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2019年4月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・144

欧州ジャズは、ECM、Steeplechase、Enjaの三大レーベルがメインで発展した来た様に思う。他の欧州のマイナー・レーベルの貢献もあろうかと思うが、米国、そして日本という欧州以外のリージョンについては、やはりこの三大レーベルを介して、欧州ジャズを体験していった様に思う。

地域的にはコペンハーゲンを中心とする北欧ジャズと欧州に移り住んだ米国ジャズメン達のジャズが大半だったという思い出が強い。しかし、この10年間のうちに欧州ジャズの出身地が急速に拡がってきている。第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズが我が国にもやってきて、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている。

Simple Acoustic Trio『Habanera』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Marcin Wasilewski (p), Sławomir Kurkiewicz (b), Michał Miśkiewicz (ds)。Simple Acoustic Trioとは、ポーランド・ジャズ界を代表するピアニスト、マルチン・ボシレフスキを中心とする、純ポーランドなピアノ・トリオである。
 
 
Habanera-simple-acoustic-trio  
 
 
ベタなトリオ名からして、大スタンダード曲中心のカクテル・ピアノっぽいトリオ演奏かしら、と訝しく思いながら、聴き始めると「あらビックリ」。俗っぽさなど微塵も無い。欧州ジャズらしい流麗なメロディ、透明感溢れるサウンド。北欧ジャズとの違いは哀愁感溢れるマイナーでエコーたっぷりな響きが希薄なところ。意外と質実剛健なところが見え隠れする、ロマンチックなピアノ・トリオ演奏。
 
欧州ジャズの共通項としてロマンティックではある。が、意外と硬派で質実剛健なところを加味した音が、ポーランド・ジャズの個性だろうと感じている。最初はロマンに流されるか、と心配になるが、そこにコーンとドラムが入り、ブンブンとベースが引き締めれば、グッと硬派なエッジの立った、上質で流麗な、明確で一本筋の通ったタッチが清々しいピアノの響きが現れる。
 
静的なフレーズが全体を覆うのだが、適度なテンションを保ったインタープレイとニュー・ジャズ特有のファンクネス希薄で自由度の高いビートが意外とホットで、飽きるどころか、聴けば聴くほどに奥の深い演奏に思わず聴き入ってしまう。ジャケットも思いっきり欧州ジャズ風で趣味の良いもの。これは絶対にジャズ喫茶でかけたい盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月23日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・143

久し振りに良い雰囲気のジャズ・ギターを聴いた気がする。Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズギタリスト。今、NYで最も注目される若手ギタリストの一人。情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。
  
現代のNYのジャズのトレンドの1つに「イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンの台頭」がある。アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)、オマー・アヴィタル(Omer Avital)、エリ・デジブリ(Eli Degibri)、オズ・ノイ(Oz Noy)、サム・ヤエル(Sam Yahel)等々、優れた新しい個性のジャズメンがどんどん出てきた。今回のギラッド・ヘクセルマンもそんな中の一人である。
  
Gilad Hekselman『Ask for Chaos』(写真左)。昨年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g)をメインに、Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) ="gHex Trio"と、Aaron Parks (p,keys), Kush Abadeyb (ds, pads)="ZuperOctave" の2つのユニットを曲によって使い分けている。
  
 
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ヘクセルマンが自分のレーベルを立ち上げ、リリースした意欲作、3年振り、6作目のリーダー盤である。この最新盤は自らのレーベルからのリリースである。自分の表現したいジャズを存分に展開している様に感じる。彼のエレギの音を聴いての印象は「パット・メセニーとジョンスコを足して2で割った様な」個性に、端正なアドリブ・フレーズとほんのり明るく「くすんだ」トーン。
  
2つのユニットの使い分けが功を奏している。"gHex Trio"の演奏はシンプルで瑞々しく豊かな色彩感と情緒豊かでネイチャー風。心地良い透明感溢れる演奏は明らかに新しいイメージ。"ZuperOctave"での演奏は先鋭的な、現代ジャズの最先端な切れ味の良い演奏が展開される。ヘクセルマンは切れ味良く、少し捻れた浮遊感溢れるギターを弾きまくる。しかし、この2つの全く異なる個性的な演奏をヘクセルマンのギターがしっかりと統括する。 
 
2つのユニットの混在でありながら、アルバム全体に溢れる統一感。ECMレーベルの音世界に通じるものはあるが、欧州ジャズのウェット感は皆無で、乾いたクリスタルなトーンは新しい米国のコンテンポラリー・ジャズの音世界を感じる。ヘクセルマンのお陰で、久し振りに新しいジャズ・ギターに出会った気分。現在、僕がカート・ローゼンウィンケルと併せて、興味を持って聴いている、お気に入りのギタリストです。
 
 
 
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2019年3月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・142

ピアノ・トリオはいつ聴いても楽しい。簡単そうに見えて、結構、弾きこなすに難しい、打楽器と旋律楽器の両方の性質を持つ楽器のピアノ。この難物楽器のピアノがメインに、これまた、リズム楽器と旋律楽器の両方の性質を持つベースが絡み、究極の打楽器のドラムがリズム&ビートを担う。いわゆる「職人集団」のパフォーマンス。これが聴いていて楽しい理由。

Jason Lindner, Giulia Valle, Marc Ayza『1,2,3, Etc.』(写真左)。2001年12月3&4日、バルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Jason Lindner (p), Giulia Valle (b), Marc Ayza (ds)。ピアノのジェイソン・リンドナー、どこかで聴いた名だなあ、と調べてみたら、デヴィッド・ボウイ『★(ブラックスター)』に参加した気鋭の鍵盤奏者でした。

まず、そのジェイソン・リンドナーのピアノが印象深い。耽美的ではあるが力感溢れる明快なタッチ。ハンマー打法を彷彿とさせるパーカッシヴな左手。強弱、抑揚、明暗と複雑な表現をシンプルに弾きこなす右手。躍動感溢れ、逆に暖かな繊細さとの対比が見事。久々に注目のピアニストやなあ、と当時感心したものです。
 

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ジュリア・ヴァーレは女流ベーシスト。僕は最初「女流」と聞いてビックリした。この盤を聴いたら判るのだが、ベースがゴリゴリ、ブンブン、思いっきり胴鳴りしている。鋼のしなりの様なベース弦の響きも生々しい。こんなベースを聴いて、これ「女流ベーシストやで」と言われたら、え〜っ、となりまっせ(笑)。ファンクネスが希薄なので、出身はどこかな、と調べたら、イタリアのサンレモでした。納得です。

マーク・アイザのドラミングはユニーク。ちょっとラフに構えたグルーヴ感は独特のスイング感と疾走感を与えてくれます。この人のドラミングにもファンクネスが希薄というか皆無。堅実で強烈なオフビートに裏打ちされたポリリズム。それでいて、しっかりリズム&ビートの筋が一本通っている。じっくり聴き耳立てていると、更にその素晴らしさが判る、そんな職人芸的な玄人好みのドラミング。出身はバルセロナとのこと。これも納得ですね。

この盤の選曲については、セロニアス・モンク、マッコイ・タイナー、クレア、フィッシャー、スティービー・ワンダーなどの作品を取り上げていて、ジェイソン・リンドナーのピアノの個性の源を感じさせてくれます。エレピも弾いていて、変に難しくせず、シンプルで良好。いや〜、この『1,2,3, Etc.』、なかなか聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。ジャケットもジャズらしからぬ可愛いイラスト。これも良し(笑)。

 
 
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2019年2月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・141

「ジャケ買い」という言葉があるが、この盤は僕にとってまさに「ジャケ買い」盤。このアルバムのリーダーであろう人物の、座った迫力のあるイラストが思いっきり目を引く。「Quintet」の文字でこの盤はジャズ盤だと想像出来る。とすると、この盤の内容って、意外と骨太で硬派でゴリゴリした純ジャズじゃないか、と思ったら、思わず手にしていた。

The Dave Bailey Quintet『Two Feet in The Gutter』(写真左)。1961年10月6日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Ben Tucker (b), Dave Bailey (ds), Billy Gardner (p), Frank Haynes (ts), Bill Hardman (tp)。パーソネルを見渡すと、決して、当時のスター・プレイヤーではないのだが、当時の中堅どころが大集合。

冒頭の「Comin' Home Baby」は、ベースのベン・タッカーの曲。元ジャズ・メッセンジャーズのトランペッター、ビル・ハードマンで軽快にスタート。フランク・ヘインズの雰囲気あるテナーも良い感じ。リーダーのデイブ・ベイリーのドラムが、演奏のリズム&ビートをさりげなくビシッと決めて、ああ、雰囲気のある踊れるハードバップではないか。
 

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デイブ・ベイリー。1926年2月の生まれ。米国ヴァージニア州出身。1950年代に入って、ハードバップ初期の頃より、頭角を現し、様々な一流ジャズメンとの共演を果たしている。1954〜68年まで、14年間、ジェリー・マリガンのグループで活躍しましたが、惜しくも1969年、ジャズ界より引退。1973年からニューヨークで音楽教育に携わっていますが、主だった活動はしていません。

彼のドラミングは、派手さは全く無いのですが、堅実で職人肌の「粋」なドラミング。この『Two Feet in The Gutter』でも、全編に渡って、良質で洗練されたハードバップを聴かせてくれていますが、もちろん、リーダーのデイブ・ベイリーのドラミングに依るところが大きいですね。これだけ、ドラミングが演奏全体の雰囲気をコントロールしているアルバムはあまりないのではないか、と思います。

ハービー・マンやメル・トーメ等でもおなじみのダンス・ジャズ・クラシックな曲を渋く、粋に演奏しているところが堪らない。ベン・タッカーのベースがさりげなくブンブン響いて、ベイリーの小粋なドラミングと相まって、とてもジャジーでハードバップなグルーヴ感を醸し出しています。あまり、ジャズ紹介本などではそのタイトルが挙がらない盤ですが、ハードバップ後期の隠れ好盤でしょう。

 
 
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2019年2月16日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・140

このピアニストも「レジェンド」である。1941年10月生まれ、キューバ出身のジャズ・ピアニスト。「神の手」といわれる超絶技巧なテクニック。カリビアンの血が成せる躍動感あるリズム。キューバ出身だからといって、躍動感溢れる下世話なリズム&フレーズばかりでは無い。クラシックの要素も取り込んだ繊細かつ情熱的なメロディーがアースティックな雰囲気を醸し出す。なかなかに隅に置けないジャズ・ピアノ。

そのレジェンド級のピアニストとは「Chucho Valdés(チューチョ・ヴァルデス)」。アフロ・キューバンなフュージョン・バンド「イラケレ」のリーダーでもある。先に書いた様にテクニック申し分なく、カリビアンの血が成せる躍動的なリズム、明るく明快な激しいタッチと繊細なフレーズが個性的なジャズ・ピアノなんだが、我が国では実に人気が無い。その名もマイナー。ジャズ・ピアニストの一覧に載っていなかったりする。

Chucho Valdés『Jazz Batá 2』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chucho Valdés (p), Yelsy Heredia (b), Dreiser Durruthy Bombalé (batás, vo), Yaroldy Abreu Robles (per)。解説を読むと「今作は1972年リリースのチューチョの小グループでのリーダー作『Jazz Batá』のコンセプトを再確認、新たに練り直し作品にしたもの」だそうだ。まず、僕はこの『Jazz Batá』を知らない。よって、この盤を純粋にジャズ・ピアノの好盤として聴いてみたい。
 

Jazz_bata_2  

 
ちょっと不思議な響きの打楽器の音が聴こえる。バタドラムというキューバの両面太鼓、これをリズム&ビートの基としている。パーソネルを見渡すと、確かにドラマーの名前が無い。このバタドラムのビートが独特のリズムのうねりを生み出している。この独特のリズム&ビートをバックに、ヴァルデスの超絶技巧かつパーカッシヴなピアノが絡む。米国ジャズには無い、ラテンな躍動感。

しかし、ヴァルデスのピアノはラテンな躍動感に留まらない。フリー・インプロな要素あり、モーダルなコンテンポラリー・サウンドに展開したり、ポリリズミックな連打が出てきたと思ったら、ゆったりとリラックスしたラテン調になったりと、実に多彩でアーティスティックである。ヴァルデスのピアノが、これだけ伝統的でメインストリームなジャズ・ピアノ志向だとは思ってもみなかった。少なからず感動した。

キューバ出身でありながら、ゴスペル調、マンボ調、サルサ調にも展開するところは、まさに「ジャズは融合の音楽である」ということを思い出させてくれる。アフロ・キューバンなピアノ・ジャズだからといって、俗っぽいなんてことは全く無い。逆にアーティスティックですらある。21世紀に入ってから、僕はヴァルデスのピアノに出会ったが、これは幸せなことであった。今回の新盤を聴いて、その意を改めて強くした。好盤である。

 
 
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2019年2月 7日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・139

ハードバップは演奏時間が長くなった分、それぞれの楽器の演奏を心ゆくまで堪能できる様になった訳だが、加えて、演奏のアレンジにも腕を振るうことが出来るだけの演奏時間の余裕が出来た。ビ・バップの様に短い演奏であれば、アレンジの腕を振るう余裕はほとんど無いのだが、演奏時間が長くなると、様々なアレンジのアイデアを盛り込むことが出来るのだ。

Bob Brookmeyer『The Street Swingers』(写真左)。1957年12月の録音。ちなみにパーソネルは、    Bob Brookmeyer (valve-tb, p), Jim Hall, Jimmy Raney (g), Bill Crow (b), Osie Johnson (ds)。バルブ・トロンボーンにギターが2台、そして、ベースとドラム。ピアノはトロンボーンのブルックマイヤーが兼任する。かなりチャレンジャブルな構成である。

聴いて見ると、冒頭の「Arrowhead」からチャレンジャブルな展開に思わずニンマリする。トロンボーンとギターが洗練された少ない音で会話を展開する。トロンボーンとギターが洗練された少ない音でユニゾン&ハーモニーを奏でる。トロンボーンとギターが木訥とした少ない旋律でアドリブ展開する。この洗練された少ない音を前提としたアレンジが絶妙である。
 

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ブルックマイヤーは、バルブ・トロンボーン奏者で、ピアノも弾くという才人。加えて、アレンジにも腕を振るうとあって、このアルバムの格調高い室内楽を思わせる上品なアレンジが実にチャレンジャブルで「粋」。音が少ない分、演奏に「間」が出来るのだが、この「間」の存在が絶妙。この「間」が適度な緊張感と適度な余裕をもたらして、聴く耳にとても心地良いインプロビゼーションが展開されている。

ジム・ホールとレイニーのギターも隅に置けない。相対するのがトロンボーンなので、甘い雰囲気に流れていきそうなのだが、ホールとレイニーのギターはそうはいかない。丸いトロンボーンの音に、鋭角に硬派に切れ込むようなフレーズが斬新である。流麗とは正反対の、ゴツゴツとした木訥とした骨太なアドリブ・フレーズ。気合い十分である。

バルブ・トロンボーンにギターが2台がフロントで、アレンジ次第な一枚であるが、この盤は「アレンジの勝利」。ブルックマイヤーの思慮深い、考え抜いたハードバップがとても素敵に響く。このアレンジが1957年に実現されていたことに驚く。ジャズって隅に置けないなあ。バリバリ吹きまくるだけがハードバップでは無い。思慮深い思索に富んだハードバップもある。ハードバップは奥が深い。

 
 
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2019年1月21日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・138

ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)は「玄人好み」のテナー・サックス奏者。小柄ながら豪快且つスピード感あふれる演奏をすることから「リトルジャイアント」と呼ばれている。音は大きくテクニックは一流、シャープでスケールの大きい歌心溢れるフレーズを吹き上げる。基本のスタイルは「ハードバップ」。

これだけの個性豊かで正統派なテナーであれば、人気は高いと思われるのだが、何故か日本では人気はイマイチ。グリフィンがニューヨークに出てきた当時(1956年頃)、NYのテナー・サックス界は、若手有望株として、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンが覇を争っていた訳だが、そこに、グリフィンが参入して、当時の評価としては、グリフィン一番、ロリンズ二番、コルトレーン三番の序列。

日本では、このコルトレーン対ロリンズの対決図式で、テナー・サックスの世界が語られることが多かったんで、NYではこの2人より評価の高かったグリフィンが全く日本では無視された格好になった上に、1960年代以降は、グリフィンは欧州に移住しちゃったんで、日本に余計に情報が入ってこなくなって、まったくマイナーな扱いになったんでしょうね。
 

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Johnny Griffin Quartet『Night Lady』(写真)。1964年2月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Francy Boland (p), Jimmy Woode (b), Kenny Clarke (ds)。ドイツ(ケルン)での録音。1963年以降、欧州に移住したので、この盤は欧州に移住の1年後の録音になります。グリフィンが、クラーク=ボラン・ビッグ・バンドの中核としてバリバリに活動していた頃のワンホーン作。

この盤はグリフィンのテナーを心ゆくまで堪能出来る好盤である。特にスタンダード曲のグリフィンが魅力的。「Summertime」「Little Man You've Had A Busy Day」「All the Things You Are」のグリフィンのテナーから溢れ出る歌心が聴きもの。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも分け隔て無く歌心が溢れ出る。その確かなテクニックと相まって、思わず耳を傾け惹き込まれてしまう。他の3曲も内容は濃く、特にグリフィンのテナーのテクニックの素晴らしさに耳を奪われる。

欧州の移住してからのジョニー・グリフィンのリーダー作には好盤が多い。米国での諸作より欧州での方が、グリフィンの個性と特徴がよても良く表現されていて、良質なジャズ・テナーが体感出来る。その一枚がこの『Night Lady』。録音も良く、是非とも、ジャズ者中堅からベテランの方々に耳を傾けて頂きたいですね。

 
 
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2019年1月 7日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・137

バリトン・サックス(略して「バリサク」)の音が大好きだ。サックスについては、自分でも中学時代、アルト・サックスを吹いていたので、親近感がある。そんな中、好きな順に挙げると、バリトン → アルト → テナー → ソプラノの順になる。バリサクの音は良い。魅力的に響く重低音、肉声に近い、歌心溢れる中高音。

肺活量がかなり必要で、普通の人では吹くのが一仕事のバリサクではあるが、出てくる音は一番サックスらしい、と僕は思っている。そんなバリサクを吹きこなすジャズメンは少ないのだが、何時の時代も必ず、魅力的なバリサク吹きがいる。米国東海岸にも西海岸にも、魅力的なバリサク吹きがいる。今回は、米国西海岸ジャズの魅力的なバリサク吹きの好盤をご紹介する。

Serge Chaloff『Blue Serge』(写真左)。1956年3月14 & 16日。ちなみにパーソネルは、Serge Chaloff (bs), Sonny Clark (p), Philly Joe Jones (ds), Leroy Vinnegar (b)。サージ・チャロフ(Serge Chaloff)は当時では珍しいバリサク吹き。この盤は、サージ・チャロフのバリサクの素晴らしさが体験できる好盤である。
 

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この盤のチャロフのバリサクは「唄うが如く」である。さりげなく、あっさりと心地良く、唄うが如くバリサクを吹く。これが実に良い。「歌心溢れるブロウ」というのは、このチャロフのバリサクの形容にピッタリ。楽器の図体が大きく、吹き回しに結構苦労するバリサクなんだが、チャロフは事も無げに、さり気なく、流麗なフレーズを「唄うが如く」吹き上げていく。

バックのソニー・クラークのピアノも良い音出している。僕はソニー・クラークのピアノが好きで、この盤でも暫く聴いていて、「このピアノって、ソニクラちゃう」と思った。この時期のクラークのピアノの特徴は、ジャストかやや前ノリで、そういう点ではソニクラと思わないのだが、ソニクラのピアノの特徴である「粘っこく転がすようなコンピング」がこの盤でも聴くことが出来る。そこで、これはソニクラやなあ、と思うのだ。

そんな絶妙なバッキングをウケて、チャロフはバリサクを魅力的に吹き上げていく。米国西海岸での録音が故、ウエストコースト・ジャズの雰囲気が芳しい。演奏のアレンジも秀逸で、それぞれのメンバーのアドリブ展開も小粋である。バリサクという重たい楽器を、重さをまったく感じさせずに、軽やかに流麗に吹き上げる。そんなチャロフがめっちゃ魅力的である。

 
 
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2018年12月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・136

大寒波が来襲している。ここ千葉県北西部地方は朝から猛烈な北風。朝の気温は2度程度なんだが、風が強いので体感気温は氷点下。昨日まで、意外と長閑な気温だったので、この気温の急変にはビックリ。もちろん術後の体はついていかない。何となく体調が優れないまま、年末の買い物や病院通いで、ほぼ一日の半分が潰れた。落ち着いて音楽を聴ける状態になったのは夕方、日が暮れてからである。

つい最近のことであるが、なかなか小粋で端正なピアノ・トリオに出会った。トリオ演奏の雰囲気は三者対等のインタープレイがメインで、これってビル・エヴァンスかなあ、とも思ったが、ビル・エヴァンスよりもファンクネスが強く、ブルージーなピアノの響きが耳に残る。これは、ビル・エヴァンスでは無い。では誰なのか。

そのタッチは切れ味は良いが、ガーンゴーンといった叩く印象は無い。鍵盤をしっかりと押さえつつ、流麗なフレーズを紡ぎ出すさまは誰なのか、思いもつかない。判らない。誰なんだ、このピアノは。加えて、ベースは堅実なビートを供給しつつ、バリエーション豊かなアドリブ・レースを繰り出している。ドラムもふるっていて、自由度の高いフレーズを繰り出しつつ、リズム&ビートの根底をしっかりと押さえている。なかなかの内容のピアノ・トリオではないか。
 

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Shirley Scott『Blues Everywhere』(写真左)。1991年11月22日、ニューヨークはバードランドでのライブ録音。新生キャンディド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shirley Scott (p), Arthur Harper (b), Mickey Roker (ds)。パーソネルを見てやっと、この魅力的なピアノが、シャーリー・スコットなのが判った。けど、シャーリー・スコットはオルガン奏者じゃなかったのか、と思いつつ、このライブ盤でのスコットのピアノって絶品なのだから、思わず納得。

アーサー・ハーパーというベーシストは知らなかった。でも、紡ぎ出されるベースの音は、どこかエディ・ゴメスを想起させる。繊細なゴメスという感じ。ドラムはミッキー・ローカーでした。繊細さとダイナミズムを併せ持ち、結構、テクニックを駆使して、自由度の高いリズム&ビートを供給する。このベースとドラムのリズム隊は「職人芸」が滲み出る、玄人好みなもの。このリズム隊のリズム&ビートだけでも「聴きもの」である。

従来からのピアノ・トリオのメインストリームなスタイルと展開を押さえていて、実に粋である。正統派な音世界ではあるが、レトロな響きに傾くこと無く、1990年代のネオ・ハードバップな音の響きに通じているところに感心する。1950年代のハードバップ時代のオルガニストが、ピアノ・トリオな演奏に真摯に取り組んだ、繰り返し聴いても飽きの来ない好盤です。
 
 
 
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2018年11月29日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・135

21世紀も既に20年が経とうとしている。21世紀に入ってもジャズは深化している。そして、最近ではスピリチュアル・ジャズが気になっている。昔はフリー・ジャズとスピリチュアル・ジャズはイコールだと思っていた。しかし、今は違う。最低限の決め事の中で、感情とテクニックの赴くままに吹きまくるのがフリー・ジャズ。フレーズに印象的なものは「まず無い」。

スピリチュアル・ジャズはしっかりとした決め事に則って、限りなく自由度の高い演奏の中で、フレーズが印象的で官能的。しっかりとした決め事のメインは「モード」、ところどころでアブストラクトに陥るが、決してフリー・ジャズに帰結することは無い。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」で聴く者に訴求する。

そんな中、なかなか素敵な「現代のスピリチュアル・ジャズ」の好盤に出会った。Mats Gustafsson & Otomo Yoshihide's New Jazz Quintet 『ONJQ Live In Lisbon』(写真左)。大友良英ニュー・ジャズ・クインテット(以降ONJQ)のライブ盤。2004年リスボンで行われた、現時点でONJQの最後になるライブ演奏を捉えたもの。ちなみに「Lisbon」は国内の喫茶店の名前。ポルトガルの首都では無い(笑)。
 

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ちなみにパーソネルは、大友良英 (g), マツ・グスタフソン (ts, bs), 津上研太 (ts, ss), 水谷浩章 (b), 芳垣安洋 (ds, tp)。基本はモード。限りなく自由度の高いモーダルなアドリブ・フレーズが美しい。そこにアブストラクトな展開が入ってくるが、決して、そのままフリーに走ることは無い。再び、自由度の高いモーダルな演奏に立ち戻り、そのフレーズは印象的であり官能的である。

つまりは「耳に馴染む」のだ。自由度が高いのでフリーの様に聴くに疲れるフレーズがやってくるのか、と構えていると、モーダルだが耳に馴染む、どこか感傷的な、どこかエモーショナルなアドリブ・フレーズが流麗に流れ込む。リズム・セクションも力任せに自由に叩きまくることは無く、調性豊かにワイルドでありながら、ほど良くラフに整えられたリズム&ビートを効果的に供給する。

そして、大友良英のギターとグスタフソンのサックスがスピリチュアルな雰囲気を増幅する。これだけ自由度の高い演奏でありながら、耳に馴染み、心に印象的に響く。現代のスピリチュアル・ジャズの演奏の良好な先駆的演奏がここにある。2004年にもう既に新しいタイプのスピチュアル・ジャズが展開されていたとは。目から鱗、いや、耳から鱗とはこのことである(笑)。

 
 

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