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2017年2月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・101

外ではちょっと強めではあるが、暖かい雨が降っている。温かい雨。いよいよ春が近づいてきたなあ、という実感が嬉しい。今年の冬は寒かったからね。こういう暖かいワクワクする雨の日には、ポジティブな、切れ味の良いハードバップ、ストレートアヘッドなジャズ盤が良い。

この盤の存在を知った時、やはり老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けないなあと思った。とてもブリリアントに気持ち良く鳴る、切れ味の良いトランペット。小気味良く躍動感のあるリズム・セクション。そのトランペットのリーダーの名を聞いて、どっかで聞いた名前なんだが、と首を捻ったのが2年前。

Charles Tolliver『The Ringer』(写真左)。1969年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Tolliver (tp), Stanley Cowell (p), Steve Novosel (b), Jimmy Hopps (ds)。盟友カウエルらとのカルテット編成。そうか、ピアノはカウエルか。どうりで、モーダルな響きがすると思った。
 

The_ringer

 
この盤、とにかくトリバーのトラペットが素敵。とっても良く鳴るトランペットで、実にクリアな響きなのだ。こんなに伸びの良い、気持ち良く鳴るトランペットは他にありそうで無い。全編、気持ち良く鳴って格好良い。こういうシンプルに素敵なトランペットはなかなか無い。

カウエルのピアノも素敵だ。聴けば判るが、当時として明らかに新しい音がする。ハードバップなピアノ・フレーズとは確実に一線を画する、モーダルで個性的な和音の重ね方がユニークだ。そんな新しいストレートアヘッドなフレーズがバックに鳴り響く。このバックのリズム・セクションの音だけでも「聴きもの」だ。

こういうアルバムを、ヒョコッと紹介してくれるのだから、老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けない。いや〜、勉強になりました。そう、チャールズ・トリバーって、ジャッキー・マクリーンのグループへの参加でデビューを果たしていて、ブルーノートにその演奏を残していたことを思い出しました。他のアルバムも早速聴いてみようと思います。

 
 

震災から5年11ヶ月。決して忘れない。まだ5年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年2月10日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・100

このアルバムは良い。聴いていてとても楽しい。しかも、聴いていて、双方のテクニックが優れていて、双方のアドリブ感覚が素晴らしい、ということが良く判る。ジャズって、聴いていて楽しいことがとっても大事。そういう意味では、このアルバムはジャズとして「満点」である。

Eddy Louiss & Michel Petrucciani『Conférence De Presse... L'Intégrale』(写真左)。  Eddy Louiss (org), Michel Petrucciani (p)。1995年、フランスは Dreyfus Jazz からのリリース。ありそうでなかなか無いオルガンとピアノのデュオ。

オルガンとピアノ。どちらも鍵盤楽器。鍵盤楽器同志がデュオをやったら、変に被ったらデュオの良さがすっ飛んでしまう。テクニックが優秀で、アドリブ展開での反応が優れていないと上手くいかない。そういう意味で、アドリブ展開の反応がとびきり優れているオルガン奏者って、なかなかいない。

Eddy Louiss(エディ・ルイス)は、フランスのオルガン奏者。僕はこのデュオ盤で、エディ・ルイスの存在を知った。テクニック優秀、オルガンの奏法として、かなりプログレッシブなオルガニストである。オーソドックスな奏法からアブストラクトな奏法まで、幅広くオールマイティーに弾きまくる、実に優れたオルガン奏者である。
 

Conference_de_presse

 
そんなエディ・ルイスが、ジャズ・ピアノの巨匠、ミシェル・ペトルチアーニとデュオを組んで、丁々発止とやりあう、ほんと、聴いていてとても楽しいデュオ盤である。ボリューム的にCD2枚組の分厚さ。トータル2時間ちょっとの収録時間なのだが、全く飽きない。聴き始めて、あっと言う間の2時間ちょっとである。

ピアノは打楽器と旋律楽器の両方を兼ねることが出来、ピアノだけで「ひとりオーケストラ」が出来る位の幅広い表現が可能な唯一の楽器なのだが、ペトルチアーニのピアノは、そのピアノの特性を最大限引き出し最大限の表現を見せつける。硬質なタッチに卓越したテクニック。耽美的でありつつダイナミズム満載。僕の大のお気に入りのピアニストの一人である。

ペトルチアーニのピアノが、ピアノの表現方法の全てを出しつつ、思いっきり疾走する。左手でベースラインを小粋に紡ぎ、右手でリズム&ビートを叩き出す。遠慮の無い全てを出し尽くペトルチアーニのピアノ。そこにルイスのオルガンが、あっさりとしたファンクネスを滴らせながら、官能的に弾き進んで行く。相性抜群。インタープレイの息もピッタリ。魅惑的なユニゾン&ハーモニー。

飽きない。全く飽きない。あっと言う間の2時間ちょっと。この優れたデュオ盤を聴いて、フランスは Dreyfus Jazz を改めて見直す。ジャズ喫茶の空間にピッタリの乾いたファンクネスが素敵な一枚。ジャズ喫茶御用達の一枚。

 
 

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2017年2月 6日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・99

ジャズのアルバムって、なにも1950年代から1960年代のジャズ・ジャイアント達の定盤ばかりが好盤ではない。ジャズの裾野は広い。優秀な一流ジャズメンの数は意外と多い。何気なくダウンロード・サイトなどを彷徨っていると、これは、と思わず口元綻ぶ好盤に出会うことがよくある。

英国ジャズのアルバム・カタログを手にダウンロード・サイトを彷徨っていて、John Taylor(ジョン・テイラー)というピアニストに出会った。どこかで聞いたことのある名前やなあ、とつらつら記憶を辿っていたら、そうでした、ECMで素敵なアルバムを出しているピアニストであることを思い出した。

ジョン・テイラーは、1942年英国マンチェスター生まれ。惜しくも2015年に鬼籍に入りました(72歳没)。そうそう、僕はこのジョン・テイラーについては、1973年の作品『 Decipher(邦題:覚醒)』が愛聴盤だったことも思い出しました。明確に欧州的な、しっかりした骨太のタッチでありながら、リリシズム溢れるピアノが個性。
 

Whiripool1

 
そんな彼の2007年リリースの盤にバッタリと出会った。John Taylor『Whirlpool』(写真左)。ピアノ・トリオ盤である。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p), Palle Danielsson (b), Martin France (ds)。ベースが、これまたECM御用達のベーシスト、パレ・ダニエルソンである。このトリオ盤、きっと内容は良いぞ、と期待する。

リリカルで耽美的な、豊かな響きの流麗なピアノ。骨太でソリッドなアコースティック・ベースが唸りを上げてベースラインを支える。そして、そこに切れ味の良くエッジの立った、とってもテクニック豊かなドラムがビートを供給する。ファンクネスはほぼ皆無。透明感溢れる旋律。明らかに欧州的な音世界。

ピアノ、ベース、ドラムが対等に渡り合う、丁々発止と繰り広げられるインタープレイが素晴らしい。全8曲、全編計55分の長さですが、決して飽きない、どころかあっと言う間の55分です。適度なテンション、緩みの無いアドリブ展開、豊かな曲想の収録曲。それらが相まって、聴きどころ満載の好盤に仕上がっています。

 
 

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2017年1月12日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・98

ジャズって、有名なジャズメンもいれば、そうでない、知る人ぞ知るジャズメンもいれば、全く無名のジャズメンもいる。それでは、有名なジャズメンだけが良い演奏をするのか、と言えばそうでは無く、知る人ぞ知るジャズメンだって、全く無名のジャズメンだって、これはっ、と驚くほどの好演を残している場合も多々ある。

そういうところがジャズの不思議で面白いところで、有名なジャズメンではないから、とスルーすると残念なことになってしまうこともある。まあ、ジャズ者初心者の頃は「有名なジャズメン」中心に「推薦盤」を攻めるのが安心で良いだろう。しかし、ジャズ者ベテランの域に差し掛かると、知る人ぞ知るジャズメンに触手を伸ばして、ジャズの奥深さを感じるのも良い経験である。

さて、そんな「知る人ぞ知る」ジャズメンの一人が「Wardell Gray」=ワーデル・グレイ。ファッツ・ナヴァロなど初期ビ・バップ中で、早くからテナー・サックスをプレイしていた男。1921年生まれ。1955年5月、34歳の若さで亡くなった天才テナー奏者である。活動期間は約10年程度。40年代末にデクスター・ゴードンとバンドを組んでテナー・バトルを繰り広げたころ、全米では大変な人気があったそうだ。

生涯、リーダー作は約20枚ほど残してはいるようだが、ジャズ盤紹介本に出てくるアルバムは、ほぼ「これだけ」と言ってもよいだろう。というか、僕はこの盤しか所有していない。『Wardell Gray Memorial, Vol. One and Two』(写真)。

このメモリアル盤は、ジャズ盤紹介本に時々出てくる。ジャズを聴き初めて2年位、僕も彼の名前はジャズ盤紹介本で知った。しかし、この「メモリアル・アルバム」をレコード屋で見かけたことは無い。この「メモリアル・アルバム」を手にすることが出来る様になったのは、CDで復刻されてから。それまでは「幻の名盤」扱いだった。
 

Wardell_gray_memorial

 
ワーデル・グレイのテナーは、太すぎず細すぎず、良い音で鳴る。ああ、テナー・サックスが心地良く鳴っているなあ〜、って心から感じる。そして、アドリブ・フレーズが良い。イマージネーション豊かに、唄うが如く、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。加えて、ビ・バップ奏者ならではの躍動感が良い。

そんなワーデル・グレイのテナーを心ゆくまで楽しめるアルバムがこの『Wardell Gray Memorial, Vol. One and Two』の2枚。ワーデル・グレイを偲んで編まれた名演集。録音年は1950年4月25日、1950年8月27日、1952年1月21日の3つに分かれる。録音年によって、録音の音質も変わる。

このメモリアル・アルバムの録音の音質が良好なトラックのワーデル・グレイが好きだ。彼のテナーの特質である、太すぎず細すぎず、良い音で鳴るところが心底楽しめる。音質が良いので、イマージネーション豊かに唄うが如くのアドリブ・フレーズを心から堪能出来る。音質が良いので、ビ・バップ奏者ならではの躍動感もダイレクトに伝わってくる。

僕は、このメモリアル・アルバムの録音の音質が良好なトラックをチョイスして、iTunesでプレイリストを組んで、ステレオで聴くのが最近のトレンド。といって、音質がイマイチのトラックも、イマージネーション豊かに唄うが如くのアドリブ・フレーズについては十分に味わえる。同じ曲のテイク違いも沢山入っているが、アドリブ・フレーズのバリエーションが豊かなので飽きることは無い。

知る人ぞ知るテナー奏者、ワーデル・グレイ。彼のテナーを味わう最適な「メモリアル・アルバム」の2枚。さり気なく、ジャズ喫茶で流すというシチュエーションが良い感じですね。

このアルバムの収録の最後の年、1952年の3年後、1955年5月25日に巡業先のラスベガスの郊外で変死体となって発見されることになる。死因はオーバードーズ。ジャズメンによくありがちな最期であるが、惜しいテナーマンを早々に亡くしたもんだ。ジャズ界には往々にある悲劇のひとつである。 

 
 

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2017年1月 4日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・97

2017年になりました。明けましておめでとうございます。今年もバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

今回は初めて、年末から年始にかけてブログをお休みしました。年末は30日から年始は3日まで、生産的なことは何もせず、ノンビリと過ごしました。音楽もあんまりガツガツ聴くことをせず、聴きたいなあ、と思ったアルバムを幾つか、ノンビリ聴いただけ。

そんな中に、久し振りに聴いたアルバムがあった。これが聴く度に「ジャズ」を強烈に感じるアルバムで、時ある毎に聴いていた時期があった。スイング感、アドリブの流麗さ、ブロウの迫力、ブラスの響き、ユニゾン&ハーモニー、どれをとっても「ジャズやな〜」と強烈に感じることが出来るアルバムである。

Duke Ellington & Johnny Hodges『Back To Back (Duke Ellington And Johnny Hodges Play The Blues)』 (写真左)。

あのデューク・エリントン楽団の総帥とその主要メンバーで「モダン・ジャズ」を演る、「ハードバップ」を演る、という小粋な企画盤である。1959年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Johnny Hodges (as), Harry "Sweets" Edison (tp), Les Spann (g), Al Hall (b, tracks 1 and 4), Sam Jones (b, tracks 2, 3, 5, 6, 7), Jo Jones (ds)。
 

Back_to_back

 
冒頭の「Wabash Blues」を聴くだけで、思いっきりジャズを感じることが出来る。特に、ジョニー・ホッジスのアルトの吹き上げの音がたまらない。この音が「モダン・ジャズ」である。そして、ハリー・エディソンのトランペット。このトランペットの音も良い。バイタルでブラスの響きが芳しいトランペット。「ああ、ジャズやなあ」としみじみ思ってしまう。

デューク・エリントンのピアノも良い。ガーンゴーンと出しゃばることが決して無い、趣味の良い小粋なバッキング。右手のパランポロンと単音の響きが美しい。そこに、寄り添うようにポーンと入ってくる左手。この音を聴けば、これってデュークか、と何と無く判る、それほど個性的なピアノ。さすがである。

フロントを鼓舞し支える、モダンなリズム&ビートを供給するジョー・ジョーンズのドラムも聴き物だ。そうそう、アル・ホールとサム・ジョーンズで分担するベースも堅実。そして、このアルバムにリズムの彩りを添えてくれるのが、レス・スパンのギター。スバンのリズム・ギターが、このアルバムのリズム&ビートを色彩豊かにしている。

ジャズの雰囲気、ジャズの楽しさ、ジャズの魅力をストレートに伝えてくれる好盤である。アルバム全体に蔓延するブルースの響き。聴いていて気持ち良く心地良い。こういうアルバムから新年をスタートする。粋である。

 
 

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2016年12月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・96

ジャズ・トランペットの「隠れ好盤」を聴き直している。このアルバムは、意外とジャズ盤の紹介本には載らない。けど、ジャズ者中堅からベテランの方々は、この盤の渋さを良く知っている。

Kenny Dorham『Matador』(写真左)。1962年4月の録音。パーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Teddy Smith (b), J.C. Moses (ds)。リーダーのドーハム、アルトのマクリーン、フロントの2人は強力。この二人のバックに、ピアノのティモンズは珍しい。ベースとドラムの二人は玄人好み。

この幾何学模様の様なジャケットがちょっと問題なのかも知れない。ジャズ臭が希薄なのだ。恐らく、ジャズ者初心者の方々は、なかなか触手が伸びないだろう。まさか、この盤が、なかなかのハードバップな内容だとは、なかなか聴く前は想像できない。

オープニングのエキゾティックな5拍子の「El Matador」が良い。これを聴けば、もうこの盤の内容は保証されたも同然。アルバム全体に漂うスパニッシュ・ムードが心地良い。この盤でのドーハムは吹けている。ドーハムはアルバムによってバラツキがあるんだが、この盤は良い、吹けている。
 

Matador

 
聴いていて清々しい気持ちになる。どこを取っても、どこを聴いてもハードバップ。1962年、時はハードバップ成熟期を経て、ボサノバ・ジャズやファンキー・ジャズが、そして、最新鋭のジャズとして、モード・ジャズが流行りだした頃。そんな時代に、このアルバムは、思いっきり成熟したハードバップを聴かせてくれる。

マクリーンも好調だ。モード・ジャズにも果敢にチャレンジしていたマクリーンだが、この盤のブロウを聴くと、やはり、マクリーンにはハードバップが良く似合う。でも、よく聴くと、意外とところどころにモーダルに吹きまくるマクリーンがいたりして、これはこれでなかなか面白い。ジャズは生きている、ジャズは進化しているなあ、と感じます。

この盤はどうもジャケットで損をしている。どう見たってハードバップな感じがしないもんなあ。よって、ジャズ紹介本にもなかなか載らない。見栄えがせんもんなあ。以前より、ジャズ喫茶で良く聴かれる隠れ好盤だ、と聞かされてきましたが、至極納得です。しかし、思い切って手を出して聴けば、「当たり」な内容に思わず、感嘆の声を上げてしまいます(笑)。

 
 

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2016年12月 3日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・95

季節は秋から冬に変わる。ここ千葉県北西部地方では、もう最低気温が4〜7度、最高気温が10〜14度。これだけ気温が下がると、いよいよ純ジャズ、しかも、バリバリ吹きまくるトランペットを愛でる季節である。相当にハードなブロウも心地良く感じる季節である。

昨日の続き。今日はハードなブロウなトランペットを聴く。この人のトランペットを初めて聴いた時は「なんて五月蠅いトランペットだ」と無碍無く思った。が、歳を重ねていくにつれ、この人のトランペットは素晴らしい、と思うようになった。テクニックが高く、歌心が溢れている。そんなハードヒッターなトランペッターはライブ盤が良い。

Hannibal Marvin Peterson『Hannibal in Berlin』(写真左)。1976年11月のベルリンジャズフェスティバルでのライブ録音。パーソナルは、Hannibal Marvin Peterson (tp), George Adams (ts), Michael Cochrane (p), Diedre Murray (cello), Steve Neil (b), Allen Nelson (ds)。

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン。ギル・エヴァンス・オーケストラのレギュラー・トランペッターとしても活躍、「トランペットのコルトレーン」「ジャズ・トランペット界のモハメッド・アリ」とも称されるトランペット奏者である。1948年11月生まれなので、今年で68歳になるが、最近は主だった活動はしていない。

さて、この『Hannibal in Berlin』である。冒頭の曲は「The 23rd Psalm(賛美歌第23番)」。賛美歌からスタートするのか、と思って油断して聴くと、思わず仰け反ります。いきなりソロでブリブリブリと、疾走するかの如く吹き上げるハンニバル。本当にこれ原曲って賛美歌か。熱い、熱すぎる。しかもハイ・テクニック。思わずスゲ〜と感心することしきり。
 

Hannibal_in_berlin

 
続く曲は「Willow Weep for Me」。な〜んだ、2曲目でもうバラードチックな緩やかな曲を吹いて、聴衆を和ませる手か、と思いきや、これがまたまた熱い、熱すぎる。この曲をですね、こんなに熱く吹き上げて疾走してしまって良いんでしょうか(笑)。こんなにぶっ飛んだ「柳よ泣いておくれ」を聴いたことが無い。でも五月蠅くない。なんか爽やか。これもアリかな、って思ってしまう位の説得力。

3曲目「Bessie's Blues」は普通のブルース曲ですが、まだまだ疾走します。聴いている方は全く休む時間が無い。4曲目の「Swing Low Sweet Chariot」は黒人霊歌。ロックではエリック・クラプトンがレイドバックしてノンビリ歌っていましたが、ここでは、まず、チェロとベースのデュオから始まりつつ、いい具合に揺れるテンポに乗りつつ、ハンニバルのペットがブヒャ〜。熱い、熱過ぎるペットが疾走する。

そして、ラスト「My Favorite Things」。もうここまで来たら、最後まで熱くブワ〜とやっちゃって下さい。で、全メンバー、ブリブリと熱く熱く疾走します。しかも、アレンジも決まってるし、アドリブ・フレーズも決まっている。コルトレーンのバージョンを超えているんやないか、と思いつつ、ハンニバルのペットの吹き上げに大喝采です。

ジャズにムーディーな要素や静謐感を求める向きには、絶対にお勧め出来ないライブ盤です(笑)。しかし、この熱い熱いブロウ、熱い熱い演奏がジャズの良いところでもあります。このライブのメンバーそれぞれ、テクニックが高く、ハイテンションな高速な演奏が耳触りにならないところが凄い。好盤です。

 
 

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2016年12月 2日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・94

初夏から真夏にかけて、晩夏から秋にかけては、もちろん気温が高い。しかも湿度も高い。そういう季節に純ジャズ、特にバリバリ吹きまくるトランペットは全く「合わない」。暑い、暑すぎる。聴いているだけで汗が噴き出てきて「バテる」そして「疲れる」(笑)。

しかし、季節は秋から冬に変わる。ここ千葉県北西部地方では、もう最低気温が4〜7度、最高気温が10〜14度。これだけ気温が下がると、いよいよ純ジャズ、しかも、バリバリ吹きまくるトランペットを愛でる季節である。相当にハードなブロウも心地良く感じる季節である。

まずは、丸くてゆったり朗々と鳴るトランペット盤から、とくれば「アート・ファーマー」だろう。Art Farmer『Yesterday's Thoughts』(写真左)。1975年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Ceder Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。アルバム・ジャケットはチープだが、スルーしてはいけない。

日本のレーベル、イースト・ウィンドからのリリース。日本のレーベルから、と聴けば、日本人好みの絵に描いた様なハードバップ、大スタンダード大会の企画盤かあ、と眉をひそめたくなるが、この盤は違う。アート・ファーマーの丸くてゆったり朗々と鳴るフリューゲル・ホーンをグッとしっかり聴かせてくれる。
 

Yesterdays_thoughts

 
丸くてゆったり朗々と鳴るフリューゲル・ホーンなので、甘ったるい雰囲気にならないか、と不安になるが、そうはならない。このワンホーン・カルテット、毅然と誠実にメインストリーム・ジャズをやっている。切れ味良く整然と、活き活きと優しく、小粋で個性的なハードバップをやっている。

選曲もまた良し。誰もが聴いたことがある選曲、平々凡々とした「大スタンダード大会」にはなっていない。ちょっと捻りを効かせた、ちょっとマニアックなスタンダード曲の選曲がニクい。制作側のプロデュースの勝利であろう。このちょっとマニアックなスタンダード曲を、職人芸よろしく「しっくりと」聴かせてくれる。

バックのピアノ・トリオが良い。1970年代、ジャズメンとして旬な時期を迎えていたピアニストのウォルトン、ベーシストのサム・ジョーンズ、そして、ドラマーのヒギンス。このリズム・セクションの音が素晴らしく良い。こんなリズム・セクションがバックに控えているのである。ファーマーは安心して、朗々とフリューゲル・ホーンを吹きまくる。

フリューゲル・ホーンの音の良さがダイレクトに伝わってくる好盤です。しかも録音が良い。ファーマーのフリューゲル・ホーンの音がグッと前面に出てくるような、中音域の豊かなサウンドは実にグッド。オーディオ的に録音の良さでも楽しめるお勧め盤です。

 
 

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2016年10月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・93

ジャズ者を40年以上やっているのだが、ジャズ者になった時から、マイルス・デイヴィスが大好きである。とにかく、ジャズ者になってから、ずっと機会があるごとにマイルスを聴いてきた様な気がする。もはやマイルス無しでは、ジャズ者としての生活は語れない状態であり、暫くマイルスを聴かないと「マイルス禁断症状」が出てくる(笑)。

で、最近、マイルスと御無沙汰で、ちゃっかり「マイルス禁断症状」が出てきたので、慌ててマイルス盤を選盤する。若き日のマイルスを選盤。珍しいマイルスのワンホーン盤である。

Miles Davis『The Musings of Miles』(写真左)。プレスティッジの7007番。1955年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Red Garland (p), Oscar Pettiford (b), Philly Joe Jones (ds)。

1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバー、ピアノのガーランドとドラムのフィリージョーの名が見える。実はまだこのアルバムの録音時点では、あの伝説の1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバーとして、マイルスと長くやっていく事をまだ知らない。しかし、この二人とマイルスとの相性は既に抜群。

不思議なことに、マイルスについては、マイルスのトランペット、ワンホーンのアルバムが少ない。というか、ほとんど無い。というか、この『The Musings of Miles』のみではないか、と思う。実際、マイルスが公式に録音したリーダーアルバムの中では、唯一のワンホーンカルテット作品。
 

The_musings_of_miles

 
で、これが「良い」。マイルスはワンホーンの時にはワンホーンとして、マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様に吹く。そして、アレンジも同様。マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様なアレンジが施されている。

加えて、ワンホーンならではの「効果的なアドリブ・フレーズ」「印象的なアドリブ・フレーズ」が満載。もうマイルスだけが目立ってしまう、マイルスだけが印象に残るイメージ。さすが「我らがマイルス」である。素晴らしい、実に素晴らしい。

なぜか世間では評価が低いアルバムである。が、マイルス者からすると、結構、このアルバム、ポイントが高いのではないか。マイルスとして珍しいワンホーン盤で、マイルスの個性、マイルスの演奏の意図が手に取るように判る。マイルスの考え方が結構読み取れる。そんな「マイルス者にとってマストアイテム」な盤である。

上品で豊かで心地良い音色。ひたすらスイングし、ひたすら唄う様にアドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。マイルスのトランペットのベーシックな姿。マイルスの個性の判り易いサンプル。このマイルスの唯一のワンホーンは「マイルス者の我々にとって宝のアルバム」。

 
 

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2016年10月20日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・92

米国西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)は馴染みが無かった。というか、僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半、日本は東海岸の黒人ジャズ一辺倒。そして、フュージョン・ジャズの大ブーム。米国西海岸ジャズのアルバムなんて、通常のレコード屋には全く置いてなかった。

1991年の事であった、と記憶している。『スイングジャーナル・プレゼンツ〜ザ・ウエスト・コースト・ジャズ』なるオムニバスCD盤が発売された。タイトル通り、もちろん、老舗ジャズ雑誌スイング・ジャーナルの記事とのタイアップである。僕は、このオムニバスCD盤を通じて、初めて、米国西海岸ジャズにまともに触れた。

さて、僕はこのアルバムの良さが判らなかった。初めて聴いたのが1980年。例の「秘密の喫茶店」で聴かせてもらった。ほどよく、優れたアレンジに乗った、白人のジャズだということは感じ取れた。理路整然としていて破綻が無い。クールで爽快。東海岸ジャズを聴き馴れた耳には、何故か物足りない、と感じた。若さ故の過ちであった。

そのアルバムとは『Quartet: Russ Freeman/Chet Baker』(写真)。1956年11月の録音。真っ赤なバックに、チェット・ベイカーとラス・フリーマンの線画のイラストがとってもお洒落な盤である。この素晴らしい好盤が、1980年、ジャズを聴き始めて3年目の耳には、物足りない、と聴こえたのである。あぁ、穴があったら入りたい(笑)。

今の耳には、そんなことは全く無い。このアルバムは演奏的には、西海岸ジャズらしからぬ、硬派で尖った切れ味鋭いもの。アレンジが効いた聴き心地の良い、ライトなジャズでは全く無い。東海岸ジャズ顔負けの切れ味の鋭いアドリブ・プレイ。豪快な展開。これが米国西海岸ジャズなのか、と思わず、パーソネルを再確認してしまう。
 

Quartet_russ_freeman_chet_baker

 
そのパーソネルは、Chet Baker (tp), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。う〜ん、米国西海岸ジャズの名うての名手達が集結したカルテット構成。う〜ん、なんと素晴らしい布陣であろうか。

チェットのトランペットが凄い。マイルス顔負け。というか、音色はマイルスそっくり。しかし、切れ味と迫力という点ではマイルスを凌駕する。若さ「はち切れん」ばかりのブリリアントさ。人気という面でマイルスと双璧と謳われたチェット・ベーカーがこの盤に「いた」。チェットの伝説的な「トランペットの凄さ」が体感できる。

ラス・フリーマンのピアノも良い。こんなに多弁に弾きまくるピアニストとは思わなかった。ビ・バップのように多弁であるが、音の選択、音の展開が理知的で理路戦前としている。そこが東海岸ジャズのピアニストとは異なる。豪快に弾き回していても、お洒落な感覚は変わらない。これぞ、米国西海岸ジャズのピアノである。

そして、もう一つ。ラス・フリーマンのアレンジが良い。米国西海岸ジャズの面目躍如。このフリーマンの優れたアレンジがあるからこそ、このアルバムの中の演奏の全てが映える。アレンジされたジャズなんて、というジャズ者の方々がいるが、それは違う。アレンジもジャズのテクニック、じゃず演奏の必須要素の一つである。

ジャケット良し、演奏良し、音良し。揃いも揃った三拍子。好盤です。米国西海岸ジャズを感じるのにうってつけ、米国西海岸ジャズの入門盤としても最適な「好盤中の好盤」です。

 
 

震災から5年7ヶ月。決して忘れない。まだ5年7ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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