2022年6月 4日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・98

最近、リッチー・バイラークのリーダー作をいろいろ聴き直していて、この盤をかけた時、このバイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚について、当ブログで取り上げていないのに気がついた。いやはや驚いた。

Richard Beirach『Eon』(写真)。1974年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach (p), Frank Tusa (b), Jeff Williams (ds)。耽美的でリリカルで多弁なピアニスト、リッチー・バイラークの初リーダー作。

リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、彼はバークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは「理詰め」の雰囲気が強い。

初リーダー作の冒頭に「Nardis」を収録したのが誤解のもと。「Nardis」は、耽美的でリリカルなバップ・ピアニストとされるビル・エヴァンスの十八番曲。我が国では、ビル・エヴァンスは「耽美的でリリカルな」ピアニストと誤解されることが多い。余りに短絡過ぎる評価だと思うが、その偉大なピアニストが十八番曲とした「Nardis」を弾くので、バイラークは今でも「耽美的でリリカルな」ピアニストと分類されることが多い。

が、この初リーダー作を隅々までしっかり聴き通すと、バイラークは単なる「耽美的でリリカルな」ピアニストに留まらず、とにかく「多弁」なピアニストであることが判る。この「多弁」がバイラークのピアノの最大の個性。
 

Richard-beiracheon

 
「耽美的でリリカルな」ピアニストの特徴として、「間」と「音の広がり」を活かしたインプロビゼーションが挙げられるが、バイラークはその反対。音符を敷き詰めた様に「多弁」なフレーズを弾きまくる。タッチは「耽美的でリリカル」。しかし弾きっぷりは「シーツ・オブ・サウンド」と言って良いくらい「多弁」。

しかし、その「多弁」な弾きっぷりが、テクニックが確かで端正、そして、タッチの響きが「耽美的でリリカル」なので、意外と五月蠅くない。特に速いフレーズにおける、バイラークのピアノのタッチと弾きっぷりは「クラシック・ピアノ」の雰囲気が色濃く反映されている。この弾きっぷりが五月蠅いならば、クラシック・ピアノの速いフレーズは全て「五月蠅い」ということになる。

バイラークは、単に「耽美的でリリカルで多弁なピアニスト」に留まらず、フリー&アヴァンギャルドな志向のピアノに走ったり、現代音楽風のピアノの様な無調の響きを醸し出したりするところが、チック&キース&ハービーなどの「新主流派世代」の括りのピアニストだと思う。故に、ニュー・ジャズが中心の、ECMレーベルのピアノ盤の中ではちょっと異質な雰囲気がする。

初リーダー作は、そのリーダーであるジャズマンの個性と特徴が如実に反映されている、というが、このバイラークの初リーダー作にもそれが言える。この盤を聴けば、バイラークのピアノが何たるか、をしっかり捉えることが出来る。バイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚。名盤です。
 
 

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2022年4月11日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・97

ジャズ・ピアニストの個性には2通りあると思っている。1つは「一聴すれば直ぐに判る個性」。タッチやフレーズに、その人独特の癖や弾き回しや響き、雰囲気があるパターン。

もう1つは「優れた総合力そのもの」を個性とするパターン。前者はジャズ者の初心者でも直ぐにその個性が良く判る。後者はジャズ者初心者には、ちょっと判り難い個性である。

Barry Harris『Chasin' the Bird』(写真)。1962年5月31日、8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Clifford Jarvis (ds)。パウエル派の「優れた総合力そのもの」を個性とするタイプのピアニスト、バリー・ハリスのトリオ盤である。

バリー・ハリスと言えば、スタイルは「バップ・ピアニスト」。ビ・バップの演奏マナーをハードバップに活かした演奏が個性で、テクニック溢れる流麗な指捌きと簡潔なアドリブ・フレーズが個性。バド・パウエルのピアノから、激しさと鬼気迫る超絶技巧を引いて、優雅さと親しみ易さを足した様な、まさに、バド・パウエルのピアノを流麗に聴き易くしたようなピアノである。
 

Chasin-the-bird_barry-harris_1_20220411192201

 
タッチは明確、テクニックは抜群、歌心に優れ、アドリブ展開もオリジナリティー溢れるもの。という「優れた総合力」が魅力で、そんな優れた総合力の中に、優雅さと親しみ易さが滲み出てくるピアノがハリスの個性。ブルージーな感覚やファンキーな要素は控えめで、典雅な弾き回しのスピード感とオフ・ビートが醸し出すグルーヴ感が特徴。間の取り方も趣味が良く、バップなピアノの好例として聴き応えがある。

「優れた総合力そのもの」を個性とするピアニストは、演奏する楽曲の持つ個性・特性をあぶり出すことに長けている。テクニック溢れる流麗な指捌きは、癖や弾き回しに惑わされる事無く、演奏する楽曲の持つ特性を判り易く表現してくれる。

加えて、この盤の録音がとても良くて、ボブ・クランショウのベース、クリフォード・ジャーヴィスのドラムによる好サポートが、手に取るように聴き取れる。特にクランショウのメロディアスな「唄う様に」響くベースラインがとても魅力的。

バリー・ハリス、33歳のパフォーマンス。この盤では「バップなピアノ」での直球勝負。選曲も、ハリスの個性を引き立たせる、典雅でメロディアスなスタンダード曲が中心で、ハリスの弾き回しには惚れ惚れする。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」に選定したいと思います。
 
 

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2021年11月11日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・96

Andrew Hill(アンドリュー・ヒル)は、ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンが見出した「最後の才能」。1963年録音の名盤『Black Fire』を皮切りに、1963年から録音から手を引いた1967年まで、4年間で8枚ものリーダー作をリリースした。それでも、ライオンは、アンドリュー・ヒルを第一線に送り出せなかったことを後悔しており、1980年代にブルーノートが復活した時、ライオンがまず始めたことはアンドリュー・ヒルを再び売り出すことだった。

Andrew Hill『Invitation』(写真)。SteepleChaseレーベルの SCS1026番。1974年10月17日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Andrew Hill (p), Chris White (b), Art Lewis (ds)。欧州の老舗レーベルでの録音だが、オール・アメリカンな「ピアノ・トリオ」での、ヒルのリーダー作になる。

ジャズ・ピアニストの個性を確認するには、ピアノ・トリオが最適だろう。ソロ・ピアノが最適、とする向きもあるが、ジャズ演奏の中でのパフォーマンスとして、ジャズ・ピアニストの個性を感じるには、ピアノ・トリオだろう。そういう面では、ヒルのブルーノート時代、ピアノ・トリオ編成のリーダー作は『Smoke Stack』一枚のみ。デビューしたての頃のパフォーマンスなので、まだ初々しさが抜けていない分、個性も少し抑え気味。
 

Invitation-andrew-hill

 
アンドリュー・ヒルのピアノは、一言でいうと「新時代のセロニアス・モンク」。判り易いモンクという感じの、予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ。「癖の強いピアノ」という表現がまずまずフィットする感じ。加えて、幾何学模様的にスイングするような「捻れ」が個性。この個性が、SteepleChaseでの『Invitation』を聴くと、手に取るように判る。

ホワイトのベース、ルイスのドラムのリズム隊が、ヒルのピアノの個性に上手くついて行っている。これがこの盤の良さで、ヒルは気持ちよさそうに、個性的なピアノを弾きまくる。デビューした頃とは違った、余裕が感じられる「予測可能な範囲で飛んだり跳ねたりするピアノ」。ベースラインはパーカッシヴで、力感溢れる、パッキパキ硬派なモーダルなピアノである。

ヒルがSteepleChaseレーベルに残したリーダー作は、1970年代の2枚のみ。ヒルがどういう動機で、SteepleChaseレーベルにリーダー作を残したか判らないが、このピアノ・トリオ盤は「良い仕事」である。SteepleChaseレーベルでの録音なので、どこか欧州ジャズの響きと雰囲気が漂うところが、ヒルのピアノの個性を際立たせている。良いピアノ・トリオ盤だ。
 
 
 
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2021年9月26日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・95

我が国は「ジャズ先進国」である。太平洋戦争に負けて、米国駐留軍が我が国にやってきて、軍専用のバーやレストラン中心に、米国の音楽文化のひとつである「ジャズ」を我が国で広めた。朝鮮戦争終戦辺りで、そのムーヴメントは頂点に達し、1950年代半ばには、日本人だけで「ビ・バップ」なジャズを演奏し始める。1960年代にはジャズが我が国で定着した。

そのジャズ文化を支えた大きな「柱」がジャズ喫茶。ジャズ喫茶のマスターは、その時代時代のジャズに精通し、客のジャズ者が知らない「小粋なジャズ」を率先してかけていた。このジャズ喫茶のアルバムの選定については、我が国独特の視点があって実にユニーク。我が国では結構メジャーな盤であるものが、本場米国ではそうでもない盤は「ごまん」とある。

Dodo Marmarosa『Dodo's Back!』(写真左)。1961年5月9日~10日の録音。ちなみにパーソネルは、Dodo Marmarosa (p), Richard Evans (b), Marshall Thompson (ds)。伝説のバップ・ピアニスト、ドド・マーマローサのトリオ盤。端正でバップなマーマローサのピアノ。ベース、ドラムはほぼ無名。これがまあ、味わい深い「バップで小粋なトリオ演奏」に仕上がっているのだから、ジャズって面白い。

ドド・マーマローサ(Dodo Marmarosa)は、1925年生まれの米国の白人ピアニスト。1940年代初頭からプロとしての活動を始め、ビ・バップ・ムーヴィメントの中、レスター・ヤングやチャーリー・パーカーとも共演している。
 

Dodos-back

 
だが、1950年以降、麻薬に手を染めジャンキー化。その後、中毒症状の悪化、麻薬からくる精神病の治療の為の電気ショック療法などを経て、1950年代中盤から後半にかけては、心身ともにボロボロ状態。ところが、ドドは10年後にカムバックした。

カムバック後、1961年に吹き込まれたのが、この盤でタイトルが「ドドのカムバック」。そうした経緯を踏まえて聴くと、この盤は更に味わい深い。明らかにビ・バップのマナーに溢れた、マーマローサのゴツゴツとした力感溢れる、それでいて意外と洒脱なタッチは良い意味で「ユニーク」。正統派なビ・バップなピアノの弾き回しはフレーズが明確で、ドライブ感が溢れている。

バリバリ弾きまくる、ビ・バップなピアノなんだが、どこか寂寞感が漂うところが、我が国のジャズ者の方々の「心の吟線」に響くのかもしれない。この寂寞感が漂うアドリブ・フレーズが何ともはや、しみじみと聴き入ってしまうのだ。この「寂寞感」が、本来のビ・バップなピアノには無い要素。この要素だけで、ドドのピアノは記憶に留まっているのだ。

本盤の後、翌年にも2作ほど録音を行っているが、その後は、再びジャズ・シーンから姿を消す。精神的な病は癒えることは無かったのだろう。ドドのトリオ作はこの1作のみ。ドドのピアノの個性はこの盤が一番良く判る。通常のピアノ・トリオ盤としても良好な内容。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」入りをさせていただきたい。
 
 
 
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2021年9月15日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・94

ジャズ盤、クラシック盤、ロック盤等々、どの音楽ジャンルの盤でも、最初に聴いて感じたイメージと、しばらく時間を経て聞き直した時のイメージが大きく変わることがある。そして、その場合、最初に聴いたイメージよりも、イメージが良くなるケースが多い。

最初に聴いた時「こりゃアカンなあ」と感じた悪いイメージは、その後、聴き直した時も強く残る。つまり「悪いイメージ」って、初めて聴いた時、直感的に強く感じて残るイメージなんだろう。

逆に聴き直した後、良くなるイメージは、初めて聴いた時、当方の「耳」が成熟していなくて、その盤の持つ「良さ」に気が付かなかった場合が多い。ということで、初めて聴いた時の「良好盤」は、ある程度の時間をおいて、積極的に聴き直すことにしている。

Tete Montoliu『Tete!』(写真左)。1974年5月28日の録音。SteeplechaseのSCS1029番。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert 'Tootie' Heath (ds)。この盤でのテテのパートナーは、これまた「超絶技巧」の骨太なレジェンド級ベーシストのペデルセン。そして「職人芸」玄人好みのドラマーのアルバート・ヒース。

この盤を聴き直して、この盤の持つ「本来の素晴らしさ」を改めて知った。というか、素晴らしさの「深度」が更に深まったと言って良いかと思う。こんなところは絶対に聴き逃していたなあ、とか、このポイントは聴き流してしまったなあ、と深く反省する「評価ポイント」が色々出てきたのだ。今回、聴き直して良かったなあ、としみじみ思ってしまった。

テテのピアノは硬質で骨太なタッチ。疾走感溢れる高速フレーズ。ダンディズム溢れるスイング感。圧倒的に優れたテクニック。そして、バラード演奏については透明感溢れる歌心。スペイン出身のピアニストなので、ファンクネスは皆無。切れ味の良い透明感とエッジのほど良く立った硬質なタッチ。こんなピアノは初めて聴いた。とことん欧州的なジャズ・ピアノである。
 

Tete_20210915202001

 
このテテのピアノで、この盤では「コルトレーンのシーツ・オブ・サウンド」をトリビュートしているみたいなのだ。それはテテのピアノの個性に加えて、テテのピアノのベースを支えるペデルセンの骨太&ハイ・テクニックなベースと、変幻自在、硬軟自在な柔軟性と適応力の高いヒースのドラミングに負うところが大きいのだが、とにかくトリオ一体になっての「シーツ・オブ・サウンド」は迫力満点。

冒頭の「Giant Steps」は、コルトレーン独特のテナー吹奏のテクニックである「シーツ・オブ・サウンド」を駆使した決定的名演なんだが、テテは超絶技巧なピアノで、この「シーツ・オブ・サウンド」な名曲を弾き切ってみせる。というか、コルトレーンのオリジナルよりも、豊かなバリエーションでの「シーツ・オブ・サウンド」で弾き回しているのには感動した。

3曲目の超スタンダード曲「Body and Soul」も高速「シーツ・オブ・サウンド」なフレーズの連続。それでいて、高速フレーズが実に「スインギー」。こんなに高速でスクエアにスインギーなアドリブ・フレーズを擁した「Body and Soul」は聴いた事が無い。実にユニーク、かつ圧巻である。

逆に、2曲目の「Theme for Ernie」はバラード曲。さぞかし、高速フレーズの得意なテテには苦手なジャンルでは無いか、と思うのだが、そんなことは全く無い。全くの「杞憂」である。テテの硬質で骨太なタッチ、ダンディズム溢れるスイング感をベースに、クールでドラマチックで切れ味の良いバラード演奏を披露してくれる。このテテのバラード演奏、本当に「聴きもの」である。

そして、5曲目の「I Remember Clifford」はアレンジの勝利。テテのピアノの個性を活かしたアレンジは絶品。どちらかと言えば、センチメンタルでスイートなバラード曲であるが、これをダンディズム溢れるスインギーで「シーツ・オブ・サウンド」なテクニックで斬新な解釈をしている。こんなにダンディズム溢れる切れ味の良い、それでいて仄かに温かみのある「I Remember Clifford」は聴いたことが無い。

このアルバムは「カタルーニャの秘めた激情」テテ・モントリューの傑作の一枚。今回、久し振りに聴き直してみて、この盤の持つ「本来の素晴らしさ」を改めて知った。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」入りをさせていただきたい。
 
 
 
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2021年9月 2日 (木曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・93

昨日も書いたが、パブロ・レーベルには、ハードバップ時代には無かった編成やメンバーのカップリングが多数ある。加わて、この人がこんな編成の演奏するの、とビックリする企画ものもある。昨日のデューク・エリントンのピアニストとしての個性に焦点を当てたアルバムもそのひとつ。で、今日は「カウント・ベイシー」である。

The Count Basie Trio『For the First Time』(写真)。1974年5月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Ray Brown (b), Louie Bellson (ds)。パーソネルをよくよく見れば、昨日のデューク・エリントンのピアノ・トリオ+ギターのベースとドラムがそのままスライドして採用されている。パブロの総帥プロデューサーのノーマン・グランツのプロデュースの観点が何となく見て取れる。

カウント・ベイシーは、ご存じ、伝説のビッグバンド「カウント・ベイシー楽団」の総帥リーダー。ダイナミックで分厚いアンサンブルが身上のビッグバンドだが、このビッグバンドのリーダーのカウント・ベイシーのピアノが、音数の少ない、間を最大限に活かした、まるで「侘び寂び」を反映した様な、ビッグバンドの音は正反対の音世界になっているのだから、ジャズは面白い。
 

For-the-first-time

 
本当に音数の少ないピアノである。間を最大限活かしているが、大丈夫か、と心配になるくらいに音数が少ないフレーズが出てくる。そのフレーズは「スイング」が基調。独特なスイング感とリズム感は、カウント・ベイシーのワン・アンド・オンリーなもの。これだけ音数の少ないピアノは他に無い。マイルスがその音数の少なさとクールな使い回しで着目した「アーマッド・ジャマル」よりも音数が少ないから凄い。

そして、ベイシーのオルガンがクールで粋。ファッツ・ウォーラーに教わったというスタイルらしいのだが、ロングトーンを活かした、ディープで、ブルージーな雰囲気を増幅して聴かせるスタイル。実に味わい深く、従来のジャズ・オルガンとは全く違うスタイルで最初は戸惑うが、何回も聴き重ねるにうちに、その味わいがジンワリと染みてきて癖になる。

録音年の1974年と言えば、ジャズの世界ではフュージョン全盛期に向かう頃。そんな電気楽器&8ビートなジャズが台頭する中、こんなに玄人好みの渋いピアノ・トリオがリリースされていたことに、パブロ・レーベルの企画力と懐の深さ、そして、メインストリームなジャズ・レーベルとしての矜持をビンビンに感じる。ピアノ・トリオの隠れ名盤だと思います。
 
 
 
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2021年7月21日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・92

ジャズマンの中には、あるタイミングで音の個性がガラリと変わるタイプがいる。ジャズのトレンドに乗るタイミングで変わるジャズマンもいれば、所属レーベルが変わって、そのレーベルのプロデューサーの意向で変わるジャズマンもいる。しかし、いずれの場合も楽器の「音の基本」や「音の響きや癖」は変わらない。

Richard Beirach『Elm』(写真)。1979年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach(p), George Mraz (b), Jack DeJohnette (ds)。 当時は耽美的ピアニストの代表格の1人、リッチー・バイラークがリーダーのトリオ作品。ムラーツのベースとデジョネットのドラムの「リズム隊」が実に強力、かつ、バイラークとの相性が抜群。

バイラークのECMレーベルでの『Eon』『Hubris』『Elm』の耽美系3部作の中の一枚。この3部作は、明らかに「ECMレーベルの音」を具現化しており、ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの自らの監修・判断による強烈な「美意識」を反映した音である。ECMレーベルの個性に照らしあわせて、リリカルで明快、クールで耽美的という、バイラークのピアノの個性を最大限に引き上げた音である。
 

Eim

 
リズム隊がムラーツとデジョネットだからだと思うが、3部作の中でもダイナミックな展開になっている。ただ、ジャジーな雰囲気やファンクネスは希薄で、乾いたクリスタルな4ビートもしくは8ビートで、インプロビゼーションが展開される。このリズム隊が、バイラークのピアノの弾き回し感とピッタリ合っていて、多弁なバイラークが活き活きと弾き回している。

アイヒャーの強烈なプロデュースによって、バイラークのピアノの内面にある哀愁感が増幅されている。モーダルな弾き回しではあるが、決して「間」を活かした弾き回しでは無い。どちらかと言えば、多弁でバップな弾き回しである。が、決してうるさくない。ECM独特の深いエコーも邪魔にならない。ECMレーベルの音をよく理解して、バイラークがそのピアノの音をコントロールしているのだ。

このトリオ演奏はバイラークのキャリアの中でも「白眉の出来」。この後、音楽的意見の相違からマンフレート・アイヒャーと袂を分かつことになるのだが、この盤の優れた内容については揺らぐことは無い。バイラークのこの『Elm』を含む「耽美系3部作」は、アイヒャーの強烈なプロデュースと、それに100%応えたバイラークのパフォーマンスの「賜(たまもの)」である。
 
 
 
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  ・イエスの原点となるアルバム

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2021年5月23日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・91

最近、好んで聴き直しているピアノ・トリオがある。「The 3 Sounds」である。アルフレッド・ライオン率いるブルーノート・レーベルの企画型のピアノ・トリオ。ブルーノート・レーベルは意外とピアノ・トリオ盤が少ない。そんな中で、この「The 3 Sounds」は、トリオ名義のアルバムが20枚程度、リリースされている。如何に破格の扱いの売れっ子ピアノ・トリオであったことが窺い知れる。

ただ、我が国では何故か人気が低い。ピアノ好き、ピアノ・トリオ好きの日本人ジャズ者の方々の中でも、何故か人気が薄い。スタンダード曲中心で「商業臭さ満載」と感じているのか、軽妙で聴いて楽しい「判り易さ」がいけないのか、どうにも我が国のジャズ者の方々からは人気が無い。しかし、最近やっと、ネット上で再評価される兆しが見えてきた。

The 3 Sounds『Good Deal』(写真左)。1959年5月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノート・レーベルから4枚目のトリオ盤になる。トリオの3人が腕を組んで街を歩く写真をあしらったジャケット。メンバーの表情が生き生きとしていて、充実した内容が想像出来る良いジャケットである。
 

Good-deal
 

一言で言うと、The 3 Soundsの実力が遺憾なく発揮された、素晴らしい内容のトリオ盤である。収録曲全8曲中、6曲がスタンダード曲。しかも、聴いて楽しい、シンプルな曲が多く収録されていて、収録曲を見ただけでは、このトリオ盤、イージーリスニング風のライトでカクテルなトリオ盤に思えて、なかなか触手が伸びないのは理解出来る。

しかし、聴けばその印象は「吹っ飛ぶ」。活きの良いスイング感が程好い、ブルース・テイスト芳しいトリオ演奏がてんこ盛り。しかも、トリオのメンバー、三人三様、そのテクニックの限りを尽くして、ドライブ感溢れる、端正で軽妙でファンキーなアドリブ展開を披露する。それにしても実に「上手い」。上質のトリオ演奏であり、ハードバップな逸品である。

ジャズ盤紹介本などでは、まず紹介されることが無い盤であるが、どうして、その内容は「超一級品」。僕は「The 3 Sounds」の代表作の一枚と評価している。録音のバランスも良く、ブルーノート・サウンドの見本の様な音世界がこの盤にギッシリ詰まっている。今までの評価の低さは忘れて、是非聴いていただきたい逸品である。
 
 
 

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2021年4月 5日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・90

Enja(エンヤ)レーベルも、今や欧州を代表するジャズ・レーベルである。1971年、マティアス・ヴィンケルマンとホルスト・ウェーバーによって設立。拠点はミュンヘン。ドイツ発のジャズ・レーベルである。得意ジャンルは、メインストリームな純ジャズ、それもモーダルなジャズをベースとした硬派で尖った純ジャズ。そして、フリー・ジャズをメインとした前衛ジャズ。

Junior Mance Trio『Softly As In A Morning Sunrise』(写真)。1994年7月21日、ミュンヘンの Trixi Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Woode (b), Bob Durham (ds)。総合力勝負のファンキー・ピアニスト、ジュニア・マンスがリーダーのピアノ・トリオである。

もともとエンヤ・レーベルは、設立者のマティアス・ヴィンケルマンとホルスト・ウェーバーの2人が、マル・ウォルドロンの大ファンで、当時ヨーロッパで活動していたマルの作品を自分達の手でリリースしたいという情熱から誕生した経緯がある。よって、ジャズ・ピアノの演奏については、意外と造詣が深い。
 

Softly-as-a-morning-sunrise-junior-mance

 
で、このジュニア・マンスのピアノ・トリオである。マンスのピアノは、ファンキーなノリとグルーヴィなフレーズが持ち味の「総合力で勝負する」タイプのピアニストである。独特の癖や奏法がある訳では無い。端正で明確なタッチ。堅実かつリズミカルな左手。とても整った弾きっぷりで、聴いていて爽快な気分になる。欧州系のレーベルでの録音で、ファンクネスは抑え気味でタッチが硬質。

バックのリズム隊がこれまた優秀。硬質でしなやかに響く低音が魅力のジミー・ウッドのベース。変幻自在、硬軟自在、堅実で質実剛健なボブ・ダーハムのドラム。欧州系のレーベルでの録音らしく、ファンクネスは希薄、粘らずタイトでソリッドなリズム&ビートは聴き応え十分。真摯で堅実な欧州ジャズのリズム&ビートである。

1994年の録音らしく、ネオ・ハードバップな香りのする、新しい音が響きが宿る素敵なピアノ・トリオの演奏である。選曲も小粋なスタンダード曲が中心で趣味が良い。ジャケットだけが、どうにもこうにも平凡なのだが、中身は「太鼓判」。ネオ・ハードバップ志向の素敵なピアノ・トリオ盤である。
 
 
 

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2021年2月24日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・89

ふと、レアな盤を見つけた。リーダーは「Freddie Redd(フレディ・レッド)」。フレディ・レッドと聴いて、ああ、とその名を思い出すジャズ者はベテランの類。

まず、ジャズ盤紹介本にはその盤は載ったのを見たことが無い。今回、スイングジャーナルの古い「幻の名盤」の類の特集本でそのタイトルを久し振りに確認した次第。

「フレディ・レッド」自体の存在はかなりマイナー。それでもジャズの世界の中では、麻薬劇と呼ばれた「コネクション」の作曲者であり、ブルーノートの『Shades of Redd』のリーダー。稀少ではあるが、その作曲の才と渋いピアノは一度聴けば印象に残る存在である。

Freddie Redd『Under Paris Skies』(写真)。1971年6月26-29日録音。仏のFuturaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Redd(p), Didier Levallet(b), Didier Carlier(ds)。ピアノ・トリオ編成。ピアニストの個性と特徴がハッキリと判る演奏フォーマットである。

実はこの盤、聴いてみたかったんですよね。仏のレーベルからのリリースではあるが、フレディ・レッドは生粋の米国のジャズマン。1928年にNYに生まれ、なんと今年で92歳でNYに在住とある。
 
 
Under-paris-skies
 
 
1950年代の活動も報われず、1960年初頭には欧州に移住している。1974年に米国に戻るまで、10数年の間、欧州で客演する。そんな欧州での活動の間に録音したトリオ盤がこの『Under Paris Skies』になる。

一言で言うと「渋いピアノ・トリオ」。大向こうを張ったダイナミックなところは無いし、選曲もとても渋い。誰かが「パリ=アメリカ黒人=エトランゼ=哀愁」という公式が実にマッチした演奏、と評していたが、まさにその通りだと思う。

本質はバップ、フレーズはブルージーでアーシー。マイナーなフレーズがメインのアドリブが哀愁感を引き立たせる。聴き始めると一気に聴き切ってしまう、とても印象的なピアノ・トリオ。

欧州のフレディ・レッドは当地で手厚くもてなされたようだ。この薄めの青が印象的な盤のジャケットに、おのぼりさんよろしく、エッフェル塔を背景にしたフレディ・レッドが映っているところが微笑ましい。

そんな彼にとって良い環境が、こんな「パリ=アメリカ黒人=エトランゼ=哀愁」という公式が実にマッチした演奏を生み出したのだろう。この盤、つつしんで「ピアノ・トリオの代表的名盤」に選定させていただきたい。

 

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