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2019年6月17日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・150

1960年代の終わり、マイルス・デイヴィスが創造したエレクトリック・ジャズ。今の耳で聴けば、旧来の純ジャズと新しいエレクトリック・ジャズとのバランスが絶妙。今の耳にも古さをあまり感じさせない所以である。最近のエレクトリック・ジャズは、全てが現在の新しい響きのみが満ちていて、旧来のジャズの要素の欠片もない。そういう意味では、旧来からの大ベテランのジャズ者の方々からすると馴染めないものかもしれない。
 
Gilad Hekselman『Further Chaos』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g, b), Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) の「gHex Trio」と Gilad Hekselman (g, b), Aaron Parks (syn,rhodes, p), Kush Abadey (ds) の「ZuperOctave」の2セットの使い分け。リーダーの「ギラッド・ヘクセルマン」は、イスラエル生まれ、NYでの活動がメイン、現在、注目を集めるジャズ・ギタリストの一人である。
 
少しノイジーで芯のあるエレギの音が個性。テクニックは抜群、アドリブ・フレーズはちょっとエスニックで流麗。くすんだエレギの音が独特な、どこか「パット・メセニー」を感じさせる音世界。僕はこのヘクセルマンのエレギが大好きだ。この新盤は全編トータルで40分程度。いわゆるCDサイズの「EP」になる。が、元々、40年ほど前、LP全盛の時代、LPの全編トータルの所要時間は40〜45分程度だったので、このCD-EP盤のトータル40分程度って、馴染みがあって違和感は無い。
 
 
Futher-chaos-gilad-hekselman  
 
 
このアルバムは、リズム&ビートを重要視しているようで、リズム&ビートに新しい響きが充満している。ジャズの命のひとつである「リズム&ビート」。この{リズム&ビート」に相当なレベルの意識を集中していることが聴いていて良く判る。この最新の響きを宿した「リズム&ビート」に乗って、ヘクセルマンのギターが乱舞する。限りなく自由度の高い、整ったフリー・ジャズの様な自由なフレーズの連続。
 
明かな新しい現代の「エレクトリック・ジャズ」である。自作曲はどれも秀逸な内容。これだけ個性の強いギターでありバンドである。自作曲が一番その個性が活きる。個性が手に取るように判る自作曲は楽しい。しかし、この2曲の存在にはビックリした。Weather Reportでのジャコの名演で名高い「Teen Town」のカヴァーが秀逸。エレクトリック・ジャズの楽しさが伝わってくる。
 
そしてラストの「Body and Soul」。この有名なジャズ・スタンダード曲が「ギラッド・ヘクセルマン」の手にかかると、こんなにコンテンポラリーで先鋭的な響きを持つ、現代のエレジャズ曲に変身するとは。驚きである。僅か40分のEPであるが、その内容の濃さはフルサイズのCDアルバムを凌駕する。現代の最先端を行く「エレギがメインのエレクトリック・ジャズ」。いやはや、素晴らしい新盤が出たもんだ。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月 9日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・149

こういうジャズというのが「粋な」ジャズというのだろう。こういうジャズというのが「味のある」ジャズというのだろう。まず、ジャズ盤紹介本などにその名前が挙がることは無い。よって、知る人ぞ知る、存在である。よって、ジャズ喫茶でもほとんどかかることは無い。

しかし、このジャズ盤に詰まっている音は「滋味溢れる」ジャズである。Al Cohn & Jimmy Rowles『Heavy Love』(写真左)。1977 年3月15日の録音。パーソネルは、Al Cohn (ts), Jimmy Rowles (p)。テナーとピアノのデュオである。録音年は1977年。ジャズはフュージョン・ジャズの大流行の時代。そんな時代に純ジャズ、しかも地味なデュオである。
 
だが、冒頭の「Them There Eyes」を聴くと、そんな印象はどっかへ吹っ飛ぶ。この盤に、このデュオに詰まっているのは、正統なモダン・ジャズであり、良質な全くジャズらしい即興演奏の連続である。ある時は寄り沿い、ある時は対峙し、ある時は前へ出て、ある時は後ろに回ってパートナーのソロを盛り立てる。絶妙なデュオ・パフォーマンス。
 
 
Heavy-love-al-jimmy
 
 
アル・コーンは長年ズート・シムズとコンビを組む仲。アル・コーンはズート・シムズに比べると地味で個性が弱い印象だったが、1970年代に入ると、一皮剝けた様に円熟味が加わり、歌心溢れる余裕あるプレイを繰り広げるようになる。そんなアル・コーンがこのデュオ盤に捉えられている。存分にスイングしており、この盤でのブロウはテクニック的にもかなり優秀。
 
片や、ピアノのジミー・ロウルズは我が国ではかなりマイナーな存在。「ジミー・ロウルズって誰?」ていう感じなんですが、そのプレイを聴けば、只者では無いことが直ぐに判ります。1918年生まれなので、この盤を録音した時は69歳。そんな年齢を全く感じさせない、味のある芯の入った温和なピアノを聴かせてくれます。いわゆる「伴奏上手」なピアノです。
 
ジャケットがこれまた良い。味があるモノトーンなジャケット。このデュオの温和で円熟味溢れる、それでいてしっかり芯の入った「粋」なデュオ演奏がきこえて来そうな、味のあるジャケット。Xanaduレーベルの面目躍如。こういうデュオ盤が1977年に録音されていた。そういう事実を知る日本人ジャズ者が少ないのは残念なこと。是非、ご一聴を。
 
 
 
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2019年6月 6日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・148

北欧ジャズについては、僕はECMレーベルを通して体験した。透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。
 
20年前辺りまでは、なかなか欧州のジャズCDが日本にまで流れてくることが少なく、ECMレーベル以外から北欧ジャズのアルバムを聴くことは難しかったが、ネットショッピングやストリーミング配信の発達によって、様々なレーベルの北欧ジャズの好盤が入手可能になった。有り難いことである。

Thomas Clausen『Psalm』(写真左)。1994年6月、デンマークはコペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Thomas Clausen (p), Mads Vinding (b), Alex Riel (ds)。ビル・エヴァンスからの影響を強く感じる耽美的でリリカルなクローセンのピアノ。そこに強靱でしなやかなヴィンディングのアコベが絡み、柔軟度の高い堅実堅牢なリールのドラミングが演奏全体をグッと引き締める。典型的な北欧ピアノ・トリオな音世界。
 
 
Psalm-thomas-clausen
 
 
Storyville Recordsからのリリース。Storyville Recordsは、ジャズの熱烈なファン、Karl Emil Knudsen(カール・エミール・クヌセン) が、1952年、コペンハーゲンにて創立した欧州最古のインディペンデント・ジャズレーベルである。こういう北欧ジャズ盤が入手出来る様になったことは実に喜ばしいこと。
 
冒頭の「Salme」の出だしの透明度の高い、深いエコーを伴ったクローセンのピアノと、これまた切れ味抜群で印象的なエコーを伴ったリールのシンバル音を聴くだけで、「これは北欧ジャズやな」とはっきり判る。それだけ、この北欧ピアノ・トリオ盤、始まりから最後まで、どこから聴いても典型的な「北欧ジャズ」の音が詰まっている。
 
モーダルな展開がメインで、限りなく自由度が高く、躍動感が抜群。ファンクネスは皆無、スイング感も希薄なんだが、しっかりと4ビートも見え隠れして、ハードバップとは全く異なるアプローチなんだが、これもジャズである。いわゆる「欧州のニュー・ジャズ」。米国発祥のジャズとは全く個性が異なる北欧ジャズ。聴けば聴くほどその奥深さは「底無し」である。
 
 
 
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2019年5月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・147

ジャズって歴史が長い分、時に「え〜何、この盤」と歓声を上げてしまうくらいの「幻の名盤」が突然、リイシューされることがある。恐らく、突然マスターテープが発見されたり、突然リイシューの企画が持ち上がったりするのだろう。それでも「幻の名盤」クラスのリイシューである。いったいどれだけの需要があるのだろう。謎である。

今回出会ったリイシュー盤は、Richard "Groove" Holmes『Swedish Lullaby』(写真左)。ジミー・スミス、ジミー・マクグリフなどと並ぶジャズ・オルガンの巨人リチャード・グルーヴ・ホームズがスウェーデンのレーベル〈SISON MUSIC〉に遺したアルバム。オルガン・ジャズ好きには堪らないアルバムのリイシューである。
 
1984年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Richard "Groove" Holmes (org), Edward Lee Layman (ds), Willie Pettis Jr. (g), Willie Akins (ts)。オルガン・ジャズの定番の組合せ、オルガン+ドラムス+テナーサックスにギターが加わった変則カルテット。ギターが入っている分、オルガン・ジャズとしての音世界の幅が拡がっている。
 
 
Swedish-lullaby_richard-holmes
 
 
典型的なオルガン・ジャズ。ファンクネスは適度、すっきりコテコテで耳にもたれない、趣味の良いファンクネス。端正なフレーズ、淡々とシンプルに弾き進める小粋なマナーが素敵である。結構、軽快で疾走感のあるオルガンで、爽快感のあるソウルフルなアドリブ・フレーズを展開する。加えて、この盤に漂うリラックスな雰囲気が、ホームズのオルガンの妙技を際立たせる。
 
冒頭の「Just one of those things」から「Groove's Groove」、そして「One hundred ways」と続く3曲には思わず聴き惚れてしまう。スタンダードから、ミュージシャンズ・チューンズ、そしてソウルフルでフュージョン・ファンクな音世界がとても芳しい。端正で小粋なグルーブ感がホームズのオルガンの「味」。

この盤のプロデューサーであるシグヴァードソンいわく、当時、ホームズはこの盤が自分の全レコーディング中で最大のお気に入りだったそうだ。さもありなん。しかし、それでもこの盤、1984年のリリース時は、スウェーデンで数百枚とリチャード本人が数百枚販売したのみで広く世界には流通しなかった。良い盤が売れるとは限らない。そんな状態の代表的な例がこの『Swedish Lullaby』である。
 
 
 
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2019年4月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・146

ジャズは難しいとか、古いとか、おじん臭いとか言われて久しいが、まだまだ音楽の主要なジャンルとしての地位を維持している。しかも、ネット社会が拡がったおかげだろう、ジャズ・ミュージシャンの出身国も多岐に渡るようになった。ジャズはまだまだ、新しい才能を発掘し続けている。

今回、ご紹介するのは、ハンガリーの俊英ピアニストAron Talas(アーロン・タラス)。ブダペストの生まれ。フランツ・リスト音楽アカデミーで学び、2013年、ハンガリーの国内コンペで「最優秀ジャズ・コンボ賞」、2015年、モントルー・ジャズ・ピアノ・コンペのファイナリストの一人。東欧出身の新進気鋭のピアニストである。

2015年に録音された前作『Floating Island』が好評で、今回のこの盤が待望の新作ピアノ・トリオ作品。Aron Talas Trio『Little Beggar』(写真左)。2017年8月の録音。2018年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Aron Talas (p), Jozsef Barcza Horvath (b), Attila Gyarfas (ds)。ベーシストもドラマーもブタペスト出身、オール・ハンガリーなピアノ・トリオである。
 
 
Little-beggar-aron-talas
 
 
聴いた瞬間「これは」と思った。明らかに正統派、メインストリーム系のピアノ・トリオ。といって、米国ジャズの様なファンクネスは皆無。欧州ジャズらしい、クラシック・ピアノに通じる様な、流麗で洗練されたタッチ。クリスタルな抒情性。加えて、東欧ジャズの特質になるであろう、ちょっとくすんだ様なアーシー感が癖になる。
 
「東欧のビル・エヴァンス」とでも形容したくなるようなリリシズム。卓越したテクニックと表現力で聴き応え抜群のアドリブ・フレーズ。そこに堅実重厚な、これまた正統派アコベのヨーゼフが続き、自由度の高い、ポリリズミックなアッティラのドラムが堅実、確実なリズム&ビートを供給する。実にハイレベルなピアノ・トリオの演奏に思わず聴き入ってしまう。
 
アーロンは20歳台後半、将来を嘱望されつつあるアーロンが、持てる力をフルに発揮。最先端をいく静的な「モーダルでスピリチュアル」な響きを前面に押し出しつつ、その演奏の底にある伝統的なスイング感とのバランスが良好。欧州ならでは、東欧ならではの響きが芳しい。今から次作が期待出来る好盤です。
 
 
 
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2019年4月24日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・145

僕はこのドラマーの音が、このドラマーが創造する音が好きだ。初めて聴いた時からズッとだ。そのドラマーの名前は「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)。1970年7月、米国ルイジアナ州生まれ。現時点で48歳。脂ののりきった中堅ジャズマン。こんなにユニークなドラミングが聴けるとは思ってもみなかった。
 
硬軟自在、変幻自在、緩急自在、音の音色の豊かさ。変な喩えなんだが「パーカッションらしいドラミング」。従来のジャズ・ドラミングに無い、メロディアスなドラミング、とでも表現しようか。とにかく良い意味でユニークなドラミングなのだ。聴いているだけで、これだけ「面白い」ドラミングなのだ。一緒に共演して演奏したら、どれほど楽しいのだろうか。今では「ファースト・コール」ドラマーの一人である。
 
Brian Blade Fellowship『Perceptual』(写真左)。1999年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ac-g, ds, vo), Kurt Rosenwinkel (ac-g, el-g), Christopher Thomas (b, vo), Myron Walden (b-cl, as), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, key), Dave Easley (steel-g), Daniel Lanois (ac-guitar, steel-g), Joni Mitchell – vocals ("Steadfast")。錚々たる同世代がメインのメンバー「Fellowship」。
 
 
Perceptual-brian-blade  
 
 
この『Perceptual』はフェローシップとしての作品の第2弾になる。米国の広々とした自然や空間を想起する、僕が勝手に呼んでいるのだが「ネイチャー・ジャズ」。パット・メセニーの音世界に近いものがある。これが僕にとっては「大好物」なのだ。美しい、とても印象的な演奏。メロディアスではあるが、決してイージーに陥らない。
 
メロディアスで耽美的な「スピリチュアル・ジャズ」と形容して良いくらい、充実した、クールに「熱い」演奏。勿論、ブレイドのドラミングは個性的で素晴らしいのだが、同じくらいに印象に残る音が、カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)のギター。特にエレギが印象的。ちょっとくすんだ伸びの良い、ちょっと捻れた、ちょっと尖ったエレギ。パットのギターのフォロワー的印象。
 
これ見よがしに変拍子、転拍子を見せつけてるようなところは見えない、フェローシップ全員、気合いの入った自然体な演奏。結構、難しいことをやっているんだが、決して難解には聴こえない。逆に自然にシンプルに聴くこえるから面白い。1970年代、ECMレーベルに展開された「ニュー・ジャズ」。この「ニュー・ジャズ」がジャズ界でもポピュラーな存在になったきた様です。このフェローシップの音を聴くと改めてそう思います。
 
 
 
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2019年4月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・144

欧州ジャズは、ECM、Steeplechase、Enjaの三大レーベルがメインで発展した来た様に思う。他の欧州のマイナー・レーベルの貢献もあろうかと思うが、米国、そして日本という欧州以外のリージョンについては、やはりこの三大レーベルを介して、欧州ジャズを体験していった様に思う。

地域的にはコペンハーゲンを中心とする北欧ジャズと欧州に移り住んだ米国ジャズメン達のジャズが大半だったという思い出が強い。しかし、この10年間のうちに欧州ジャズの出身地が急速に拡がってきている。第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズが我が国にもやってきて、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている。

Simple Acoustic Trio『Habanera』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Marcin Wasilewski (p), Sławomir Kurkiewicz (b), Michał Miśkiewicz (ds)。Simple Acoustic Trioとは、ポーランド・ジャズ界を代表するピアニスト、マルチン・ボシレフスキを中心とする、純ポーランドなピアノ・トリオである。
 
 
Habanera-simple-acoustic-trio  
 
 
ベタなトリオ名からして、大スタンダード曲中心のカクテル・ピアノっぽいトリオ演奏かしら、と訝しく思いながら、聴き始めると「あらビックリ」。俗っぽさなど微塵も無い。欧州ジャズらしい流麗なメロディ、透明感溢れるサウンド。北欧ジャズとの違いは哀愁感溢れるマイナーでエコーたっぷりな響きが希薄なところ。意外と質実剛健なところが見え隠れする、ロマンチックなピアノ・トリオ演奏。
 
欧州ジャズの共通項としてロマンティックではある。が、意外と硬派で質実剛健なところを加味した音が、ポーランド・ジャズの個性だろうと感じている。最初はロマンに流されるか、と心配になるが、そこにコーンとドラムが入り、ブンブンとベースが引き締めれば、グッと硬派なエッジの立った、上質で流麗な、明確で一本筋の通ったタッチが清々しいピアノの響きが現れる。
 
静的なフレーズが全体を覆うのだが、適度なテンションを保ったインタープレイとニュー・ジャズ特有のファンクネス希薄で自由度の高いビートが意外とホットで、飽きるどころか、聴けば聴くほどに奥の深い演奏に思わず聴き入ってしまう。ジャケットも思いっきり欧州ジャズ風で趣味の良いもの。これは絶対にジャズ喫茶でかけたい盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月23日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・143

久し振りに良い雰囲気のジャズ・ギターを聴いた気がする。Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズギタリスト。今、NYで最も注目される若手ギタリストの一人。情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。
  
現代のNYのジャズのトレンドの1つに「イスラエル出身のジャズ・ミュージシャンの台頭」がある。アヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)、オマー・アヴィタル(Omer Avital)、エリ・デジブリ(Eli Degibri)、オズ・ノイ(Oz Noy)、サム・ヤエル(Sam Yahel)等々、優れた新しい個性のジャズメンがどんどん出てきた。今回のギラッド・ヘクセルマンもそんな中の一人である。
  
Gilad Hekselman『Ask for Chaos』(写真左)。昨年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman (g)をメインに、Rick Rosato (b), Jonathan Pinson (ds) ="gHex Trio"と、Aaron Parks (p,keys), Kush Abadeyb (ds, pads)="ZuperOctave" の2つのユニットを曲によって使い分けている。
  
 
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ヘクセルマンが自分のレーベルを立ち上げ、リリースした意欲作、3年振り、6作目のリーダー盤である。この最新盤は自らのレーベルからのリリースである。自分の表現したいジャズを存分に展開している様に感じる。彼のエレギの音を聴いての印象は「パット・メセニーとジョンスコを足して2で割った様な」個性に、端正なアドリブ・フレーズとほんのり明るく「くすんだ」トーン。
  
2つのユニットの使い分けが功を奏している。"gHex Trio"の演奏はシンプルで瑞々しく豊かな色彩感と情緒豊かでネイチャー風。心地良い透明感溢れる演奏は明らかに新しいイメージ。"ZuperOctave"での演奏は先鋭的な、現代ジャズの最先端な切れ味の良い演奏が展開される。ヘクセルマンは切れ味良く、少し捻れた浮遊感溢れるギターを弾きまくる。しかし、この2つの全く異なる個性的な演奏をヘクセルマンのギターがしっかりと統括する。 
 
2つのユニットの混在でありながら、アルバム全体に溢れる統一感。ECMレーベルの音世界に通じるものはあるが、欧州ジャズのウェット感は皆無で、乾いたクリスタルなトーンは新しい米国のコンテンポラリー・ジャズの音世界を感じる。ヘクセルマンのお陰で、久し振りに新しいジャズ・ギターに出会った気分。現在、僕がカート・ローゼンウィンケルと併せて、興味を持って聴いている、お気に入りのギタリストです。
 
 
 
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2019年3月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・142

ピアノ・トリオはいつ聴いても楽しい。簡単そうに見えて、結構、弾きこなすに難しい、打楽器と旋律楽器の両方の性質を持つ楽器のピアノ。この難物楽器のピアノがメインに、これまた、リズム楽器と旋律楽器の両方の性質を持つベースが絡み、究極の打楽器のドラムがリズム&ビートを担う。いわゆる「職人集団」のパフォーマンス。これが聴いていて楽しい理由。

Jason Lindner, Giulia Valle, Marc Ayza『1,2,3, Etc.』(写真左)。2001年12月3&4日、バルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Jason Lindner (p), Giulia Valle (b), Marc Ayza (ds)。ピアノのジェイソン・リンドナー、どこかで聴いた名だなあ、と調べてみたら、デヴィッド・ボウイ『★(ブラックスター)』に参加した気鋭の鍵盤奏者でした。

まず、そのジェイソン・リンドナーのピアノが印象深い。耽美的ではあるが力感溢れる明快なタッチ。ハンマー打法を彷彿とさせるパーカッシヴな左手。強弱、抑揚、明暗と複雑な表現をシンプルに弾きこなす右手。躍動感溢れ、逆に暖かな繊細さとの対比が見事。久々に注目のピアニストやなあ、と当時感心したものです。
 

123etc  

 
ジュリア・ヴァーレは女流ベーシスト。僕は最初「女流」と聞いてビックリした。この盤を聴いたら判るのだが、ベースがゴリゴリ、ブンブン、思いっきり胴鳴りしている。鋼のしなりの様なベース弦の響きも生々しい。こんなベースを聴いて、これ「女流ベーシストやで」と言われたら、え〜っ、となりまっせ(笑)。ファンクネスが希薄なので、出身はどこかな、と調べたら、イタリアのサンレモでした。納得です。

マーク・アイザのドラミングはユニーク。ちょっとラフに構えたグルーヴ感は独特のスイング感と疾走感を与えてくれます。この人のドラミングにもファンクネスが希薄というか皆無。堅実で強烈なオフビートに裏打ちされたポリリズム。それでいて、しっかりリズム&ビートの筋が一本通っている。じっくり聴き耳立てていると、更にその素晴らしさが判る、そんな職人芸的な玄人好みのドラミング。出身はバルセロナとのこと。これも納得ですね。

この盤の選曲については、セロニアス・モンク、マッコイ・タイナー、クレア、フィッシャー、スティービー・ワンダーなどの作品を取り上げていて、ジェイソン・リンドナーのピアノの個性の源を感じさせてくれます。エレピも弾いていて、変に難しくせず、シンプルで良好。いや〜、この『1,2,3, Etc.』、なかなか聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。ジャケットもジャズらしからぬ可愛いイラスト。これも良し(笑)。

 
 
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2019年2月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・141

「ジャケ買い」という言葉があるが、この盤は僕にとってまさに「ジャケ買い」盤。このアルバムのリーダーであろう人物の、座った迫力のあるイラストが思いっきり目を引く。「Quintet」の文字でこの盤はジャズ盤だと想像出来る。とすると、この盤の内容って、意外と骨太で硬派でゴリゴリした純ジャズじゃないか、と思ったら、思わず手にしていた。

The Dave Bailey Quintet『Two Feet in The Gutter』(写真左)。1961年10月6日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Ben Tucker (b), Dave Bailey (ds), Billy Gardner (p), Frank Haynes (ts), Bill Hardman (tp)。パーソネルを見渡すと、決して、当時のスター・プレイヤーではないのだが、当時の中堅どころが大集合。

冒頭の「Comin' Home Baby」は、ベースのベン・タッカーの曲。元ジャズ・メッセンジャーズのトランペッター、ビル・ハードマンで軽快にスタート。フランク・ヘインズの雰囲気あるテナーも良い感じ。リーダーのデイブ・ベイリーのドラムが、演奏のリズム&ビートをさりげなくビシッと決めて、ああ、雰囲気のある踊れるハードバップではないか。
 

2_feet_in_the_gutter  

 
デイブ・ベイリー。1926年2月の生まれ。米国ヴァージニア州出身。1950年代に入って、ハードバップ初期の頃より、頭角を現し、様々な一流ジャズメンとの共演を果たしている。1954〜68年まで、14年間、ジェリー・マリガンのグループで活躍しましたが、惜しくも1969年、ジャズ界より引退。1973年からニューヨークで音楽教育に携わっていますが、主だった活動はしていません。

彼のドラミングは、派手さは全く無いのですが、堅実で職人肌の「粋」なドラミング。この『Two Feet in The Gutter』でも、全編に渡って、良質で洗練されたハードバップを聴かせてくれていますが、もちろん、リーダーのデイブ・ベイリーのドラミングに依るところが大きいですね。これだけ、ドラミングが演奏全体の雰囲気をコントロールしているアルバムはあまりないのではないか、と思います。

ハービー・マンやメル・トーメ等でもおなじみのダンス・ジャズ・クラシックな曲を渋く、粋に演奏しているところが堪らない。ベン・タッカーのベースがさりげなくブンブン響いて、ベイリーの小粋なドラミングと相まって、とてもジャジーでハードバップなグルーヴ感を醸し出しています。あまり、ジャズ紹介本などではそのタイトルが挙がらない盤ですが、ハードバップ後期の隠れ好盤でしょう。

 
 
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