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2019年8月18日 (日曜日)

マッキンタイヤーの個性と実力

SteepleChaseレーベルは「北欧のブルーノート・レーベル」と呼ばれるだけあって、カタログを眺めていると、こんなジャズマンのリーダー作を録音しているんやなあ、と感心することがしばしば。1960年代後半より、米国から欧州に移住してきたジャズマンや米国在住のジャズマンが、北欧はデンマークのコペンハーゲンに演奏ツアーに来た時にピックアップして録音しているのだ。これがカタログの充実に大いに貢献している。

Ken McIntyre『Hindsight』(写真左)。SteepleChaseレーベルのSCS1014番。 1974年1月13日、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioでの録音になる。ちなみにパーソネルは、Ken McIntyre (as, fl ,bassoon, b-cl), Kenny Drew (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。SteepleChaseレーベルのお抱えピアニスト、ケニー・ドリューと、地元のコペンハーゲンのジャズマン2人のリズム・セクションがバックについている。
 
この盤を聴けば判るが、実に良い内容のハードバップ盤である。リーダーのアルト・サックス奏者、ケン・マッキンタイヤーの優れた演奏がしっかりと記録されている。ノーマルに旋律を悠然と吹く様子や、時にフリーキーに時にアブストラクトに演奏を展開したり、激情の赴くままに吹きあげる様や、ほど良く抑制されコントロールされた吹きっぷりなど、マッキンタイヤーの演奏の全てを記録している。選曲も良い。しっかりとスタンダード曲が選ばれている。
 
 
Hindsight
 
 
2曲目の「Lush Life」、4曲目の「Body and Soul」、7曲目の「'Round About Midnight」。いずれも良い演奏だ。フリーにアブストラクトに、ブロウに様々な色づけをしつつ、従来のスタンダード曲に新しいイメージを与えている。フリー&アブストラクトに傾くのはほんの少しなので、フリー嫌いのジャズ者の耳にも十分に鑑賞に耐えると思料。ミュージシャンズチューンも選曲していて、コルトレーンの「Naima」はオーボエのみに情緒豊かに吹き上げていく。ロリンズの「Sunnymoon for Two」は本業のアルト・サックスで、マッキンタイヤー節全開で吹きまくる。
 
バックのリズム・セクションもマッキンタイヤーの好演をしっかりとサポートしている。もともとドリューのピアノって、バップなピアノなので、メリハリが効いた、明快なタッチが持ち味。当然、フロント楽器の演奏のサポートも、供給されるリズム&ビートは明確そのもので気持ちの良いもの。地元出身のベースとドラムも優れたパフォーマンスを供給していて、このマッキンタイヤーのリーダー作を更に内容の濃いものにしている。
 
米国のレーベルに残したNew Jazzでの2枚とUnited Artistsでの2枚は、マッキンタイヤーの活動初期のものしか無い。ジャズマンとして充実してきた40歳代の記録は、SteepleChaseレーベルに集中している。ケン・マッキンタイヤーというアルト・サックス奏者の実力と個性を理解するには、SteepleChaseレーベルの諸作は欠かせない。そう言う意味でも、SteepleChaseレーベルって、あって良かったなあ、と思うのだ。
  
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年8月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・155

Enja(エンヤ)レーベルの看板ジャズマンは数人いるが、他の老舗レーベルに所属した、エンヤ・レーベルでのみ、聴くことの出来るピアニストが「Abdullah Ibrahim」。アブドゥーラ・イブラヒムと読むが、デビューした頃から1970年代前半くらいまでは、ダラー・ブランド(Dollar Brand)という名で知られていた。
 
ピアノのタッチは重厚感溢れ、明快なタッチ。フレーズのイメージは「アフリカン・ネイティヴ」。アフリカの民俗音楽風のフレーズが最大の個性。少し聴き込めば直ぐにイブラヒムと判る、アフリカン・ネイティヴの響き。1934年生まれだから今年85歳。未だ現役、1960年代のデビュー以来、ずっと、この個性を維持し続けている。

Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)『African Space Program』(写真)。1973年の作品。ENJA2032番。ちなみにパーソネルは、Dollar Brand (p), Cecil Bridgewater (tp), Enrico Rava (tp), Charles Sullivan (tp), Kiani Zawadi (tb), Sonny Fortune (fl,as), Carlos Ward (fl,as), Roland Alexander (harm,ts), John Stubblefield (ts), Hamiet Bluiett (bs), Cecil McBee (b), Roy Brooks (ds)。
 
 
African-space-program  
 
 
当時のフリー・ジャズ〜スピリチュアル・ジャズ系のジャズメンが中心に参加した、12人構成のオーケストラによる、アフリカン・ネイティヴなスピリチュアル・ジャズである。約20分に渡る組曲と20分を超える長大な音絵巻。ジッと聴いていると、何故か、コルトレーンの『アセンション』を思い出した。そう、この盤は、イブラヒムのアフリカン・ネイティヴな『アセンション』である。
 
フリー・ジャズの様ではあるが、必要最低限の決め事の中で奏でられる限りなく自由度の高いモード・ジャズ。フリーキーに傾いたり、アブストラクトに咆哮したりするが、基本はしっかりと調性の取れた自由度の高いメインストリーム・ジャズ。演奏の底に常に響き渡るアフリカの民俗音楽風の響き。それぞれ「個」の演奏も素晴らしいが、オーケストラ全体のアンサンブルも見事。
 
リリース当時は、ドイツのジャズ・レーベルからのリリースということで入手し難く、我が国では知られることはなかなか無かった。僕もこのアルバムを聴くことが叶ったのは、つい10年ほど前のこと。聴き始めればジャケット写真の如く、アフリカの平原のイメージが脳裏に拡がり、土着なリズム&ビートが耳の中を駆け抜ける。唯一無二なアフリカン・ネイティヴなスピリチュアル・ジャズである。
 
 
 
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2019年8月16日 (金曜日)

ジャケットで損をしているなあ

ジャズの老舗レーベルであるブルーノートも、4300番台になると、そのポテンシャルも落ちてくる。まず、ジャケットのデザイン。フランシス・ウルフによる象徴的な写真と、リード・マイルズによる画期的なタイポグラフィがガッチリと組み合わさって、ブルーノート独特の、見るだけでブルーノートと判る独特のデザインを提供してきた。
 
しかし、リード・マイルスは、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンがブルーノートの親会社のリバティを去る時期と前後して、1967年にブルーノートを離れている。ブルーノートの4300番台は1968年辺りから始まっている。つまり、ジャケット・デザインは、もはや統一感は無く、デザイン的にも問題のあるものが多い。どう考えても、ジャズのジャケットとは思えないものが多々ある。
 
つまりは、ブルーノートの4300番台って、この酷いジャケット・デザインで損をしているアルバムが結構あると思っている。例えば、今日聴いた、Stanley Turrentine『Another Story』(写真)。1969年3月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Thad Jones (flh), Cedar Walton (p), Buster Williams (b), Mickey Roker (ds)。
 
 
Another_story  
 
 
パーソネルを見れば、ハードバップ時代からの猛者揃い。特に、一ひねりも二捻りもある「曲者」揃い。このメンバーだと、この盤、なかなかの内容なのでは、と思うのだが、ジャケットが酷い。このジャケットをみれば、まずブルーノートの盤だとは思わないだろう。このジャケットではまず触手が伸びない。よって、この盤、ジャズ盤紹介本で扱われているのは見たことが無い。
 
ですが。この盤、なかなかの内容です。成熟したハードバップが聴ける、なかなかの優れものです。タレンタインのテナーは少しライトに流麗に、耳に優しい響きが魅力的。フリューゲルホーンのサド・ジョーンズは久々の登場ですが、味のあるブリリアントで流麗な音色を聴かせてくれる。この2人のフロント楽器が実に良い雰囲気で、成熟したハードバップなフレーズを心ゆくまで聴かせてくれる。
 
バックのリズム・セクションも「曲者」揃い。ウォルトンのピアノは和音の響きが新しく、ウィリアムスのベースは重心低く流れる様にベースラインを弾きまくる。ローカーのドラムは気持ちの良いポリリズム。上質のハードバップな演奏が詰まっている。この盤が全く人気が無いのが残念だ。このジャケットだ、無理も無い。でも、この盤、探してでも、一度聴いてみる価値はある。タレンタインとサドのフロント2管がとても素敵である。
 
 
 
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2019年8月15日 (木曜日)

ブラックストンの本質を聴く

SteepleChase(スティープルチェイス)レーベルは「北欧のブルーノート」と呼ばれる。カタログを眺めていると、確かに様々なキーとなるジャズマンの演奏を録音している。しかも、それぞれのアルバムで、そのジャズマンの個性が判り易くなる様な、個性が活性化される様なプロデュースを施している。当然、良い内容のアルバムが目白押しである。

Anthony Braxton『In the Tradition』(写真左)。SCS1015番。1974年5月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Anthony Braxton (as, bcl), Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。アルト・サックス+バスクラのフロント1管にピアノ・トリオがリズム・セクションのカルテット構成。

リーダーのブラックストンは、フリー・ジャズの猛者。フリーキーに吹き、アブストラクトに吹く。本来は自作の曲を心ゆくまで吹きまくらせたい訳だが、ここではそうはプロデュースしない。フリー・ジャズの猛者だからこそ、伝統的なスタンダード曲を吹く。まず、その企画性だけで、このアルバムは「買い」である。
 
 
In-the-tradition-vol1  
 
 
ブラックストンは必要最低限の決め事、スタンダード曲の旋律をどこかにしっかりとおる混ぜる、という決め事を守りつつ、限りなくフリーにアブストラクトの吹きまくる。これが実に味がある。スタンダードを限りなくフリーにアブストラクトに崩していくと、こういう表現になるのか、と思わず感心して聴き込んでしまった。
 
そして、リズム・セクションに意外性が溢れていて、思わず心から感心した。ピアノもベースもドラムも「純ジャズの人」である。ブラックストンとは「水と油」の様な個性の持ち主。これ、どうやってブラックストンのバックでサポートすんの、と不安に思っていたが、この盤を聴いてビックリ。一流のジャズメンって、応用力、適用力、柔軟性が非常に高いんやなあ、と改めて思い知った。
 
ブラックストンについては、この盤のブロウを聴いて、彼の能力の高さを確信した。チックとのサークルでのブロウはちょっと考え過ぎか、と思っていてたが、この盤ではブラックストンは伸び伸びとフリーを、アブストラクトを吹いている。恐らく、バックのリズム・セクションが純ジャズ出身で、フリーの猛者からすると自由度が高かったのではないか、と睨んでいる。つまりはプロデュースの勝利である。
 
 
 
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2019年8月14日 (水曜日)

実にECMらしいエレ・ジャズ

久し振りのECMレーベル。カタログ順の聴き直しも、はや66枚目。最近はCDの外国盤も入手し易くなったし、有料ダウンロード・サイトのジャズ盤のストックも充実度を増している。特に、ECMレーベルのカタログを Apple Musicに開放してくれたのは有り難かった。ECMレーベルの総帥マンフレート・アイヒャーに敬意を表したい。

Eberhard Weber『Yellow Fields』(写真左)。ECM1066番。1975年9月の録音。 ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b), Charlie Mariano (ss, shehnai, nagaswaram), Rainer Brüninghaus (p, syn), Jon Christensen (ds)。いかにもECMレーベルらしいラインナップである。ドイツ出身が2人、米国出身が1人、ノルウェー出身が1人という多国籍構成。
 
リーダーのエバーハルト・ウェーバーはベーシスト。彼のリーダー作はどれもが当時の「ニュー・ジャズ」。いかにも欧州らしい、ゆったりとした音の広がりと堅実かつ印象的なリズム&ビートをベースに、ECMレーベルらしいエレクトリック・ジャズを展開してくれる。米国のエレクトリック・ジャズの様にファンクに傾倒することも無く、激情に走ることも無い。
 
  
Yellow-fields-eberhard-weber
 
 
淡々と穏やかで印象的なビートと透明度の高い音色で、様々な印象の音世界を創り出していく。全曲エバーハルト・ウェーバーの作曲なのも特徴。スタンダード曲などは絶対にやらない。さすがドイツ出身のジャズマンらしく、全体のサウンドは破綻が無く、まとまりがとても良い。非常にきっちりとしている。大阪弁で言うと「シュッとしている」(笑)。
 
ホーンの伸びのある音、素敵やなあ、と思って、誰かしらと名前を確かめてみたら、なんと「チャーリー・マリアーノ」。穐吉敏子さんの元夫君でもあったアルト・サックス奏者。この盤では、ソプラノ・サックスとインドのシェーナイというリード楽器、そして、ナーダスワラムという南インドの二重葦の管楽器を使用している。これが効果的。欧州らしい典雅で透明度の高いエレ・ジャズに、ワールド・ミュージック的なヒューマンな響きを添えている。
 
ウェーバーのベースも重心が低く、的確なベースラインと躍動的なビートを供給していて、実に聴き応えがある。クリステンセンのドラムは切れ味良く透明度の高いドラミング。そんなリズム隊をバックに、ブリューニングハウスのピアノとシンセが印象的に響く。そこに絡む、マリアーノの印象的なホーンの響き。実にECMレーベルらしい、実に欧州ジャズらしい「ニュー・エレジャズ」である。
 
 
 
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2019年8月12日 (月曜日)

ジミー・スミスの「グルーヴ感」

ヴァーヴ時代のジミー・スミスは、ビッグバンドをバックにした「大仕掛け」な盤が多い。これはこれで、スミスのオルガンの個性が良く判って聴き応えがある。が、ジミー・スミスのオルガンをより中心に聴き込みたい時は、やはり、トリオ編成くらいの盤が良い。

しかも、資金力のあるヴァーヴ・レコードである。しっかりリハを積み、一流どころを調達したトリオ編成盤が何枚かある。Jimmy Smith『Organ Grinder Swing』(写真左)。1965年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g), Grady Tate (ds)。漆黒のアーバン・ギターのケニー・バレル、叩いて唄えるソウルフル・ドラマーのグラディ・テイト。

そんなトリオ編成のアルバム。大衆向きな、大衆受けするアルバム作りが得意なヴァーヴにしては硬派なオルガン・ジャズ盤に仕上がっている。ジミー・スミスは目立ちたがり屋で自己中心型だったらしく、オルガン・ジャズの相棒としてポピュラーな「ギター&ドラム」については意外と無関心で、黙ってリズム&ビートを供給して貰えば、と割り切っていた節がある。
 
 
Organ-grinder-swing
 
 
この盤では、ギターもドラムもしっかりとプロデューサーが選定したらしく、スミスのオルガンは当然のこととして、他の楽器、ギター&ドラムもその演奏についてもしっかりとソロ・スペースを与え、しっかりと演奏させていく。所謂「スミスの為のリズム・セクション」では無く、そのレベルは相当に高い。

この盤でのスミスのオルガンは「アグレッシブで激しい」。これはブルーノート時代と変わらないが、スケールが大きくなっている。しかもダンサフルな面がブルーノート時代と比べて前面に押し出されていて、硬派ではあるがポップな味付けがされている。そして、この頃からであるが、グルーヴ感が半端ない。

この『Organ Grinder Swing』では、このグルーヴ感が硬派かつストイックに表現されている。バレルのギターとテイトのドラムが、もともとスミスのオルガンの個性のひとつの「グルーヴ感」を増幅する。そう、この盤は、ジミー・スミスのオルガンの「硬派かつストイックなグルーヴ感」を愛でる為の盤である。好盤です。
 
 
 
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2019年8月11日 (日曜日)

CTIレーベルの「珍獣・珍品」

面白いことに、有名なジャズ・レーベルには、それぞれ必ずと言って良いほど、「珍獣・珍品」な類のアルバムが紛れ込んでいる。例えば、ブルーノート・レーベルの1500番台。この1500番台は、NYを中心とする米国東海岸の「ハードバップ初期」の名盤・好盤で成り立っているが、そんな中にポツンと米国西海岸ジャズのGil Melle『Patterns In Jazz』が異彩を放っている。

例えば、このアルバムもそんな「珍獣・珍品」の類である。『Joe Farrell Quartet』(写真)。CTIレーベルの6003番。1970年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farrell (sax, fl, oboe), Chick Corea (p), John McLaughlin (g, "Follow Your Heart" and "Motion"), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。明らかに、このパーソネルは、当時のクロスオーバー・ジャズのものではない。

このパーソネルは、当時のメインストリーム・ジャズの最先端を行く強者共である。Return to Foreverで共にするチックがピアノ。エレ・マイルスの中で重要な役割を担当するマクラフリンのギター。ニュー・ジャズのファースト・コールなリズム・セクションであるホランドのベースとデジョネットのドラム。このパーソネルで、耳当たりの良い、ライトで内容のあるクロスオーバー・ジャズが展開される訳がない。
 
 
Joe-farrell-quartet

  
クロスオーバー&フュージョン・ジャズの中心的レーベルであった「CTIレーベル」。そんな中に、当時のモード&エレクトリック・ジャズ、いわゆるニュー・ジャズの類の、それも内容の優れたアルバムが紛れ込んでいる。それがこの『Joe Farrell Quartet』。ジョー・ファレルの記念すべき初リーダー盤。ジャケットはCTIレーベル風なんだが、中の音は明らかに「メインストリーム・ジャズの最先端を行く音」。

後のチック・コリア率いる「第一期Return to Forever」の音世界に直結している。しっかりとした秩序と構成の下での「モード&フリー」。ジャズの伝統的響きを宿したアコースティックとエレクトリックな音の響き。明らかにCTIレーベルとしては「異質」な音世界。それでも、当時のニュー・ジャズとして聴くとかなり高レベルの演奏にちょっとビックリする。

ずっと聴いていると、このアルバムって、CTIレーベルでは無くて、ECMレーベルのアルバムとして、しっくり座りの良いアルバムであることが良く判る。まず、こんな硬派なエコ&アコな「モード&フリー」な演奏を、CTIの総帥のCreed Taylorがプロデュースしたなんて、信じられない。とにかく、この盤、CTIレーベルの中の「珍獣・珍品」。それを踏まえて聴けば戸惑うことは無い。
 
 
 
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2019年8月10日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・118

こんなアルバムあったんや・118
 
ジャズは様々な奏法や表現方法があって、聴いていてとても楽しい。こんなんもジャズなんか、とか、これってジャズなん、っていうジャズもあって、いかにジャズって裾野の広い、表現の幅の広い音楽ジャンルだということが良く判る。しかし、どんな奏法も表現方法も、基本的に「即興演奏」がメイン。ということはジャズである。

Antonio Sanchez『Lines In the Sand』(写真左)。2018年5月の録音。現代を代表するドラマー、アントニオ・サンチェスの最新作品。レギュラー・バンドによる作品。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds, vo), John Escreet (p, rhodes, syn), Matt Brewer (b, el-b), Thana Alexa (vo, effects), Chase Baird( ts, EWI), Nathan Shram (viola), Elad Kabilio (cello)。

テーマは「現代アメリカに投げかける6編の楽曲」。現在のアメリカ合衆国への憂いと自らの強烈な思い。自らが筆をとったライナーノーツを読んでも、その「想い」が良く判る。このリーダーのサンチェスの「想い」を念頭に聴けば、この壮大な組曲の奏法や表現方法の意味することが理解出来る。
 
 
Lines-in-the-sand-antonio-sanchez  
  
 
メキシコからの移民者である彼の現在の米国大統領への怒りが、この壮大な組曲の中に表現されている。思わず、米国の公民権運動時代の、ベースのチャールズ・ミンガスや、ドラムのマックス・ローチ、サックスのジョン・コルトレーン等を思い出しました。ジャズは時として、政治に対する意志を表現したりする。サンチェスの今回の新盤もその流れのひとつ。

思想的な面を離れて演奏だけに着目してみると、リーダーのサンチェスは、壮大な組曲の中で、実に印象的な素晴らしいドラミングを披露しています。サンチェスの超絶技巧な意志の入ったドラミングを中心に、バンド全体に緊迫感のある空気を創り出して行く。壮大な交響曲の様な、壮大なプログレッシブ・ロックの様な先進的な演奏。

加えて、素晴らしいパフォーマンスを披露しているのが、サックスの「チェイス・ベアード」。説得力のある、骨太の重量のあるサックスが素晴らしい。ベアードは、マイケル・ブレッカーばりのEWIも操っていて、これがまた素晴らしい。この新盤、純粋にジャズとしても高く評価出来る好盤です。
 
 
 
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2019年8月 9日 (金曜日)

楽しい「びっくり」に満ちている

日本のジャズについても、21世紀に入って以降、加速を付けて「深化」している。新しいバンドが新しいミュージシャンが出てくる。そして、魅力的な内容のアルバムをリリースしていく。メジャークラスのアルバムについては、どのアルバムも内容は充実している。以前の様に「駄盤」が全く無くなった。

TRI4TH『jack-in-the-box』(写真左)。先月のリリース、出来たてホヤホヤ。TRI4TH(トライフォース)のメジャー2枚目のアルバム。宣伝のキャッチが、〈踊れる、叫べるジャズ〉に加え〈歌える〉というワードを新たなコンセプトとして掲げて制作されたニューアルバム。

ジャズに憧れて始まったバンド、TRI4TH(トライフォース)。サックスとトランペットを擁する編成は、ごく普通のジャズクインテットなんだが、出てくる音は「熱狂のダンスミュージック」。メンバーは織田祐亮(tp)、藤田淳之介(sax)、竹内大輔(p)、関谷友貴(b)、伊藤隆郎(ds)の5名。
 
 
Jack-in-the-box  
 
 
とにかく冒頭の「Wake up」から「ぶちかませ!」そして、ラストの「Sing Along Tonight」まで、楽しい演奏がてんこ盛り。単純にジャズ・インストを楽しめる、そして踊れるアルバムになっている。演奏のテクニック、演奏の疾走感が半端なく、全12曲が、ダンサフルな余韻を残して、あっと言う間に通り過ぎていく。

一瞬聴いたら「スカパラか?」と思うんだが、出てくるビート感がちょっと違って、あれ〜と思って聴いていたら、ボーカルが出てきて、あれ〜? と思って、思わずジャケットを見て納得。ダンサフルなビートとアドリブ展開に磨きがかかって、フロントのブラスのユニゾン&ハーモニーのアレンジも良好、そんなブラスの咆哮も耳につかない。

こんなコンテンポラリーなジャズの「ダンスミュージック」を日本人が演奏する時代が来るとは。40年前、ジャズ者駆け出しの僕には全く想像が出来なかった。TRI4TH(トライフォース)の存在には、ジャズ者としてワクワクする。そもそも、今回の新盤のタイトルが、びっくり箱 =『jack-in-the-box』。この新盤は、楽しい「びっくり」に満ちている。
 
 
 
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2019年8月 8日 (木曜日)

ジャケットの印象にビビらずに

ブルーノート・レコードの4300番台の聴き直しが順調に進んでいる。4300番台がリリースされる頃には、総帥アルフレッド・ライオンは引退し、ブルーノートを米リバティー社に売却している。売らんが為のアルバム制作にプロデュースが傾き、俗っぽいアルバムやポップに過ぎるアルバムも散見される。硬派なブルーノート・ファンからすると「許せん」というアルバムも確かにある。

しかし、逆に従来のブルーノートらしさを継承しているアルバムも沢山ある。この玉石混交としているところがスリリングでもあるのだ。売らんが為の「俗っぽいアルバムやポップに過ぎるアルバム」については、当時、ポップスやロックの台頭による圧力が半端ない時代であり、ジャズ全体がその将来について不安視し始めた時代でもあるので仕方の無いことでもある。

Grant Green『Carryin' On』(写真左)。ブルノートの4327番。1969年10月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Claude Bartee (ts), Willie Bivens (vib), Earl Neal Creque, Clarence Palmer (el-p), Jimmy Lewis (el-b), Idris Muhammad (ds)。パッキパキの一本弾きギター、グラント・グリーンのソウル・ジャズである。
 
Carryin-on  
 
こってこてファンキーな、それでいてダンサフルでポップな演奏が心地良い。オフなリズム&ビートがしっかりと効いているので、ポップな味付けがされていても、イージーリスニングには傾かない。それどころか、それぞれの楽器の演奏には、しっかりと芯があって、明らかにジャズ畑出身の筋金入りのジャジーな演奏なのが良く判る。

グルーヴィー。そして、軽やかでポップ。そして、どこかR&Bっぽいところがある。軽快でポップな、そう「モータウン」の様な響き。グラント・グリーンの唄うようなアドリブも実にソウルフルで、グリーンの個性である「こってこてのファンクネス」が良い方向に作用する。思わず腰が動き、足でリズムを取り始める。

ジャケットだけがねえ。このヒッピー・ムーヴメント風の「サイケデリックな」ジャケットのデザインで損をしている。このジャケットから、従来のブルーノートらしさを底に秘めた、硬派でしっかりと芯のあるソウル・ジャズがこの盤に溢れている、なんて想像出来ない(笑)。ジャケットの印象にビビらずに、一度は聴いて頂きたい、4300番台らしい好盤です。
 
 
 
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