2019年12月 9日 (月曜日)

西海岸の幻の美人ピアニスト

Mode Labelの「西海岸の肖像画ジャケット」のシリーズ、ちょっと古風な肖像画の様な、やけにリアルな顔がアップのジャケットの他に、上半身の姿や全身の姿を描いたものもある。タッチが全く一緒なので確実に判別できる。今日は「上半身の姿」を描いたジャケットからの一枚。

『Joanne Grauer Trio』(写真左)。1957年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Joanne Grauer (p), Buddy Clark (b), Mel Lewis (ds)。女性ジャズ・ピアニスト、ジョアン・グラウアーがリーダーのトリオ編成。ジョアン・グラウアーは「幻の美人ピアニスト」と言われる。活動は長くは続かず、結局この一枚を残して消えたらしい。

しかし、このジョアンのピアノ、爽快である。明確なタッチと疾走感のあるアドリブ・フレーズ。端正なバップ・ピアノ。ファンクネスはほとんど感じないが、オフビートが明快で、マイナーなフレーズがアレンジ良く展開されるので、とてもジャジーに感じる。タッチが明確なので、初めて聴いた時は男性ピアニストだと思っていた。それほどまで、端正でダイナミックなピアノである。
 
 
Joanne-grauer-trio-1  
 
 
タッチやフレーズを聴いていると、なんとなく、ハンプトン・ホーズを想起する。ハンプトン・ホーズよりも端正で明確。破綻が全く無いところがジョアンの良いところ。アドリブ・フレーズはスケールが広く、ダイナミック。スローなバラード演奏については、繊細なタッチで紡ぎ上げるフレーズがなかなか良い。

バックのバディ・クラークのベースとメル・ルイスのドラムが小気味良い。リズム&ビートを確実に刻むだけ、かと思いきや、よくよく聴くと、いろいろと小粋なことをやっている。切れ味良く、趣味良く、ジョアンのピアノを鼓舞する。これがまた、このトリオ盤の聴きどころである。小粋なリズム隊。良い感じである。

エヴァ・ダイアナ(Eva Diana)による特徴あるイラストからも、その美貌が伝わってくる。このトリオ盤一枚だけで姿を消したらしいが、なんと、自己プロモ用の限定プレス盤で、2008年にカムバックしている(写真右)。その演奏内容は「エレピによるファンク・グルーヴな演奏」らしい。なんともはや、理解不能な美貌ピアニストである。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年12月 6日 (金曜日)

大江千里『Hmmm』は愛らしい

大江千里と言えば、1980年代から90年代にかけて、Jポップの人気シンガー・ソングライターで名を馳せた逸材である。ポップでお洒落な、和製AORな音作りで一世を風靡した。そんな大江千里が、50歳を目前にした2008年、日本国内での自身の音楽活動を休業し、ニューヨークに在住。2012年にはジャズ・ピアニストとしてのデビューを果たしたのである。

これにはビックリした。まず、そんなに簡単に、プロのジャズ・ピアニストになれる筈が無い。 明らかに無謀だ、と思った。確かにピアノは上手かった。それでも、途中から我流のピアノ。50歳を目前にして、ジャズ・ピアニストを目指すなんて、とハラハラして見守った。ジャズのデビュー盤『Boys Mature Slow』からハラハラしながら、ずっとリーダー作を聴いてきた。

大江 千里『Hmmm』(写真左)。ジャズ・ピアニスト転身後6枚目となるオリジナル・アルバムになる。今年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Senri Oe (p), Ari Hoenig (ds), Matt Clohesy (b)。NYでも屈指の名ドラマー、アリ・ホーニグにオーストラリア出身でNYで活躍するベーシスト、マット・クロージーを迎えたトリオ編成。
 
 
Hmmm-ohe
 
 
聴いてみてまず一言で言うと「良いアルバム」である。そして「個性的」なアルバムである。大江千里とは意外と「曲者」である。ジャズ・ピアニストとして一筋縄ではいかない、戦略的に「独特の個性」を演出している。過去のジャズ・ピアニストの一流どころを研究はしているものの、全くフォローをしていない。過去のジャズ・ピアノをフォローせずして、独特の個性を表出する。

これが成立するんだからジャズは面白い。とにかくそれぞれの楽曲のテーマ部の旋律が心地良く、アドリブの展開は流麗で愛らしい。こういう心地良く愛らしい、ジャズ・ピアノのフレーズや展開を僕はあまり聴いた事がない。この大江千里の『Hmmm』を聴いて、ちょっとビックリした。こういう志向がまだジャズ・ピアノに残っていたんやなあ。

この新盤、大江千里のJポップ時代に培った「流麗で愛らしいポップな感覚」とコンテンポラリーな純ジャズが見事に融合した、アーバンで小粋で、心地良く洒落た音世界を聴かせてくれる素晴らしい「仕業」である。僕はこの新盤に大江千里の「戦略性」を垣間見た気がしている。大江千里というジャズ・ピアニストは良い意味で「したたか」である。
 
 
 
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2019年12月 4日 (水曜日)

西海岸独特のピアノ・トリオ盤

Mode Labelの「西海岸の肖像画ジャケット」のシリーズ、ちょっと古風な肖像画の様な、やけにリアルな顔がアップのジャケットのシリーズの3作目になる。この人の名前は西海岸ジャズの名作『踊り子』『お風呂』の紙ジャケで、優秀なアレンジャーとして知った。米国西海岸ジャズにおけるアレンジャーの第一人者。そう「マーティ・ペイチ」。

マーティ・ペイチは、1925年1月23日米国オークランド生まれ。最初はジャズ・ピアニスト。M.C.テデスコに楽理を学び、アレンジャーとしても注目を浴び、ピアニストよりも、アレンジャーとしての活動が中心となっていった、米国西海岸ジャズらしい、変わり種のジャズマンである。

『Marty Paich Trio』(写真左)。1957年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Marty Paich (p), Red Mitchell (b), Mel Lewis (ds)。西海岸ジャズのファースト・コールなベーシスト、レッド・ミッチェルと、小粋かつ堅実なドラミングが身上のメル・ルイスを擁した堂々のピアノ・トリオ編成。
 
 
Marty-paich-trio-1  
 
 
マーティ・ペイチの、アレンジャーでは無い、ピアニストの側面にスポットライトを当てた、ピアニスト=ペイチの素敵な「ピアノ・トリオ」盤である。冒頭の「I Hadn't Anyone 'Til You」の愛らしいイントロのピアノの響きを聴くだけで、ペイチの、その趣味の良く愛らしい小粋なピアノが良く判る。

米国西海岸ジャズらしく「聴かせる、聴いて貰う」ジャズ・ピアノである。聴き耳を立てたくなる、じっくり聴き味わいたくなる演奏である。決して叩かない、決して高速フレーズは弾かない。聴き易く聴き応えのある「ミッド・テンポ」な演奏が心地良い。淡々とシンプルに流麗に弾き進めているが、以外と複雑なフレーズを織り込んでいる。テクニック度は高い。

収録されたどの曲もアレンジ良好。さすがアレンジの才人。とても趣味の良いピアノ・トリオ盤で、こんなピアノ・トリオ盤は東海岸ではちょっと見当たらない。西海岸ならではのピアノ・トリオ盤と言えるでしょう。ペイチのピアニストとしての力量を再認識出来る好盤です。ピアノ・トリオ者の方々に特にお勧め。
 
 
 
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2019年12月 3日 (火曜日)

ジャス喫茶で流したい・156

こういうジャズ盤に出会うと思わず頬が緩む。というか、緩みっぱなしになる。テナー・サックス+オルガン+ドラムスの「オルガン・トリオ」。ジャズにオルガンは良く似合う。古くは1950年代のハードバップの時代から、オルガン・ジャズは人気である。そんなオルガン・ジャズが、現代の、21世紀の今でも「ある」のだ。嬉しいではないか。

James Carter Organ Trio『Live From Newport Jazz』(写真左)。2018年 Newport Jazz festivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、James Carter (ts), Alwx White (ds), Gerard Gibbs (org)。実は、僕はリーダーの「James Carter(ジェームス・カーター)」を良く知らない。

ジェームス・カーターとは誰か。ジェームス・カーターは、1969年1月3日生まれ。今年でちょうど50歳。ジャズの世界では中堅からベテランに差し掛かる年齢。出身が「ジャズメンの古都」デトロイトというのが良い。若かりし頃は、ジョシュア・レッドマンの好敵手として注目を集めた強烈な個性をもつテナーマンである。
 
 
Live-from-newport-jazz  
 
 
さて、このライブ盤は、ジャンゴ・ラインハルトによって作曲された、または彼に関連した6つの楽曲を収録。そういう意味で、演奏自体が浮ついていなくて、実に渋く実に粋である。カーターのテーマ部は堅実で正統派、アドリブ部は野性味溢れるアブストラクトでフリーな展開。これが実に心地良い。いずれの楽曲もスピリチュアルでエモーショナルで、「ハートに染み入る」演奏である。

オルガンが効いている。オルガンの音は嫌が応にも演奏全体をジャジーな雰囲気で染め尽くす。そこにソウルフルなドラミングがフロントのテナーを鼓舞し煽る。カーターのテナーは自由奔放に激情豊かに、思いっ切りテナーを吹き上げる。そして、それが耳に付かない。流麗でキャッチャーで「フリーなアドリブ展開」。そして、オルガンがジャズのグルーヴの大本をしっかり押さえる。

カーターいわく「オルガン・サウンドはアフリカ系アメリカ人のルーツの一端を担っている。これらはスピリチュアル・ジャズからソウル、ネオ・ソウルへと繋がり、ジャズの魂を表現する不可欠な要素になっている」。なるほど、そんな理屈をこのライブ盤ではしっかりと音で、立派に表現している。このライブ盤、掘り出し物です。
 
 
 
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2019年12月 2日 (月曜日)

ロソリーノのトロンボーンが良い

Mode Labelの「西海岸の肖像画ジャケット」のシリーズ、ちょっと古風な肖像画の様な、やけにリアルな顔がアップのジャケットのシリーズの2作目になる。この人の名前はつい10年前くらいに、紙ジャケのシリーズで知った。米国西海岸ジャズにおけるトロンボーンの第一人者。そう「フランク・ロソリーノ」。

『Frank Rosolino Quintet』(写真左)。1957年6月、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Frank Rosolino (tb), Richie Kamuca (ts), Vince Guaraldi (p), Monty Budwig (b), Stan Levey (ds)。トロンボーンとテナーサックスの2管フロントのクインテット編成。ケントン楽団、ライトハウス・オールスターズなどで活躍した実力派トロンボーン奏者のリーダー作。

トロンボーンが入っていたら、その低音を活かすべく、もう一本、トランペットかアルト・サックスなどの管を入れて3管フロントにしそうものなのだが、ここでは、ロソリーノのトロンボーンを前面に押し出すべく、2管フロントにしたのだろう。確かに全編に渡って、ロソリーノのトロンボーンがしっかりと目立っている。
 
 
Frank-rosolino-5  
 
 
2管だと双方の相性が決めてになるが、この盤でのロソリーノのトロンボーンとリッチー・カムカのテナー・サックスとの相性は抜群。フレーズのテンポもしっかり同期が取れているし、音の質も良く似ている。これだけ相性が良いと、米国西海岸ジャズの十八番である「ユニゾン&ハーモニー」のアレンジがバッチリと活きてくる。

それが証拠に、この盤でのトロンボーンとテナーのユニゾン&ハーモニーが実に心地良い。流麗でありハモりが心地良い。この心地良いユニゾン&ハーモニーのテーマ部があるので、その後のアドリブ部でのそれぞれの楽器のソロが更に映えるのだ。ロソリーノのソロは結構、自由度が高い。凄まじいテクニックで自由度の高いアドリブを繰り広げる。そんなロソリーノのソロが映える。

加えて、演奏がとても端正で聴いていて気持ち良い。何とか努力して端正な演奏をしているのでは無く、自然と楽しみつつ端正な演奏をしている。この普通に自然に、端正な演奏を実現してしまうところが、なんとも西海岸ジャズらしい。この盤には米国西海岸ジャズの良いところがギッシリ詰まっている。ロソリーノのトロンボーンが良い音してる。聴いていてホノボノ心地良い。
 
 
 
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2019年12月 1日 (日曜日)

1990年代以降のロイドを聴く

チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)。1960年代後半、突如、現れ出で、ジョン・コルトレーンの聴き易い部分をカヴァーして人気を博した。特に、コルトレーンのフリーキーな部分は「人種差別に抗議する怒り」として捉えられ、この「コルトレーンのフリーキーな演奏」を聴きやすくしたところが、フラワー・ムーヴメメント、ヒッピー・ムーヴメントの中でウケにウケた。

しかし、このコルトレーンの聴き易い、ええトコ取りをしたアプローチが胡散臭い。加えて、ロイド人気の半分以上は、バックのリズム・セクションの人気だった。このバックのリズム・セクションが、キース・ジャレットのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムで、当時、それはもう新しい響きのモーダルなジャズで素晴らしいもの。このトリオの人気が意外と大きかった。

1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズの波が押し寄せ、商業ロックが台頭し、メインストリーム・ジャズの人気が衰退していった。合わせてロイドの人気は下降し、遂には忘れられた人となった。1980年代は完全にロイドの名前は無かった。が、つい最近、といっても5年ほど前だが、ECMレーベルからリーダー作を出しているロイドに気がついた。調べれば、1989年から、ECMレーベルの下で、ロイドはリーダー作を連発していた。
 
 
Fish-out-of-water-charles-lloyd  
 
 
Charles Lloyd『Fish Out of Water』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。バックのリズム・セクションは、スウェーデン出身2人、ノルウェー出身1人。チャールズ・ロイドのテナー&フルートのワンホーン・カルテット。リリースは、欧州ジャズの老舗レーベルのECM。

アルバムに詰まっている演奏の雰囲気は「欧州の純ジャズ」。バックのリズム・セクションが北欧メインなので、音の響きは北欧ジャズ。ロイドのテナーは北欧ジャズのスタンダードである「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。米国ジャズってほどでは無いのだが、クールな熱気をはらんだテナーは意外と個性的である。欧州のテナーマンには無い独特の個性。

1989年にロイドはこんなに魅力的なワンホーン・カルテット盤を出していたんですね。全く知らなかった。1960年代の胡散臭さ漂うリーダー作ばかりが我が国ではジャズ雑誌に載ってきたので、ロイドの1990年代の活躍は全く意識していなかった。全く以て不明を恥じるばかりである。そして、今、1990年代以降のロイドのリーダー作を聴き進めている。これが意外と楽しいのだ。
 
 
 
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2019年11月30日 (土曜日)

1970年代ロックのカヴァー集

以前にリリースされた既出のアルバムを色々と漁っては聴き直していたので、そんなに前作と間が空いたのか、とビックリした。スパイロ・ジャイラの新作は約6年振りのリリース。スパイロ・ジャイラは1974年の結成だから、結成以来、既に40年以上が経過している、フュージョン&スムース・ジャズのグループの老舗中の老舗である。

Spyro Gyra『Vinyl Tap』(写真左)。2019年10月のリリース。メンバーは、90年代前半から続く浮動の4人、Jay Beckenstein (sax), Tom Schuman (key), Julio Fernández (g), Scott Ambush (b) と、新加入のドラム奏者 Lionel Cordew。前任のドラム奏者 Lee Pearson は前作1作のみで交代となったようだ。

出てくる音は、確実に「スパイロ・ジャイラ」の音。冒頭の曲「Secret Agent Mash」の演奏をちょっと聴いただけで、それと判る個性。で、この冒頭の「Secret Agent Mash」って、どこかで聴いたことがある。というか、よく聴いた。ロリンズの演奏だ。そう「アルフィーのテーマ」。そして、2曲目以降、どの曲も「あれっ、どっかで聴いたことがあるぞ」という曲ばかりなのだ。聴き進めるにつれ、思わず頬が緩み、ニコニコしてくる。

この盤の収録曲を列挙すると以下の様になる。1曲目のジョニー・リバースの「Secret Agent Mashと8曲目のオリヴァー・ネルソンの「Stolen Moments」のジャズの有名曲以外、1970年代のロック、ソウルの名曲のカヴァー演奏がズラリである。1970年代ロック&ポップスも得意ジャンルとする私としては嬉しいことこの上無し、である。
 
 
Vinyl-tap  
 
 
1. Secret Agent Mash(Johnny Rivers)
2. Sunshine Of Your Love(Cream)
3. Can’t Find My Way Home(Blind Faith/Steve Winwood)
4. What A Fool Believes(The Doobie Brothers)
5. The Cisco Kid(War)
6. You’ve Got To Hide Your Love Away(The Beatles)
7. Tempted(Squeeze)
8. Stolen Moments(Oliver Nelson)
9. Carry On(CSN&Y)

カヴァーされた曲はどれもが名曲揃い。それが故にメイン・フレーズが印象的かつ個性的なものが多く、安易にカヴァーすると、趣味の悪い「軽音楽」っぽくなるのだが、スパイロの場合はそうはならない。それぞれ、メイン・フレーズはなぞらえるだけで、ドンドンとアドリブ部に入って、ジャズっぽいインタープレイを展開する。このアドリブ部をだけ聴くと、何の曲だかまるで分からない。

このアレンジが良い。名曲の持つ魅力的なメイン・フレーズに頼らないところがジャズっぽい。実は今回のスパイロの新作、往年のロックやポップス、ジャズ、ソウルのカヴァー集という触れ込みで、ちょっと不安だったのだが、そんな不安はこの新作を一度聴くだけで全面的に払拭された。スパイロ・ジャイロって、未だに隅に置けんなあ。
 
 
 
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2019年11月29日 (金曜日)

コンテ・カンドリのワンホーン作

米国西海岸ジャズの好盤のジャケットをズラリと並べて見渡していると、ちょっと古風な肖像画の様な、やけにリアルな顔がアップのジャケットが結構あるのに気が付く。Mode Labelのジャズ盤である。これらを僕は「西海岸の肖像画ジャケット」と勝手に名付けて、ちょくちょく引きずり出して来ては楽しんでいる。

『Conte Candoli Quartet』(写真左)。1957年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Conte Candoli (tp), Vince Guaraldi (p), Monty Budwig (b), Stan Levey (ds)。ビンス・ガラルディがピアノのリズム・セクションをバックにした、コンテ・カンドリのトランペットがワンホーンのカルテット編成。「西海岸の肖像画ジャケット」はカンドリの顔のアップ。

コンテ・カンドリって、他の管楽器と混じって演奏することが多くて、カンドリのトランペット単体を心ゆくまで愛でるというところまでいかない。もともと、米国西海岸ジャズって、曲毎の演奏時間ってそんなに長くないので、フロントが2管編成、3管編成の演奏では、管それぞれのアドリブの所要時間は短い。これではアドリブ・ソロの個性と特徴を捉えるにはちょっと辛い。 
 
 
Conte-candoli-quartet  
 
 
しかし、このワンホーン・カルテット盤は違う。管がカンドリだけ。やっとカンドリのトランペットの個性と特徴が心ゆくまで鑑賞出来るってもんだ。オープン・ホーンは明るい開放的な音でよく唄う。テクニックも優秀で指捌きは流暢。ミュート・プレイも淀みが無い。ミュートの音も小気味良くブリリアントで、ブラスの細やかな響きが素敵である。カンドリのトランペット、良い音している。

どの曲も米国西海岸ジャズの特徴が前面に出ている。テーマの部分からアレンジが実に良い。楽器同士の豊かな響き、洒落たユニゾン&ハーモニー。演奏全体の雰囲気は明るく爽やか。お洒落で健康的にアーバン。1950年代の米国西海岸ジャズの豊かで粋で洒落た音世界がこのアルバムに詰まっている。特に、3曲目のバラード曲「Flamingo」は、西海岸ジャズの良い面が思いっ切り出ていて絶品。

このMode Labelの「西海岸の肖像画ジャケット」のシリーズって、米国西海岸ジャズで活躍するジャズマンのショーケースの様な内容。有名どころから、知る人ぞ知るマニア向けまで、米国西海岸ジャズのジャズマンがリーダーとしてずらりと並んでいる。この「西海岸の肖像画ジャケット」を並べてみると壮観である。
 
 
 
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2019年11月28日 (木曜日)

ふてぶてしく頼もしいリーダー作

ジャズの歴史に名を残す、レジェンド級のジャズマンは、デビュー盤である「初リーダー作」で、自らが持つ個性を最大限に表現している。加えて、吹きっぷりも迷いが無く淀みが無く、思いっ切りストレートに吹き切っている。その吹き切り方にも個性があって、「俺はこういう風に吹くのが良いんや〜」という矜持がビンビンに伝わってくる。

Wallace Roney『Verses』(写真左)。1987年2月19日の録音。良い音で録音されてるな〜と思ったら、やっぱり「Van Gelder Studio」での録音ですね。ちなみにパーソネルは、Wallace Roney (tp), Gary Thomas (ts), Mulgrew Miller (p), Charnett Moffett (b), Tony Williams (ds)。なかなか厳選された、若手中心の2管クインテット編成。

マイルスに触発された「ブリリアントなマイルス」的なトランペッター、ウォレス・ルーニーの初リーダー作である。ウォレス・ルーニーの音楽的な原点は1960年代マイルス・デイビス・クインテットにあるのだが、その1960年代マイルスを、純ジャズ復古後の「新伝承派」で焼き直し洗練されたもの。ルーニーは録音当時は27歳。若さに任せて、溌剌と吹きまくっている。
 
 
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マイルスもそうだったし、ブラウニーもそうだったし、ハバードもそうだった。そうそう、モーガンもそうだったし、ショウもそうだった。皆、初リーダー作の頃は、迷いが無く淀みが無く、思いっ切りストレートに吹き切っていた。このルーニーもそうである。テンポの速い曲もスローなバラードも、とにかく思いっ切り吹き切っている。これが清々しい。嫌味にならず、耳に付かず、気持ち良く耳に響く。

これが大切なんだろうな〜。楽器を吹くって、心に響く楽器の音ってそういうもんなんだろうな〜、とこのルーニーの初リーダー作を聴いていて、つくづく思う。マイルスに強く影響を受けているのが良く判るが、マイルスよりもブリリアントで、マイルスよりも躍動感が強い。ここをどう聴くかによって、ルーニーのトランペットの評価は変わる。

マイルス2世と聴けば「イマイチ」、マイルスを基本とした個性と聴けば「有望株」。マイルス2世と形容する人もいるが、僕はマイルスを基本とした新しい個性と聴いた。とても初々しい新しい個性に満ちた初リーダー作である。マイルスのモード演奏で有名な、ビル・エヴァンス作「Blue in Green」を選曲しチャレンジしているところなど、ふてぶてしくて頼もしい。
 
 
 
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2019年11月27日 (水曜日)

小粋なジャケット、小粋な演奏

ジャズにおいて、粋なジャケットに「駄盤」は無い。特に、米国西海岸ジャズについてはその傾向が強い。というか、米国西海岸ジャズのジャズ盤って、ジャケット・デザインが優れているものが多い。米国西海岸ジャズは「聴かせるジャズ」という志向が強いが、ジャケットについても「見せるジャケット」を意識しているのだろう。

とにかく、東海岸の「プレスティッジ・レーベル」の様に、ジャズのアルバムのジャケットがどうしてこうなるのか、と首を傾げるジャケット・デザインが多くあって、どうにもジャケットって、ただLPを収納する厚紙のケースとしか思っていなかったフシがある。それに対して、西海岸ジャズのジャケットは正反対。見ていても安心出来るものが多い。

Red Mitchell『Happy Minors』(写真左)。1955年2月1日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Conte Candoli (tp), Zoot Sims (ts), Bob Brookmeyer (tb), Claude Williamson (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。米国西海岸ジャズを担う優秀なジャズメンがズラリと集う、フロント3管のセクステット構成。このパーソネルを見ただけで、この盤の内容が想像できるくらいだ。
 
 
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3管フロントである。西海岸ジャズである。アレンジが行き届いている。3管フロントのユニゾン&ハーモニーが絶妙である。聴いていて、思わず惹き込まれる。それでいて、バックのリズム&ビートは軽妙で爽やか。決して、3管フロントの味のあるニュアンスを損なうことは無い。冒頭のタイトル曲を聴くだけで「ああこれは、米国西海岸ジャズのハードバップやなあ」と感じるのだ。

そして、ソリッドで骨太で流麗なベースのフレーズを聴いて「ああこれは、レッド・ミッチェルやなあ」と感じる。米国西海岸ジャズの当時のファースト・コールなベーシストは、レッド・ミッチェルとオスカー・ペティフォード。ペティフォードは堅実で野太いベース。ソリッドで流麗なベースはミッチェル。バップなピアノのクロード・ウィリアムソンにはミッチェルが似合う。

ズートのドライブ感溢れる堅実なテナーも良い。ブルックマイヤーのトロンボーンも低音中心に良く効いている。アルバムの収録時間は30分程度と短いが、そんなこと全く気にならない、米国西海岸ジャズの爽快なハードバップ演奏がここにある。やっぱりアレンジが良いんだろうな。演奏の部分部分が耳に残って、暫くしてまた聴きたくなる。そんな長いスパンでの「ヘビロテ盤」である。
 
 
 

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