2023年4月 2日 (日曜日)

ラヴァとピエラヌンツィのデュオ

21世紀になって、本格的に聴き始めたのだが、イタリア・ジャズは隅に置けない。欧州ジャズの雰囲気をしっかりと受け継いだ、メインストリーム系の純ジャズがメイン。硬派で骨のあるストイックな純ジャズ志向の演奏が主流で、イタリア・ジャズの範疇でのエレ・ジャズやフリー・ジャズを僕は聴いたことが無い。

Enrico Pieranunzi & Enrico Rava『Nausicaa』(写真左)。1993年3月29, 30日の録音。Enrico Rava (tp), Enrico Pieranunzi (p)。イタリア・ジャズの大御所、トランペットのエンリコ・ラヴァ、ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィ、2人のデュオ演奏。ラヴァが54歳、ピエラヌンツィが44歳の時の録音。

トランペットのエンリコ・ラヴァは、リーダー作のカタログを見ていると、デュオ演奏が好きみたい。特にピアノとのデュオが結構ある。この盤は、イタリア・ジャズの大御所同士、ラヴァがベテランの域に入った時期、ピエラヌンツィがバリバリ中堅ど真ん中のデュオになる。どちらも油の乗りきった実績抜群のジャズマン。内容の濃いデュオ演奏を繰り広げる。
 

Enrico-pieranunzi-enrico-ravanausicaa

 
トランペットとピアノのデュオなので、ピアノが単体でリズム・セクションの機能とフロント楽器の機能の2つを果たすことが出来るので、どうしても、トランペットがフロント一辺倒、ピアノが伴奏がメインで、時々フロントのソロという役割分担になる。よって、トランペットのラヴァが目立ってはいるが、ピエラヌンツィも伴奏にソロに大活躍。

ピエラヌンツィの優れたピアノ伴奏があってこその、ラヴァの自由奔放なトランペット・ソロ。ラヴァのアドリブ・フレーズをよく聴いて、クイックに反応するピエラヌンツィのピアノ伴奏は見事。モーダルなトーンのフレーズで伴奏に回ったラヴァのトランペットのテクニックも見事。音も重ならず、リズム&ビートがぶつかることも無い。粛々とデュオ演奏を重ねているが、これは双方のテクニックのレベルが高く無ければ実現しない。

こういう雰囲気のデュオ演奏は、米国ジャズにはなかなか無い類のもので、ラヴァとピエラヌンツィ、双方のフレーズに仄かに哀愁感、寂寞感が漂うトーンがクールで、音もクッキリ明確で切れ味が良い。いかにも欧州ジャズらしい。イタリア・ジャズというよりは、欧州ジャズ共通の雰囲気を色濃く湛えた、じっくり聴いて感じ入る、極上のデュオ演奏がこの盤に詰まっている。
 
 

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2023年4月 1日 (土曜日)

2曲目以降のトリオ演奏が良い

ウィントン・ケリーのディスコグラフィーを確認していて、あれっ、と思った。ケリーのリーダー作と言えば、リヴァーサイドとヴィージェイの2つのレーベルからのリリースと思い込んでいたら、なんと、あの大手のヴァーヴ・レコードからのリリースもあったんですね。

ヴァーヴからのリーダー作は『Comin' in the Back Door』『It's All Right!』『Undiluted』『Smokin' at the Half Note』の4枚なのだが、そう言えば『Comin' in the Back Door』は聴いたことが無い。近々に聴きたいなあ。後は今までに聴いたことはあるんですが、ヴァーヴからのリリースとは印象が薄かったですね。

Wynton Kelly『Undiluted』(写真左)。1965年2月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Rudy Stevenson (fl, track 1 only), Unknown musician (perc, track 1 only)。1曲目の「Bobo」だけフルートを入れたカルテット、後は全てピアノ・トリオでの演奏になる。

1曲目の「Bobo」はカリプソ調の演奏で、フルートとパーカッションがカリプソ色を濃厚にしている。そう言えば、ケリーはジャマイカの血を引く家系の生まれ。そういう面で、カリプソには愛着があったのかな。ただ、この曲は如何にも「売らんが為」のポップで軽音楽的な演奏で、この曲だけ聴くと、後の曲は聴く気が起こらないほど。しかし、この盤の本質は2曲目以降にある。
 

Wynton-kellyundiluted

 
2曲目の「Swingin Till the Girls Come Home」以降、素敵なピアノ・トリオのパフォーマンスを愛でることが出来る。ケリーのピアノの個性である「健康優良児的にコロコロと明るく転がるように、独特の「揺らぎ」が翳りとなってスイングする」が、この盤のトリオ演奏で良く判る。

大手のヴァーヴ・レコードからのリリース故、やや商業主義に走った、ポップで軽音楽的なアレンジが、かえって良かったのだろう。ケリーはコロコロと明るく転がるようにピアノを弾くのだが、どこか「翳り」が見え隠れして、それが哀愁感となって我々の耳に響く。そんなケリーのピアノの翳り、哀愁感が、ポップで軽音楽的なアレンジが故に、明確に浮き出てくるようなのだ。

ただ、この翳りや哀愁感は、一般万民向けの大衆音楽としては地味な印象になって損をする。恐らく、このケリーのリーダー作は、セールス的にはあまり良くなかったのでは無いだろうか。でも、ケリーのピアノの個性については、この盤ではしっかりと前面に出ていて、ケリーのピアノの個性を愛でるには好適なリーダー作ではある。

ジャケもやっつけ感満載で、ヴァーヴ・レコードとしては、あまり多くは期待して無かったのかなあ。それでも、このリーダー作の2曲目以降の、ケリーのピアノ・トリオ演奏は実に味わい深い。ベースのポルチェンもドラムのコブも好演。ウィントン・ケリーのファンには聴き逃せない好盤だと思います。
 
 

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2023年3月30日 (木曜日)

ケリーの「落ち穂拾い」盤

春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる。ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。

健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「春」の持つ雰囲気に似ていると思うのだ。春って、暖かくなって陽光うららか、心も浮き浮きするするのだが、僕はそんな明るさの中に、どこか無情さを感じて、どこか「寂しい、悲しい」感じがして、思わずしみじみしてしまう。そんな雰囲気を、ウィントン・ケリーのピアノを聴いていても感じるのだ。

Wynton Kelly『Someday My Prince Will Come』(写真左)。Vee-Jayレーベルでリリースしたリーダー作での未収録となったトラックの「落ち穂拾い」盤。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Lee Morgan (tp, track 7), Wayne Shorter (ts, track 7), Paul Chambers (b, tracks 1-3, 5 & 7), Sam Jones (b, tracks 4 & 6), Jimmy Cobb (ds)。
 

Wynton-kellysomeday-my-prince-will-come

 
LP盤の収録曲ベースで分類すると、7曲目の「Wrinkles」のみ『Kelly Great』から(録音日・1959年8月12日)。4曲目「Come Rain or Come Shine」と6曲目の「Sassy」が『Kelly at Midnight』(録音日・1960年4月27日)から、その他、残り7曲が『Wynton Kelly!』(録音日・1961年4月20日)のセッションからの収録。

いずれの曲も、ウィントン・ケリーの名盤のセッションからの「落ち穂拾い」なので、未収録曲とは言え、捨て曲は無い。未収録曲集だと酷いものでは、途中で演奏を止めているものや、スタートでずっこけて途中で継続不能になっているものが収録されていて、聴いていて気分が悪くなるものもあるのだが、このケリーの「落ち穂拾い」盤は、いずれも演奏はしっかり完結していて破綻も無い。良い内容の演奏ばかりで、それぞれのセッションの充実度が良く判る。

感心するのは、ケリーのピアノに全く「ブレ」が無いこと。それぞれの曲にケリーの個性がしっかり記録されていて、テクニック的にも申し分無い。よって、3つのセッションからの寄せ集めなんだが、この盤の為だけのセッションからの選曲なのか、と思ってしまうほど、不思議とアルバム全体に「統一感」がある。好調な時のケリーは無敵である。「落ち穂拾い」盤ではあるが、ケリーを愛でるアルバムとして良い内容。好盤です。
 
 

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2023年3月29日 (水曜日)

ルーさんとオルガンとギターと

1950〜1960年代のブルーノート・レーベルには、レーベルにずっと所属した「お抱えジャズマン」がいた。アルト・サックスのルー・ドナルドソンとジャキー・マクリーン、テナー・サックスのアイク・ケベック、ピアノのホレス・シルヴァー、トランペットのドナルド・バードなど、ブルーノートをメインにリーダー作をリリースし続けた強者共である。

ブルーノート・レーベルは中小規模の零細レーベルだったので資金力は無い。営業力も弱い。よって、ストリングスを交えてのゴージャズな編成での録音や、ビッグバンドなどの大人数編成の録音が出来ない。アルバムを米国全土で売り上げる営業力も期待出来ない。

それをやりたければ、期待するならば、大手のジャズ・レーベルに移籍する必要があった。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに見出されて、メジャーな存在になったジャズマンの中で、そういう大手レーベルに移籍していったジャズマンも多くいる。

それでも、ライオンは自らが見出したジャズマンの大手レーベルへの移籍を喜んだ。自分が見出したジャズマンが大手のレーベルに認められて、メジャーな存在になっていく。それがライオンにとっては無上の喜びだったそうだ。ライオンは「ジャズマン・ファースト」なレーベル経営者であり、プロデューサーであったことが良く判る。

しかし、逆に、そのライオンのプロデュースの手腕とジャズマンに対する真摯な対応にほだされて、ブルーノートの「お抱えジャズマン」として、ずっと残ったジャズマンも多くいるのも事実。ライオンの人柄に惚れて惹かれてブルーノートに留まり、ライオンが引退した後も、1970年代半ば、ブルーノートが活動停止するまで、ずっと「お抱えジャズマン」であり続けた。
 

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Lou Donaldson『Good Gracious!』(写真左)。1963年1月24日の録音。ブルーノートの4125番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Grant Green (g), Big John Patton (org), Ben Dixon (ds)。ブルーノートのお抱えアルト・サックス奏者のルー・ドナルドソンがリーダー、ピアノレス、代わりにオルガンが入ってベースレス(ベースラインはオルガンが代替)、ギターを加えたカルテット編成。

もともと、ルーさんのアルト・サックスは、バップでファンキー、音は明るくフレーズは爽快。アーティスティックな面を突き詰めたジャズより、ポップで聴き心地の良いソウルフルなジャズに向くアルト・サックス。そんなルーさんのアルト・サックスは、ジョン・パットンの正統でどこかポップなファンキー・オルガンとの相性抜群。バップでご機嫌な演奏を繰り広げる。

そして、グリーンのパッキパキ硬質なシングルトーンが個性のファンキー・ギターとの相性も抜群。ルーさんのアルト・サックスは流麗で爽快。それに相対するグリーンのギターは、シングルトーンで硬質でバッキバキと真逆。そんなお互い真逆の音が、溢れるようなファンクネスという「共通項」を基に、ソウルフルでご機嫌な演奏を繰り広げる。

ディクソンのファンキーなドラミングは、そんなアルト・サックス、オルガン、ギターを、ソウルフルに鼓舞して、引き立てる。このディクソンもドラミングも、この盤の「キモ」。

あまり、ブルーノート盤の紹介に出てこないルーさんのリーダー作なんですが、内容は「間違いの無い」、バップでファンキーでソウルフルな「ご機嫌なオルガン・ジャズ」。ルーさんのアルト・サックスもその個性が十分に輝いていて、この盤、ファンキー&ソウル・ジャズの好盤だと思います。お勧め。
 
 

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2023年3月28日 (火曜日)

BNのお蔵入り音源「4122番」

 

ブルーノート・レーベルは、有名なカタログとして、1500番台、そして、4000番台〜4300番台があるが、ブルーノートって几帳面だったんだなあ、と思うのは、この有名なカタログ番号に「飛び番」がないこと。きっちりとそれぞれのカタログ番号に100枚のアルバムが、それぞれしっかりと割り当てられている。これには感心することしきりである。

Stanley Turrentine『Jubilee Shout!!!』(写真左)。1962年10月18日の録音。ブルーノートの4122番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Tommy Turrentine (tp), Kenny Burrell (g), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Al Harewood (ds)。

タレンタイン兄弟、スタンリーのテナー、トミーのトランペット、そして、バレルのギターがフロントのセクステット編成。実はこの盤、カタログ番号、ジャケットまで用意されていて「お蔵入り」になった盤になる。世の中に出たのは1986年になる。録音から22年もの間、倉庫に眠っていた訳で、当時のブルーノートでは、ままあること。

お蔵入り音源だから、内容的に問題があったり劣ったりしているのか、と思うのだが、この盤についても、何回聴いても「お蔵入り」になった理由が判らない。内容的には、タレンタイン兄弟の2管+バレルのギターがフロントを張った、スッキリとしたハードバップな演奏に仕上がっている。

1962年の録音なので、ジャズは多様化の時代に差し掛かりつつあって、この盤の様な、スッキリハッキリした典型的なハードバップな演奏は、古くなっていたのかもしれない。まあ、アルバムってコストをかけてリリースするからには売れないといけないからなあ。当時のブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンはそういう判断をしたのかもしれない。
 

Stanley-turrentinejubilee-shout

 
しかし、今の耳で聴くと、とっても聴き心地の良い、スッキリハッキリとしたハードバップ演奏なんですよね。それぞれの楽器の演奏も、テクニック的にも歌心的にも優れていて、リズム&ビートもカッチリまとまっていて、それぞれの収録曲のアレンジも良好。成熟、完成したハードバップ演奏と言ってもよい位、実に出来の良いパフォーマンスにほとほと感心する。

タレンタインのテナーは、どっぷりファンキーなんだが、意外と軽快。デビュー当時の様な重厚感はちょっと後退して、スッキリハッキリ、そして流麗にフレーズを吹き上げていく。ちょっとライトにポップになったと言っても良いくらいの軽快さ。しかし、これが実に良い雰囲気なのだ。このタレンタインの軽快なテナーがこの盤の一番の聴きどころだろう。

フロントの他のメンバー、トミーのトランペット、バレルのギターも好調。ソニー・クラークのピアノを中心とした、ワーレンのベース、ヘアウッドのドラムのリズム・セクションも快調にリズム&ビートを供給している。本当に、この盤、スッキリハッキリした典型的なハードバップな演奏がてんこ盛りなのだ。

つまりは、この盤、今の耳で聴くと、なんで「お蔵入り」になったのかが皆目判らない内容で、まあ、これはブルーノートでは、ままあること、なので、「お蔵入り」音源だから、どこかに内容的に問題があるぞ、とか、どこかに劣った部分があるぞ、とかで聴き耳をたてると疲れるだけです(笑)。でも、アルフレッド・ライオンが生きていたら、この盤の「お蔵入り」の理由、しっかりと訊いてみたいものである。
 
 

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2023年3月27日 (月曜日)

テキサス・テナーの雄の好盤

ブルーノートの4100番台は、1962年〜1965年に渡ってリリースされたアルバムで全100枚。1962年~1965年と言えば、ジャズの世界はハードバップ全盛期を経て、多様化の時代に突入していた。そして、ブルーノートはこの4100番台で、この「ジャズの多様化」にしっかりと応えている。

多様化とは、ハードバップからジャズのアーティスティックな部分にスポットを当てた「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」「スピリチュアル・ジャズ」が、ポップで大衆向けの音楽として「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」「ラテン・ジャズ」と、ハードバップから、様々な志向毎にジャズ演奏のトレンドが派生したことを指す。

Don Wilkerson『Elder Don』(写真左)。1962年5月3日の録音。ブルーノートの4121番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts), John Acea (p), Grant Green (g), Lloyd Trotman (b), Willie Bobo (ds)。テキサス・テナーの雄、ドン・ウィルカーソンのテナーと、グラント・グリーンのぱっきぱきシングル・トーンなファンキー・ギターがフロントのクインテット編成。

ドン・ウィルカーソンは、1932年、米国ルイジアナ州マローヴィル生まれの、R&Bとソウル・ジャズのテナー奏者&バンド・リーダー。テキサス・テナーの雄として知られる。テキサス・テナーとは、ブルースを基調とした、骨太で気合いや根性を優先、豪快なブロウを身上とした、米国南部の男らしい荒くれテナーのこと。
 

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そんなテキサス・テナーが心ゆくまで楽しめる。少しラテンなリズムが入ったダンサフルで躍動感のあるテナー、アーシーでブルージーで、ややゴスペルっぽいテナー、R&B基調のソウルフルでガッツのあるテナー、そんなテキサス・テナーをウィルカーソンが全編に渡ってガンガンに吹きまくっている。

そして、フロントの相棒、グラント・グリーンのパッキパキ・ファンキー・ギターが、このウィルカーソンのテキサス・テナーにばっちり合っている。グリーンのギターは切れ味の良い、骨太なシングルトーンが身上なんだが、ウィルカーソンの骨太テキサス・ギターとの相性抜群。

そして、ファンクネスだだ漏れのグリーンのギターが、ウィルカーソンのテナーと交わって、ソウルフルなギターに変身したりして、これがまたまた聴き応えがある。このウィルカーソンのテナーとグリーンのギターの化学反応も聴きものである。

ジャズ多様化の時代に、こういうテキサス・テナーがメインのリーダー作をリリースしてくるブルーノートって、懐深く、なんて粋なんだろう。だからこそ、ブルーノートの4100番台は、当時のジャズの演奏トレンドを幅広く捉えていて、聴いて楽しく、聴いて勉強になる。そして、ジャズって本当に他の音楽ジャンルに対して「懐が深い」なあ、と再認識した次第。
 
 

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2023年3月26日 (日曜日)

スリー・サウンズの音の変化

ブルーノートの4100番台の聴き直しを再開した。4100番台のカタログをチェックしていたら、まだまだ、当ブログにアップしていない盤がかなりあることに気がついた。どうも、4000番台について、全てのアルバムの記事をアップして、全部終わった気になったとみえる(笑)。で、この盤から再開である。

The Three Sounds『It Just Got To Be』(写真左)。1960年12月13–14日の録音、1963年のリリース。ブルーノートの4120番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」の好盤。従来の聴き易い、ストレート・アヘッドなピアノ・トリオから、新しいイメージへの変化の兆しが聴ける。

それまでは、ストレート・アヘッドでハードバップなピアノ・トリオ。アレンジが優れていて、スタンダード曲をライトに聴き易く仕立て上げていて、とても趣味の良い、小粋で聴き応えのある盤をリリースしてきた。が、ここに来て、リーダーのピアニスト、ジーン・ハリス(写真右)は、この「スリー・サウンズ」の音を、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換を図りだしている。

録音が1960年12月なので、この転換については判断が早い方。1960年終わりと言えば、まだソウル・ジャズは兆しがあるくらい。リリースが伸びて1963年6月にになったのも頷ける。1963年6月であれば、ソウル・ジャズが流行始めた頃なので、このリリース時期については合点がいく。
 

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冒頭の「One For Renee」から、ファンキー・ジャズが基本で、そこかしこにソウル・ジャズの雰囲気が漂う演奏でダンサフル。もともとのスリー・サウンズが持っていた「アレンジ良好で趣味の良い、小粋で聴き応えのある」雰囲気はそのままに、ソウルフルなイメージが濃厚になっている。

ジーン・ハリスのピアノのフレーズは、躍動感がさらに増し、ファンクネスが濃厚になり、グルーヴ感が増強されている。ソウル・ジャズへの転換の準備はすっかり整っている様なソウルフルなピアノ。もともとファンキーなピアノを弾くが、オフビートのタッチが強調されていて、ソウル、もしくはR&B基調のピアノに変化し始めている。

そして、シンプキンスのベースとダウディー のドラムのリズム隊は、もともとファンキーなリズム&ビートを叩きだしていたが、この盤ではそこにソウルフルなグルーヴ感が追加されていて、ソウルフルなピアノに転身しつつあるハリスのピアノを、効果的にサポートし鼓舞している。

このファンキー・ジャズからソウル・ジャズへの転換は、このスリー・サウンズのメンバー3人の能力の高さと優秀なアレンジ力が故に出来ること。新しいイメージを3人の共通の認識として、それぞれが新しいイメージへの転換を図っていて、それが「板につきつつある」。それが、この盤の「聴きどころポイント」だろう。聴き心地が良いトリオ盤です。
 
 

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2023年3月25日 (土曜日)

西海岸ジャズでホッと一息です

このところ、天気が良くない。加えて、今日などは「寒い」。先週から3月としては暖かすぎる陽気が続いていたが、今日の、ここ千葉県北西部地方の最高気温は「冬」。昨日の最高気温から10℃以上下がったのだからたまらない。外は雨が降り続いているし、こういう鬱陶しい天気の日には、カラッとクールなウエストコースト・ジャズが良い。

Tricky Lofton & Carmell Jones With The Arrangements of Gerald Wilson『Brass Bag』(写真)。1962年、Hollywoodでの録音。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Lawrence 'Tricky' Lofton, Bob Edmondson, Wayne Henderson, Frank Strong, Lou Blackburn (tb), Wilbur Brown (ts), Bobby Hutcherson (vib), Frank Strazzeri (p), Leroy Vinnegar (b), Ron Jefferson (ds), Gerald Wilson (arr)。

ということで、ウエストコースト・ジャズの「小粋なアルバム」を物色する。それも、ゆったり「ながら」で聴ける感じの盤が良い。そこで選盤したのがこの盤。西海岸ジャズのレジェンド中のレジェンド、名トランペッター&アレンジャーのジェラルド・ウィルソンがアレンジを手掛けた、ウエストコースト・ジャズらしい「聴かせるジャズ」。

5本のトロンボーン・アンサンブルが、この盤のアレンジの「ミソ」。ビッグバンド・ライクな厚みのあるユニゾン&ハーモニーを5本のトロンボーンで表現するという荒技。これぞ「アレンジの妙」。とっても良い「ジャジーな雰囲気」を醸し出している。
 

Tricky-lofton-carmell-jonesbrass-bag

 
この5トロンボーン・アンサンブルに、フランク・ストラゼリのピアノ、リロイ・ヴィネガーのベース、ロン・ジェファーソンのドラムの「西海岸らしい」リズム・セクションが絡んで、とってもジャズっぽく厚みのある、お洒落で小粋なバッキングが成立している。

この小粋なバッキングを背に、カーメル・ジョーンズのトランペット、ウィルバー・ブラウンのテナー・サックス、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブがフロントを張って、流麗で小粋で歌心溢れるソロを披露する。これが実に良い。やっぱ、ウィルソンのアレンジが効いているんやろな。聴いていて「ジャズってええな〜」って、リラックスして気持ち良く、出てくる音に身を委ねることが出来る。

特に、カーメル・ジョーンズのトランペットが心地良い響き。「Canadian Sunset」では、思わずウットリと聴き惚れてしまうくらい。タイトル曲の「Brass Bag」での溌剌としたホットなブロウも良い。ブリリアントで滑らかでスッと音が伸びて、運指は流れる様に、フレーズは唄うが如く、カーメル・ジョーンズのトランペットは魅力的。ウィルソンのアレンジがメインの盤なんで、カーメル・ジョーンズの出番がちょっと少ないのが「玉に瑕」かな。

実にウエストコースト・ジャズらしい、優れたアレンジの下、名うての名手達がフロントを張って、印象的なソロを展開する。いわゆる「小粋で聴かせるジャズ」がこの盤にてんこ盛り。この盤を聴いていると、知らず知らずのうちにリラックス出来て、聴き終えた後、必ず「やっぱウエストコースト・ジャズもええなあ」と独り言を呟く。そんな好盤です。
 
 

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2023年3月24日 (金曜日)

ベテランのネオ・ハードバップ

Smoke Sessions Records(以降、Smokeと略)。1999年、NYのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが、2014年に設立したジャズ専門レーベル。

「Smoke」に出演している人気アーティスト(ベテランが主)の録音を中心に「ポスト・バップ・ジャズ」、「メインストリーム」系のオーソドックスな作品が中心。今後のジャズシーンを担うであろう若手のリーダー作も積極的にリリースしている。

最近、Smokeのリリースするアルバムを良く聴く。これまで第一線を走ってきたベテラン・ジャズマンをメインにリーダー作を作成していて、モード・ジャズ、ネオ・ハードバップなど、ポスト・バップ〜メインストリーム系の純ジャズがメイン。

メンバーの選定も優秀。特に、このベテランのリーダー作が良い味を出している。感心するのは、昔の演奏をなぞるのでは無い、現代の新しい響きのモード・ジャズ、ネオ・ハードバップを表現していること。

そんな現代の新しい響きのモード・ジャズ、ネオ・ハードバップを、第一線を走ってきたベテランのジャズマンが、余裕と深みを持って、粛々と演奏する。その音世界は、現代のジャズの新しい響きを宿しているにも関わらず、決して尖ってはいない。燻し銀の如く「渋く」、堅実で余裕を持ったリズム&ビートは、決して「走る」ことは無い。それでいて、演奏のレベルは高く、テクニックも優秀。若手ジャズマンには出せない、年齢と経験の深さを基にした、クールで深みのある純ジャズである。

Bobby Watson『Back Home in Kansas City』(写真左)。2022年4月5日、NYでの録音。Smokeからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bobby Watson (as), Jeremy Pelt (tp), Cyrus Chestnut (p), Curtis Lundy (b), Victor Jones (ds)、そして、ゲストに、Carmen Lundy (vo)。リーダーのボビー・ワトソンのアルト・サックスとジェレミー・ペルトのトランペットがフロント2管のクインテット編成が基本。
 

Bobby-watsonback-home-in-kansas-city

 
リーダーのボビー・ワトソンは、1953年カンザス州生まれ。今年で70歳になるベテランのアルト・サックス奏者。1977〜1981年、アート・ブレイキー& ジャズ・メッセンジャーズに在籍。メロディセンス溢れるプレイや作曲能力で人気を博した。メッセンジャーズを脱退後は自己のバンド“Bobby Watson & Horizon” を中心に、様々なセッション等で活躍。伝統的で安定したメインストリームな、歌心を湛えたアルト・サックスを吹くところが僕は好きだ。

この盤は、コロナ禍の中、故郷カンザスシティに思いを馳せた、ストレート・アヘッドな純ジャズ盤である。全11曲、全て、モード・ジャズ、ネオ・ハードバップな演奏で占められる。モーダルなフレーズが心地良いのだが、このモーダルなフレーズが全く古くない。「どこかで聴いた事がある」感が全く無く、新しい響きに満ちている。これには感動した。新伝承派のモード・ジャズなどは、もう遠い過去のものになったなあ、と改めて思った。

ボビー・ワトソンのアルト・サックスは絶好調。余裕があって流麗で歌心満点。音はブリリアントで、ブラスが良く鳴っている。この溌剌としたアルト・サックスが、今年70歳の大ベテランが吹いているとは。しかし、パフォーマンス全体を覆う「余裕と大らかさ」は若手には出せない「味」である。そして、中堅トランペッターのジェレミー・ペルトが、ワトソンのアルト・サックスにしっかり寄り添っていて、フロント2管をしっかりと盛り立てている。

ピアニストのサイラス・チェストナット、ベーシストのカーティス・ランディ、ドラマーのビクター・ジョーンズ。このリズム・セクションがとても良い。特に、サイラス・チェスナットの仄かにファンキーでモーダルなピアノが効いている。ベースとドラムが堅実にリズム&ビートをキープする中、チェスナットの歌心溢れるピアノが、歌心溢れるワトソンのアルト・サックスを鼓舞し引き立てる。ワトソンのアルト・サックスとチェスナットのピアノとの相性の良さ。メンバー選定の勝利である。

ジャズの演奏トレンドの中でも歴史があるモード・ジャズ、ネオ・ハードバップな演奏で占められているが、古さを全く感じ無い、逆に、新しさを感じる、新しい響きを感じる「不思議な魅力」を湛えた、聴き応え十分の好盤です。
 
 

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2023年3月23日 (木曜日)

ユッコ・ミラー『City Cruisin’』

最近、ユッコ・ミラーの新盤を「生活のBGM」で聴くことが多い。彼女のアルト・サックスは素姓が良く、オリジナリティーがある。作曲^アレンジの才にも長け、なかなか聴き応えがある。

そもそも「ユッコ・ミラー」とは何者か、である。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る、実力派サックス奏者である。

ジャケ写を見ると、ピンクヘアーの奇抜なルックス、結構、すっ飛んだ出で立ちをしているので「アイドル系、もしくはヴィジュアル系」か、と眉をひそめるジャズ者の方々も多いが、決して、ヴィジュアル指向ではない。確かに、彼女のサックスは正統派なもの、テクニックもブロウも確かなもの。それは彼女のリーダー作を聴けば良く判る。

Yucco Miller(ユッコ・ミラー)『City Cruisin'』(写真左)。2022年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as,vo), 曽根麻央 (p, key), 中村裕希 (b), 山内陽一朗 (ds)。ユッコ・ミラーのアルト・サックスがワンホーンのカルテット編成。メジャー・デビュー後5作目となるアルバム。YouTubeチャンネルの「サックスで吹いてみたカヴァー曲シリーズ」で反響の大きかった楽曲と、ユッコ・ミラー自身によるオリジナル楽曲2曲を収録。

特にこの「カヴァー曲」が秀逸。最近の大ヒット曲、YOASOBIの「夜に駆ける」、Adoの「うっせいわ」、米津玄師「Lemon」、1980年代の我が国のシティポップから、德永英明の「レイニーブルー」、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」、それから、ユニークな選曲としては、アニメの世界から『名探偵コナン』メイン・テーマ、【となりのトトロ】風のとおり道 。
 

Yucco-millercity-cruisin

 
これが素晴らしく良い出来。こういうキャッチャーなヒット曲やテーマ曲をジャズ化すると、どうしても、主旋律のメロディーが印象的に残って、砂糖菓子の様に甘い、聴き心地が良いだけのイージーリスニング風なカヴァー演奏になりがちなのだが、ユッコ・ミラーの場合、そうはならない。アレンジが素晴らしく良くて、しっかりとジャズになっている。

「うっせいわ」や「Lemon」など、その歌の持つ主旋律のメロディーが強烈なので、ジャズ化は難しいのではと思ったが、アレンジが秀逸。主旋律のメロディーの崩しも良いし、アドリブへの展開も自然で滑らかで「取って付けた」感が無い。いや〜、久し振りに「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」を聴いた気がする。

ユッコ・ミラーのアルト・サックスは以前にも増して、力強さ感が溢れていて聴き応えがある。このユッコ・ミラーの正統派なテクニックも十分なアルト・サックスだからこそ、「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」が成立するのだと思う。

当然、フロントのユッコ・ミラーのアルト・サックスがこれだけ鳴っているのだ。バックのリズム・セクションの演奏も、そのアルトの鳴りに呼応して、素晴らしいパフォーマンスを披露している。

このカルテットの演奏の実力の高さは、ユッコ・ミラー作のオリジナル2曲の演奏を聴けば判る。「優れた日本のポップス曲のジャズ・カヴァー」で固めた盤だから、とか、ピンクヘアーの奇抜なルックス、結構、すっ飛んだ出で立ちだから、とかで、この盤を「ゲテモノ」扱いしてはならない。アレンジ、演奏共に、実に良く出来た現代のフュージョン・ジャズの優秀盤です。
 
 

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