2024年10月12日 (土曜日)

「Jay&Kai」のColumbia好盤

ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。

J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone Octet』(写真左)。1956年4月の録音。ちなみにパーソネルは、J.J. Johnson, Kai Winding (tb, arr), Hank Jones (p), Milt Hinton, Ray Brown (b), Osie Johnson (ds), Candido Camero (conga, bongo) and The Six Trombonists (Urbie Green, Bob Alexander, Eddie Bert, Jimmy Cleveland (tb), Tom Mitchell, Bart Varsalona (b-tb))。

3日前のブログで、「トロンボーンはスライドを出し入れして音程を出すので、とにかく演奏するのが難しい楽器。まず、カイのテクニックは抜群なので、その最低要件は満たしているが、そんなハイ・テクニックを持ってしても、その曲毎に、スタートするキーや、スライド幅を出来るだけ少なくする様なアレンジが非常に重要になる。」と書いた。

この盤は「Jay & Kai」のColumbiaリリースの好盤。楽曲のアレンジを、トロンボーンの名手二人「Jay & Kai」自らが担当している。これって「無敵」に近いことで、トロンボーンの演奏を熟知した名手二人が、それぞれのトロンボーンの特性を踏まえて、それぞれのトロンボーンが映えるアレンジを施すのだ。確かに、この盤のアレンジはバッチリはまっていて、「Jay & Kai」のトロンボーンが映えに映えている。
 

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アレンジの「キモ」は、The Six Trombonistsの存在。この6人のトロンボーンが効果的にバッキングし、「Jay & Kai」のトロンボーンを前面に押し出し、引き立てる。このトロンボーンのユニゾン&ハーモニーのアレンジも「Jay & Kai」が担当している様で、さすが、トロンボーンをどうやったら、トロンボーンで引き立てることが出来るか、を熟知している名手二人のアレンジである。

そして、もう一つの「キモ」である「適したリズム・セクション」については、小粋で味のある伴奏上手のピアニスト、ハンク・ジョーンズのピアノが要所要所で効いている。

ハンクの趣味の良い流麗な、バップなバッキングのリズム&ビートの躍動感が、「Jay & Kai」のトロンボーンを支え、鼓舞する。「Jay & Kai」のトロンボーンの特性を見抜いた、見事なバッキング。ヒントンとブラウンのベースは堅実、ドラムとコンガ、ボンゴのリズム隊も堅実に、躍動感溢れるリズム&ビートを供給する。

トロンボーンがフロントを担うセッションにおいて重要なファクターである「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合った、「Jay & Kai」のセッションの記録。秋のこの季節にピッタリの、爽快でブリリアントなトロンボーンが主役の好盤です。
 
 




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2024年10月11日 (金曜日)

高中の名盤『Brasilian Skies』

ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。

高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と、ロスの「Westlake Studios」での録音。さすが、フュージョン・ジャズ全盛時代、エレギのインスト盤は受けに受け、セールスも好調だったと聞く。この高中のアルバムもその例に漏れず、ブラジルと米国での「海外録音」。

パーソネルについては、曲毎に様々なミュージシャンを招聘していて、のべ人数にすると30名以上にあるので、ここでは割愛する。主だったところでは、日本人ミュージッシャンとして、坂本龍一、高橋ゲタ夫、浜口茂外也の名前が目を引く。後は、米国西海岸系とブラジル系のフュージョンのミュージシャンで固められている。
 

Brasilian-skies  

 
我が国を代表するスーパー・ギタリスト高中正義の4枚目のソロアルバム。タイトルを見ると、聴く前は、ブラジリアン・ミュージック志向のギター・フュージョンで固められていると思っていたが、意外と様々な傾向の演奏がごった煮で入っている。

初めてブラジルで本場のミュージシャンとプレイした曲たちも素晴らしいが、面白いのは、サンバ・アレンジを施された「スターウォーズのテーマ」や、ジャズの有名なスタンダード曲「I Remenber Clifford(クリフォードの思い出)」、高中オリジナルのディスコ曲「DISCO "B"」、高中節満載のしっとりした「伊豆甘夏納豆売り」など、とにかくごった煮(笑)。

しかし、ごった煮ではあるが、高中のギターの音は明らかに「高中の音」で、ごった煮の収録曲の曲想の中で、この高中のギターの音で、しっかり筋を通していて、この盤は意外と一貫性があって、高中のギターの音だけを愛でることができる様にプロデュースされている。高中正義の初期の名盤の一枚だろう。聴き直してみて、この高中のギターの「爽快感」が堪らない。
 
 

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2024年10月10日 (木曜日)

異色の 高中正義 「オン・ギター」

この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。

高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (key), 細野晴臣, 高橋ゲタ夫 (b), 高橋ユキヒロ, Robert Bril (ds), ペッカー. 浜口茂外也 (perc)。イエロー・マジック・オーケストラから、細野晴臣と高橋ユキヒロが参加しているのが目を引く。

「夏だ、海だ、高中だ」と言われるくらい、高中のインスト作品って「夏向き」だと思うんだが、その演奏が持つ「切れ味の良い爽快感」がゆえ、僕は秋の真っ只中に、高中作品を聴くことが多い。今年の秋も、涼しくなってきたなあ、と思った瞬間から、「高中が聴きたい」となって、このアルバムをチョイスした。

このアルバム、ちょっとその成り立ちが変わっていて、高中正義のオリジナル作品として発表されたわけではなく、教則本の付属レコードとして発表されたもの。ちなみに、この「オン・ギター」は高中正義、「オン・・ベース」が後藤次利、「オン・ドラムス」が つのだひろ、だった。実は、僕はこの教則本の付属レコード・シリーズをリアルタイムで体験している(笑)。

教則本を読みつつ、この付属アルバムの演奏テクニックを聴いて、自分でも演奏してみる、ということだが、この『オン・ギター』に収録されている高中のギター・テクニックは、その水準が抜群に高くて、その様に弾きたくても弾けない(笑)。この教則本って、ギター初心者ではなく、ギター上級者向けだったんやな、と改めて思った次第。
 

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実は、この教則本の付属アルバム、単体のオリジナル作品としても、十分に楽しめる内容になっている。収録曲は以下全8曲。高中オリジナルは1曲のみ。あとは、ロック&ポップスの名曲のカヴァー。

1.「Breezin'」~ ジョージ・ベンソン
2.「Blue Curaçaõ」~ サディスティックス
3.「Just The Way You Are」~ ビリー・ジョエル
4.「Mambo Jambo」~ Pérez Prado
5.「Samba Pati」~ サンタナ
6.「Rainbow」~ オリジナル
7.「That's The Way Of The World」~ EW&F
8.「We're All Alone」~ ボズ・スギャッグス

冒頭「Breezin'」から、もう悶絶もの。高中のギターが素敵に爽快に響く。流麗でキャッチャーなフレーズ。3曲目の「Just The Way You Are(素顔のままで)」は原曲は印象的なバラード曲だが、ここでは、ファンキー・シャッフルなアレンジでカヴァる。原曲がテーマの旋律がしっかりしているので、ファンキーなアレンジにも耐えるのだから面白い。

エンディングの8曲目、ボズ・スキャッグスの名唱で誉高い「We're All Alone」。これは名演。高中の「泣きのギター」全開。思わすしみじみしてしまうくらいの「説得力」。この演奏こそ、秋の真っ只中で聴く「高中ギター」である。

ちょっと、その成り立ちが変わっているアルバムなので、ジャケ写とともに、ちょっと触手が伸びにくいのですが、内容は一級品。躊躇わず手にして良い秀作です。音楽のサブスクサイトにもアップされているみたいなので、今では意外と気軽に聴くことが出来る環境にあるみたいですね。
 
 

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2024年10月 9日 (水曜日)

「Kai」のトロンボーン名盤です

「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。

テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。

Kai Winding『The Incredible Kai Winding Trombones』(写真左)。1960年11月, 12月の録音。「Jay&Kai」の「Kai」=カイ・ウィンディングのリーダー作。ジャズ・トロンボーンが大活躍。ジャズ・トロンボーンの名盤の一枚。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Kai Winding (tb), Jimmy Knepper, Johnny Messner, Ephie Resnick (tb-support), Paul Faulise, Dick Lieb, Tony Studd (b-tb), Bill Evans, Ross Tompkins (p), Ray Starling (mellophone), Bob Cranshaw, Ron Carter (b), Al Beldini, Sticks Evans (ds), Olatunji (congas)。

トロンボーンはスライドを出し入れして音程を出すので、とにかく演奏するのが難しい楽器。まず、カイのテクニックは抜群なので、その最低要件は満たしているが、そんなハイ・テクニックを持ってしても、その曲毎に、スタートするキーや、スライド幅を出来るだけ少なくする様なアレンジが非常に重要になる。
 

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そして、トロンボーンの音の基本キーが低めなので、単独でのソロはインパクトが弱くなる懸念があって、サポートするトロンボーンやベース・トロンボーンを導入して、ユニゾン&ハーモニーの伴奏をアレンジして、フロントのトロンボーンのフレーズを引き立たせる工夫が重要になる。

加えて、トロンボーンの音色は「柔らかで優しい」ので、リズム&ビートがしっかりとしていないと、その「柔らかで優しい」音色のフレーズが冗長に流れてしまうきらいがある。そこで、伴奏上手のしっかりとしたリズム・セクションがバックに配したアレンジにすると、演奏全体がグッと締まる。

このトロンボーンがメインの演奏の「キモ」となる3つのアレンジのポイントを、この盤はしっかり押さえている。故に、カイ・ウィンディングのトロンボーンが圧倒的に引き立ち、メインのフロント・トロンボーンの音色とフレーズだけが印象に残る内容になっている。

そんな引き立った印象的なトロンボーンが、冒頭の「Speak Low」から「Lil Darlin」以降、有名スタンダード曲を「唄い上げて」いく。トロンボーンという楽器の「良いところ」がギッシリ詰まった、カイ・ウィンディングの名盤である。
 
 

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2024年10月 8日 (火曜日)

A&Mでの ”Jey & Kai” の復活

「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。

J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左)。1969年9月の録音。1970年、日本限定のリリース。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson, Kai Winding (tb), Herbie Hancock, Bob James, Ross Tompkins (key), George Benson (g), Ron Carter (b), Grady Tate (ds)。すべてのA&M / CTIリリースの中で最も希少な作品。

1950年代に活躍した、2人のトロンボーン・ユニット「Jey & Kai」を、約20年の時を経て、A&Mレコードのクリード・テイラーが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」にて復活させた、エレクトリックなソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク。

ルディ・スティーブンソンの「Dontcha Hear Me Callin' To Ya?」のエレ・ファンクなカヴァー。イージーリスニングなエレ・ジャズ風にアレンジされた、ジョー・ザヴィヌルの典型的なフュージョン曲「Recollections」。そして、ジョンソン作の魅力的な2曲「Musing」と「Mojo」の全4曲。
 

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聴き易さと判り易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合の中で、収録された曲の全てに、トロンボーン・ユニット「Jey & Kai」のトロンボーンの響きと音色が映える、素敵なアレンジが施されている。 バックの演奏トーンは、エレクトリックがメインではあるが、旧来のハードバップな8ビートを採用していて、基本的に耳に馴染む。

電子キーボードは「ハンコック」がメイン(「Recollections」ではボブ・ジェームスとロス・トンプキンスが加わる)。ファンキーなフレーズを弾き始めている様子がよく判る。ギター参加の若き日のジョージ・ベンソンが、ロックっぽいジャジーなフレーズを弾きまくっている。ロン・カーターのベース、グラディ・テイトのドラムのリズム隊は、エレ・ファンクな8ビートに難なく対応、エモーショナルでファンキーなリズム&ビートを叩き出している。

ジェイジェイとカイのトロンボーンはファンキー。肉声のボーカルの如く、トロンボーンを吹き上げる。ブリリアントでエッジが丸い、柔らかだが芯の入った音色。そう、ジェイジェイとカイのトロンボーンは、ロックやポップスのボーカルの様に、トロンボーンを響かせている。

明らかに、ジェイジェイとカイのトロンボーンのフレーズは、ロック&ポップスの様に、シンプルで分かり易いキャッチャーなフレーズになっている。そして、エレピ・ベース・ドラムのリズム&ビートが、従来のジャズ風の8ビートでは無く、ロック&ポップス風の8ビートなリズム&ビートになっている。

A&Mレコードの音作りの「キモ」である、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合、がとてもよく判る優秀盤です。1970年の初出以来、CDやストリーミングでの発売もなかったというレアな作品でしたが、今では、音楽のサブスク・サイトに音源がアップされていて、気軽に聴くことが出来る様になりました。
 
 

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2024年10月 7日 (月曜日)

60年代後半の「新しいジャズ」

1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。

一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生した難解なフリー・ジャズ、と両極端な深化を遂げつつあった。が、ファンキー&ソウル・ジャズは、ハードバップを基本としている為、8ビートを採用しても、全体のリズム&ビート自体が、ロック&ポップスと比べて「古い」。ましてや、フリー・ジャズは聴き手を選び、その聴き手は少数だった。

ジャズ界の一部は、これではいかん、と「新しいジャズ」の追求を始める。その一つが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合を前提とした「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」である。その牽引役を担ったのが「A&Mレコード」。

Soul Flutes『Trust In Me』(写真左)。1968年の作品。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

Herbie Mann, Hubert Laws (fl), ”Soul Flutes Ensemble & Piccolo” George Marge, Joel Kaye, Romeo Penque, Stan Webb (fl), Herbie Hancock (p, org,harpsichord), Paul Griffin (org), Bucky Pizzarelli, Eric Gale (g), Henry Watts (vib, marimba), Eric Gale, Herbie Hancock (kalimba), Ron Carter (b), Grady Tate (ds), Ray Barretto (perc), Don Sebesky (arr), Creed Taylor (prod)。プロデュースは「クリード・テイラー」。
 
Soul-flutestrust-in-me

 
おそらく、ジャズ・フルートの名手であるハービー・マンが、当時アトランティックと契約していた為、プロデューサーのクリード・テイラーは、ジャケットとライナーからマンの名前を完全に省き、ハービー・マンとヒューバート・ロウズ、この二人のフルートの名手と「Soul Flutes Ensemble & Piccolo」の4人を「Soul Flutes」という名義で、この『Trust In Me』をリリースしている。つまり、実質上のリーダーは「ハービー・マン」。

内容はグループ名の通り、フルートがメインの「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。シンプルでファンキーなフルートのアンサンブルが心地良い響き。マンとロウズのソウルフルなフルートの流麗な吹き回しが印象的。ドン・セベスキーのアレンジが実に効果的。ユルユルの心地良い響きが満載の、分かり易く聴き心地の良い、どこか官能的な「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。

哀愁感溢れるメロウなボサノバ曲「Bachianas Brasileiras」、マンとロウズが絶妙なユニゾン&ハーモニーを奏でる「Cigarettes & Coffee」など、南国を想起させる、流麗で官能的なアレンジ。S&Gのフォーク・ポップス「Scarborough Fair」、ハリー・ベラフォンテの「Day-O(バナナ・ボート)」など、当時流行のポップス曲も、優れたアレンジで、洒落て趣味の良いカヴァー演奏に仕立て上げられている。

旧来のハードバップ・ジャズとは、完全に一線を画した「新しいジャズ」の響き。こうやって、振り返って聴き直すと、このクリード・テイラーが目指した、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」は、それまでのジャズとは全く異なるものであることが判る。ジャズのマナーに則ったインストがメインの「新しいジャズ」。

聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合。それがこの「新しいジャズ」。これが、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの興隆に繋がっていく。
 
 

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2024年10月 6日 (日曜日)

ブラウニーのジャム・セッション

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」の成果であった。

Clifford Brown『Jam Session』(写真)。1954年8月14日、ロスでのライヴ録音。1954年のリリース。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown, Maynard Ferguson, Clark Terry (tp), Herb Geller (as, tracks 1, 3 & 4), Harold Land (ts), Junior Mance (p, tracks 1, 3 & 4), Richie Powell (p, track 2), Keter Betts, George Morrow (b), Max Roach (ds), Dinah Washington (vo, track 2) 。

ブラウニーの短い活動期間の中、この怒涛の「名演の録音月間」である1954年8月。『Best Coast Jazz』は、名演の録音月間」でのライヴ録音である。演奏形式は、トランペット3管、アルト・サックス1管、テナー・サックス1管、そして、ピアノ・トリオのリズム隊。ゲストに1曲だけ、女性ボーカルが入る「ジャム・セッション」形式。

ブラウニーはジャム・セッションに強い。相当なテクニックと音の大きさで相手を圧倒しようとするのでは無く、相手の音をしっかり聴きつつ、相手の音に呼応し、相手の優れたパフォーマンスを引き出す様な、リードする様なパフォーマンスを繰り広げる。
 

Clifford-brownjam-session

 
よって、ブラウニーとジャム・セッションに勤しむフロント管は、皆、活き活きと優れたパフォーマンスを披露する。そんなブラウニーのジャム・セッションの「流儀」が脈々と感じ取れる、内容の濃いジャム・セッションの記録である。ちなみに、このライヴ盤の音源は、Dinah Washington『Dinah Jams』と、同一日、同一メンバーでのライヴ・セッション。

この盤では、ブラウニーのトランペットが絶好調なのはもちろん、トランペットのファーガソン、クラーク、そして、アルト・サックスのゲラー、テナー・サックスのランド、皆、ブラウニーの素晴らしいパフォーマンスに引きずられて、素晴らしいパフォーマンスを繰り広げている。

そして、このジャム・セッションは、米国ウエストコースと・ジャズのメンバーがメインでのジャム・セッションで、東海岸と比べると、どこかアレンジが整っていて、アドリブ展開のブロウ爽快感抜群なのが特徴。そんなどこか爽快なジャム・セッションの中で、ブラウニーは自由闊達にトランペットを吹きまくる。

ダイナ・ワシントンがボーカルを取る2曲目のスローバラード「Darn That Dream」も絶品。このライヴ盤は、ウエストコースト・ジャズ全盛期の、優れたジャム・セッションの記録。しかし、よくライヴ録音をし、よくアルバム・リリースしましたね。エマーシー・レコードのお手柄です。
 
 

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2024年10月 5日 (土曜日)

好盤 ”Clifford Brown All Stars”

関東地方はやっと涼しくなってきた。最高気温23〜25度の日もあれば、30度に届く日もあるが、連日35度前後という酷暑の毎日からすると、グッと涼しくなった。これだけ、涼しくなってきたら、連日、耳を傾けるジャズも、耳当りの良い爽やかなもの一辺倒から、熱気溢れるハードバップものに変わってくる。

『Clifford Brown All Stars』(写真)。1954年8月11日、ロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp), Herb Geller, Joe Maini (as), Walter Benton (ts), Kenny Drew (p), Curtis Counce (b), Max Roach (ds)。1954年の録音だが、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)の急死後、1956年にEmArcyレーベルからリリースされた未発表音源。

ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』『Brown and Roach Incorporated』の直後、『Best Coast Jazz』と同一日、同一メンバーでのジャム・セッション。この後の『Best Coast Jazz』のライヴ録音を含め、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演の録音月間」である。
 

Clifford-brown-all-stars

 
当然、ブラウニーのトランペットのパフォーマンスは素晴らしいの一言に尽きる。何かに取り憑かれたかの様に、高速フレーズをいとも容易く吹きまくるブラウニーは迫力満点。これだけ高速なフレーズを連発しつつも、余裕ある雰囲気が伝わってくる。どれだけテクニックに優れ、どれだけ強力な肺活量なんだろう。とにかく「凄い」の一言に尽きる。疾走する「Caravan」、歌心溢れる「Autumn in New York」。この2曲だけでも、聴いていて惚れ惚れする。

米国ウエストコースト・ジャズにおける一流どころが集っているので、フロントを分担するアルト&テナー・サックスのパフォーマンスも、最高とは言えないまでも、そこそこ充実したブロウを披露している。厳しい評価をする向きもあるが、ブラウニーのパフォーマンスと比較すること自体、ちょっと乱暴な気がする。アルト&テナー、意外と健闘しています。

リズム・セクションは「充実&安定」の一言。ブラウニーのかっ飛ぶトランペットをしっかり支え、しっかりとリズム&ビートを供給していて立派。当時の米国ウエストコースト・ジャズにおけるハードバップなジャム・セッションの記録として、しっかりとした内容の好盤だと思います。
 
 

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2024年10月 4日 (金曜日)

Glassmenagerie名義のコブハム

ドラマー、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」、クロスオーバー・エレギのレジェンド、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」。そして、ヴァイオリンを活かしたクロスオーバー・ジャズなんてことを書いていたら、ふとこのアルバムを思い出して、思わす再聴。

Billy Cobham's Glassmenagerie『Stratus』(写真左)。1981年3月18日、ロンドンでの録音。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds), Gil Goldstein (key), Tim Landers (el-b), Mike Stern (el-g), Michal Urbaniak (el-vln, Lyricon)。マイク・スターンのエレギとマイケル・ウルバニアクの電気バイオリンがフロントの、カルテット編成。

千手観音ドラマーのビリー・コブハムがリーダー。これは、トニー・ウィリアムスが率いる「ライフタイム」に通じる。電気バイオリンを活かしたエレ・ジャズ。これは、ジョン・マクラフリンが率いる「マハヴィシュヌ・オーケストラ」に通じる。しかし、このコブハム・バンドの音志向は「クロスオーバー・ファンク」。

ロンドンの録音とあって、ファンキーな音志向とは言え、この盤でのファンクネスは「乾いて粘りの無いシンプル」なファンクネス。1981年の録音なので、マハビシュヌの様に、1970年代の英国プログレとの融合は無い。

逆に、R&Bやソウルなど、ブラック・ファンクとの融合がそこかしこに感じられる。が、粘りが無い分、こってこてなファンクネスは感じられず、リズム&ビートは、コブハムの千手観音ドラミングがリードしていて、コンテンポラリーでジャジーなファンクネスが強く感じられるユニークなもの。
 

Billy-cobhams-glassmenageriestratus

 
演奏自体は「クロスオーバー・ファンク」だが、R&Bな要素のみならず、ロックな要素、フュージョンな要素、クラシックな要素もしっかり反映されていて、なかなか興味深い、コブハム・バンドならではの音世界はユニークであり、しっかりと聴き応えがある。

マイク・スターンのエレギは「ジャズっぽいが基本はロック」なエレギを弾きまくる。マイケル・ウルバニアクの電気バイオリンとリリコン(シンセ・サックス/ウインド・シンセサイザー)のフロントのフレーズが印象的。ギル・ゴールドスタインのキーボードは意外と正統派ジャズな音を出していて、フロントのエレギと電気バイオリン、そして、リリコンとの対比が面白い効果を生み出している。

コブハムの「千手観音ドラミング」は絶好調。というか、1970年代よりも、良い意味で落ち着きがあって、的確でブレの無い、爽快で乾いたファンキー・グルーヴを叩き出している。そして、ティム・ランダースのベースは、正統派クロスオーバー&フュージョン・ジャズなベースラインを供給して、このバンドの音の底をガッチリと支えている。

当時のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの好盤として、コブハムの代表的好盤として、このアルバムのタイトルが上がることは無い。実際、僕は目にしたことが無い。以前、たまたま、コブハムのディスコグラフィーを整理していて、この盤の存在に気がついたくらいである。

しかし、中身は素性確かな、コブハムならではの「クロスオーバー・ファンク」な音世界がてんこ盛り。なかなか良い内容のアルバムだと思います。
 
 

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2024年10月 3日 (木曜日)

唯一無二な ”マハヴィシュヌの音”

ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラは、マクラフリンがマハヴィシュヌを結成する前に所属していた、トニー・ウィリアムス率いるライフタイムと、よく一緒くたに語られるが、マハヴィシュヌとライフタイムは全く「音の志向」が異なる。

ライフタイムは、エレクトリックな「限りなく自由度の高い」モード・ジャズから、エレクトリックなフリー・ジャズ。ライフタイムの音の志向は「フリー」。片や、マハヴィシュヌは、ジャズとロックの融合からのジャズロック。そこにクラシックの要素や英国プログレッシヴ・ロックのテイストを取り入れた、マハヴィシュヌの音の志向は「クロスオーバー」。

Mahavishnu Orchestra『Visions of the Emerald Beyond』(写真)。邦題『エメラルドの幻影』。 1974年12月4日から12月14日まで、NYの「エレクトリック・レディ・スタジオ」で録音。その後、1974年12月16日から12月24日まで、ロンドンの「トライデント・スタジオ」でミックスダウンされている。

ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, vo), Jean-Luc Ponty (vin, vo), Ralphe Armstrong (b, vo), Narada Michael Walden (perc, ds, vo, clavinet), Gayle Moran (key, vo)。ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンド、ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの4枚目のアルバム。

今回の『Visions of the Emerald Beyond』を聴くと、マハヴィシュヌの音の志向である「クロスオーバー」を強く感じることができる。
 

Visions-of-the-emerald-beyond

 
この盤では、ジャン=リュック・ポンティのバイオリンが大々的にフィーチャーされている。このバイオリンを聴いていると、英国プログレのキング・クリムゾンのデヴィッド・クロスや、伊プログレのPFMのマウロ・パガーニのヴァイオリンを想起する。もともと、欧州ではジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧で「クロスオーバー」している。

マクラフリンのエレギだって、英国プログレや和蘭プログレ、伊プログレでのエレギのテイストに強烈な影響を与えているようで、欧州のエレクトリック・ジャズとプログレッシヴ・ロックとの境界が曖昧なのは、エレギもバイオリンと同じ。そういう意味で、マハヴィシュヌの音は「欧州プログレとのクロスオーバー」な傾向にあると僕は睨んでいる。

そういう考察抜きにも、この盤でのマハヴィシュヌの音世界は唯一無二。エレクトリック・ジャズのモーダルな展開をベースに、ジャズロックやプログレの要素を交えた音世界は迫力満点。訴求力抜群。

お得意の「インドの瞑想モード」で始まるジャズロックあり、トライブ感溢れるジャズロックあり、流麗なプログレ調ジャズロックあり、グルーヴ感抜群のジャズファンクあり。マハヴィシュヌのジャズロックをベースとした「クロスオーバー」な音世界が満載。

『エメラルドの幻影』。いかにも、当時の日本のCBSソニーらしい、気恥ずかしい、赤面ものの邦題である(笑)。クロスオーバー・ジャズの名盤につける雰囲気の邦題やないよね。ジャケのイラストは、既出のアルバムとの統一感があって良い感じなんですが,,,。まあ、邦題は横に置いておいて、中身の演奏を堪能したいと思います(笑)。
 
 

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