2020年3月28日 (土曜日)

心地良きビッグバンドとの共演

ビッグバンドとの共演は、ソロイスト側には「テクニックが優れていること」「フレーズが明確でハッキリしていること」、そして、ビッグバンド側には「ソロ楽器を意識したアレンジが施されていること」「ソロイストを前面に押し出す伴奏上手であること」が、それぞれ要求される。そして、その要求が満足されたら、その共演は素晴らしいジャズの音世界への昇華する。

Bill Laurance & WDR Big Band『Live at the Philharmonie Cologne』(写真左)。2018年11月24日、ドイツはケルンの「the Philarmonie」でのライブ録音。スナーキー・パピー結成当時からのメンバーであるキーボーディスト「ビル・ローレンス」と、ケルンの名門ビッグ・バンド「WDR Big Band」との共演。そして、WDR Big Bandのコンダクターは「ボブ・ミンツァー」。

スナーキー・パピーの知性あふれるクールなサウンド・イメージがベースとなって、ビッグバンドのアレンジが為されているように思う。スナーキー・パピーのキーボーディスト、ローレンスのピアノがくっきり浮かび上がる、つまり、WDR Big Bandがソロイストを前面に押し出す伴奏上手となる為のアレンジである。従来のWDR Big Bandの表現とは全く異なる、クールで流麗でスムースな音の流れ。現代の「今」のビッグバンドの音である。
 
 
Live-at-the-philharmonie-cologne  
 
 
ビル・ローレンスは、スナーキー・パピーでのプレイの様に、クールで流麗でキャッチャーなフレーズを弾きまくる。印象的なフレーズがどんどん湧き出てきて、ポップな展開あり、流麗な展開あり、耳に楽しく、耳に心地良い印象的なフレーズ満載。ジャジーでファンキーな要素はまず見当たらない。良質なフュージョン・ジャズを基調にした様なフレーズの作り。それでいて、タッチと弾き回しは純ジャズそのもの。

その印象的なフレーズをWDR Big Bandがしっかりと受け止めて、さらにローレンスのピアノを際立たせている。ローレンスのアドリブ展開の表現の変化に応じて、WDR Big Bandもしっかりとその変化に追従し、その変化に適応する。凄い力量をもつビッグバンドだ。WDR Big Bandのソロイスト達も、ローレンスの醸し出すサウンド・イメージに則りつつ、個性的なアドリブ・ソロを展開する。それはそれは聴き所満載で、あっと言う間に時間は過ぎていく。

ビル・ローレンスは1981年生まれなので、今年まだ39歳。中堅の入り口に差し掛かった若き才能とベテラン・アレンジャー/コンダクターのボブ・ミンツァー、そして、百戦錬磨のアンサンブルのWDR Big Band、の3者が有機的に融合し生み出された「一期一会」の音世界。 クールで流麗でキャッチャー、そしてダイナミック。今までに無い、新しいピアノとビッグバンドの共演サウンドがこの盤に詰まっている。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

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2020年3月18日 (水曜日)

「この盤の内容」侮るなかれ

ジャズには、興味深いエピソードを携えた「話題のアルバム」というものが幾つかある。例えば「マイルスとモンクのクリスマスの夜の喧嘩セッション」。これは作り話ということで一件落着しているが、作り話としても、このエピソードは面白い。ロリンズの数回に渡る「雲隠れ騒動」だってそうだ(これは事実だけど)。意外とジャズ盤って、その録音にまつわるエピソードが豊富にある。これはこれで面白いのだが、その盤の音の評価にはあまり影響しないと思うのだが。

Michel Legrand『Legrand Jazz』(写真)。1958年の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいが、様々な有名ジャズメンが集結して、ビッグバンド形式で録音しているので、主だった名前だけ列挙しておきたい。Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Bill Evans (p), Ben Webster (ts), Hank Jones (p), Art Farmer (tp), Donald Byrd (tp), Paul Chambers (b), Herbie Mann (fl), Phil Woods (as) 等々。

ミシェル・ルグランは、仏映画音楽界の巨匠。「シェルブールの雨傘」「華麗なる賭け」「おもいでの夏」など、手掛けた有名曲は多数。そして、優秀なジャズ・ピアニスト兼アレンジャーでもあった。本場米国のジャズマンや批評家からも高く評価されていたというから立派なものだ。そんな彼の最初のジャズ・アルバムにして最高傑作の1つがこのアルバムになる。
 
 
Legrand-jazz   
 
 
1958年の晩春。ルグランは米国旅行に出かけます。名目は新婚旅行。しかし真の目的は、様々な有名ジャズメンを集めて、自らのアレンジによるジャズ盤を録音すること。ちゃっかりしてますね。当時、既に超売れっ子だったルグランだから、我が儘も通ったのだろう。集まったジャズメンを見渡すと、錚々たるメンバーである。そして、驚くことに、かのマイルス・デイヴィスが参加している。但し、有名ジャズメンを集めた「お気楽な企画盤」では無い。

冒頭の「The Jitterbug Waltz」を聴くだけで、この盤は当時の米国ジャズとは全く異なる、クラシックに比肩する優雅さと繊細さを兼ね備えていることが判る。マイルスやビル・エヴァンス、コルトレーンという超一流のジャズメンが演奏するのだ。優雅さと繊細さの中に、グッと一本の「ジャズの音の芯」が通っているのがよく判る。やはり、先の「The Jitterbug Waltz」を含め、マイルスが参加の楽曲「Django」「Wild Man Blues」「'Round Midnight」が飛び抜けて出来が良い。

この盤、米国ジャズメンで演奏された欧州ジャズである。この手の音世界は米国ジャズには無い。しかし、ここまで一本の「ジャズの音の芯」が通っ優雅さと繊細さを兼ね備えた純ジャズは、欧州のジャズメンにはまだ難しいところがあったと思う。ルグランはそこに目をつけて、米国旅行の折に、録音のチャンスを見出し、それを実現したと思われる。しかし、さすがは「仏映画音楽界の巨匠」、クールな聴き易さをしっかりと付加している。ルグランのアレンジの才が如何に優れていたか。この盤の内容が証明している。
 
 
 

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2019年12月24日 (火曜日)

JALCのクリスマス・ソング集

さて、クリスマス・イヴである。今年は久し振りに暖冬基調で、ちょっと暖かい日が続いていたので、クリスマスが近づいてきたという感じが希薄だった。加えて、この2〜3年前から、テレビやネットで、クリスマスについて過度に取り上げることが少なくなってきた感じで、イマイチ盛り上がりに欠ける。ジャズの世界でも、今年はあんまりクリスマス企画のアルバムはリリースされなかったのではないか。

とはいえ、クリスマスである。我がバーチャル音楽喫茶『松和』でも、クリスマス企画のアルバムを採り上げてみる。今回は「ビッグバンド」のクリスマス・ソング集である。1988年に結成され、現在も活動を続ける、ウィントン・マルサリス率いるビッグ・バンド「Jazz At Lincoln Center Orchestra(略称:JALC)」。現代のビッグバンドの中でも、恒常的に活動を続けている、かつ、メンバーは一流のジャズメンで固めた、超一流のビッグバンドである。

Jazz at Lincoln Center Orchestra with Wynton Marsalis『Big Band Holidays』(写真左)。クリスマス・ソングを中心に演奏した模様を捉えた、そんなビッグバンドの魅力的なライブ盤である。2012年12月7-8日、2013年12月12-13日のライヴ録音。リリースは2015年10月30日。ホリデー・シーズンの為の素晴らしいパフォーマンス。
 
 
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おなじみのクリスマス・ソングはもちろん、サッチモの「‘Zat You Santa Claus?」、ビリー・ホリデイの「It's Easy to Blame the Weather」、レッドベリーの「Good Morning Blues」などでは、ルネ・マリー(René Marie)やセシル・マクローリン・サルヴァント(Cécile McLorin Salvant)、という二人の優れた女性シンガーのフィーチャーが聴きどころ。

切れ味良く、ドライブ感とダイナミズム溢れるところが、このビッグバンドの個性。加えて、一流のジャズメンでメンバーを固めているので、演奏のテクニックが途方も無く高い。ミストーンなど皆無である。そんなビッグバンドがおなじみの聖夜曲をやるのだ。その出来は素晴らしいもので、聖夜曲がここまでアカデミックにかつアーティスティックに仕上げられるなんて、なんか魔法でも見ているかのようである。

ビッグバンドの素晴らしいクリスマス・ソング集。ボーカルも趣味良く収まっており、クリスマス・ソングだからといって俗っぽくならない。何故か我が国では、このジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ(JALC)はウケが悪い。何故なのか判らないんだが、このライブ盤って良い雰囲気のアルバムなので、是非とも一聴をお勧めしたいです。
 
 
 
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2019年11月19日 (火曜日)

僕のエリントン楽団の入門盤

ジャズのビッグバンドの「横綱格」といえば、デューク・エリントン楽団だろう。かたや、カウント・ベイシー楽団という声もあるが、僕はエリントン楽団に軍配を上げたい。音の厚み、個性的なフレーズ、優れたアレンジ。ほんの僅かではあるが、エリントン楽団を「東の横綱」に、ベイシー楽団を「西の横綱」に推したい。

しかし、である。僕はジャズ者初心者の頃、エリントン楽団の良さが全く判らなかった。マイナーでアーバンな響き。分厚いユニゾン&ハーモニー。ちょっと捻れた個性的なフレーズ。当時の僕の耳には重かった。シンプルでキャッチャーなベイシー楽団に走った。あれから、40年あまり経って、今では、先ほどのような評価に落ち着いている。ほんの僅かな差、なんですけどね。

『The Popular Duke Ellington』(写真)。1966年3月の録音。デューク・エリントンは、1974年に亡くなっているので、彼にとっては晩年の録音になる。が、1966年の録音なので音が良い。世代的にハイファイ志向の我々としては、ビッグバンドを愛でる場合、音は良い方が安心するし、集中して聴ける。そういう意味で、この盤は音が良いので、入門盤の位置づけで、エリントン楽団を聴き込むには最適な盤である。|
 
 
The-popular-duke-ellington-1  
 
 
なんせ、冒頭が「Take the "A" Train(A列車でいこう)」なのが良い。小学校6年生の時、ラジオでこの曲の演奏を聴いて、思いっ切り好きになって以来、ずっと愛聴曲。これが良い。今の耳には、この曲の演奏のダイナミズム、繊細さ、奔放さが良く判る。自由奔放に演奏している様で、しっかりと規律が守られ、しっかりとコントロールしている。この良い意味での「抑制の美」が、エリントン楽団の良さの1つだと感じている。

2曲目の「I Got It Bad (and That Ain't Good)」以降、エリントン楽団の自由奔放で、緩急自在で、硬軟自在で、変幻自在な演奏が堪能出来る。収録されている曲は、エリントン楽団の有名曲、十八番がズラリ揃っていて、それだけでもエリントン楽団の真髄を心ゆくまで堪能出来る。まずはこの盤を入門盤として聴き込み、エリントン楽団の他の好盤に手を伸ばして、エリントン楽団の音世界を極める。そのアプローチがお勧め。

油井正一著の『ジャズ―ベスト・レコード・コレクション』にこの盤の評がある。「デューク・エリントンほど同じ作品を何度もレコーディングしながら、そのつど時代にふさわしい編曲としてレコーディングしている人も珍しいだろう。このアルバムはタイトル通りエリントンのファンの人以外にも親しまれている名盤だ。内容的にも彼の代表作の1枚に挙げられる」。けだし名言、けだし言い得て妙である。
 
 
 
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2019年11月16日 (土曜日)

スピード感溢れるビッグバンド

大編成のビッグバンド・ジャズ。ジャズの人気が落ちていく中、ジャズの演奏家自体の絶対数が減少するので、21世紀になったら、ビッグバンド・ジャズは「絶滅危惧種」化しているのでは、と危惧していたが、これは杞憂であった。21世紀に入っても、ビッグバンド・ジャズはしっかりとジャズに根付いている。

Jazz at Lincoln Center Orchestraや、Jazz Orchestra of the Concertgebouwなど、パーマネントな活動を維持しているビッグバンドもあり、意外とビッグバンド・ジャズは人気があるのでは、と睨んでいる。例えば、このビッグバンドも、人気上昇のお陰で実際のビッグバンドが編成された、面白い例である。

Battle Jazz Big Band『4th』(写真左)。2009年7月のリリース。コンマスの吉田治 (as) をはじめとして、純国産のビッグバンドである。リード・トランペットは佐久間勲、則竹裕之 (ds)が正式参加など、腕に覚えのある国内のジャズメンが集結。それぞれの曲のアレンジが優秀で、ダレたところが一切無い。このスタジオ録音2枚目も充実したビッグバンド演奏がぎっしり詰まっている。
 
 
4th-battle-jazz-bigband  
 
 
もともとこの「Battle Jazz Big Band」シリーズって、高速なジャズばかりを集めたコンピCDとして始まった「Battle Jazzシリーズ」が、その人気の高さによって、急遽、オリジナルのビッグバンドを編成し、実際のオリジナルな演奏を撮り下ろして収録を始めたもの。この盤は『4th』=4枚目、だが、実際のオリジナル演奏を収録したアルバムとしては『3rd』以来、2枚目の録音盤になる。

ノリも良く、グルーヴ感も良好、アルバムを聴き終えると、スカッと抜群の爽快感。景気の良いオープニングのバディリッチ作の「Good News」、常識破りのアレンジ、全編トロンボーン・セクションをフューチャーした3曲目「Donna Lee」、手に汗握る、超絶技巧かつ疾走感抜群のラストの「Magic Flea」まで、思う存分、切れ味の良いビッグバンド・ジャズを堪能出来る。

プロのテクニック+学バンのノリ+超カッコいい曲=BATTLE JAZZ BIG BAND、がコンセプトで、高速でスピード感溢れる、格好良く思いっ切り心地良くスイングする演奏は聴き応え充分。一糸乱れぬアンサンブルとダイナミズムは世界の他の優秀なビッグバンドと比肩するもの。久し振りの聴いた『4th』だが、やっぱり良い。これは大変、他のアルバムも聴き直さないとなあ。
 
 
 
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2019年10月30日 (水曜日)

ゴイコヴィッチの未発表発掘盤

ジャズは世界の様々な国で演奏されている。チェコに訪れた時もジャズはあったし、エストニアを訪れた時もジャズは演奏されていた。クロアチアでもイタリアでも、つまりは欧州ではほとんどの国でジャズは演奏されている。1970年代、欧州ジャズが日本に伝わってきて、その欧州におけるジャズの裾野の広さを知って、ビックリしたことを覚えている。

Dusko Goykovich『Sketches of Yugoslavia』(写真左)。今年9月のリリース。バルカンのレジェンド・トランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチの新作である。が、資料を見ると、録音年は1973, 1974年。確かに聴いてみると、音がシンプルでアレンジもシンプルで、現代の音では無い。録音年を見て納得。確かに1970年代のジャズの音。この新作は「未発表発掘盤」である。

ちなみにパーソネルは、Dusko Goykovich (tp) & The Brass and Woodwinds of The NDR Radio Orchestra Hannoverは全曲、リズム・セクションについては、1〜6曲目が、Fritz Pauer (p), Prter Trunk (b), Tony Inzalaco (ds), 7〜8曲目が、Fritz Pauer (p), Bo Stief (b), Ronnie Stephenson(ds)。
  

Sketches-of-yugoslavia-dusko

 
この盤は、NDRビッグバンドをバックに従えて、ダスコ・ゴイコヴィッチが、バルカン・フレイバー満載の泣きのトランペットを吹きまくる作品である。アレンジは映画音楽家として名高いハンス・ハマーシュミットが担当しているのだが、このアレンジがバッチリ填まっている。ビッグバンドをバックにした構成の演奏ではアレンジが成功の鍵を握っているのだが、この盤ではアレンジが優秀。
 
ゴイコヴィッチのトランペットは、東欧的・バルカン的エキゾティズムが濃厚に漂いながらも、欧州ジャズらしい、クールでストイックな硬派なハードバップなブロウが身上。このゴイコヴィッチのトランペットが、ビッグバンドの伴奏の中でクッキリと浮かび上がっている。独特の哀愁感を色濃く漂わせた「エモーショナル & スピリチュアル」な音世界。
 
僕はこのゴイコヴィッチの東欧的・バルカン的エキゾティズム溢れるトランペットが大好きで、初めて出会った1980年以降、ずっと機会有る毎にゴイコヴィッチのリーダー作を聴き続けてきた。今回の未発表発掘盤を聴いて、また、ゴイコヴィッチのリーダー作を聴き直してみたくなった。ゴイコヴィッチのバルカン・フレイバー満載の泣きのトランペットは「秋」の空気によく似合う。
 
 
 
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2019年10月28日 (月曜日)

ベイシー楽団の懐の深さを感じる

カウント・ベイシー楽団と言えば、この盤も良い。実は、ジャズを聴き始めて1年位経った頃、ビッグバンドも聴かないとなあ、というノリで、この盤を手に入れた。原子爆弾のキノコ雲のジャケットがなんとも無神経ではあったが、それが米国である。仕方が無い。しかし、である。僕は当時、この盤の良さがさっぱり判らなかった。

Count Basie and His Orchestra『The Atomic Mr. Basie』(写真左)。1957年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Freddie Green (g), Eddie Jones (b), Sonny Payne (ds), Snooky Young, Thad Jones, Wendell Cully, Joe Newman (tp),Al Grey, Henry Coker, Benny Powell (tb), Frank Foster, Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Marshal Royal, Frank Wess (as), Charlie Fawlkes (bs), Joe Williams (vo)。

錚々たるメンバー。これだけのメンバーである。出てくる音は凄い。カウント・ベイシー楽団の一番良いところがギッシリと詰まった盤である。でも、この盤の良さが判る様になったのは、ジャズを聴き始めてから20年くらい経った頃である。買ったばかりの頃、ジャズを聴き始めて1年位経った頃、録音の古さと当時のステレオセットのチープさが相まって、モコモコで薄いビッグバンドの音に思いっ切り落胆したことを覚えている。
 

The-atomic-mr-basie

 
やはり、ビッグバンドは「そこそこ〜まあまあ」以上のステレオセットで、「そこそこ〜まあまあ」以上の音量で聴くべきである。冒頭の「Kid from Red Bank」のダイナミズム。バンド全体を支配する「圧倒的なスイング感と躍動的なグルーヴ感」。パンチのあるフロント管のユニゾン&ハーモニー。切れ味良く重心の低い、タイトなリズム・セクション。

2曲目の「Duet」のゆったりしたユーモラスなビッグバンドの「掛け合い」。3曲目の「After Supper」での、ベイシーの単音のシンプルなピアノ、そして繊細なビッグバンドのフレーズ。この盤では、カウント・ベイシー楽団の「圧倒的なスイング感と躍動的なグルーヴ感」だけではない、繊細な表現やユーモラスな表現も織り交ぜて、ビッグバンドの最高峰の演奏を聴かせてくれる。

様々なニュアンス、様々な音の楽曲がズラッと並んでいて、聴いていて全く飽きが来ない。何回、聴き直しても全く飽きが来ない。この盤を繰り返し聴くにつけ、カウント・ベイシー楽団の懐の深さ、演奏のバリエーションの裾野の広さを強く感じる。僕はこの盤をジャズを聴き始めてから20年くらい経った頃に聴いて、やっとビッグバンドのポテンシャルに感じ入った次第。しかし、ビッグバンドが判って良かった。
 
 
 
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2019年10月26日 (土曜日)

改めてベイシー楽団のイチ押し盤

カウント・ベイシー楽団と言えば、まずはこの盤が浮かぶ。というか、この盤を一番聴いている。この盤にはカウント・ベイシー楽団の真骨頂である「満ち溢れんばかりのスイング感とグルーヴ感」がギッシリと詰まっている。とにかく、心ゆくまでカウント・ベイシー楽団を楽しめる盤なのだ。

Count Basie and His Orchestra『April in Paris』(写真左)。1955年7月と1956年1月の録音。録音盤としてのカウント・ベイシー楽団の最良の状態を聴くことが出来る。この時のカウント・ベイシー楽団のパーソネルを見渡して見ると。ソロでもレジェンド級のメンバーを半数以上擁して、今から振り返れば、錚々たるメンバーである。そりゃ〜良い音出すよな。

Count Basie (p), Wendell Culley, Reunald Jones, Thad Jones, Joe Newman (tp), Henry Coker, Bill Hughes, Benny Powell (tb), Marshall Royal (as, cl), Bill Graham (as), Frank Wess (as, ts, fl, cl), Frank Foster (ts, cl), Charlie Fowlkes (bs, b-cl), Freddie Green (g), Eddie Jones (b), Sonny Payne (ds), Jose Mangual, Ubaldo Nieto (perc)。
 
 
April-in-paris  
 
 
とにかく冒頭、オープニングのタイトル曲「April in Paris」、邦題「パリの四月」である。この曲の出だしのフロント管のユニゾン&ハーモニーのダイナミズム。むっちゃ格好良く、むっちゃ痺れる。ジャズのビッグバンドの醍醐味がこの前奏のユニゾン&ハーモニーに詰まっている、と言い切っても過言では無いだろう。

「April in Paris」に続く数々の名演ついても、バンド全体を貫くスイング感は半端無い。そして、個々のソロに満ちあふれるグルーヴ感。個々のソロが集まって、バンド全体のうねるようなスイング感の塊になる。そして、そのスイング感とグルーヴ感が相乗効果を生んで、カウント・ベイシー楽団ならではの「パンチ力」を生み出すのだ。

等々云々、些細なうんちくは必要無い。聴けば判る。この盤には、ジャズのビッグバンドの良い部分がギッシリと詰まっている。冒頭のタイトル曲の最初の何小節かを聴けばすぐに納得できる。出来れば良いステレオ装置で、そこそこの音量で聴きたい。ジャズ盤として、ジャケット・デザインも優秀。エヴァーグリーンな好盤である。
 
 
 
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2019年10月21日 (月曜日)

カウント・ベイシー楽団の思い出

実は「ビッグバンド・ジャズ」が大好きである。ジャズを聴き始めた40年ほど前から、ビッグバンド・ジャズが好きである。しかし、ビッグバンド・ジャズを聴くと、である。当時所有のチープなステレオ・セットでは、ビッグバンド・ジャズの楽器毎の分離が良く無い。しかも音の迫力が無い。これではまともにビッグバンド・ジャズを聴くことが出来ない。
 
よって、ジャズを聴き始めて20年ほど、ビッグバンド・ジャズを聴くことを諦めた。ジャズを聴き始めて20年ほど経った頃、まあまあのステレオ・セットを手に入れた。楽器毎の分離もまあまあ、大音量で聴けば、音の迫力もまあまあ。しかし、1950年代の録音では問題が残る。録音が良く無ければ、当時のまあまあのステレオ・セットではビッグバンド・ジャズが楽しめない。それも仕方が無い。
 
ということで、1970年代後半以降の録音状態の良い盤を中心に聴き始めた。ビッグバンド・ジャズの定番と言えば、デューク・エリントンとカウント・ベイシー。最初は「判官びいき」的雰囲気で、カウント・ベイシーを選んだ。1978年、ジャズを聴き始めた頃、そう言えば、カウント・ベイシーの新盤を、例の「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った記憶が甦った。
 
 
Count-basie-live-in-japan-1978
 
 
Count Basie and his orchestra『Count Basie : Live In Japan '78』(写真左)。パブロ・レーベルからのリリース。カウント・ベイシー楽団のライブ盤。タイトル通り、1978年、日本における、横浜市民会館でのライブ録音。カウント・ベイシーは1984年4月に亡くなっているので、まだ存命中の、正真正銘の「カウント・ベイシー楽団」。録音も良く、ビッグバンドの迫力がダイレクトに伝わってくる。スイング感、グルーヴ感に満ち溢れた演奏が素晴らしい。
 
ビッグバンド・ジャズは大人数の編成。15名〜17名、多い時で20名程度。必要となる要素はラグビーと一緒で、「品位、情熱、結束、規律、尊重」だろう。バッチリ合った端正なユニゾン&ハーモニーに「品位」と「結束」を感じ、熱気溢れるソロ演奏に「情熱」を感じる。ソロ演奏のバッキングに、お互いの「尊重」を感じる。そして、なにより、ビッグバンド・ジャズに一番必要なものは「規律(ディシプリン)」。
 
このカウント・ベイシー楽団の演奏には、そのビッグバンド・ジャズに必要とされる要素の全てが備わっている。特に、聴いていてグッと感じるのは、満ち溢れんばかりのスイング感とグルーヴ感。即興演奏を旨とするジャズとは少し異なるビッグバンド・ジャズ。しかし、この「品位、情熱、結束、規律、尊重」を旨とするビッグバンド・ジャズも限りない魅力に満ち溢れている。
 
 
 
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2019年8月27日 (火曜日)

ブレッカー兄弟のトリビュート盤

ジャズの新盤を漁っていて、僕がジャズを聴き始めた頃、今から40年前から活躍し続けている、レジェンド級のジャズマンの名前をリーダー作で見かけた時は居抜きで嬉しくなる。最近、レジェンド級のジャズマンが一人一人鬼籍に入っていくので、とにかく寂しい。そんな中、まだまだ現役、溌剌としたリーダー作をリリースしているのを見ると、ホッとするやら嬉しいやら。
 
Randy Brecker & NDR Bigband『Rocks』(写真左)。2017年1月と2018年5月の録音。主なパーソネルは、Randy Brecker (tp, flh), David Sanborn (as), Ada Rovatti (ts, ss), Wolfganf Haffner(ds)、そしてNDR Big Band。ランディ・ブレッカーのトランペットとデイヴィッド・サンボーンのアルト・サックス。フュージョン・ジャズのレジェンドの名前を見つけてワクワクする。

この盤、伝説のフュージョン・ファンク・バンド、ブレッカー・ブラザーズで活躍したトランペッター、ランディ・ブレッカーがメインのアルバムである。この盤を聴いていると、どこかで聴いたことがあるフレーズがどしどし出てくる。それも、1970年代後半、フュージョン・ジャズ全盛時代、僕がジャズを聴き始めた頃に、しばしば聴いた事のあるフレーズ。
 
 
Rocks  
 
 
そう、それもその筈、この盤、ブレッカー・ブラザーズゆかりの楽曲を中心にした選曲したアルバムなのだ。冒頭の「First Tune on the Set」の出だしのフレーズを聴くだけで「あぁ、これはブレッカー・ブラザーズの音だ」と直ぐ判るほど個性的なフレーズ。今をときめくNDR Big Bandとの共演ですが、ビッグバンドもそのブレッカー・ブラザーズの楽曲の持つファンク的な雰囲気に合わせていて、トータル・サウンドとしても、なかなか格好良い。
 
NDR Bigbandのベーシスト、クリスティアン・ディーナーだろうか、ベースの音が実に良く効いている。ブレッカー・ブラザース独特のグルーヴ感の再現にかなり貢献している。そして、メロディーを再現するのは、ランディのトランペットとサンボーンのアルト・サックス。盟友の二人が年齢を全く感じさせない、時に激しく、時に優しく、成熟した奥の深い溌剌としたブロウを聴かせてくれる。
 
NDR Bigbandの演奏については申し分無い。そのドライブ感、その迫力、その疾走感、どれをとっても超一流。現代のトップクラスのビッグバンドだけある。ビッグバンドでこれだけファンクネスを醸し出すことが出来るなんて、思ってもみなかった。アレンジも良好で、フュージョン・ファンクなサウンドを上手く再現して立派。ブレッカー・ブラザースのトリビュート盤として秀逸な内容。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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