2022年6月23日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・240

欧州ジャズは奥が深い。まず、歴史が古い。1950年代からジャズは欧州各地で演奏されている。そして、国毎に「ジャズの質と個性」が異なる。国毎にジャズの浸透度合いに濃淡があり、国毎にジャズのスタイルの好みが異なる。

しかも、ネットの時代になるまで、欧州ジャズの詳細な情報がなかなか日本に来なかった。21世紀に入った頃から、欧州ジャズの情報もリアルタイムで入手出来る様になって、欧州ジャズの奥深さを十分に楽しめる様になった。

Eddy Louiss『Recit Proche』(写真左)。2000年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddy Louiss (org), Jean-Marie Ecay (g), Xavier Cobo (ts, fi), Daniel Huck (as), Julio Rakotonanahary (b), Paco Séry (ds)。ギター、テナー・サックス、アルト・サックスがフロント、オルガン・トリオがバックに控えるセクステット編成。

Eddy Louiss(エディ・ルイス)は、フランスのオルガン奏者。僕は、ペトルチアーニとのデュオ盤で、エディ・ルイスの存在を知った。今を去ること20年ほど前のことになる。テクニック優秀、オルガンの奏法としては、プログレッシブなオルガニストである。オーソドックスな奏法からアブストラクトな奏法まで、幅広くオールマイティーに弾きまくる、実に優れたオルガン奏者である。
 

Eddy-louissrecit-proche

 
ルイスのオルガンは唯一無二。従来のジャズ・オルガンのスタイルや個性を全く踏襲していない。といって、欧州風の教会音楽の中のオルガンの様な重厚さも無い。とてもポップで明るい音色が特徴で、そんな個性的な音色で、オーソドックスなフレーズから、アブストラクトなフレーズまでを弾き分ける。どこの国のジャズ・オルガンにも無い、独特の個性的なオルガンである。

7曲目の超スタンダード曲「Summertime」を聴けば、ルイスのオルガンの個性が良く判る。ファンクネスは皆無。レスリー・スピーカーなどでジャジーさを増幅することも無く、エッジの丸い暖かい音色で、マイナーでジャジーな「Summertime」の有名なフレーズを弾き進めていく。それでも、フレーズにはジャズっぽい翳りが感じられ、ポップでイージーリスニングな音には陥らない。

フレーズの弾き回しが、独特の捻れ方をしてるようで、どこか、プログレッシヴ・ロックのオルガンを聴く様な「攻撃性」をそこはかとなく感じる。飄々とちょっと捻れたフレーズを弾き進めている風でもあり、弾き回し全体の雰囲気は軽快ですらある。

面白いジャズ・オルガン。演奏全体の雰囲気は、決してカッチリとまとまっていない、ちょっとラフなアンサンブルといった調子で、この辺はフランスのジャズらしい雰囲気。どこか郷愁を感じる切なさが底に流れるところも、実にフランスのジャズらしい。ジャズ・オルガンの好盤だと思います。
 
 

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2022年6月16日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・239

もともとベースは「縁の下の力持ち」的存在。ベーシストの個性はその楽器の特性上(ソロやフレーズのバリエーションが少ない)、管楽器や鍵盤楽器ほど、明確にはならない。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いリーダー作にはなかなかならない。

Jimmy Haslip『Arc』(写真左)。1993年の作品。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Peter Erskine (ds) のリズム隊のみ固定メンバーで、あとは曲毎にメンバーを選定して演奏に臨んでいる。次世代を担う中堅ベーシスト、ジミー・ハスリップの初リーダー作。リリース当時42歳(今年で72歳)。録音当時はバリバリな中堅ベーシストである。

ハスリップはフュージョン・ジャズ畑のベーシストで、彼は長年、Yellowjackets(イエロージャケッツ)のオリジナルメンバー、ベーシストとして活動している(2012年、フェリックス・パストリアスと交代し脱退)。良く唄うエレベで、リズム&ビートを堅実に押さえて、ソロでは旋律楽器の如く「唄う」エレベである。ほど良く角の取れたジャコ・パストリアスといった風情。
 

Jimmy-haslip-arc

 
この盤に詰まっている音は「ウエザー・リポート」。そこはかとなく、ウエザー・リポート全盛期、『ミステリアス・トラベラー』から『ナイト・パッセージ』辺りまでの音が、そこはかとなく、このハスリップの初リーダー作に反映されている。しかし、音のカヴァーでは無い。雰囲気が「ウエザー」で、演奏自体は「ウエザー」の音をスムース・ジャズ化した様な音世界。

ベースとドラムだけを固定して、後は色々なゲストが演奏する、そして、アレンジャーも複数名が担当しているが、アルバム全体の雰囲気の統一感は見事。純ジャズ基調のコンテンポラリーなエレジャズとして、その出来は良い。さすが、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとして、フュージョン・ジャズを極めて来ただけはある、見事な初リーダー作である。

ハスリップのベースがほどよく角の取れたジャコの雰囲気、ドラムはウエザー全盛期のドラマー、アースキンそのもの。このベースとドラムのリズム隊だけで、「ウエザー・リポート」の音の雰囲気のベースをしっかり表現しているのは、凄いなあ、と感心するばかり。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっている「ベーシストのリーダー作」は聴いていて気持ちが良い。
 
 

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2022年6月10日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・238

先日の6月9日は、ジャズ・ピアニストのケニー・バロン(Kenny Barron)の誕生日だったそうだ。Twitterなどでは、誕生日のお祝いで、ケニー・バロンのリーダー作がいろいろ紹介されていた。ケニー・バロンって意外と人気ピアノストなんだなあ、と改めて感心した。

というのも、癖が無く端正なところがバロンのピアノの個性。「これ」といった特徴や癖に欠けるが、平均的に素晴らしいプレイを聴かせてくれる、つかみ所の無い、意外と判り難いピアニスト。平均的に素晴らしいプレイを聴かせるところ、いわゆるピアニストとしての総合力の高さが個性、というのが僕の評価。Twitterで、ケニー・バロンのリーダー作をいろいろご紹介している人が多いのに、ちょっとビックリした次第。

Kenny Barron『Live At Bradley's』(写真左)。1996年4月3ー4日、NYのUniversity Placeのバー「Bradley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Barron (p), Ray Drummond (b), Ben Riley (ds)。ケニー・バロン、52歳の春の「寛ぎ」のライヴ・パフォーマンスの記録である。
 

Kenny-barronlive-at-bradleys

 
バロンは気合いが入ると、意外と尖った、シビアなピアノを弾く。切れ味鋭く、バリバリとバップなピアノを弾き回し、時にアブストラクトに時にフリーに展開する。Enjaレーベルでの諸作に、そんなバロンのピアノを聴くことが出来る。が、このライヴ盤では、バロンはとても「寛いで」いる。余裕を持って、じっくりとフレーズ展開のバリエーションを楽しむ様な、リラックスした弾き回しがとても良い雰囲気を醸し出している。リラックスした弾きっぷりにこそ、バロンの「総合力勝負の個性」が引き立つ。

そんな「寛いだ」バロンに対して、スインギーに緩やかにバッキングを仕掛けるレイ・ドラモンドのベースとベン・ライリーのブラシが心地良い。とても機微に富んだリズム隊で、バロンの寛ぎに合わせて、柔らかいリズム&ビートで対応し、バロンの弾き回しにバリエーションにクイックに反応する。じっくり耳を傾ければ傾ける程に、このリズム隊の懐の深さを強く感じる。とても良好なリズム隊。

バロンの寛ぎのパフォーマンスは聴き応え十分。難しいことは一切やっていないが、フレーズ展開のバリエーションの変化や、寛ぐほどに度合いを増す「千変万化」なタッチと弾き回し。総合力勝負のピアニスト、ケニー・バロンの面目躍如なライヴ盤である。「ジャケ買い」に十分耐えるジャケットも良い。実はこのライヴ盤、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の長年の「息の長いヘビロテ盤」である。
 
 
 

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2022年6月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・237

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Gilad Hekselman『Far Star』(写真左)。2020年3月〜12月にテルアビブ、2020年12月〜2021年6月にNY、2020年9月にフランス、3ヶ所での録音。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman(g, key, b, whistle, tambourine, body percussion, voice), Eric Harland (ds), Shai Maestro (key), Ziv Ravitz (ds), Amir Bresler (do-production, ds, perc), Nomok (do-production & key), Nathan Schram (viola, violin), Alon Benjamini (ds, perc), Oren Hardy (b)。

ギラッド・ヘクセルマンの新盤になる。冒頭、口笛で始まる「Long Way From Home」から、哀愁感&寂寞感溢れる、マイナー調のリリカルで情緒豊か、エキゾチックな響き濃厚なサウンドに思わず耳を奪われる。今回の新盤では、ネイチャーな響きは薄れ、エキゾチック&エスニックなマイナー調の、不思議な浮遊感が際立つ哀愁フレーズがメインになっている。
 

Gilad-hekselmanfar-star

 
演奏の大本は、エキゾチック&エスニックなマイナー調の哀愁フレーズをベースにしたニュー・ジャズ風の展開だが、ところどころにフリーに傾いたり、アバンギャルドに走ったりと、意外と硬派でシビアな純ジャズ。過去のジャズの遺産の継承はあまり感じられない、プログレッシヴな、今まで聴いたことの無いフレーズがてんこ盛り。イスラエル・ジャズの個性である「音の広がりと間を活かした耽美的でリリカルな音世界」はしっかりと押さえられている。

3曲目の「I Didn’t Know」ではアコースティックギターを弾いているが、どこかノスタルジックでネーチャーな音世界が実に良い。この音の雰囲気は今までに聴いたことが無い。5曲目「Magic Chord」は奇妙なヴォイシングのコードの連続だが、耽美的で哀愁感溢れる雰囲気が独特。ラストの「Rebirth」は変拍子に乗って、耽美的でポジティヴな響きのエレギが芳しい。逆回転風の効果音も散りばめられ、実にミステリアスでプログレッシヴな音世界だ。

ギラッド・ヘクセルマンいわく「パンデミックに見舞われ、突然、この音楽を実現するために残されたのは、楽器とマイクとコンピューターだけだった」。コロナ禍によって、自室に閉じ込められたヘクセルマンが、先行きが見通せないまま、作り続けてきた音楽。様々な想いが交錯し、様々な想いが込められた楽曲。どこか敬虔でスピリチュアルな響きがするのは、そういう背景があったからなのだろう。現代ジャズの秀作の一枚である。
 
 

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2022年6月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・236

長年、ジャズを聴いていると、あまり名盤ばかり聴いていると、はっきりいって「飽きる」。ジャズの世界で「名盤」と呼ばれる盤は、1950年代〜60年代に集中している。いわゆる「オールド・スタイル」なジャズである。ジャズは長い年月を経て、進化&深化しているのだから、現代のジャズにも当然「優秀盤」は沢山ある。そんな「現代の名盤」候補となる優秀盤を見つけては聴き込む。これが、ジャズ盤鑑賞の醍醐味でもある。

David Kikoski『Surf's Up』(写真左)。2001年1月18日、NYはBrooklynでの録音。Criss Crossレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), James Genus (b), Jeff 'Tain' Watts (ds)。中堅ピアニスト、デヴィッド・キコスキーのピアノ・トリオ盤。ベースにジェームス・ジーナス、ドラムにジェフ・ティン・ワッツ。リズム隊に一流どころを配して、聴き応えのあるトリオ・パフォーマンスを聴くことが出来る。

デヴィッド・キコスキーは、1961年米国はニュージャージ生まれのピアニスト。1980年代にはバークレー音楽院でジャズを学ぶ。いわゆる「正統な教育を受けた」ジャズ・ピアニストである。タッチはやや硬質で端正、流麗な右手。ひねったり、ねじったりしたところは一切無し。ダイナミックにバリバリ弾き進めるバップなピアノ。いわゆる「総合力で勝負する」タイプのピアニストである。
 

David-kikoskisurfs-up

 
「総合力で勝負する」タイプのピアニストのトリオ盤は、アルバム自体の「企画性」と収録した楽曲の「アレンジ力」が重要になる。今回のこのキコスキー盤は収録曲が面白い。1曲目がフランク・ザッハの「Oh No」、4曲目がデュラン・デュランの「A Noite Do Meu Bem」、6曲目がビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン作の「Surf's Up」という風で、ポップス・ロック畑の有名曲をジャズ・アレンジしている。これがなかなか出来が良い。キコスキーの「アレンジ力」の高さをしっかりと感じることが出来る。

ミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲にも「アレンジ力」が発揮されている。チャーリー・パーカー作の2曲目「Cardboard」は、テンポが速くてゴキゲンな明るさでトリオが疾走。セロニアス・モンク作の3曲目「Four In One」はちょっとコミカルにお茶目にモンク・ライクな旋律を弾き回す。ジャッキー・マクリーン作の5曲目「Little Melonae」は、アップテンポでノリが良いが、どこか影のある印象的な表現。キコスキーの個性溢れる「アレンジ」が印象的。

リズム隊がしっかりしているので、この「総合力で勝負する」タイプのピアノ・トリオの演奏がとても魅力的に仕上がっている。そんな魅力的な演奏力のあるトリオが、小粋なアレンジを施されたポップス・ロック畑の有名曲とミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲を演奏する。これ、なかなか良い感じのピアノ・トリオ盤ですよ。硬派でストイックな現代のピアノ・トリオ盤ですが、どこか「小粋」な雰囲気漂う優秀盤です。
 
 

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2022年5月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・235

欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、

Vijay Iyer『Uneasy』(写真左)。2019年12月、ニューヨーク州マウントバーノンの「OktavenAudioStudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Vijay Iyer (p), Linda May Han Oh (b), Tyshawn Sorey (ds)。現代ジャズの哲人、ニューヨーク州アルバニー出身の中堅ピアニスト、ヴィジェイ・アイヤーのピアノ・トリオの新作になる。

Vijay Iyer(ヴィジェイ・アイヤー)は、1971年10月生まれ。今年で51歳の中堅ピアニスト。リーダー作は、1995年の初リーダー作以来、20枚以上を数える。2014年からはECMレーベルからのリリースに絞り、今回のトリオ新作もECMからのリリースになる。もともと、アイヤーのピアノは、耽美的でリリカルなピアノが個性なので、ECMレーベルの「音のカラー」にはピッタリのピアニストではある。

今回のトリオは、ベースにマレーシア出身のリンダ・メイ・ハン・オー(1984年生まれ)、ドラムスにニュージャージー出身のタイショーン・ソレイ(1980年生まれ)という国際色豊かなトリオ。この新作の録音まで、1年間、活動を共にしてきたとのこと。トリオ演奏の息はピッタリ。硬軟自在、変幻自在、緩急自在なトリオ演奏が素晴らしい。

この新作については、メインはアイヤーのピアノなのだが、アイヤーのピアノは耽美的でリリカルだが、その展開はダイナミックでメリハリがあるのが個性。このダイナミズム溢れる耽美的でリリカルなピアノで、様々な曲想の楽曲を自由自在に弾き回す。
 

Vijay-iyeruneasy

 
ファンクネスは極小、耽美的でリリカルであるがダイナミズム溢れる弾きっぷりは、どこかチック・コリアやミシェル・ペトルチアーニを彷彿とさせる。が、アイヤーの弾きっぷりは端正でクラシック・ピアノのマナーに通ずるものがあり、米国出身でありながら、欧州ジャズ・ピアノの志向を根強く踏襲しているようだ。

静謐な雰囲気からスタートし、段々に盛り上がっていく1曲目「Children Of Flint」。後半、アイヤーのダイナミックなピアノが炸裂する。耽美的でリリカルなピアノが印象的な、2曲目「Combat Breathing」。ゆったりとした演奏のビートを支えるのは、リンダのベース。リズムを色彩豊かにするのは、タイショーンのドラム。

3曲目「Night And Day」は、少しかかったような、スピード感溢れる演奏。トリオのテクニックの高さをビンビンに感じる。4曲目「Touba」は、地に足が着いたような、アーシーで力感溢れるピアノ。魅力的なベースライン、キャッチャーでどこかエスニックな雰囲気を醸し出すメロディーライン。素敵な演奏だ。冒頭からの4曲で、このトリオ演奏のレベルの高さと歌心溢れる流麗な演奏内容が聴いてとれる。

我が国ではどうにも知名度が低いィジェイ・アイヤーだが、国際的には、次世代のジャズ・ピアノを担う中堅ピアニストの1人として認知されている。今回のトリオ新作も実に濃い内容で、トリオ演奏のレベルも高い。不思議と繰り返し聴きたくなるピアノ・トリオの秀作です。
 
 

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2022年5月21日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・234

21世紀に入ってからだろうか。ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるように感じる。20世紀は、米国が中心。米国ジャズがそのまま飛び火して、欧州ジャズとして進化し、和ジャズとして進化した。21世紀はアジアでの広がりは鈍いのだが、欧州での、特に東欧諸国とイスラエル中心に「多国籍化」が進んでいる。

Tigran Hamasyan『StandArt』(写真左)。2022年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Tigran Hamasyan (p), Matt Brewer (b), Justin Brown (ds) のトリオがメイン。ゲストとして、フロント管の Mark Turner (sax, track 3), Joshua Redman (sax, track 4), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 7, 8) が参加している。

リーダーのピアニスト、ティグラン・ハマシアンは、アルメニア出身。1987年生まれなので、今年で35歳。若手の時代を経て、いよいよ中堅の時代に入らんとする年頃。ハマシアンの作曲はアルメニアの民俗伝統に強く影響されているのだが、今回の新盤は、ハマシアンの自作曲は1曲のみ。他は、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲で占められている。
 

Tigran-hamasyanstandart

 
ハマシアンのスタンダード曲の演奏が興味深い。ハマシアンの作曲の「癖」が無い、他のジャズマンが演奏してきた、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲の演奏を聴くことによって、ハマシアンのピアノの音の個性がハッキリ判るのだ。ワールド・ミュージック・ジャズの雰囲気が薄まって、先進的なネオ・ハードバップ志向のピアノが前面に押し出ている。

まず、バド・パウエルやビル・エヴァンスといった、ジャズ・ピアノの「第1世代」からの直接の影響は感じられない。どちらかと言えば、チック・コリア、ハービー・ハンコックといった「第2世代」からの影響を強く感じる。コンテンポラリーな音の響きは、ブラッド・メルドーと同質のものと感じた。当然、コピーでは無く、そういった影響を基に、ワールド・ミュージック・ジャズ志向な個性をしっかり出しているから立派だ。

過去のジャズ・ピアノのスタイルをしっかり踏まえて、ハマシアンなりの、現代の最先端を行くジャズ・ピアノの個性とスタイルを確立しているのを、この新盤を聴いて強く感じる。ハマシアンのピアノが、アルメニアの民族伝統に依存している訳では無いこと、モダン・ジャズ・ピアノの正統な後継者の1人である、ということが、この新盤を通じて明確になった。アーティスティックな響きを湛えた優秀盤である。
 
 

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2022年4月 1日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・233

去る3月8日、我が国のレジェンド級ベーシストの鈴木勲さんが、新型コロナウイルス感染症による肺炎のため川崎市の病院で逝去された。享年89歳。渡辺貞夫さんのグループなどで演奏。ドラマーのアート・ブレイキーに見込まれて渡米し共演。他にもセロニアス・モンク、エラ・フィッツジェラルドら著名ミュージシャンと共演した実績がある、我が国のジャズ・レジェンドであった。

僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、鈴木勲さんは既に帰国し、TBM(スリー・ブラインド・マイス)からリーダー作を多数リリースしていて、僕にとって、日本のジャズ・ベーシストといえば、鈴木勲さんだった。とにかく、鈴木さんのベースは骨太でブンブン鳴る。リズミカルでグルーヴ感溢れるベースラインは、聴いていると自然と体が揺れるほどだった。

鈴木勲『Blow Up』(写真左)。1973年3月29, 30日の録音。ちなみにパーソネルは、鈴木勲(b), ジョージ大塚(ds), 水橋孝(b), 菅野邦彦(p, Fender Rhodes)。ベーシスト鈴木勲がリーダーのトリオ盤。1973年度 スイング・ジャーナル ジャズ・ディスク大賞 日本ジャズ賞を受賞。ピアノ・トリオ編成と、水橋のベースを加えて、ダブル・ベース+ピアノ+ドラムの変則カルテット編成。 


Blow-up_isao-suzuki

 
冒頭の「Aqua Marine」、出だしから鈴木勲のボウイングが炸裂する。日本人ベーシストらしい、ピッチのしっかりあった、ストレートな、変な揺らぎの無いボウイングの音色。途中、フリーにブレイクしたりするが、基本はメンストリームなモード・ジャズ。菅野のフェンダー・ローズの独特な音色が実に良い。ジョージ大塚の抑制された、緩急自在なドラミングが良い。

2曲目の「Everything Happens To me」では軽快なスイング感が良いし。タイトル曲「Blow Up」は水橋孝を加え、超絶アップ・テンポでのダブルベースの迫力が凄い。もはや、モードというよりは「ファンク」である。

そして、この盤、とても音が良い。ベーシストのリーダー作らしく、鈴木勲のベースの音がとても生々しく捉えられている。3曲目「 I Can't Get Started(言い出しかねて)」での、鈴木勲のチェロのピチカートなど、凄く生々しく録音されている。

1970年代前半の日本の純ジャズ、演奏の成熟度、余裕度という点では、まだまだ発展途上かなとも思うが、ファンクネス希薄な、切れ味の良い、適度にテンションを張ったモーダルな演奏のレベルは高い。録音も良く、ジャケットも良い。演奏良し、録音良し、ジャケ良しの3拍子揃った日本ジャズの名盤の一枚です。
 
 

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2022年3月18日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・232

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。ビ・バップ期以降のレジェンド〜ベテラン級のジャズマンをメインにセッションをセットアップし、1970年代、フュージョン・ジャズ全盛期にありながら、純ジャズに特化したアルバムを多数リリースしたレーベルである。

このパブロ・レーベルのカタログの特色の1つが「モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」のライヴ録音盤が多くあるということ。しかも、フェスティヴァルの催し物の中でも「目玉」のひとつである「ジャム・セッション」のライヴ盤が多数出ている。

レジェンド〜ベテラン級のジャズマン達のジャム・セッションがメインという先入観があって、口の悪いジャズ者の方々は、聴く前から「予定調和で定型的な、旧来のハードバップっぽい、お決まり展開のジャム・セッションなんでしょ」と散々なのだが、これが聴いてみると意外と「イケる」のだ。フェスティヴァルのジャム・セッションの記録なので「臨場感」も半端ないところも「イケる」のだ。

The Dizzy Gillespie Big 7『At the Montreux Jazz Festival 1975』(写真)。1975年7月16日、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dizzy Gillespie (tp), Eddie "Lockjaw" Davis, Johnny Griffin (ts), Milt Jackson (vib), Tommy Flanagan (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Mickey Roker (ds)。フロント3管+ヴァイブ+リズム隊の「セプテット(七重奏団)」編成。
 

The-dizzy-gillespie-big-7at-the-montreux

 
パーソネルを見渡すと、このセプテットって「昔の名前で出ています的なロートル・ジャズマン」の集まりでは無い。暫定リーダーのガレスピーですら当時58歳。ロックジョーで53歳。この2人がメンバーの中で最古参と思われるが、この年齢だとすると「ベテラン」の域を出ていない。残りの5人は、当時の純ジャズの中核メンバーばかり。このメンバーで「予定調和な定型的なジャム・セッション」は無いだろう。

フロント3管が好調。ガレスピー、ロックジョーはバップなトランペットを鳴り響かせ、グリフィンのハードバップなテナーは、モダンで骨太でブルージー。ミルトのヴァイブは流麗かつ躍動的。トミフラのピアノが率いる、ペデルセンのベース、ロッカーのリズム隊は、すこぶるハードバップで切れ味の良い、力感溢れ、そこはかとなくファンクネス漂う、上質のリズム&ビートを供給する。

収録曲はジャム・セッションの記録(括弧内は収録時間)なので、LP時代は以下の2曲のみ「Lover, Come Back to Me」(16:43), 「I'll Remember April」(16:02)。 CDリイシュー時、ボートラとして以下の2曲「What's New?」(12:13), 「Cherokee」(11:01) が追加されて、全4曲構成となっている。

この追加されたボートラの内容もかなり充実していて、LP時代の2曲だけではちょっと聴き足りない気分になるだが、追加の2曲が加わって、このジャム・セッションが如何に充実していたか、をしっかり体感出来る様になっている。このボートラの追加は「正解」である。このジャム・セッションの記録の価値がさらに上がった、と言える。
 
 

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2022年3月 8日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・231

今からかれこれ、もう15年も前になるのか。2007年当時、ITunesストアでジャズ盤が販売され、ネット経由で手軽にジャズ盤の音源データがダウンロード出来る様になっていた。それも、CDショップで見ることの無いアルバムがアップされていて、その盤の素姓を調べるのが大変だった。

ジャケットは違うがオリジナルの音源と内容は同じものとか、市場に恒常的に出回っているブート盤とか、見たことの無いジャケットだからといって、今まで聴いたことの無い盤と判断するのには問題が多かった。この盤もジャケットを見ただけでは、どこかブート盤っぽい感じが怪しくて、素姓が明確になるまで、手に取ることが出来なかった盤である。

『What Happens?... - Art Farmer - Phil Woods Together』(写真左)。1968年10月12日、ローマでの録音。リリースは1977年。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Phil Woods (as), Martial Solal (p), Henry Textier (b), Daniel Humair (ds)。アート・ファーマーのトラペット、フィル・ウッズのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

アルバムの素姓は判ったので、入手と相成ったが、その主な動機は「安い」。確か500円程度でダウンロード出来たのではないか。輸入盤CDと比べても半額程度の安さだったので、内容が悪くても仕方が無い、と割り切って購入した思い出がある(笑)。しかし、聴いてみたら「あらら」。なかなかにエッジの立った、疾走感溢れる、エネルギッシュなハード・バップで、聴き応え満載。

そもそも、ウッズとファーマーがフロントで共演するのも珍しいし、ベースとドラムは、フィル・ウッズ主宰の「ヨーロピアン・リズムマシーン」在籍。加えて、ピアノがマーシャル・ソラール。ピアノが、ジョルジュ・グルンツだったら「ヨーロピアン・リズムマシーン」with アート・ファーマーだったな(笑)。しかし、このピアノのソラールがむっちゃ良かったりするのだ。
 

What-happens

 
録音はイタリアのローマだったらしいので、この盤は欧州ジャズの範疇で語られるべき好盤であろう。リリース当時、1977年はフュージョン・ジャズの大ブーム真っ只中。この盤の様な上質のハードバップは欧州のマーケットに限られていたように思う。逆にさすがイタリアである。良く、この面子でハードバップな演奏をやらせたなあ、と感心することしきり、である。

冒頭のタイトル曲、ミシェル・ルグラン作曲の「What Happens?」を聴けば、この盤の良さが判る。ウッズのアルトが良く鳴っている。そして、ファーマーのフリューゲルホーンが気合い十分で熱いブロウ。バックのソラールのピアノが率いるリズム・セクションが、素晴らしいバッキングで応酬する。3曲目のドーハム作曲の「Blue Bossa」でも、ウッズのアルトは充実、ファーマーのトランペットは何時になく熱い。

2曲目のストレイホーン作の「Chelsea Bridge」は、ウッズのアルトのワンホーン。5曲目の「The Day After」は、ファーマーのトランペットのワンホーン。どちらも、ワンホーンでも素晴らしいパフォーマンスを披露する。特に、ファーマーのバラード演奏、かなり熱が入っていて聴き応えがある。

この盤の聴きどころは、ウッズのアルトの充実、ファーマーの熱い、気合いの入ったトランペット。そして、ウッズの「充実」とファーマーの「熱さ」を引き出したのが、マーシャル・ソラールのピアノが率いるリズム・セクション。特に、ダニエル・ユメールのドラミングが、ウッズとファーマーを熱く効果的に鼓舞している。

「幻の名盤」とは言い過ぎですが、なかなかにエッジの立った、疾走感溢れる、エネルギッシュなハード・バップが楽しめる「ウラ名盤」だと思います。久し振りに聴きましたが、しばらく「息の長いヘビロテ盤」になりそうです。
 
 

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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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