2023年12月 7日 (木曜日)

The Paris Concert -Edition Two

ビル・エヴァンスの「Warner Bros.〜Elektra」時代のリーダー作、ビル・エヴァンスの生涯最後の一連のリーダー作を聴き直している。

Bill Evans『The Paris Concert -Edition Two』(写真左)。1979年11月26日、パリの「L'Espace Cardin」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Marc Johnson (b), Joe LaBarbera (ds)。先にリリースされた『Edition One』と同じ、ビル・エヴァンスの「ラスト・トリオ」のライヴ音源。リリースは、エヴァンス逝去から4年ほど経ってから、1984年になってのリリース。『Edition One』の1年後になる。

昨日は『The Paris Concert -Edition One』をご紹介したのだが、この『Edition One』は、選曲については、無難にスタンダード曲がメイン。冒頭1曲目に、ポール・サイモンの1975年の大ヒットアルバム「Still Crazy After All These Years」から「I'd Do It For Your Love(きみの愛のために)」をカヴァーしているのが新鮮だった。

で、この『The Paris Concert -Edition Two』は、打って変わって、エヴァンスのオリジナル曲がメイン。オリジナル曲の演奏を過去のトリオ演奏と比較することで、このエヴァンスの「ラスト・トリオ」の特徴が良く判る。

この『Edition Two』の方が、『Edition One』より、我々に訴求する内容が濃い。「Nardis」はマイルス作とされるが、実はこの曲、ビル・エヴァンス作が真相らしいので、スタンダード曲はほぼ無い(1曲だけ「Gary's Theme」- Gary McFarland作)。
 

Bill-evansthe-paris-concert-edition-two  

 
エヴァンス自らの曲なので、「ラスト・トリオ」のパフォーマンス、エヴァンスが「外向的なパフォーマンス」で一歩前へ出て、ベースとドラムが「たおやかに、しなやかに」反応する「新しいトリオ・アンサンブル」が、やり易いのかもしれない。

収録されたどの曲でも、エヴァンスが前へ出て、気持ちよさそうに弾き進み、そのエヴァンスのピアノの音とフレーズに、クイックに最適な対応を選択し、効果的に絡むマーク・ジョンソンのベースとジョー・ラバーベラのドラム。

特に、エヴァンスの気合いの入ったハード・ボイルドなバップな引き回しに絡むベースとドラムが凄い。特にアドリブ部での絡みは「即興演奏の極み」を強烈に感じて、思わず集中して聴き耳を立ててしまう。

以前には無かった、エヴァンスのピアノのスカッと突き抜けた様な「外向的なパフォーマンス」が、ベースとドラムの絶妙な絡みを引き出していると感じる。

エヴァンスのオリジナル曲による「ラスト・トリオ」のパフォーマンス。僕は『Edition One』より興味深く聴く。特に、17分を超えるエヴァンスの代表曲の一つ「ナーディス」が白眉の出来。エヴァンス自らが認める「最高のレギュラー・トリオ」の「新しいトリオ・アンサンブル」が見事な形で記録されている。『Edition One』と併せて、一気に聴き通したい。
 
 

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2023年12月 6日 (水曜日)

The Paris Concert -Edition One

ビル・エヴァンスの「Warner Bros.〜Elektra」時代のリーダー作、ビル・エヴァンスの生涯最後の一連のリーダー作を聴き直している。

Warner Bros.に移籍したエヴァンスは既に50歳を迎え、過去のイメージを踏襲し、それまでのエヴァンス者の聴き手を安心させ満足させるリーダー作をリリースし続けた。僕はこの時点でエヴァンスは過去の人になってしまったなあ、と残念に思ったものだ。そして、1980年9月15日、51歳で他界した。

逝去後、追悼盤の位置付けで幾枚かのリーダー作がリリースされた訳だが、その中で、新しいエヴァンスのイメージを記録した、いわゆる「ラスト・トリオ」のライヴ音源のリリースが衝撃的だった。

Bill Evans『The Paris Concert -Edition One』(写真左)。1979年11月26日、パリの「L'Espace Cardin」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Marc Johnson (b), Joe LaBarbera (ds)。ビル・エヴァンスの「ラスト・トリオ」のライヴ音源。リリースは、エヴァンス逝去から3年ほど経ってから、1983年になってのリリースだった。

この「ラスト・トリオ」については、当時はまだインターネットも何も無い時代、完全に情報不足で、この「ラスト・トリオ」の存在がどんなものなのか、さっぱり理解できないまま、このLPを手にした覚えがある。そして、聴いてびっくり。

それまで、僕は、エヴァンスは「耽美的&内省的」なピアニストだと理解していて、このライヴ音源での、ハード・ボイルドなバップな引き回し、ダイナミズム溢れる展開にびっくり。音の重ね方、音の響きは従来のエヴァンスの「ジャジー&ブルージーな哀愁感&寂寞感を濃厚に醸し出すもの」ままなんだが、以前に無い、とても外向的なパフォーマンスにびっくり。
 

Bill-evansthe-paris-concert-edition-one

 
そこに、マーク・ジョンソンのベースとジョー・ラバーベラのドラムが絶妙に絡み、寄り添い、インタープレイを仕掛ける。これがほんと絶妙で効果的で、エヴァンスのピアノ・パフォーマンスを強力に引き立てるのだ。

このトリオ・パフォーマンスは、今までのエヴァンス・トリオには無かった、新しい、さらに大きくステップアップした新しいイメージの「ラスト・トリオ」の強烈なパフォーマンスだった。

今では、ビル・エヴァンスの本質は「バップ・ピアノ」で、ハード・ボイルドなバップな引き回し、ダイナミズム溢れる展開には違和感は無い。しかし、これだけ、スカッと突き抜けた様な「外向的なパフォーマンス」には、今の耳にも新鮮に響く。新しいビル・エヴァンスのピアノ展開を感じさせる、オープン・マインドな、外へ外へ訴求する「外向的なパフォーマンス」は魅力満載。

ビル・エヴァンスがハードボイルドにバップ・ピアノを弾き回しリードして、そのピアノに「たおやかに、しなやかに」対応するベースとドラムのリズム隊。それまでのエヴァンス・トリオに無かった展開。

それまでの「三者対等、三者一体となったインタープレイ」から、エヴァンスが「外向的なパフォーマンス」で一歩前へ出て、ベースとドラムが「たおやかに、しなやかに」反応する「新しいトリオ・アンサンブル」。

このライヴ音源には、新しい形のエヴァンス・トリオが提示されている。よく、ファースト・トリオ(スコット・ラファロ、ポール・モチアン)との比較が話題になるが、エヴァンス自身、生前のインタヴューで、このラスト・トリオが、自らがリーダーの「最高のレギュラー・トリオ」と明言している。僕も客観的に比較してそう思う。この後、エヴァンスが逝去してしまったのが、実に惜しまれる。この「ラスト・トリオ」のパフォーマンスをもっと聴きたかった。
 
 

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2023年12月 5日 (火曜日)

耽美的&内省的なエヴァンス。

ピアニストの中で一番のお気に入りが「ビル・エヴァンス」。今を去ること50年前、NHKのFMで聴いた曲が「枯葉」。ジャズ・ピアノをしっかり、ジャズ・ピアノとして認識して聴いたのは、このビル・エヴァンスの「枯葉」が最初。初めて、ジャズ・ピアノとして構えて聴いたビル・エヴァンスのピアノに強烈に惹かれたことを記憶している。

当ブログでは以前から、ビル・エヴァンスのリーダー作についての記事をアップしてきた。ビルのリーダー作の8割程度を網羅したと思っているのだが、まだ、当ブログで記事としてアップしていないリーダー作がある。それを機会を見つけては、せっせと「落穂拾い」している。記事にするには、該当のリーダー作を再聴する必要がある。久々に聴く名盤もある。実はこれがまた楽しい。

Bill Evans『You Must Believe in Spring』(写真左)。1977年8月23–25日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (ac-p, el-p), Eddie Gómez (b), Eliot Zigmund (ds)。エヴァンス・トリオが、Warner Bros.レコードへ移籍して最初の録音。しかし、録音当時はお蔵入り。1981年9月、ビル・エヴァンスの逝去後、リリースされた。なお、このアルバムは、エヴァンスがベースのゴメスと行った最後のレコーディング・セッションになる。

録音当時、お蔵入りになった理由については諸説あって、ネットにそれぞれ情報としてアップされているみたいなので、興味のある方はそちらを参照していただくとして、この『You Must Believe in Spring』は、エヴァンスの耽美的なピアノを久しぶりに聴くことの出来る盤である。エヴァンス独特の「抑制された内省的なバップ・ピアノ」で埋め尽くされている。
 

Bill-evansyou-must-believe-in-spring

 
もともと、ビル・エヴァンスは「バップなピアニスト」で、意外とバリバリ弾きまくるタイプ。それでも、音の重ね方、ボイシングが独特で、ジャジー&ブルージーな哀愁感&寂寞感を濃厚に醸し出す。これが他に無いビル・エヴァンスの独特の個性であり、これがビル・エヴァンスのピアノの真骨頂。

しかし、このジャジー&ブルージーな哀愁感&寂寞感を濃厚に醸し出すピアノで、耽美的&内省的な弾き回しをする時がある。例えば『Waltz for Debby』『Moon Beams』『The Solo Sessions, Vol. 1&2』などで、その「耽美的&内省的」なビル・エヴァンスを堪能することができる。このエヴァンスの個性の一面を切り取って、我が国では、ビル・エヴァンスは耽美的&内省的なピアノに優れる、と一部では解釈されている。

この『You Must Believe in Spring』は、そんな耽美的&内省的なビル・エヴァンスを聴くことができる内容なのだ。つまり、ジャジー&ブルージーな哀愁感&寂寞感を濃厚に醸し出すピアノで、耽美的&内省的な弾き回しをする、ミッド・テンポからスロー・テンポの名演が詰まった、耽美的&内省的なビル・エヴァンスを愛でることができる格好のアルバムになっている。

耽美的&内省的なビル・エヴァンスを聴くことができるリーダー作として、名盤と評価されるアルバム。エヴァンス独特の「抑制された内省的なバップ・ピアノ」を聴くには格好のアルバム。しかし、ビル・エヴァンスの本質は「バップなピアニスト」。この耽美的&内省的な弾き回しは、ビル・エヴァンスの戦略であり裏技であることは、しっかりと押さえておきたい。
 
 

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2023年12月 4日 (月曜日)

エディ・ハリスの初リーダー作

Eddie Harris(エディ・ハリス)。このテナー・サックス奏者については、当ブログで取り上げることがほとんど無かったのではないか。1934年10月、シカゴ生まれ。1996年11月に62歳の若さで鬼籍に入っている。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルが身上。電気的に増幅されたサックスを紹介したことでも知られる。

Eddie Harris 『Exodus To Jazz』(写真左)。1961年の録音&作品。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Joseph Diorio (g), Willie Pickens (p), William Yancey (b), Harold Jones (ds)。リーダーのエディ・ハリスのテナーとジョセフ・ディオリオのギターがフロントのクインテット編成。エモーショナルでソウルフル&ファンキーなテナー奏者、エディ・ハリスの初リーダー作。

収録曲を見渡せば、全8曲中、ハリスの自作曲が4曲、ピアノを担当するピケンズの作曲が2曲、スタンダード曲が2曲と、初リーダー作としてバランスの取れた選曲に好感が持てる。ジャズマンの初リーダー作は、そのリーダーのジャズマンの持つ個性&特徴が把握、理解しやすいのだが、自作曲でそのジャズマンの長所が理解でき、スタンダード曲など他人の作曲の曲で、そのジャズマンの個性&特徴が把握できる。そういう面で、このハリスのリーダー作は選曲のバランスがとても良い。
 

Eddie-harris-exodus-to-jazz

 
初リーダー作なので、後の「圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナー」はまだ存在しないが、ファンキー&ソウルフルなテナーについては、その片鱗がそこかしこに散りばめられている。エディ・ハリスのテナーについては、この初リーダー作にして、他のテナー・マンには無い個性&特徴が備わっていることが良く判る。

冒頭の映画音楽「Exodus」での、情感溢れ、ファンクネスを湛えたテナーの音色。決してハードバップなテナーの延長線上に無い、ファンキー&ソウル・ジャズに端を発したエモーショナル&ソウルフルで典雅なテナーの吹き回し。そして、2曲目の自作バラード曲の「Alicia」での、寂寞感、切ない情感のこもったスピリチュアルなブロウ。ダイナミックかつ繊細、ファンクネス&ソウルフル溢れる情感たっぷりのテナー。エディ・ハリスのテナーの個性&特徴が良く理解出来る。

後のダンサフルでエモーショナル、ソウルフル&ファンキーなテナー&ヴォーカルのハリスと比べると、地味で大人し目の初リーダー作でのテナーだが、ジャズ・テナーとしての個性と特徴について、エディ・ハリスは素性確かなものだ、ということが良く判る。決して「際もの」なテナーでは無い。メインストリームで正統派なファンキー&ソウル・ジャズのテナーである。
 
 

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2023年12月 3日 (日曜日)

マリーン・ウィズ・シーウインド

クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、1970年代から1980年代前半までが流行期。特に1970年代後半から1980年代前半までがピークで、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ専門の月刊誌までが発刊されていた。

そんな、クロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、現在までに相当数のクロスオーバー&フュージョン盤がリイシューされてきた。しかし、「あれはどこへ行った」と探し回る位の「クロスオーバー&フュージョンの好盤」でも、今までリイシューされないもの多数存在する。まあ、セールスにならないリスクはあるから仕方ないことではあるが...。

Marlene with Seawind『Summer Night』(写真)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、Marlene (vo), Kim Hutchcroft (sax), Lew McCreary (tb, tracks: A3), Flugelhorn – Gary Grant, Jerry Hey (tp, flh), Larry Williams (key), Bud Nuanez (g), Ken Wild (b), Bob Wilson (ds, perc), Ron Kalina (harmonica, tracks: A4)。

ハワイアン・クロスオーバー&フュージョンの大御所バンド・シーウインドをバックに、フィリピン出身の天才歌姫マリーンが唄いまくった、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの秀作。 CBS/Sonyレコードからのリリース。和フュージョン・ジャズ盤の名盤の一枚。主な録音はハリウッドで行われている。当時、アルバム制作については、気合が入っていたんやろうなあ。
 

Marlene-with-seawindsummer-night

 
シーウインドの爽やかファンキーで躍動感溢れる、切れ味の良いブリリアントなホーン・セクションに乗って、マリーンが若々しく、パンチのあるボーカルを披露する。バックがシーウインドなんで、クロスオーバー&フュージョンの範疇で語られることが多いが、マリーンのボーカルは素直でポップなもので、ボーカルから聴くと、AORの秀作と評価しても良い内容。

リリースは1982年で、クロスオーバー&フュージョンやAORのブームは下降線に転じた時期で、新作はマンネリ基調の退屈なアルバムがリリースされがちな環境だったが、この盤は違った。まず、バックのシーウインドが素晴らしく内容のある演奏を繰り広げている。これが最大の聴きもので、シーウインドの演奏だけを切り出しても秀作として評価できるパフォーマンスである。

そんなシーウインドをバックに唄うのだ。マリーンは気合が入っているし、実に気持ちよさそうに唄っている様がこの盤から伝わってくる。特に、アップテンポで始まる冒頭のタイトル曲「Summer Night」が秀逸な出来。ブルー・アイド・ソウル系バンド曲のカヴァーだが、これが実に良い。この冒頭の一曲がこの盤全体の雰囲気を代表する名演、名唱。

リリース当時は、貸しレコード屋で借りてカセットにダビングして所有していた盤で、カセット・デッキが壊れた後、長らく聴くことの出来なかったアルバム。最近、サブスク・サイトにアップされているのを見つけて、思わず再聴。良いクロスオーバー&フュージョン盤に再会できました。
 
 

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2023年12月 2日 (土曜日)

『Round About Midnight』雑感

Miles Davis『'Round About Midnight』(写真左)。1955年10月26日、1956年9月10日の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。マイルス・デイヴィスの「1950年代の黄金のクインテット」である。

この盤は、その印象的なジャケットと共に「名盤中の名盤」とされる。しかし、ハードバップを楽しく聴ける、聴いて楽しいマイルス盤ではないだろう。この盤はマイルスの諸作の中で、かなりハードボイルドで、ストイックで、ロマンチックな面は皆無。純粋ジャズ者、ジャズが大好きな人たちにとっては、この盤を聴いて「いいなあ」と思うだろうが、ジャズ者初心者駆け出しの方には、ちょっと早いかな、とも思う。

この盤は「マイルスの考えるハードバップ」の最終形だと思っている。大手CBSレコードでの録音である。当然、十分なリハーサルは積めたと思う。演奏のまとまりは素晴らしい。そして、アレンジが素晴らしい。

この盤については、マイルスの大のお気に入りアレンジャー、「音の魔術師」と異名を取るギル・エヴァンスのアレンジを積極採用している。このギルの他にない、マイルス好みのアレンジがこの「マイルスの考えるハードバップ」の最終形を「大名盤」たらしめている、と感じている。

コルトレーンはまだまだ発展途上。力感溢れるブロウは、マイルスの美的感覚あふれるクールで繊細なトランペットと好対照だが、テクニック、フレーズ共に発展途上。故に、諸手を挙げて、この盤でのコルトレーンは最高、という訳にはいかない。
 

Roundaboutmidnigh_1

 
マイルスはソニー・ロリンズを採用したかったみたいだが、確かにそれは「グッド・チョイス」。しかし、プレッシャーのかかる本番にちょっと弱そうで、他のメンバーに気を遣ってしまう傾向のあるマイルスが、このセッションで、その実力を遺憾無く発揮できたかといえば、ちょっと疑問符が付く。

コルトレーンは「能天気」なところがあるので、リーダーがマイルスだろうが、レジェンド級のジャズ・ジャイアントだろうが関係なく、あっけらかんと実力以上のブロウを披露してしまうところがある。この盤ではその「能天気」な面が良い方向に出ている。つまり、コルトレーンは「ついていた」。

ガーランドはマイルスの要求通り「アーマッド・ジャマル」の様に弾く。マイルスは元々は、アーマッド・ジャマルのピアノを招聘したかったみたいだが、ジャマルはシカゴを離れることを嫌いマイルスとの共演は実現しなかった。やむなくガーランドのピアノをチョイスした訳だが、これはこれで「瓢箪からコマ」。ガーランドはガーランドのスタイルをマイルスの下で確立した訳で、ガーランドにとっては損のないマイルス・バンドへの参加だった。

ポール・チェンバースのベースとフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムによる「リズム隊」は、バップなリズム&ビートを、ダンディズム溢れる、ダイナミックでクールなリズム&ビートに昇華させている。テクニックに走ることなく、シンプルにビートを刻みまくる。それも、マイルスの吹きやすく、である。この二人のリズム隊の招聘は「マイルス大正解」だった。

「マイルスの考えるハードバップ」の最終形な、この『'Round About Midnight』。大手CBSレコードとの契約、そして、この盤の録音を契機に、マイルスが「超一流」なトランペッターとして、ジャズのイノベーターとして、ジャズ界に君臨していく。そして、付いたニックネームが「ジャズの帝王」。そんなジャズの帝王が考えるハードバップの最終形がこの盤に記録されているのだ。
 
 

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2023年12月 1日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・270

Niels Lan Doky(ニルス・ラン・ドーキー、以降「ラン・ドーキー」と略)は、デンマークのコペンハーゲン出身のジャズ・ピアニスト。1963年10月生まれ。今年で60歳、還暦である。ラン・ドーキーは北欧ジャズの範疇に入るのだが、彼のピアノは、北欧ジャズのピアノの雰囲気とはちょっと異なる。

北欧ジャズのピアノは、押し並べて「独特の深いエコーに乗って、耽美的でリリカル、深遠でメロディアスな弾き回し」。ファンクネスは皆無、間とフレーズの広がりを活かした透明度の高い音の展開がメイン。しかし、ラン・ドーキーのピアノはちょっと違う。間とフレーズの広がりを活かした弾き回しでは無く、音符を敷き詰めた速い弾き回しがメイン。

エコーは控えめ、耽美的でリリカルではあるが、透明度の高い爽快感が特徴の展開。と言って米国ジャズのピアノでは全く無い。音の雰囲気は明らかに「欧州ジャズ」。当然、ファンクネスは皆無。オフビートは軽め。クラシック風の端正なタッチが、やはり「欧州的」。何故か、アメリカン・カルテット時代のキース・ジャレットを「欧州的」にした様な響きがユニーク。

Niels Lan Doky『The Target』(写真左)。1986年11月17, 18日の録音。ちなみにパーソネルは、Niels Lan Doky (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Jack De Johnette (ds)。録音当時、23歳の若き精鋭、ニルス・ラン・ドーキーの2枚目のリーダー・アルバム。ピアノ・トリオ編成。ラン・ドーキーのピアノの個性が良く判る。
 

Niels-lan-dokythe-target

 
どういう経緯でそうなったかは判らないが、ベースに北欧出身のアコベの名手中の名手ペデルセン、ドラムにポリリズミックなドラムの名手デジョネットがバックのリズム隊を担当している。

このリズム隊、全く申し分無いどころか、若き精鋭にとっては最高のリズム隊に恵まれている。特に、ペデルセンの、唄うが如く、ソリッドで力感溢れるベースラインは素晴らしい。デジョネットの緩急自在、硬軟自在、変幻自在なドラミングも見事。

ラン・ドーキーは、彼独特の「音符を敷き詰めた速い弾き回し。エコーは控えめ、耽美的でリリカルではあるが、透明度の高い爽快感。ファンクネスは皆無、オフビートは軽め、欧州ジャズ的なクラシック風の端正なタッチ」が溢れんばかりに表現されている。

北欧出身でありながら、北欧ジャズ・ピアノらしからぬ「欧州的なピアノ」。音符を敷き詰めた速い弾き回しではあるが、決して「シーツ・オブ・サウンド」の焼き直しでは無い、ラン・ドーキー独特の「高速な弾き回し」。クラシックに端を発したか如く、端正で正確なタッチがいかにも「欧州ジャズ」らしい。若き日のラン・ドーキーのピアノ・トリオ盤。今の耳で聴き直して、なかなかの充実した内容だと感じます。
 
 

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2023年11月30日 (木曜日)

初シンタックスのホールズワース

超「変態捻れエレギ」の雄、Allan Holdsworth (アラン・ホールズワース) 。4枚目のリーダー作『Metal Fatigue』で、エレギ一本の「変態捻れエレギ」で勝負して、ホールズワースにしか作れない、捻れエレギの傑作を手にした。次はどうするんやろ、と思って聴く5枚目のリーダー作である。

Allan Holdsworth『Atavachron』(写真左)。1986年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Rowanne Mark (vo, track 7), William Edward Childs (key, tracks 2, 5), Alan Pasqua (key, tracks 3, 4, 6), Gary Husband (ds, tracks 1, 2, 4, 6), Chad Wackerman (ds, tracks 3, 7), Tony Williams (ds, track 5), Jimmy Johnson (b)。クロスオーバー・ジャズ的アプローチに力点が移ったイメージの音作り。

ホールズワースがシンタックスに手を染めた最初のリーダー作になる。シンタックスとは、シンセサイザー+アックス(斧)の合成造語。ギターを斧に見立てて名付けられた「ギター・シンセサイザー」である。

エレギ命の「ホールズワース者」からすると、許しがたい楽器みたいだが、ホールズワースの音作りやフレーズの中に潜む「プログレッシヴ・ロック」な音の要素を全面に押し出すには最適の楽器と僕は評価している。

エレクトリック・ギターとシンタックスが混在して活用されているが違和感がない。それくらい、この盤でのホールズワースはシンタックスに精通している。
 

Allan-holdsworthatavachron

 
英国プログレッシヴ・ロック等で活躍してきたシンセサイザーの基本はキーボード。シンタックスの基本はギター。シンタックスから出てくる音はシンセサイザーの音だが、出てくるフレーズはギターという楽器ならではのフレーズが出てくる。キーボード系のシンセサイザーのフレーズを聴き慣れた耳に新鮮に響く。これが「肝」。

キーボードとギターは運指のアプローチが全く違う。よって、ギターにとっては、キーボード系シンセとのユニゾン&ハーモニーは意外と取りにくいし、フレーズの受け渡しも意外と難しい。シンタックスは基本がギターなので、ギター的アプローチが容易。エレギとのユニゾン&ハーモニーは取り易いし、フレーズの受け渡しもスムーズ。その点に着目して導入に至ったのだろう。

この盤を聴いて思うのだが、ホールズワースはエレギと絡めたシンタックスの使い方が上手い。今までのキーボード系シンセのキーボード的アプローチとは全く異なる響きのギター的響きのシンセの音。これが新しいエレギの音として鳴り響いている。明らかに「エレギの弾き手」の表現の幅が広がっている。

アルバム・タイトルは「Atavachron=アタヴァクロン」。Atavachron (アタヴァクロン) とは、米国のSFテレビドラマ「Star Trek (スター・トレック) 」の中に出てくるタイム・トラベル用の装置の名前だそう。確かに、ジャケのアートワークに描かれたホールズワース本人もスタートレックの衣装を着ている。しかし、その逸話とアルバムの内容との因果関係は、と問われると、「?」と返答するしかないんですけど(笑)。
 
 

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2023年11月29日 (水曜日)

ホールズワースの個性全開

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のリーダー作の落穂拾い。というか、当ブログ記事として扱っていなかった、ホールズワースのリーダー作を聴き直している。見直してみたら、ホールズワースのリーダー作の半分以上が、当ブログの記事として扱っていない。思わず、計画立てての聴き直しである。

Allan Holdsworth『Metal Fatigue』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Paul Williams (vo, tracks 1, 4), Paul Korda (vo, track 6), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds, tracks 1–4), Gary Husband (ds, track 5), "Mac Hine" (drum machine, track 6), Jimmy Johnson (b, tracks 1–4, 6), Gary Willis (b, track 5)。基本的に知らない名前ばかり(笑)。

ホールズワースの4枚目のリーダー作。まだ、一部では「悪名高い」SynthAxe(シンタックス)には手を染めていない、純粋にエレギ一本で勝負している。しかも、ホールズワースのエレギが「捻れに捻れている」。変態拗れ(ねじれ)エレギと形容されるホールズワースのエレギだが、この盤では、とても気持よく、清々しいばかりに「捻れている」(笑)。
 

Allan-holdsworthmetal-fatigue  

 
ハーモナイザーとディストーションを効かせたヘビーなサウンドがメインで、曲によってはボーカルが入っていて、どこか「英国プログレッシヴ・ロック(プログレ)」風な響きがユニーク。さすが、ジャズとロックの境目が曖昧な英国クロスオーバー+フュージョンである。それでも、ホールズワースの変態捻れギターは、当時の英国プログレには存在しないので、これは「プログレ」ではないな、ということになる。

しかし、ホールズワースのエレギは気持ちよく捻れている。アタッチメントの選び方、使い方が上手くて、ホールズワースにしか出せない音がとんでもなく個性的。収録された曲それぞれがなかなかの出来で、様々な志向&嗜好がてんこ盛りな内容にも関わらず、曲の良さ、という点でアルバム全体に統一感がある不思議なアルバムである。

3つのセッションを合わせて作成したアルバム。色々な音の要素が散りばめられている「万華鏡」の様な内容だが、ホールズワーズの変態捻れエレギの個性は、それぞれの曲の中で一貫していて、どこから聴いても「ホールズワースしか作れない」アルバムに仕上がっているところが、このアルバムの「肝」。ホールズワースの名盤の一枚。
 
 

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2023年11月25日 (土曜日)

ウエスの弾きっぷりが見事。

リヴァーサイド・レーベル時代のウエス・モンゴメリーのリーダー作に「はずれ」は無い。どのリーダー作でも、ウエスのギターは絶好調。加えて、総帥プロデューサーのオリン・キープニュースのサイドマンの人選がとても良く、ウエスはそんなパーソネルに恵まれて、心おきなく、ギターを弾きまくっている。

Wes Montgomery『So Much Guitar!』(写真左)。1961年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Hank Jones (p), Ron Carter (b), Ray Barretto (conga), Lex Humphries (ds)。ウエス・モンゴメリーの6枚目のリーダー作。米国ではウエスの最高の録音の1つとされる。パーソネルのメンバーの人選も申し分ない。

しかし、まあ(笑)、思いっきり弾きまくるウエスである。鬼気迫る雰囲気ではない、軽やかに爽やかに疾走するように、超絶技巧なギターを弾きまくるウエス。

これが良い。収録された曲の選曲がふるっている。全8曲中、ウエスの自作曲が2曲のみ。他の6曲は渋めのスタンダード曲。意外とひと捻りもふた捻りもある、癖のあるスタンダード曲で、これは弾き甲斐があるだろう。

一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで、ウエスの持つテクニックを余すことなく駆使して、ウエスしか弾けないギターで、渋めのスタンダード曲を味わい深く聴かせてくれる。
 

Wes-montgomeryso-much-guitar  

 
あまりに軽くかっ飛んだ弾き回しなので、ジャズ・ギター初心者は、何が何だか判らなくなるかも(笑)。それでも、この弾き回しは凄いのはよく判るかと思います。

バックのリズム隊+コンガの叩き出すリズム&ビートは小粋で典雅。ハンク・ジョーンズのファンクネス漂う典雅なバップ・ピアノが効いている。伴奏上手、奥ゆかしく典雅にバッキングするハンクのピアノは、フロントのウエスにピッタリ。

ギターとピアノ、一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで全部できる楽器同士なので、音がぶつかったりするのだが、ハンクのテクニックが優れているのか、決して、音がぶつからないのには感心する。

この盤、米国ではウエスの最高の録音の1つとされるが、我が国では「コンガ入り」が良く無いのか、あまりこの盤を「名盤」として紹介される機会は僅少。

が、この「コンガ」の存在が、この盤のシリアスでハードな面を緩和し、若干、ポップな雰囲気を添加していて、効果抜群と僕は聴いている。

ウエス初期の名盤の一つとして、しっかりと聴いてもらいたいリーダー作。成熟し完成し切ったウエスのギターの弾きっぷりが見事です。
 
 

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