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2018年1月19日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・62

ネットの音楽ダウンロード・サイトって、かなり便利である。アルバムを検索出来るし、1〜2分間、曲の試聴も出来る。また、リコメンド・メニューが充実しているサイトもあって、これがとっても便利。例えば、日頃、愛用しているApple Musicの「For You」というリコメンド・メニューは重宝である。

New Music Mixというメニューでは、事前にお気に入り登録しているジャンルの新盤から、お勧めの曲を選んで聴かせてくれる。このメニューでは、特にジャズのジャンルの新盤をチェック。そして、Chill Mixというメニューでは、リコメンド・エンジンが選んだ、お勧めのアルバムから1曲ずつ選曲して聴かせてくれる。このメニューでは、聴いたことの無いアルバムを試聴でチェックする。

今回、このChill Mixを覗いていて、見つけたアルバム。これは通常、ネットを徘徊しているだけでは見つけることが難しいアルバムである。こういう時、コメンド・エンジンが選んでくれる、僕の好みにあったアルバムは実に参考になるし、あれこれ探し続ける手間が省ける。そのアルバムとは、L'Image『2.0』(写真左)。L'Image=リマージュ。元々は30数年前の幻のグループの最新盤。2009年4月のリリース。

この盤のキャッチコピーが「一枚もアルバムを残すことなく消滅した70年代の幻のスーパーバンドが、30余年を経てついに全貌を現す!伝説のホワイト・エレファントとステップスの間に存在した、正真正銘の幻のスーパーバンドがついに登場!」。ん〜っ。ホワイト・エレファントと言えば、マイク・マイニエリやブレッカー兄弟らのことか、なんて、思わずワクワクする。
 

Limage_2

 
パーソネルを並べた方が早いだろう。Mike Mainieri (vib), Warren Bernhardt (key), David Spinozza (g), Tony Levin (b), Steve Gadd (ds)。うへ〜、なんちゅうメンバーじゃ。もう一度言う。「マイク・マイニエリ、ウォーレン・バーンハート、デビッド・スピノザ、トニー・レヴィン、スティーヴ・ガッド」。フュージョン・ジャズを創り上げた、名うての名手達である。

出てくる音は、絵に描いた様な往年のフュージョン・ジャズ。マイニエリのヴァイブ、バーンハートのキーボード、スピノザのギター、レヴィンのベース、そして、ガッドのドラム。どれをとっても、1970年代、フュージョン全盛時の音がてんこ盛り。しかし、さすがに21世紀に入ってからのリリース。シュッと垢抜けしている。それが、とっても粋である。

ソフト&メロウな演奏が心地良い。キャッチャーなフレーズが心地良い。このアルバムには、フュージョン・ジャズの美味しいところが全て揃っている。こういう、絵に描いた様なフュージョン・ジャズのアルバムが、21世紀になってリリースされるなんて。いやはや、びっくりぽん、である(笑)。

このリリース当時、平均年齢が70歳にならんとする、フュージョン・ジャズのレジェンド達のパフォーマンスの巧みさと爽快感。いや〜聴き応え満点。音楽喫茶の昼下がりにピッタリの、レジェンド達による「現代のフュージョン・ジャズ盤」。こういう盤があったなんて、全く知らなかった。ありがとう「Chill Mix」である(笑)。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年1月18日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・61

寒い冬の昼下がり。南向きの窓から射す陽射しがちょっと眩しい。暖房が効いて暖かな部屋。昼ご飯を食べた体はちょっとホカホカして、とにかく眠い。昼下がりの音楽喫茶は人がまばら。皆、眠そうに目をトロンとさせている。そういう時に流すジャズは、流麗でキャッチャーな「フュージョン・ジャズ」が良い。

加えて、耳に心地良い刺激を与えてくれるギター・フュージョンが良い。キーボードなどの「流麗なフレーズ」が来ると、絶対に寝る(笑)。リズム&ビートが小粋に効いて、お洒落なグルーヴ感が心地良い、ギター・フュージョンが良い。ちょっと人がまばらな、ホカホカ暖かい音楽喫茶に流すにピッタリな、ギター・フュージョンのアルバムを選盤する。

Yellowjackets『Mirage a Trois』(写真左)。邦題『マリブの旋風』。1983年のリリース。あたたかい音のキーボードを主体としたサウンド。そこにロベン・フォードのエレギがうまく絡む。このエレギの音が結構、心地良い刺激で、ほんわかした冬の昼下がりの耳に、とっても心地良い刺激に響く。ロベン・フォードは「Top Secret」「Goin' Home」「Man In The Moon」「Pass It On」の4曲にクレジットされいる。
 

Mirage_a_trois

 
心地良いエレギの使い手はもう一人いる。マイク・ミラーである。キーボードが主役のサウンドに、でしゃばらず、ほど良き主張をしつつ、心地良い刺激を醸し出す。良い感じのエレギで、僕は主役のキーボードよりも「主役」だと感じる。「Elamar」「Man In The Moon」「Nimbus」「I Got Rhythm」の4曲にクレジットされている。

アルバム全編に渡って、明るく幸福感溢れる、ポジティヴなフュージョン・ジャズが展開される。軽快感、爽快感も心地良く、タイトでリズミカルなリズム&ビートは、そこはかとなく「ファンクネス」も漂っている。後のスムース・ジャズど真ん中な、リリコンのパフォーマンスもメロディアスで、とても聴いていて心地よさ抜群。

ラッセル・フェランテのキーボードがメインのサウンドなんですが、そこに実に効果的に絡むロベン・フォードとマイク・ミラーのエレギが印象的。僕はこのフュージョン盤は、ラッセル・フェンテのキーボードがメロディアスで魅力的ですが、実は「エレギがメイン」だと感じています。そういう意味では、ギター・フュージョンというよりは、ギターが効果的に響くフュージョンと言った方が良いですね。好盤です。

 
 

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2018年1月17日 (水曜日)

モンク・トリビュートの変わり種

モンクの楽曲はフレーズが独特。テーマの旋律の流れが独特。少なくとも、クラシックの楽曲の様に、例えば、モーツアルトやシューベルトの様に、流麗で聴き心地の良い旋律の流れでは決して無い。あっちこっち飛んだり跳ねたり。立ち止まったかと思ったら走り出す。硬軟自在、緩急自在、高低自在、既成概念に囚われないフレーズの数々。

モンクの楽曲はそんな独特のフレーズ、独特の旋律の流れが真骨頂。クラシックの流麗で聴き心地の良い旋律が全てとするオーディエンスの方々からすると、絶対に許せない、不協和音にも似た「予測不可能」なフレーズ。決して、スコアに落とすことの無い、自由度の高い、即興性の高い旋律の流れ。これが「填まる」と、こんなにも刺激的で心地良いフレーズって他に無いと、思いっきり「クセ」になる。

『Monk Suite : Kronos Quartet Plays Music of Thelonious Monk』(写真左)。1985年の作品。そんなセロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れを愛でることが出来る、格好の「変わり種」盤である。Kronos Quartet(クロノス・カルテット)は米国の「弦楽四重奏」。1978年より現在までサンフランシスコを拠点に活動を続けている。日本でクロノス・カルテットが一般的に認知されたのはこのアルバムが出た時だった、と記憶している。
 

Monk_suite_kronos_quartet_plays_mus

 
クラシックの弦楽四重奏が「ジャズ」を「モンク」をやる。クラシックが「ジャズ」に、クラシックが「モンク」にアプローチする、という体で、この弦楽四重奏はクラシックでは無いが、なんとかジャズになっている。弦楽四重奏なので、即興のアドリブ・フレーズを弾きまくる、という訳にはいかないだろう。しっかりとスコアに落として、即興風なアドリブ・フレーズを展開するのだが、これがまずまず「ジャズ」の雰囲気を漂わせている。

この弦楽四重奏の演奏で、しっかりと浮き出てくるのが、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れである。スコアに落としているので、余計にその「ユニークさ」が露わになっているのが面白い。モンクの楽曲の特徴がしっかりと捉えられていて意外と飽きない。ただ、残念なのは、ロン・カーターのベースの存在。オーソドックスなウォーキング・ベースで、この弦楽四重奏のバックに入っている存在意義が良く理解出来ない。

あっても無くても良かったロンのベースは差し置き、この弦楽四重奏の「モンク・トリビュート」なアルバムは、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れをしっかりと浮き立たせていて、これはこれで面白い取り組みだと言える。即興を旨とする本格的なジャズを求めるものでは無いが、モンクのユニークさを愛でる上では、なかなか面白い内容の「変わり種」盤である。

 
 

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2018年1月16日 (火曜日)

モンク・トリビュートの好盤

そんなモンクの楽曲であるが、プロのジャズメンとしても、モンクの楽曲は無視出来ない存在みたいで、いつの時代でも「モンク・トリビュート」なアルバムがコンスタントに定期的にリリースされている。即興性や自由度の高い、そして意外性のあるジャズならではの展開がてんこ盛りなモンクの楽曲は、ジャズメンにとっても取り組み甲斐のある素材なのだろう。

と、昨日書いた。確かにそうで、僕はこの「モンク・トリビュート」なアルバムが好きだ。まず、そのジャズメンのスキルが明確に判る。演奏する楽器のテクニック、モンクの楽曲のアレンジ能力、そして、なにより、その演奏するジャズメンの個性が、手に取るように判る。モンクの楽曲って、モンクの奏法って、本当に不思議だ。

Paul Motian『Monk in Motian』(写真)。1989年のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Motian (ds), Joe Lovano (ts), Bill Frisell (el-g), Geri Allen (p), Dewey Redman (ts)。純ジャズ復古の号令がかかって、純ジャズの良作がどんどん量産され始めた頃。良質の「モンク・トリビュート」なアルバム。
 

Monk_in_motion

 
ポール・モチアンは柔軟でハイテクニックな職人ドラマー。メインストリームなジャズもいける。しかも、1970年代は、フリーなジャズをガンガンやった。メインストリームなドラミングも、フリーなドラミングもどちらも優秀。そんな柔軟かつ想像性豊かなドラマーがモンク・トリビュートをやる。つまり、モンクの楽曲の「リズム&ビート」に着目した「モンク・トリビュート」。

モンクの奏法のパーカッシヴな個性は、フロントのロバーノのテナーとフリゼールのエレギで緩和しつつ、モンクの楽曲の個性的なフレーズを浮き彫りにすることに成功している。そこにガッツリ絡む、モチアンのドラミング。モンクの楽曲の持つ独特の「リズム&ビート」をしっかりと印象付けてくれる。

面白いのは、ジェリ・アレンのアコピ。多くのアコピの使い手が陥る状態なんだが、モンクが乗り移ったが如く、モンクのコピーの如く、モンクそっくりに弾く。これではピアニストの個性が全く判らん(笑)。どうも、アコピの使い手にはモンクの楽曲は鬼門なのかもしれない。このアレンのアコピはご愛嬌。このモチアンの『Monk in Motian』、「モンク・トリビュート」の好盤である。

 
 

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2018年1月15日 (月曜日)

モンクをシンセ・エレピで弾く

ジャズを好きになるか、ならないか。それを確かめるには「Thelonious Monk(セロニアス・モンク)」の諸作を聴けば良い。モンクのアルバムを聴いて「面白い」と感じて、聴き込む様になれば「ジャズを好きになる」。「なんじゃこれは」と敬遠すれば「ジャズは好きにならない」。モンクの楽曲が演奏が試金石になる、というのを、昔、雑誌で読んだことがある。

これって、意外と真実だと思っていて、確かに今を去ること35年ほど前。ジャズ者初心者駆け出しの頃、Thelonious Monk『Thelonious Himself』を聴いて、これは面白い、と感じて繰り返し聴き、『Thelonious Monk Trio』の「Blue Monk」を聴いて、このユーモラスな曲にゾッコン惚れ込み、そのフレーズを口ずさみながら、大学の構内を闊歩していたことを思い出した。

逆に、友人はモンクを聴いて「なんやこれ」と絶句したまま。そのうち、ジャズのアルバムには手を出さなくなった。確かに、モンクの楽曲や演奏は、楽譜通りに端正に演奏するクラシックとは対極の、即興性や自由度の高い、そして意外性のあるジャズならではの展開がてんこ盛り。そう言う意味では、モンクの楽曲や演奏が気に入る、ということは「ジャズを好んで聴く」素質がある、と言っても良いと思う。

そんなモンクの楽曲であるが、プロのジャズメンとしても、モンクの楽曲は無視出来ない存在みたいで、いつの時代でも「モンク・トリビュート」なアルバムがコンスタントに定期的にリリースされている。即興性や自由度の高い、そして意外性のあるジャズならではの展開がてんこ盛りなモンクの楽曲は、ジャズメンにとっても取り組み甲斐のある素材なのだろう。
 

Monk_studies

 
山中千尋『Monk Studies』(写真)。昨年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chihiro Yamanaka (p, syn, el-p, org), Mark Kelley (b), Deantony Parks (ds)。ピアノ・トリオの編成。担当楽器を見れば判るが、山中千尋は、アコピ以外にシンセ・エレピ・オルガンを弾いている。モンクの楽曲をシンセ・エレピでやる、という発想が僕には無かったので、ちょっとビックリした。

で、アルバムを聴いてみてニンマリ。なるほど、これって「アリ」やね〜。モンクのピアノ奏法って、パーカッシブなところがあって、それだけでモンクっぽくなったりするんですが、シンセやエレピでモンクの楽曲をやると、パーカッシブな要素が抜けて、モンクの楽曲の持つ、モンクならではの個性的なフレーズだけが浮き出てくる。モンクの楽曲の持つ個性的なフレーズを心ゆくまで愛でることが出来るのだ。

アコピをできる限り排除することで、モンクらしく弾く、ということを全くせずに、モンクらしいフレーズを散りばめた、モンク・トリビュートなアルバムを成立させている。この「モンクの楽曲をシンセ・エレピで弾く」という、山中千尋のプロデューサー的発想は素晴らしい。アルバム全編を聴き通して心底感心した。

全曲アレンジは山中が担当。オーソドックスなピアノ・トリオでは無いし、アコピでモンクをやる訳ではないけれど、この「モンクの楽曲をシンセ・エレピで弾く」キーボード・トリオな演奏は、明らかに今の先端のジャズであることは間違いない。でも、硬派で真面目なピアノ・トリオの愛好家の方々からすると、拒絶反応が激しいかも。ちょっと聴く人を選ぶかなあ。でも、僕はこの盤は「アリ」です。

 
 

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2018年1月12日 (金曜日)

ウィントン・マルサリスの再評価

ウィントン・マルサリスは、ジャズの歴史の中でも屈指のトランペッターだと思う。テクニックは素晴らしく優秀、アドリブ・フレーズは流麗、歌心もしっかりと併せ持って、その端正かつ切れ味の良い吹きっぷりは、確かに「屈指のトランペッター」として良いと思う。しかしながら、一般のジャズ者の方々から、はたまた、仲間のジャズメンからも、先達のジャズメンからもどうにも評判が悪い。困ったものである。

1980年代、純ジャズ復古の流れの中で、新伝承派のリーダーとして祭り上げられ、ウィントン自身もその気になって、あれやこれや、過去のジャズメンや現役のジャズメンのやることなすことを、歯に衣を着せずに批判する。そして、自分たち「新伝承派」を始めとする、アコースティックな純ジャズを極めようとする若手ジャズメンだけを「真のジャズメン」とする言いようと振る舞いに、基本的に「嫌われた」。

その普段の言いようと振る舞いが災いして、リリースするリーダー作はどれもが優秀な内容ながら、ウィントン自体に対する評判が芳しく無い。あまりにその内容が完璧なので、完璧が故に面白く無いとも評された。それでも、ウィントンはその普段の言いようと振る舞いを修正しようとしない。しかし、彼の社会的地位は相当に向上した。逆に、ジャズの世界の中では、最近、あまり話題にならなくなった。ほんと、最近、どうしているのだろう。
 

Marsalis_standard_time_vol1

 
彼の名誉の為に、フラットな気持ちで語るならば、ウィントンのリーダー作はどれもが素晴らしい内容なのだ。例えば、このアルバムを聴けば、その素晴らしい内容をダイレクトに体験出来る。Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol. I』(写真左)。1987年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。当時にして「鉄壁」のワンホーン・カルテットである。

ウィントンのットランペットを始めとして、カルテットの他のメンバーを含め、そのテクニックは凄まじく、アンサンブルは端正、フレーズを流麗、歌心満載、繊細かつ大胆なアドリブを展開。有名どころのスタンダード曲を演奏しているのだが、その内容は秀逸。アドリブ・フレーズまで譜面に落としているかの様に、あまりに端正かつ流麗。あまりに端正かつ流麗、あまりに優等生な演奏の為、何度か繰り返し聴いていると「飽き」がくる。そこが難点と言えば難点。

ウィントンは誤解されている。しかし、その問題となる、普段の言いようと振る舞いを止めようとしない「大人げの無さ」も確か。勿体ないなあ、と思う。社会的地位は極めた感のあるウィントンではあるが、本業のジャズメン単体としては、どうにも評価が定まらない。そのジャズメンの持つ「心根」がダイレクトにパフォーマンスに反映されるのがジャズの面白いところ。今一度、ウィントン・マルサリスを聴き直して再評価をしてみよう、最近、そう思い至った次第。

 
 

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2018年1月11日 (木曜日)

ジョーヘンのリーダー作第2弾

初リーダー作『Page One』でのジョーヘンは固かった。吹いている様は「コルトレーン」に似ていた。ジョーヘンの特性である「ちょっと捻れた、素朴でジャジーな」テナーがあまり現れなかった。ピアノのタイナーとの相性が悪かったのだろうか。タイナーがバックでピアノを弾くと、フロントのテナーは「コルトレーン」になってしまうのか。

こぢんまりした素朴でジャジーな「コルトレーン」。これではジョーヘンが、ちょっと可哀相である。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンは「これではいけない」と考えたのかどうか、間髪を入れず、ジョーヘンのリーダー作第2弾を録音する。Joe Henderson『Our Thing』(写真左)。1963年9月の録音。ブルーノートの4152番。

ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Kenny Dorham (tp), Andrew Hill (p), Eddie Khan (b), Pete La Roca (ds)。初リーダー作『Page One』の録音が1963年6月。それから僅か3ヶ月後の録音である。ピアノは、若き鬼才アンドリュー・ヒルに交代。ドラムは、初リーダー作で相性の良かったドラムのラロカとフロントのパートナー、トランペットのドーハムは留任。
 

Our_thing

 
冒頭の「Teeter Totter」を聴けば、リラックスしたジョーヘンのブロウを感じることが出来る。初リーダー作『Page One』とは全く別人の、自然体のジョーヘンが、肩の力の抜けた、素朴でジャジーな個性的テナーを吹き上げていく。まだ、後の個性である「ちょっと捻れた」ところはまだまだ遠慮がちだが、ところどころ変則でモーダルなアドリブ・フレーズは独特の個性である。

そして、へぇ〜っと感心するのが、ケニー・ドーハムのトランペット。溌剌としていて淀みが無い。拠れるところも無く、端正にブリリアントに吹き切る。素朴で力の抜けたジョーヘンのテナーとは対照的な音の力強さで、逆にジョーヘンのテナーを支え、惹き立たせていく。このフロント二人の相性は抜群。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンの慧眼恐るべしである。

ジャズ盤の紹介本では、マイナー調の佳曲「Blue Bossa」の存在ゆえ、初リーダー作『Page One』が優先されることがほとんど。リーダー作第2弾の『Our Thing』が採り上げられることは、あまり無いのだが、ジョーヘンの初期の個性を確認するのなら、この『Our Thing』の方が適している。

 
 

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2018年1月10日 (水曜日)

何から何までぶっ飛んだ盤

その直前のリーダー作は、演奏の雰囲気はモードを基調としたジャズ・ロック。モードを基調としているので、ジャズ・ロック的雰囲気とは言え、俗っぽくなく、判り易くは無い。思いっきりモーダルな演奏が8ビートを採用している、といった雰囲気。捻れに捻れるモーダルなアドリブ・フレーズは、ショーターならでは、であった。

が、しかし、この盤でパーソネルも曲想もガラッと変化させた。いきなり、である。Wayne Shorter『Super Nova』(写真左)。1969年8月29日、9月2日の2回に渡るセッションの記録。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss), John McLaughlin (g), Sonny Sharrock (el-g), Chick Corea (ds, vib), Miroslav Vitous (b), Jack DeJohnette (ds, kalimba), Airto Moreira (perc), Walter Booker (ac-g), Maria Booker (vo), Niels Jakobsen (claves)。

エレ・マイルスのメンバーからのチョイスが基本。この盤は、エレ・マイルスの傑作『Bitches Brew』と同じ年に録音された作品である。このエレ・マイルスの『Bitches Brew』と『Super Nova』の関連性については、大いにあり、と睨んでいる。『Bitches Brew』の録音は、1969年8月19日〜8月21日。もちろん、ショーターも参加している。この『Super Nova』は、その8日後の録音。どうしても影響されるだろう。
 

Super_nova

 
『Bitches Brew』は重厚でファンキーなビート。『Super Nova』は軽快でフォーキーなビート。そんな軽快でフォーキーなビートをベースに、モード、フリー、ボサノバといった、当時の先進的なジャズの要素が渾然一体となって入り乱れる。限りなく自由度の高いモーダルなジャズ。1970年代に向けた、それまでのジャズのスタンダードとの関係を断ち切った「新主流派ジャズ」。

とにかく何から何までぶっ飛んだ内容。エレ・マイルスの『Bitches Brew』は、限りなく自由度が高い演奏だが、圧倒的な「構築美」が素晴らしい。逆に『Super Nova』は、限りなく自由度の高い演奏だが、直感的で即興的で場当たり的ですらある。しかし、両アルバムの共通点は、おどろおどろしい「闇」の雰囲気、そして、異様なほどのテンションの高さ。

この『Super Nova』、ショーターからして、WR結成前夜の唯一無二の傑作です。この盤のぶっ飛び具合からして、宇宙と交信しながら演奏する、というがそれも納得。あまたあるジャズ盤の中でも、突出してぶっ飛んだ内容の盤です。初めて聴くジャズ者の方は、心して聴いて下さい。そう、余談ですが、この盤では、何故か、チック・コリアがドラムとヴァイブで参加している(ピアノでは参加では無い)。不思議です(笑)。

 
 

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2018年1月 9日 (火曜日)

チックとクジャラのデュオ演奏

チックとボラーニのデュオ盤について語っていて、あれ〜、そう言えば、なんかもう一枚、一風変わったチックのデュオ盤があったぞ、と思い至った。何だっけ。引っ掛かる思い出は、ちょうど社会人駆け出しのバブル期の頃なんだが。ちょうど1980年代半ばくらいにリリースされた盤と狙いを定め、チックのディスコグラフィーを確認する。

で、やっと判った。この盤である。Chick Corea & Steve Kujala『Voyage』(写真左)。邦題『果てしない旅』。1984年、ECMレーベルからのリリース。ECMの1282番。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Steve Kujala (fl)。チック・コリアとスティーブ・クジャラ、ピアノとフルートのデュオである。

スティーブ・クジャラって、何者やったっけ。あんまり聞かない名前である。調べてみたら、スティーブ・クジャラはチック・コリアによって見いだされたフルート奏者、とのこと。聴けば、クジャラのフルート、実に巧い。流麗かつ静的なエモーション。クラシックか、と問えば、その即興性溢れるプレイは、やはりジャズ寄り。
 

Chick_corea_steve_kujala_voyage

 
さて、このデュオ盤『Voyage』である。ジャズでもクラシックでも通りそうなこの内容は、サウンド面から感じるのは、アドリブもあるクラシック、というような趣き。チックの個性と相まって「クラシカル&ラテン」な雰囲気が濃厚。演奏の底にジャジーなビート感は希薄。ジャズとはかけ離れた「希薄なビート感」の中で、ジャズの真骨頂である「自由度の高いインタープレイ」が展開される。

この硬軟自在、緩急自在、変幻自在なジャズ的なインプロビゼーションでありながら、ジャズの様に温度感は高く無く、どちらかと言えば、温度感の低い展開が、このデュオ演奏の聴きどころであり、このデュオ演奏の個性である。このジャズ的な自由度の高いインプロビゼーションでありながら、アドリブもあるクラシック演奏という趣きは聴く人を選ぶだろう。

希薄なビート感、それでいて自由度の高いインタープレイ。明らかに欧州系ジャズの音世界。やはり、この音の内容って、ECMレーベルならではやなあ、と感心する。そして、相手をしっかりと選んで、相手の特質と特徴を十分に理解し、極上のデュオ演奏を繰り広げるチックって、やはりデュオ演奏の名手やなあ、と改めて思う。

 
 

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2018年1月 8日 (月曜日)

チックとボラーニのデュオ演奏

チック・コリアはデュオが得意。何故かは判らないけど、チックはデュオが得意。といって、誰彼も、という訳では無い。有名どころでは「ゲイリー・バートン」とのデュオは素晴らしい。最近、このブログでご紹介した「小曽根 真」とのデュオも絶品だ。そうそう、異種格闘技だけど、バンジョーのベラ・フレックとのデュオも良かった。

デュオ演奏なので、基本的に相手をしっかり選ぶ、というか、相性が大切ってことなんだろうが、今回、更にチックとの相性が良いデュオ相手が出現した。Stefano Bollani(ステファノ・ボラーニ)である。現在のイタリアを代表するジャズ・ピアニストの一人。ジャズ、ラテン、クラシックと幅広いジャンルを弾きこなすところは、チックと同じ。ちょっと個性が同じ過ぎるのでは、という懸念がが心をよぎる。

Chick Corea & Stefano Bollani『Orvieto』(写真左)。2010年12月の録音。2011年のリリース。いまから6年ほどの前のリリース。チックが25年以上の時を経てECMに吹き込み。ジャズ、ラテン、クラシックと幅広いジャンルを弾きこなす、イタリアの俊英ピアニスト、ステファノ・ボラーニとのデュオ盤である。
 

Chick_corea_stefano_bollani_orvieto

 
リリース当時は、あまり興味が湧かなかった。ピアノの同士のデュオは、お互いがお互いを慮って、なかなか丁々発止とした展開にはならない。特に同じタイプの場合、フレーズがぶつかる可能性が高い。チックとボラーニも同じ事が言えるのでは、と思い、実は、ほとんど聴かずにお蔵入りになった。しかし、今回、ふとこのデュオ盤のことを思い出し、聴き込んで「これは素晴らしい」と感じ入った次第。

「4本の手を持つ人間の一部になったような気分だ」とボラーニが語ったとか。同じタイプのピアニストが故に、しっかりと役割分担を確認し、それをしっかり守ったら、これほどまでに大胆で細心な、一人の人間が4本の手で弾きまくる様な、意思統一された展開が実現されるんやなあ、と、とにかく感心することしきり。

さすがECMレーベルからのリリース。ECMらしさが満載。音の響き、クラシックに影響を受けた、欧州的でメロディアスな展開。しかしながら、現代音楽風の聴き難さは全く無くて、そういう面ではECMとしては珍しい盤かもしれない。即興色が濃いので、ジャズ者初心者の方々にはちょっと辛いかも。ジャズ者中級者以上向けかな。

 
 

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