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2018年11月14日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・64

ジャズのアルバムって「出会い」だよな、と思うことがある。ジャズを聴き始めた頃は、ジャズ本紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介記事を頼りにアルバムを入手していくのだが、それにも限りが出てくる。今度はジャズ・レーベルのカタログを見渡しながら、そのパーソネルを吟味して「これは」という盤を入手する。これが当たったときは、思いっきり嬉しくなる。

James Clay『A Double Dose of Soul』(写真)。1960年10月11日の録音。リバーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、James Clay (ts, fl), Nat Adderley (cor), Victor Feldman (vib), Gene Harris (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。パーソネルを見渡して、リバーサイド盤とくれば、これはきっと良いジャズが聴けるのでは、と期待感が膨らむ。

この盤は、ジャズ・レーベルのカタログを見渡しながら、そのパーソネルを吟味して選んだ盤になる。まず、ジャズ本紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介記事にこの盤のタイトルが挙がることは無い。それでも、このパーソネル、いわゆる東西混合の名うての名手揃いで、どんな音が出てくるのか、聴く前からワクワクする。
 

A_double_dose_of_soul  

 
こういう盤は1曲目から裏切られることは無い。1曲目の「New Delhi」、渋い渋い演奏。リーダーのクレイのフルートがむっちゃジャジー。ああ、ええ音やなあ、と溜息が出る。1曲目がこれだけジャジーだと残りの曲は決して期待を裏切らない。続く「Remember you」のクレイのスインギーなフルートとフェルドマンのヴァイブとの絡みは絶品。3曲目の「Come Rain or Come Shine」のクレイの黒いテナーもグッド。バックを司る、ハリスのピアノ、ジョーンズのベース、ヘイズのドラム、渋い渋いリズム・セクションも良い音出してます。

ハリスのピアノはソウルフルでリズミック。クレイのテキサス・テナー&フルートとの相性はバッチリ。過度に粘らず、ファンクネスも適度、フロント楽器が結構黒いので、このリズム・セクションの堅実な軽快さは実にバランスが良い。そうそう忘れてはならない、ナットのコルネットも良い味出してます。クレイのテナーとの対比、クレイのフルートとの相性が良い方向に出ていて、コルネットでの参加が正解。

ジェームス・クレイは、1935年ダラスの生まれなので、いわゆる「テキサス・テナー」の遣い手。ハードにブロウするイメージだが、持ち替えたフルートも絶品。この盤を聴くまで、その存在を全く知らなかった。この盤を聴き直して、ジャズのアルバムって「出会い」だよな、とつくづく思います。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年11月13日 (火曜日)

今の時代の個性派な純ジャズ

以前から「ジャズは死んだ」とか「ジャズの進化は止まった」とか喧しいのだが、どうして、21世紀になっても、新しいジャズメンがどんどんとデビューしてくる。それも、旧来のジャズのコピーでは無く、今までに無い「新しい何か」を織り込んで、新しい雰囲気のジャズを聴かせてくれる。「ジャズは死んだ」なんてとんでもない(笑)。

Gerald Clayton『Tributary Tales』(写真左)。2017年の作品。ちなみにパーソネルは、Gerald Clayton (p), Ben Wendel (ts), Logan Richardson (as), Dayna Stephens (bs), Joe Sanders (b), Ben Wendel (bassoon), Justin Brown (ds), Henry Cole, Post Production (perc)。ほとんど知らない名前ばかりが並ぶが、テクニック優秀、将来有望な若手ジャズメンが中心。

リーダーのジェラルド・クレイトン(Gerald Clayton)はオランダの出身。1984年生まれ。2006年のセロニアス・モンク・ジャズ・ピアノ・コンペティションでは堂々の2位。クラーク・テリー、ラッセル・マローン、ロイ・ハーグローブなどと共演。ピアニストであり、アレンジャー&プロデューサーでもある、多彩な才能を持つ、今年で34歳の若手有望株である。
 

Tributary_tales1  

 
この『Tributary Tales』を聴けば、そのマルチなタレントを実感出来る。ピアノはリリカルで耽美的、系統としては「エヴァンス派」もしくは「メルドー派」。バズーンの音を活かした、ちょっとユニークなブラスのユニゾン&ハーモニーが聴きもの。この美しいアレンジとそれをバックにしたリリカルなピアノという構図は、ハービーの『Speak Like A Child』を彷彿とさせる。

基本は流麗なモード・ジャズ。そこにボーカルやコーラスを活かした「スピリチュアル」な雰囲気がユニーク。若干フリー・ジャズに走りそうになるところもスリリングで良い。演奏のスタイルは実にオーソドックスなもの。伝統的でメインストリームなジャズ。そこに時折「優しいスピリチュアルな響き」。耳に優しいニュートラルな響き。

ジェラルド・クレイトン4年ぶりの新作。聴きどころ満載。シンプルで自然な演奏が心地良い。決して思いっきり印象に残る個性では無いが、僕はクレイトンのアレンジャー&プロデューサーに魅力を感じた。自らのアレンジで自らのピアノをより美しく表現する。自作自演のピアニスト。寡作の人、であるが、次作が今から楽しむ。どんな「深化」を辿っていくのだろう。

 
 

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2018年11月12日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・34

1930年代から1940年代初めにかけて大流行した「スイング・ジャズ」という演奏スタイルがある。スイング・ジャズは、スウィングのリズムを含んだ軽快なダンス・ミュージックで、ジャズの根幹である「即興演奏」よりも、アレンジがメインのアンサンブルが重視された。グレン・ミラー楽団やベニー・グッドマン楽団が代表的存在。

1930年代から1940年代初めにかけて大流行した、というからには、スイング・ジャズは現代では演奏されないのか、と問えば、実はそうでもなく、細々とスイング・ジャズは生息している。それぞれの時代で、必ず幾つかのスイング・ジャズをやるバンドが存在している。現代の成熟した楽器、成熟した録音技術を駆使して演奏されるスイング・ジャズは新しい響きを宿していて、意外と聴き応えがある。

でも、僕は「スイング・ジャズ」については、そのアルバムに対峙するような形で、集中して音を鑑賞することは無い。スイング・ジャズはあくまでダンス・ミュージックである、という頭があるので、僕は「スイング・ジャズ」のアルバムについては、ながら聴きをする。アレンジ優秀、アンサンブルの精度が高い、ビートの効いたダンス・ミュージックなので、何かをしながら、の鑑賞に実にフィットする。
 

A_swingin_affair  

 
Danny Moss & Buddha's Gamblers『A Swingin' Affair』(写真左)。2016年7月のリリース。1960年代のイギリスで巻き起こったニューオーリンズ〜スウィング・ジャズ・ブームで脚光を浴びたのがサックス奏者ダニー・モス(Danny Moss・写真右)。そのダニー・モスが、トラッドな「スイング・ジャズ」と、現代の「モダン・ジャズ」の要素をバランス良くブレンドした、明るく、聴いて楽しいトラッドな雰囲気濃厚なジャズ盤をリリースした。

現代の「スイング・ジャズ」という佇まいが実に良い。ブッダズ・ギャンブラーズ(Buddha's Gamblers)は、人気スイング・バンド。明るく楽しいスイング・ジャズ・バンドの演奏をバックに、ダニー・モスがスイング・ジャズなスタイルのテナーを吹きまくる。演奏自体はしっかりアレンジされ、リハーサルされたものだということは雰囲気で判る。それでも、この盤に詰まっている演奏は「ジャズ」。

とにかく聴いていてハッピーな気分になる。ビートがしっかり効いているので、聴いていて耳に心地良い。これが「ながら聴き」にジャスト・フィットするのだ。破綻の無い、整然と小粋に鳴り響くアンサンブル。聴き心地が実に良い。流れる様なスイング感に「ながら」の作業が一層はかどる。現代の「スイング・ジャズ」。この盤は隅に置けない。

 
 

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2018年11月11日 (日曜日)

ブレイク前夜のメッセンジャーズ

この金曜日の夜から急遽、里芋と柚の収穫に行ってきました。故に、金・土曜日の2日間、当ブログをお休みしました。今日から再開です。よろしくお願いします。 

ジャズ盤の紹介本とかジャズの歴史本の記事を読んでいて、結構、誤解を招く表現があるよな、と昔から思っている。例えば、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズについては、ブレイキーとシルバーが袂を分かって以降、ベニー・ゴルソンが音楽監督に就いて、かのヒット曲「モーニン」が売れるまで低迷期が続いたとある。

そういう評価の下、1958年のArt Blakey And The Jazz Messengers『Moanin' 』まで、ジャズ・メッセンジャーズのアルバムは聴く価値なし、とバッサリ切り捨てたりするんだが、いやいや、聴いてみてから切り捨てて欲しいんだよな〜。確かに、この頃のブレイキーって、アル中だったとかで素行が悪かったらしいが、スタジオ録音盤はなかなか内容は充実しているのだ。

例えば、Art Blakey and The Jazz Messengers『Hard Bop』。1956年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Jackie McLean (as), Sam Dockery (p), Spanky DeBrest (b)。
 

Hard_bop  

 
メンバーはアルトのマクリーン以外、あまり見かけない名前が並びますが、意外と元気溌剌なハードバップが展開されています。ジャズ・メッセンジャーズって、若き有望なジャズメンの登竜門的バンドという定説がありますが、この盤では、若き日のジャキー・マクリーンがとっても良いアルトを吹いています。トランペットのビル・ハードマンも頑張ってます。マクリーンのアルトとの双頭フロントが良い感じ。

僕は全く知らない名前なんですが、ピアノのサム・ドッカリーも健闘しています。座長のアート・ブレイキーのドラミングは好調です。ナイアガラ・ロールと形容されるローリングや、フロントを鼓舞する時のお決まりの「カカカカカ」というスティックでスネアの縁を叩く音など、ブレイキーの十八番が素敵。アルバム全体の演奏の雰囲気、ちょっとしたミストーンなど気にしない、って感じの「勢いあるハードバップ」が魅力。

この盤の演奏内容を「低迷期だから聴く価値なし」と切り捨てるには勿体ない内容だと僕は思います。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズが、バンドなりのハードバップを成熟させていく過程を聴いているようで、この、ブレイキーとシルバーが袂を分かって以降、ベニー・ゴルソンが音楽監督に就いて、ヒット曲「モーニン」が売れるまで、の時期のアルバムは意外と聴きものだと感じています。

 
 

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2018年11月 7日 (水曜日)

目立ちたがり屋が目立たない時

トランペットのフレディー・ハバード、根っからの「目立ちたがり屋」で、どんなセッションでも、とにかく目立ちたがる。大きな音で、テクニック豊かに吹きまくる、飛ばしまくる。それ故、グループ・サウンドのバランスが崩れることがほとんどで、1960年代のハバードのリーダー作は「いまいち」な感が強い。しかし、あるケースではそうはならずに、意外と好盤に仕上がっている盤もあるのだ。

Freddie Hubbard『The Hub of Hubbard』(写真左)。1969年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、 Freddie Hubbard (tp), Eddie Daniels (ts), Roland Hanna (p), Richard Davis (b), Louis Hayes (ds)。このパーソネルがこの盤の「肝」になる。この「一国一城の主」的イメージのジャズメンがハバードの「目立ちたがり屋」根性を抑制するのだ。

そのパーソネルを見渡すと、先ず目を惹くのは、ジャズクラリネットの大家、エディ・ダニエルズがテナー・サックスで参加。次いでバックのリズム・セクションは、卓抜したテクニックと強烈なスイング感が武器のローランド・ハナのピアノ、骨太重低音ベースのリチャード・ディヴィス、そして、ファンキー&スピリチュアルなドラマー、ルイス・ヘイズ。この盤、リーダーのハバードのバックに錚々たるメンバーがズラリ。しかも曲者ばっかり。

ハバードはいつもの様に「目立ちたがり」トランペットを早々に吹きまくるのだが、バックの4人、ハバードに負けず劣らず、テクニックに優れ、楽器をよく響かせた大きな音で吹きまくり、弾きまくり、叩きまくるのだ。
 

The_hub_of_hubbard

 
目立ちたがりのハバードが目立たない位にガンガンにやるのだから、リーダーのハバードも何時もと違う面持ちで、トランペットを吹いている。どうにもこうにも「お山の大将」の様に自分だけが目立つことが叶わない。これがハバードによっては良い方向に作用するのだ。

ダニエルズのテナーは、コルトレーンを少し聴きやすくした感じ。テクニックに優れ、大きな音で吹きまくる。これが結構凄い。ハバードの大きな音のトランペットが霞むくらいなのだ。さらにデイヴィスのベースはブンブンと重低音を轟かせ、ルイス・ヘイズのドラムはフロントを煽りまくる様に叩きまくっている。これだけ他のメンバーがガンガンにやっているのだ。

ハバードも自らがこれ以上大きな音を出すと、グループ・サウンドのバランスが崩れることは判っている。さすがの「目立ちたがり屋」もこの盤では観念しているようだ。他のメンバーの大きな音とテクニック溢れる展開に対抗すること無く、逆に殊勝に溶け込み、しっかりと良好なグループ・サウンドを成立させている。他のメンバーとのバランスが取れた中で、速い展開と大きな音でガンガンにハードバップをやっている。

こういうケースは数少ないのだが、ハードバップの中で良きトランペッターとして君臨するのは、この「他のメンバーが、目立ちたがりのハバードが目立たない位にガンガンにやる」ケース。この数少ないケースをハバードの参加セッションから探し出すのも、ジャズ盤コレクションの楽しみのひとつである。

 
 

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2018年11月 6日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・132

最近よく聴くお気に入りのギタリスト、カート・ローゼンウィンケルはサイドマンでのプレイにも光るものがある。基本的に彼のギターは純ジャズ志向なので、結構、他の純ジャズ・セッションに呼ばれることがあるようなのだ。ネットで調べてみたら出てくる出てくる。かなりの数、他流試合に出ているのだ。

Mark Turner『Yam Yam』(写真左)。1994年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Kurt Rosenwinkel (g), Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jorge Rossy (ds)。7曲目の「Zurich」のみ、Seamus Blake, Terence Dean (ts) が加わる。マーク・ターナーの記念すべき初リーダー作。パーソネルを見渡すと、いや〜錚々たるメンバーではないか。現代のネオ・ハードバップの中心ジャズ面がズラリと並んでいる。

このパーソネルを見れば、ジャズ盤のコレクターであれば、思わず触手が伸びる。まず、ギターにカート・ローゼンウィンケル、ピアノにブラッド・メルドー、ベースにラリー・グレナディア、ドラムにホルヘ・ロッシ。メルドーのトリオにローゼンウィンケルがギターで加わる。むっちゃ豪華なバック・メンバーですね。テナーのマーク・ターナーのプレイに期待が集まります。
 

Yam_yam

 
マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。

当アルバム中、唯一のスタンダード曲、コルトレーンの「Moment's Notice」を聴けば、マーク・ターナーのクール・スタイルのテナーとこの途方も無いバック・バンドの新鮮な音世界が体感出来る。コルトレーンのオリジナルとは全く異なったアレンジとアドリブ・アプローチが斬新。確かにコルトレーンの「Moment's Notice」なんだが、音の響きと展開は明らかに「21世紀のネオ・ハードバップ」。

今までに無いハードバップな音と響きが素晴らしい。こういう音を聴くと「やっぱりジャズは深化しているなあ」と心から感じるのだ。今から24年も前の音とは思えない。今の音と言っても十分に通用するほど、新しい響きに満ちたネオ・ハードバップ。聴きどころ満載である。

 
 

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2018年11月 5日 (月曜日)

久々に「今日のスタート」受け

「クール・ジャズ(Cool Jazz)」というものがある。「クール・ジャズ」とは、ビバップの反動として1940年代後半に生まれた、白人寄りの傾向をもつジャズのジャンル(Wikipediaより)。洗練された控えめなテクニックとリズム。アンサンブルを始めとするアレンジの妙とそのアレンジを実現する楽器編成の妙。つまりは、喧噪に近い位に躍動的で、奔放なテクニックを旨とした「ビ・バップ」に対するアンチテーゼ。

テクニックの限りを尽くし、躍動感溢れるアドリブを旨とする「ビ・バップ」は、演奏家の閃きによるアドリブ展開が特徴で、時に単調になったり、マンネリに陥ったりした。加えて、喧噪に近い位の躍動感が故に、アクロバットとして楽しむのは良いが、演奏をじっくりと愛でるにはちょっと辛い面があった。そういう「ビ・バップ」のマイナス面を補うべく考案されたのが「クール・ジャズ」である。

クール・ジャズは、ピアニストのレニー・トリスターノを中心とした「トリスターノ派」と呼ばれる集団が牽引した。トリスターノの確立した音楽様式を基に「クール・ジャズ」なアルバムを発表していくのだが、代表的ジャズメンとしては、ウォーン・マーシュ(写真右)、リー・コニッツ、ジェリー・マリガン、ジョージ・シアリングなどの名前が挙がる。
 

Jazz_of_two_cities

 
Warne Marsh『Jazz of Two Cities』(写真左)。1956年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Warne Marsh. Ted Brown (ts), Ronnie Ball (p), Ben Tucker (b), Jeff Morton (ds)。この盤を聴けば「クール・ジャズ」の雰囲気が良く判る。トリスターノ派の主要メンバー、ウォーン・マーシュとテッド・ブラウンの2本のテナーの存在がポイント。「クール・ジャズ」を表現するのに、このテナー2管が大活躍する。

テナー2管でのユニゾンによるテーマ提示は一糸乱れぬもの。鑑賞に耐える「クール・ジャズ」ならではのアレンジのたまもの。アドリブ部ではテクニックを駆使するが、旋律は極力、流麗で耳に優しいもの。耳に刺激は全く無い。心地良く丸く、アドリブ・ソロが耳に入っていく。バックのピアノ・トリオは、ビ・バップと同じくリズム・キープがメインだが、フロントを支える音は流麗。

アルバム全編を聴き通して、やっていること、表現したいことは「クール・ジャズ」も「ビ・バップ」も同じ。しかし、その表現方法とアプローチは正反対。「ビ・バップ」は黒人中心に展開されたが「クール・ジャズ」は白人中心。「クール・ジャズ」によって、白人でもジャズが出来ることとなる。「クール・ジャズ」は、ジャズの裾野を一気に拡げた演奏トレンドであった。

 
 

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2018年11月 4日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・105

最近はジャズ・ギターもよく聴く様になった。もともとジャズ・ギターは苦手であった。レジェンド級の伝統的なジャズ・ギターは、どうにも僕の耳には音が細く感じて、演奏に乗りきれない。ジャズを聴き始めた頃、何度もチャレンジしたのがどうにもいけない。熟慮の上、他の楽器を優先して、ギターは後回しにした。ということで、本格的にジャズ・ギターのアルバムをしっかりと聴き始めたのは、ジャズを聴き初めて20年位経った、21世紀に入った頃である。

ジャズ・ギターについては、純ジャズ系についてもコンテンポラリー系についても、1970年代のフュージョン・ジャズ以降に活躍したジャズ・ギタリストがお気に入りである。どうしても、1950年代、ハードバップ期に活躍したジャズ・ギタリストについては、前述の「音の細さ」が耳に付くので、どうしても敬遠気味になる。音の傾向は純ジャズからフリーからフュージョンまで、何でもOK。ジャズ・ギターもしっかり聴き始めると、なかなか面白くて、最近はハマリ気味である。

Arthur Adams『Midnight Serenade』(写真)。1977年のリリース。クルセイダーズのギタリストだったアーサー・アダムスのソロ3作目。プロデュースは同じくクルセイダーズの仲間でトロンボーン奏者のウェイン・ヘンダーソン。主だったパーソネルは、Arthur Adams, Steve Beckmeier, Steve Hines (g), Hillary Hamburg (key), Ronnie Green (b), Robert Griffin (ds) etc.。フュージョン畑のメンバーでは無く、ジャズ・ファンク系のメンバーチョイスかな。
 

Midnight_serenade

 
アルバム全体の雰囲気は一言で言うと「ブルージーなエレギによるアーバンなフュージョン・ファンク」。アダムスのギターはリーダーなので当然、前面に出て目立っていますが、この盤はファンク度が高く、ドラムスの活躍が耳につきます。冒頭の「When I'm Away From You」は、イントロ部の倍打ちのスリリングなハイハットが堪らない。そこに、アダムスの哀愁溢れるギターが乗ってくる。大人のファンクネス濃厚って感じが堪らない。

ホーン隊によるブラスの響きも芳しい。バック・コーラスと相まって、ファンク度濃厚。しかし、アダムスのギターを筆頭として、各楽器の演奏テクニックがかなり高く、フュージョン・ジャズの音の傾向はしっかり押さえられている。ディスコ・ミュージックというよりは、鑑賞にも耐えるフュージョン・ファンクといった音世界だと感じます。6曲目の「Love And Peace」などは夕暮れ時に聴きたくなる様な心地良い演奏で、ソフト&メロウ度満点。

フュージョン・ジャズについては、当時売れに売れた有名盤も良いのですが、この『Midnight Serenade』などの様に、有名盤に隠れた、知る人ぞ知る好盤も沢山あります。ネットの情報やフュージョン・ジャズの紹介本などを丁寧に調べながら、こういう「隠れ好盤」を入手し鑑賞するのはとても楽しい。ジャズのアルバム・コレクションの醍醐味の1つだと思います。

 
 

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2018年11月 3日 (土曜日)

ローゼンウィンケルのデビュー盤

ジャズ・ギタリストの好みとしては、1950年代のハードバップ時代に大活躍した、伝統的なレジェンド級のギタリストよりは、1980年代以降にデビューした、正統派ジャズ・ギタリストの方が好みである。恐らく、1970年代以降、電気楽器としてのギターの環境は飛躍的に発展して、フロント楽器として、管楽器に引けを取らない音が出せるようになったからだろう。1950年代から60年代のジャズ・ギターについては、まだまだ出てくる音がチープだった。

Kurt Rosenwinkel『East Coast Love Affair』(写真左)。1996年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Avishai Cohen (b), Jorge Rossy (ds)。ピアノも管も無しの質実剛健なギター・トリオ。デビュー盤であれば、フロントに管を入れたりして、ギターの音の薄さをカバーしたりするのだが、そういうお節介は一切無し。ローゼンウィンケルのギター一本で勝負のデビュー盤。

さて、この盤はカート・ローゼンウィンケルのデビュー盤である。ローゼンウィンケル(長い名前やなあ)は、米国フィラデルフィア出身、1970年10月生まれなので、今年で48歳になる。1996年のデビュー時は26歳。ちょっと遅咲きのギタリストである。バークリー音楽大学在籍時に、ゲイリー・バートンに見出される。この辺はパット・メセニーと同じやなあ。1990年代半ばの頃、ジャズクラブ「スモールズ(smalls)」を拠点に演奏をしており、この盤もこのクラブにおけるライヴ録音である。
 

East_coast_love_affair

 
ローゼンウィンケルのギターの音は「ジャズ・ギターの正統派」な音。音の響きは「ジム・ホール〜パット・メセニー」の系列であり、パットのギターの音よりも鋭角に切れ込み、音の太さも少し太め。パッと聴いた時は「パットかな」と思うんだが、2〜3分聴き続けていると「これは違うぞ、誰だこれは」ということになる。アドリブ・フレーズの展開などは、明らかに伝統的なハードバップの展開を基本としていて、聴いていて不思議と安心感が漂う。

このデビュー盤の収録曲を見渡してみても、「Pannonica」「’Round About Midnight」とセロニアス・モンクの曲が2曲選択されていて、その演奏を聴くと、ローゼンウィンケルのテクニックの確かさが良く判る。また、収録曲それぞれのアレンジもなかなかのもので、とてもデビュー盤とは思えない。ローゼンウィンケルの自作曲も2曲収録されていて、その出来も良好。ローゼンウィンケルって、ギタリストとしての才だけでなく、アレンジや作曲の才にも長けている。

バックのリズム&ビートを司るアヴィシャイ・コーエンのベース、ホルヘ・ロッシのドラムスもプログレッシブな響きを宿したローゼンウィンケルのギターをしっかりとサポートしていて、聴き応えがある。オーソドックスな純ジャズなアプローチをベースとして、ところどころにロックやソウルっぽい響きも見え隠れして、1970年代のロックやソウルをリアルタイムで体験してきた僕にとって、実に興味深く、楽しめる内容になっている。

 
 

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2018年11月 2日 (金曜日)

ウッディ・ショウを思い出した

ジャズを聴き始めた頃から、その名前は知っていた。しかし、そのジャズメンのリーダー作は日本ではほとんど見なかった。その後、ジャズ喫茶で、そのジャズメンのリーダー作を聴かせて貰った。テクニック優秀、流麗でブリリアント、吹きすぎず、吹かなさすぎず、丁度良い塩梅の手数のトランペット。そのトランペットの名前は「ウッディ・ショウ(Woody Shaw)」。

ウッディ・ショウは1944年生まれ。米国はニュージャージー州ニューアーク出身。1962年18歳で初レコーディング。ハード・バップからアバンギャルドまで、様々な演奏スタイルに適応するテクニックを持つ。1960年代後半以降から1970年代にかけてフレディ・ハバードと並ぶ実力派のトランペッターとされた。しかし、何故か人気が無い。

はしたないまでに吹きすぎるハバードがそこそこの人気を得ていたのに比べて、ショウのトランペットは人気が無かったなあ。恐らく、1970年代、クロスオーバーからフュージョン・ジャズのブームの中、ハバードはジャズロックへ上手く転身して人気を得たが、ショウは伝統的なスタイルを踏襲し、フュージョン・ブームの中にその名は無かった。この辺がショウの人気の無さの原因だと僕は思っている。
 

Woody_shaw_live_in_bremen

 
しかし、今回、このライブ盤を聴いて、やっぱりショウのトランペットって凄いなあと思った。Woody Shaw Quartet『Live in Bremen, 1983』(写真左)。1983年1月のブレーメンでのライヴ演奏を収録したアルバム。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Mulgrew Miller (p), Stafford James (b), Tony Reedus (ds)。ピアノにお気に入りのピアニスト、マルグリュー・ミラーが参加している。

ウッディ・ショウのトランペットは申し分無い。アグレッシヴで覇気に満ちていて流麗。何と言っても、ショウは吹きすぎないところが良い。高いテクニックの持ち主ながら、それをひけらかすことも無い。とても趣味の良い、ブリリアントなトランペットを披露してくれている。このトランペットについては「何故人気が無いのか」。不思議でたまらない。

ショウは、1989年、ブルックリンで地下鉄のホームから転落し左腕を切断。その後、同年5月に死去している。44歳。早過ぎる死であった。1970年代はクロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代。伝統的なスタイルを踏襲したショウのリーダー作はあまり多く無い。が、この際である。改めて、ショウのリーダー作を順に聴き直してみようと思った。

 
 

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