2020年7月 6日 (月曜日)

聴いて楽しい「ファーガソン」

ジャズという音楽は表現の幅が広くて、聴く者と対峙する様なアーティスティックな演奏もあれば、聴いていて単純に楽しいポップでエンターテイメントな演奏もある。ビッグバンド・ジャズも同様で、そのアレンジやソロ・パフォーマンスの内容について、アートな側面を押しだしたものもあれば、とにかく聴いて楽しい、ビッグバンドの魅力がダイレクトに伝わるエンターテイメント名な演奏もある。

Maynard Ferguson『Carnival』(写真)。1978年の作品。ハイノート・ヒッター(非常に高い音域を正確に演奏すること)で知られた、カナダ出身のジャズ・トランペット奏者、メイナード・ファーガソンの人気盤。

メイナード・ファガーソンについては、我が国では『アメリカ横断ウルトラクイズ』のテーマだった「スター・トレックのテーマ」や、シルヴェスター・スタローンの名画「ロッキー」のテーマ曲のトランペットで有名ではあるが、人気はイマイチ。

しかしながら、海外では、世界中のトランペット・プレイヤーから熱狂的に支持されているレジェンド。ファーガソンは40年以上もの間、ジャズ・トランペットにおける最高の巨匠のひとりとして尊敬を受けてきている。我が国での人気の無さはどうにも理解に苦しむ。「ハイノート」がはしたない、などという見当違いの評価もあるのだから困ったものである。
 
 
Carnival-maynard-ferguson  
 
 
さて、この『Carnival』の内容に戻る。冒頭の「M.F. Carnival」のダイナミズム溢れる、めくるめく展開に耳を奪われる。そして、次の曲は、EW&Fのヒット曲「Fantasy」のカヴァー。とにかく楽しい、判り易いアレンジが良い。続く「Theme from Battlestar Galactica」は、なんと、超人『ハルク・ホーガン』のテーマ曲ですね。1980年代、新日本プロレス時代の使用曲。「イチバァーン!」と叫ぶ決めポーズああ懐かしい。

ポップなカヴァー曲が目を引くが、大スタンダード曲も演奏されているのだから、もう何が何やら判らない(笑)。しかし「Stella by Starlight」のアレンジが凄い。ビッグバンドの能力を最大限に引き出すかの様な、目まぐるしく変化するリズム&ビート。そして「Over the Rainbow」。これもアレンジが素晴らしい。ソフト&メロウな「フュージョン・ビッグバンド」的アレンジ。時代に即したアレンジ。素晴らしい。

そして、僕の一番のお気に入りは「Birdland」。Weather Reportの名曲中の名曲。原曲のファンキー度を活かしつつ、エレギの存在のお陰で「ブラス・ロック風」。ドライブ感とグルーヴ感抜群で圧倒的な迫力。このビッグバンド仕様の「Birdland」は聴きものである。

当時の人気曲からスタンダード曲まで、ごった煮の選曲なんだが、一貫性のある格好良いアレンジとファーガソンの圧倒的迫力のトランペットがこの盤を実に楽しい内容のビッグバンド・ジャズに仕立て上げている。とにかく聴いていて楽しいのなんのって。こういうビッグバンド・ジャズがあっても良い。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年7月 5日 (日曜日)

サド=メルの「イチ押しの一枚」

ジャズ・ボーカルとビッグバンドについては、自分の今までの「聴き方の遍歴」は普通では無い。王道であるボーカリストや楽団を最初に聴き込んでいない。ビッグバンドについては、最初は当然、デューク・エリントン楽団とカウント・ベイシー楽団から入るのだが、僕は違った。ジャズを聴き始めたのが、フュージョン全盛期の1970年代後半だったこともあるのだろうが、ビッグバンドへの入り方がちょっと通常とは変わっていた。

ビッグバンド・ジャズで最初にお気に入りになったのが「Gil Evans & Monday Night Orchestra」と「Thad Jones = Mel Lewis & The Jazz Orchestra」そして「Toshiko Akiyoshi-Lew Tabackin Big Band」。そして、1980年代に入ってからは、あろうことか「Jaco Pastorius & Word of Mouth Big Band」であった。エリントン楽団もベイシー楽団も聴くには聴いたんだが、どうもピンと来なかった。

Thad Jones = Mel Lewis & The Jazz Orchestra『Central Park North』(写真)。1969年6月17, 18日、NYのA&R Studios での録音。略称「サド=メル楽団」は、もともと一流ジャズメンがプレイを楽しむことを目的に編成されたリハーサル・オーケストラ。メンバーそれぞれのパフォーマンスの自由度が高いのが特徴。加えて、アレンジが多種多様、実にカラフル。
 
 
Central-park-north  
 
 
そんな「サド=メル楽団」の良いところが満載のスタジオ録音盤がこの『Central Park North』になる。アレンジ方針が固定されていないので、アルバム毎にその「音の色合い」は変わる。この盤については、8&16ビートの大々的導入など、ジャズ・ロック色が強いところが魅力。音の迫力、躍動感、グルーヴ感が半端ない。当時としては「新しいビッグバンド」の音の響きだったのだろう。僕もこの盤については、一聴して虜になった。

とにかく格好良いのだ。冒頭の「Tow Away Zone」のビートの効いたファンキーなリズムが単純に「格好良い」。しかも、ロックなビートにも関わらずスインギー。これが堪らない。この1曲だけでも「今までのビッグバンドとは違う音」を感じることが出来る。このジャズ・ロックなグルーヴ感は癖になる。2曲目の「Quietude」は逆に、コッテコテの「ハードバップ」。洒落たアレンジで古さを感じない。

どの曲にも新しいビッグバンドの響きが感じられるのだが、これは、恐らく、ハナのピアノ、ディヴィスのベース、そして、ルイスのドラムの「リズム隊」の成せる技では無いかと思っている。そして、それをしっかりと成立させているのが、サドの担当する「アレンジ」。リズム&ビートとアレンジの斬新さで、サド=メル楽団の魅力全開の一枚である。
 
 
 

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2020年6月28日 (日曜日)

カウント・ベイシー楽団の入門盤

今年の梅雨は実にメリハリが効いている。降る時は思い切り降る。しかも、ドンヨリ曇り空が結構続く。これがまた鬱陶しい。これだけドンヨリした空模様が続くと気が滅入ってくる。爽快な、スピード感のある、切れ味のある、音圧豊かなジャズが聴きたくなる。そうだ、ビッグバンド・ジャズだ。梅雨の鬱陶しい気分を一掃するには、ビッグバンド・ジャズが良い。

Count Basie & His Orchestra『Basie Straight Ahead』(写真左)。1968年9月mハリウッドのTTG Studiosでの録音。EMI傘下のドットレーベル(パラマウント・レコード)からのリリース。非常に溌剌とした、明るいメリハリの効いたアレンジで統一されている。ベイシー楽団のアルバムの中でも、健康的な明るいビッグバンド・ジャズを聴くことが出来る好盤である。

僕はビッグバンド・ジャズが得意な方では無い。特に、ビッグバンド・ジャズと言えば、デューク・エリントン楽団かカウント・ベイシー楽団か、どちらかである。この双璧の楽団の音を聴きこまない限り、ビッグバンド・ジャズは理解出来ない、ということは判っていた。が、最初にお気に入りになったビッグバンドは「Gil Evans & Monday Night Orchestra」と「Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band」だったので、どうにも「劣等感」が拭えない。
 
 
Basie-straight-ahead  
 
 
それでも、21世紀になって、デューク・エリントン楽団、カウント・ベイシー楽団のアルバムも聴く様になり、やっとビッグバンドが判り出した。そんな中で、まずはカウント・ベイシー楽団の音に傾注した。そして、この盤『Basie Straight Ahead』が一番のお気に入り盤になった。とにかく明るくて判り易い。ノリも良いし、それぞれのソロも輝いている。

カウント・ベイシー楽団の個性である「パンチ力」が溢れんばかりである。加えて、それまでのベイシー楽団のもう一つの個性であった「野放図で豪快なスイング」が「端正で豪快なスイング」に変化している。パンチ力やスイング感は強烈だが、耳につかない。良い音、頃合いの良い刺激として耳に届く。音の重ね方と楽器の鳴らし方が理想的、かつ「野放図から端正」へのアレンジの変化が有効なのだろう。

この盤より「サミー・ネスティコ」が本格的にベイシー楽団に関わり、本盤では全曲の作編曲と指揮をネスティコが務めている。このネスティコの関与がベイシー楽団の音にポジティヴな変化を与えている。「バランス良く繊細かつ骨太」、そんな雰囲気が濃厚なベイシー盤である。とても聴き易いビッグバンド盤で、ビッグバンド・ジャズの入門盤としてもお勧めです。
 
 
 

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2020年6月18日 (木曜日)

タイナーのチャレンジ精神

1970年代のマッコイ・タイナーは「向かうところ敵なし」。しかも人気は抜群。当然、レコード会社もタイナーのやりたいようにやらせていたフシがある。逆にタイナーもレコード会社の要望にはできる限り応えていたみたいで、とにかく、様々な編成で、様々なアレンジで「タイナー・ミュージック」を展開していた。

McCoy Tyner『Inner Voices』(写真)。1977年9月の録音。マッコイ・タイナーが編成したビッグバンドに、コーラスが加わる、ジャズとしては摩訶不思議な編成。このコーラスはクラシック風の正統派なコーラス。タイナーのビッグバンドは、筋金入りの、コルトレーン・ミュージックを昇華・深化させた「タイナー・ミュージック」のてんこ盛り。

冒頭の「For Tomorrow」、いきなりコーラスから入る。思わずジャケットを見直す。すると、明らかにマッコイ・タイナーのピアノが「ガーン・ゴーン、パラパラパラ」と、左手の強いアタックがスピリチュアルに響き、右手の「シーツ・オブ・サウンド」な硬質フレーズが疾風の如く疾走する。ここでもタイナーのピアノは好調である。
 
 
Inner-voices  
 
 
かたや、ビッグバンドの演奏は先鋭的。明確に「タイナーミュージック」。ビッグバンドでモード・ジャズをやってるんで、これはこれで凄い。しかし、なんだがトランペットが入っている分、1960年代のマイルスの「黄金のクインテット」を聴いている感じがどうにも「いけない」。その点を除けば、極上のモード・ジャズである。1970年代後半、純ジャズ受難の時代に、素晴らしいパフォーマンスである。

さて、コーラスである。スピリチュアルな響き、スピリチュアルな志向を増幅する為に取り入れたのだろう。『Sahara』(1972年)での、タイナーの琴、フルートよりは効果があると思うが、『Extensions』(1970年)のアリス・コルトレーンのハープほどでは無い。やりたいことは判るんだが、クラシック風の正統派なコーラスの響きが、相対するビッグバンドの「モード・ジャズ」と融合しきれていない、と感じるのだ。

この盤は、聴き手の、この「コーラス」に対する想い、によって評価が変わるだろうなあ。精神性の部分を楽器によって表現する。意外と難題で、コルトレーンも苦労した。タイナーもこの難題に様々な形で挑戦している。その1つがこの「コーラス」。この盤でも、あくまで前進あるのみ、「タイナー・ミュージック」のチャレンジ精神が溢れている。この盤の評価については、僕はそのチャレンジ精神を買いたい。
 
 
 

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  ・『Bobby Caldwell』 1978

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  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

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  ・太田裕美『心が風邪をひいた日』
 

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2020年6月15日 (月曜日)

1970年代クインシーの第一歩

久々に「クインシー・ジョーンズ」を聴き直している。特に1970年代。クインシー・ジョーンズのビッグバンドが一番充実していた時代である。クインシーのアレンジは「融合」志向。1960年代から、ジャズをベースとしながらも、他のジャンルの音世界と融合して、クインシー独特の音世界を創り出してきた。

そして、1970年代のクインシーは「R&B」をメインとした米国ルーツ・ミュージック、アフリカン・アメリカンのルーツ・ミュージックをピックアップした、例えばソウル、R&B、そしてゴスペルとの融合。そして、いち早い「フュージョン・ジャズ」への適応。そんなクインシー独特の個性を反映したビッグバンド・ミュージックを収録したアルバムが多数リリースされている。その先鞭をつけたのがこのアルバム。

Quincy Jones『Smackwater Jack』(写真)。1971年の作品。ちなみにパーソネルは、メインストリーム・ジャズ系、クロスオーバー・ジャズ系の一流ミュージシャンが多数参加している。主だった者を上げると、Freddie Hubbard (flh), Eric Gale, Jim Hall, Joe Beck (g), Toots Thielemans (harmonica), Grady Tate (ds, perc), Bob James, Joe Sample (key), Jaki Byard, Monty Alexander (p), Jimmy Smith (org), Milt Jackson (vib), Chuck Rainey, Bob Cranshaw, Ray Brown (b) 等々、新旧織り交ぜた優れもの集団。
 
 
Smackwater-jack
 
 
アレンジが素晴らしい。かつ、選曲がユニーク。冒頭、タイトル曲の「Smackwater Jack」は、1971年のキャロル・キングの名盤 『Tapestry』収録の名曲。この名曲をいち早く採用し、グルーヴ感溢れる、クールでR&B風なアレンジを施している。続く2曲目の「Cast Your Fate To The Wind」はメロウな名演で、既に後のフュージョン・ジャズの「ソフト&メロウ」を先取りしている。

3曲目の「Ironside」は、邦題「鬼警部アイアンサイドのテーマ」。イントロのサイレン音、ブラスのユニゾン&ハーモニーを聴くだけで「ああ、あれか」とニンマリする有名曲。我が国でもテレビ番組やコマーシャルのBGMに使われている。続く4曲目の「What's Going On」はマーヴィン・ゲイの名曲のカヴァー。この曲はジャズの世界で結構カヴァーされているが、このクインシー版のカヴァーが秀逸。前半のボーカル部も良い雰囲気だし、後半のインストは、1971年にして極上のフュージョン・ジャズな展開。惚れ惚れする。

続く「Theme from "The Anderson Tapes”」は極上のジャズ・ファンク。ビル・コスビーのヴォーカルをフューチャリングした「Hikky Burr」もクールでジャジーなR&B風アレンジが効いている。1970年代のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの雰囲気を先取りした、クインシーのビッグバンド・サウンドは実に「新しい」。正統なビッグバンド・ジャズという観点では、このクインシーのビッグバンドは「異端」。しかし、今の耳で聴くと実に「新しい」。今でも古さを感じさせないのは流石だ。
 
 
 

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  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

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2020年6月14日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・174

ジャズのビッグバンドについては、1950年代の終わりから1960年代に入って、どんどん深化していった。まずアレンジのテクニックの深化。1950年代は、デューク・エリントン楽団か、カウント・ベイシー楽団か、どちらかのアレンジや展開が主流だった。米国西海岸ジャズにおいては、西海岸ジャズの「聴かせるジャズ」の流れのもと、洒落たアレンジを施した、お洒落なビッグバンド・ジャズが流行っていた。

が、この米国西海岸ジャズの洒落たアレンジのビッグバンドの流れを取り入れつつ、ギル・エヴァンス、クインシー・ジョーンズ、オリバー・ネルソンらを中心に、優れたアレンジのもと、アーティスティックなビッグバンド・ジャズが展開されたのが1950年代の終わりから1960年代。それまでのビッグバンド・ジャズの定石に囚われない、新しい音の響きが爽やかである。

Quincy Jones and His Orchestra『The Quintessence』(写真左)。1961年11月29日と12月18日の録音。パーソネルは、3つのグループに分かれる。どういう意図で分けられたのかは判らない。しかし、どのグループの参加メンバーにも、当時の一流どころのジャズメンが顔を揃えている。ジャズオケには珍しい楽器、ハープやチューバ、フレンチホルンが音の彩りを添えている。
 
 
The-quintessence
 
 
この盤の冒頭のタイトル曲「The Quintessence」を聴くにつけ、アレンジのテクニックが飛躍的に向上しているのを感じる。ブルースに拘らない、アーバンでジャジーな、じっくりと「聴かせる」アレンジが素晴らしい。とにかく、じっくりと聴いていると、それまでにないユニゾン&ハーモニーの響きとか、それまでにない楽器、ハープやチューバ、フレンチホルンの「小粋な」使い方がしっかりと確認できて、とにかく面白い。

加えて、ビッグバンドの演奏も、当時のジャズ演奏について最先端のトレンド、モードとかフリーとか、を駆使して、とにかく「新しい」音を繰り出している。クインシー・ジョーンズのビッグバンドのアレンジは、ソロイストのパフォーマンスが活きる様な、映える様なアレンジ。この盤に参加している名うての名手達は、そんなアレンジの中、魅力的なアドリブ・ソロを展開している。
 
クインシー・ジョーンズのアレンジには、コマーシャルな雰囲気は感じ無い。ストイックでアーティスティックな雰囲気の中、爽やかなファンクネスが漂うところが堪らない。この『The Quintessence』では、そんなクインシーのアレンジの妙が心ゆくまで堪能出来る。そして、最後に、この盤、録音がとても良い。楽器毎の音の分離と粒立ちが明確、出来れば良い再生装置で、そこそこの音量で聴いて欲しい。心地良い迫力満点です。
 
 
 

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  ・『Bobby Caldwell』 1978

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2020年5月28日 (木曜日)

前田憲男とウィンドブレイカーズ

和ジャズ(日本のジャズ)が元気である。ジャズの発祥は米国であるが、我が国の「和ジャズ」の歴史は古い。戦前のスイング・ジャズの流行から始まり、戦後は欧州と同じタイミングで、ビ・バップやハードバップにいち早く適応している。

和ジャズは、この1950年代のビ・バップへの適応から、1960年代はハードバップを中心に拡がりを見せ、1970年代はフュージョン・ジャズに、ビッグバンド・ジャズに活躍。1980年代はバブル景気に乗って、内容の薄いお洒落なジャズが横行したが、バブル景気が弾けて淘汰された。1990年代から第2世代とも呼ばれるべき、新世代のジャズが現れ出で、21世紀に入って、ネオ・ハードバップを中心に、そして、何故か女性中心に隆盛を極めている。

前田憲男とウィンドブレイカーズ『Wind-Breakers』(写真左)。1980年の録音。当時、和ジャズの最先端を行く、前田憲男率いる「ウィンド・ブレーカーズ」の記念すべき最初のレコーディング。 全て前田憲男のオリジナル楽曲で固めた、フュージョン・ジャズ志向のビッグバンド・ジャズ風の音世界である。ちなみにパーソネルは、前田憲男 (p, arr), 沢田駿吾 (g), 荒川康男 (b), ドナルド・ベイリー, 猪俣猛 (ds), 西条孝之介 (ts), 稲垣次郎 (ts, fl), 原田忠幸 (bs), 数原晋 (tp), 伏見哲夫 (tp), 原田靖 (tb)。
 
 
Wind-breakers
 
 
「ウィンド・ブレーカーズ」は、既存の音楽を打破の意を込めているとのこと。確かにその気概が伝わってくる。基本は正統なビッグバンド・ジャズの音世界でありながら、フレーズのそこかしこに、当時流行のフュージョン・ジャズのテイストが見え隠れし、ところどころに、クロスオーバー・ジャズの影を感じる。ハイレベルでモーダルな展開に適度な緊張感を感じ、主旋律の一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーに、ビッグバンドとしての矜持を感じる。

それまでのジャズの歴史の中で流行してきた奏法やテイストを上手くブレンドしているところが、このバンドの真骨頂である。心地良い疾走感、高テクニックに裏打ちされた統一感、印象的なアンサンブル、そして、耳に心地良い迫力。ビッグバンド・ジャズとして聴いても、どれをとっても申し分無い内容になっている。各々のソロ・パフォーマンスとバンドのアンサンブルの両面を重視した構成も当時としてはユニーク。

1980年代を迎えるに当たって、それまでと違った、新しいジャズの響きを提示しているところが好印象。そういう意味で、バンド名の意図するところの「既存の音楽を打破の意」を十分に反映していると言える。もっと再評価されて然るべき好盤であると僕は思う。ちなみに、僕がジャズを聴き始めて3年目、この盤は愛聴盤の一枚でした。懐かしくもありますが、今の耳にも十分に響く、素敵な音だと感じます。
 
 
  

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 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年5月25日 (月曜日)

ながら聴きマイ・フェア・レディ

My Fair Lady(マイ・フェア・レディ)は有名なミュージカル。オードリ・ヘップバーン主演で映画化もされているので、日本でもかなり有名なミュージカルである。このミュージカルの挿入歌はジャズ化に向いているようで、結構な数、ジャズ化カヴァーされている。一番有名なのが、シェリー・マンのバージョン。ピアノのアンドレ・プレヴィン、ベースのルロイ・ヴィネガーとのピアノ・トリオでの名演である。

地味ではあるが、ジャズ・ピアノのレジェンド、オスカー・ピーターソンも、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのジーン・ガメイジとのピアノ・トリオでの好盤である。が、何故か人気が無い。恐らくドラムの差だろう。

Billy Taylor『My Fair Lady Loves Jazz』(写真左)。1957年1ー2月の録音。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Ernie Royal (tp), Don Elliott (tp, mellophone, vibes, bongos), Jimmy Cleveland (tb), Jim Buffington (French horn), Don Butterfield, Jay McAllister (tuba), Anthony Ortega (as, ts), Charlie Fowlkes (bs, b-cl), Al Casamenti (g), Earl May (b), Ed Thigpen (ds)。

このビリー・テイラーの「マイ・フェア・レディ」は、テイラーのトリオをメインにはしているが、Quincy Jones(クインシー・ジョーンズ)が、アレンジと指揮を担当。ビッグバンドの伴奏をバックにしていて、アルバム全体の印象は、ビッグバンド仕様の「マイ・フェア・レディ」。このクインシーのアレンジが絶妙で、アルバム全体に思いっ切り効いている。
 
 
My-fair-lady  
 
 
もともとビリ−・テイラーのピアノは典雅で流麗。バップなピアノではあるが、メロディアスで、どこかイージーリスニング志向の響きがする。この流麗で粒立ちの良いピアノは、クインシーのゴージャズで流麗なアレンジとの相性が良い。違和感無く、テイラーのピアノが溶け込んでいる。「マイ・フェア・レディ」の挿入歌は、どれもメロディアスなものが多いので、このクインシーのアレンジがバッチリ合う。

冒頭の「Show Me」から「"I've Grown Accustomed to Her Face」を聴くと、ハードバップでスインギーなジャズ仕様というよりは、流麗でメロディアスなビッグバンド仕様という感じ。といって、ビッグバンドの音はあくまでシンプルで、ビリー・テイラーのピアノを惹き立てる役割に徹している。典雅で流麗なテイラーのピアノが殊更に映える。

このビッグバンドの伴奏、ちょっとユニークな音をしていて、チューバやフレンチ・ホルン、バス・クラリネットの音色を上手く活かしている。これがストリングスだったら、ちょっと俗っぽいイージーリスニング風のジャズになっていたのだが、ストリングスを採用しないところが、アレンジの職人、クインシーの面目躍如たるところ。このクインシーの独特のアレンジがこの盤を特別なものにしている。

でも、このビリー・テイラーの「マイ・フェア・レディ」も、我が国で人気が無いんだよな。実は僕も、21世紀に入って、インパルス・レコードのカタログを眺めていて、その存在に気がついたくらいだ。でも、ビッグバンド仕様のお洒落なイージーリスニング・ジャズ志向の「マイ・フェア・レディ」として聴きどころは満載。ながら聴きに向く、イージーリスニング・ジャズ志向の好盤だと思います。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて      2020.05.11更新。

  ・『Another Page』 1983

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  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月 9日 (木曜日)

The Music Of Wayen Shorter

ジャズ・トランペッターのレジェンド的存在、ウィントン・マルサリスはJALCの芸術監督であり、そのマルサリスが率いるジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラ(The Jazz at Lincoln Center Orchestra with Wynton Marsalis, JLCO)は、JALC(Jazz at Lincoln Center)の常設のジャズ・オーケストラ。現代のジャズ・オーケストラの代表格である。

このJLCOは、ジャズにおいて、興味深い、様々なテーマを設定、それをジャズ・オーケストラの演奏にアレンジ、現代のジャズの演奏トレンドの最先端を意識した「ビッグバンドなパフォーマンス」を披露してきた。デューク・エリントン、キューバン・ジャズ、時には複数のテーマを融合した組曲など、優れたアレンジと演奏で、ジャズ・オーケストラの魅力を我々に見せつけてくれている。

The Jazz at Lincoln Center Orchestra with Wynton Marsalis『The Music of Wayne Shorter』(写真左)。2015年5月に3晩に渡って行われたライヴコンサート「The Music Of Wayen Shorter」のライブ音源。タイトルからして、ずばり「ウェイン・ショーター・トリビュート」。ウィントン・マルサリスが、ウェイン・ショーターの歴史的10曲をJLCO向けにアレンジ、その演奏を収めたCD2枚組のライブ盤である。副題に「feat. Wayne Shorter」とあり、この盤は、JLCOにウェイン・ショーター自身が客演しているのだ。
 
 
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まず、選曲がユニークというか渋い。オープニングはアルバム『ジュジュ』から「イエス・オア・ノー」。以降、『ネイティヴ・ダンサー』から「ダイアナ」、ジャズ・メッセンジャーズ時代の名曲・名演で名高い「ハマー・ヘッド」や「コンテンプレイション」、『ナイト・ドリーマー』から「アルマゲドン」、『アダムス・アップル』から「テル」、『アトランティス』からの「インデンジャード・スピーシーズ」や「ザ・スリー・マリアズ」など、ショーター者であれば、お馴染みの名曲がズラリ。

もともとJLCOの演奏能力は相当に高い。今回の「ウェイン・ショーター・トリビュート」でもその演奏能力を存分に発揮している。ショーター作の楽曲は、メイン・フレーズが基本的に妙に捻れていて、通常の楽曲には無い多国籍感が満載。クラシックはもとより、ジャズ・スタンダードにも無い、不思議で捻れた、通常では演奏し難いフレーズを、いとも軽やかに演奏していくJLCO。総帥のマルサリスのトラペットも、ショーターの楽曲の個性を上手く惹き立てるフレーズが見事だ。

ウェイン・ショーターのテナーも上々。ソロのフレーズを少し聴くだけで「これって、ショーターのソロだよな」と判る、その音の個性は、さすがジャズ・テナーサックスのレジェンドの一人だけある。JLCOのバッキングが、ショーターを鼓舞し、ショーターのフレーズを惹き立てるイメージで、これまた素晴らしいパフォーマンス。いやはや、JLCOは現代のジャズ・オーケストラの代表格であることを再認識した。素晴らしいビッグバンド・サウンドです。
 
 
 

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2020年3月28日 (土曜日)

心地良きビッグバンドとの共演

ビッグバンドとの共演は、ソロイスト側には「テクニックが優れていること」「フレーズが明確でハッキリしていること」、そして、ビッグバンド側には「ソロ楽器を意識したアレンジが施されていること」「ソロイストを前面に押し出す伴奏上手であること」が、それぞれ要求される。そして、その要求が満足されたら、その共演は素晴らしいジャズの音世界への昇華する。

Bill Laurance & WDR Big Band『Live at the Philharmonie Cologne』(写真左)。2018年11月24日、ドイツはケルンの「the Philarmonie」でのライブ録音。スナーキー・パピー結成当時からのメンバーであるキーボーディスト「ビル・ローレンス」と、ケルンの名門ビッグ・バンド「WDR Big Band」との共演。そして、WDR Big Bandのコンダクターは「ボブ・ミンツァー」。

スナーキー・パピーの知性あふれるクールなサウンド・イメージがベースとなって、ビッグバンドのアレンジが為されているように思う。スナーキー・パピーのキーボーディスト、ローレンスのピアノがくっきり浮かび上がる、つまり、WDR Big Bandがソロイストを前面に押し出す伴奏上手となる為のアレンジである。従来のWDR Big Bandの表現とは全く異なる、クールで流麗でスムースな音の流れ。現代の「今」のビッグバンドの音である。
 
 
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ビル・ローレンスは、スナーキー・パピーでのプレイの様に、クールで流麗でキャッチャーなフレーズを弾きまくる。印象的なフレーズがどんどん湧き出てきて、ポップな展開あり、流麗な展開あり、耳に楽しく、耳に心地良い印象的なフレーズ満載。ジャジーでファンキーな要素はまず見当たらない。良質なフュージョン・ジャズを基調にした様なフレーズの作り。それでいて、タッチと弾き回しは純ジャズそのもの。

その印象的なフレーズをWDR Big Bandがしっかりと受け止めて、さらにローレンスのピアノを際立たせている。ローレンスのアドリブ展開の表現の変化に応じて、WDR Big Bandもしっかりとその変化に追従し、その変化に適応する。凄い力量をもつビッグバンドだ。WDR Big Bandのソロイスト達も、ローレンスの醸し出すサウンド・イメージに則りつつ、個性的なアドリブ・ソロを展開する。それはそれは聴き所満載で、あっと言う間に時間は過ぎていく。

ビル・ローレンスは1981年生まれなので、今年まだ39歳。中堅の入り口に差し掛かった若き才能とベテラン・アレンジャー/コンダクターのボブ・ミンツァー、そして、百戦錬磨のアンサンブルのWDR Big Band、の3者が有機的に融合し生み出された「一期一会」の音世界。 クールで流麗でキャッチャー、そしてダイナミック。今までに無い、新しいピアノとビッグバンドの共演サウンドがこの盤に詰まっている。
 
 
 

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