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2017年11月22日 (水曜日)

モード奏法の最終結論のひとつ

爽やかに捻れ、悠然とモーダルに吹き上げる「テナーの怪人」ウェイン・ショーター。真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」とカミングアウトし、どこでどうしたらそういうフレーズになるか、全く、凡人の我々には判らないのだが、他のテナーには絶対に無い、爽やかに捻れた「正統派」テナーのアドリブ・フレーズを聴かせてくれる。

そんなショーターの面目躍如的なアルバムが、Wayne Shorter『Schizophrenia』(写真左)。1967年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Curtis Fuller (tb), James Spaulding (fl, as), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。タイトルの『Schizophrenia』とは「統合失調症」、いわゆる分裂した精神状態の意。おおよそ、ジャズのアルバムのタイトルではない(笑)。

こんなにモーダルで捻れた、当時最先端のモード・ジャズなのに、フロントにばりばりハードバッパーのカーティス・フラーがトロンボーンを担当しているところが面白い。目新しいところとしては、アルトにジェームス・スポルディングが参加、健闘している。そして、意外と、ハービー×ロン×ジョーチェンのリズム・セクションがカッ飛んでいる。
 

Schizophrenia

 
前作の『Adam's Apple』は捻れに捻れ、思いっきりモーダルしていると思ったのだが、なんと、この盤ではその度合いが更に増している。もうハードバップ時代のストレートでシンプルなアドリブ・フレーズは存在しない。全てが捻れ、全てがモードしている。もはやコードという概念は存在しない。そういう意味で、モード・ジャズの最先端をいく演奏がギッシリ詰まっている盤、と言える。

演奏の雰囲気はモードを基調としたジャズ・ロック。モードを基調としているので、ジャズ・ロック的雰囲気とは言え、俗っぽくなく、判り易くは無い。思いっきりモーダルな演奏が8ビートを採用している、という形容の方が判り易いのでは無いか。この盤では、ハービーのピアノが異様に格好良い。躍動的であり、美しくもあり、硬軟自在、伸縮自在の完璧モーダルなアドリブ・ソロを聴かせてくれる。これがまた良い。

僕は、旧来のモーダルな演奏がメインの純ジャズ系のショーターのアルバムの中では、この盤が一番好きなのだが、日本では意外にマイナーな存在に甘んじている。1990年代、日本では廃盤状態。僕は、1999年米国はサンフランシスコのタワレコでリマスター再発CDを入手して狂喜乱舞。ホテルに帰って、パソコンで聴いた『Schizophrenia』の音は忘れられない。 

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月21日 (火曜日)

ファンキーなドナルドソンを聴け

ファンキー・ジャズに凝っている。ファンキー・ジャズの特徴のひとつが、ファンキー・ジャズに欠かせない「ギターやらオルガンやら」が入っていること。僕はこの「オルガン」の存在が大のお気に入りで、ファンキー・ジャズに入っているオルガンは特に良い。こってこてにファンキーなオルガン、欠かせないよな〜。

こってこてにファンキーなオルガン、と言う言葉からこの盤が浮かんだ。Lou Donaldson『The Natural Soul』(写真左)。1962年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Tommy Turrentine (tp), Grant Green (g), Big John Patton (org), Ben Dixon (ds)。ファンキー・ジャズに必須のアイテムである「ギターやらオルガンやら」がしっかり入っている、典型的な「ファンキー・ジャズ」盤。

アルト・サックスのレジェンド、1962年当時でベテランの域に達しつつあった「ルー・ドナルドソン」。当時36歳。若手の頃はチャーリー・パーカーから大きな影響を受けた「ビ・バップ」なアルト・サックスがメイン。これがまあ、1960年代に入って、ファンキー・ジャズが流行りだしたら大変身。ビ・バップなアルトが、ファンキーなアルトに大変身。それでも、このルーさんのファンキー・アルトが実に良い感じだから「許せる」。
 

The_natural_soul

 
バックのオルガンが切れ味良く思いっきりファンキー。ジョン・パットンである。当時、ほぼ新人だったというから驚き。これだけ、こってこての骨太なファンキー・オルガンを弾き倒すなんて、新人とは思えない。加えて切れ味が良い。ズバッと切れ込むようにアドリブに差し掛かる瞬間が実に良い。そうそう、トミタレ(トミー・タレンタイン)のトランペットもファンクネスだだ漏れ。

そして、この盤で大活躍なのが、ギターのグラント・グリーン。パッキパキのコッテコテな、シングル・トーンでソロにバッキングに大活躍。ファンキー・ジャズはこってこてファンキーな音の塊なので、ちょっともたれる感じになる時があるのだが、そんなところに切れ込むグラント・グリーンのシングル・トーンは爽快。

ジャケットもブルーノート・レーベルらしからぬ、俗っぽさ満載の「ふぁんき〜」なジャケット。でも、これが良い。タイポグラフィーもばっちり決まって、なんだか、こってこてなファンクネスが滴り落ちるような、そんなファンキーなジャズが聴こえてきそうなジャケットもまた良し。ファンキー・ジャズって楽しいなあ。 

 
 

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2017年11月20日 (月曜日)

ファンキーなタレンタインを聴け

ファンキー・ジャズに凝っている。判り易くて、簡単に「のれる」。沈みがちな心がパッと明るくなる。寒い冬にはピッタリ。暖かい部屋の中で、ファンキー・ジャズに聴き入り「のる」。足で手でリズムを取って「のる」。少し体がポカポカする。ファンキー・ジャズを聴く季節は「冬」が良い。

今日は、Stanley Turrentine『That's Where It's At』(写真左)。1962年1月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Otis Finch (ds)。バックのリズム・セクションの面子を見ると、完璧な「ファンキー仕様」。このパーソネルを見るだけで、この盤は「ファンキー・ジャズ」盤と推察出来る。

スタンリー・タレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。吹き方は、オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの間をいくもの。レトロでも無く、最先端でも無い。流行のスタイルに対して「我関せず」と言わんばかりのオリジナリティー。
 

Thats_where_its_at_1

 
この盤の面白いところは、ファンキー・ジャズに必須のアイテムである「ギターやらオルガンやら」が一切入っていないところ。タレンタインのテナー1本がフロント。まずこれだけでかなりファンキー。加えて、バックにアコピ・ベースのピアノ・トリオがあるのみ。それでもこってこてファンキーなジャズをやるのに不足は無いところがこのメンバーの凄いところ。

レス・マッキャンのアコピがパワフル。勢い余ってリズムを乱すところはご愛嬌(笑)。ブルージーでアーシーなサウンドがファンキー・ジャズにピッタリ。ベースのハービー・ルイス、ドラムのオーティス・フィンチのリズム隊もアーシーでファンキー。よくよく聴けば、ファンキー一色のリズム・セクションである。

ゆったりした演奏なんだが、音はパワフル。音に芯がグッと入っていて、しなやかでソウルフル。しかし、ブルーノート・レーベルって凄く柔軟なレーベルなんだなあ、と改めて感心する。さすがはブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン。ハード・バップのみに固執せず、どんどん新しいトレンドを取り入れ、ミュージシャンに録音の機会を提供し続けた、そのセンスと手腕に脱帽である。

 
 

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2017年11月17日 (金曜日)

爽やかに捻れ、悠然とモーダル

ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は実にユニークなテナー・マン。インタビューなんかでは、真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」。宇宙との交信の成果が、ショーターの個性的なアドリブ・フレーズを生むということだ。彼のテナーは唯一無二。捻れたテナーなのだが、そのフレーズは、メインストリーム・ジャズど真ん中。モダン・ジャズの王道を行くテナーである。

確かに、初めて聴いた時、この人のテナーは唯一無二だと思った。テナーと言えば「コルトレーン」。コルトレーンは自由度を求めれば求めるほど、フリー・ジャズに、アバンギャルド・ジャズに傾倒し、一般のジャズ・ファンを失っていった。しかし、ショーターは違う。ショーターは自由度を求めれば求めるほど、爽やかに捻れ、悠然とモーダルに変化する。そして、一般のジャズ・ファンを惹き付ける。

Wayne Shorter『Adam's Apple』(写真左)。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。ジャズ界は「多様化」の時代。ショーターは新主流派と呼ばれる、新しい響きを宿したモーダルがメインの自由度の高いジャズ。
 

Adams_apple

 
ショーターのテナーのアドリブ・フレーズって、ほんとに「ユニーク」。他を寄せ付けない、フォローを許さない、思いっきり個性的な捻れ方。真似出来ない、予測が出来ない捻れ方をする。しかも、テナーの音色が豊か。太くてシャープで流麗。しかも余裕を噛ました悠然としたロングなアドリブも得意で、このショーターのテナーって、他のテナー・マンには決して真似が出来無い。

ピアノは、若き日のハービー・ハンコック。ワンフレーズ聴けば直ぐに「ハービーやなあ」と判るくらいに個性的なフレーズを叩き出している。本当に、この頃のハービーのピアノは「イカしている」。理知的で幾何学的、ほど良く抑制された、意外と高速なパッセージ。左手のブロックコード、右手の自由度の高い弾き回し。この頃のハービーって輝いている。 

レジー・ワークマンのベースが面白い。モーダルなフロントのアドリブ・フレーズには、こういうモーダルなベースと当てろ、というような、新主流派にとっての「教科書」の様なウォーキング・ベースに惚れ惚れする。このリズム隊が、アルバム全体を統制し、アルバム全体をコントロールする)。

純ジャズなショーターのテナーを愛でるに最適な一枚。ジャケットもブルーノート・レーベル独特のデザイン性の溢れた素晴らしいもの。内容も決して難しく無く、取っ付き易い。ジャズ者初心者の方々にも安心してお勧め出来る好盤です。

 
 

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2017年11月16日 (木曜日)

円熟のロイ・ハーグローブである

ネットのジャズ盤紹介を読み直して「これは聴いてないぞ」盤の聴き直し。ネットのジャズ盤紹介のブログは、ジャズ評論家の方々が扱わない、本当に内容の良い「隠れ好盤」について語ってくれているので助かる。自分の耳でしっかり聴いて、自分の感じたことを赤裸々に書いてくれているので、本当に参考になる。

例えば、この盤などはネットのジャズ盤紹介のブログから教えて貰った。Roy Hargrove『Earfood』(写真左)。2008年の作品。レギュラー・クインテットでの純ジャズ盤。聴き込むうちにその素晴らしさがじわじわと沁みる。ちなみにパーソネルは、Justin Robinson (as, fl), Danton Boller (b), Montez Coleman (ds), Gerald Clayton (p), Roy Hargrove (tp,fgh)。

ロイ・ハーグローヴ(以降、略して「ロイハー」)のEmarcy移籍第一弾作品。このクインテット盤は「純ジャズ」追求盤。ロイハーのストレートなブロウ、精巧なフィンガリングを駆使して、流麗で歌心のあるトランペットが飛翔する。ちょっと抑え気味のブロウなので、最初聴いた時は「なんか地味やなあ」と思うんだが、聴き込む毎にその素晴らしさがじわじわジワジワ沁みてくる。ブリリアントで滑らかなトランペット。
 

Roy_hargroveearfood

 
ピアノのジェラルド・クレイトンが良い。聴いていて惚れ惚れする様な、艶があって音の抜けが良く、切れ味抜群なピアノは個性的。クレイトンは和蘭生まれ、南カリフォルニアア育ちで、ベーシストのジョン・クレイトンの息子。素性確かなジャズ・ピアノである。アドリブ・ソロに感心する。良く練れているというか、直感的な反応が良いというか、センスを感じる、理知的なフレーズを感じる。以降「要注目」ピアニストである。

アルト・サックスのジャスティン・ロビンソンは、ロイハーのトランペットと相性が良い。ユニゾン&ハーモニーなど、アンサンブルの響きが抜群である。前作からメンバーは一新されているのだが、アルトのロビンソンだけ残ったというのも頷ける。作り込み過ぎない、吹きすぎないシンプルなアドリブ・フレーズは印象に残る。また聴きたくなる。

ロイハーは、この盤をリリースした時が39歳。中堅トランペッターとして、ロイハーの円熟度合いをしっかり確認出来る、バリバリのハードバップ盤である。聴き込み度にじわじわ沁みてくる、噛めば噛むほど味が出る「スルメの様な」好盤である。ジャズ者の皆さん全般にお勧め。

 
 

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2017年11月15日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・92

昔のジャズ盤紹介本を読み返してみると、「この盤は聴いたことが無い」というものに出会う時がある。そもそも、縁が無かったのか、もともとジャズ盤紹介本に挙がることが殆ど無いのか、大体が「こんなアルバムあったんや」と感心する盤が大多数である。そして、聴いてみるとなかなかの内容の盤がほとんど。

3ヶ月ほど前に、このブログでご紹介した盤なんだが、例えばこの盤なんか、ジャズ盤紹介本に挙がっているのを見た時、「こんなアルバム見たこと無い」が最初の印象。内容の紹介文を読んで「こんなアルバムあったんや」と思わず唸る。

Stéphane Grappelli『Live In San Francisco』(写真左)。ジャズ・バイオリンの名手、ステファン・グラッペリの1982年7月7日、サンフランシスコでのライブ音源。

ステファン・グラッペリは、フランスのジャズ・ヴァイオリニスト。ジャズ・ヴァイオリニストの第一人者として、長年に渡って晩年まで第一線で活躍した。1908年生まれ、1997年に89歳にて逝去。このサンフランシスコでのライブ音源は1982年のものなので、グラッペリが74歳、晩年の演奏になる。
 

Stephane_grappelli_live_in_san_fran

 
選曲はスタンダード曲がメイン、これが良い。グラッペリのジャズ・ヴァイオリンの素性の良さとテクニックの確かさがグッと浮き出てくるのだ。まるで鼻歌を歌うが如く、軽快に爽快にアドリブを展開する。緩急自在、抑揚が効いていて、グラッペリのテクニックは「神業」である。74歳の演奏とは思えない。

ギターはグラッペリ・バンドで一躍有名になったギター・マン、若きマーティン・テイラーである。テイラーは1956年生まれなので、このライブの時点で弱冠26歳の若さ。26歳の若さなのに、意外と小粋なバッキングを繰り出すのだから、これまたビックリする。グラッペリとは48歳の差があるのだが、全く違和感が無い。優れたジャズメンの組合せとはそういうものなんだろう。

ジャズ・ヴァイオリンとは如何なるものか、この盤を聴けばその極上なパフォーマンスを体験することが出来る。素晴らしいライブ盤である。ちなみに、LPでの初出の時の盤(写真左)と、現在、CDでリイシューされている盤(写真右)とジャケットが大きく異なる。LP時代のジャケットの方がシンプルでジャズ盤らしい雰囲気。

 
 

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2017年11月14日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・66

今週は、昔のジャズ盤紹介本を読み直して「これは最近聴いてないぞ」盤の聴き直し。ジャズ本を読み返していると、僅かではありますが、好盤ではありながら暫く聴いていない盤を発掘します。これを聴き直すのが意外と面白い。しかし、コレクションに無い盤になると、意外と探すのが大変だったりする。でも、それが楽しかったりするのだ。

今日の「これは最近聴いてないぞ」盤は、John Hicks『Inc.1』(写真左)。1985年4月の録音。ちなみにパーソネルは、John Hicks (p), Walter Booker (b), Idris Muhanmmad (ds)。日本のDIWレーベルからリリースされた一枚。DIWって、あれっ、と思わず思ってしまう位にユニークな盤をリリースしたりしているので要注意レーベルである。

ジョン・ヒックスのピアノは、一言で言うと「疾走する木訥さと精悍さ」。モンクの様な独特の幾何学的なフレーズとマッコイの様なドライブ感溢れる弾き回しを足して2で割った様な個性。但し、テクニックには危うさが付きまとう。それでも、「疾走する木訥さと精悍さ」は唯一無二の個性で、聴き込むに付け、どんどん癖になる。
 

John_hicks_inc1

 
ヒックスのピアノはポジティブ。ワクワク、ウキウキ、楽しいな、って感じのアドリブ・フレーズ。とにかく軽快なのだ。「快速(快い速さ)」と表現するのがピッタリ。この軽さに懸念を示すジャズ者の方もいるが、この軽快さをどう捉えるかで、ヒックスのピアノに対する評価は変わるのだろう。

このトリオ盤、ベースとドラムのプッシュがこれまた心地良い。特に、ムハマッドのドラムが良好。要所要所でビシッと決まるシンバルが心地良い。ブッカーのベースも重心が低くて堅実。このベースとドラムの存在が、ヒックスの軽快なピアノを支え惹き立たせている。実に良好なピアノ・トリオである。

ジョン・ヒックスのピアノは「ありそうでない」唯一の個性。もう少し、日本で人気が出ても良いのだが、コアなファンはいるのだが、一般ウケが悪い。でも、この『Inc.1』を聴いていただいたら判るのだが、ジャズ者初心者の方々にも十分に楽しめる判り易さがある。そういう意味で、もっと広く聴いて欲しい「隠れ好盤」である。

なお、ジョン・ヒックスは、残念ながら、2006年5月に65歳という若さで鬼籍に入った。合掌。

 
 

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2017年11月10日 (金曜日)

これぞ、ファンキー・ジャズな盤

ファンキー・ジャズは、1950年代終盤から1960年代中盤にかけて流行ったジャズの演奏トレンドのひとつで、ハードバップのサブカテゴリー、若しくは後継のトレンドとされる。演奏の基本はメインストリーム・ジャズ。電気楽器はエレクトリック・ピアノ、若しくはオルガンのみ。ゴスペル的な要素が大幅に取り入れられ、これがファンクネスを強調する。

そんなファンキー・ジャズの代表盤の一枚が、Cannonball Adderley『Mercy, Mercy, Mercy(Live at 'the Club')』(写真左)。1966年10月、ロスのキャピトルでのスタジオ・ライブの音源。Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Joe Zawinul (ac-p, el-p), Victor Gaskin (b), Roy McCurdy (ds)。アダレイ兄弟がフロントに座ったクインテット構成。

後に、Weather Reportを結成するジョー・ザヴィヌルがキーボード担当と音楽監督を兼任している。このザヴィヌルの存在が「キモ」で、このザヴィヌルの書いた曲がすべからく「こってこてのファンキー」。その代表作がタイトル曲の「Mercy, Mercy, Mercy」。もう、これでもか〜、という位の「オーバー・ファンク」な演奏。
 

Mercy_mercy_mercy

 
この「Mercy, Mercy, Mercy」の存在が、音が、このアルバムの雰囲気を決定付けている。教会の賛美歌の様な響き、ゴスペルのようなフレーズの「畳みかけるような繰り返し」。そこに、スタジオ・ライブならではの、タイミングの良い観客の掛け声と口笛。徐々に高揚していく繰り返しフレーズに、どんどん高まっていくファンクネス。

この徐々に高揚していくリフの繰り返しがファンキー・ジャズの「ミソ」で、この繰り返すリフがブルージーなコードであれば、その時点で「ファンクネス抜群」ってな感じになる。ビートはロックなビートの「エイト・ビート」。これがファンキー・ジャズ特有の粘りを伴って、まるで「うねり」のように耳に迫ってくる。迫力も満点である。

他の人達から「ファンキー・ジャズ」ってどんな音なのか、と問われた時、取り出すアルバムの一枚がこの『Mercy, Mercy, Mercy』。ファンキー・ジャズって、「純ジャズが全て」という様なシリアスなジャズ者の方々からすると、あまり評価の良くないジャンルですが、聴いていてノリが良く、聴いていて楽しいので、僕にとっては結構お気に入りです。音が楽しい、だから「音楽」。お後がよろしいようで(笑)。

 
 

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2017年11月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・91

1970年代のジャズは意外と面白い。ハードバップ期を生き抜いた一流ジャズメン達が「えっ、こんな演奏していたん」と感心してしまう様なアルバムが結構ある。1970年代のジャズ、電気楽器の活用が当たり前になった時代。電気楽器を活かして、クロスオーバーからフュージョン・ジャズが流行る。

しかし、面白いのはクロスオーバーやフュージョン・ジャズでは無い。1970年代のメインストリーム・ジャズが面白い。当時、ジャズと言えば、クロスオーバーからフュージョン・ジャズがメイン。それでも、メンストリーム・ジャズは生き残る。ハードバップ時代を生き抜いて来た、今ではレジェンドと呼ばれる一流ジャズメンの中で、メインストリーム・ジャズに留まったジャズメンの沢山いる。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Franagan)。燻し銀ピアニスト、名盤請負人、などと呼ばれた、レジェンド級のピアニストである。フラナガンは、クロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代にも、頑なにメインストリーム・ジャズを貫き通した。そんなフラナガン、面白い内容の盤がある。
 

Something_borrowed_something_blue

 
Tommy Franagan『Something Borrowed, Something Blue』(写真左)。1978年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p, el-p), Keter Betts (b), Jimmie Smith (ds)。演奏フォーマットは「ピアノ・トリオ」。フラナガンの十八番。フラナガンがメインの場合は「ピアノ・トリオ」に限る。フラガナンのピアノが映える。フロント楽器があると駄目だ。フラナガンは極上の伴奏に回ってしまう。

この盤の面白いところは、フラガナンが電気ピアノを弾いているところ。フラガナンがローズを弾いている。これが意外と「イケる」。2曲目「Good Bait」を聴けば判る。フラガナンの「間」でエレピを弾く。フラナガンならでは、のエレピに仕上がっているのが面白い。一流と呼ばれるジャズメンは何を弾いても一流なんですね。

勿論、残りの曲はアコピのトリオ演奏なんですが、これがまた素晴らしい。もともとフラガナンはバリバリのバップ・ピアノなんですが、この盤でのアコピは完璧に「バップ・ピアノ」。確かなタッチでバンバン弾いてます。よって、この盤、フラナガンがエレピとアコピを弾きまくっている、意外と珍しい盤です。好盤です。

 
 

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2017年11月 8日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・113

ジャズには、一流ジャズメン達がリーダーになって、気合いを入れて創作するアルバムもあるが、気心知れたジャズメン達が、ちょっと集まって、ジャムセッション風に録音して制作するアルバムもある。そして、意外に、この気心知れたジャズメン達がちょっと集まって録音したアルバムが、実に滋味に富んだ、実に心地良いモダン・ジャズなアルバムになっていたりするから面白い。

例えば、Paul Desmond『First Place Again』(写真)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ピアノの代わりにギターが入ったカルテット構成。この構成とこのパーソネルを見るだけで、この盤に詰まっている音が期待出来る。

ポール・デスモンドは、デイブ・ブルーベックのカルテットに参加して人気のアルト奏者。そこに、ジャズ・ギターの名手ジム・ホールが加わり、ベースとドラムは、モダン・ジャズ・カルテットから、パーシー・ヒースとコニー・ケイが参加。いや〜、当時、人気の一流ジャズメンばかり、しかもバリバリの中堅。粋で渋い、聴くからにジャズらしい音を出す4人である。
 

First_place_again

 
選曲も渋くて、スタンダード曲かトラディショナル曲で占められる(CD再発の時にデスモンド作が入るがオリジナルLPには無い)。冒頭のコール・ポーター作の「I Get a Kick Out of You」や、ジョン・ルイス作の「Two Degrees East, Three Degrees West(2度東3度西)」など、聴いていて惚れ惚れする。典型的なモダン・ジャズ、典型的なハードバップである。

ここまで来ると、もう理屈やないなあ、と思ってしまう。優秀な一流ジャズメン達が、ちょっと集まって録音すると、きっと適度にリラックスした演奏になるんだろう、本当に和やかで優れた内容である。聴く側も適度にリラックスして、微笑みを湛えながら、ちょっと足でリズムを取りながら、首は左右に微かに触れてスイングする。そんな雰囲気の演奏が実に心地良い。

ポール・デスモンドのアルトが興味深い。ブルーベック・カルテットの時には、丸くて和やかで温和なアルトを吹いているのだが、ブルーベック・カルテットを離れて、一人で他流試合に参加した時には、結構、力強いアルトを吹く。どちらが彼の本質なのか、聴いていてとても興味深い。最初から最後まで、心地良いモダン・ジャズがてんこ盛り。隠れ好盤です。

 
 

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