2022年12月28日 (水曜日)

マイルスのブルーノート録音・1

マイルス・デイヴィスのリーダー作は、どの盤も「奥が深い」。まず、駄盤、凡盤の類が無い。各リーダー作には、それぞれ、録音時の「音の背景」とか、録音時の「音の志向」とか、が必ずあって、マイルスのリーダー作は、それぞれの盤毎に必ず「意味や意義」が存在する。マイルスは立ち止まったり、振り返ったりすることが無い。そして、マイルスには「適当に」という言葉は存在しない。

『Miles Davis Volume 1』(写真左)。1952年5月9日, 1953年4月20日の録音。ブルーノートの1501番。ちなみにパーソネルは、1952年5月9日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jackie McLean (as), Gil Coggins (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。1953年4月20日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。どちらもセクステット編成。

1949年-1950年録音の『Birth of the Cool』の後、ブルーノートへの初録音と第2回目の録音から選曲された12-inch LP仕様のアルバム。当初は10-inch LP3枚に分けてリリースされたものを、12-inch LPへの移行時、2枚のLPに再編したものの最初の1枚である。

録音当時、マイルスは重度の麻薬禍に陥っており、録音も激減していたのだが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、マイルスの才能を高く評価していて、重度の麻薬禍の状態にあったマイルスに録音の機会を与えている。マイルス自体、麻薬禍から何とか立ち直りたいと努力していた時期でもある、ライオンはそんなマイルスに救いの手を差し伸べた訳である。
 

Miles-davis-volume-1_1

 
マイルスはそんなライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍の真っ只中にありながら、素晴らしい録音をブルーノートに残している。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残している。

まだ編成楽器によるインタープレイは無いにしろ、演奏を「聴くこと」を意識したアーティスティックなアレンジ、聴き手に訴求する為のアドリブ展開におけるロング・プレイ、ビ・バップの熱気溢れる演奏志向からクールでヒップな演奏志向への変化は、既にこの1952年5月9日, 1953年4月20日の録音で、マイルスは「ものにしている」。

収録曲については、1952年5月9日録音は「How Deep Is the Ocean?」「Dear Old Stockholm」「Chance It」「Yesterdays」「Donna」「Woody 'n' You」の6曲、1953年4月20日録音は「Tempus Fugit」「Kelo」「Enigma」「Ray's Idea」「C.T.A」「C.T.A" (Alternate Take)」の6曲。

1952年5月9日録音の演奏の方が、ちょっと「くすんだ様な」大人しい演奏でクール度が高い。1953年4月20日録音の演奏の方は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。でも、そんなに大きな変化は無くて、総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。特にマイルスのトランペットは素晴らしい。当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスは、ライオンの恩義に報いるように、ブルーノートに「ハードバップの萌芽」を感じさせ、トランペッターとして最高レベルのブロウを残したのだ。決して、やっつけの録音では無い、しっかりリハーサルされ、しっかり集中して演奏された素晴らしい録音の数々。やはり、当時から「マイルスは只者では無かった」のだ。
 
 

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2022年12月24日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・19

僕は、マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスのコラボレーションが大のお気に入りだ。Columbiaレコード移籍後の(レコーディングは前だが)『'Round About Midnight』から『Miles Ahead』『Milestones』『Porgy and Bess』『Kind of Blue』『Sketches of Spain』まで、ギルが直接関与したものから、間接的なものまで、マイルスとギルのコラボの成果はどのアルバムを聴いても、今でも惚れ惚れする。

時期的には、1955年から1960年初頭、ジャズでいうと「ハードバップ全盛期」である。そんな「ハードバップ全盛期」に、マイルスはいち早く、ポスト・ハードバップを打ち出し、モード・ジャズへのチャレンジと確立に取り組んでいる。この辺が、魔王ルスの「先取性」であり「革新性」の優れたところなんだが、マイルスが「ジャズの帝王」と呼ばれる所以だろう。

『'Round About Midnight』で、いち早く、ハードバップの演奏フォーマットを確立させ、次作の『Miles Ahead』から、ギルとのコラボで、モード・ジャズに取組み始める。最初の明確な成果が『Milestones』、そして、そのモード・ジャズを確立し、奏法的にも「けりを付けた」のが『Sketches of Spain』だろう。

Miles Davis『Sketches of Spain』(写真左)。1959年11月、1960年3月の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいところだが、細かいメンバー紹介は割愛する。
 

Sketches_of_spain_1
 

なんせ、この盤の演奏は、Miles Davis (tp) が主役、Gil Evans (arr, cond) とのコラボで、バックに錚々たるメンバーのジャズ・オーケストラ。それもフレンチ・ホルン,バスクラ、オーボエ、チューバ、バズーン、加えて、ハープが入る、ギル・エヴァンスならではの楽器構成。

スペインの作曲家ロドリーゴの人気曲をギル独特のアレンジで再編した、アルバム冒頭を飾る「Concierto De Aranjuez(アランフェス協奏曲)」の人気でこの盤は評価されるが、それは違う。この盤は、マイルス=ギルのコラボがモード・ジャズに「けりを付けた」、モード・ジャズを確立させた、ジャズの歴史的にも意義のある名盤である。

このアルバムに収録された曲は、殆どがいわゆるスパニッシュ・モードによる演奏。マイルスのスパニッシュ・モードの的確な解釈とギルの個性的なアレンジと共に、スパニッシュ・モードをベースとした演奏によって、モード・ジャズを「ものにしている」。この盤での、淀みの無いマイルスのモーダルな演奏は素晴らしいの一言。

それまでのジャズは「猥雑、庶民的、アクロバット的」で「クラシックの様な芸術性には無縁」という定評を覆し、ジャズというフォーマット、ジャズという音楽ジャンルが、モード・ジャズの確立によって、アーティスティックな側面を全面に押し出し、芸術性の高い音楽的成果を残すことが出来る、それを証明できる最高の一枚である。
 
 

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2022年10月 8日 (土曜日)

Miles Davis『Rubberband』

最近、マイルス・デイヴィスの発掘ライヴ盤が幾枚かリリースされている。しかし、マイルスの未発表音源って、まだまだあるんやな、と感心する。

ピアノでは、ビル・エヴァンスの未発表音源が未だにチョロチョロと出るんだが、マイルスも負けずにチョロチョロ出てくる。これは当然「需要」があるからで、確かに、ビルにせよ、マイルスにせよ、発掘音源が出れば「ゲット」である(笑)。

Miles Davis『Rubberband』(写真左)。1985年10月〜1986年1月の録音。2019年9月のリリース。ちなみにパーソネルというか、録音のコア・メンバーが、Miles Davis (tp, key, syn), Randy Hall (g, prog), Attala Zane Giles (g, b, drum prog, key), Vince Wilburn, Jr. (ds), Adam Holzman (key), Neil Larsen (key), Michael Paulo (sax), Glenn Burris (sax), Steve Reid (per) 辺りと思われる。

かなり以前からその存在が知られており、長らく伝説と伝えられていた、この「ラバーバンド・セッション」。それが、今回、全貌を現したということになるが、リリースに際して、オリジナルのままでのリリースは不適切と判断、今の時代に相応しい音源としてリニューアルしたのが、今回リリースされたもの。それだったら、オリジナル音源とリニューアル後の音源と、2つの音源をカップリングして出すべきだろう。

これでは、この音源の良し悪しが判断出来ない。マイルスのトランペットだけは触っていないとのことだが(当たり前だろ・笑)、バックの演奏については、どこまでオリジナルを残して、どれをどうやって取り直したのかが全く判らない。ただ、少なくとも、それぞれの曲の持つコンセプトや志向については触っていないらしいので、当時、このセッションで、マイルスが何を目指していたかは判るのかな、とは思う。
 

Miles-davisrubberband

 
当時のマイルスのコンセプトと志向を踏まえた演奏だが、明らかにマイルスは先を見据えていたことが良く判る。マイルスが長年在籍していたColumbiaを離れ、Warner Bros.への移籍を決断した時期の録音で、『You're Under Arrest』と『Tutu』との間を埋めるセッションである。

今の耳で聴くと「おっ、こりゃ凄いわ」と身を乗り出して、聴き耳をたてるくらいだが、当時の最先端のR&Bやファンクのエッセンスの大量注入と先鋭的なヒップホップ志向の音作りは、当時として、かなり「過激」で、当時、この音源が出ていたら、かなりショックを受けていたのでは、と思うくらい尖っている。ちょっと聴いただけで、これマイルスでしょ、と判るくらいに過激に尖っている。

曲毎の詳細については、既にネットに大量に出ているので、そちらを参照されたい。一言でいうと、収録曲全11曲、どれもが「マイルス・オリジナル」。音的に全て「メイド・バイ・マイルス」だし、リズム&ビートだって、どう聴いても「マイルスのグルーヴ」。冒頭の「Rubberband of Life」なんて、ちょっと聞いただけで直ぐに判る「マイルスの合図」で始まる。く〜っ格好良い。

「復活前エレ・ファンクのコンテンポラリー化&リニューアル」と、「ジャズとして、より多様性を目指した融合の深化」の2点が、奇跡の復活以降のマイルスの音作りの狙いだったと思うのだが、その進行形がこの未発表音源にリアルに息づいている。現代においてでも、この内容に匹敵するコンテンポラリーなエレ・ジャズをクリエイトできるジャズマンは数える程しかいないんじゃないか。

他ジャンルとの「融合」、他ジャンルの音要素の「取り込み」は、ジャズの重要な要素のひとつ。そういう観点からも、このマイルスの『Rubberband』は「アリ」である。現代のジャズ・シーンの中でも十分通用する先進的な「融合」の音作りは、聴いていてとてもワクワクするし、クールでヒップである。さすが、マイルスとしか言い様がない。
 
 

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2022年7月28日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・16

モード・ジャズあるいはモーダル・ジャズ(modal Jazz)は、コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏されるジャズ。モダン・ジャズのサブ・ジャンルのひとつ。旋法とは、旋律の背後に働く音の力学。 旋法は主音あるいは中心音、終止音、音域などの規定を含む(Wikipedia より抜粋)。

モード奏法は、それまでのジャズ、いわゆる、ビ・バップ〜ハードバップにおける「コード進行によって限定される、アドリブ・パターンの画一化とマンネリ化」のブレイクスルーに貢献。コード奏法に比べて、アドリブ展開が穏やかになる懸念はあるが、アドリブ展開の柔軟度、自由度が飛躍的に高まった。

以上が、モード・ジャズの文章での説明であるが、やっぱり判り難い。クラシックの楽理なんかを、ある程度、基礎として理解していないと基本的に判らない。ジャズに楽理なんか必要ないよ、という声も聞こえるが、ジャズの演奏を深く理解する上では、楽理の助けは必須になる。その楽理を前提とした最初のジャズの奏法が「モード・ジャズ」だったと思う。

Miles Davis『Kind of Blue』(写真)。1959年3月、4月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Cannonball Adderley (as), John Coltrane (ts), Wynton Kelly (p), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds) 。このマイルス盤は、モード・ジャズの金字塔、いや、ジャズの金字塔の一枚とされる。トータル・セールスは実に1,000万枚を超えている、ジャズ界のモンスター・アルバムである。

いわゆる「モード・ジャズを採用した優れた成功例」であるというところが評価されているのだが、聴く側にとっては、モード・ジャズの採用、といった部分が、この盤の演奏のどの部分に当たるのかが判り難い。しかし、演奏全体の雰囲気が、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気とは明かに違う、といったことは判るかと思う。

コード進行による劇的な進行変化、そして、アドリブ展開の決めフレーズ、といった、コード進行によるジャズの特徴、つまり、メジャー・コードからマイナー・コードに変わると、演奏される旋律の雰囲気はダイナミックに変化するし、定番のコード進行に乗って、定番のアドリブ・パターンが展開される。モード・ジャズにはこれらが無い。
 

Miles-daviskind-of-blue_1

 
モード・ジャズは、主音を基にした、自由度の高いアドリブ展開なので、コード奏法の様な音の「色の劇的な変化」が希薄。絵画で例えると、モノトーンの濃淡の様な、グラデュエーションの様な音の変化がモード・ジャズの特徴。モード奏法でのアドリブ展開は、このモノトーンの濃淡をベースとした展開になるので、例えば、墨絵の様な淡い濃淡の様な「音の拡がり」になる。

この辺りが、この『Kind of Blue』と、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気と明らかに異なる理由になる。そんなモード・ジャズが、アルバム一枚分、ほぼ成功例で埋め尽くされた優れた内容の一枚が、この『Kind of Blue』。

ただ、聴いていて面白いのは、演奏メンバー全員がこのモード・ジャズを完璧に理解していたか、という点である。リーダーのマイルスとモード・ジャズ創成のパートナー、ビル・エヴァンスは十分理解していたことがこの盤の演奏を聴いていて良く判る。コルトレーンは、この盤の録音時点では、直感的に何となく理解していたのでは、と感じる。他のメンバーは、モード・ジャズを十分理解していたかどうかは疑わしい。ただ、モード・ジャズの「基本中の基本」はしっかり抑えた演奏になっているのはさすがだ。

それだけ、録音当時、モード・ジャズは、ジャズ界にとって「強烈なイノベーション」だったと思う。いわゆる、テクニックとスピリッツ、気合いで通用したそれまでのジャズが、楽理というアカデミックな要素を身につけないと理解出来ない奏法が出現したのだ。以降、ジャズマンにとって、モードに対応出来るか否かは重要な課題となっていく。

しかし、そんな「イノベーション」によって、ジャズは大衆音楽の1ジャンルから、アーティスティックな音楽ジャンルへステップ・アップした訳で、このモード・ジャズの成立は、ジャズの進化、ジャズの深化にとって、必要不可欠だった。

『Kind of Blue』は、そんな「事実」を十分に感じさせてくれる、モード・ジャズの金字塔、ジャズの金字塔の一枚である。
 
 

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2022年2月 6日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・13

ジャズ名盤には、ジャズの歴史を彩る「エピソード」が必ず付いて回る。そのエピソードを知ることによって、よりジャズの歴史を理解することになる。この盤、マイルスの、ブルーノート・レーベルの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの恩義に報いる「サイドマン」参加盤である。

Cannonball Adderley『Somethin' Else』(写真左)。1958年3月9日の録音。ブルーノート・レーベルの1595番。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Miles Davis (tp), Hank Jones (p), Sam Jones (b), Art Blakey (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、マイルス・デイヴィスのトランペットがフロント2管のクインテット編成。マイルスがサイドマンとして入っている珍しい盤。

1950年辺り、マイルスは「ジャンキー」であった。マイルスは麻薬中毒の為、レコーディングもままならない状態に陥っていた。しかし、彼の才能を高く評価していたブルーノートの総帥アルフレット・ライオンは彼をサポート。1952年より、1年ごとにマイルスのリーダー作を録音することを約束。1952年〜1954年の録音から、2枚のリーダー作をリリースしている。

しかし、1955年、麻薬中毒から立ち直ったマイルスはコロムビア・レコードと契約をした。この契約により、ブルーノートへの録音は途切れることになる。が、マイルスは「ライオンの恩義」を忘れていない。自らがオファーして、このキャノンボールのリーダー作にサイドマンとして参加したのである。当然、ライオンは狂喜乱舞。当時の録音テープには、マイルスの名前を記していたという。
 
このキャノンボール盤の録音メンバーもマイルスが人選したらしい。ピアノに流麗なバップ・ピアノの名手、ハンク・ジョーンズ。ベースに堅実骨太のサム・ジョーンズ。ドラムに名手アート・ブレイキー。このリズム・セクションの人選が渋い。明らかに、マイルスが「ライオンの音の好み」を勘案して選んだメンバーだろう。マイルス自身がリーダーだったら、当時のマイルスの先進的な音からすると、こんな人選は絶対にしない。
 

Somethin-else

 
演奏内容は、当時のバリバリ「ハードバップ」な演奏。マイルスは既に「モード・ジャズ」に手を染めていたが、このブルーノートでの録音では、従来のハードバップな演奏に立ち戻っている。前進あるのみのマイルスが「一時後退」しているが、この後退はライオンの為の後退。ライオンにハードバップの究極な演奏をプレゼントしたい、そんなマイルスの気持ちの表れだろう。

この盤は、ハード・バップというジャズ・フォーマットの最高到達地点のひとつ。アーティスティックで高尚な響きが充満し、参加メンバー各人の最高のパフォーマンスを聴くことが出来る。ハンクの旨さ、ジョーンズの堅実さ、ブレイキーの天才的ドラミング、そして、そして、キャノンボールの情感タップリで、そこはかとなくファンキーな香りがかぐわしい、絶妙なアルト・サックス。

マイルスのトランペットは別格。マイルスの生涯に渡っての、最高の部類のパフォーマンスを聴くことが出来る。ミュートもオープンもベストに近いプレイ。しかし、気合いの入ったマイルスは凄い。ちなみにマイルスがブルーノートに残したパフォーマンスはどれもが素晴らしいものばかりである。

ジャズのスタンダード中のスタンダードとされる「枯葉」の決定的名演。曲想は既にハード・バップの先を行く、先進的な響きが素晴らしい、マイルス作の「サムシン・エルス」。芸術的で高尚な響きのスタンダードの定番曲「ラブ・フォー・セール」。情感タップリで、そこはかとなくファンキーな香りが芳しい「ダンシング・イン・ザ・ダーク」。収録曲のいずれもが、ハードバップの最高峰レベルの演奏で占められる。

この盤は、マイルスが、麻薬中毒の苦しい時代にマイルスを見捨てず、マイルスの才能と人格を信じてくれた、ライオンの恩義に報いた結果。そんな背景をしっかりと踏まえて、キャノンボール以下、録音メンバーが最高のパフォーマンスを聴かせてくれる。名盤中の名盤とはこういう盤のことを言うのだろう。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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2021年11月 2日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・9

マイルス・デイヴィスは僕のジャズの「最大のアイドル」である。マイルスの足跡、イコール、ビ・バップ以降のジャズの歴史でもある。ジャズの演奏スタイルについては、揺るぎない「信念」があった。フリー、スピリチュアル、フュージョンには絶対に手を出さない。マイルスはアコースティックであれ、エレクトリックであれ、いつの時代も、メインストリームな純ジャズだけを追求していた。

Miles Davis Quintet『The Legendary Prestige Quintet Sessions』(写真左)。1955年11月16日(The New Miles Davis Quintet)と1956年5月11日、10月26日(マラソン・セッション)の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane(ts), Red Garland (p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds) 。

マイルス・デイヴィス・クインテットのマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』と、デビュー盤『The New Miles Davis Quintet』のプレスティッジ・レーベルに残したスタジオ録音の音源を録音順に並べたもの(と思われる)と、NYのBasin Streetでのライヴ音源(1955年10月18日)と フィラデルフィアのライヴ音源(1956年12月8日)を収録。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源が録音順に並んでいる(と思われる)のが、この企画ボックス盤の良いところ。マラソン・セッションの録音の流れとスタジオの雰囲気が追体験出来るようだ。4部作は、プレスティッジお得意の仕業、アルバム毎の収録曲については、曲と演奏の雰囲気だけで、てんでバラバラにLPに詰め込んでいる。アルバムとしては良いのだろうが、録音時期がバラバラなのはちょっと違和感が残る。
 

The-legendary-prestige-quintet-sessions_

 
さて、このマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源は、CBSからリリースされた『'Round About Midnight』と併せて、「マイルスの考えるハードバップ」の完成形である。全てが一発録り、アレンジは既に用意されていたようで、それまでに、ライブ・セッションで演奏し尽くしていた曲ばかりなのだろう。

今の耳で聴いても、相当にレベルの高い演奏である。即興演奏を旨とするジャズとしては、この一発録りが最良。マイルスはそれを十分に理解して、このマラソン・セッションを敢行したと思われる。細かいことは割愛するが、一言で言うと「非の打ち所」の無い、珠玉のハードバップな演奏である。これぞジャズ、という演奏の数々。素晴らしい。

1955年10月から1956年12月に渡って、録音順に並んだ音源集なので、振り返ってみるとたった1年2ヶ月の短期間だが、マイルス・デイヴィス・クインテットのバンドとしての成熟度合いと、コルトレーンの成長度合いが良く判る。

バンド・サウンドとしてはもともとレベルの高いところからスタートしているが、段階的に深化、成熟していくのが良く判る。コルトレーンについては、たった1年2ヶ月であるが、最初と最後では全く別人といって良いほどの「ジャイアント・ステップ」である。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』をアルバム毎に分けて聴くも良し、録音順に追体験風に聴くも良し、これら「マイルスの考えるハードバップ」の完成形は、ジャズとして「欠くべからざる」音源である。ジャズ者としては、絶対に聴いておかなければならない音源である。
 
 
 
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2021年10月 6日 (水曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・6

僕なりのジャズ超名盤研究の6回目。超名盤の類は、僕の場合、基本的にジャズを聴き初めて4〜5年以内に聴いている。ジャズ盤紹介本に絶対にその名が出る、いわゆる「エヴァーグリーン」な盤ばかり。演奏内容、演奏メンバー、そして、ジャケット、どれもが「ジャズ」を強烈に感じさせてくれる優れた盤ばかりである。

Miles Davis『'Round About Midnight』(写真左)。1955年10月26日、1956年9月10日の2セッションの記録。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。マイルス・デイヴィス、1950年代「黄金のクインテット」である。

マイルス・デイヴィスは、ジャズを本格的に聴き始めるまでに、既に大のお気に入り。特に、この盤はジャズを本格的に聴き始めて、2ヶ月目くらいに手に入れた。まず、ジャケットが格好良い。スタイリストなマイルスの面目躍如。いまにも、冒頭の名曲「'Round About Midnight」のイントロ、マイルスのクールでアーバンなミュート・トランペットが聴こえてきそうなジャケット。

内容的には、1955年というハードバップの初期から中期に差し掛かる時期に、既に完成された、当時の最先端を行くハードバップな演奏がギッシリ詰まっている。クールで限りなくシンプルなハードバップ。それでいて、演奏内容はかなり高度なテクニックと小粋なアドリブが満載。聴き易くクールでダンディズム溢れる、マイルス・ミュージックがこの盤に展開されている。
 

Round-about-midnight

 
マイルスのトランペットは申し分無い。というか、当時のベスト・プレイだろう。マイルスのトランペットはクール、そして色気タップリである。「マイルスは下手だ」なんていう評論家がいたが、とんでもない。即興を旨とするジャズにおけるトランペットとしては「ハイ・テクニシャン」の部類だ。

そもそもクラシックのトランペットと比べること自体がナンセンス。そもそも吹き方、表現方法が全く異なる。ジャズに限定すると、マイルスのトランペットは優秀だ。特にミュート・トランペットは絶品。その絶品もミュート・トランペットが、冒頭の1曲目、タイトル曲の「'Round About Midnight」で堪能出来る。

この時期のコルトレーンは「下手くそ」なんて言われていたが、とんでもない。荒削りではあるが、音の存在感、ストレートな吹き味、オリジナリティー溢れるアドリブ展開は、既に他のサックス奏者と比べて突出している。そして、ガーランド+チェンバース+フィリージョーのリズム隊の安定度の高さと伴奏上手なテクニックは特筆もの。マイルスのトランペットを更に引き立たせる「マスト・アイテム」。

収録された全ての演奏が「超優秀」。この『'Round About Midnight』という盤は、マイルスが「超一流」なトランペッターとして、ジャズのイノベーターとしての第一歩を記した、歴史に永遠に残る超名盤だろう。いわゆるハードバップ・ジャズの「基準」であり「試金石」的なアルバム。聴く度に「脱帽」である。
 
 
 

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2021年4月22日 (木曜日)

パーカーの非凡な才能・その8

今でも良く聴くチャーリー・パーカーは、彼の音楽活動の晩年、ヴァーヴ時代のアルバムが聴き易くてお気に入りだ。特に1950年前後以降のセッションは、来るハードバップ時代の演奏トレンドを先取りした様な内容の濃い演奏もあって、聴きどころ満載。ビ・バップからハードバップへの移行は、様々な優秀なジャズメンのセッションを経て、比較的緩やかに実行されたと考えるべきだろう。一夜にして、ビ・バップからハードバップに移行した訳では無い。

『The Genius Of Charlie Parker #8 : Swedish Schnapps』(写真)。ヴァーヴ・レーベルからのリリース。tracks 1-6,13が、1951年8月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Red Rodney (tp), John Lewis (p), Ray Brown (b), Kenny Clarke (ds)。tracks 7-12が、1951年1月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Miles Davis (tp), Walter Bishop Jr. (p). Teddy Kotick (b), Max Roach (ds)。

1951年のセッションのパーソネルが興味深い。いずれのメンバーも、後の「ハードバップ時代」に活躍するジャズマンばかり。あの、後に「ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイヴィスも参加して、この時点で既に、いかにも後のマイルスらしいトランペットを披露している。他のメンバーも同様で、パーカー以外、かなりハードバップ的な、アーティスティックで「聴かせる音楽」としてのインプロビゼーションを強く意識して展開している様に感じる。
 

Swedish_schnapps

 
「ビ・バップ」だの「ハードバップ」だの、と言う前に、パーカーはパーカーらしく、ハイテクニックな、力感溢れるブリリアントな音で流麗に吹き進める。とにかく、晩年とは言え、運指のテクニックが素晴らしい。パーカーらしい、しっかりクッキリと硬派なブロウが堪らない。「ビ・バップをしっかり聴かせてくれる」ジャズ盤として、このアルバムの存在は価値がある。

この盤にはブルース曲が多く収録されているところが聴いていて楽しいところ。1曲目 の「Si Si」からブルース曲が炸裂。「Back Home Blues」と「Blues for Alice」も題名を見てのとおり、それぞれ順にCそして、Fのブルース。「Au Privave」はFのブルース。マイルスがなかなか張りのあるソロを披露している。

僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半は、まことしやかに「ヴァーヴのバードは駄目だ」と言われていましたが、とんでもない。この『Swedish Schnapps』は、僕の大好きなバーカー盤。1950年前後の録音なので、録音状態もまずまずで、鑑賞に十分に耐えるレベルであるというのも嬉しいところ。これからバードを聴きたいなあ、と思われているジャズ者初心者の方々に、お薦めの一枚です。
 
 
 

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2020年9月25日 (金曜日)

晩年のエレ・マイルスの究極盤

昨日、Miles Davis『You're Under Arrest』をご紹介した。1985年のリリース。マイルスは、1991年に鬼籍に入っているので、後はリーダー作は6作を残すのみとなっている。リリース順で聴き直してきたマイルスのリーダー作も終盤である。マイルス自身としても晩年の時代。レコード会社は長年所属していたColumbiaを離れ、Warner Bros.に所属することとなる。

Columbiaレコードとしては、1985年当時、もはやマイルスの商品価値は尽きた、と考えていたらしい。予算も削減し、扱いもレベルダウンし、さすがのマイルスも怒り心頭。Columbiaレコードも積極的に契約更新するつもりもなく、マイルスはWarner Bros.へ移籍することとなった。商品価値の低くなったマイルス。しかし、Warner Bros.に移籍後、晩年の傑作盤をものにするのだから、マイルスは隅に置けない。

Miles Davis『Tutu』(写真)。1986年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Marcus Miller (b, guitar, syn, drum machine, b-cl, ss, other inst.), Jason Miles (syn programming), Paulinho da Costa (per), Adam Holzman (syn), Steve Reid (per), George Duke (per, b, tp), Omar Hakim (ds, per), Bernard Wright (syn), Michał Urbaniak (el-vin), Jabali Billy Hart (ds, bongos)。シンセサイザーと打ち込みの多用が目に付く。
 
 
Tutu-miles-davis  
 
 
エレクトリック・マイルスの最終到達地点。マイルス流エレクトリック・ファンクの最終形。クールで格好良く、ソリッドなファンクネス、重量感溢れ、そして流麗。エレ・マイルスの良いところが全て、この『Tutu』に凝縮されている様なパフォーマンス。アコースティックだのエレクトリックだの、どうでも良い。エレ・ファンク・ジャズの究極形がこの盤に詰まっていると感じる。

キーマンは、若きベーシストの「Marcus Miller(マーカス・ミラー)」。曲の大半はマーカスミラーが書いている(マイルスは1曲のみ)。マーカスはマイルス・バンド最後の「音楽監督」として、このエレ・ファンク・ジャズの究極形を、マイルスと二人三脚で完成させた。そして、もう一つの「キーマン」は、アダム・ホルツマンや、ジェイソン・マイルスの「プログラミング部隊」。

ジャズの肝である「即興演奏」はどこへ行った。「即興演奏」は、マイルス御大が一気に引き受けている。バックのリズム隊は人工的だが、マイルスは生の音で、マイルスのトランペットを、即興演奏を吹きまくっている。このマイルスのトランペットの「即興演奏」だけで、アルバム全体が「ジャズ」に包まれる。いやはや、マイルスって、晩年にどえらいエレ・ファンク盤をものにしたもんだ。
 
 
 
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2020年9月24日 (木曜日)

エレ・マイルスの一番ポップな盤

ジャズの帝王「マイルス・デイヴィス」のリーダー作をリリース順に聴き直していたのだが、2016年7月6日の『Decoy(デコイ)』で停滞しているのに気がついた。面目ない。自分自身、マイルス者なので、マイルスのリーダー作は定期的に聴く。聴かないと禁断症状が現れる。で、この聴き直しの次のアルバム自体が、この定期的に聴くマイルス盤として選択されなかったということ。で、今回、聴き直しを再開である。

Miles Davis『You're Under Arrest』(写真左)。1984年1月26日〜1985年1月14日での録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp, syn, voice), John McLaughlin (g), John Scofield (g), Bob Berg (ss, ts), Kenny Garrett (as). Al Foster (ds), Vincent Wilburn (ds), Robert Irving III (syn, celesta, org, clavinet), Darryl Jones, (b), Steve Thornton (perc, voice), Sting, Marek Olko, (voice)。

アルバムを聴く前にパーソネルを見渡せば、どんな「捻れてカッ飛んだジャズ・ファンク」な音が出てくるんだ、と思う。そして、パーソネルにある「Voice」とは何か、今までのマイルス盤に無い「担当楽器」に戸惑う。ラップでもやる気なの?なんて思ったりする。しかし、ジャズ・ファンクはもうずっとやっている。新たな挑戦として、この盤ではマイルスは何にチャレンジするのか。
 
 
Youre-under-arrest  
 
 
昔、この盤がリリースされた時、この盤に詰まっている音に対する「表現言葉」を持ち合わせていなかった。21世紀の今になって、やっと自分なりの、この盤に対する「表現言葉」を持つことが出来た。そう、この盤って、マイルス流のフュージョン・ジャズではないか。冒頭の「朗読劇」風のヴォイスも、それまでのマイルスに無い「ポップ」な工夫。そして、絶品のカヴァー曲が2曲。

Michael Jacksonの楽曲、2曲目の『Human Nature』と Cyndi Lauperの楽曲、7曲目の『Time After Time』が見事。ポップであり、ソフト&メロウであり、ジャズによるブラコンである。この2曲が軸となって、爽やかファンキーでこの盤では、ポップで判り易い、マイルス流のフュージョン・ジャズな演奏がズラリと並ぶ。もちろん、マイルスのトランペットは好調である。もちろん、バックを担う個性派ジャズマン達も好演に次ぐ好演。

エレクトリック・マイルスの中では、非ジャズ・ファンクなポップで聴きやすいアルバム。マイルスのジャズ・ファンク独特の「陰」のイメージがこの盤には全く無い。ポップで明るい演奏の中に、そこはかとなく漂う「寂寞感」はマイルスならではのもの。この秋の黄昏時に一人で佇む様な「寂寞感」は健在。この漂う「寂寞感」故に、この盤は単なるフュージョン・ジャズ盤に留まらず、やはりメインストリームなジャズ、正統なエレ・マイルスな盤として存在し続けているのだ。
 
 
 
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