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2019年2月16日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・140

このピアニストも「レジェンド」である。1941年10月生まれ、キューバ出身のジャズ・ピアニスト。「神の手」といわれる超絶技巧なテクニック。カリビアンの血が成せる躍動感あるリズム。キューバ出身だからといって、躍動感溢れる下世話なリズム&フレーズばかりでは無い。クラシックの要素も取り込んだ繊細かつ情熱的なメロディーがアースティックな雰囲気を醸し出す。なかなかに隅に置けないジャズ・ピアノ。

そのレジェンド級のピアニストとは「Chucho Valdés(チューチョ・ヴァルデス)」。アフロ・キューバンなフュージョン・バンド「イラケレ」のリーダーでもある。先に書いた様にテクニック申し分なく、カリビアンの血が成せる躍動的なリズム、明るく明快な激しいタッチと繊細なフレーズが個性的なジャズ・ピアノなんだが、我が国では実に人気が無い。その名もマイナー。ジャズ・ピアニストの一覧に載っていなかったりする。

Chucho Valdés『Jazz Batá 2』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chucho Valdés (p), Yelsy Heredia (b), Dreiser Durruthy Bombalé (batás, vo), Yaroldy Abreu Robles (per)。解説を読むと「今作は1972年リリースのチューチョの小グループでのリーダー作『Jazz Batá』のコンセプトを再確認、新たに練り直し作品にしたもの」だそうだ。まず、僕はこの『Jazz Batá』を知らない。よって、この盤を純粋にジャズ・ピアノの好盤として聴いてみたい。
 

Jazz_bata_2  

 
ちょっと不思議な響きの打楽器の音が聴こえる。バタドラムというキューバの両面太鼓、これをリズム&ビートの基としている。パーソネルを見渡すと、確かにドラマーの名前が無い。このバタドラムのビートが独特のリズムのうねりを生み出している。この独特のリズム&ビートをバックに、ヴァルデスの超絶技巧かつパーカッシヴなピアノが絡む。米国ジャズには無い、ラテンな躍動感。

しかし、ヴァルデスのピアノはラテンな躍動感に留まらない。フリー・インプロな要素あり、モーダルなコンテンポラリー・サウンドに展開したり、ポリリズミックな連打が出てきたと思ったら、ゆったりとリラックスしたラテン調になったりと、実に多彩でアーティスティックである。ヴァルデスのピアノが、これだけ伝統的でメインストリームなジャズ・ピアノ志向だとは思ってもみなかった。少なからず感動した。

キューバ出身でありながら、ゴスペル調、マンボ調、サルサ調にも展開するところは、まさに「ジャズは融合の音楽である」ということを思い出させてくれる。アフロ・キューバンなピアノ・ジャズだからといって、俗っぽいなんてことは全く無い。逆にアーティスティックですらある。21世紀に入ってから、僕はヴァルデスのピアノに出会ったが、これは幸せなことであった。今回の新盤を聴いて、その意を改めて強くした。好盤である。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2019年2月 7日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・139

ハードバップは演奏時間が長くなった分、それぞれの楽器の演奏を心ゆくまで堪能できる様になった訳だが、加えて、演奏のアレンジにも腕を振るうことが出来るだけの演奏時間の余裕が出来た。ビ・バップの様に短い演奏であれば、アレンジの腕を振るう余裕はほとんど無いのだが、演奏時間が長くなると、様々なアレンジのアイデアを盛り込むことが出来るのだ。

Bob Brookmeyer『The Street Swingers』(写真左)。1957年12月の録音。ちなみにパーソネルは、    Bob Brookmeyer (valve-tb, p), Jim Hall, Jimmy Raney (g), Bill Crow (b), Osie Johnson (ds)。バルブ・トロンボーンにギターが2台、そして、ベースとドラム。ピアノはトロンボーンのブルックマイヤーが兼任する。かなりチャレンジャブルな構成である。

聴いて見ると、冒頭の「Arrowhead」からチャレンジャブルな展開に思わずニンマリする。トロンボーンとギターが洗練された少ない音で会話を展開する。トロンボーンとギターが洗練された少ない音でユニゾン&ハーモニーを奏でる。トロンボーンとギターが木訥とした少ない旋律でアドリブ展開する。この洗練された少ない音を前提としたアレンジが絶妙である。
 

The_street_swingers

 
ブルックマイヤーは、バルブ・トロンボーン奏者で、ピアノも弾くという才人。加えて、アレンジにも腕を振るうとあって、このアルバムの格調高い室内楽を思わせる上品なアレンジが実にチャレンジャブルで「粋」。音が少ない分、演奏に「間」が出来るのだが、この「間」の存在が絶妙。この「間」が適度な緊張感と適度な余裕をもたらして、聴く耳にとても心地良いインプロビゼーションが展開されている。

ジム・ホールとレイニーのギターも隅に置けない。相対するのがトロンボーンなので、甘い雰囲気に流れていきそうなのだが、ホールとレイニーのギターはそうはいかない。丸いトロンボーンの音に、鋭角に硬派に切れ込むようなフレーズが斬新である。流麗とは正反対の、ゴツゴツとした木訥とした骨太なアドリブ・フレーズ。気合い十分である。

バルブ・トロンボーンにギターが2台がフロントで、アレンジ次第な一枚であるが、この盤は「アレンジの勝利」。ブルックマイヤーの思慮深い、考え抜いたハードバップがとても素敵に響く。このアレンジが1957年に実現されていたことに驚く。ジャズって隅に置けないなあ。バリバリ吹きまくるだけがハードバップでは無い。思慮深い思索に富んだハードバップもある。ハードバップは奥が深い。

 
 
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2019年1月21日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・138

ジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)は「玄人好み」のテナー・サックス奏者。小柄ながら豪快且つスピード感あふれる演奏をすることから「リトルジャイアント」と呼ばれている。音は大きくテクニックは一流、シャープでスケールの大きい歌心溢れるフレーズを吹き上げる。基本のスタイルは「ハードバップ」。

これだけの個性豊かで正統派なテナーであれば、人気は高いと思われるのだが、何故か日本では人気はイマイチ。グリフィンがニューヨークに出てきた当時(1956年頃)、NYのテナー・サックス界は、若手有望株として、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンが覇を争っていた訳だが、そこに、グリフィンが参入して、当時の評価としては、グリフィン一番、ロリンズ二番、コルトレーン三番の序列。

日本では、このコルトレーン対ロリンズの対決図式で、テナー・サックスの世界が語られることが多かったんで、NYではこの2人より評価の高かったグリフィンが全く日本では無視された格好になった上に、1960年代以降は、グリフィンは欧州に移住しちゃったんで、日本に余計に情報が入ってこなくなって、まったくマイナーな扱いになったんでしょうね。
 

Night_lady

 
Johnny Griffin Quartet『Night Lady』(写真)。1964年2月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Francy Boland (p), Jimmy Woode (b), Kenny Clarke (ds)。ドイツ(ケルン)での録音。1963年以降、欧州に移住したので、この盤は欧州に移住の1年後の録音になります。グリフィンが、クラーク=ボラン・ビッグ・バンドの中核としてバリバリに活動していた頃のワンホーン作。

この盤はグリフィンのテナーを心ゆくまで堪能出来る好盤である。特にスタンダード曲のグリフィンが魅力的。「Summertime」「Little Man You've Had A Busy Day」「All the Things You Are」のグリフィンのテナーから溢れ出る歌心が聴きもの。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも分け隔て無く歌心が溢れ出る。その確かなテクニックと相まって、思わず耳を傾け惹き込まれてしまう。他の3曲も内容は濃く、特にグリフィンのテナーのテクニックの素晴らしさに耳を奪われる。

欧州の移住してからのジョニー・グリフィンのリーダー作には好盤が多い。米国での諸作より欧州での方が、グリフィンの個性と特徴がよても良く表現されていて、良質なジャズ・テナーが体感出来る。その一枚がこの『Night Lady』。録音も良く、是非とも、ジャズ者中堅からベテランの方々に耳を傾けて頂きたいですね。

 
 
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2019年1月 7日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・137

バリトン・サックス(略して「バリサク」)の音が大好きだ。サックスについては、自分でも中学時代、アルト・サックスを吹いていたので、親近感がある。そんな中、好きな順に挙げると、バリトン → アルト → テナー → ソプラノの順になる。バリサクの音は良い。魅力的に響く重低音、肉声に近い、歌心溢れる中高音。

肺活量がかなり必要で、普通の人では吹くのが一仕事のバリサクではあるが、出てくる音は一番サックスらしい、と僕は思っている。そんなバリサクを吹きこなすジャズメンは少ないのだが、何時の時代も必ず、魅力的なバリサク吹きがいる。米国東海岸にも西海岸にも、魅力的なバリサク吹きがいる。今回は、米国西海岸ジャズの魅力的なバリサク吹きの好盤をご紹介する。

Serge Chaloff『Blue Serge』(写真左)。1956年3月14 & 16日。ちなみにパーソネルは、Serge Chaloff (bs), Sonny Clark (p), Philly Joe Jones (ds), Leroy Vinnegar (b)。サージ・チャロフ(Serge Chaloff)は当時では珍しいバリサク吹き。この盤は、サージ・チャロフのバリサクの素晴らしさが体験できる好盤である。
 

Blue_serge_chaloff  

 
この盤のチャロフのバリサクは「唄うが如く」である。さりげなく、あっさりと心地良く、唄うが如くバリサクを吹く。これが実に良い。「歌心溢れるブロウ」というのは、このチャロフのバリサクの形容にピッタリ。楽器の図体が大きく、吹き回しに結構苦労するバリサクなんだが、チャロフは事も無げに、さり気なく、流麗なフレーズを「唄うが如く」吹き上げていく。

バックのソニー・クラークのピアノも良い音出している。僕はソニー・クラークのピアノが好きで、この盤でも暫く聴いていて、「このピアノって、ソニクラちゃう」と思った。この時期のクラークのピアノの特徴は、ジャストかやや前ノリで、そういう点ではソニクラと思わないのだが、ソニクラのピアノの特徴である「粘っこく転がすようなコンピング」がこの盤でも聴くことが出来る。そこで、これはソニクラやなあ、と思うのだ。

そんな絶妙なバッキングをウケて、チャロフはバリサクを魅力的に吹き上げていく。米国西海岸での録音が故、ウエストコースト・ジャズの雰囲気が芳しい。演奏のアレンジも秀逸で、それぞれのメンバーのアドリブ展開も小粋である。バリサクという重たい楽器を、重さをまったく感じさせずに、軽やかに流麗に吹き上げる。そんなチャロフがめっちゃ魅力的である。

 
 
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2018年12月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・136

大寒波が来襲している。ここ千葉県北西部地方は朝から猛烈な北風。朝の気温は2度程度なんだが、風が強いので体感気温は氷点下。昨日まで、意外と長閑な気温だったので、この気温の急変にはビックリ。もちろん術後の体はついていかない。何となく体調が優れないまま、年末の買い物や病院通いで、ほぼ一日の半分が潰れた。落ち着いて音楽を聴ける状態になったのは夕方、日が暮れてからである。

つい最近のことであるが、なかなか小粋で端正なピアノ・トリオに出会った。トリオ演奏の雰囲気は三者対等のインタープレイがメインで、これってビル・エヴァンスかなあ、とも思ったが、ビル・エヴァンスよりもファンクネスが強く、ブルージーなピアノの響きが耳に残る。これは、ビル・エヴァンスでは無い。では誰なのか。

そのタッチは切れ味は良いが、ガーンゴーンといった叩く印象は無い。鍵盤をしっかりと押さえつつ、流麗なフレーズを紡ぎ出すさまは誰なのか、思いもつかない。判らない。誰なんだ、このピアノは。加えて、ベースは堅実なビートを供給しつつ、バリエーション豊かなアドリブ・レースを繰り出している。ドラムもふるっていて、自由度の高いフレーズを繰り出しつつ、リズム&ビートの根底をしっかりと押さえている。なかなかの内容のピアノ・トリオではないか。
 

Blues_everywhere_shirley_scott

 
Shirley Scott『Blues Everywhere』(写真左)。1991年11月22日、ニューヨークはバードランドでのライブ録音。新生キャンディド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Shirley Scott (p), Arthur Harper (b), Mickey Roker (ds)。パーソネルを見てやっと、この魅力的なピアノが、シャーリー・スコットなのが判った。けど、シャーリー・スコットはオルガン奏者じゃなかったのか、と思いつつ、このライブ盤でのスコットのピアノって絶品なのだから、思わず納得。

アーサー・ハーパーというベーシストは知らなかった。でも、紡ぎ出されるベースの音は、どこかエディ・ゴメスを想起させる。繊細なゴメスという感じ。ドラムはミッキー・ローカーでした。繊細さとダイナミズムを併せ持ち、結構、テクニックを駆使して、自由度の高いリズム&ビートを供給する。このベースとドラムのリズム隊は「職人芸」が滲み出る、玄人好みなもの。このリズム隊のリズム&ビートだけでも「聴きもの」である。

従来からのピアノ・トリオのメインストリームなスタイルと展開を押さえていて、実に粋である。正統派な音世界ではあるが、レトロな響きに傾くこと無く、1990年代のネオ・ハードバップな音の響きに通じているところに感心する。1950年代のハードバップ時代のオルガニストが、ピアノ・トリオな演奏に真摯に取り組んだ、繰り返し聴いても飽きの来ない好盤です。
 
 
 
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2018年11月29日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・135

21世紀も既に20年が経とうとしている。21世紀に入ってもジャズは深化している。そして、最近ではスピリチュアル・ジャズが気になっている。昔はフリー・ジャズとスピリチュアル・ジャズはイコールだと思っていた。しかし、今は違う。最低限の決め事の中で、感情とテクニックの赴くままに吹きまくるのがフリー・ジャズ。フレーズに印象的なものは「まず無い」。

スピリチュアル・ジャズはしっかりとした決め事に則って、限りなく自由度の高い演奏の中で、フレーズが印象的で官能的。しっかりとした決め事のメインは「モード」、ところどころでアブストラクトに陥るが、決してフリー・ジャズに帰結することは無い。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」で聴く者に訴求する。

そんな中、なかなか素敵な「現代のスピリチュアル・ジャズ」の好盤に出会った。Mats Gustafsson & Otomo Yoshihide's New Jazz Quintet 『ONJQ Live In Lisbon』(写真左)。大友良英ニュー・ジャズ・クインテット(以降ONJQ)のライブ盤。2004年リスボンで行われた、現時点でONJQの最後になるライブ演奏を捉えたもの。ちなみに「Lisbon」は国内の喫茶店の名前。ポルトガルの首都では無い(笑)。
 

Onjq_live_in_lisbon  

 
ちなみにパーソネルは、大友良英 (g), マツ・グスタフソン (ts, bs), 津上研太 (ts, ss), 水谷浩章 (b), 芳垣安洋 (ds, tp)。基本はモード。限りなく自由度の高いモーダルなアドリブ・フレーズが美しい。そこにアブストラクトな展開が入ってくるが、決して、そのままフリーに走ることは無い。再び、自由度の高いモーダルな演奏に立ち戻り、そのフレーズは印象的であり官能的である。

つまりは「耳に馴染む」のだ。自由度が高いのでフリーの様に聴くに疲れるフレーズがやってくるのか、と構えていると、モーダルだが耳に馴染む、どこか感傷的な、どこかエモーショナルなアドリブ・フレーズが流麗に流れ込む。リズム・セクションも力任せに自由に叩きまくることは無く、調性豊かにワイルドでありながら、ほど良くラフに整えられたリズム&ビートを効果的に供給する。

そして、大友良英のギターとグスタフソンのサックスがスピリチュアルな雰囲気を増幅する。これだけ自由度の高い演奏でありながら、耳に馴染み、心に印象的に響く。現代のスピリチュアル・ジャズの演奏の良好な先駆的演奏がここにある。2004年にもう既に新しいタイプのスピチュアル・ジャズが展開されていたとは。目から鱗、いや、耳から鱗とはこのことである(笑)。

 
 

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2018年11月23日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・134

ジャズ・ヴァイブのレジェンドと言えば、まずは「ミルト・ジャクソン(Milt Jackson)」。ジャジーでブルージーなヴァイブが身上で、テクニックは優秀、ファンクネス溢れるアドリブ・フレーズが最大の個性。伝説のカルテット、Modern Jazz Quartet(MJQ)の一員でも有名で、アーティステックでブルージーなヴァイブはMJQ、ファンクネス溢れる流麗なヴァイブはソロで、というのが定番。どちらが優秀ということでは無い。どちらもミルトの個性である。

そんなミルトの個性がふんだんに発揮された隠れ好盤がある。Milt Jackson & Ray Charles『Soul Brothers』(写真左)と『Soul Meeting』(写真右)。ソウル・ミュージックの大御所シンガー、レイ・チャールズとのコラボ盤である。『Soul Brothers』が1958年、『Soul Meeting』が1961年のリリースになる。このコラボ盤、ミルト・ジャクソンのヴァイブの個性を最大限に引き出しているのだ。

ソウル・ミュージックの大御所シンガーのレイは、ピアノとアルト・サックスでの参戦がメイン。1958年の『Soul Brothers』では正にアコピとエレピ、そしてアルト・サックスでの参戦でボーカルは全く無い。いわゆる、ジャズメン、レイ・チャールズとして、ジャズ・ヴァイブのレジェンドであるミルトと対峙している。で、これがまた絶品で、レイのジャズメンとしての才能も類い希なものがあったのだ。
 

Milt_jackson_ray_charles  

 
1961年の『Soul Meeting』では、レイはアコピとボーカルでの参戦だが、ボーカルは全く控えめ。レイはピアニストとして、ミルトのヴァイブに対峙する。これがまた相性抜群で、二人の楽器演奏の底に流れる「ジャジー・ブルージー・ファンクネス」が共通の個性として共鳴し、増幅されるのだろう。2枚とも演奏される曲はブルースがメイン。こってこてファンキーでブルージーな演奏ばかりで思わずウットリ聴き惚れる。

そんな音環境での演奏である。ミルトのヴァイブもファンクネス全開。ソロ演奏での最大の個性である「ファンクネス溢れる流麗なヴァイブ」が炸裂している。決して、前に出るような派手なパフォーマンスでは無いんだが、クールに熱気溢れるアドリブ展開で、レイのブルージーなピアノに完全フィットするのだ。この二人、よほど相性が良かったんだろうなあ。聴いていてどこかウキウキしてくる。

バックのジャズメンも燻し銀のジャズ職人揃い。ギターにケニー・バレル、ドラムにコニー・ケイ、ベースにオスカー・ペティフォード。このギターメインのリズム・セクションが実に渋い。特に、ケニー・バレルの漆黒なファンキー・ギターは絶品。ミルトとレイの「ジャジー・ブルージー・ファンクネス」な個性に、しっかりと追従していて素晴らしい。この2枚、我が国ではあまり採り上げられませんが、お勧めの好盤です。

 
 

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2018年11月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・133

ジャズ・ギターについてはムーディーでソフトなギターより、パッキパキ、ピッキピキの硬質なギターが好きである。ムーディーでソフトなギターは、どうも聴き続けていると眠くなる。不謹慎ではあるが仕方が無い。硬質なギターの方がアドリブ・フレーズの詳細を追い易い気がするし、演奏の強弱、メリハリを感じやすい様な気がする。

『The Swinging Guitar of Tal Farlow』(写真左)。1956年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Eddie Costa (p), Vinnie Burke (b)。ドラムレスのギター・トリオ編成。僕はこのアルバムに出会って、ギタリストのタル・ファーロウ(Tal Farlow)がお気に入りになった。なんせ、このパッキパキ、ピッキピキの硬質ギターが実に良い。もう快感の域である。

タル・ファーロウは米国ノースカロライナ州出身のギタリスト。1954年に初リーダー作を発表後、1958年まで活動。何枚かの好盤をリリースしたが、結婚を機に地元に戻り、演奏活動からは退く。しかし、その10年後、1968年のニューポート・ジャズ・フェスティバルで復帰。その後は地道に活動を継続し、1998年7月、NYにて逝去している。
 

The_swinging_guitar

 
タル・ファーロウのリーダー作に凡作は無い。どのアルバムを聴いても、タル・ファーロウの硬質ギターを堪能することが出来る。この盤も例に漏れず、タル・ファーロウの硬質ギターが素晴らしい。まず、テクニックが優秀。どの演奏を取ってみても、流麗かつダイナミック。しかもアドリブ・フレーズが印象的。ファンクネスを適度に押さえ、それでいて、アーバンでジャジーな硬質ギターは特筆もの。

が、この『スウィンギング・ギター』は他のどのリーダー作よりも、タル・ファーロウのギターを楽しむ事が出来る。というのも、ピアノのエディ・コスタのピアノが、タルに負けずに硬質で、パッキパキ、ピッキピキのピアノなのだ。このコスタのピアノがタルの硬質ギターとの相性抜群で、タルの硬質ギターがコスタの硬質ピアノのバッキングで増幅されて、とても心地良く響くのだ。

この『スウィンギング・ギター』については、タル・ファーロウのギターの素晴らしさはもとより、このエディ・コスタのピアノも素晴らしい。実によくドライブする硬質ギターが軸となって、アルバム全体にスウィンギーな演奏がギッシリ詰まっている。アドリブ・フレーズは流麗にして難解。難解なんだがあまりに流麗なので、簡単なフレーズを弾き回している、と勘違いしてしまうほど。ジャズ・ギターの入門盤としても最適でしょう。好盤です。

 
 

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2018年11月 6日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・132

最近よく聴くお気に入りのギタリスト、カート・ローゼンウィンケルはサイドマンでのプレイにも光るものがある。基本的に彼のギターは純ジャズ志向なので、結構、他の純ジャズ・セッションに呼ばれることがあるようなのだ。ネットで調べてみたら出てくる出てくる。かなりの数、他流試合に出ているのだ。

Mark Turner『Yam Yam』(写真左)。1994年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Kurt Rosenwinkel (g), Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jorge Rossy (ds)。7曲目の「Zurich」のみ、Seamus Blake, Terence Dean (ts) が加わる。マーク・ターナーの記念すべき初リーダー作。パーソネルを見渡すと、いや〜錚々たるメンバーではないか。現代のネオ・ハードバップの中心ジャズ面がズラリと並んでいる。

このパーソネルを見れば、ジャズ盤のコレクターであれば、思わず触手が伸びる。まず、ギターにカート・ローゼンウィンケル、ピアノにブラッド・メルドー、ベースにラリー・グレナディア、ドラムにホルヘ・ロッシ。メルドーのトリオにローゼンウィンケルがギターで加わる。むっちゃ豪華なバック・メンバーですね。テナーのマーク・ターナーのプレイに期待が集まります。
 

Yam_yam

 
マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。

当アルバム中、唯一のスタンダード曲、コルトレーンの「Moment's Notice」を聴けば、マーク・ターナーのクール・スタイルのテナーとこの途方も無いバック・バンドの新鮮な音世界が体感出来る。コルトレーンのオリジナルとは全く異なったアレンジとアドリブ・アプローチが斬新。確かにコルトレーンの「Moment's Notice」なんだが、音の響きと展開は明らかに「21世紀のネオ・ハードバップ」。

今までに無いハードバップな音と響きが素晴らしい。こういう音を聴くと「やっぱりジャズは深化しているなあ」と心から感じるのだ。今から24年も前の音とは思えない。今の音と言っても十分に通用するほど、新しい響きに満ちたネオ・ハードバップ。聴きどころ満載である。

 
 

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2018年10月16日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・131

最近、ジャズの新盤を聴いていると、意外とソロやデュオという少人数編成の演奏が、以前より目立つようになったと感じている。ジャズの少人数編成って、結構、テクニックを要するフォーマットで、演奏する方は結構大変ではないのかなあ。特にデュオは組む相手との相性の問題もあったり、楽器同士がぶつかり合ったりで、これまた意外と難しい。

Houston person & Ron Carter『Remember Love』(写真左)。2018年3月27日の録音。ベテランのテナー・サックス奏者のヒューストン・パーソンと、ジャズ・ベースのレジェンド、ロン・カーターのデュオ盤。久し振りに「聴いてみてビックリ」。これがまあ、素晴らしい内容のデュオ盤なのだ。

ヒューストン・パーソンは1934年生まれ。今年で84歳。しかし、このデュオ盤のテナーの音を聴けば、84歳の音とは思えない、溌剌していて、しっかりと重心が低く力強いブロウは聴き応え満点。ロン・カーターは1937年生まれ。今年で81歳。実はこのロンのベースの音に一番驚いた。今までのロンのベース音とは全く違う。
 

Remember_love_1

 
まず、ベースのピッチが合っている。実はロンのベースって、ピッチが合っていないことが多く、聴いていて気持ち悪くなることもしばしば。最初は恐る恐る聴いたのだが、この新盤ではこれがバッチリ合っている。力強く、速いフレーズも容易く弾きこなす。切れ味良く、鋼のソリッド感がダイレクトに感じる素晴らしいベース。これがロンとは、最初はにわかに信じ難かった。

そこに、ヒューストンの大らかで緻密で歌心のあるブロウが乗っかるのだ。素晴らしく心地良いデュオ演奏。本作はおなじみのスタンダード曲にそれぞれのオリジナル曲が1曲づつ収録されている。が、やはりスタンダード曲が良い。この途方も無い、素晴らしい内容のデュオ演奏に乗って、スタンダード曲がとても魅力的に聴こえる。

加えて、この盤、音が抜群に良い。調べてみたら、この新盤は、ルディ・ヴァン・ゲルダーの傍らで長年アシスタント・エンジニアを努めていたモーリン・シックラーが担当しているそうだ。この生々しく自然な音の響きは明らかにヴァン・ゲルダー・スタジオの音。高い天井の自然なリバーブが、デュオ演奏というシンプルな少人数編成の音をさらに魅力的なものにしている。ジャズ喫茶で流したい「格好の好盤」。

 
 

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