2023年2月25日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・259

「小粋なジャズ」の探求は続く。20世紀のネット時代以前とは違って、現代ではネットを通じて、ジャズ盤の情報が結構、潤沢に入手出来る。「小粋なジャズ」の探索も、ジャズ盤紹介本からネットにシフトして、「これは聴いたことが無いなあ」と感じて即聴きして、これは「小粋なジャズやねえ」と感心する盤に出会うことが多くなった。

『Jay Jay Johnson Quintet / Live at Café Bohemia, 1957』(写真)。1957年2月、NYのカフェ・ボヘミアでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson (tb), Bobby Jaspar (ts, fl), Tommy Flanagan (p), Wilbur Little (b), Elvin Jones (ds)。パーソネルを見れば、1957年の『Dial J.J.5』と同一メンバー。内容はこのパーソネルを見るだけで期待出来ることが判る。

1957年は、J.J.にとっては素晴らしい年で、『Dial J.J.5』(1957年1月29, 31日 & 3月14日録音)、『First Place』(1957年4月11,12 & 26日録音)、『Blue Trombone』(1957年4月26日録音)と立て続けに、後世に残る、優れた内容のリーダー作を録音している。そして、このカフェ・ボヘミアでのライヴは『Dial J.J.5』と同一パーソネルでのパフォーマンスになる。
 

Jay-jay-johnson-quintet-live-at-cafe-boh

 
この『Dial J.J.5』のパーソネルの中の、フラナガン・リトル・エルヴィンのピアノ・トリオは、北欧ツアー中にピアノ・トリオの名盤、Tommy Flanagan『Overseas』を録音している。このピアノ・トリオがリズム・セクションを務めているのだ。さぞかし、J.J.とジャスパーのフロント2管は吹きやすかっただろう、このカフェ・ボヘミアのライヴでも、J.J.とジャスパーは、ベストに近い吹きまくりで迫力がある。

そして、このバックを務めるフラナガン・リトル・エルヴィンのリズム・セクションが、小粋で充実したリズム&ビートを叩きだし、フロント2管を完璧にサポートする。フラガナンのバップな弾き回し、リトルの個性的なベースライン、エルヴィンの繊細でダイナミックなブラシワーク。この上質でダイナミックで職人的なリズム・セクションが、このライヴ盤の聴きものにひとつ。

内容充実のハードバップな演奏にグイグイ引き込まれる。1978年に限定LPとして発売以来、一度、小ロットでCDリイシューされただけの「幻の名盤」級のライヴ盤が、今では、サブスク・サイトでダウンロードして、『Dial J.J.5』のパーソネルでのライヴ・パフォーマンスを聴くことが出来る。これは実に有り難いことである。
 
 

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2023年2月23日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・258

お待たせしました。やっとこさ、ブログを再開しました。よろしくお願いします。

さて、ジャズ・ライフ誌の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」には、2022年度にリリースされた新盤の中に、過去の未発表音源が入っていたりするから、チェックは念入りに怠り無く、である。以前は「コルトレーンもの」や「マイルスもの」が多かったが、最近は、そのレジェンド級ジャズマンについてもバラエティーに富んできて、探索するのが楽しい。                                       

The Oscar Peterson Trio『On A Clear Day - Live in Zurich, 1971』(写真左)。1971年11月24日、スイスのチューリッヒ、Kongresshausでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Louis Hayes (ds)。ラジオ・チューリッヒの放送用の未発表ライヴ音源の初アルバム化である。

ジャケットがいかにもブートらしくて、初めて、このジャケットを見た時は触手が伸びなかった。しかし、ネット情報でトリオのメンバー名を確認して、即ゲットを決意。史上最高のジャズピアノ・マイスターのピーターソン、そして、デンマークの至宝ベーシストのペデルセン、堅実実直なレジェンド級ドラム職人のヘイズ。このトリオ編成は素晴らしい。

というか、僕は「ピーターソン者」。ピーターソンがお気に入りピアニストの1人で、好きなランクの上位に位置する。しかし、このピーターソン、ペデルセン、ヘイズのトリオ編成って、聞いたことが無かった。で、ネットで調査してたら、この今回のライヴ音源が唯一だったらしい。でしょうね。でも、ピーターソンのピアノにペデルセンのベースって、絶対良いよな。そこに、ヘイズの堅実実直なドラムがビートの底を支えるのだ。絶対、内容は良いに決まっている。
 

The-oscar-peterson-trioon-a-clear-day-li

 
で、聴いてみると、やっぱり良いですね。ドライブ感抜群・スイング感抜群・歌心満載のピーターソンのピアノに対等に相対出来るベーシストはなかなか見当たらないのだが、テクニック最高・高速ライン弾き・唄う様なピッツィカートのペデルソンのベースがバッチリ合う。

どちらも高速フレーズを弾きこなすのだが、この2人は決して「うるさくならない」。相手の音を良く聴いて、音がぶつからない様に、相手をしっかりサポートする様に弾きこなしている。素晴らしい。

ヘイズのドラミングも実に良い。ピーターソンとペデルセンが高速フレーズを弾きまくるバックで、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支え、しっかりとリードしている。この堅実実直なヘイズのドラミングがあってこそ、ピーターソンもペデルセンもバリバリ弾きこなせるというもの。

全編、熱演につぐ熱演で、その熱気は聴衆の熱気と共に、様々な音でしっかりと伝わってくる。特に聴衆の盛り上がりは相当なもので、1971年とは言え、さすが欧州。流行に流されず、メインストーリム指向の純ジャズの優れた演奏に正しく反応する感性は素晴らしい。

良いライヴ音源です。こういう未発表音源が、しかも、オスカー・ピーターソンの一期一会トリオの音源が、ラジオの放送音源から作成されたことはとても素晴らしい出来事だったと思います。聴き応えのあるピアノ・トリオの演奏。実際のライヴで聴きたかったですね。

 
 
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2023年1月22日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・257

最近、ジャズ・フルートのアルバムを聴き直している。フルートって楽器、基本的にはジャズに向かないと、ずっと思ってきた。それでも、ジャズ者初心者の頃、『Opus de Jazz』のフルートを聴いて「フルートの音ってファンキーやな〜」と感じ入ったりして、フルートって、吹き手によってはジャズに向くのかな、と思って以来、幾年月。しばらく、ジャズ・フルートに拘ること無く、ジャズ盤を聴いてきた。

ボブ・ジェームスの初期のリーダー作を聴き直していて、ヒューバート・ロウズのフルートって「やっぱ、ええなあ」と感じ良った。サックスのサブ楽器としてのフルートって、ジャズではよくあるが、さすが、サブ楽器だけあって、本格的なフロント楽器とは言い難い。では、ジャズ・フルートをメインにしている、フロント楽器として成立するジャズマンって、どれくらいいたのかなあ、と思って調べ始めて、ジャズ・フルートの好盤を聴き直す様になった。

Frank Wess『Opus in Swing』(写真左)。 1956年6月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Frank Wess (fl), Kenny Burrell, Freddie Green (g), Eddie Jones (b), Kenny Clarke (ds)。ジャケ・デザインを見たら直ぐに判る、サヴォイ・レーベルからのリリースである。1956年の録音であるが、アルバム全体の雰囲気は、ちょっとレトロな「スイング・ジャズ」。
 

Frank-wessopus-in-swing

 
しかし、このレトロな「スイング・ジャズ」がとても良い雰囲気。スイングするリズム隊に乗って、フランク・ウエスのフルートが唄う様に吹き進む。芯の入った、ストレートに力強く伸びたフルートのフレーズ。ウエスのフルートは、しっかりとフロント楽器として成立している。そして、ウエスのフルートは、どこか黒くてファンキー。ウエスのフルートにその黒いファンクネスが、そこはかとなく小粋に忍んでいるのが実に洒脱で、実にジャジー。

ソロ・ギターに、駆け出し新人自体のケニー・バレル、リズム・ギターに名手フレディー・グリーン。この二人のギターが抜群に聴いている。バレルのソロ・ギターはブルージーでファンキー、グリーンのリズム・ギターは小粋に躍動的でファンキー。この二人のギターが演奏全体のファンクネスな雰囲気を醸し出している。二人の小粋にファンキーなギターと、そこはかとなくファンキーなウエスのフルート。とっても「ジャズ」な演奏が小気味良い。

バリバリのハードバップでは無い、軽やかで耳に優しい「スイング・ジャズ」。しかし、ハードバップ・マナーなアレンジが、この「スイング・ジャズ」な演奏に古さを感じさせない。とても洒脱でモダンなジャズな演奏が、この盤に詰まっている。そして、この盤は、ジャズ・フルートが、やはり吹き手によって、フロント楽器として十分成立することを我々に教えてくれる。
 
 

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2022年12月 9日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・256

小粋なジャズ盤を探索していると、好きなジャズマンのリーダー作なのに、何故か疎遠になって、かなりの長期間、聴くことの無かったアルバムに、不意に出会うことがある。ジャケ写を見て「あっこれは知ってる、好きな盤」とは思うのだが、直ぐに「あれっ、この盤、前に聴いたのって何時だっけ」ということになる(笑)。

The Oscar Peterson Trio『At The Concertgebouw』(写真左)。1957年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Herb Ellis (g)。ジャズ・ピアノのレジェンド&ヴァーチュオーゾ、オスカー・ピーターソンの「オールド・トリオ」(「ピアノ+ベーズ+ギター」のトリオ)のライヴ録音である。

この盤、懐かしい。僕がジャズを聴き始めて2年位経った時に、LPの廉価盤で見つけたゲットした記憶がある。ジャズ・ピアノの達人、ピーターソンのトリオ盤なので、内容には間違いは無いだろうと軽い気持ちで購入した。というのも、ジャケットに引かれた。これはどう見ても「オランダの風車」。「コンセルトヘボウ」という変な場所の名前はオランダにあるものだと確信した。欧州での録音かぁ。子供の頃から欧州には限りない憧れがあって、そういう経緯もあって、迷わずゲットした訳でる。

しかし、この盤、曰く付きで、コンセルトヘボウは、オランダ・アムステルダムにあるコンサートホールなんだが、この盤、実は、シカゴの「シヴィック・オペラ・ハウス」でのライヴ録音、ということが後に判明している。どうして、こんなことになったのかは判らぬが、オスカー・ピーターソンのトリオのライヴ録音ということは間違い無い。

僕がジャズを聴き始めて2年目の頃、ピアノ・トリオは、ピアノ・トリオが出現した時からずっと「ピアノ+ベース+ドラム」の編成しか無い、と思っていた。が、それは違うのに気がついたのが、この盤を聴いてから。
 

At-the-concertgebouw

 
もともと、ピアノ・トリオって「ピアノ+ベーズ+ギター」の編成が発祥とのこと。ビ・バップ時代に、バド・パウエルが「ピアノ+ベース+ドラム」の編成を採用して以降、ピアノ+ベース+ドラム」がピアノ・トリオのスタンダードの編成になったことをこの盤で知った。

というのも、このピーターソン・トリオのライヴ盤、トリオの編成が「ピアノ+ベーズ+ギター」なのだ。初めて聴いた時、これにはビックリした。が、ギターってリズム楽器としてジャズに登場しているので、直ぐに納得した。ギターとドラムの違いは、ギターはリズム楽器と旋律楽器の両方に対応、ドラムはリズム楽器オンリー、なところ。

このライヴ盤では、このハーブ・エリスのギターが大活躍。ギターって繊細な音色という先入観があって、時に、ハーブ・エリスのギターは音の線が細くて繊細なリズム&ビート、という印象があったのだが、このライヴ盤でのエリスのギターは「スピーディー&雄弁」。アドリブ・ソロは弾きまくり、リズム&ビートのコード弾きの音が、何時になく「大きい」。こんなエリスのアグレッシヴでスピーディーで弾きまくりのギターって、あまり聴いたことが無い。

ハーブ・エリスのギターがアグレッシヴで弾きまくりな分、ピーターソンのピアノが安心してバリバリ弾きまくり、レイ・ブラウンの重低音ベースがブンブンブンブン、高らかに鳴り響く。このライヴ盤、当時のピーターソン・トリオのパフォーマンスの中で、一番、アグレッシヴでダイナミックでスピード感溢れたものになっている。オールド・スタイルのピアノ・トリオの代表的名演のひとつとしても良いだろう。

タイトルは「オランダのコンセルトヘボウ」のライヴ録音なのだが、実は「シカゴのシヴィック・オペラ・ハウス」でのライヴ録音だった、なんて変なライヴ盤ではあるのだが、演奏内容は一級品。聴き応え十分の、オスカー・ピーターソンの「オールド・トリオ」です。しかし、オランダの風車の油絵のジャケット、好きなんだけどなあ。
 
 

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2022年12月 5日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・255

ジャズの関連本などで紹介されていて、名前は知っているのだが、リーダー作をまともに聴いたことが少ないジャズマンに出会った。クレア・フィッシャー(Clare Fischer)である。

1928年10月22日ミシガン州デュランド生まれのピアニスト、アレンジャー。1962年のリーダー作『First Time Out』で高評価を得ている。メインストリーム・ジャズばかりでなく、ポップなラテン・ジャズやボサノバ・ジャズも演奏し、多くのリーダー作ををリリースしている。ちなみに、ハービー・ハンコックに大きな影響を与えたジャズマンの1人とされる。

1970年代以降、オーケストラのアレンジなども手掛けるようになり、R&Bやロック畑のチャカ・カーン、ポール・マッカートニー、セリーヌ・ディオン、そしてプリンス等、多くのR&Bやロック畑のアーティストとコラボしている。僕は、クレア・フィッシャーについては、こちらのR&Bやロック畑のアーティストとの協働の印象の方が強い。

Clare Fischer『Surging Ahead』(写真)。1963年の録音。米国ウエストコースト・ジャズのメイン・レーベルのひとつ「Pacific Jazz」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Clare Fischer (p), Albert Stinson (b, #1-4), Colin Bailey (ds, #1-4), Ralph Pena (b, #5-7), Larry Bunker (b, #5-7), Gary Peacock (b, #8), Gene Stone (ds, #8)。

パーソネルはちょっと複雑だが、気にすることは無い。ベースとドラムのリズム隊は、リズム・キープにほぼ専念していて、担当が代わっても、大きく音が変化することは無い。このトリオ盤は、クレア・フィッシャーのピアノだけを前面に押し出した、クレア・フィッシャーのピアノだけを愛でる為にあるトリオ盤である。
 

Clare-fischersurging-ahead  

 
録音年は1963年だが、フィッシャーのピアノはオーソドックスなバップ・ピアノ。ところどころ、モードに展開するところやアブストラクトにブレイクダウンするところはあるが、概ね、伝統的なバップ・ピアノな弾き回すに終始している。しかし、これが意外と新鮮に響くのだからジャズは面白い。

演奏全体の雰囲気は、米国のウエストコースト・ジャズな雰囲気で、音はカラッと乾いていて、響きは流麗。しかし、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無く、どちらかと言えば、東海岸のバリバリ弾きまくるバップ・ピアノの雰囲気なのだ。収録曲8曲のうち、フィッシャーの自作曲は1曲のみ、他は小粋なスタンダード曲が選曲されていて、聴き心地がとても良い。

但し、テクニックのレベルは、フィッシャーは勿論のこと、リズム隊のメンバーも併せて高く、流麗な弾き回しはとても端正で爽快感がある。この辺は、ウエストコースト・ジャズの雰囲気。加えて、ファンクネスは希薄。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」という感じがユニークに響く。

良い感じのピアノ・トリオ盤。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」が聴き心地が良くて、聴き始めると、ついつい引き込まれて、一気にラストの「Without a Song」まで聴き切ってしまう。クレア・フィッシャーを体験するのに好適なトリオ盤です。
 
 

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2022年11月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・254

1950年代の米国のウエストコースト・ジャズのアルバムは一聴すれば直ぐに判る、独特の「音の傾向」を持っている。小粋に洒脱にアレンジされ、バンド・アンサンブルは小洒落ていて、クールで落ち着いている。どのウエストコースト盤も、そういう音の傾向を持っていて、少なくとも冒頭から1〜2曲聴けば、ウエストコースト盤か否かが判る。

ビ・バップの様にそのテクニックを披露するジャズでもなければ、熱くブロウするジャム・セッションなスタイルでも無い。ウエストコースト独特のラウンジ・ジャズ志向、もしくは、室内でじっくり聴く鑑賞音楽としてのジャズ、つまり「聴かせるジャズ」でる。アレンジは、東海岸のハードバップよりも精緻でアカデミックで、しっかりと音楽理論に則った、事前にしっかり準備されたアレンジが大多数である。

Bud Shank and Bob Cooper『Blowin' Country』(写真左)。1956年11月29日と1958年2月18日の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Bob Cooper (ts, oboe), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。

西海岸ジャズの人気アルト奏者、バド・シャンクと、洒脱なテナー奏者、ボブ・クーパーが2管フロントのクインテット編成。CDリイシュー時には、5曲のボートラが追加されているが、ここでは、LP時代の10曲収録盤での聴き込み。
 

Bud-shank-and-bob-cooperblowin-country

 
冒頭の「Dinah」の前奏のアルトとテナーのユニゾン&ハーモニーを聴けば、これは直ぐに、ウエストコースト・ジャズの優秀盤だと感じる。どの曲にも施される小粋で洒脱なアレンジ。特に、シャンクのアルトとクーパーのテナーによる、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、コール&レスポンス、対位法的な掛け合い等、とてもよくアレンジされていて、聴いていて気持ちが良い。

シャンクのアルト・サックスが絶好調で、とても良い音を出している。負けじとクーパーのテナー・サックスも魅力的なフレーズを吹き上げる。特に、バラード演奏における、シャンク&クーパーは絶品。「聴かせるジャズ」の面目躍如、情感豊かに、歌心豊かに、素敵な「聴かせる」フレーズを連発する。他にシャンクはフルート、クーパーはオーボエを吹いて、クインテットのジャジーな演奏に良いアクセントを付けている。

バックを司る、クロード・ウィリアムソンのピアノを核としたリズム・セクションも良い。特に、ウィリアムソンのピアノは、洒脱で小粋で味がある。ウエストコースト・ジャズの雰囲気を代表するピアノのパフォーマンスだろう。

良いウエストコースト盤です。本当に久し振りにこの盤を聴き直したのだが、実にウエストコーストしていて聴き応え抜群。ウエストコースト・ジャズの代表盤の1枚として良い優秀盤です。
 
 

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2022年10月12日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・253

ズート・シムス(Zoot Sims)は、玄人好みのサックス奏者である。というのも、コマーシャルなところ、キャッチャーなところが無いので、内容の良いリーダー作についても、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌にその名が上がることが少ない。恐らく、日本のレコード会社のプロモーションの乗りそびれたのだと思われる。

確かに、ハードバップ期から第一線で活躍しているが、ハードバップ以降、ジャズの多様化の時代にも、ズートは自分のテナーのスタイルや演奏志向を変えたことが無い。ずっと、ハードバップ時代のズートで居続けている。これが、売る方からすると「コマーシャルなところ、キャッチャーなところが無い」ということになるのだろう。

Zoot Sims『The Modern Art of Jazz』(写真左)。1956年1月11&18日、NYでの録音。“幻”のレーベルといわれるDAWNレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts), Bob Brookmeyer (valve-tb), John Williams (p), Milt Hinton (b), Gus Johnson (ds)。リーダーのズートのテナーと、ブルックマイヤーのバルブ・トロンボーンのフロント2管のクインテット編成。

1956年にNYでの録音だが、音の雰囲気は「米国ウエストコースト・ジャズ」。フロントのズートのテナーとブルックマイヤーのトロンボーンのフロント2管のスインギーな「チェイス、ユニゾン、ハーモニー」が実に心地良く響く。アルバム全曲、優れたアレンジで「聴かせる」ジャズを展開している。
 

Zoot-simsthe-modern-art-of-jazz

 
当時の東海岸ジャズの熱気溢れる「ジャム・セッション」でも「熱いインタープレイ」でも無い。クールに流麗に、優れたアレンジに乗って、演奏テクニック、そして歌心を駆使して、聴いて楽しいハードバップ・ジャズを展開している。収録全8曲中、半分の4曲がスタンダード曲だが、このスタンダード曲のアレンジと解釈が、とりわけ「聴きもの」なのだ。

とりわけ冒頭の3曲のスタンダード曲、「September in the Rain」〜「Down at the Loft」〜「Ghost of a Chance」の演奏には「参った」。特に歌心溢れるズートとブルックマイヤーの演奏が群を抜く。3曲目のバラード曲「Ghost of a Chance」における情感溢れるズートのテナーと抱擁感溢れるブルックマイヤーのトロンボーンが絶品である。

ジョン・ウィリアムスのピアノ、ミルト・ヒントンのベース、ガス・ジョンソンのドラムのリズム隊も、ズートとブルックマイヤーの演奏にならって、ポジティヴで明るくてスインギーなサポートを展開していて、ズート&ブルックマイヤーのフロント隊との相性抜群である。ほんと良いサポートである。

ジャケも雰囲気があってグッド。LP時代は「幻の名盤」の誉れ高い逸品。CDでリイシューされ、今ではストリーミングでも聴くことが出来る様になった。ズートは玄人好みのテナーマンと言われるが、もっともっと、一般のジャズ者の方々に聴いて貰いたい。聴けば判るが、小粋で味わい深く判り易い、ハードバップなテナーマンである。
 
 

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2022年10月 3日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・252

ジャズは、大衆音楽の側面と芸術音楽の側面、2つの側面を持つ。ポップス同様、大衆向けの音楽として、キャッチャーで判り易い、耳当たりの良い演奏と、しっかりとした音楽理論の下、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏、2つの側面を持つ、ユニークな音楽ジャンルである。

John Lewis『Private Concert』(写真左)。1990年9月10〜12日、NYでの録音。仏PolyGramレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p) 1人。Modern Jazz Quartet(MJQ)のリーダー&ピアニストのジョン・ルイスのピアノ・ソロである。

ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。

で、このソロ・ピアノであるが、冒頭の「Saint-Germain-Des-Prés」を聴いて、ジャズの「クラシックに匹敵する芸術性」を改めて認識した。流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズがどんどん湧いて出てきて、思わず、じっくりと聴き耳を立ててしまう。まるで、クラシックの様なピアノ演奏だが、出てくるフレーズはしっかりとジャズしている。
 

John-lewisprivate-concert

 
「Saint-Germain-Des-Prés」=サンジェルマン・デ・プレはパリ6区に位置する「知性と文化を代弁する」エリア。いわゆる「アーティスティック」な街。その街の名を曲名にした冒頭の魅力的な1曲が、このソロ・ピアノ盤の音志向を決定付けている。つまり、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏が詰まっている。

同様に、パリを題材にしたジョン・ルイスの自作曲が全部で4曲。どれもが、流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズが印象的な楽曲ばかりで、ちょっと洒落ている雰囲気が実に良い。

アーティスティックな面を押し出しているからといって、堅苦しくは全く無い。バッハの曲も2曲「The Opening Bid」「Down Two Spades」でカヴァーされているが、しっかりとジャズ化していて、和音の重ね方もビートも「ジャズ」である。

スタンダード曲の「Don't Blame Me」と「'Round Midnight」は、大衆ジャズっぽくアレンジせず、あくまでアーティスティックに格調高くアレンジされている。それでも、底のビートはジャズなんだから、ジョン・ルイスの演奏能力の高さは定評通り。そこはかとなくファンクネスも漂う弾きっぷりは、確かに芸術的である。

この盤、たまたまネットを徘徊していてピックアップ出来たのだが、こんなジョン・ルイスのソロ・ピアノ盤が、1990年にリリースされていたとは知らなかった。しかし、たまたまピックアップ出来て良かった。ジョン・ルイスのアーティスティックな側面を強烈に感じる盤はそうそう無い。ジョン・ルイスのピアノを感じるに最適のソロ・ライヴ盤だと思う。
 
 

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2022年9月24日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・251

ジャズにおいて「初リーダー作」は、そのリーダーであるジャズマンの「個性」を確実に反映している。ジャズにおいては、それぞれジャズマン毎の「個性」が非常に重要で、この「個性」が希薄だと、どのジャズマンの演奏を聴いても「皆同じに聴こえる」ということになる。

これでは、即興演奏が最大の特徴であるジャズにおいて、ジャズマンの存在意義が無くなる。よって、ジャズにおいては、それぞれジャズマンの個性が重要であり、それぞれのジャズマンの初リーダー作では、その「個性」を前面に押し出すプロデュースを施すのが通例である。

Bill Charlap『Souvenir』(写真左)。1995年6月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Scott Colley (b), Dennis Mackrel (ds)。現代のバップ・ピアニスト、ビル・チャーラップのメジャー・デビュー作になる。チャーラップは、1966年10月生まれなので、初リーダー録音当時、28歳と8ヶ月。一流ジャズマンとしては、少し遅いメジャー・デビュー作になる。

メジャー・デビュー作と言えば、その内容は初リーダー作に準ずるもの。チャーラップも、1991〜3年に、マイナー・レーベルに初リーダー作を録音しているが、マイナー・レーベルからのリリースなので、数も少なく、その盤はなかなかお目に(お耳に?)かかれない。そういう意味では「メジャー・デビュー盤=初リーダー作」と位置づけて良いかと思う。

さて、このメジャー・デビュー盤、聴いて面白いのは、チャーラップのピアノの個性が明確に出ていること。今までの他のピアニストとは明らかに違う響きがある。
 

Bill-charlapsouvenir

 
基本はバップ・ピアノ。しかし、フレーズの響きが従来のバップっぽく無い。幾何学っぽく(ちょっとモンクっぽい)、モーダルな弾き回しだけど「判り易い」。弾きっぷりは流麗。バップなマナーの中での「耽美的でリリカルな」弾き回しがユニーク。

そんなチャーラップの個性が、このメジャー・デビュー盤にギッシリ詰まっている。冒頭の「Turnaround」を聴けば、それが良く判る。オーネット・コールマンの曲を選曲していて、このコールマンの曲をバップ・ピアノで弾き回していく。

しかも、緩やかなフレーズから盛り上げていくユニークなアレンジ。左手の和音が「幾何学っぽく」、右手のフレーズがモーダル。コールマンの曲の個性を良く捉え、チャーラップのピアノの個性で、今までに聴いたことのない、バップな演奏に仕立て上げている。

この盤を聴いて、僕は一気にチャーラップのピアノが「お気に入り」になった。現代のネオ・ハードバップの先端を行く、従来のモダン・ジャズ・ピアノを見直し、焼き直し、新しい響きやフレーズを盛り込んで「深化」させていく。

チャーラップは、現代のジャズにおいて「進取の気性に富む」ピアニストの1人であり、このメジャー・デビュー盤では、個性的で見事なパフォーマンスを披露している。
 
 

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2022年9月21日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・250

米国や欧州では一流の人気ジャズマンとされるが、我が国では「さっぱり」というジャズマンが結構いる。昔は海外レーベルのアルバムは、日本のレコード会社が契約して、日本のレコード会社経由で、我が国で流通していた。日本のレコード会社と契約した海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は良いが、契約していない海外レーベルの人気ジャズマンのリーダー作は、我が国では全く流通しないということになる。

これでは、日本のレコード会社と契約していないと、海外レーベルのレコードは手に入らない、ということになるのだから、何だか閉鎖的な話である。ネットの時代になって、CDやデジタル音源が日本のレコード会社抜きに、ダイレクトに購入出来る様になって、そんな閉鎖的な話はほとんど聞かなくなった。逆に我が国で売れる見込みが無いと扱わない、という日本のレコード会社の企業姿勢が、日本のレコード会社の存在意義を矮小化している。

Tom Harrell『Oak Tree』(写真左)。2020年11月24, 25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tom Harrell (tp, flh), Luis Perdomo (p, Fender Rhodes), Ugonna Okegwo (b), Adam Cruz (ds)。米国では「現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者」とされるトム・ハレルのリーダー作。ハレルのワンホーン・カルテット盤になる。

リーダーのトム・ハレルであるが、現代屈指のトランペッター&フリューゲル奏者とされるが、我が国ではほとんど無名に近いのではないか。ハレルは1946年6月生まれなので、今年で76歳の大ベテラン、レジェンド級のトランペッターである。
 

Tom-harrelloak-tree

 
リーダー作も30枚以上、参加セッションは数知れず。米国では、これだけ人気の一流トランペッターなのだが、我が国では「さっぱり」である。僕は21世紀には入るまで、トム・ハレルの名前を知らなかった。

さて、このハレルの新作、聴けば、ハレルのトランペットの成熟度合い、伸びのあるストレートな音色、流麗で歌心溢れるアドリブ・フレーズ、味わい深い「間」を活かした吹き回し。確かに、大ベテラン、レジェンド級のトランペッターであることが良く判る。このトランペットは良い。もっと広く、ジャズ者の皆さんに聴いて貰いたい気持ちで一杯である。

ビ・バップ、アフロ・キューバン、クラシック志向、心地よいスムース・ジャズなど、幅広いスタイルのジャズを展開してきたが、この盤では、じっくりと落ち着いた、モーダルな「ネオ・ハードバップ」。印象的なユニゾン&ハーモニー、スムースなアドリブ・フレーズ、柔らかく落ち着いた力強い吹き回し、暖かい安らぎを感じる音世界。この新作でのハレルのトランペット、本当に良い味出してます。

ピアノのルイス・ペルドモ、ベースのウゴナ・オケグォ、ドラマーのアダム・クルーズ、この精鋭リズム隊、これまた、味わい深いリズム隊で、ハレルの暖かい安らぎのあるトランペット&フリューゲルホーンを、緩急自在、変幻自在、硬軟自在にサポートする。このリズム隊あってのハレルのトランペットである。実に良いリズム隊だ。

アルバム・タイトルが『Oak Tree』=「樫の木」。英語圏では「逆境に耐える十字架の木であったり、男性的な力と聖木として崇められていることが多い」とのこと。なんか、この新作のハレルの「柔らかく落ち着いた力強い吹き回し」に通じる、実に良いタイトルですね。ジャケットも不思議と雰囲気があって良い感じ。ハレルの晩年の代表作としても良い佳作だと思います。
 
 

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