2020年1月28日 (火曜日)

この日本人ベーシスト、良い。

最近、日本人ジャズの好盤が結構出ている。そんな好盤のリーダーの名前を見渡していて「あれ、この人の名前、知らんなあ」ということが、ままある。この人もそんな一人。須川 崇志(すがわ たかし)。日本人ベーシストである。1982年2月生まれ、群馬県伊勢崎市出身。バークリー音楽大学卒。今年で38歳。ジャズマンとして、ベテランの域に入りつつある年齢である。

しかし、僕はこのベーシストを知らなかった。申し訳ない。バークリー卒業後、2006年夏に自己のトリオを結成するほか、多国籍即興バンド“Bim Clatox”の一員などで豪・仏・中米に来訪。2007年に拠点をニューヨークへ。スイスのモントルージャズフェスティバルや多くのミュージシャンとセッションを重ねたのち、2008年9月に帰国。と資料にあるが、印象に全く無い。

Takashi Sugawa Banksia Trio『Time Remembered』(写真左)。ちなみにパーソネルは、須川 崇志 (b), 林 正樹 (p), 石若 駿 (ds)。そんなベーシスト須川が、今年、リーダー盤をリリースした。今年1月のリリース。リリースしたてホヤホヤである。内容的には、実にオーソドックスな「メインストリーム・ジャズ」。いわゆる現代のネオ・ハードバップである。
 
 
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演奏全体の印象として「切れ味が良い」「透明感のある響き」「耽美的かつ適度な躍動感」。日本人ピアノ・トリオとして、確かな個性を持ったパフォーマンスである。日本人ジャズマンの演奏なので、ファンクネスはほぼ皆無。乾いた硬質のオフビートが、独特の「ジャズ感」を増幅させている。典型的な「日本人ジャズ」の良いところが、このトリオ演奏に詰まっている、と感じる。

そんな中、須川のベースの音が実に良い。ソリッドで躍動感があり、硬質で弾力のあるブンブン唸るベース。雰囲気的には、レイ・ブラウンやエディ・ゴメスの様な、バッキングにも長け、ソロを取ればフロント楽器顔負けのソロを取る。ベース音は旋律が明確に浮かび上がる、ウォーキング・ベースは躍動感よろしくフロント楽器をグイグイと鼓舞する。とってもイメージの良いベースである。

ベーシストがリーダーの盤。ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出されている。ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。本来のベーシストがリーダーを張る、リーダー作のあるべき姿の1つであろう。加えて、ベーシストが弾くベースの音がとっても魅力的。ベースって格好良いと思わせてくれる好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年1月27日 (月曜日)

新しいヴァイブ奏者の出現である

ジャズのヴァイブ(ヴィブラフォン)は絶滅種だと思っていた。ミルト・ジャクソンから始まり、ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ロイ・エアーズ、マイク・マイニエリが出現し、もうこれで終わりだ、と思っていた。我が国では、平岡精二、増田一郎が有名だが、新しい有望なヴァイブ奏者は現れ出でてはいない。

まあ、マイナーで扱いづらい楽器ではあるからね〜、と思っていたら、なんと、新しい有望なヴァイブ奏者が現れ出でたのである。ジョエル・ロス(Joel Ross)。名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者。シカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動。トレードマークのドレッドヘアー、スタイリッシュなファッション。現代の若きジャズマン。

Joel Ross『Kingmaker』(写真左)。ジョエル・ロスのデビュー・アルバム。2019年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Ross (vib), Immanuel Wilkins (as), Benjamin Tiberio (b), Jeremy Dutton (ds), Jeremy Corren (p)。ヴィブラフォンとアルト・サックス、対照的な音色のフロント2楽器のクインテット構成。ジョエル・ロスをはじめ、このクインテットのメンバーについては全く知らない。
 
 
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全員、初めて出会ったメンバーである。まず、ジョエル・ロスのヴァイヴが個性的。今までの歴代のヴァイブ奏者の良いところを全て融合した、新しいヴァイブの響きとフレーズ。奇をてらったり、アブストラクトに走ったりすることは全く無い。メインストリームなジャズを引き継いだ、明確にジャジーな響き。切れ味良く明快で、ポジティブな響きを伴った、硬質で柔軟でしなやかなヴァイブの響き。

展開するフレーズはモーダルなもの。新主流派のモーダルな雰囲気に、現代のクールなスピリチュアル・ジャズの雰囲気を融合した、新しい雰囲気のネオ・ハードバップな演奏の数々。音の太くてダイナミックなアルト・サックスが絡むことで、ジョエル・ロスのヴァイブの特質が、更に明確に浮かび上がる。Gretchen Parlat (vo) の参加も、スピリチュアルな側面を増幅する役割を果たしていて効果的。

正統なメインストリーム・ジャズ。スピーカーの前に座って、じっくりと耳を傾けるべき、新しいヴァイブの演奏。選曲については、12曲中11曲はロスのオリジナルで構成されている。テクニックは確か、歌心も満載。ヴァイブの良いところを全て引きだした様な演奏が素晴らしい。今から次作が楽しみになる、充実した内容のデビュー盤。繰り返し、じっくり聴き込みたいアルバムです。
 
 
 
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2020年1月26日 (日曜日)

新しい日本人のジャズ・ピアノ

ジャズライフ・ディスク・グランプリ「2019年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」の記事を読んでいて、やっと「日本人男子」の若手ジャズ奏者が台頭してきた、と書いた。ほんと、やっとである。この10〜15年ほど、日本人の有望な若手ジャズ奏者といば、日本女子の独壇場だった。それでも昨年度は2〜3名ほどなので、活躍する日本人ジャズ奏者としては、まだまだ「女性上位」は揺るがない。

渡辺翔太『Folky Talkie』(写真左)。昨年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、渡辺翔太 (p, rhodes, Wurlitzer), 若井俊也 (ac-b, melodica), 石若駿 (ds, glocken), 吉田沙良 (vo)。女性ボーカル入りのピアノ・トリオ。リーダーの渡辺のキーボードは、アコースティックとエレクトリックの両刀使い。ベースはアコースティック一本と頼もしい。鉄琴のような音がするぞ、と思ったら「グロッケン」。

使用楽器を見渡して、また、女性ボーカルが全10曲中5曲ということからしても、演奏の内容は「現代のコンテンポラリーな純ジャズ」。基本は純ジャズなんだけど、どこかポップなイメージとイージーリスニングな雰囲気が見え隠れする。基本的に気楽に「聴いてもらえる」ジャズを狙っているように感じる。女性ボーカル入りの楽曲の存在が、昔のフュージョン・ジャズの雰囲気を醸し出す。
 
 
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さて、渡辺本人のピアノ、キーボードは、男性のピアノなので、さぞかしマッコイ・タイナーの様に「ガーンゴーン」と強いタッチで弾きまくるハンマー奏法か、高テクニックをベースに、オスカー・ピーターソンの様に高速フレーズを弾き回すのか、と思いきや、そうはならない。繊細にして流麗なピアノタッチ、印象的な透明度の高いフレーズ。そう、キース・ジャレットをポップにライトにした様なピアノ。聴き味はマイルドで耳に心地良い。

吉田沙良のボーカルは全くジャズらしくない。どちらかと言えばポップスなボーカルで、ジャズらしい癖は全く無い。これが不思議な雰囲気を醸し出す。そして、この盤をじっくり聴いていて思うのは、若井のベース、石若のドラムの「リズム隊」の素性の良さ。決して、どっぷりジャズに傾かず、ジャズとポップスの中間をいく様な、ファンクネス皆無な乾いたオフビート。このリズム隊のパフォーマンスも聴きもののひとつ。

日本人のジャズ・ピアノとして、新しい響きが魅力です。1988年2月生まれ、今年で32歳のまだまだ若手のピアニスト、渡辺翔太。キースの様なリリカルで透明度の高いアドリブ・フレーズ。日本人の女性ジャズ・ピアニストより、繊細にして流麗なピアノタッチ。それでいて、ポップでライトなピアノは意外と個性的。次作以降、どの路線で攻めていくのか、楽しみである。
 
 
 
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2020年1月25日 (土曜日)

1980年代後半のリー・コニッツ

ジャズ盤の蒐集〜リスニングって終わりがない。40年以上、ジャズ盤を聴き続けてきたが、それでも「この盤は知らない」そして「ええ内容のアルバムやなあ」と感心することがまだまだあるのだ。最近思うに、ジャズ盤って、いったいどれだけの数があるんだろう。意外と音楽のジャンルの中で一番、枚数が出てたりして。

Lee Konitz『The New York Album』(写真左)。1987年8月18 &19日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Konitz (as), Harold Danko (p), Marc Johnson (b), Adam Nussbaum (ds)。Lee Konitz(リー・コニッツ)は、1927年生まれのアルト・サックス奏者のレジェンド。この盤の録音時で既に60歳の大ベテラン。録音時は純ジャズ復古の時代。

しかし、純ジャズ復古の時代とはいえ、1987年という時代に、こんなに硬派で内容の濃いメインストリーム・ジャズのアルバムが録音されていたなんて、単純に「驚き」である。とにかく、リーダーのリー・コニッツのアルト・サックスが溌剌としていて、良い音を出している。活き活きとしたグルーヴ感を湛えて、ハードバップなアドリブ・フレーズを連発する。聴いていてワクワクする。
 
 
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もちろん、バラード曲やスローテンポの曲もその表現力は素晴らしく、さすがレジェンド級のアルト・サックス奏者だなあ、と感心することしきり、である。ほんと、アルト・サックスが良い音で「鳴っている」のだ。コニッツは意外とアブストラクトで前衛的な面があるんだが、この盤ではそれをちょっと押さえて、フレーズはシンプルで、メロディを素直にリリカルに歌わせている。

バックのリズム・セクションも良い感じ。特に、ピアノを担当しているハロルド・ダンコが良い。僕はダンコのピアノをこのアルバムで初めて聴いたんだが、クールでリリカルな面と熱くグルーヴィーな面とが共存した、実にジャジーなピアノ。結構、ガンガン弾いたりして、カルテット全体のリズム&ビートにメリハリを与えている。

今まで、僕はこの盤を知らなかった。加えて、ピアノのハロルド・ダンコも初めて聴いた。どうもこの頃のコニッツのアルバムって、我が国では全くの情報不足みたいだ。しかし、この盤の内容は良い。カルテットの一体感、漲る覇気。演奏全体に漂うメインストリーム・ジャズなグルーヴ感。力感溢れたメロディアスなアドリブ・フレーズ。いわゆる「1980年代後半のハードバップ」の代表的名演の1つだと思う。
 
 
 
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2020年1月24日 (金曜日)

ウェザー・リポートのフォロワー

エレクトリック・ジャズの最初のピークが、1970年代から1980年代前半。その時代の有名なエレ・ジャズなグループは、Miles Band であったり、Weather Reportであったり、Return to Foreverであったり、Hancock Bandであったり、Chick Corea Elektric Band であったりする。そして、今は21世紀に入って、その1970年代から1980年代前半の有名なエレ・ジャズなグループのフォロワーが出てきた。

3rd World Electric『Kilimanjaro Secret Brew』(写真)。2009年のリリース。ちなみにパーソネルは、Roine Stolt (g, rhodes, minimoog, clavinet, perc), Jonas Reingold (b), Lalle Larsson (p, rhodes, synth), Karl-Martin Almqvist (ts, ss), Dave Weckl, Zoltan Czörsz (ds), Ayi Solomon (congas, shakers, perc)。ジャケットからも感じる通り、ラテン〜アフリカン・ミュージックのエッセンスが満載。

で、1曲目の「Waterfront Migration」を聴いて、あれれ、と思う。アフリカン・ミュージックのエッセンスがベース。シンセサイザーの重ね方、ユニゾン&ハーモニーの展開の仕方、エレベの音、エレベのフレーズ、そして絡み方。ドラムとパーカッションが奏でるアフリカン・ネイティヴなリズム&ビート。テナーの絡み方と展開。これって、Weather Report(WR) やん。それも、リズム・セクションにジャコ・パストリアスとピーター・アースキンが在籍した絶頂期のWRのフォロワーの音。
 

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シンセの重ね方、ユニゾン&ハーモニーの展開の仕方はまるで「ジョー・ザヴィヌル」。ザヴィヌルのシンセの特徴をよく研究しているであろう、WRライクなシンセのユニゾン&ハーモニー。エレベの音、エレベの響きはまさに「ジャコ・パストリアス」。ジャコほど電光石火な高速フレーズは弾かないが、音そのものと響きは明らかに「ジャコのフォロワー」の音。

そして、テナー&ソプラノ・サックスのちょっと捻れて伸びやかなブロウは確実に「ウェイン・ショーター」。ドラムのポリリズミックな手数の多さは「ピーター・アースキン」を彷彿とさせる。ラテン〜アフリカン・ミュージックのエッセンスが濃厚で、フュージョン、ジャズロック風味のサウンド。WRのフォロワーの音。テクニックは優秀で歌心満載。ワールド・ミュージック風のエレクトリック・ジャズ。

1970年代から1980年代前半のエレ・ジャズ者の我々からすると、このバンドは実に良い。聴いていてとても楽しい。こんなアルバムが2009年にリリースされていたなんて。僕はつい最近まで知らなかった。WRもしくはザヴィヌル・シンジケートを彷彿とさせる、ワールド・ミュージック色満載な音世界。エレクトリックな音を複雑にこねくり回さずに、シンプルにストレートに押しだした、小粋で大人のフュージョン〜ジャズロック。良い音出してます。
 
 
 
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2020年1月23日 (木曜日)

やっと日本人男子が出てきた。

気がつけば、ジャズライフ・ディスク・グランプリ「2019年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表されている。ジャズライフ執筆陣による年間ベスト・アルバムの各々のランキングも併せて発表されており、ジャズ盤蒐集〜鑑賞の「ここ一年間の振り返り」に格好の記事である。

紹介されているアルバムそれぞれを見れば、意外と我がブログに何らかの形でご紹介しているものが結構あって、まずまず「良い耳」をしていたということで、我が耳にちょっとホッとした。そして、今回のグランプリでは、日本人男子の台頭があって、やっと日本人男子の若手ジャズマンが出てきたか、と嬉しく思う。ここ10年〜15年は、日本人女子の独壇場だったからなあ。

『THINKKAISM』(写真左)。2019年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、松丸契 (as, ss), 金澤英明 (b), 石井彰 (p), 石若駿 (ds), 高橋直希 (ds)。タイトルの「THINKKAISM」はグループ名でもある。アルト・サックス奏者の松丸契(まつまる・けい)がリーダー。パーソネルを見渡すとドラマーが二人居るが、ここでは「ツイン・ドラムス」である。思わず「楽しみ」である。
 
 
Thinkkaism-1
 
 
このリーダーのアルト・サックス奏者、相当に「尖っている」。フリーなブロウ・スタイルではあるが、ルールの中で最大の自由度を醸し出すブロウで、演奏の雰囲気は「スピリチュアル・ジャズ」。日本人ジャズらしく、ファンクネスが乾いて希薄なので、メカニカルでクールなスピリチュアル・ジャズが成立している。独特の「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気で、深化した響き満載である。

トリオ・ユニット「BOYS」として自由度の高いインプロビゼーションが身上の金澤英明・石井彰・石若駿のリズム・セクションをメインに、現役高校生・高橋直希がドラマーとして参加し、ツイン・ドラムスを実現。ピアノは自由度高く乱舞し、アコベはブンブン唸り、ツイン・ドラムスは迫力と切れ味満点。リズム・セクション単体でも独特な「自由感」が良い感じである。

そこに独特な様々な切り口から、スピリチュアルなアルト・サックスが絡んで乱入して、最低限の秩序の中で、自由にフリーに、タメながら、スピリチュアルに吹きまくる。1995年千葉県生まれ、パプアニューギニア育ち、バークリー首席卒業という異色の経歴をもつサックス奏者・松丸契。既に次のリーダー盤が楽しみである。
 
 
 
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2020年1月22日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・73

ジャズ演奏家の人口って、思ったより多い。40年以上、ジャズを聴いてきて、それでも「こんなジャズマン、いたっけ」という名前にぶち当たることがまだまだある。ジャケ写を見て「これって結構年配だよな」と思い、ググってみて、これが結構経験のある「イケてる」ジャズマンだったりして、「そんなん知らんかった」と愕然とするのだ。

Johnathan Blake Trio『Trion』(写真左)。2018年1月21 and 22日、NYの「The Jazz Gallery」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds), Chris Potter (ts), Linda Oh (b)。クリス・ポッターは、現代の優れたジャズ・テナー奏者ということは知っているが、他の2人の名前に馴染みがない。特にリーダーのジョナサン・ブレイクを知らない。

ジョナサン・ブレイクはNYを拠点に活躍する、ミンガス・ビッグ・バンド、トム・ハレル・グループなどのレギュラー・ドラマーとのこと。う〜ん、どこかで聴いていたかもしれない。でも馴染みがない。リンダ・オーは、マレーシア出身の注目の女性ベーシストとのこと。この女性ベーシストの名前は全く初めて聞いた。
 
 
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ピアノレスのテナー、ベース、ドラムのシンプルなトリオ編成。しかも、リーダーがドラマー。ピアノが無い分、フロントのテナー1本はシンプル過ぎはしないか。CD2枚組のボリュームなので、純ジャズでも飽きるかな、と危惧しながら聴き始める。冒頭、テクニック高く、硬軟自在なドラミング。さすがドラマーのリーダー作なんて、変な感心をしながら聴くが、このドラミング、只者では無い。

とにかく音が良い。活きが良い。躍動感が良い。ポリリズミックでハードバップな正統派ジャズ・ドラム。良い。良い感じだ。そこにクリス・ポッターが熱くテナーを吹き上げ、これが変幻自在のテナーで、ポッターのインプロビゼーションだけでも全く飽きない。ブレイクの躍動的なドラミングの鼓舞に応えて、ポッターのテナーが絶好調。

そして、そこのリンダがベースが絡み、ソロではブンブン、鋼をしならせ、かき鳴らす。これが実に太くて硬質。女性の手なるアコベとは俄に信じ難い。3者対等のインタープレイ。演奏の内容は充実、レベルは高く、CD2枚組のボリュームであるが、全編に渡って全く飽きが来ない。というか一気に聴き切ってしまう。音楽喫茶『松和』の昼下がりに、じっくり聴き入る純ジャズとして、お勧めのライヴ盤です。
 
 
 
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2020年1月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・158

ジャズは即興演奏を旨とするところが特徴。コード進行やモードの基音をベースに自由にアドリブを展開する。その良し悪しがジャズ演奏としての良し悪しになる。また、ジャズは演奏形態も基本的に自由。どういう楽器を組み合わせても、コード進行やモード奏法などの「音楽演奏としての決め事」をベースにした即興演奏が展開されれば「ジャズ」である。

ジャズを聴き続けていると、楽器の組合せで「今までに出くわしたことのない」ものにたまに出会う。その組合せについては、演奏を聴いてみて「これはアカンやろ」と眉をひそめるものもあれば、「なるほど、こういう組合せはアリやなあ」と感心するものもある。即興演奏の妙を楽しむこともジャズ鑑賞の醍醐味であるが、楽器の組合せの妙を楽しむのもジャズ鑑賞の醍醐味である。

『World Trio』(写真左)。パーソネルは、Kevin Eubanks (ac-g), Dave Holland (b), Mino Cinelu (perc)。トリオと銘打っているので、ピアノ・トリオかな、と聴き始めたら、ん?、ピアノの音がしない。加えて、ドラムの音もしない。ずっと聴き続けていて、アコースティック・ギターとベースとパーカッションだ、と判る。僕はこんな組合せのトリオ演奏に初めて出会った。
 
 
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ケヴィン・ユーバンクス(ac-g)、デイヴ・ホランド(b)、ミノ・シネル(perc)によるトリオ。「World Trio」というタイトルは、米国出身のユーバンクス、イングランド出身のホランド、カリビアンの血を引くフランス出身のシネルという、ワールドワイドな出身者で編成されたトリオであることによる。確かに、米国ジャズの音でもなく、欧州ジャズの音でも無い。実にユニークな、唯一無二な、この楽器の構成ならではの音がする。

3人の演奏のバランスが均等で、スリリングで切れ味の良いインタープレイが素晴らしい。ユーバンクスはアコースティック・ギター(アコギ)のみで、歯切れの良い、メロディアスなフレーズを連発する。ホランドのヘヴィーでタイトなアコースティック・ベース(アコベ)が演奏の底をグッと締める。そして、シネルのパーカッションがこのトリオ演奏の肝で、野趣溢れる、ワールドミュージック風の、緩急自在、硬軟自在なリズム&ビートを供給する。

アコギ&アコベの音は欧米な雰囲気、パーカッションはアフリカン・ネイティブな雰囲気。この2つの音世界が融合して、今までに聴いた事のない、ジャズの起源を聴く様な、切れ味良くメロディアスな即興の旋律と、パーカッシヴな野趣溢れるリズムと、演奏の底(ベース)をガッチリと支えるビート。これらが三位一体となって、スリリングなインタープレイを繰り広げる。実に印象的でユニークなトリオ演奏である。
 
 
 
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2020年1月19日 (日曜日)

新しいリズム&ビートへの取組み

「The bad Plus(バッド・プラス)」。米国ミネソタ州ミネアポリスの出身のピアノ・トリオ。アコースティック・ジャズでありながら、それまでの亜アコースティック・ジャズの音の概念を覆す「轟音サウンド」で、ジャンルを超えた幅広い人気を獲得した。音楽性については、グランジ・ロック、テクノ、フリー・ジャズ等の要素を取り入れた豪快なプレイが身上。

しかしながら、このピアノ・トリオについては、この「轟音サウンド」、硬派なジャズ者の方々からのウケが悪く、「品がない」「これはもはやロックだ」「ジャズを冒涜している」と揶揄され、我が国ではなかなか真っ当に評価されなかった記憶がある。それってライヴのことでしょ、と思うのだが、CDで聴いてみると、従来のピアノ・トリオの音と比べて、強烈にメリハリが付いている。でも、良い再生装置で聴くと耳触りではない。CDで聴く分には、とても真っ当なピアノ・トリオである。

The Bad Plus『Give』。2003年、イングランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Ethan Iverson (p), Reid Anderson (b), David King (ds)。メンバー3人ともに米国出身。ロックやポップスの要素を上手く取り込みつつ、伝統的なピアノ・トリオに、バッド・プラス独特のアレンジを施した演奏は今までに無い音世界。「轟音サウンド」と言われるが、CD再生ではそれは感じ無い。とりわけドラムの音がデカい。手数が多くて小技もイケる。
 
 
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演奏内容については、決して奇をてらったピアノ・トリオでは無い。現代の純ジャズ・ピアノトリオの音。演奏そのものは圧巻、聴けば聴くほどその良さが感じられる。ピアノ・トリオのど真ん中をいく好盤。大胆なアレンジが小気味良い。選曲もユニークで、オーネット・コールマンの「ストリート・ウーマン」、ザ・ピクシーズの「ヴェロリア」、ブラック・サバスの「アイアンマン」などの、個性的な楽曲のカバーが含まれているところが面白い。

「轟音サウンド」という揶揄は忘れて良い。但し、リズム&ビートには過剰なほどにメリハリがある。ドラムの音がデカい。しかし、ドラムの音は良い音している、かつテクニックが優秀なので耳に付かない。このドラムの音がこのバンドの個性を形成している。このドラムに合わせて、ピアノをガンガンに弾き回し、ベースをブンブン響かせる。音の大きなピアノ・トリオと言われるが、五月蠅くは無い。メリハリが効いている分、個性的で癖のある旋律を持つ楽曲のカヴァーが実に映える。

このメリハリの強烈なリズム&ビートをどう聴くかで評価は分かれるだろう。ロックを楽しく聴いた経験のある耳には、決して五月蠅くない。プログレッシヴ・ロックのようなチェンジ・オフ・ペースがスリリングな部分もあり、従来のジャズとは全く異なる、リズム&ビートへのアプローチがこのピアノ・トリオの「肝」なのだろう。フリー・ジャズやモード・ジャズとは異なる、自由度の高いリズム&ビートへの取組みが「耳に新しい」。僕はこのピアノ・トリオ、お気に入りです。
 
 
 
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2020年1月18日 (土曜日)

エリック初のストリングス作品

ジャズのアルバムを見ていると、レジェンド級、また有名になった一流ジャズマンのリーダー作の中には、必ずと言って良いほど、『ウィズ・ストリングス』盤がある。どうもこの『ウィズ・ストリングス』盤をリーダー作としてリリースする、ということが、一流ジャズマンの証であるらしい。言われてみれば確かにそうだ。

つまり、ジャズマンとして一流と目されると『ウィズ・ストリングス』盤をリーダー作としてリリースする企画がレコード会社から提案されるのだろう。特に米国では『ウィズ・ストリングス』盤の需要が結構あるみたいで、ジャズばかりでなく、ポップスの世界でも『ウィズ・ストリングス』盤が制作されるくらいである。

『Eric Alexander with Strings』(写真左)。昨年12月のリリース。録音は、2012年8月 & 2013年3月。ちなみにパーソネルは、Eric Alexander (ts), David Hazeltine (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds), Featuring a string orchestra of 9 violins, 2 violas and 2 cellos with flute and French horn, Dave Rivello (cond, arr)。
 
 
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アルバムの日本語キャッチが「エリック・アレキサンダーの長年の夢であったストリングス・アルバムが登場」。なるほど、やはり現代においても、ジャズマンの憧れなんですね、『ウィズ・ストリングス』盤って。そして、エリック・アレキサンダーも一流ジャズマンとして認められた、ということ。

バラード演奏に定評のあるエリックがストリングスをバックに朗々とテナーを吹き上げていく。聴き応えバッチリ、聴き込みにも聴き流しにも最適。確かにエリックのテナーは上手い。流麗で力強く大胆にて繊細。日本ではレコード会社主導で人気が出たエレックだが、米国でもその実力はしっかり認められ、人気テナーマンの一人ということが確認出来て、なんだかホッとした次第。

リズムセクションには「One For All」のグループでも長年演奏している、ヘイゼルタイン=ウエバー=ファンズワースが担当。エリックと息の合ったパフォーマンスを聴かせてくれる。最後にアレンジもかなり優秀。アレンジャーのリベロいわく「曲の美しさをストレートに吸収し、常にメロディを最優先に考えた」とのこと。納得である。
 
 
 
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