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2017年7月21日 (金曜日)

プレスティッジには気を付けろ

プレスティッジ・レーベルほど、いい加減なジャズ・レーベルはないのではないか。手当たり次第、暇なジャズメンに声をかけて、スタジオで繰り広げるジャム・セッション。リハーサル無しの一発勝負の録音。録音時期の整合性を無視したフィーリングだけを頼りにした「寄せ集め的なアルバム編集」。しかも、LPを大量生産する為に、LP両面合わせて、収録時間が30〜40分までの短いトータル時間。

Miles Davis & Lee Konitz『Conception』(写真左)。PRLPの7013番。この盤ほど、プレスティッジ・レーベルらしい盤は無いのではないか。やっつけの一発勝負の録音、フィーリングだけの録音時期の整合性を無視した「寄せ集めなアルバム編集」。この盤はそういう意味では「凄い内容」である(笑)。

まず、このアルバムのリーダーがあのマイルス・デイヴィスとリー・コニッツである。クール・ジャズの双璧、マイルスとコニッツ。この二人がガップリ組んでセッションを繰り広げる、そんな期待を十分に持たせてくれる、そんな二人の名前が並んでいるのだ。で、聴き始めると激しい違和感に襲われる。

冒頭から「Odjenar」「Hibeck」「Yesterdays」「Ezz-Thetic」までは、マイルス・デイヴィスとリー・コニッツとがガップリ組んだセッションが繰り広げられる。だけど、5曲目からの「Indian Summer」「Duet for Saxophone and Guitar」になると、あれれ、という感じになる。コニッツのアルトとバウアーのギターのデュオ。あれれ、マイルスは何処へ行った(笑)。
 

Miles_konitz_conception  

 
しかも、だ。7曲目のタイトル曲「Conception」と続く「My Old Flame」、マイルスはいるんですが、コニッツ、どこにもいないんですが(笑)。しかも特徴のあるテナーって誰だっけ、どっかで聴いたことあるなあと思ったら、ロリンズやないですか。でも、コニッツ、アルトのコニッツ、どこに行ったんですか。

しかも、だ。続く9曲目の「Intoit」そして「Prezervation」に至っては、なんとマイルスもコニッツもいなくなる(笑)。テナーはスタン・ゲッツ、バックのリズム・セクションは西海岸中心。もはや音の雰囲気が全く異なっている。凄い凄いぞ、プレスティッジ・レーベル。

そして、ラスト前の「I May Be Wrong」からラストの「So What」は、西海岸中心のスモール・コンボな演奏。もはや、マイルスとコニッツの影なんぞ全く無い。ラストに至っては、そもそも最初の頃は何を聴いていたんだっけ、という感じに襲われる。最初の4曲だけが、アルバムの額面通り。5曲目以降は、完全な寄せ集め。どう思うと、こういう究極いい加減なアルバム編集になるのか、不思議である。

プレスティッジ・レーベルには気を付けろ。時々、こういうアルバムが混じっている。リーダー名やタイトルに惑わされることなかれ。プレスティッジ・レーベルを聴き進めるには、カタログを手にして、どういうアルバムなのか、事前調査が必須だろう。でないと、時々、とんでもない「駄盤」を掴まされることになる。でも、それがまた楽しいんだけど、プレスティッジ・レーベルって(笑)。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年7月19日 (水曜日)

The New Miles Davis Quintet

Prestigeレーベルの7000番台を順番に聴き直していると、いろいろ面白い事に気がついたり、新しい発見があったりで、とにかく楽しい。とにかく手当たり次第、リハーサルも無しの一発録り。録音時期という統一感を無視した、感覚だけのアルバム編集が、他のレーベルに比べて多く、「やっつけのプレスティッジ」と僕は呼んでいる。

しかし手当たり次第、一発録りでガンガン録音して、適当に編集して適当なジャケットでどんどんリリースするので、アルバムの数としてもまとまったボリュームがある。リハーサル無しの一発録りがほとんどなので、アルバムの出来は玉石混交としている。しかしながら、音源が豊富な故に、その時代の演奏のトレンドやジャズメン毎の個性が意外と良く判って面白い。

例えば『The New Miles Davis Quintet』(写真)。PRLP7014番。Prestigeレーベル初期のシリーズ。1955年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。タイトル通り、マイルス・デイヴィスの新しいクインテットの旗揚げ盤である。

この盤単体で聴くと良く判らないんだが、他の同時期、1950年代前半から中盤にかけて録音されたアルバムと聴き比べると、このマイルスのクインテットの演奏が、如何に新しい雰囲気を醸し出していたかが良く判る。アレンジも新しい、イントロの入り方も新しい。アドリブの展開の仕方も新しい。今の耳で聴いても新しいと感じるのだ。リリース当時は逆に違和感を感じた評論家も多かったのではないか、と推察する。
 

The_new_miles_davis_quintet

 
この盤でのコルトレーンは評論家筋から「いもテナー」とバッサリ切り捨てられているのだが、新しい雰囲気、新しい音色、新しいアプローチは十分に感じることが出来る。テクニック的には確かにイマイチなんだが、それまでにない、新しい雰囲気が十分に漂っている。これも今の耳から振り返るから、その「新しい雰囲気」が判るのだが、リリース当時は判らなかっただろうなあ。

ピアノのガーランドは明らかに「発展途上」。まだ、マイルスの薫陶を受けたスタイルに確信を持てていない。しかし、ベースのポール・チェンバースとドラムのフィリー・ジョーは既に「出来上がっている」。完成されたベースとドラム。素晴らしい演奏が繰り広げられている。後はテナーの正調とピアノの確信を待つのみ、のマイルス・クインテットである。

マイルスは、といえば、そりゃ〜勿論、素晴らしいに決まってるでしょう。ただ、このアルバムでは、自らの新しいクインテットへの教育と鍛錬に注力している様で、マイルスのプレイに「新しさ」は無い。しかし、若い溌剌として「成熟」は十分に感じられて、さすがマイルス、と感心してしまう。

しかしなあ、ジャケットがなあ。これは全く以てPrestigeレーベルの仕業である。なんて酷いジャケットなんだ。色は緑と青の2色ある。緑の方がオリジナルだそう。しかし、どうしてこんな酷いデザインになるんだ。タイポグラフィーも劣悪。まあ、Prestigeレーベルは、ジャケット・デザインなんて興味の範疇外だからなあ。しかし、この盤のマイルス・クインテット、聴いていると意外な発見があって意外と面白い。

 
 

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2016年10月30日 (日曜日)

ハードバップの萌芽の記録

小川隆夫さんの『マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと——マイルス・スピークス』を読んでいる。以前より、ジャズの関連本は一通り目を通すようにしている。ジャズの関連本からは、音を聴くだけでは判らない、そのミュージシャンの背景、考え方が理解出来たり、そのアルバムの内容や時代毎のジャズのトレンドに関する知識などの「情報」を入手することが出来る。

小川隆夫さんのジャズに関する本はどれも読んでいて楽しい。特にマイルスに関するものは、どれもが含蓄に富んでいる。マイルスに関する書籍については、小川さんの著書が一番だ。客観的にマイルスを分析し、ある時は一ファンとしてマイルスを語る。特に、いかなるジャズメンに対しても、リスペクトの念を忘れないところに共感を覚える。

当然、読みながらのBGMは「マイルス」である。今日は久し振りに、Miles Davis『Dig』(写真左)を聴く。1951年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Jackie McLean (as), Sonny Rollins (ts), Walter Bishop, Jr. (p), Tommy Potter (b), Art Blakey (ds)。まだ、マイルスがメンバー固定の自前のバンドを持つ前の頃の録音。

このアルバムに記録されたセッションは「ハードバップの萌芽」を記録したものとされる。1951年と言えば、まだジャズの演奏のトレンドは「ビ・バップ」。ビ・バップは、最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿った形でありながらも、自由な即興演奏(アドリブ)を順番に行う形式が主となる。テクニック優先のアドリブ芸を競うことが最優先とされた。

しかし、これでは演奏のメロディーや旋律の展開を楽しめない。いわゆる鑑賞音楽としてアーティステックな切り口を有しつつ、ポップス音楽として、多くの人々にも聴いてもらいたい。そういう欲求を踏まえて、ビ・バップの後を継ぐトレンドとして、ハードバップが定着した。つまりは、ハード・バップにはビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存しているという訳。
 

Miles_davis_dig

 
確かにそういう情報を基に、このマイルスの『Dig』を聴くと、なるほどなあ、と思う。1951年言えば、まだジャズのトレンドは「ビ・バップ」。そんな時代背景の中、この『Dig』の演奏は、確かにビ・バップでは無い。ビ・バップよりロングプレイなアドリブ展開の中に、旋律がもたらす雰囲気・味わいをしっかり織り込もうとしていることが良く判る。

ビ・バップよりも音数を少なくして、旋律がもたらす雰囲気・味わいを感じ取れる様にしつつ、テクニックは高度なものを要求するフレーズを紡ぎ出す。いきおいアドリブ部の演奏の長さは長くなる。そのロングプレイの中で、芸術性溢れるフレーズを展開為なければならない。テクニックと音楽の知識をしっかり持ったジャズメンでないと太刀打ち出来ない。

この『Dig』の演奏では、そんなハードバップのコンセプトを一生懸命に「実験」しているジャズメン達の様子がしっかりと記録されている様に感じる。なるほど、このアルバムに記録されたセッションが「ハードバップの萌芽」を記録したものとされる所以である。

さすがは「ジャズの革新性」を重んじるマイルス。既に1951年にして、ハードバップなコンセプトにチャレンジしている。もう一つのハードバップの萌芽の記録とされる、ブルーノートの名盤『A Night at Birdland』のライブ録音が1954年だから、如何にマイルスが先進性に優れていたか、が良く判る。僕はそういうマイルスが大好きだ。

 
 

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2016年10月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・93

ジャズ者を40年以上やっているのだが、ジャズ者になった時から、マイルス・デイヴィスが大好きである。とにかく、ジャズ者になってから、ずっと機会があるごとにマイルスを聴いてきた様な気がする。もはやマイルス無しでは、ジャズ者としての生活は語れない状態であり、暫くマイルスを聴かないと「マイルス禁断症状」が出てくる(笑)。

で、最近、マイルスと御無沙汰で、ちゃっかり「マイルス禁断症状」が出てきたので、慌ててマイルス盤を選盤する。若き日のマイルスを選盤。珍しいマイルスのワンホーン盤である。

Miles Davis『The Musings of Miles』(写真左)。プレスティッジの7007番。1955年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Red Garland (p), Oscar Pettiford (b), Philly Joe Jones (ds)。

1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバー、ピアノのガーランドとドラムのフィリージョーの名が見える。実はまだこのアルバムの録音時点では、あの伝説の1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバーとして、マイルスと長くやっていく事をまだ知らない。しかし、この二人とマイルスとの相性は既に抜群。

不思議なことに、マイルスについては、マイルスのトランペット、ワンホーンのアルバムが少ない。というか、ほとんど無い。というか、この『The Musings of Miles』のみではないか、と思う。実際、マイルスが公式に録音したリーダーアルバムの中では、唯一のワンホーンカルテット作品。
 

The_musings_of_miles

 
で、これが「良い」。マイルスはワンホーンの時にはワンホーンとして、マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様に吹く。そして、アレンジも同様。マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様なアレンジが施されている。

加えて、ワンホーンならではの「効果的なアドリブ・フレーズ」「印象的なアドリブ・フレーズ」が満載。もうマイルスだけが目立ってしまう、マイルスだけが印象に残るイメージ。さすが「我らがマイルス」である。素晴らしい、実に素晴らしい。

なぜか世間では評価が低いアルバムである。が、マイルス者からすると、結構、このアルバム、ポイントが高いのではないか。マイルスとして珍しいワンホーン盤で、マイルスの個性、マイルスの演奏の意図が手に取るように判る。マイルスの考え方が結構読み取れる。そんな「マイルス者にとってマストアイテム」な盤である。

上品で豊かで心地良い音色。ひたすらスイングし、ひたすら唄う様にアドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。マイルスのトランペットのベーシックな姿。マイルスの個性の判り易いサンプル。このマイルスの唯一のワンホーンは「マイルス者の我々にとって宝のアルバム」。

 
 

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2016年7月 6日 (水曜日)

隠遁後、マイルス完全復活

このアルバムを初めて聴いた時、一緒の違和感を感じた。今までのマイルスのアルバムの音と少し違う。スッキリしたというか、マイルスのアドリブ・フレーズが淀みなくスッと流れるというか、演奏全体が自然に流れるというか、とにかく今までのアルバムとは違う音の傾向に戸惑った。といっても、良い方向での戸惑いではあったんで、悪い違和感は無かった。

そのアルバムとは、Miles Davis『Decoy(デコイ)』(写真左)。1984年のリリースになる。一種の違和感を感じた原因は「テオ・マセロの存在」。このアルバムは、長年マイルスの作品をプロデュースしてきたテオ・マセロと別れ、マイルスの初セルフ・プロデュース作となった盤である。加えて、シンセのロバート・アービング3世をコ・プロデューサーとしている。

プロデュースの担い手が変わる訳である。一種の違和感を感じるのは当たり前。今回、このアルバムの音世界が、いわゆるマイルスの思い描いた音世界なんだろう。しかし、マイルスはテオ・マセロのプロデュースの手腕に一目置いていた。特に、テオのテープ編集の能力については、優れたミュージシャンと同等の扱いであった。だからこそ、マイルスは長年、テオ・マセロにプロデュースを委ねていた訳である。

しかし、どんな心境の変化があったのか、マイルスの自伝集なので断片的にしか判らないのだが、自分の音楽を全て自分の手で創り上げたい、と単純に思ったようである。マイルスはこの盤のリリース当時、58歳。還暦一歩手前、マイルスの心境の変化については、実感として実に良く理解出来る。
 

Decoy

 
このデコイの音世界は、エレ・マイルスの最高到達点の様な音世界である。ゴツゴツと尖ったところも取れ、闇を引き摺る様な暗さも無い、明快で爽快でポジティブなエレ・マイルスの音世界がこのアルバムにぎっしりと詰まっている。

ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp, syn, arr), Branford Marsalis, Bill Evans (ss), Robert Irving III (syn & drum programming), John Scofield (g), Darryl Jones (b), Al Foster (ds), Mino Cinelu (per)。このアルバムでは、やはり、ロバート・アービング3世のシンセとダリル・ジョーンズのベースの参入が効いている。

前作『Star People』とメンバーの変更はほとんど無いが、音の傾向が違う。捻れたり、混沌としたところが全く無い。ポジティブで爽やかスッキリとしたリズム&ビートの下で、歌心溢れ、切れ味の良く、ウォームなマイルスのトラペットが良い雰囲気。そして、なんといってもアレンジが小粋でシンプル。アドリブ・ソロが続いても冗長にならない。

隠遁前から追求してきた、ファンキーなリズム&ビートに乗ったモーダルなエレクトリック・ジャズが、このアルバムで最高到達点に達している。このアルバムの音世界は1984年にして、既に21世紀のエレクトリック・ジャズのあるべき音世界を先取りしていた感がある。全く古さを感じさせない、エバーグリーンなエレ・マイルスである。

 
 

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2016年7月 4日 (月曜日)

完全復活一歩手前のマイルス

マイルス・デイヴィスが1981年、奇跡のカムバックを果たしてからのアルバムを聴き直している。今日は、1983年にリリースされた、Milesが演奏活動に復帰してから2枚目のスタジオ録音のアルバムを聴き直した。

そのアルバムとは、Miles Davis『Star People』(写真左)。1983年のリリースになる。ちなみにパーソネルは、John Scofield, Mike Stern (el-g), Bill Evans (ts, ss), Marcus Miller, Tom Barney (el-b), Al Foster (ds), Mino Cinelu (perc)。クレジットはされていないが、Gil Evans (arr)。

このアルバムにして、マイルスはカムバック前から追求していた「従来のジャズのトレンドやビートとは全く関わりの無い、全く新しいジャズのビートとスタイル」を確立した感がある。冒頭の「Come Get It」から、ラストの「Star on Cicely」まで、全く迷いや惑いの無い、スカッとしたエレ・ジャズが展開されている。

ビートは明らかに「エレ・マイルス」のビート。音は完璧なエレクトリック・ジャズ。しかも、従来のジャズのビートやスタイルの引用は全く無い。全く新しいエレ・マイルスのビート、エレ・マイルスのスタイル。加えて、隠遁前の、どこか暗い、どこか闇に蠢く様な怪しい雰囲気が一掃されている。このアルバムの音は「スカッとして爽快」。

このアルバムを聴いていると、マイルスは良い感じでカムバックしたんやなあ、と心から思う。アレンジに関して、盟友ギル・エバンスの協力を得て、全く迷いや惑いの無い、スカッとしたエレ・マイルスの音世界が展開されている。
 

Star_peaple

 
冒頭の「Come Get It」が、エレ・マイルスの「踏み絵」の様な楽曲。いきなり、ディストーションの効いたエレギの強烈なフレーズが始まる。恐らく、リリース当時、硬派な旧来のジャズ者の方々は、この出だしのエレギのフレーズを聴いただけで、プレイヤーの針を上げてしまったのではないか。それほど、強烈な「ロックの様な響き」のエレギである。

ちなみに、このアルバムでは、サックス奏者のビル・エヴァンスの紹介によりジョン・スコフィールドがマイルスのグループに加入。このジョンの加入により、一部の楽曲はマイク・スターンとのツイン・ギター編成でレコーディングされている。

実はこの「ジョン・スコフィールド」のギターの参入がこのアルバムの「肝」である。この素敵に捻れて歪んだエレギがこのアルバムの聴きものである。恐らく、隠遁前からマイルスが追求してきた「エレギ」の音は、こんな音ではなかったのか。このジョンスコのエレギは、エレ・マイルスのビート&スタイルにピッタリである。

加えて、マーカス・ミラーのベースも良い味を出している。彼の指弾きが素晴らしい。ベースの音がしっかり聴き取れる、優れた再生装置で聴いて欲しい。彼の弾き出すベース・ラインは彼独特のもの。そして、ミノ・シネルのパーカッションとカウベルのグルーブがこのエレ・マイルス独特のビートを支えている。

アルバム・ジャケットには、マイルス自身が描いたイラストが使用されている。恐らく、このジャケットも、リリース当時、硬派な旧来のジャズ者の方々は拒否反応を示したのではないか。それほどまでに、従来のジャズらしからぬジャケットである。

しかし、このジャケットのイメージが、このアルバムに詰まっている「全く新しいエレ・マイルスのビート、エレ・マイルスのスタイル」のイメージにピッタリなのだから面白い。奇跡のカムバック以来、完全復活一歩手前のマイルスの雄姿がこのアルバムにある。

 
 

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2015年7月26日 (日曜日)

マイルスの正式ブートレグ第4弾

まだまだあるんやなあ、というのが最初の感想。あるんやったら、早くどんどん出してよ、とも思う。聴かない間に死んでしまっては元も子もない(笑)。

Miles Davis『Miles Davis At Newport 1955-1975: The Bootleg Series Vol. 4』(写真)。マイルスのブートレグ・シリーズの第4弾。4枚組のボックスセット。

以下の様に1955年から1975年の20年間の中で、8種類のニューポート・ジャズ・フェスティバルのライブ・パフォーマンスを収録しています。細かい説明は割愛しますが、未発表のライブ音源の多く収録されています。

CD 1: (July 17, 1955: Newport Jazz Festival, Newport, RI) 
   (July   3, 1958: Newport Jazz Festival, Newport, RI)
CD 2: (July   4, 1966: Newport Jazz Festival, Newport, RI) 
    (July   2, 1967: Newport Jazz Festival, Newport, RI)
CD 3: (July   5, 1969: Newport Jazz Festival, Newport, RI)   
         (Nov   1, 1973: Newport Jazz Festival In Europe, Berlin) 
         (July   1, 1975: Newport Jazz Festival ? NY, Avery Fisher Hall) 
CD 4: (Oct 22, 1971 : Newport Jazz Festival In Europe, Neue Stadthalle, Dietikon, Switzerland) 

ブートレグに手を染めているマイルス者の方々には不満だらけのボックスセットかと思いますが、我々の様に、ブートに手を出さない、正式盤のみのコレクターにとっては、これはこれで、このボックスセットのリリースは嬉しいものがあります。
 

Miles_at_newport_1955_1975

 
ちなみに既発売は、CD1の6曲目から11曲目は、1958年、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイ、ビル・エバンス、ポール・チェンバース、ジミー・コブ在籍時のもので『マイルス・アット・ニューポート1958』として既発売。

CD3の1曲目から3曲目は1969年、エレクトリック時代初期のチック・コリア、デイブ・ホランド、ジャック・デジョネットとのカルテットで『ビュチェズ・ブリュー・ライブ』として既発売。

この2つの既発売音源の存在が物議を醸し出しているが、今回は、マイルスのニューポート・ジャズ・フェスティバルのライブ音源のギャザリングがこのボックスセットでの編集方針なので、このボックスセットの資料性を重んじるのであれば、既発売音源が混じっても構わないと思うのだが。

逆に、マイルスのニューポート・ジャズ・フェスティバルのライブ音源として、発売に耐える音質、内容を前提として、まだこれだけのライブ音源が倉庫に眠っていたということになる。それが正式盤としてリリースされたことは誠に目出度い。

音質は悪くは無い。主観的には「中の上」。良い音だなあ、と感心するほどでは無いが、鑑賞には十分耐える音質である。特に、エレクトリック・マイルスのライブ音源は実に興味深く、単純に楽しめる。アコースティック・マイルスの演奏は内容的にはまずまずのレベルで資料的価値の方が優先する。

ただ、このボックスセットについては、マイルス者にとっては必須のアイテムだと思うが、通常のジャズ者の方々には、特に必要性の高いものでは無いだろう。ボリューム的にもCD4枚。聴き通すのにも時間と根気が必要になるため、ブートには手を出さない、通常のマイルス盤蒐集家にとっては福音的なボックスセットではある。

 
 

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2015年2月27日 (金曜日)

ハードバップ期の最高のバンド

やっと体調が回復基調になって、ほっと一息である。風邪が原因のお腹の不調。丸2日間、伏せっていたことになる。暖かくして、とにかく伏せっていれば治ると言われたが、術後の不安は大きい。とにかく伏せっていたのだが、耳だけは元気なので、寝室に備え付けのサブのステレオで、日頃、なかなかまとめて聴けないボックス盤を聴いていた。

そのボックス盤とはMiles Davis『The Complete Columbia Recordings of Miles Davis with John Coltrane』(写真)。CD6枚組の魅力的なボックス盤である。タイトルから判る通り、コロンビア・レーベルに残された、マイルスとコルトレーンのセッションの記録である。録音時期としては、1955年10月26日から1961年3月21日まで。ジャズの歴史でいう「ハードバップ期」のほぼ全体を網羅する。

アルバムとしては『'Round About Midnight』『Milestones』『Kind of Blue』『Someday My Prince Will Come』『Miles Davis at Newport 1958』『Jazz at the Plaza/1958 Miles』を網羅する。加えて、LP時代の未発表音源集『Circle in the Round』とCD4枚組のコンピ・ボックス盤『The Columbia Years 1955ー1985』に収録された音源を含んでいる。

このCD6枚組ボックス盤を聴き通して感じるのは、さすがアコースティック・マイルスは他のどのコンボよりも優れており、クールであるということ。そして、マイルス・バンドの演奏は、まず最優先事項として、常にマイルスのトランペットがクールに美しく、前面に出ているということ。リーダー盤としては当たり前のことだが、マイルス・バンドは、このリーダーのマイルスを一番に押し出すことに徹底している。この徹底度合いは他のバンドには無い。

といって、サイドメンは後ろに引っ込んで地味にやっているかと言えばそうではない。あらん限りのテクニックとノウハウを駆使して、かなり高度でかなりクールなバッキングを展開しているのだ。そういうことが出来る、ジャズメンとしての優れ者の集まりが、当時のマイルス・バンドであり、アコースティック・マイルスの音世界なのだ。
 

Miles_coltrane_columbia

 
コルトレーンは、確かにマイルス・バンド加入当初のプレイは「へたくそなテナー」と揶揄されても仕方ないな、というところもあるが、マイルスと年を重ねるにつれ、どんどんテクニックは高みに達し、演奏ノウハウもバリエーション豊かに溜まってく。そして、コード奏法を凌駕して、マイルスの薫陶を得て、モード奏法を体得する。そう、コルトレーンはモード奏法を「体得」している。 

そして、Disc5、Disc6の、アルバムで言う『Miles Davis at Newport 1958』『Jazz at the Plaza/1958 Miles』辺りのコルトレーンのアドリブはとてつもなく長い。ある逸話が残っている。

コルトレーンがマイルスに相談する。「アドリブが長いと言われるので、適当なところでアドリブを止めたいのだが、どうやって止めて良いのか判らない」。マイルスが苦笑いしながらコルトレーンにアドバイスする。「トレーン、そういう時は、マウスピースから口を離すのさ。そうすればアドリブは止められる」。

そういう逸話が良く理解出来るほど、コルトレーンのアドリブは長い。そして、シーツ・オブ・サウンドが度を超えて吹きまくられている。少し五月蠅いくらいだ。しかし、そこにマイルスのペットが入ってくると、バンドの音世界はガラッと変わる。クールで美しい、優雅なハードバップにガラッと変わる。なるほど、コルトレーンのテナーはマイルスを惹き立たせる最高のパーツなのだ。そして、コルトレーンがこのことに我慢できなくなった時、マイルスの下から離れていくのだ。

そして、このCD6枚組ボックス盤に収録された別テイク毎の演奏のバリエーションを聴いていると、ジャズって本当に「即興の音楽」だということが判る。そして、優れたジャズメンの集まりでは、そのアドリブの展開のバリエーションが豊富で、本当によくこれだけ色々なパターン、展開でアドリブを展開するもんだなあ、とただただ感心してしまう。

このCD6枚組ボックス盤には、ハードバップ期の最高のバンドの演奏がギッシリと詰まっている。なにかと批判されることの多いボックス盤だが、手に入れて聴くとなかなかに楽しめる。意外とお勧めのボックス盤である。

 
 

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2015年2月19日 (木曜日)

意外とお買い得なボックス盤

今日は、評判が悪い割に意外と聴きどころがある、Miles Davis『The Complete In A Silent Way Sessions』のDisc3について語りたい。3枚組ボックス盤のラストである。

Disc3の収録曲は以下の通りになる。前半の2曲が1969年2月のセッション。後半の2曲が、かの名盤『In a Silent Way』のオリジナル・バージョンが収録されている。
 

1. The Ghetto Walk   unreleased
2. Early Minor   unreleased
3. Shhh/Peaceful/Shhh" (LP Version)
4. In a Silent Way/It's About That Time/In a Silent Way  (LP Version)

 
まずは冒頭2曲、1969年2月のセッションを聴いていて興味深いのは、ドラマーがトニー・ウィリアムスの代わりにジョー・チェンバースが入っていること。ジョー・チェンバースは1942年生まれだから、このセッションの参加時は27歳の若さである。意外とエレ・マイルスにフィットしたドラミングで、なかなかのものである。

この冒頭の2曲は未発表音源である。まあ、この2曲も、マニアな評論家やベテラン・マイルス者の方々からすると、ブートで既に聴いていると言うかもしれないが、我々の様なブートに無縁なマイルス者からすると、この未発表音源は実に有り難い。しかも、なかなか内容のある演奏だから言うこと無しである。
 

Miles_complete_in_a_silent_way_3

 
ラスト2曲は『In a Silent Way』のオリジナル・バージョン。このアルバムは、マイルス者の方々であれば、絶対に持っているべき、エレクトリック・ジャズの大名盤である。しかし、被って損したと思うのは早計である。

このボックス盤の音源は、DSDリマスタリングが施されているようで、この『In a Silent Way』の演奏についても音質が良い。この音質であれば、以前入手したアルバムと被っても、持っていたい音の良さである。

そして、この『In a Silent Way』のオリジナル・バージョンを聴いて思うのは、エレクトリック・マイルスの素晴らしい演奏のさることながら、テオ・マセロの編集の妙の素晴らしさを再認識する。実に巧みな編集で、硬軟自在、抑揚の効いた、躍動感と静謐感を相見えた、唯一無二なエレクトリック・ジャズに仕上げている。

このテオ・マセロのテープ編集についての事実を知ったとき、LPの収録時間に併せつつの編集だったんだろうが、ジャズにも編集の妙があるのには驚いた。まあ、編集された音源なので、この『In a Silent Way』のアルバムに収録されている音源は、即興を旨とするジャズとは言えない。オリジナル音源の「編集の妙」を受け入れるかどうかで、このアルバムの評価は分かれるだろう。

マイルスのCD3枚組ボックス盤『The Complete In A Silent Way Sessions』は意外と楽しめるボックス盤である。特に、ブートに無縁のマイルス者にとっては、意外とお買い得なボックス盤では無いだろうか。音の良さだけとっても、僕はなかなかのものと評価している。

 
 

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2015年2月18日 (水曜日)

編集前の「In a Silent Way」

とにかく評判の悪いボックス盤、Miles Davis『The Complete In A Silent Way Sessions』。私としては、そんなに悪く無いボックス盤だと思うんですが。DSDリマスタリングされたと思われ、音質が非常に良いですし、これからマイルスを聴き込んでいこうという向きには、悪くは無いボックス盤だと思うんですが。

さて、今日はそんなマイルスのボックス盤『The Complete In A Silent Way Sessions』のDisc2について語りたい。このボックス盤のDisc2は、1968年11月〜1969年2月のセッションを集めている。ちなみに収録曲は以下の通り。

1. Ascent
2. Directions, I
3. Directions, II
4. Shhh/Peaceful  unreleased
5. In a Silent Way (Rehearsal)  unreleased
6. In a Silent Way released for the first time in unedited form
7. It's About That Time released for the first time in unedited form

1曲目〜3曲目については、マイルスの未発表音源盤『Directions』に収録されていたもの。4曲目〜5曲目については未発表音源。特に、5曲目については興味深い音源で「In a Silent Way」のリハーサル・テイク。ボサノバの様なリズム&ビートに乗って、リラックスに展開されていく「In a Silent Way」はなかなかに魅力的だ。

6曲目〜7曲目は「In a Silent Way」と「It's About That Time」のアルバム収録用にテオ・マセロが編集する前の録音イメージである。つまりは、この演奏が真の「In a Silent Way」と「It's About That Time」ということになる。

このボックス盤のDisc2の特徴は、かの名盤『In a Silent Way』に収録された曲について、アルバム『In a Silent Way』に編集される前の状態やリハーサル・テイクが聴けることだ。この編集前バージョンを聴くと判るのだが、基本的にはDisc1の演奏と同じ展開と作りをしていることが判る。
 

Complete_in_a_silent_way_2

 
そういう意味では、このボックス盤の編集方針であろう、かの名盤『In A Silent Way』は、このDisc1に収録されたセッション辺りからインスパイアされて創られたのではないか、という仮説の下で選曲されたことについて信憑性が高まる。

加えて、テオ・マセロの編集が無くても、オリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏だけでも十分に名曲・名演であることが実感出来る。現代においても、この2曲のオリジナル演奏は、エレクトリック・ジャズの先端を行く演奏である。現代においてしても、これだけの演奏を追求できるバンドは殆ど無い。

逆に、これをテオ・マセロの編集後のアルバム『In a Silent Way』収録の演奏と聞き比べてみると、テオ・マセロの編集の巧妙さを再認識する。特にLP時代のA面の「Shhh/Peaceful」は編集の妙が最大限に発揮されている。LPは鑑賞物であるということを考えると、この編集は「有り」と言えば「有り」である。

しかし、編集したものは編集したものには違いなく、所謂「加工物」である。真の演奏は異なる。そういう意味で、この『The Complete In A Silent Way Sessions』のDisc2に収録されている「In a Silent Way」と「It's About That Time」のアルバム収録用にテオ・マセロが編集する前の録音イメージは存在価値が大きい。

つまり、オリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏だけでも十分に名曲・名演であることが、このDIsc2を聴けば判るからだ。有名評論家やベテラン・マイルス者の方々からは、もう既にブートで聴いている、と言われそうだが、ジャズの鑑賞において、ブートの存在を引き合いに出すのは「反則」だと思っている。

このオリジナルの「In a Silent Way」と「It's About That Time」の演奏と「In a Silent Way」のリハーサル・テイクが聴けるだけでも、この評判の悪いボックス盤、Miles Davis『The Complete In A Silent Way Sessions』は、一般的には十分に評価出来る、と僕は思う。

 
 

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