自分の耳が信じられる様になるまで、雑誌の評論に翻弄され、入門本の紹介文に揶揄される。後になって振り返ってみれば、自分が「良い」と感じたジャズが、自分にとって「良い」ジャズなんだ、と判るんだが、ジャズ者初心者の頃は、どうしても他人の、特に「権威」の意見に振り回されてしまう。

僕にとって、その「振り回された」最たる思い出が、Weather Report (ウェザー・リポート・以降WRと略す)の後期、1983年リリースの『Procession』(写真左)以降の4枚のアルバム。このアルバム4枚ほど、雑誌の評論、世間の評判と自分の耳の感じ方が異なったケースは無い。特に、『Procession』については、ほとほと困り果てた思い出がある(笑)。

『Procession』は1983年発表。前年の1982年に、ジャコ・パストリアスとピーター・アースキンという、WR史上、最高かつ最強のリズム・セクションが脱退(というか、ザビヌルに追い出された感が強いが・・・)。遂にWRは、キーボードのジョー・ザビヌルのワンマンバンドと化した。

初期WRは、サックスのショーターとベースのビトウスの手柄であり、中期WRは、ドラムのピーター・アースキンとベースのジャコ・パストリアスの手柄であった。残念ながら、いつの時代も中途半端なスタンスで、とにかく売れたいと思っているキーボードのジョー・ザビヌルは、彼らの後塵を拝していた。

原因は、ザビヌルのキーボードに対する、特にシンセサイザーに対する理解度の浅さが主な原因だろう。当時の超一流のキーボーダー、チック・コリア、ハービー・ハンコック、ライル・メイズらと比べると、その才能については、どうしても1ランク、若しくは2ランク落ちる。機材の充実度、機材の総価格でいくと、ザビヌルはダントツなんだが、キーボードの音は、キーボードのセンスは、価格ではなく才能である。

この『Procession』については、当時、本当に自分なりの評価に困った。どう聴いても「優れたアルバム」とは思えない。特に、ザビヌルのシンセサイザーのセンスにかなり強い疑いを持った。

Procession

冒頭の表題曲「Procession」のザビヌルのシンセサイザーの使い方は、とても「ジャズ」をベースにしたシンセサイザーの音とは思えなかった。これでは、1970年代のプログレの方がシンセサイザーを理解していたと言えるし、この陳腐なデジタルチックな、時代に迎合したシンセサイザーの音は一聴して「おかしい」と思った。

でも、雑誌では絶賛されていた。若しくは、次なる素晴らしいステップへの「前向きな過渡期」だとされた。しかし、当時の僕は、ジャズを聴き始めてまだ5年程度。自信も有るわけが無く、雑誌の評論家の先生方の評価の方が正しいと思おうと思った。でも、『Procession』は2度聴けなかった。どうしても、ザビヌルのシンセの音が評価できない。

ジャコとアースキンに代わったベースのビクター・ベイリー、ドラムのオマー・ハキムは、ザビヌルのシンセを主役にするべく、ザビヌルのソロの旋律に被らないように、ザビヌルがリードするビートを踏襲しようとして、実に窮屈な演奏を強いられている。ビクター・ベイリーのエレベの音色は、ジャコにそっくりだが、彼の弾き出すビートはジャコとは全く違う。ザビヌルに迎合したビートで終始している。そして、オマー・ハキムのドラムは、ザビヌルを優先する余り、単なるデジタルチックな平凡なリズムに終始してしまっている。実に残念なリズム・セクション。

当時、この『Procession』で、ザビヌルは何を表現したかったのか。ファンキーな音なのか、シンセ中心のデジタルチックな音なのか、なんだったんだろう。この『Procession』で表現された音は、今の耳で聴くと、どう聴いても「ジャズ」とは思えない。ましてや、このザビヌル独裁のWRに、往年のWRの音世界は全く無い。あるのはザビヌルの、当時の音世界のみ。しかも当時のザビヌルは、晩年のワールド・ミュージックな音を獲得したザビヌルの個性を確立している訳ではなく、単なるデジタルチックで高額なシンセの弾き手に留まっていた。
 
思えば、1983年リリースの『Procession』で、既にWRはWRで無くなっていた。この『Procession』のWRは、ザビヌルのワンマン・ソロバンドである。この時点でWRは存在していない。WRは、ビートとリズムのバンドであった。そのビートとリズムは、双頭リーダーであったザビヌルとショーターの存在の他にあった。神の配剤の様に存在した、初期のビトウス&ムーゾン、中期のパストリアス&アースキン。

しかし、ザビヌルはことごとく、この「神の配剤」を排除した。そして、後期では、この「神の配剤」の部分を自らのシンセサイザーで表現しようとした。その瞬間、真のWRは消滅した。 
 
 
 
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2010年6月 5日 (土曜日)

Weater Reportの最終作・・・

1970年代〜80年代前半、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、当時のジャズ界を牽引したWeather Report。1980年代に入って、急に失速気味となる。

Weather Report の黄金時代は、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) の4メンバーの時代。1978年から1981年までの4年余りの期間になる。この期間のWeater Reportの音は、完全にグループ・サウンド中心の真に「Weater Reportの音」。それ以前と以降の音は、雰囲気的に「Joe Zawinul の音」。

Weather Reportが、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、ジャズ界の頂点に躍り出たのは、アルバム『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作によるところが大きい。この『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作については、コ・リーダーの一人、Joe Zawinul の功績というよりは、エレベの天才Jaco Pastoriusの功績の方が大きい。特に、Weather Report最大のヒット盤『Heavy Weather』は、Jaco Pastoriusのプロデュースの成果の方が大きいと思っている。

そして、次の『Mr. Gone』に至っては、もうJaco Pastoriusのプロデュースの成果のみの傑作となっている。Weather Reportの2枚組ライブ盤『8:30』を聴くと、Weather Reportの音の要は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人(写真右)のビートとリズム展開に因るところが大きく、そのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスの音が、このWeather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして成立させていた。

逆に言うと、Joe Zawinul のキーボードは、Weather Reportの大衆化、ポップス化には貢献してはいるが、Weather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして捉える時には、Joe Zawinul のキーボードの音の必要性は薄れて来ている。大衆性、ポップス性を全面に出すことにより、Joe Zawinulの目標であった「売れたい思い」は達成されたが、コンテンポラリーな純ジャズとしての芸術性の面では、Joe Zawinulのキーボードはあまり必要が無くなっている。皮肉なものである。

Wr81

実質リーダーのJoe Zawinulにとって、そんな相反する皮肉な現象が明確に感じることが出来るアルバムが『Weather Report '81』(写真左)。1980年代録音の最初のリリースということで、その意味も込めて、アルバム・タイトルは、デビュー盤と同様、グループ名だけを冠した『Weather Report』としている。1971年のデビュー盤と紛らわしいので、一般的には『Weather Report '81』と呼び分けている。このアルバムは、実に当時のWeather Reportらしいアルバムである。

ただ、面白いのは、収録された楽曲の殆どが、コ・リーダーの2人、Joe Zawinul とWayne Shorterが担当しているのにも拘わらず、当時、音の要となっていた、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人のビートとリズム展開が中心となっていて、特に、Peter Erskineの縦横無尽で変幻自在、千変万化なドラミングが素晴らしい。Peter Erskineの代表作の一枚と言っても良いくらいの素晴らしさである。当然、Jaco Pastoriusのベースは素晴らしい。この『Weather Report '81』は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの素晴らしさとそのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスを愛でるアルバムである。

で、Joe Zawinul のキーボードについては、若干響きが「古い」というか、大衆性、ポップス性を全面に押し出し過ぎて、先が読めてしまうような単調さが目立つ。ジャズの面白みは「先の読めないインプロビゼーション」にあるが、このアルバムでのJoe Zawinul のキーボードは、ジャズという観点で聴くと、ちょっと後退気味、停滞気味な音に響く。Joe Zawinul のキーボードでなくてはならない、という楽曲が本当に少なくなっている。

それでも、アルバム全体の出来は良い。冒頭の「Volcano for Hire」は、ポップでキャッチャーな旋律を持った従来のWeather Reportらしい楽曲となっていて、聴いていて楽しいし、2曲目以降の楽曲は、コンテンポラリーな純ジャズな演奏として、インプロビゼーションに重点を置いた、意外に「硬派」な内容になっている。故に、大衆化、ポップス化に貢献していたJoe Zawinul のキーボードが浮いた格好になっているのは、実に悩ましい。

このアルバムの録音の頃には、ベースのJaco Pastoriusは精神障害が進行し、言動にかなりも問題が出てきていた、という。そんなベースのJaco Pastoriusと、素晴らしいドラミングを披露したPeter Erskineを、なぜか、Joe Zawinulは解雇してしまう。当時の音の要、貴重なリズム・セクションを一気に失うこととなる。そうしてでも、バンドのメンバーを再構成したかったJoe Zawinulの本当の気持ちは、いったい何だったのか。

今の時代から振り返ると、このアルバムまでが、Weater Reportの音が、完全にグループ・サウンド中心の、真に「Weater Reportの音」。このアルバムが、Weater Reportの最終作と言っても良いだろう。Weater Reportの音の要は、デビュー当時から、リズム・セクションのビートとリズム展開に因るところが大きい。リズム・セクションのビートとリズムを中心から外し、キーボード中心となったWeater Reportは、次作『Procession』で、バンドの当初コンセプトとは全く違った「別のバンド」として再登場するのだ。 
 
 
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