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2018年8月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・126

ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)は、1924年10月27日、シチリア島パレルモ生まれ。1993年に68歳で鬼籍に入っている。1940年代前半から1950年代にかけて、ジャズ・ピアニストとして活躍。1960年に家業を継ぐためジャズ界から引退。1980年半ばに一時期復帰したが、活躍のメインは1950年代。当然リーダ作は少なく十数枚に留まる。サイドマンとしても10枚程度。

しかし、このピアニスト、リーダー作数枚で、ジャズ史に名前を残している。その一枚が、George Wallington『Jazz for the Carriage Trade』(写真左)。1956年1月20日の録音。プレスティッジのPRLP 7032番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington(p), Teddy Kotick(b), Bill Bradley as Arthur Taylor (ds)。ハードバップ中期、フロント2管のクインテット構成。

この盤が、聴けば判るのだが、プレスティッジ・レーベルでの録音らしからぬ、演奏全体が端正で活力漲り、流麗かつダイナミック。ブルーノート・レーベルの様に、リハーサルにもギャラを払って、幾度もリハーサルを重ねて、この盤の録音本番に至ったのでは、と思う位に、素晴らしい演奏の数々。これだけ楽器がしっかり鳴って、テクニック優秀、歌心満点なアルバムって、プレスティッジ・レーベルにはなかなか無い。
 

Jazz_for_the_carriage_trade_1  

 
冒頭の「Our Delight」を聴けば、フロントの2管、トランペットとアルト・サックスが絶好調なのが判る。これだけ力強く、良く鳴るトランペットって誰なんだ、と思って首を捻りながらパーソネルを見て「えっ、これがドナルド・バードなん」とちょっとビックリ。そして、流麗で唄うが如く、歌心満点なアルト・サックス。これ誰なんや、とパーソネルを見れば「フィル・ウッズかあ」と思わず感嘆の声を上げる。

リーダーのウォーリントンのピアノは知的なバップ・ピアノ。洗練されたフレーズでフロントの2管を温和に支える。決して、大立ち回りはしない。決して前へは出ない。堅実なベースとドラムと相まって、とても趣味の良いバッキングを実現している。これが見事。こんなに知的で粋なリズム・セクションを得て、フロントの2管は唄うが如く語るが如く、雄弁にポジティブに端正で堅実なアドリブ・フレーズを展開する。

ジャケットはちょっとレトロ調だが、これはこれで実に味がある。このジャケット・デザインも、やっつけデザインが得意な(笑)プレスティッジ・レーベルらしからぬ優れたもの。典型的なハードバップのお手本の様な純ジャズが展開されていて、実に聴き応えがある。プレスティッジ・レーベルらしからぬ、端正でまとまった、ダイナミックかつ繊細なハードバップ。全編に渡って聴き所満載です。

 
 

東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年7月26日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・125

いきなり涼しくなった千葉県北西部地方。この夜、外の気温は25度。窓を開けっ放しにした室内は27度、湿度50%。全くのエアコン要らずである。酷暑の西日本の皆さんには申し訳ないが、猛暑について一息ついた今日一日である。半袖で過ごしやすい気温。ジャズも聴きやすさが増して、今日は大好きなピアノ・トリオ盤に触手が伸びる。

Richard Wyands『Then, Here and Now』(写真左)。1978年10月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Richard Wyands (p), Lisle Atkinson (b), David Lee (ds)。リチャード・ワイアンズはジャズ・ピアニスト。1928年、カリフォルニア州オークランド生まれ。今年で90歳。あまり有名なピアニストでは無くて、僕もつい最近、意識し出したくらい。

このトリオ盤、ワイアンズ、50歳での記念すべきリーダー1作目。1978年のリリースなので、ジャズ界は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが大盛況な時代。そんな中での純ジャズなピアノ・トリオ盤である。注目される筈が無い。しかし、ジャケットが良い。なんか雰囲気のあるジャケット写真。ワイアンズの横顔。実は僕はこの盤を「ジャケ買い」「ジャケ聴き」して、大当たりだった。
 

Then_here_and_now  

 
とても良く鳴り、良く唄うピアノであり、爽快度満点、ポジティブなフレーズのてんこ盛り。テクニックも上々、ビ・バップなマナーではあるが俗っぽくなく、アートに傾きも過ぎず、ちょっとポップでサラッとしていて、メリハリの効いた聴き易いピアノである。ピアノの響きがとても素敵。トリオ演奏のアレンジはあっさりしていて、変にこねくり回したり、複雑にしない、シンプルな展開は飽きが来ない。

冒頭の「Yes It Is」を聴けば、背筋が伸びて、不意に目が覚めたような感覚に襲われ、気がついたら思わず、ジャケットを見にカウンターに走る、そんな気持ちの良いパフォーマンスである。7曲目の「Blue Rose」、デューク・エリントンの佳曲で、ちょっとアップテンポな弾き回しで、とても粋で洒落たハードバップ・ピアノ。見事です。

バックのアトキンスのベースも低音を響かせつつ、演奏の底をガッチリ支えるベースラインがとても魅力的。リーのドラミングも雄弁で疾走感溢れ、ところどころで職人芸を披露しつつ、堅実にリズム&ビートを供給する。これまた素晴らしい。こんなピアノ・トリオ盤があったなんて、ジャケ買い、ジャケ聴きの言い伝えに感謝です。今、眺めてみても、良いジャケットですね〜。

 
 

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2018年7月 8日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・124

ジャズのミュージシャンは息が長い。年齢を重ねる毎に、人生経験や演奏経験がノウハウと共に蓄積していって、演奏に深みや余裕が出てくる。これがまた味わい深くて良い。演奏テクニックというのは、年齢を重ねて行っても、そう大きく衰えることが無いらしく、ジャズの大ベテラン・ミュージシャンはそれぞれ、結構なテクニックを保持しているから凄い。

David Matthews, Eddie Gomez & Steve Gadd『Sir,』(写真左)。今年の6月のリリース。パーソネルを整理すると、David Matthews (p), Eddie Gomez (b), Steve Gadd (ds)。ピアノ・トリオである。ピアノのマシューズは、1942年3月生まれなので、今年76歳。ベースのゴメスは、1944年10月生まれなので、今年74歳。ドラムのガッドは、1945年4月生まれなので、今年73歳。

3人とも既に70歳超えの大ベテランであり、それぞれがジャズの歴史に名を残している、ジャズ・ミュージシャンのレジェンド格の3人である。マシューズは1970年代フュージョン・ジャズ全盛の頃は、アレンジャーとして名を馳せたが、ピアニストとしての腕前も相当なものがある。これまでに幾枚かリーダーとしてトリオ作をリリースしている。
 

Sir

 
マシューズのピアノは独特である。独特の「間」を活かし、左手が大活躍する、とても個性的なピアノである。マンハッタン・ジャズ・クインテットの諸作は大のお気に入りなんだが、マシューズのピアノの個性がとにかく気になって仕方が無い。何時の頃か、雑誌の記事を読んで、マシューズは小児麻痺のため、右手がほとんど使えないことを知った。そんなハンディを克服し、逆に個性として活かした彼のピアノは実に魅力的だ。

アルバムの内容としては、スタンダードなビバップ・ナンバーに加え、マシューズの書き下ろしオリジナル曲も3曲を収録。3者対等のインタープレイを前提とした丁々発止とした演奏ではなく、落ち着いてリラックスした、悠然とした演奏が堪りません。マシューズのピアノの個性を第一とした、ベースとドラムのサポートも見事。というか、しっかりピアノをサポートしつつ、ベースもドラムも至高の技を繰り出しています。

それでも演奏全体の印象は、技巧的というよりも雰囲気重視。一聴するだけだと、えらくシンプルでイージーリスニングの様なピアノ・トリオやなあ、と思ってしまうんですが、繰り返し聴けば聴くほど、味わい深く、聴きどころがどんどん多くなっていく。そんな「スルメ」の様な味わいのピアノ・トリオ盤です。ジャズ者全ての方々にお勧め。

 
 

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2018年7月 5日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・123

ECMレーベルは実にユニークなレーベル。1969年の設立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。ビ・バップやハードバップの影響を全く感じさせない、ポスト・モダンな「ニュー・ジャズ」を録音し、アルバムをリリースする。

Terje Rypdal『Whenever I Seem To Be Far Away』(写真左)。1974年の作品。ECMの1045番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g), Sveinung Hovensjø (b), Pete Knutsen (mellotron, el-p), Odd Ulleberg (French horn), Jon Christensen (per)。ギター、キーボードにベースとドラムがリズム&ビートを担うカルテット構成にフレンチ・ホルンとシンフォニーが絡む。

リーダーでギター担当のテリエ・リピダルはノルウェーのギタリスト兼作曲家。ビ・バップやハードバップの影響が皆無な、ニュー・ジャズを聴かせてくれる。ギター・プレイのメインは「アブストラクト&フリー」。判り易いフレーズを繰り出す、従来のジャズ・ギターとは正反対の内容。明快に「欧州ジャズ」な雰囲気をバッチリ聴かせてくれる。
 

Whenever_i_seem_to_be_far_away  

 
しかし、このアルバムはそんなリピダルの個性を越えた、実にユニークな内容に思わず耳をそばだてる。聴けば判るのだが、これって「プログレッシブ・ロック」。3曲目「Whenever I seem to be far away」では、クラリネットやオーボエ、弦楽アンサンブルが絡んでくる辺り、そして、暴力的でもある、流麗で高テクニックなエレギと合わせて、まるで「キング・クリムゾン」である。

1曲目の「Silver Bird is Heading for the Sun」では、メロトロンが大活躍。ジャズにメロトロン。これにはビックリするやら、嬉しいやら。ここまでくると、リピダル、明らかに当時の「プログレッシブ・ロック」を意識しているに違いない。しかしながら、プログレをやっても、アドリブの展開などは複雑かつ高テクニックで、その演奏内容は明らかにジャズ。

プログレッシブ・ジャズロックというか、プログレッシブ・フュージョンな内容は、1970年代のプログレ者からすると、実に興味深い。テリエ・リピダルのギターも相当に「エグい」。「アブストラクト&フリー」に行こうとするところを押しとどめ、限りなくフリーに近い、複雑にメロディアスなフレーズを連発していて聴き応えがある。内藤忠行の手になる、美しいジャケット写真も素晴らしい。明らかにECMレーベルらしい内容。好盤である。

 
 

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2018年6月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・122

最近の新盤の傾向として、内容の素晴らしさに反比例して、これは一体なんなんだ、と呆れるくらいのチープなデザインのジャケットが多い様に感じる。確かにCDのサイズになって以来、LP時代の様にジャケット・デザインに腕を振るうことは少なくなった。が、それにしても、最近「とほほ」な内容のジャケット・デザインが多すぎる。これは実に残念なことである。

Reis Demuth Wiltgen『Once in a Blue Moon』(写真左)。今年6月のリリース。録音はECMの第3スタジオ、アルテスオーノ。ちなみにパーソネルは、Michel Reis (p), Marc Demuth (b), Paul Wiltgen (ds)。イタリアの名門CAM JAZZレーベルからのリリース。ルクセンブルク出身のピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲンのピアノ・トリオである。

この「とほほ」なジャケットからは想像出来ない、知的で透明感のある欧州ジャズなサウンドである。曲毎に、しっかりと起承転結のある、メロディアスでドラマチックな楽曲も良い内容。全13曲中9曲がレイスのオリジナル。リリカルでフォーキーな良い曲を書く。レイスのピアノはクラシックな雰囲気が底に漂いつつ、紡ぎ出されるフレーズは親しみ易くポップなイメージ。過去にありそうでない、欧州ジャズ的な唄うが如くのピアノである。
 

Once_in_a_blue_moon  

 
デムスのベースも良い音を出している。骨太でしなやかで張りのあるベース。レイスの知的で透明感のあるピアノによく絡む。絡むが決してピアノの邪魔はしない。しっかりと支え、寄り添うようなベース。決して、耳触りで無い、唄う様なベース。ジョニ・ミッチェルの名曲'「Both Sides Now」のカバーでは、このデムスのベースがフィーチャーされ、ただひたすらに、骨太でしなやかで張りのあるベースが唄う。

ウィルトゲンのドラムも特筆もの。ポリリズミックで、硬軟自在、変幻自在なドラミング。それでいて、リズム・キープ力は抜群。揺らぐことは皆無。チェンジ・オブ・ペースも的確、かつ柔軟で、レイスのピアノをしっかりと支えている。リズム&ビートをデムスのベースと的確な役割分担をしつつ、これまた唄う様なドラミングを披露する。

この「ピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲン」のピアノ・トリオは「唄うピアノ・トリオ」。3者が一体となったインタープレイはキャッチャーでインテリジェンス溢れる、唄うが如く、欧州的な響きを湛えたピアノ・トリオの音である。ドラマチックでダイナミックな展開も多々あって、全編を通じて飽きることは全く無い。好盤である。

 
 

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2018年6月 4日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・121

トランペットという楽器は、この楽器の特徴なのだが、思い切り「ハイトーン」が出る楽器である。ハイテンポの曲だったりすると、気合いが入って、このハイトーンを吹きまくり、落ち着いて耳を傾けておれない状態に陥ることがある。それが判っていて構えて聴く分には「ハイトーン」も高度な技術なので、それはそれで楽しみなのだが、リラックスして聴くにはちょっと辛い。

Lee Morgan『Candy』(写真左)。1957年11月の録音と1958年2月の録音のミックス。BNの1590番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Sonny Clark (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時、弱冠20歳の鯔背なトランペッター、リー・モーガンのワンホーンの傑作盤である。純粋にトランペット吹きの名演として、この盤は十指に入る名演だろう。

モーガンは、決して気合いが入りすぎて、若しくは、感情をコントロール出来ずに、ハイトーンを連発することは無い。モーガンが奏でるハイトーンは、常に抑制されコントロールされている。ハイトーンばかりでは無い。持ち合わせた凄まじいばかりのテクニック、そのテクニックを良い方向に使って、硬軟自在、緩急自在、自由自在、縦横無尽に、様々な表現を聴かせてくれる。吹きすぎない、歌心優先のトランペット。良い意味で老成したトランペットである。
 

Candy  

 
そういう意味で、この盤は万人に勧めることのできる、ジャズ・トランペットの傑作盤である。この盤でのモーガンのトランペットは力強く優しい。僕のお気に入りの一人、ケニー・クラークのピアノ・トリオをバックに、ワンホーンで朗々とトランペットを吹き上げるモーガンはとても素敵だ。ベース、ドラム共に、職人気質のワトキンスとテイラーで万全。4人(カルテット)一体となった演奏に惚れ惚れする。

3曲目のミュージシャンズ・チューンの「C.T.A.」を除いて、古い歌もののスタンダードで占められている。テーマのメロディも美しく、モーガンの歌心の神髄が聞けるのも嬉しい。この盤でのモーガンは絶好調。トランペットの一発録りにはつきものの「ミストーン」も無く、緩急も強弱も自由自在。日本の演歌でいう、いわゆる『こぶし』を回すような「小粋な節回し」を奏でながら、モーガンは爽快に疾走する。

軽く鼻歌を歌うがごとく、軽やかに、自由に、輝くように、モーガンのペットは唄う。アップテンポの曲も、スローなバラードも見事にこなして素晴らしいの一言。また、バックをつとめるピアノのソニー・クラークも、このアルバムを名盤としている要素の一つ。独特の間と、少しくすんだ、憂いをおびたようなシングル・トーンのクラーク節が、このアルバムをより素晴らしいものにしている。

 
 

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2018年5月23日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・120

フュージョン・ジャズは大のお気に入りである。もともとリアルタイムで体験したこともあるが、純ジャズと同等の位置づけて、今まで、様々なアルバムを拝聴してきた。1980年代半ばには、このフュージョン・ジャズの大ブームは沈静化した訳だが、それ以降も、フュージョン・ジャズは脈々とその姿を深化させている。

そんなフュージョン・ジャズの名うてのミュージシャンが集い結成したバンドが「Fourplay(フォープレイ)」。バンド名のとおり、4名編成、ジャズで言うところの「カルテット」である。当初メンバーが、ピアニストのボブ・ジェームス、ギタリストのリー・リトナー、ベーシストのネイザン・イースト、ドラマーのハービー・メイソン。フュージョン好きなら、目を見張るようなメンバー構成である。

Fourplay『Between the Sheets』(写真左)。1993年のリリース。フュージョン・ジャズのレジェンド集団、フォープレイのセカンド盤になる。ちなみにパーソネルは、Bob James (key, synth, p), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Chaka Khan, Phillip Bailey, Phil Perry, Dee Fredrix (vo)。錚々たるメンバー、珠玉のカルテットである。
 

Between_the_sheets  

 
音が素晴らしい。まず楽器の音がしっかりと鳴っている。そして、録音が良い。適度で魅惑的なエコーが音に深みを与える。音が素晴らしければ、演奏の表現力は更に高まる。とりわけ、テクニック的に相当に高度な4人のメンバーである。この盤に詰まっている、フュージョン・ジャズの演奏は、エンタテインメント性を充足させ、アートの域にまでに達している。

いやはや、素晴らしい、凄みのある演奏である。淀み迷いの微塵も無い。フュージョン・ジャズの名演の数々がこの盤に詰まっている。フュージョン・ジャズ、ここに極まれり、である。ソフト&メロウ、ブルージー&アーバン、メロディアス&ムーディー。ボーカル曲もあり、これがまた良きアクセントとなっていて、惚れ惚れする。

スピーカーに対峙して聴き込むも良し、何かをしながらの「ながら聴き」にも良し。大向こうを唸らせる、バカテクな演奏や派手で判り易い旋律とは全く無縁。どちらかと言えば、落ち着いた、快適な余裕が感じられる演奏なのだが、これが聴き込むうちに「癖になる」。往年の名プレーヤーのテクニックをさりげなく満喫できる、成熟したフュージョン・ジャズ盤である。

 
 

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2018年5月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・119

ジャズの世界では、まだまだ毎月毎月、新盤が出てくる。ジャズって、音楽ジャンルの中で、マイナーな存在になって久しい、と感じているんだが、結構な数のアルバムが毎月、リリースされている。そんなに需要があるのかなあ、と心配になる。でも、順番に新盤を聴いていると、ジャズは確実に深化している、と感じて嬉しくなる。

AMP Trio『Three』(写真左)。2017年のリリース。米国はテキサス出身の抒情派ピアノ・トリオの最新作。ちなみにパーソネルは、Addison Frei (p), Perrin Grace (b), Matt Young (ds)。ニュー・ジャズの要素をメインに据えながらも、伝統的なメインストリーム・ジャズやクラシックの要素もしっかりと踏まえた、先取性と伝統性を兼ね備えたピアノ・トリオである。

ジャズではあるが、ファンクネスは皆無。たっぷりとかかったエコーが心地良く、嫌が応にも叙情的な雰囲気を盛り上げる。テクニックは確かであるが、決して、速いフレーズでテクニックをひけらかすことは無い。逆に着実なタッチとミッドなテンポで、ピアノをしっかりと深く響かせる。フライのピアノは現代ジャズのトレンドをしっかりと押さえている。
 

Amp_trio_three

 
その叙情的に深々と響くピアノのバックで、ゴリゴリ、ブンブンと胴を響かせる、圧倒的に正統なウッド・ベースの響き。これが、また良い。しっかりとフレーズの底辺をウォーキング・ベースで押さえたり、ソロのパートに入ると、自由度の高いモーダルな、硬軟自在の流麗なフレーズを聴かせてくれるグレースのベース。

そして、このピアノ・トリオの最大の特徴が、切れ味良く様々な音を繰り出す、クールでありながら良い意味で多弁なヤングのドラム。伝統的なオフビートを堅実にキープしつつ、自由度の高いインプロビゼーションに突入すると、ポリリズミックで変幻自在なドラミングに早変わり。硬軟自在、多様性に溢れたリズム&ビートにしっかりと耳を奪われる。

最近のジャズのアルバム・ジャケットの流行として、抒情性溢れるニュー・ジャズなアルバムには、夕焼け、朝焼けのジャケットが安易に採用されることが多い。このAMP Trio『Three』もそのひとつなんだが、このアルバムを聴くと、アルバムに詰まっている音世界とジャケットのイメージとがピッタリとフィットする。このジャケット・デザインは「アリ」だなと思う。

 
 

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2018年4月16日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・118

ジャズをずっと聴き続けてきて、時折「これは何だ」と感嘆の声を上げるアルバムに出会うことがある。今から10年ほど前だろうか。フリージャズを聴くコツみたいなものが判る様になって、フリージャズを定期的に聴き、馴れ親しみ始めた頃である。まず、AEC(Art Ensemble of Chicago)に出会う。

そして、そのAECを生んだAACM(The Association for the Advancement of Creative Musicians)を知ることになる。そのAACMの発足メンバーの一人にして初代会長を務めた「ムハル・リチャード・エイブラムス(Muhal Richard Abrams」の名に出会い、その人はジャズ・ピアニストでもあることを知る。

ムハルは1930年生まれ。生きておれば今年88歳。惜しくも昨年10月に逝去している。ビ・バップからハードバップ時代に若き日を過ごした筈なんだが、彼の得意ジャンルは「フリー・ジャズ」。しかし、ムハルのピアノは、安易にフリーに流れることなく、クールな構築美を漂わしつつ、モダン・ジャズ基調なオーソドックスなタッチが個性。
 

Sightsong

 
Muhal Richard Abrams & Malachi Favors『Sightsong』(写真左)。1975年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Muhal Richard Abrams (p,syn), Malachi Favors (b)。デュオ演奏ではあるが、ベースのマラカイ・フェイヴァースも素晴らしいプレイを聴かせてくれるが、この盤はリーダーのムハル・リチャード・エイブラムスのピアノの印象がとても強い。

最終曲「Unitry(dedicated to the Aacm)」、サブタイトルが「AACMに捧ぐ」のこの曲のみが、いかにも1970年代フリージャズといった風情のアブストラクトな演奏。他の曲は、クールな構築美を漂わせたオーソドックスなタッチのピアノがメイン。そのオーソドックスなタッチのピアノが、時にモンクの様に「飛んだり跳ねたり」するフレーズを叩き出したりする。これが面白い。

普通のオーソドックで端正なジャズ・ピアノでは無い。時にモンクの様に、時にマルの様に、飛んだり跳ねたり、叩き続けたりするが、決してフリー・ジャズに流れない。これだけ自由度の高い、オーソドックスなジャズ・ピアノの演奏はなかなか他に無い。こういうピアノ盤が1970年代半ばに録音されていたことにちょっと驚く。メインストリームなジャズはいつの時代にも「生きていた」のだ。

 
 

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2018年4月 7日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・117

ジャズ・ボーカリストは星の数ほどいるが、ジャズ・コーラス・グループは数が少ない。メジャーな存在になって、ジャズの歴史に名を残したジャズ・コーラス・グループは両手の数ほどである。そんなジャズ・コーラス・グループの中で、僕が愛して止まないのが、「マンハッタン・トランスファー(Manhattan Transfer)」。長いグループ名なので以下「マントラ」と略しますね。

マントラは米国のジャズ・コーラス・グループ。男性2名+女性2名の4名構成。卓越したボーカル技術とハーモニーで、フュージョン・ジャズ系のボーカル・コーラスを展開する。純ジャズ系でないところが、僕にとっての最大の「愛すべきポイント」で、様々な音楽ジャンルの楽曲をジャズ・コーラスに変えて、素敵なフュージョン・ジャズとして、小粋にクールに聴かせてくれる。

今日聴いたマントラは、Manhattan Transfer『Swing』(写真左)。1997年の作品。モダンジャズのスタンダード曲でも無く、米国ポップスのヒット曲でも無く、1920〜30年代に流行したジャズのスタイルである「スイング・ジャズ」の楽曲をチョイスして、ジャズ・コーラスとしてアレンジして聴かせてくれる。これが、とっても良い出来なのだ。
 

Mantra_swing  

 
まず、スイング時代の楽曲をチョイスしたところがミソ。ダンス・ミュージックの起源とも評されるスイング・ジャズ、その名の通り、スイング感が抜群なのだ。つまり、スイング時代の楽曲って、ジャズ・コーラスに不可欠のスイング感が既に備わっている。そして、この盤の収録に選ばれたスイング時代の楽曲の旋律がとっても良い。どれもが、ダンサフルでポップでメロディアス。

加えて、スイング時代の楽曲は、カウント・ベイシーやベニー・グッドマン、グレン・ミラーなど、ジャズ・オーケストラでの演奏を前提としていて、ユニゾン&ハーモニーを取りやすいアレンジがなされている。このジャズ・オーケストラの演奏をジャズ・コーラスにしっかりと置き換えて、ユニゾン&ハーモニーの響きを最大限の増幅させている。

とにかく聴いて楽しいマントラのジャズ・コーラス。しっかりジャジーな要素も踏まえていて、極上のフュージョン系のジャズ・コーラスがとにかく素晴らしい。内容がシッカリとしていて濃いので、聴き始めたら一気に聴き切ってしまう。マントラのジャズ・コーラスの良い面が全て出た傑作盤。僕にとってのマントラ好盤のベスト3に入るお勧め盤である。

 
 

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