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2018年9月25日 (火曜日)

デンマークでの邂逅セッション

ホレス・パーランのピアノを聴き直している。パーランのピアノの個性は判り難い。といって「テクニック豊かで端正」という総合力で勝負するピアノでは無い。明らかに右手と左手に個性が宿っていて、パーランは明快な個性で勝負するピアノ。では、パーランのピノの個性とは、と問われると、ちょっと自信が無い。だから、パーランのリーダー作を聴き直している。

パーランの個性は「少年時代にポリオを患い、そのために部分的に右手が変形した。障碍の代償として独自の演奏技巧を発展させ、左手のとりわけ「刺戟的な」コード進行を、一方の、右手の著しくリズミカルなフレーズと対置している」(Wikipediaより)と書かれることがほとんど。しかし、左手と右手の個性がはっきりと聴き取れるほど、特徴的では無いのだ。

Horace Parlan『Arrival』(写真左)。December 21 & 22, 1973年12月21&22日、デンマークはコペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Horace Parlan (p), Idrees Sulieman (tp), Bent Jædig (ts), Hugo Rasmussen (b), Ed Thigpen (ds)。テナー&トランペット2管フロントのクインテット構成。

パーランは新天地を求めて、1973年にアメリカ合衆国を去ってデンマークに渡り、それからは首都コペンハーゲンに定住している。この『Arrival』はデンマークに渡った頃に、Steeplechaseレーベルに録音したものだと思われる。
 

Horace_parlan_arrival  

 
この盤でのパーランは安定した、堅実なピアノを聴かせてくれる。変形したと言われる右手の転がる様に流麗なフレーズと左手のブロックコードがパーランのスタイルなんだが、右手の転がる様なフレーズのストロークが短く、この短いストロークを連続させることで流麗なイメージを創り出している。左手のブロックコードは、右手の流麗なフレーズに向けたアクセントとして響く。

右手が変形しているなんて、まったく感じない。右手が変形しているが故の「弾き回しの個性」を聴きとろうとすると失敗する。右手のハンディは意識せずに、純粋にピアニストとしての個性を愛でる、という姿勢で十分である。加えて、この盤、他の共演ジャズメンがユニーク。

トランペットのイドリース・スリーマンは米国出身。ビ・バップ期からハードバップ期に活躍したが、1964年にコペンハーゲンに移り住んでいる。ドラムのエド・シグペンも米国出身だが、1974年にコペンハーゲンに移住している。サックスのベント・イェーデックとベースのヒューゴ・ラスムーセンは共にデンマーク出身。いわゆる「現地のジャズメン」である。 

米国からの移住ジャズメン3人と現地のジャズメン2名がガッチリ組んだ、魅力的な演奏がてんこ盛りのハードバップ盤。米国出身のパーラン+シグペンと現地出身のヒューゴのリズム・セクションについては、ファンクネスが希薄でヨーロピアンな響きがメインなのが面白い。パーランの個性を愛で、デンマークでの邂逅セッションを愛でる。好盤である。

 
 

東日本大震災から7年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月24日 (月曜日)

「これは聴いてみよ」な盤・1

ジャズの歴史が100年という。その100年の中で、ジャズのアルバムって、ほんと凄い枚数がリリースされている。最近、ネットのダウンドード・サイトが充実してきて、様々なジャズのアルバムが聴くことが出来るようになった。そんなサイトをお目当てのジャズメンのアルバムを検索している途中で、これは聴いてみよ、とビビッとくるアルバムに出くわすことがある。

Roy Hargrove『With The Tenors Of Our Time』(写真左)。今回出会った「これは聴いてみよ」盤である。1994年のリリース。タイトルの通り、ネオ・ハードバップで優れた中堅トランペッター、ロイ・ハーグローヴが歴代のテナー・マンをゲストに迎えて演奏する企画盤である。メインのハーグローヴのカルテットのパーソネルは、Roy Hargrove (tp,flh),  Ron Blake (ss, ts), Cyrus Chestnut (p), Rodney Whitaker (b), Gregory Hutchinson (ds)。

客演したテナーマンは、以下の5人。Johnny Griffin, Joe Henderson, Branford Marsalis,  Joshua Redman, Stanley Turrentine。大ベテランから中堅まで、渋いマニア好みの大御所的なテナーマンが客演している。これは魅力的だ。実はこの盤、今まで聴いたことが無くて、ハーグローヴのトランペットが好きなのと、このテナーマンのラインナップに魅力を感じて、今回、初聴きした次第。
 

Roy_hargrove_with_the_tenors_of_our  

 
メインのハーグローヴの演奏自体が実に充実している。まず、ハーグローヴのトランペットが端正で艶やかで流麗でとても良い。我が国で人気がイマイチなのかが理解出来ないほど、この盤では充実したトランペットを聴かせてくれる。サイラス・チェスナットをピアノに据えたリズム・セクションも歌心があって堅実で端正。このハーグローヴのカルテット演奏だけでも、この盤、十分に聴ける。

そこに、魅力的なテナーマンが加わるのだ。悪かろう筈が無い。大御所達を前にブレイクも脇に回って、アンサンブル役に徹している。これが好客演のテナーがバンドサウンドとして溶け込む切っ掛けとなっていて、良いアクセントになっています。5人の大御所テナーマンはさすがで、それぞれ、しっかりとした個性が素晴らしい。聴いていて、これはグリフィンかな、これはヘンダーソンとはっきり判る位の個性はやっぱり凄い。

この5人とテナーマンの明確な個性が、この盤のそれぞれの演奏に彩りと特徴を与えていて、この盤の演奏はどれもがバリエーションに富んでいて、聴いていてとれても楽しい。今まで、この盤の存在を全く知らなかったのだが、これが本当に得した気分。良い盤に出会いました。ハーグローヴの素敵なトランペットと共に、聴き応えのある企画盤です。

 
 

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2018年9月21日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・103

ジャズは死んだ、なんて言われて、結構な年月が経った様な気がする。しかし、それどころか、21世紀に入ってジャズはまだまだ深化している。新人ジャズメンも順調に出てくる。新しいジャズの演奏トレンドも幾つか現れ出でた。新しいアルバムも毎月、結構な数がリリースされている。そんなにジャズって需要があるのかなあ、と心配になるが、ジャズはまだまだ元気である。

Sean Jones『Gemini』(写真左)。2005年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Sean Jones (tp), Kenny Davis (b), Corey Rawls, E.J. Strickland (ds), Tia Fuller (as, fl), Orrin Evans (key), Mulgrew Miller (p), Ron Blake, Walter Smith III (ts), Andre Hayward (tb)。有望な若手〜中堅ジャズメンがずらりである。

ショーン・ジョーンズは、1978年5月の生まれ。今年で40歳になる。このアルバムのトランペットのプレイを聴くと、ジャズの楽器の演奏テクニックについても、年々進化しているのが良く判る。昔、ウィントン・マルサリスが登場した時、彼のトランペット・プレイを聴いて「これは神の領域だ、もう彼以上のトランペッターは現れない」と言い切った人がいたが、このショーン・ジョーンズのプレイを聴くと、これってウィントン以上とちゃう? って思ってしまう。
 

Sean_jones_gemini  

 
テクニックは申し分無い。フレーズの流麗さも申し分無い。オープンもミュートもいける。歌心も十分、緩急、どちらもいける。トランペットの音の滑らかさという点ではウィントンを凌ぐと思う。客観的に見て、ショーンのトランペットはウィントンと同等、部分的にそれ以上のものだと感じている。ほんと、ええ音出してる。思わず聴き入ってしまう。

そして、ピアノはマルグリュー・ミラー。僕はこの人のピアノが大好きで、この盤ではミラーは絶好調。華々しさは無いが、堅実で粋な、素朴な中に煌めくフレーズが実に美しい。エレクトリック・キーボードを担当するオリン・エヴァンスも良い音を出している。前半がマルグリュー・ミラーをフューチャーしたアコースティック・サイド、後半がオリン・エヴァンスのキーボートを軸にしたエレクトリック・サイドになっていて、キーボード好きにはたまりません。

他のメンバーもテクニックは確か、アドリブ展開も優秀。収録された曲の出来も良いものばかりで、現代のジャズ曲って感じで聴き応えがあります。演奏の雰囲気は、一言「格好良い」。アコースティック・サイドとエレクトリック・サイドを通じて、サウンドに統一感があって、最後まで一気に聴き切ってしまいます。ショーン・ジョーンズの他のアルバムを聴いてみたくなりました。

 
 

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2018年9月19日 (水曜日)

カシオペアの「最高の演奏」盤

Casiopea(カシオペア)は、日本発のフュージョン・バンド。1979年11月、セカンド盤の『Super FlightL』で出会って以来、ずっとリアルタイムで聴き続けている。爽快感溢れる、高テクニックで流麗なフレーズ、タイトでシャープなリズム&ビート。疾走感溢れる、カッ飛ぶバンド・サウンド。今でも大好きなフュージョン・ジャズ・バンドである。

Casiopea『Mint Jams』(写真)。1982年5月のリリース。カシオペアの7枚目のアルバム。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 向谷実 (key), 櫻井哲夫 (b), 神保彰 (ds)。この盤はライブ盤である。が、聴けば判るが、観客のノイズ(拍手や掛け声)がほとんど無い。非常に人工的なライブ盤である。しかしながら、この作りで聴くカシオペア・サウンドがいかにも「カシオペアらしい」。

「ライブの迫力とスタジオ録音の緻密さが一緒になった盤」がコンセプトで、アルバム制作のマテリアルとして、築地会館における2日間の単独ライブ音源が使用され、入念なリミックスが施されている。スタジオで一部、トリートメント処理はなされているが、オーバー・ダビングは一切無いとのこと。そして、観客のノイズを「Domino Line」と「Swear」の一部を除きカット。
 

Mint_jams  

 
以上の様な経緯を経て、スタジオ録音の様な緻密さとライブ録音の様な演奏の迫力が両立した、素晴らしい内容のアルバムに仕上がっている。選曲もふるっていて、当時のベスト盤的な選曲で、特にライブ映えする楽曲がズラリと並んでいる。「Take Me」「Asayake」「Time Limit」「Domino Line」など、爽快感抜群。何から何まで「カシオペア・サウンド」である。

このライブ盤、音がとても良い。ライブ音源をベースにしているが、楽器の分離も良い。ギターの音は切れ味良く、キーボードの音は疾走感溢れ、ドラムの音はスピード感抜群。これだけ、楽器の音の分離が良い分、演奏全体のダイナミズムは半端ない。聴き始めたらあっと言う間の37分。収録された秀逸な楽曲と相まって、この盤、今でもお気に入りです。

アルバム・タイトルの『Mint Jams』、mint-condition (作りたての、真新しいの意) の「mint」と jam-session(ジャム・セッション)の「jam」を合わせた造語で「最高の演奏」を意味するとのこと。なるほど、この盤に詰まっている音を聴けば、その「最高の演奏」の意味するところが良く判る。カシオペアのベスト盤の位置づけとして、今でもお気に入り盤の一枚です。

 
 

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2018年9月18日 (火曜日)

唄う様なアルト・サックスを堪能

昨日から、Grover Washington, Jr.(グローバー・ワシントン・ジュニア、略して「ワシントン・ジュニア」)がブームである。昔から、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが好みで、もう一人のフュージョン・アルトの雄、デイヴィッド・サンボーンと併せて、僕にとっては「双璧の二人」である。

今日、聞いた「ワシントン・ジュニア」は、Grover Washington, Jr.『Strawberry Moon』(写真左)。1987年のリリース。B.B.キングがギターとボーカルで客演していたり、マーカス・ミラーが「Summer Nights」という曲をプロデュースしていたり、オルガンの雄、ジョーイ・デフランセスコがキーボードで参加していたり、今の目でパーソネルを見渡せば、意外に話題に事欠かないアルバムである。

1987年といえば、アルバムの録音環境は1970年代と大きく変わり、デジタル録音が主流となって、ほぼ定着した時期である。長年アナログ録音に慣れ親しんだジャズメンにとっては、このデジタル録音環境は難物で、音がペラペラになったり、音のエッジがケバケバになったり、中間音域が飛んで、とんでもないドンシャリになったりで大わらわ。しかし、この盤の音はデジタル臭がほとんどしない。良い録音である。
 

Strawberry_moon  

 
さて、この盤の音の傾向は一言で言うと「スムース・ジャズへの移行中」。アレンジは明らかにスムース・ジャズ基調なんだが、演奏はまだまだフュージョン風の音がメインで、フュージョン・ジャズをリアルタイムで聴いてきた僕にとっては違和感がほとんど無い。リズムも打ち込み風では無く、ちょっぴりアナルグ風の音がそこはかとなく伝わってきた、聴いていて「良い感じやなあ」と思わず呟いてしまうほど。

この頃のワシントン・ジュニアは『クワイエットストーム』+『ソウルジャズ』といった音作りで、この『ソウルジャズ』の雰囲気の部分が僕は好きだ。そんな『ソウルジャズ』な雰囲気を、テクニックに頼らず速い節回しも全くせず、手数に走らない落ち着いたフレーズでしっとりと吹き上げていく様はとても聴き応えがある。

タイトルが『Strawberry Moon』、もともとは「夕陽のよう赤みがかった満月、毎年6月の満月」のことですが、日本語に直訳すると「いちごの月」となんとなく甘ったるい感じがするんで、どうにも誤解されがちな盤ですが、内容的には、スムースな傾向が仄かに香るシッカリしたフュージョン・ジャズです。唄う様なアルト・サックスをご堪能あれ。

 
 

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2018年9月17日 (月曜日)

ワシントン・ジュニア晩年の好盤

やっと涼しくなった千葉県北西部地方。今日はちょっと暑くて、真夏日になったみたいだが、朝と夜は、これは涼しくなったなあ、と感じるくらい涼しくなった。気温的にはまだ夏の終わりくらいで、9月中旬の気温としては高いんだが、今年の夏の暑さは半端なかったので、最高気温が30度を下回ったら「涼しくなったなあ」と感じてしまう。今年の酷暑に洗脳されたなあ(笑)。

涼しくなってきたので、やっとストレス無く、ジャズが聴ける様になったのは喜ばしいことである。特に、ビートの効いたクロスオーバー&フュージョン・ジャズが抵抗なく聴ける様になった。ということで、このところ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの隠れ好盤や有名レーベルのアルバムを聴き漁っている。

Grover Washington,Jr.『Soulful Strut』(写真左)。1996年のリリース。グローヴァー・ワシントン・ジュニアの晩年の好盤である。ワシントン・ジュニアは1999年に逝去してしまったので、この盤はその逝去3年前のリーダー盤になる。ワシントン・ジュニアは、フュージョン・ジャズのアルトの名手の一人。代表盤として『Winelight』がある。
 

Soulful_strut  

 
さて、この『Soulful Strut』という盤、1996年のリリースなので、一派一絡げに「スムース・ジャズ」の括りに含まれることが多いのだが、この盤、スムース・ジャズと言うが、テイストはフュージョン・ジャズ。リズム&ビートが確実にフュージョンしていて、決して「ムード優先」の音作りには走っていない。あくまで高テクニックを前提とした演奏がメイン、演奏の底にしっかりとジャズが潜んでいる。

ワシントン・ジュニアは「Just the Two of Us」(邦題:『クリスタルの恋人たち』)の大ヒットで、ムーディーなフュージョン・ジャズ、スムース・ジャズの先駆というイメージを植え付けられて損をしているが、彼のサックスは決してムーディー優先では無い。ジャジーでファンキーでアタックの効いた、結構、硬派なアルトを吹き鳴らしている。

そんな硬派なアルトが耳につかないのは、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが故。特に、テクニックはかなり高いものがあるのに、それに頼らず、印象的なフレーズを落ちついて吹き上げるところが実に心地良い。この盤はそんなワシントン・ジュニアのアルトを十分に堪能出来る。ジャケットも往年のフュージョン全盛期を想起させるイメージで、思わず頬が緩む。好盤です。

 
 

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2018年9月16日 (日曜日)

T-スクエア者として外せない盤

日本発のフュージョン・グループといえば、カシオペアとT-スクエア。この2つのバンドはリアルタイムでずっと聴き続けて来た。T-スクエアって、最初は「ザ・スクエア」って読んでいたんですよね。もともと、バンドメンバーが4人だから「ザ・スクエア」のノリで命名されたらしいのだが、1989年に「T-スクエア」に改名している。

それは米国でこのアルバムを発売するにあたって、米国では既に、同じ様な名前のバンド「SQUARES」があったため、米国で「T-SQUARE」と名乗り、そのバンド名をそのままに、日本でも活動するようになった。その年が1989年。そして、その改名のきっかけになったアルバムとは、T-SQUARE『TRUTH』(写真)である。日本では1987年4月のリリース。

この『TRUTH』というアルバム、T-スクエアといえば『TRUTH』と言われるくらい、T-スクエアを代表するアルバムである。T-スクエアのバンド・サウンドが成熟し、完成した時期の録音であり、そんなT-スクエアの良い部分がこのアルバムに充満している。当人たちが自らを「ポップ・インストゥメンタル・バンド」と呼んでいるが、まさにこの盤は「ポップ・インストゥメンタル・バンド」の面目躍如である。
 

Tsquare_truth

 
この盤のタイトル曲「TRUTH」、この曲のとても印象的なイントロを聴けば、一般の方々も「これは聴いたことがある」となるのではないか。そう、フジテレビ系の「F1グランプリ」のテーマ曲である。この曲は本当によく出来た曲で、T-スクエアのバンドの個性を凝縮したような名曲である。他の曲もその出来は大変良い。「TRUTH」ばかりがクローズアップされる盤ではあるが、他の曲も含めて、この盤の内容は濃い。

音作りの面でも大きな変化がある。それまでのデッドな録音が、リバーブ(残響)が深い録音に変わっている。いわゆる純日本風の録音から米国風の録音への変化。メリハリが思いっきり効いて、演奏自体の躍動感が飛躍的に向上したように感じる。デッドな録音が悪いと言っている訳では無い。この頃のT-スクエアのバンド・サウンドには、このリバーブ(残響)が深い録音の方がより適している、と感じるのだ。

この盤は、ザ・スクェアとしてリリースされたアルバムの12枚目。この盤で、T-スクエアのバンド・サウンドが成熟し完成した。そして、バンド名を「T-スクエア」と改名。T-スクエアにとって、この盤はバンドとして「記念碑」的な盤であり、マイルストーン的な盤である。ということで、T-スクエアを愛でる上で、T-スクエア者(T-スクエアのファン)として、この『TRUTH』は絶対に避けられない盤なのだ。
 
 
 

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2018年9月15日 (土曜日)

典型的なECMの音とジャケット

ECMレーベルのアルバムをカタログ番号順に聞き直していると、ECMって本当に音の傾向に統一感があって、暫く聴いていると「これって、ECMの音やね〜」すぐに判る。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」が、この「音」にも反映されている。

The Gary Burton Quintet with Eberhard Weber『Ring』(写真左)。1974年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Michael Goodrick (g), Pat Metheny (g), Steve Swallow (b-g), Eberhard Weber (b), Bob Moses (perc)。ジャケットに書かれている様に、バートンのカルテットにベースのウェーバーが客演した形。

しかし、このパーソネルを見渡すと、当時、ECMレーベルで活躍していたミュージシャン揃い。特に、ゲイリー・バートン(写真右)のヴァイブの音は透明度が高く切れ味が良く、クラシカルな響きを持つもので、ECMレーベルの音の傾向にピッタリとフィットする、典型的なECMの音である。この盤においても、このバートンのヴァイブの音がアルバム全体の音の傾向を決定付けている。
 

Ring  

 
ギターの音を聴いていると、このくすんだ、少し捻れた特徴のある音はパット・メセニーだと直ぐ判る。このパットのギターの音が不思議とバートンのヴァイブと抜群に相性が良いのだから面白い。まったく違和感の無い、まったく同化した様な相性の良い音の組合せ。明らかに米国ジャズの音とは異なる、欧州独特の音の響きが芳しい。

客演のウェーバーのベースの音が興味深い。粘りの無い、強靱で弾けるような、堅実で重心の低い音。欧州系のアコベの音って、とっても綺麗な音なんですよね。とにかくピッチがしっかりと合っている。ベースについては、特にこれは大切なことだと思っていて、ピッチの合っていないベースの音を長く聴いていると気持ちが悪くなる(笑)。ウェーバーの音は「良い」。

音と相まって、ECMレーベルらしいのが「ジャケット・デザイン」。この現代の印象画の様なイメージはECMレーベル初期のものに多い。このデザインは米国ジャズにはほとんど見られない。というか、ECMレーベル独特と言えるかな。
 
この『Ring』という盤、音そして、ジャケット・デザイン共々、ECMレーベル初期を代表する好盤と言えるでしょう。ECMの音ってどんなの? と問われたら、この盤をかける確率が高い好盤です。

 
 

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2018年9月14日 (金曜日)

「新主流派」な演奏がギッシリ

ジョーヘン(ジョー・ヘンダーソン/Joe Henderson)のブルーノート以降のリーダー作を聴き直している。聴き直すというのも、昔、一度は聴いているはずなんだが、当時、ジョーヘンについては苦手意識があって、あんまり気合いを入れずに聴き流していたようである。反省することしきり、である。そこで、今回は気合いを入れて聴いている。

Joe Henderson『Power to the People』(写真左)。1969年5月の録音。Milestoneレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Herbie Hancock (ac-p, el-p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。このパーソネルを見れば、当時の最先端をいく新主流派の音が聴こえてくる。

そう、この盤は当時の最先端をいく「新主流派」な演奏がギッシリ詰まった好盤である。主役のジョー・ヘンダーソンは、ヘンにフニャフニャうねうねなテナーを封印し、圧倒的にモーダルでクールなテナーを吹き回している。決して熱くブロウすることは無い。あくまでクールに、あくまで冷静にモーダルで限りなくフリーなフレーズを吹き回していく。
 

Power_to_the_people  

 
ハービーも圧倒的に新主流派な響きのアコピ、エレピを弾き分けている。モーダルな展開に切れ味がある、と言う感じで、アドリブ・プレイは鬼気迫るものがある。当時のハービーのベスト・プレイの1つでではないか。しかし、良く聴くとこの頃のハービーって、アコピもエレピも同じ弾き方をしているみたい。それでも、フレーズは実に先進的で美しいので、アコピとエレピと同じ弾き方というのは「ご愛嬌」。

加えて、ドラムのデジョネットのポリリズミックなドラミングが凄い。このドラミングは当時最先端だろう。今の耳にも新しく響くリズム&ビートは凄い。思わず聞き耳を立てる。そして、この盤で一番感心したのがロンのベース。まず「ピッチが合っている」。そして、ベースの音が引き締まって、鋼の様に固くて「しなやか」。こんなに整ってダイナミックなロンのベースはなかなか聴くことが出来ない。

この盤は、ジョーヘンを愛でるというよりは、この盤にギッシリ詰まっている、当時最先端の新主流派な音の響きを心ゆくまで愛でる盤ことが出来る好盤。ジョーヘンのテナーもニャフニャうねうねすること無く、シンプルで判り易い、クールなテナーに仕上がっている。この盤にして、ジョーヘンのフレーズはもはや「コルトレーンの再来」とは形容されない。ジョーヘンはジョーヘン。この盤では、ジョーヘンの個性の最終形が記録されている。

 
 

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2018年9月13日 (木曜日)

改めて聴く『Tête à Tete』

このところ、テテ・モントリューを聴き直している。というか、もともとちゃんと聴き込んでいなかったらしく、テテのピアノを聴いて、最初は違和感だらけ。テテはスペイン出身なので、もう少しスパニッシュな響きがフレーズに反映されていると思っていたのだが、意外とあっさりしている。耽美的な弾き回しかと思っていたら、バリバリ、ダイナミックに弾きまくる。あれれ、どうもこれは勉強の仕直しですな。

Tete Montoliu『Tête à Tete』(写真左)。1976年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。
 
テテ・モントリューはスペインはカタロニア出身、ベースのペデルセンはデンマーク出身、ドラムのアルバート・ヒースは米国出身ながら、1974年にスウェーデンに移住している。ということで、このピアノ・トリオはヨーロピアンなピアノ・トリオである。

このテテのピアノ・トリオ盤はジャズを聴き始めた頃に入手している。でも、当時、まだヨーロピアンなピアノ・トリオ盤に慣れていなかったことと、ジャズ者初心者が故に、米国ジャズ偏重の傾向があったため、この盤はあまり聴き込まなかった。不明を恥じるばかりである。当時、スティープルチェイス盤ってなかなか手に入らなかったのに勿体ない話である。
 

Tete_a_tete  

 
いきなり冒頭の「What's New」の出だしのピアノのフレーズを聴くだけで、この盤は「いけてる」盤だと確信する。堅実で深いタッチ、爽快感溢れる弾き回し、よく回る指。しっかりとフレーズが響き、速い弾き回しも破綻が無い。これは良い。改めて、この『Tête à Tete』を聴いて、テテ・モントリューのピアノがとても魅力的に耳に響く。

ペデルセンのベースが凄く良い音。鋼の様な硬質な響きを振り撒きながら、ブンブンと唸るようにウォーキング・ベースを弾き進める。しかも、ピッチはバッチリ合っていて、リズム感もバッチリ合っていて揺らぎが無い。この魅力的な欧州的ベースを得て、テテは気持ちよさそうに弾き回す。
 
アルバート・ヒースのドラムも良い。ソリッドで粘らない、タイトで硬質なドラミングは明らかに欧州的。コーン、カーンと乾いた新のあるスネアの音が気持ち良く響く。多彩な技を繰り出してもリズム&ビートが破綻することは無い。

そう、テテのピアノ・トリオって、テテのピアノを始めとして、ペデルセンのベースもヒースのドラムも「良い音」してるんですよね。良い音に勝るジャズは無い。この『Tête à Tete』を改めて聴いて、感心することしきり。さあ、頑張ってテテのリーダー作を聴き直すぞ。 

 

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