2022年1月 3日 (月曜日)

エスニック&ユートピアへ変化

明けましておめでとうごさいます。今年もヴァーチャル音楽喫茶『松和』の当ブログをよろしくお願いします。

毎年、年が明けると「エレクトリック・ジャズ」が聴きたくなる。恐らく、マイルス・デイヴィスの1975年伝説の来日公演の思い出がそうさせるのだろう。当時、マイルスの来日公演の収録音源がFMで流れていて、これが当時、「なんだこれ」とショックを受けたと当時に、とても気に入った出来事がそうさせるのだろう。よって今年も、年が明けると「エレ・ジャズ」。

丁度、昨年の暮れから、Weather Report(WR)の聴き直しをしている。WRと言えば、エレ・ジャズ系バンドの最高峰のひとつ。ナイス・タイミングである。

Weather Report『Mysterious Traveller』(写真)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Josef Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Miroslav Vitouš (ac-b : track 2 only), Alphonso Johnson (b), Ishmael Wilburn (ds), Skip Hadden (ds : tracks 1 and 4 only), Dom Um Romão (perc, ds)。

前作『Sweetnighter』で、創立当時の共同リーダーの1人、ミロスラフ・ビトウスと音楽的志向の相違によって袂を分かって、ウェイン・ショーターとの双頭リーダーになったジョー・ザビヌル。WRの音楽的志向を「エスニック&ユートピア」に舵を切る。リズム&ビートは「ファンク」なんだが、メロディーにはエスニックの味付け。エスニック志向のエレ・ファンクと形容しても良いかもしれない。

その最初の成果がこの『Mysterious Traveller』。冒頭の「Nubian Sundance」を聴くと、その「エスニック志向のエレ・ファンク」という味付けが良く判る。マイルスでも無い、ハービーでも無い、チックでも無い、ザビヌルならではの「エレ・ファンク」。その一番最初のプロトタイプ的な音がこの盤に詰まっている。そういう意味で、この盤は「ザビヌル流エレ・ファンク」の最初の1枚と評価しても良いと思う。
 

Mysterious-traveller

 
WRの変化と言えば、この盤については、双頭リーダーの片割れ「ウェイン・ショーター」の影が薄くなってきている。冒頭の2曲、ショーターは全く目立たない。プライベートにいろいろあったようだが、当時のショーターはWRの活動には、さほど強い興味は無かった様だ。2曲目の「American Tango」の途中、ショーターがやっと出てくる有様。

ただ、6曲目の「Scarlet Woman」では、ショーターのソプラノ・サックスが大活躍。この1曲を聴けば、ショーターのサックスって、WRには必要不可欠だと思う。この迫力と説得力は生のサックスじゃないと、しかもショーター・クラスの一流サックス奏者では出せないもの。決して、シンセサイザーでは代替できない。

ザビヌルはそれを理解していた。よって、ザビヌルはショーターを追い出すことは無かった。この曲は明らかにショーターの「コズミック&ミステリアス」志向の産物だが、ザビヌルはそれを容認している。

しかし、この盤は明らかに「ザビヌルの単独志向」のアルバムである。そのザビヌルの志向である「エスニック志向のエレ・ファンク」を完全表現するまで、ザビヌルのシンセ・テクニックは追いついていないが、その志向を的確に表現しようとする意欲は強く伝わってくる。

新規参入のベーシストについても、複数参加のドラム&パーカッションについては、ゲスト・ジャズメンについても、固定化せず、まだまだ、「エスニック志向のエレ・ファンク」に端緒を付けたばかりのアルバムであることが良く判る。

WRのキャリアを見渡す中で、この盤をWRの傑作と評価する訳にはいかない。それでも、この盤は、「ザビヌル流エレ・ファンク」=「エスニック志向のエレ・ファンク」なWRを表現した最初の1枚であることで、特別な存在であることは確かである。 
 
 
 
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2021年12月10日 (金曜日)

『Sweetnighter』を聴き直す。

1970年代から1980年代前半のジャズ界を駆け抜けた、伝説のスーパー・バンド『Weather Report』(以降、WRと略)。演奏される音世界は唯一無二で、こんな強烈な個性を持ったバンドは恐らく、ジャズ界には二度と現れないだろうと思っている。

当初は、ザヴィヌル・ショーター・ヴィトウスの「3人の共同リーダー体制」からスタート、コズミック&モーダルな音志向を展開し、次に、ザヴィヌル&ショーターの「双頭リーダー体制」へ移行。コズミック&アーシー、そしてファンキーな音志向を展開、最後はザヴィヌルの単独リーダーとなって、ファンキー&ワールドミュージック風な音志向へと変化した。

Weather Report『Sweetnighter』(写真)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Josef Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Miroslav Vitouš (ac-b, el-b), Andrew White (el-b, English horn), Herschel Dwellingham, Eric Gravatt (ds), Muruga Booker (Moroccan clay drums, roller toy, Israeli jar drums), Dom Um Romão (perc, w-fl)。

ヴィヌル・ショーター・ヴィトウスの「3人の共同リーダー」に、ヴィトウスと同じベーシストが1人、ワールド・ミュージック風のパーカッション奏者が参加。ドラムは、ドン・ウン・ロマンが継続して担当している。ヴィトウスと違うベーシストがもう1人参加、と、ヴィトウスがエレベを弾いている、というところがこの盤の「ミソ」。

冒頭の「Boogie Woogie Waltz」を聴けば、前作までのWRの音志向との「違和感」を覚える。リズム&ビートが「アーシーでありファンキー」なのだ。まるで「エレ・マイルス」。前作までの「コズミック&モーダル」の音世界が「コズミック&アーシー、そしてファンキー」に明らかに変化している。
 

Sweetnighter

 
アルバムを聴き進めて行くと、4曲目「25th Street Congress」、6曲目「Non-Stop Home」も、冒頭の「Boogie Woogie Waltz」と同様の音志向。逆に、2曲目「Manolete」、3曲目「Adios」5曲目「Will」は、前作までと同様、コズミック&モーダルな自由度の高い即興演奏風。

この盤は「WRの音志向の変化」を的確に捉えた盤だと言える。しかし、1枚のアルバムの中で、音の変化を確認出来るアルバムは珍しい。このアルバムの録音時、ザヴィヌルは、WRの音に「ファンクとグルーヴ」を導入することを決定。ショーターは同意し、ヴィトウスはさすがに「ファンク」の導入には賛成出来ず、この盤をもって、WRを脱退することになる。

ヴィトウスの気持ちは良く判る。ヴィトウスのベースに「ファンク&グルーヴ」を持て、と言う方に無理がある。しかし、ザヴィヌルはそれを要請する。当然、プロ・ミュージシャンであるヴィトウスは従わない。当然、脱退である。この盤は、WRの音志向が「コズミック&アーシー、そしてファンキー」に変化したことを捉えたこと、そして、ザヴィヌルが「3人の共同リーダー体制」を破棄〜WRを私物化し始めたこと、この2つの事実を「音」として記録していることに意義がある。

アルバムの録音途中で、音志向を「コズミック&アーシー、そしてファンキー」に変化させたこともあって、アルバム全体の印象は統一感が希薄で、特に新しい音志向の「コズミック&アーシー、そしてファンキー」の楽曲3曲は発展途上な印象は否めない。

確かに当初のWRの音志向「コズミック&モーダル」を推し進めると、ショーターとヴィトウスの存在感は増すが、ザヴィヌルのキーボード・ワークの存在感は希薄になる。ショーターは「コズミック&モーダル」にも「ファンク&グルーヴ」にも適応する。つまり、ザヴィヌルがバンドの中での存在感を高めるには、「ファンク&グルーヴ」を導入することが必須だった。いわゆる「ザヴィヌルを取るか、ヴィトウスを取るか」である。

結果、ザヴィヌルの発言力が勝り、ヴィトウスは去る。同時に、WRの中で「ザヴィヌルのWRの私物化」が始まるのだ。
 
 
 
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2021年12月 3日 (金曜日)

ウエザー『Live in Japan』再び

ジャズ盤はワールド・ワイドに流通しているものが多い。それぞれの国内に留まるものもあるが、一流ジャズマンについては、メジャー扱いで、ジャズが根付いている国に向けて、ワールド・ワイドの販売されている。

しかし、我が国は「ジャズ先進国」。ワールド・ワイドに聴かれている一流ジャズマンのリーダー作でありながら、日本だけで企画され、販売されるジャズ盤が結構な数、あるのだ。

Weather Report『Live in Japan』(写真左)。1972年1月13日、東京 渋谷公会堂でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts), Joe Zawinul (ac-p, el-p), Miroslav Vitous (el-b), Eric Kamau Gravatt (ds), Dom Um Romao (perc)。WRのセカンド盤『I Sing the Body Electric』のメンバーがそのまま、日本にやってきた「クインテット編成」。

このWRの『Live in Japan』の音源から、メロディアスな部分をピックアップして編集した音源が、WRのセカンド盤『I Sing the Body Electric』のLPのB面を占めている。ファースト盤から、セカンド盤のA面に収録されたスタジオ録音の演奏と比べて、違和感の無いように上手く編集されている。

が、このWRの東京公演、ファースト盤から、セカンド盤のA面に収録されたスタジオ録音とは、違う雰囲気の演奏になっているから面白い。しかも、このライヴ盤の次のサード盤から、「アーシー+ファンクネス」を導入、「エスニック&ユートピア」な音世界をメインとする「ザヴィヌル単独主導」の音志向にガラッと変化するのだから、なおさら面白い。
 

Wr-live-in-japan

 
初期のWRの音世界は「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ、自然(ネイチャー)で牧歌的なエレ・ジャズ、コズミックなエレ・ジャズが、違和感無く効果的に融合したエレ・ジャズ」であるが、この日本公演の演奏は、エレ・ジャズではあるが、即興性を最大限に押し出した「限りなくフリーに近いモード・ジャズ」もしくは「ECMレーベルに代表される自由度の高いニュー・ジャズ」な演奏ばかりなのだ。

限りなくフリーに近いエレクトリックなモード・ジャズ、時々「どフリー」。そんな即興演奏基調のパフォーマンスが、LP2枚分、約90分弱、繰り広げられるのだ。当時のジャズ者の方々は度肝を抜かれたが、訳が判らなくなったのではないか、と思われる位に、尖ってぶっ飛んだ自由度の高いパフォーマンス。ドラムとパーカッションのリズム隊は、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのに相当苦労したと思われる。

ショーターとヴィトウスのフリーは何となく判る。ザヴィヌルのフリーがとても珍しい。しかも、超一流の「どフリー」をやるのだから、僕もこのライヴ盤を初めて聴いた時は唖然とした。このライヴ盤、発売当時は「日本限定盤」。CDの時代になってもなかなかリイシューされなかった。それでも、1997年にリイシューされ、即ゲットして、すぐに聴いた思い出がある。そして、LP時代の様に「唖然とした」。

当然、米国では直接入手することは出来ず、日本に訪れる若手有望株なジャズマン達が、こぞって、このWRのライヴ盤を探し求めて、CDショップに立ち寄り、喜々としてゲットしていく、という逸話をきいたことがある。それほどまでに、このライヴ盤は、同業の若手ジャズマンにとって、興味深い内容になっているのだ。所謂「玄人好み」のライヴ名盤ということになる。
 
 
 
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2021年11月26日 (金曜日)

I Sing The Body Electric 再び

ウェザー・リポートは、当初は「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ、自然(ネイチャー)で牧歌的なエレ・ジャズ、コズミックなエレ・ジャズが、違和感無く効果的に融合したエレ・ジャズ」を志向していた。ファンクネス、ポップな要素は皆無、ストイックでモーダルなパフォーマンスが爽快感抜群な「コンテンポラリーなジャズの職人集団」だった。

Weather Report『I Sing the Body Electric』(写真)。1971年11月のスタジオ録音と1972年1月13日の「東京・渋谷公会堂」でのライヴ録音。アルバム後半3曲のライブ録音にはこのアルバムに収録するため編集が施されている。ちなみにパーソネルは、Josef Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Miroslav Vitouš (b), Eric Gravatt (ds), Dom Um Romão (perc)。

この盤は、デビューアルバムで提示した「コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ、自然(ネイチャー)で牧歌的なエレ・ジャズ、コズミックなエレ・ジャズが、違和感無く効果的に融合したエレ・ジャズ」が、ほぼ完璧に成熟している。まず、前半の4曲、LPで言うと「A面」の4曲はスタジオ録音なのだが、いずれの楽曲もその完成度は高い。
 

I-sing-the-body-electric_1

 
そして、この盤の「聴きもの」は、後半の3曲、LPで言うと「B面」の3曲。「Medley: Vertical Invader / T.H. / Dr. Honoris Causa」
「Surucucú」「Directions」。これは、「東京・渋谷公会堂」でのライヴ録音をLPのB面に収める為に編集を施したもの。編集ものでありながら、限りなく自由度の高い「エレクトリックなモード・ジャズ」が凄まじいばかりの迫力で迫ってくる。

限りなくフリー・フォームに近いが、演奏の底で「しっかりとした約束事と規律」をキープしたモード・ジャズは、実にスリリング。そんなスリリングでストイックなジャズを「エレクトリック」でやる。当時として「最先端」のジャズだったと思うし、逆に、これ以上の「エレクトリックなモード・ジャズ」は無いのでは無いか、とも思う。

そういう意味で、この盤は「アーシー+ファンクネス」を導入する前の、ストイックなメインストリーム・ジャズ志向のウェザー・リポートのピークを捉えた盤だと僕は評価している。ウェザー・リポートのアルバムの中で、あまり取り上げられない地味な盤であるが、どうして、その内容は限りなく充実している。もっと評価されて然るべき名盤だと僕は思う。
 
 
 
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2021年11月25日 (木曜日)

『Weather Report』を聴き直す

僕がジャズを聴き始めた頃、お気に入りのバンドは、Weather Report(ウェザー・リポート)。オーストリア出身のJoe Zawinul (key)、米国出身のWayne Shorter (ts)、チェコ出身のMiroslav Vitoušに (b) によって設立された(当初は共同主導)、エレクトリックな純ジャズ・バンドである。クロスオーバー&フュージョンなバンドとする向きもあるが、採用されたリズム&ビート、アドリブ・フレーズ展開の志向から、エレ楽器を活用した、メインストリームな純ジャズと解釈した方が判り易い。

『Weather Report (1971)』(写真)。1971年2-3月の録音、1971年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ss), Miroslav Vitouš (b), Alphonse Mouzon (ds, vo), Airto Moreira (perc)。今から思えば、凄いメンバーが集結したもんだと改めて思う。このメンバーで、いきなりエレ・ファンクに走らなかったのは、ベースのビトウスの存在が大きかったのだろう。

冒頭の「Milky Way」で度肝を抜かれる。シンセのホワイト・ノイズの浮遊感を最大限活かして、天の川のイメージを表現している。途中で、ショーターのソプラノが「プッ」と鳴って、流れ星を表現している様だ。こんな演奏を先進的なエレ・ジャズ盤の先頭に持ってこられるとは。自然(ネイチャー)というか牧歌的というか、ザヴィヌルの「In a Silent Way」の延長線上の音世界。
 

Weather-report-1971_20211125202001  

 
2曲目「Umbrellas」から、疾走感溢れる、コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズが展開される。ファンクネスは皆無。切れ味良い、スピード感溢れるモーダルなフレーズが出てくる出てくる。リズム&ビートはポリリズムックな8ビート。このファンクネスが皆無なところが、マイルスのエレ・ジャズと一線画するところ。チェコ出身のベーシスト、ヴィトウスの存在感が大きい。エレ・マイルス、エレ・チック、エレ・ハービーとは全く異なるエレ・ジャズでのアプローチ。

5曲目「Morning Lake」、6曲目「Waterfall」は、ザヴィヌルが名曲「In a Silent Way」で、ショーターも名盤『Odyssey of Iska』で表現していた、延長線上の自然(ネイチャー)で牧歌的なエレ・ジャズの世界。シンセとソプラノ・サックスで、音の広がり、幽玄さを上手く表現していて、とても良い内容の名演に仕上がっている。ショーター単独作の「Tears」「Eurydice」は、ショーターお得意の「コズミック・ジャズ」の音世界。

コンテンポラリーでモーダルなエレ・ジャズ、自然(ネイチャー)で牧歌的なエレ・ジャズ、コズミックなエレ・ジャズが違和感無く、効果的に融合した、エレクトリック・ジャズの名盤だと思う。マイルス、チック、ハービーのエレ・ジャズとは、完全に一線を画する、今から振り返ると、欧州的な、ECMライクなエレ・ジャズである。この盤にある「エレ・ジャズ」は、今の耳にも唯一無二である。
 
 
 
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2021年10月15日 (金曜日)

WRトリビュートのアルバムです

昔、ウエザー・リポート(以降、WRと略)の『ヘビー・ウエザー』を聴いて、これが最新のジャズなのかと、とてつもなく驚いたのが、1978年の5月の終わりだった。それから、『ブラック・マーケット』『幻祭夜話』とアルバムを遡りつつ、リリースされる新作を発売日と同時にゲットするという、WRにぞっこんの状態に陥った。あれから、43年が経過して、未だにWRは僕のお気に入りバンドとして君臨している。

『Celebrating The Music Of Weather Report』(写真)。2000年の作品。WRトリビュートのアルバム。マイルス・デイヴィスの『TUTU』『Amandla』への参加やトップ・アーティストの作品でファースト・コール・シンセイストとして活躍。またコンポーザー、アレンジャー、プロデューサーとしてもその才能を発揮している、ジェイソン・マイルスがプロデュース&アレンジを担当。このジェイソン・マイルスが中心となってサウンドを作っている。

ちなみにパーソネルは、曲毎に、メンバーはぼぼ全面的に曲毎に入れ替えしているので、結構の大人数になる。独断でピックアップすると、Jason Miles (key,arr,produce), Victor Bailey, Marcus Miller (b), Jay Beckenstein (ss), Michael Brecker (ts), David Sanborn (as), Randy Brecker (tp), Dean Brown, Chuck Loeb (g), Dennis Chambers, Steve Gadd, Vinnie Colaita, Omar Hakim (ds), John Pattitucci, Wil Lee (b), Tom Schuman (key), Aandy Narrell (p) etc.
 

Celebrating-the-music-of-weather-report

 
WRのカヴァー集だが、WRの演奏を完コピしている訳では無い。それぞれの曲をそれぞれのメンバーで、しっかり解釈し、しっかりアレンジを自分のものとし、それぞれの「即興演奏の個性と技」を駆使して、WRの楽曲に新しい息吹を与えている。特に、WRオリジナルの完璧なアレンジに対して、新しい解釈を乗せた新しいアレンジを施しているところが凄い。しかも、それがおおよそ成功しているのだから立派だ。

しかし、WRの楽曲って、ほんと良い曲が多い。しかも緻密な難曲が多い。当然、高度な演奏技術を要求されるが故、気楽にカヴァーされる楽曲では無い。この盤に収録されている曲はとにかく「名曲中の名曲」だろう。加えて難曲揃い。それをフュージョン・ジャズ畑の名うての名手達が、ガンガンに演奏しまくるのだから圧巻である。「捨て演奏」無し。どの曲も素晴らしく個性的なカヴァーである。

いや〜素晴らしいWRトリビュート盤ですね。このトリビュート盤を聴いていて、今の耳でWRの全アルバムを聴き直して、感想をまとめてみたくなりました。きっと昔とは違った聴き方が出来るのでは、と期待しています。よし、WRの全アルバムの聴き直しを始めよう。高ご期待、である。
 
 
 
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2019年10月29日 (火曜日)

ザヴィヌルのトリビュート盤

最近の新盤を眺めていて、トリビュート盤が結構出ているのに気がついた。その中でもこのトリビュート盤を見つけた時は思わず「おおっ」と思った。ウェザー・リポートやザヴィヌル・シンジゲートでの活動、マイルス・デイヴィス『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチズ・ブリュー』といった作品に参加〜貢献、エレクトリック・ジャズのキーボード奏者でありレジェンドである「ジョー・ザヴィヌル」のトリビュート作である。

Scott Kinsey『We Speak Luniwaz : The Music of Joe Zawinul』(写真左)。今年10月25日のリリース。冒頭の「The Harvest」のキーボード・ワークを聴くだけで、「ザヴィヌル者(ザヴィヌルのファン)」であれば思わず「むふふふ」と思う。ザヴィヌルのキーボード・ワークを忠実に再現しているのだ。音色、音の重ね方、フレーズ展開の手癖。どれをとっても「お見事」なのだ。

このザヴィヌルのトリビュート盤、長年ザヴィヌルとスタジオで同じ時間を過ごした愛弟子スコット・キンゼイのリーダー作。そりゃ〜、ザヴィヌルのキーボード・ワークの再現性の正確さ、当たり前か〜、と思わず感心する。音のエッジのラウンドさ、重ねた音のくすんだ感、そして、独特の乾いた無機質でオフビートなグルーヴ感。聴いていて、とにかくワクワクする。
 
 
We-speak-luniwaz  
 
 
選曲もなかなか良く練られたもので、ザヴィヌルのキーボード・ワークの個性がハッキリ出るザヴィヌルの自作曲を厳選している。「Cucumber Slumber」や「Black Market」「Fast City」「Port Of Entry」など、何度聴いても痺れまくるザヴィヌルの自作曲ばかり。ただし、ザヴィヌルの音世界を再現するばかりではない。インド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジし、ザヴィヌル曲に新しい魅力を与えている。

もともとザヴィヌルのキーボード・ワークは無国籍で辺境的な響きを宿したもので、従来のジャズ、いわゆるアフリカン・アメリカンのネイティヴな響きとは一線を画するもの。この個性をインド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジすることで、現代のジャズのトレンドのひとつである「クールでスピリチュアルな」エレ・ジャズを現出している。

ジャコ・パストリアスの再来とも称されるアドリアン・フェロウ、イエロージャケッツのオリジナルメンバーであったジミー・ハスリップ、ウエザー・リポートのオリジナルメンバーのロバート・トーマス・ジュニアなども参加していて、ザヴィヌルのトリビュート作としての「再現性」や「既聴感」に貢献している。とにかく、このトリビュート盤、ザヴィヌル者、WR(ウエザー・リポート)者にとっては必聴アイテムである。
 
 
 
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2018年12月 7日 (金曜日)

WRのビッグバンド・アレンジ

唐突ではあるが、僕は「Weather Report」(以降WRと略す)というバンドが大好きである。ジャズを聴く切っ掛けを作ってくれた大学時代の友人宅で、『Heavy Weather』を聴かせて貰って「おったまげた」。それまでロック一辺倒だった僕が、まずはフュージョン・ジャズに目覚めた瞬間であった。演奏テクニックといい、演奏の迫力といい、これは凄いぞ、と思った。

そのWRのリーダーは「ジョー・ザヴィヌル」と「ウェイン・ショーター」。僕はキーボードが好きなので、ジョー・ザヴィヌルがお気に入り。もともとザヴィヌルはワールド・ミュージック系の音がお気に入りらしく、WRの中期、1973年の『Sweetnighter』辺りから、ちょくちょく、ビートの効いたワールド・ミュージック系の音が入ってくる。特に、WR解散後、ソロになってからはその傾向がより強くなった。

Joe Zawinul with WDR Big Band Koln『Brown Street』(写真左)。地元ウイーンのザヴィヌル自身のライヴスポット「Birdland」での2005年10月のライヴ演奏を収録。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (kb,vocorder), Alex Acuna (perc), Victor Bailey (b), Nathaniel Townsley (ds) 。このザヴィヌルのカルテットに、WDR Big Band Kolnが共演する。収録曲を見渡すと、WRの楽曲をメインに演奏している。
 

Brown_street  

 
WRの楽曲はビッグバンドに向く。WRにおけるザヴィヌルのキーボードは「ひとりビッグバンド」と言われるほど、音の重ね方が重厚かつダイナミック。そのザヴィヌルの「ひとりビックバンド」の部分を、WDR Big Band Kolnが受け持って、WRの楽曲をビッグバンド・アレンジで演奏しているのだ。これが絶品。躍動感溢れ、メロディアスで「爽快感+疾走感」が抜群。

加えて、選択されたWRの楽曲が、ワールド・ミュージック系で固められており、これがまた聴いていて心地良い。ワールド・ミュージック系の曲とビートって、ビッグバンド・アレンジにとっても合うのだ。これは初めての体験。ビッグバンドの躍動感がプラスの方向に作用し、爽快感+疾走感が洗練された雰囲気を醸し出し、アーバンでシュッとしたワールド・ミュージックを聴かせてくれる。

このビッグバンド・アレンジで聴くと、改めてWRの楽曲って、良い曲が多いなあ、と感心する。WDR Big Band Kolnの音は秀逸。スピード感抜群、アンサンブルの切れ味は見事、魅惑的なダイナミズム、などなど、ビッグバンドの良いとこ取りをしていて聴いていてとても楽しい。ザヴィヌルのキーボード・ワークも素晴らしい。ノリノリである。ビッグバンド者の方々にもお勧め。
 
 
 

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2017年12月21日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・94

僕の大のお気に入りのエレジャズ・バンド「Weather Report(=略してWR)」。印象的なフレーズや美しい旋律を伴った秀曲が多々あるのだが、徐々にカバーが増えてきている。ジャズって、1950年代からスタンダード曲というものがあるんだが、新しい時代の、いわゆる「ネオ・スタンダード」と呼ばれる曲があまり出てこない。印象的なフレーズや美しい旋律を伴ったWRの曲なんて、カバーに最適だと思うんだがなあ。

と思っていたら、こんなピアノ・トリオ作が出た。クリヤ・マコト, 納浩一, 則竹裕之『Acoustic Weather Report』(写真左)。2015年の作品。改めてパーソネルは、クリヤ・マコト (p), 納浩一 (ac-b), 則竹裕之 (ds)。純日本編成のピアノ・トリオ。WRの音楽を、あえて生楽器、それもピアノ・トリオでリアレンジすることにより、元祖WRの魅力を再発見しようというコンセプトで始ったとのこと。

WRの音世界の魅力は、電気楽器による、サイケデリックかつダイナミックな表現、分厚いユニゾン&ハーモニーなんだが、ピアノ・トリオ化に当たって、この魅力をバッサリ切り捨て、曲の持つ「印象的なフレーズや美しい旋律」を前面に押し出す、なんとも大胆かつ繊細なアレンジが見事である。
 

Acoustic_weather_report_2

 
しかし、よくまあアレンジを「やり切ったなあ」と感心する。もともとWRの曲は構造的に「難曲」が多く、コピーする分になんとかなるのだが、ピアノ・トリオなどでカバーする場合、WRの曲の持つ「複雑な構造」をどうアレンジし、表現するかが鍵になる。実はこの「複雑な構造も持つ」ところが、WRの曲の最大の個性でもあるのだ。これを省略したり、アレンジし損ねると、演奏自体が、何をやっているのか、判らなくなる危険性がある。

とにかく完コピしていないところが潔い。WRの曲が持つ個性的な部分だけを取り出して、シンプルに演奏する。この「潔さ」がこの盤の「キモ」である。トリオ演奏自体のレベルも相当に高い。上質のピアノ・トリオ。演奏を聴いていると、本場米国の有名なピアノ・トリオの演奏なのかと思ってしまうのだが、これがまあ「純日本製」なのだ。思わず口元が綻び、思わず胸を張りたくなる様な素晴らしい演奏。

収録されたどの曲も魅力的な演奏ばかりだが、とりわけ、冒頭の「キャノン・ボール」、2曲目の「エレガント・ピープル」、7曲目の「ヤング・アンド・ファイン」辺りが、かなりの「聴きもの」。アレンジが優秀なので、何度聴いても飽きが来ない。今回の収録曲以外の「他の曲」をカバーした「続編」を期待したい。

 
 

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2017年8月21日 (月曜日)

1978年、ウエザーの日本公演

最近、ダウンロード・サイトを徘徊していると、何故だか判らないんだけど、一昔前、ブート(海賊盤)で出回っていた音源がアップされていて、お金を払ってダウンロードして聴くことが出来るのに気がついた。これ、ええの?。でも、普通のダウンロード・サイトで、ちゃんとお金を払って音源を入手するのだから良いのかな。

最近、見つけて狂喜乱舞した「ブートっぽい」ジャズ音源がこれ。Weather Report『Japan Live '78』(写真左)。僕の大好きなコンテンポラリーなエレ・ジャズ・バンド、ウエザー・リポート(以下WRと略)。このWRが2度目の来日を果たした時のライブ音源。新宿厚生年金会館でのパフォーマンスである。

サウンドボードからの音源だろうか、音質はまずまず。バランスもまずまずで、十分に鑑賞に耐える。WR者は持っていて損はない音源である。この1978年のWRの来日公演は、僕がちょうど本格的にジャズを聴き始めた頃で、この新宿厚生年金会館でのパフォーマンスの様子は、当時、ジャズ雑誌「スイングジャーナル」の記事で読んだ記憶がある。
 

Weather_report_japan_live_78

 
「Elegant People」(6thアルバム『Black Market』に収録)からスタートする。2曲目「Scarlet Woman」から「Teen Town」「A Remark You Made」と聴き進めて行くと、ウェイン・ショーターがテナーを吹きまくっていることに気がつく。当時、アルバムではイマイチのパフォーマンスだったショーター。双頭リーダーのザヴィヌルとの不和説も流れ、ショーターは脱退するのでは、なんて言われていて、この吹きまくりのショーターにはビックリ。

そして、ドラムのピーター・アースキンのドラミングの凄まじさにもビックリ。このライブ音源を聴いていて、なるほど、WR史上、最強のドラマーと言われるだけある。ドラム一人で、ショーターのテナー、ザヴィヌルのキーボード、ジャコのベースを一手に引き受けなければならないのだが、これがまあ、しっかりと応対し、WRのリズムを支配している。凄い。アースキンのドラミングがこんなに凄いとは思わなかった。

この『Japan Live '78』は本当に懐かしい音源だ。ジャズ雑誌「スイングジャーナル」の記事にあった「ライブ公演ラストの三本締め」も収録されている。音はまずますのレベルだが、当時のWRのライブ・パフォーマンスの様子がしっかりと聴き取れて、WR者にとってはなかなかの内容ではないだろうか。

 
 

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