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2018年5月24日 (木曜日)

ドラムの音がとても素敵に響く

ドラマーがリーダーのアルバムはとても興味深い。ドラムはフロントを張る楽器では無い。メロディアスな旋律を表現できる楽器では無い。リズム&ビートだけで表現する楽器。この楽器を担当するドラマーがリーダーを張る。どういうアルバムに仕上がっていくのか。ドラマーがリーダーのアルバムを聴くことは、いつも楽しみなのである。

Terri Lyne Carrington『Structure』(写真左)。2003年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Terri Lyne Carrington (ds, perc, vo), Greg Osby (as), Jimmy Haslip (b), Adam Rogers (g)。テリ・リン・キャリントンは女性ドラマー。1965年の生まれ。ジェームズ・ムーディーやクラーク・テリー、ショーター、サンボーンら、名だたるジャズメンと共演。力量確かなドラマーである。21世紀に入ってから、2〜3年に1枚の頻度でリーダー作をリリースしている。

実は僕はそのリーダー作の中で、初めて聴いた番が、この『Structure』である。で、聴いて最初に感心したのが、多彩なワザを織りまぜた、センシティブな、ダイナミズム溢れるドラミング。手数も多いのだが、決してうるさくない、硬軟自在、変幻自在なドラミングで、フロント楽器を鼓舞し、グループ・サウンド全体をコントロールする。リーダーのドラミングである。
 

Structure_2

 
ここまで多彩で柔軟なドラミングである。打楽器としての役割も担えるピアノは必要無い。よって、このアルバムはピアノレスである。確かに。テリ・リン・キャリントンのドラミングがあれば、ピアノは敢えて必要無いなあと納得する。それほど、素晴らしいドラミングである。いいもの聴かせて貰ったなあ、と僕は正直、感心した。

こんなに素晴らしいドラミングがバックに控えているのである。フロントのオズビーのアルトが適度な緊張感を保ちつつ、唄う様に、軽く気持ち良く雄叫ぶ様にアルトを吹き上げていく。本当に気持ちよさそうに吹いている。ロジャースのギターも同様。爽快に気持ち良さげにギターを弾き進めていく。

スッキリ爽快なメインストリーム・ジャズ。耳に心地良いドラムの響き、スネアの響き、ハイハットの響き。さすがリーダーはドラマー。ドラムの音がとても素敵に響き渡っている。実は、この盤で、テリ・リン・キャリントンは素敵なボーカルも披露しているが、それはサラッと流して、メインはドラミングですよ、と素敵なパフォーマンスを聴かせてくれる。筋金入りの職人堅気なベテラン・ドラマーである。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年5月23日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・120

フュージョン・ジャズは大のお気に入りである。もともとリアルタイムで体験したこともあるが、純ジャズと同等の位置づけて、今まで、様々なアルバムを拝聴してきた。1980年代半ばには、このフュージョン・ジャズの大ブームは沈静化した訳だが、それ以降も、フュージョン・ジャズは脈々とその姿を深化させている。

そんなフュージョン・ジャズの名うてのミュージシャンが集い結成したバンドが「Fourplay(フォープレイ)」。バンド名のとおり、4名編成、ジャズで言うところの「カルテット」である。当初メンバーが、ピアニストのボブ・ジェームス、ギタリストのリー・リトナー、ベーシストのネイザン・イースト、ドラマーのハービー・メイソン。フュージョン好きなら、目を見張るようなメンバー構成である。

Fourplay『Between the Sheets』(写真左)。1993年のリリース。フュージョン・ジャズのレジェンド集団、フォープレイのセカンド盤になる。ちなみにパーソネルは、Bob James (key, synth, p), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Chaka Khan, Phillip Bailey, Phil Perry, Dee Fredrix (vo)。錚々たるメンバー、珠玉のカルテットである。
 

Between_the_sheets  

 
音が素晴らしい。まず楽器の音がしっかりと鳴っている。そして、録音が良い。適度で魅惑的なエコーが音に深みを与える。音が素晴らしければ、演奏の表現力は更に高まる。とりわけ、テクニック的に相当に高度な4人のメンバーである。この盤に詰まっている、フュージョン・ジャズの演奏は、エンタテインメント性を充足させ、アートの域にまでに達している。

いやはや、素晴らしい、凄みのある演奏である。淀み迷いの微塵も無い。フュージョン・ジャズの名演の数々がこの盤に詰まっている。フュージョン・ジャズ、ここに極まれり、である。ソフト&メロウ、ブルージー&アーバン、メロディアス&ムーディー。ボーカル曲もあり、これがまた良きアクセントとなっていて、惚れ惚れする。

スピーカーに対峙して聴き込むも良し、何かをしながらの「ながら聴き」にも良し。大向こうを唸らせる、バカテクな演奏や派手で判り易い旋律とは全く無縁。どちらかと言えば、落ち着いた、快適な余裕が感じられる演奏なのだが、これが聴き込むうちに「癖になる」。往年の名プレーヤーのテクニックをさりげなく満喫できる、成熟したフュージョン・ジャズ盤である。

 
 

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2018年5月22日 (火曜日)

究極のヨーロピアン・カルテット

1970年代のキース・ジャレット。アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。この2つの対照的なカルテットの音が実に面白い。キースはどちらのカルテットでも、そのパフォーマンスは変わらない。結果として、テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付けている。アメリカン・カルテットのテナーは「デューイ・レッドマン」。ヨーロピアン・カルテットのテナーは「ヤン・ガルバレク」。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っている。ガルバレクのテナーの音がスッと入ってくるだけで、そのカルテットの演奏は「ヨーロピアン・カルテット」の音の雰囲気に包まれる。

これがキースにとって良かったのか、悪かったのか。ナルシストで自己顕示欲の強いキースである。自分より目立つ、バンドの音を決定付けるテナー・マンの存在。最初の頃は、キース自身はソロ・ピアノも平行してやっていたので、ソロ・パフォーマンスについては、テナーに一歩譲る余裕があったかもしれない。でも、テナー・マンの人気が上がってくると、ちょっとなあ、って気分になったんやないかなあ。
 

Sleeper

 
Keith Jarrett『Sleeper』(写真左)。1979年4月16日、東京は中野サンプラザでのライブ録音。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。2012年7月、約33年の時を経て、突如、リリースされたライブ音源である。この音源、何故、お蔵入りしていたのか。暫くの間、不思議で仕方が無かった。

最近思うに、ガルバレクのテナーがあまりに素晴らしく、主従が逆転した様な演奏が多いことが原因ではないか、と睨んでいる。思わず「ヤン・ガルバレク・カルテット」かと思う位の内容。当時、キースはまだ34歳の若さ。この主従が逆転した様なカルテット演奏は、世に出したくなかったのかもしれない。それほどまでに、このライブ音源でのガルバレクのテナーは素晴らしい。ベースのダニエルソンも、ドラムのクリステンセンも、ガルバレクを鼓舞する様にビートを刻む。

ゴスペル風のアーシーな展開、モーダルで自由度の高い、時々フリーキーな演奏。素晴らしい内容である。演奏の整い方、楽曲の構成、想像性豊かなアドリブ・ソロ、どれをとっても、ヨーロピアン・カルテットの録音成果の中で、この『Sleeper』が頭1つ抜きん出ている。ヨーロピアン・カルテットの代表盤。ガルバレクが目立つ、これがまた、キースのヨーロピアン・カルテットの良き個性のひとつでもある。好ライブ盤である。愛でられたい。

 
 

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2018年5月21日 (月曜日)

レトロで新しいビッグバンドです

最近の新作をいろいろ聴いていたら、ビッグバンドの好盤が結構目に付くことに気がついた。ビッグバンドって編成が大人数が故に、運営〜維持するのが大変で、とりわけ、恒常的に運営〜維持されるビッグバンドは数少ない。一時的に編成されるビッグバンドも、優れたメンバーを一気に集めるのは大変で、つまりは、ビッグバンドって結構、希少価値なのだ。

そんなビッグバンドの好盤が、この1〜2年、結構リリースされているのは素晴らしいことだ。ジャズを感じるのに、ビッグバンドの演奏は実に良い。ビッグバンドの演奏には、ジャズの良いところがてんこ盛り。大人数でジャズをやるのだから、統制が取れていて、ユニゾン&ハーモニーがしっかりしている。つまりは、とっても聴き易くて判り易いジャズ、というのがビッグバンド・ジャズの最大の特徴。

The Ken Peplowski Big Band『Sunrise』(写真左)。今年3月のリリース。ケン・ペプロフスキーは、1959年オハイオ州クリーヴランドの生まれで、今年59歳。現在では、スイング系のクラリネット&テナー・サックスのベテランである。この『Sunrise』は、ペプロフスキーが主宰したビッグバンドの好盤である。 いや〜、絵に描いた様な、教科書に出てくる様なビッグバンドの音である。
 

Sunrise

 
いや、今までのビッグバンドとはちょっと違う、レトロではあるが、新しい、現代の音がするビッグバンド。ダイナミックでゴージャスな、ある時はちょっとレトロっぽい「スイング・ジャズ」色が漂う、素敵なビッグバンドである。パンチの利いた、色彩溢れる、かつ重厚感溢れるホーン・アンサンブル。そして、音が豊かで太い。端正で素敵な響き、躍動感溢れるユニゾン&ハーモニー。とにかく音が良い。

ペプロフスキーのクラリネットが効いている。ペプロフスキーは、この盤ではクラリネットに専念している。このクラリネットの音色が旋律が、レトロな雰囲気を増幅している。しかし、録音が良い、音が良い。レトロな音とは言いながら、音の雰囲気は現代のジャズの音。現代のジャズの音がレトロな雰囲気を醸し出しているのだ。

ファンキーなテナー、バピッシュなトランペット、アーシーなトロンボーン、スクエアーなピアノ、そして、レトロで躍動感溢れるクラリネット。レトロなな雰囲気なのだが、音は現代のジャズ。アレンジや曲の構成も秀逸、それぞれのソロイストの技倆も優秀。聴いていて、思わず惹き込まれる。不思議なビッグバンド・ジャズである。

 
 

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2018年5月18日 (金曜日)

ヨーロピアン4の集大成的な盤

キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を聴いている。ガルバレク、ダニエルソン、クリステンセンという北欧の新進と組んだ「ヨーロピアン・カルテット」。キースのピアノの美意識が最高に映える、硬質でクールでメロディアスな音世界。決して、勢いに任せているのでは無い、クールな熱気を帯びてフリーキーに展開する、自由度の高さ。

Keith Jarrett『Personal Mountains』(写真左)。1979年4月、中野サンプラザでの来日公演のライブ録音。ECMの1382番。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。ちなみにこのライブ盤、1989年になってECM創立20周年の企画として、リリースされている。

この盤には、ヨーロピアン・カルテットの全てが詰まっている。ゴスペル基調のアーシーでファンキーな演奏から、自由度の高い、クールで硬質なフリー・ジャズな音世界、そして、ジャズの王道のひとつ、モーダルなジャズの自由な展開。アメリカン・カルテットでも、演奏されるスタイルを、このヨーロピアン・カルテットでも演奏する。
 

Personal_mountain  

 
熱気溢れる、時にきまぐれではあるが、熱くフリーキーな展開が得意な「アメリカン・カルテット」。比べて、硬質でクールでメロディアスな、あくまで冷静な「ヨーロピアン・カルテット」。どちらがキースのピアノとの相性が良いのか、どちらがキースのピアノを目立たせることが出来るのか。この答えが、このライブ盤に有るように感じている。

キースはその比較、ヨーロピアン・カルテットとアメリカン・カルテットとの比較をずっとしてきた様な気がするが、この盤を聴くと「ヨーロピアン・カルテット」の方がキースのピアノとの相性が良いように感じる。ECMらしい独創性と前衛性に富んではいるが、決して難解では無い、逆に、アメリカン・カルテットに比べて、ポップで穏やかで聴き易い。

ファンクネスが皆無な分、キースのピアノが持つ独特な旋律が一層映える。演奏全体の雰囲気も、アメリカン・カルテットに比べて、明らかに端正。感情に任せた破綻は全く無い。その内容の良さに、聴くたびに惚れ惚れする。このライブ音源は、録音されてから約10年、お蔵入りになっていた理由が良く判らない。ヨーロピアン・カルテットの集大成的なアルバムである。

 
 

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2018年5月17日 (木曜日)

ヨーロピアン・カルテットの本質

キースのヨーロピアン・カルテットを聴いている。ヨーロピアン・カルテットとは、キースがリーダーとなって、ECMレーベルをメインに録音したカルテットのこと。1970年代中盤〜後半を中心に、約6年の活動期間だった。2012年までは、公式アルバム数は「4枚」だったが、2012年に『Sleeper』が追加リリースされて「5枚」。

そんなキースのヨーロピアン・カルテットなのだが、相対する「アメリカン・カルテット」と好対照な演奏内容なのかしら、と思うのだが、意外と演奏のコンセプトは同じ。同じ演奏コンセプトを、ヨーロピアンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか。逆に、アメリカンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか、キースはそれぞれ比較していたような気がしている。

Keith Jarrett『Nude Ants』(写真左)。邦題『サンシャイン・ソング』。1979年5月、NYのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。ECMの1171/72番。LP2枚組のボリューミーな盤である。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。
 

Nude_ants  

 
このライブ盤、演奏内容が面白い。ヨーロピアン・カルテットでありながら、ゴスペル・タッチのピアノをベースとした、米国ルーツ・ミュージックな、自由度の高い即興演奏がメインなのだ。ミッド・テンポでアーシーな演奏が心地良い。ガルバレクのサックスはあくまで「透明度溢れクール」。この盤での激しさはコントロールされた「激しさ」。アメリカン・カルテットの様な「気持ちの昂ぶりにまかせた激しさ」の微塵も無い。

加えて、ゴスペルタッチでアーシーな即興演奏でありながら、ファンクネスは皆無。ソリッドで硬質でクリアなリズム&ビートで、ゴスペル、カリプソな演奏を繰り広げる様は「爽快」。乾いたブルージーな旋律は明らかに「欧州的」。これぞ、ヨーロピアン・カルテットの演奏である、と言わんばかりの圧倒的パフォーマンス。

タイトルの「Nude Ants=裸のアリ」どういう意味かなあと思って調べてみたら、『Nude Ants』と収録曲「New Dance」の音が似ているところからつけられたタイトルとのこと(「ジャズ批評88キース・ジャレット大全集」より)。いわゆる言葉遊びですね。タイトルにはあまり意味が無いことが判りました。しかし、このライブ盤の演奏こそが、ヨーロピアン・カルテットの本質ではないか、と思っています。それほどまでに充実した内容のライブ盤です。

 
 

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2018年5月16日 (水曜日)

リピダルの先進的なエレ・ジャズ

暑くも無く寒くも無い。この5月の過ごしやすい季節は、ハードなジャズを聴くのに最適な季節である。まあ、今年の5月の意外と天気が悪く、天気が回復すると途端に夏日と暑くなる。過ごしやすい、というにはちょっと、という感じなのだが、それでも夏や冬の気候に比べたら、圧倒的に過ごしやすい。

この過ごしやすい季節によく聴くジャズのひとつが「ECMレーベル」のアルバム達。夏には暑さを我慢して聴くにはハードなフリー・ジャズや、真冬に聴くと更に寒さを感じる様な、静謐なニュー・ジャズなど、傾聴するに結構ハードな盤が多いレーベルである「ECMレーベル」。このレーベルのアルバムを聴くのは、過ごしやすい季節、初夏そして秋が一番なのだ。

Terje Rypdal『What Comes After』(写真左)。1973年8月の録音。ECMの1031番。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, fl), Erik Niord Larsen (oboe, English horn), Barre Phillips (b), Sveinung Hovensjø (el-b), Jon Christensen (perc, organ)。ノルウェー出身のギタリスト兼作曲家、テリエ・リピダルのリーダー作である。リピダルのギターは、ジャズを中心にロックから現代音楽まで、その表現については幅が広い。
 

What_comes_after

 
特に、幽玄なフレーズを用いた「’ニュー・ジャズ」の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう意味では、リピダルのギターは欧州独特のものだと言える。ギターのパッションな音色の特性を活かしたフリーな表現も得意としており、それまでの4ビート中心のジャズとは明らかに一線を画している。この盤では、そんなリピダルのギターを前面に押し出した「エレ・ジャズ」が展開される。

一聴すると「エレ・マイルス」かな、と感じるんだが、決定的な違いは「ファンクネスの有無」。あまりビートを強調しない、ファンクネス皆無な即興演奏をメインとした音世界は、独特なエコーも伴って、実にECMレーベルらしい。ジャズ、プログレ、クラシック、現代音楽と様々な音楽の要素を織り交ぜて、自由度の高いエレ・ジャズが展開される。今のジャズのトレンドで言うと、クールな「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気も濃厚。

ベースの音も生々しくて魅力的。この盤で聴かれるベースは、自由度が高く、ややサイケデリックな要素も見え隠れする、本場米国には無い、欧州独特、ECM独特のベースの音。リピダルの「エレ・ジャズ」の世界は他の「エレ・ジャズ」とは全く異なり、個性的である。そういう意味では、もう少し評価が高くても良いのではと思う。プログレッシブなエレ・ジャズの好盤。 

 
 

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2018年5月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・119

ジャズの世界では、まだまだ毎月毎月、新盤が出てくる。ジャズって、音楽ジャンルの中で、マイナーな存在になって久しい、と感じているんだが、結構な数のアルバムが毎月、リリースされている。そんなに需要があるのかなあ、と心配になる。でも、順番に新盤を聴いていると、ジャズは確実に深化している、と感じて嬉しくなる。

AMP Trio『Three』(写真左)。2017年のリリース。米国はテキサス出身の抒情派ピアノ・トリオの最新作。ちなみにパーソネルは、Addison Frei (p), Perrin Grace (b), Matt Young (ds)。ニュー・ジャズの要素をメインに据えながらも、伝統的なメインストリーム・ジャズやクラシックの要素もしっかりと踏まえた、先取性と伝統性を兼ね備えたピアノ・トリオである。

ジャズではあるが、ファンクネスは皆無。たっぷりとかかったエコーが心地良く、嫌が応にも叙情的な雰囲気を盛り上げる。テクニックは確かであるが、決して、速いフレーズでテクニックをひけらかすことは無い。逆に着実なタッチとミッドなテンポで、ピアノをしっかりと深く響かせる。フライのピアノは現代ジャズのトレンドをしっかりと押さえている。
 

Amp_trio_three

 
その叙情的に深々と響くピアノのバックで、ゴリゴリ、ブンブンと胴を響かせる、圧倒的に正統なウッド・ベースの響き。これが、また良い。しっかりとフレーズの底辺をウォーキング・ベースで押さえたり、ソロのパートに入ると、自由度の高いモーダルな、硬軟自在の流麗なフレーズを聴かせてくれるグレースのベース。

そして、このピアノ・トリオの最大の特徴が、切れ味良く様々な音を繰り出す、クールでありながら良い意味で多弁なヤングのドラム。伝統的なオフビートを堅実にキープしつつ、自由度の高いインプロビゼーションに突入すると、ポリリズミックで変幻自在なドラミングに早変わり。硬軟自在、多様性に溢れたリズム&ビートにしっかりと耳を奪われる。

最近のジャズのアルバム・ジャケットの流行として、抒情性溢れるニュー・ジャズなアルバムには、夕焼け、朝焼けのジャケットが安易に採用されることが多い。このAMP Trio『Three』もそのひとつなんだが、このアルバムを聴くと、アルバムに詰まっている音世界とジャケットのイメージとがピッタリとフィットする。このジャケット・デザインは「アリ」だなと思う。

 
 

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2018年5月14日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・45

久し振りにビッグバンド・ジャズである。この10年ほどであるが、The WDR Big Bandの躍進は目覚ましい。もともとは、1946年の結成。「WDR:西ドイツ放送(Westdeutschen Rundfunks)」の下で編成されたビッグバンドである。老舗ビッグバンドではあるが、CDなどで目立ち始めたのは、21世紀に入ってからではないか、と感じている。

ロン・カーターとの共演だった『My Personal Songbook』も良かったし、ジョー・ザヴィヌルとの『Brown Street』も良かった。ラロ・シフリンを招いた『Latin Jazz Suite』も粋だったし、『Caribbean Night』はユニークだった。そして、今回はこのライブ盤に出会った。

Vince Mendoza & The WDR Big Band Cologne『Homecoming』(写真左)。ヴィンス・メンドーザ編曲&指揮、WDRビッグ・バンド・ケルン のライブ盤である。2014年11月、ドイツのケルン、エッセンでのライブ・パフォーマンスを捉えた好盤である。もともと、WDR Big Bandの指揮者は2003年から「Michael Abene」が担当しているが、このライブでは、ヴィンス・メンドーザが指揮者として客演している。
 

Homecoming

 
Vince Mendoza(ヴィンス・メンドーザ)は米国の作曲家&編曲家。メンドーザの曲はバートン、メセニー、ヘイデン、ブレッカー兄弟、アースキンなど、著名なジャズメンに演奏されている。また、編曲については、グラミー賞の最優秀インストゥルメンタル・アレンジメント賞を3回受賞してる。今回のこのWDR Big Bandとの共演は、メンドーサの楽曲を取り上げ、メンドーサの指揮で演奏されているもの。

冒頭の「Keep It Up」は、エレ・ファンクな演奏で、おもわず「エレ・マイルス」を彷彿とさせる。しっかりと編曲された、スッキリ端正な「エレ・マイルス」的な雰囲気が素晴らしい。これがビッグバンドでの演奏なのだからユニークだ。2曲目の「Little Voice」は、何気なく聴いていると、これってギル・エバンスかい? と思ってしまう位、シンプルで間を活かした、独特のユニゾン&ハーモニーに思わず耳をそばだてる。

これだけ柔軟な表現力を持つビッグバンドは他にないだろう。今回、もう一人の客演、ビッグバンドを鼓舞するようなアントニオ・サンチェスのドラミングも素晴らしい。ヴィンス・メンドーザ、そして、アントニオ・サンチェス、この二人の客演を招いて、WDR Big Bandは、何時にも増して素晴らしい演奏を繰り広げる。そのパフォーマンスを捉えた、素晴らしいライブ盤である。

 
 

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2018年5月11日 (金曜日)

テナー・マンが音の鍵を握る

1970年代のキース・ジャレットの活動を振り返ってみると、とても面白い。代表的なのは、アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。なんで、こんな平行活動をしたのか、本人に訊いてみないと判らないのだが、正反対の演奏アプローチをしていて、比較して聴くと本当に面白い。

このアルバムは、音的には「ヨーロピアン・カルテット」。しかし、パーソネルを見ると面白いのは、ベーシストがアメリカン・カルテットと同じということ。それで、これだけ「ヨーロピアン・カルテット」な音が出るということは、カルテットの音の個性の鍵を握っているのは「テナー・マン」の個性ということになる。

そのアルバムとは、Keith Jarrett『Arbour Zena』(写真左)。邦題『ブルー・モーメント』(写真右)。全曲キース・ジャレットのオリジナル。オーケストラとの共演。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Charlie Haden (b) に、Stuttgart Radio Symphony Orchestraがバックに着く。
 

Arbour_zena  

 
聴けば聴くほど「ヨーロピアン・カルテット」なんだけど、ベースの粘りが「ヨーロピアン・カルテット」と違う。もともと「ヨーロピアン・カルテット」のベーシストは、パレ・ダニエルソン(Palle Danielsson)。この「ブルー・モーメント」のベーシストは、チャーリー・ヘイデン。もともとは「アメリカン・カルテット」のベーシストである。

面白いのは、キースもヘイデンも意識して奏法や音を変えている訳では無いこと。意外とアメリカン・カルテットでもヨーロピアン・カルテットでも同じ音を出している。それでいて、どうして「アメリカン・カルテット」と「ヨーロピアン・カルテット」とで正反対の、対照的な音が出るのか。鍵を握っているのは「テナー・マン」。「ヨーロピアン・カルテット」では、ヤン・ガルバレクである。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っているのだ。ちなみに「アメリカン・カルテット」はデューイ・レッドマン。テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付ける。この『ブルー・モーメント』は見事なまでの好例である。

 
 

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