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2019年4月23日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・113

ジャズはこの約100年間、絶え間なく進化・深化してきた。しかし、進化・深化するだけがジャズでは無い。ある時代の演奏トレンドに戻って、現代でそれを再現するというアプローチもある。ある時代のトレンド、例えば「ハードバップ」時代の演奏の雰囲気を現代の環境で再現する、という企画型アプローチもあるのだ。
 
これはこれで意味のあることで、現代の現時点でのジャズを踏まえてハードバップをやるので、当然、1950年代のハードバップとは全く違った音世界になる。それでも、音の底には1950年代のハードバップのエッセンスがしっかり宿っている。いわゆる「温故知新」なジャズ演奏である。
 
リーダーのジェームス・サッグスは変わったキャリアを持っている。16歳からプロとして活動し、グレン・ミラーやトミー・ドーシーのオーケストラで活躍。その後、アルゼンチンのブエノスアイレスへ渡り、同地で8年間プレイ。現在は米国に舞い戻ってフロリダ州St. Petersburgにて活動しているという。とにかく、我が国ではほとんど無名のトランペッターである。
 
 
Youre-gonna-hear-from-me-james-suggs

 
James Suggs『You're Gonna Hear from Me』(写真左)。2018年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、James Suggs (tp), Houston Person (ts), Lafaette Harris (p), Peter Washington (b), Lewis Nash (ds) 。パーソネルを見ると、大御所テナーのヒューストン・パーソンを迎えた2管フロントのクインテット。ベテランの味のあるドラマー、ルイス・ナッシュもいる。
 
まず、ジェームス・サッグスのトランペットの音が凄く良い。すぅ〜っと伸びた淀みの無いブリリアントな音。揺らぎの無い、破綻の無い、ちょっとレトロな雰囲気(これが粋なのだ)の節回し。ハードバップなトランペットである。そして、バックの演奏も明らかに惑うこと無い「ハードバップ」。それぞれの楽器の音が、どらもがハードバップな音を出している。硬派でバップな演奏がズラリと12曲が並ぶ。
 
1950年代の明快で明るいハードバップがここにある。バップな吹きっぷりの中に、出てくるアドリブ・フレーズは仄かにブルージーであり仄かにジャジー。これが実に粋な雰囲気なのだ。今の時代にこんな徹頭徹尾、ハードバップな演奏がてんこ盛りのアルバムがリリースされようとは。ジャズって面白い。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月22日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・36

ブルーノート・レーベルの4300番台を順番に聴き直し始めた。4300番台は1968年の録音から始まる。ジャズ界はコルトレーンが他界し、混沌とした時期。エモーショナルなフリー・ジャズが幅を利かし、エレクトリック・ジャズが台頭し始める。ロックやポップスが台頭し、売らんが為の豊作として、イージーリスニング・ジャズなどが企てられた。
 
『Introducing Kenny Cox and the Contemporary Jazz Quintet』(写真左)。そんな時期にこのアルバム、ブルーノートの4302番。コンテンポラリーなジャズ・クインテットとタイトルにあるので、意外と先進的な、ニュー・ジャズ志向の演奏と想像する。1968年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Cox (p), Charles Moore (tp), Leon Henderson (ts), Ron Brooks (b), Danny Spencer (ds)。
 
ケニー・コックス(Kenny Cox)とはどんなピアニストか。1940年11月生まれ、米国デトロイト出身。2008年逝去。1960年代後半に、デトロイトで自分のクインテットを作り、ブルーノート・レーベルにこの盤含め、2枚のアルバムを録音しています。リーダー作はこの2枚。サイドマンとして、3〜4枚のアルバムに参加しただけ。
 
 
Introducing-kenny-cox  
 
 
白人ピアニストのケニー・コックス率いるクインテットの演奏を聴けば「ん〜?」。思わず、録音年を再確認。1968年だよな。この盤に詰まっている音は、1950年代後半のハードバップど真ん中な演奏と1960年代前半のモーダルなハードバップ演奏。どう聴いても、1960年代終盤のトレンドを捉えたジャズとは全く言えない。メンバーはほとんど無名。しかし、出てくる音は素性が確かなもの。
 
しかし、当時のブルーノート・レーベル、何を思ってこの盤をリリースしたのかなあ。明らかに時代遅れである。モーダルなハードバップは先進的とは言え、温和で流麗で判り易い演奏。尖ったり捻れたりしたところは全く無い、とにかく理路整然とした由緒正しきハードバップな演奏で、内容的には真摯ではあるが、ちょっと物足りない雰囲気が濃厚に漂う。ジャケ写も明らかにファッション的に時代遅れの服装。でもロゴタイプはちょっとサイケデリックがかっていて、このアンバランスなデザインについても、これがブルーノート盤なのか、とちょっと戸惑います。
 
素性確かなハードバップ演奏には好感が持てます。あまり対峙する思いで聴き込むこと無く、何気なくさり気なく、じゃず喫茶の昼下がりに流すというシチュエーションに良く合った、ながら聴きに最適なモード・ジャズな演奏だと思います。
 
 
 
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2019年4月21日 (日曜日)

ブルーノートの4301番である。

ブルーノート・レーベルはジャズ・レーベルの老舗。ブルーノートの音を聴けば、ジャズの歴史、ジャズのトレンドがたちどころに判る。それだけの内容のある、由緒あるレーベルである。有名なラインナップとしては、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台、4300番台、BN-LAシリーズ、Classic LTシリーズがある。
 
この中で、僕は4300番台が手薄である。4300番台のスタートは1969年。ジャズがポップスとロックに押され、コルトレーンという精神的支柱の大きな柱の一本を失い、エモーショナルなフリー・ジャズが台頭し、本来の純ジャズがマイナーな存在に押しやられた時代。しかし、まずは売れなければならない。イージーリスニング志向に舵を切って、大衆に受けようとするアプローチがひとつのトレンドだった。
 
Gene Harris & The Three Sounds『Elegant Soul』(写真左)。1968年9月19日の録音。ブルーノートの4301番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Carl Burnett (ds)。このジーン・ハリス率いるピアノ・トリオが「スリー・サウンズ」。そこにストリングスが絡む。
 
 
Elegant-soul-4301  
 
 
いやはや、4300番台最初にして、ストリングス絡みの「イージーリスニング・ジャズ」である。冒頭の「Elegant Soul」を聴けばそう思う。しかし、である。曲が進むにつれて、ライトではあるが、ジャズ・ファンクな演奏に徐々に染まっていく。これが当時、大衆に受けたかどうかは定かでは無いが、2曲目以降に「こってこてファンキーな」ジャズ・ファンクが詰まっている。
 
3曲目の「Sittin' Duck」はライトでポジティブなジャズ・ファンク。続く「(Sock It To Me) Harper Valley P.T.A.」は女性ボーカルの絡みが思い切りソウルフル。8曲目は「Book Of Slim」、ストリングス込みのジャズ・ファンク。いやはや、冒頭の「Elegant Soul」に騙されるところだった。
 
しかし、このライトで耳当たりの良いジャズ・ファンクは大衆に受けたのだろうか。今の耳で聴けば、レトロな響きのするジャズ・ファンクで、これはこれで味がある。純ジャズ至上主義の硬派なジャズ者の方々からすると眉をひそめそうなジャズ・ファンクだが、このライトでコッテコテのファンクネスは聴き応え満点である。
 
 
 
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2019年4月20日 (土曜日)

仏ジャズを代表するトリオ盤

ジャズという演奏フォーマットは「即興演奏」が最大の特徴。演奏者個々の力量がそのまま演奏にダイレクトに出る。そして、個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わったりする。この辺が譜面通りに演奏することをメインとしたクラシックと「真逆」なところ。
 
このクラシックと「真逆」のところが面白くて、ずっと40年以上もジャズを聴いている訳だが、この「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」というアルバムについては、ジャズの世界ではちょくちょく出くわす。それほど、ジャズマンは「個性の塊」の人が多くいる。というか「個性の塊」でないとジャズマンは勤まらない、と言った方が良いのか。
 
このアルバムを初めて聴いた時、全く硬派で整ったハードバップ・ジャズだと感じた。絵に描いた様なハードバップな演奏。新しい要素もいろいろ入ってはいる。モーダルな展開もあれば、スピリチュアルな展開もある。ジャズ・サンバもある。それでも基本は「ハードバップ」。よくよく聴くと、そんな雰囲気を決定付けているのは「アコースティック・ベース」の存在。
 
 
Easy-does-it-marc-hemmeler  
 
 
そのアルバムとは、Marc Hemmeler『Easy Does It』(写真左)。仏リヨン出身のジャズ・ピアニスト、マーク・エムラーの1981年リリース作品。ちなみにパーソネルは、Marc Hemmler (p), Ray Brown (b), Daniel Humair (ds), Stephane Grappelli (vln)。エムラーのピアノ・トリオに、ジャズ・バイオリンの名手、グラッペリが1曲だけ客演した構図。エムラーのピアノ・トリオがメインである。
 
ジャズ・ベースのレジェンドの一人、レイ・ブラウンのベースの存在感が半端無い。ブンブン唸るようにアコベの胴鳴り。鋼が鳴るような弦の爪弾き。このブラウンのベースが演奏全体の雰囲気を決定付けている。躍動感溢れ端正なアドリブ展開、ノリ良くスインギーなフレーズ。ブラウンのベースがこの上質なハードバップ演奏の雰囲気をグイグイとリードする。
 
もちろん、リーダーのエムラーのピアノも欧州ジャズのピアノらしく、ファンクネス希薄で端正で流麗。タッチも明確で聴き心地は良好。フランスを代表する名手、ドラムのユメールの好サポートも見逃せない。しかし、そこにブラウンのベースが入ったからこそ、内容の高い、高いレベルの仏ジャズを代表するピアノ・トリオ盤に仕上がった、と僕は感じている。
 
「個性の強い演奏者が入ると、その個性に引き摺られて、演奏全体の雰囲気がガラッと変わる」。ジャズって面白いなあ。
 
 
 
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2019年4月19日 (金曜日)

純ジャズの深化を確実に感じる

最近、ドラマーがリーダーのアルバムがなかなか優れている。昔でいうと「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ」。ジャズ・ドラマーのレジェンド、アート・ブレイキーが座長を務める「ジャズ道場」の様なバンドだった。ドラマーはバンドのバックに控えて、しっかりとリズム&ビートを司る役割。バンド演奏のバランスや機微をコントロールする役割、つまりリーダーとして最適な楽器なのでは、と思うのだ。
 
Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(写真左)。2017年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds), Jason Rigby (ts), Fabian Amazon (p), Chris Morrissey (b)。テナーがフロント1管のカルテット構成。ブラッド・メルドー、デヴィッド・ボウイ、アヴィシャイ・コーエンなどのグループで活躍してきた現代最高峰のドラマーの一人、マーク・ジュリアナのリーダー作。
 
現代最先端の「ネオ・ハードバップ」な演奏。正統な純ジャズといった内容。モーダルな浮遊感溢れる展開あり、端正ではあるが、ややスピリチュアルな響きが芳しい展開あり、正統な純ジャズの伝統を継承した様な、昔からジャズを長年聴き続けて来た耳にも違和感の無い、正統なジャズの雰囲気。
 
 
Jersey-mark-guiliana  
 
 
そんな中、ラテン・フレイヴァーをまとった演奏もある。3曲目の「Our Lady」。1960年代のソウル・ジャズの雰囲気もふっと感じたり、音の雰囲気はレトロなんですが、演奏の切れ味やアドリブのフレーズの響きなどは全く新しい現代のジャズの音。いわゆる「温故知新」的な演奏が聴き応え満点。レトロなアレンジの中に、キラリと光る現代ジャズの響き。良い感じだ。
 
4曲目の「BP」は不思議な雰囲気のする演奏。この不思議な雰囲気は何が原因なのか。バスドラ、なんですね。どうも、リーダーでドラマーのジュリアナがバスドラをずっと踏みながらドラムを叩いているんですよね。これって結構難しいテクニックだと思うんですが、ジュリアナって、ドラムのテクニックも抜群ですね。
 
ジャズの伝統に根ざした現代の純ジャズ。ちょっと聴いただけだと「これって昔のモード・ジャズやん」となるんですが、しっかり聴くとそうじゃないことが直ぐに判る。この盤の音の響きに織り込まれた音のトレンド音のジャンルが、1960年代に比べて格段に多い。純ジャズの深化を確実に感じることが出来る好盤です。
 
 
 
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2019年4月18日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・112

フィル・ウッズのアルト・サックスは爽快である。切れ味の良い、ストレートな吹きっぷり。唄うが如く、伸びやかに吹き回すアドリブ・フレーズ。ファンクネスはそこそこに抑えられ、オフビートの躍動感とジャジーな雰囲気を前面に押し出した音色。フィル・ウッズも個性派プレイヤーの一人である。
 
そんなフィル・ウッズも2015年9月に鬼籍に入ってしまった。既に3年が経過している。それでもまだ未発表集やリイシュー盤が出てくるのだから、ウッズってやっぱり人気のアルト・サックス奏者やったんやなあ、と改めて感心する。そんなリイシュー盤の一枚が、Phil Woods『I Remember』(写真左)。1978年3月の録音。
 
僕はこの盤を知らなかった。ジャズ雑誌の新盤紹介を読んで初めて知った。で、早速入手して聴いてみた。冒頭は、キャノンボール・アダレイ作の「Julian」。ビッグバンドをバックにウッズが吹きまくる。エレピが印象的なゴスペル調のファンキーな演奏だ。うむむ、格好良いでは無いか。ビッグバンドのバックがちょっと甘さを感じさせるが、ウッズのアルトがグッと引き締める。
 
 
I-remember-phil-woods  
 
 
以降、収録曲を眺めてみると、ウッズが敬愛する8人のミュージシャンを追悼したものであることが判る。しかも、これらの曲をオリジナルとは全く別の、ウッズ・オリジナルのアレンジを施してカヴァーしているのだ。このアレンジがどれも良く出来ている。バックにオーケストラ付きの演奏もあるが、決して陳腐になっていない。ぎりジャズとして成立しているアレンジが見事。
 
どの演奏でも、やはりウッズのアルト・サックスの音色が印象的だ。どこで吹いてもしっかりと爽やかに目立っている。思わず、ビリー・ジョエルの「素顔のままで(Just the Way You Are)」での、あの伝説のソロ・パフォーマンスを想起する、ウッズ独特の唄うが如く伸びやかな、切れ味の良い、ストレートな吹きっぷり。聴き応え十分である。
 
ウッズのアルト・サックスをとことん愛でることが出来る、加えて、ウッズのアレンジの才を確認出来る好盤です。盤全体の雰囲気は、アコースティックがメインの演奏ではあるが、ソフト&メロウ、そしてソウルを追求したフュージョン・ジャズっぽい雰囲気が僕は大変気に入りました。早速、今月のヘビロテ盤の仲間入りをしています。
 
 
 
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2019年4月17日 (水曜日)

ルーさん・ウィズ・ストリングス

このジャケットも「もはやジャズでは無い」感じがして、初めて見た時は正直「ひいた」。ジャケットを見た時点では、この盤、初めて見た時点では、ブルーノート・レーベルからのリリースとは思わないだろう。しかも、ブルーノート・レーベル専属のベテランが吹いているのだから、2度ビックリ。
 
Lou Donaldson『Sophisticated Lou』(写真左)。1972年12月の録音。BN-LA024-F。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Eugene Bianco (harp), Joe Venuto (vib), Derek Smith (p,el-p), Jay Berliner (g, 12-string g), Richard Davis (b), Grady Tate (ds), Omar Clay (perc) をメインに、ストリングスがオーバーダビングされている。
 
ルー・ドナルドソン(以降、ルーさんと呼ぶ)は、1926年生まれ。この盤を録音した時点で46歳。既にベテランである。ビ・バップ時代から活躍しており、基本的にブルーノート・レーベルからのリーダー作が多い。ブルーノート・レーベルのお抱えアルト・サックス奏者と言っても良いだろう。そんなルーさんのリーダー作である『Sophisticated Lou』。
 
 
Sophisticated-lou-donaldson_5
 
 
ストリングスをオーバーダビングしているところから、音の雰囲気は「ルー・ドナルドソン・ウィズ・ストリングス」という趣き。ブルーノート・レーベルの製作盤なので、音の作りはしっかりしている。よって、ストリングスの甘きに流された凡盤にはなっていないところが流石である。イージーリスニング・ジャズとして踏みとどまっている。
 
ストリングスのアレンジは1970年代前半の古いイメージのものなので、ストリングスだけ聴くと「ああ、これはイージーリスニング・ミュージックになってしまっているかなあ」と不安になるのだが、ルーさんのアルト・サックスが出てくると、そんな不安は一掃される。ストリングスの存在など全く感じさせず、ルーさんはいつもの「バップなアルト」を吹き上げていく。
 
このルーさんの潔い「バップなアルト」が、この盤をイージーリスニング・ジャズとして踏みとどまらせているのだ。硬派な純ジャズでは無いので、ベテラン・ジャズ者の方々からは眉をひそめられそうな内容ではあるが、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの先駆けとして聴けば、あまり違和感は無い。BN-LA シリーズの盤らしい内容である。
 
 
 
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2019年4月16日 (火曜日)

エルヴィンの理想の純ジャズ

このジャケットには参った。こういう変態ジャケットがところどころ存在するところも、BN-LAシリーズがイマイチ信頼されない所以なんだろう。ただでさえ、BN-LAシリーズはブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズなのに、だ。しかし、この首無しイラストに何か意味があったのかなあ(笑)。
 
Elvin Jones『Mr. Jones』(写真左)。BN-LA110-F。1972年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Dave Liebman (ts, ss, fl), Steve Grossman (ts, ss), Jan Hammer (p), Gene Perla (b), Carlos "Patato" Valdes (congas), Frank Ippolito (perc), Pepper Adams (bs), Thad Jones (flh), Albert Duffy (timpani)。当時、ポスト・コルトレーンと目された、リーブマンとグロスマンがサックスを担当している。
 
パーソネルを見渡すと、リーブマンとグロスマンというポスト・コルトレーンのサックス新鋭二人とベテラン・バリサクのペッパー・アダムス、そして、サド・ジョーンズのフリューゲルホーンの4管フロントが超弩級の布陣である。ピアノは後の「捻れシンセの使い手」ヤン・ハマーで、テクニカルでモーダルな演奏が意外と目立つ。ドラムは当然、エルヴィン・ジョーンズ。その脇をコンガ、パーカッション、ティンパニが固める。
 
 
Mr-jones
 
 
この「首無しジャケット」で強い印象を与えてくれる盤だが、これ、ポリリズムの達人ドラマー、エルヴィン・ジョーンズのリーダー作である。中の演奏は徹頭徹尾、モーダルなジャズ。リーブマンとグロスマンがコルトレーン・ライクなテナーを聴かせるが、コルトレーンよりもスッキリ&ライトである。このテナー2管にアダムスのバリサクが絡んで「重厚感抜群」。コルトレーン・ライクであるが決して、アブストラクトに、フリーにならない。
 
この盤の演奏を聴いていると、エルヴィン・ジョーンズが気合い十分ながら、実に気分良く叩いている様に聴こえる。この盤に詰まっているモーダルなジャズは、コルトレーンがフリーに走る直前の、限りなく自由ではあるが統制の取れたモード・ジャズを彷彿とさせる。エルヴィンはあの頃のモード・ジャズが理想のジャズだったのかもしれないなあ、とこの盤を聴く度に思うのだ。
 
1972年と言えば、クロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックが流行っていた頃。そんな時期に、こんなに硬派で素敵なモード・ジャズを録音していたなんて、意外とBN-LAシリーズは隅に置けない。録音も良く、モード・ジャズとして一流の内容。確実に斜陽の時代だったが、さすがはブルーノート・レーベルである。
 
 
 
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2019年4月15日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・68

ハードバップ時代の終わり、成熟したハードバップという演奏フォーマットで、かなり渋い内容の演奏が埋もれている。特に、中堅どころの職人的ジャズマンのリーダー作に、渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっていたりする。そんなリーダー作を探し、ピックアップし、ジャズ喫茶でかける。ジャズを聴いていて良かった、と思う瞬間である。
 
Gigi Gryce『The Rat Race Blues』(写真左)。1960年6月7日の録音。Prestige RecordsのNew Jazz Label からのリリース。ちなみにパーソネルは、Gigi Gryce (as), Richard Williams (tp), Richard Wyands (p), Julian Euell (b), Mickey Roker (ds)。1960年という録音年から、次のハードバップ時代を担うだろうメンバーが集結している。
 
渋い内容の成熟したハードバップ演奏が詰まっている盤が結構転がっているレーベルが「Prestige RecordsのNew Jazz Label」。このジジ・グライスのリーダー作もそのレーベルからのリリース。いやはや、渋い渋い内容のジャズ演奏がズラリ。決して派手派手しくないし、テクニック的にも中庸を行くもの。しかし、出てくるインプロビゼーションは粋で渋い。ジャジーで味わい深いハードバップ。
 
 
Rat-race-blues-gigi-gryce  
 
 
もともとジジ・グライスのアルト・サックスは渋い。決して大向こうを張るものでは無いし、ハッとするハイ・テクニックで驚かせるものでも無い。どちらかと言えば、リラックスした飄々としたライトなフレーズを吹きながら、ジャジーでファンキーなフレーズを織り込んでいく様な、聴けば聴くほどに味が出てくるような、スルメの様なアルト・サックス。
 
もう一人のフロント楽器、トランペットのリチャード・ウィリアムスが元気溌剌。ハイ・テクニックで歌心を込めつつ、トランペットの真鍮を輝くが如く震わせながら、ブリリアントに吹き上げる。グライスのアルトとは正反対の雰囲気の躍動感溢れる、圧倒的にポジティブなトランペット。グライスとウィリアムス、味わい深いフロント2管である。
 
それまでのハードバップの演奏の成果を踏まえた、味わい深い、小粋な展開に思わずニンマリする。成熟したハードバップだからこそ出来る、ジャズ職人達の素晴らしき「職人芸」。ジャズ喫茶の昼下がり、ノンビリした時間が流れる中、こういう盤の演奏が流れると、その小粋な演奏を、小粋な技を愛でるだけで、「至福の時」が味わえる。
 
 
 
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2019年4月14日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・145

自分の主な趣味として、音楽全般、アルバム蒐集〜鑑賞などは高校時代からなので、約45年のキャリアであるが、もう一つ、長年細々と続けている趣味として「天文」がある。私設天文台を構えて、天体写真などをバリバリ撮りまくるなどという、ヘビーな天文ファンでは無いが、主な天文現象は押さえつつ、四季折々、機会を得ては星を眺めてきた。約50年のキャリアになる。
 
このグループの名前が気になって聴いたら、これがなかなか素晴らしい内容でビックリした。そのグループ名とは「The Comet Is Coming」。和訳すると「彗星がやって来た」。天文が趣味の僕としては「これは何や」、ということで思わず入手したって感じです(笑)。しかし、ジャズの世界らしからぬグループ名ですね。
 
改めて、アルバムの紹介を。The Comet Is Coming『Trust In The Lifeforce Of The Deep Mystery』(写真左)。今年3月のリリース。米国インパルスからメジャー・デビュー盤。現行UKジャズ・シーンの中心人物、サックス奏者シャバカ・ハッチングスの大本命ユニットがこの「The Comet Is Coming」。
 
 
Trust-in-the-lifeforce-of-the-deep-myste  
 
 
メンバーは、King Shabaka (ts,bcl), Danalogue (key,synth), Betamax (ds,perc,programming)。サックス+キーボード+ドラムの変則トリオ・ユニットである。英国は不思議な国で、1970年代からジャズとロックの境界線が曖昧。このThe Comet Is Comingの音も現代の最先端のクロスオーバー・ミュージックという面持ち。
 
サイケデリックでスペーシーでプログレッシブな音。リズム&ビートは明らかにジャジーでダンサフル。キーボードはシンセがメインで、エレクトロニカの要素が強く出ている。新しいスピリチュアルなプログレッシブ・ジャズという雰囲気。僕達、1970年代の「プログレ小僧」からすると、懐かしさすら感じる、耳慣れた音世界。
 
ハッチングスのバスクラが効果的。このエレクトリックなクロスオーバーな伴奏の中で、怪しげに鳴り響くバスクラは、マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」を彷彿とさせる。エレ・ジャズの伝統をも踏まえた、素晴らしいクロスオーバー・ミュージック。マイルスのエレ・ジャズから着々と進化した、現代の最先端のエレ・ジャズの1つがこの盤に凝縮されている。
 
 
 
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