2021年2月28日 (日曜日)

フレディ・レッドはまだまだ健在

2021年2月24日のブログで、フレディ・レッド(Freddie Redd)のリーダー作をご紹介して以来、フレディ・レッドが気になってきた。そんな時に、ネットでジャズ盤の情報を見ていたら、偶然、フレディ・レッドの名前を久し振りに見つけた。それも最近の録音みたいなのだ。即ゲットし、即リスニングである。

Freddie Redd『With Due Respect』(写真左)。2014年11月と2015年2月の録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Redd (p), Chris Byars (as, fl, arr), John Mosca (tb), Stefano Doglioni (bcl), Jay Anderson (b), Billy Drummomd (ds), James Byars (oboe on track 2)。基本はセクステット(6重奏団)編成。2曲目だけオーボエが参加。

フレディ・レッドは1928年5月生まれなので、今年で93歳。この録音は2014〜15年の録音なので、86歳での録音になる。86歳にしては、フレディ・レッドのピアノは溌剌としていて切れ味もなかなかのもの。高速フレーズでは少し右手が上滑りするところもあるが、ミスタッチも殆ど無く、変に「ヨレる」ところも無い。高年齢にも拘わらず、堂々とした弾きっぷり。
 
With-due-respect-freddie-redd  
 
全曲、フレディ・レッドの作曲。演奏はセクステットが基本。ユニゾン&ハーモニーが厚みはあるが軽快で、聴き心地の良い響きが素敵である。昔のフレディ・レッドのアレンジとはちょっと雰囲気が違うな、と思ってパーソネルをよく見たら、アレンジはアルト・サックスのクリス・バイヤーズが担当している。

フレディ・レッドの作なる収録曲はどれもが明るく印象的なフレーズが基調で、とても聴いていて楽しいハードバップ風の演奏になっている。そんな中、フレディ・レッドのピアノは好調で、要所要所で「若々しい」弾きっぷりが見事。総合力で勝負するタイプの端正でアーバン・ジャジーなピアノは聴いていた心地良い。

フレディ・レッドは録音当時、86歳。他のメンバーは「息子」と呼んで良い年齢と「孫」と呼んで良い年齢の、かなりの年齢差があるメンバー構成だが、そんなことは全く感じられない。一丸となって、ネオ・ハードバップな演奏を繰り広げている。う〜ん、こういうところも、年齢を重ねる毎に成熟していくジャズならではの良いところですね。
 
 
 
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2021年2月27日 (土曜日)

ブレーメンのミンガス 1975年

ブレーメンのミンガス、昨日の続きである。1964年、主力のエリック・ドルフィーが抜けて以来、しばらくの間、ミンガス・バンドは勢いを徐々に失う。時期的にポップスやロックの時代になったのに合わせて、ジャズがポピュラー音楽の中でマイナーな存在に落ちていった時期でもあったので、ストレート・アヘッドなジャズを旨とするミンガス・バンドとしては辛い時期だったと思う。

しかし、1974年の夏以降、テナー・サックスのジョージ・アダムス(George Adams), ピアノのDon Pullen(ドン・ピューレン)が加入して、ドルフィーを加えていた時代以来、久方ぶりに超強力メンバーをそろえたクインテット編成が成立。ドルフィーとはまた違った、ポジティブでスピリチュアルなアダムスのテナーが強力で、多弁で重量感のあるピューレンのピアノと相まって、極上のミンガス・ミュージックを再現している。

『Charles Mingus @ Bremen 1964 & 1975』(写真左)。チャールズ・ミンガス 1964年と1975年のブレーメン公演のライヴ音源。CD4枚組でのリリース。

CD1とCD2が「1964年4月16日、Sendesaal Radio Bremen’s Studio」での音源。CD3とCD4が「1975年7月9日 Post-Aula Auditorium Recorded by Radio Bremen」の音源。オリジナル・テープからリマスタリングした初の公式リリースである。
 
Charles-mingus-bremen-1975  
 
今日は、CD3とCD4、1975年7月9日の録音分について語りたい。ちなみにパーソネルは、Jack Walrath (tp), George Adams (ts, vo), Don Pullen (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (ds)。先にご紹介した、テナーにアダムス、ピアノにピューレンを加えたクインテット編成。トランペットのジャック・ウォラスはそこそこリーダー作も出しているベテランだが、我が国ではほとんど無名。しかし、アダムスとの2管フロントは強力。

アダムスのテナーがエネルギッシュで、ストレートで切れ味良く、スピリチュアルなブロウが、ミンガス・ミュージックにピッタリ。ウォラスのトランペットも同傾向で、この2管フロントの迫力は凄まじいばかり。

ミンガスは強力な2管フロントを得て、安心して充実したうねる様な、鋼の様な、重低音ベースを弾き続ける。このミンガスのベースの迫力も凄まじいばかり。ピューレンの多弁で重量感のあるピアノとリッチモンドの覇気溢れるポリリズミックなドラミングが、これまた2管フロントを支え鼓舞していく。

演奏の適度なテンションとグループ・サウンドとしてのまとまりの面を踏まえると、演奏の充実度は1964年に勝るとも劣らない。ミンガスはこの録音の4年後、1979年1月5日に56歳の若さで逝去する。しかし、この1975年のクインテットの輝きは永遠に音源として残っている。
 
 

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2021年2月26日 (金曜日)

ブレーメンのミンガス 1964年

ハードバップからモード・ジャズ、硬派な純ジャズ路線が魅力の「ミンガス・ミュージック」。ジャズ・ベーシストのレジェンド、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)率いるバンドが奏でる純ジャズは、どこまでも「ストレート・アヘッド」。1950年代からミンガスが亡くなる1970年代終盤まで、ミンガス・バンドの奏でるジャズは「ストレート・アヘッド」。

『Charles Mingus @ Bremen 1964 & 1975』(写真左)。チャールズ・ミンガス 1964年と1975年のブレーメン公演のライヴ音源。CD4枚組でのリリース。

CD1とCD2が「1964年4月16日、Sendesaal Radio Bremen’s Studio」での音源。CD3とCD4が「1975年7月9日 Post-Aula Auditorium Recorded by Radio Bremen」の音源。オリジナル・テープからリマスタリングした初の公式リリースである。

今日は、CD1とCD2、1964年4月16日の録音分について語りたい。ちなみにパーソネルは、Johnny Coles (tp). Eric Dolphy (as, fl, b-cl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (ds)。ミンガスとドルフィーとの最後の共演となった1964年の欧州ツアーでの一コマ。このツアーを終えて欧州に留まったドルフィーは、そのわずか 2ヶ月後に糖尿病の悪化で急逝してしまった。
 
 
Charles-mingus-bremen-1964
 
 
この音源は凄い。当時のミンガス・バンドの最高の演奏が詰まっている。特にエリック・ドルフィーが飛び抜けて凄いパフォーマンスを繰り広げている。一聴してすぐに判る、ドルフィー独特の「不思議に捻れた」フレーズ、エモーショナルでスピリチュアルな、それでいて耳につかない情感溢れるブロウ、エネルギッシュで爽快感溢れるアドリブ展開。この盤のドルフィーは絶好調。

もちろんミンガスのうねる様な、鋼の様な、重低音ベースも素晴らしい。取り分け、ソロをとる時の、ダンディズム溢れる、硬派で無頼漢な超弩級の重低音ベースはミンガスならではのもの。これだけ太くて重い重低音ベースはミンガスのものが一番だろう。それでいて、耳につかず、しっかりとフロントのブロウを支え鼓舞するのだから凄い。

ドルフィーの熱演とミンガスの鼓舞に応える様に、コールズのトランペット、ジョーダンのテナーも好演につぐ好演。ドルフィートのフロント3管はど迫力のユニゾン&ハーモニー。そして、リズム隊のバイアードのピアノ、リッチモンドのドラムもミンガス・ミュージックのリズム&ビートを適切に叩き出す。

今の耳で聴いても、この1964年のミンガス・セクステットは凄い。マイルスの1960年代黄金のクインテットに比肩するパフォーマンスだと思う。何故か我が国では人気が低いミンガスだが、そのパフォーマンスに「凡盤・捨て盤」はない。今回の公式リリース盤も素晴らしい内容。4枚組のちょっと重めのボリュームだが、聴き始めたら、あっと言う間の3時間弱、一気に聴き切ってしまう。好盤です。
 
 

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2021年2月25日 (木曜日)

ゴスペルな響きが素敵なデュオ

アーチー・シェップ(Archie Shepp)が元気である。シェップは1937年5月生まれ。今年で84歳。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者である。第一線に躍り出たのが1960年代後半だから、かれこれ60年、ジャズ界の第一線を走ってきたことになる。これだけ息の長いジャズメンはもう数えるほどしかいない。貴重な存在である。

ジェイソン・モラン(Jason Moran)は注目株。モランは1975年1月生まれ。今年で46歳。油の乗りきった中堅ピアニスト。1999年が初リーダー作なので24歳でメジャー・デビュー。一年に1作のペースで着実にリーダー作をリリースしている。特に最近、2015年辺りから馬力がかかってきた感がある。これからが実に楽しみな存在である。

Archie Shepp & Jason Moran『Let My People Go』(写真左)。2021年2月のリリース。リリースほやほや。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts,ss,vo), Jason Moran (p)。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者、アーチー・シェップと、油の乗りきった中堅ピアニスト、ジェイソン・モランとのデュオ盤である。シェップがボーカルを担当しているところが珍しい。
 
 
Let-my-people-go  
 
 
サックスとピアノのデュオは良くあるパターン。しかし、このデュオはその「響き」が個性的。シェップはフロリダ州フォートローダーデール生まれ。モランはテキサス州ヒューストン生まれ。どちらも「ブルースとゴスペル」米国南部出身。そう、このデュオの音の響きが、どこか「ゴスペルな雰囲気」。スピリチュアルなフレーズが、その「ゴスペルな雰囲気」に拍車をかける。

シェップのサックスがとてもスピリチュアル。シェップはもともとはコルトレーンの忠実なフォロワー。しかし、1970年代にはフリーからブラック・ファンクに走り、いち早くコルトレーンの影響下から脱している。1980年代以降は、オーソドックスなブロウをベースに「クールでスピリチュアル」な表現をメインとしている。この盤ではボーカルも担当しており、このボーカルはこれまた「スピリチュアル」。

ジェイソンのピアノがそんなシェップに呼応し、スピリチュアルなフレーズを連発しつつ、シェップのサックスを鼓舞する。そして、シェップがボーカルを担当すると、それはそれはリリカルで耽美的な、しっとりとした伴奏で応える。いやはや、素晴らしいデュオである。アフリカン・アメリカンの音の郷愁を聴く様な、素敵なスピリチュアル・デュオである。
 
 
 

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2021年2月24日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・89

ふと、レアな盤を見つけた。リーダーは「Freddie Redd(フレディ・レッド)」。フレディ・レッドと聴いて、ああ、とその名を思い出すジャズ者はベテランの類。

まず、ジャズ盤紹介本にはその盤は載ったのを見たことが無い。今回、スイングジャーナルの古い「幻の名盤」の類の特集本でそのタイトルを久し振りに確認した次第。

「フレディ・レッド」自体の存在はかなりマイナー。それでもジャズの世界の中では、麻薬劇と呼ばれた「コネクション」の作曲者であり、ブルーノートの『Shades of Redd』のリーダー。稀少ではあるが、その作曲の才と渋いピアノは一度聴けば印象に残る存在である。

Freddie Redd『Under Paris Skies』(写真)。1971年6月26-29日録音。仏のFuturaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Redd(p), Didier Levallet(b), Didier Carlier(ds)。ピアノ・トリオ編成。ピアニストの個性と特徴がハッキリと判る演奏フォーマットである。

実はこの盤、聴いてみたかったんですよね。仏のレーベルからのリリースではあるが、フレディ・レッドは生粋の米国のジャズマン。1928年にNYに生まれ、なんと今年で92歳でNYに在住とある。
 
 
Under-paris-skies
 
 
1950年代の活動も報われず、1960年初頭には欧州に移住している。1974年に米国に戻るまで、10数年の間、欧州で客演する。そんな欧州での活動の間に録音したトリオ盤がこの『Under Paris Skies』になる。

一言で言うと「渋いピアノ・トリオ」。大向こうを張ったダイナミックなところは無いし、選曲もとても渋い。誰かが「パリ=アメリカ黒人=エトランゼ=哀愁」という公式が実にマッチした演奏、と評していたが、まさにその通りだと思う。

本質はバップ、フレーズはブルージーでアーシー。マイナーなフレーズがメインのアドリブが哀愁感を引き立たせる。聴き始めると一気に聴き切ってしまう、とても印象的なピアノ・トリオ。

欧州のフレディ・レッドは当地で手厚くもてなされたようだ。この薄めの青が印象的な盤のジャケットに、おのぼりさんよろしく、エッフェル塔を背景にしたフレディ・レッドが映っているところが微笑ましい。

そんな彼にとって良い環境が、こんな「パリ=アメリカ黒人=エトランゼ=哀愁」という公式が実にマッチした演奏を生み出したのだろう。この盤、つつしんで「ピアノ・トリオの代表的名盤」に選定させていただきたい。

 

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2021年2月23日 (火曜日)

素敵な欧州ジャズの「デュオ盤」

ジャズは全世界において「深化」している。もう新しいジャズの奏法や表現方法は現れ出でないだろう。しかし、今までに出現したジャズの奏法や表現方法は、様々なジャズマンのチャレンジによって、洗練され、再体系立てされ、再構成され、新たな解釈が付加されている。つまり「深化」しているのだ。

Enrico Pieranunzi & Bert Joris『Afterglow』(写真左)。今年2021年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp)。ピアノとトランペットのデュオ盤。リズム&ビートは一手にピアノが担い、フレーズはピアノとトランペットでのインタープレイ。

イタリアが生んだ現代最高のジャズ・ピアニストの一人、エンリコ・ピエラヌンツィ。そして、ベルギーの名ジャズ・トランペッター、バート・ヨリスとのデュオ盤である。ピアノとトランペットのデュオは珍しい。ピアノが伴奏に徹し、トランペットが旋律を吹きまくるのは全く面白く無い。当然、この名手の2人はそんな俗手には陥らない。
 
 
Afterglow
 
 
ピエラヌンツィのピアノは耽美的でリリカルでメロディアス。そこに、ヨリスのふくよかで柔らかい、それでいて芯のしっかり通ったトランペットが絡む。ピエラヌンツィのピアノの左手が、しっかりとリズム&ビートを刻み、キープする。そして、右手でヨリスのトランペットを迎え撃つ。極上のデュオの響き。極上のユニゾン&ハーモニー。

デュオ演奏の全体に漂うリズム&ビートにファンクネスは無い。リリカルでダイナミズム溢れる透明度の高いリズム&ビート。まさに「欧州ジャズ」を強く想起するリズム&ビートである。こんなデュオ演奏を初めて聴いた気がする。ありそうで無い、ピアノとトランペットのデュオ。

タイトルの「Afterglow」は、夕映えや残光を意味する言葉。このデュオ盤には、そんなタイトルそのものの雰囲気が蔓延している。素敵な響きに満ちた好盤です。最近、ジャズでは「デュオ」が流行っているような雰囲気がある。もっとユニークなジャズ演奏が今後も出てくるのではないか、と思わず期待してしまう。
 
 
 

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2021年2月22日 (月曜日)

ソニクラのお蔵入り音源・1

僕のお気に入りのジャズ・ピアニストの1人、ソニー・クラーク(Sonny Clark)。1931年7月、米国ペンシルベニア州生まれ、1963年1月、NYにて死去。31歳での「早逝のピアニスト」。それでも、リーダー作はブルーノート・レーベルを中心に10数枚、サイドマン参加でのアルバムは50数枚とかなりの枚数になる。

1955年から逝去する前年1962年の7年の間に、参加アルバムが60数枚、年平均8枚程度、録音していたのだから、当時の「ファースト・コール」ぶりが偲ばれる。そんな当時の人気ピアニスト、ソニー・クラークのリーダー作の中で、録音されてアルバム番号まで確定していながら、お蔵入りになったアルバムが幾枚かある。

まずは、『Sonny Clark Quintets』(写真左)。1957年12月8日、1958年1月5日の2セッションからの録音。

ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Paul Chambers (b) は共通。1957年12月8日のセッションは、Clifford Jordan (ts), Kenny Burrell (g), Pete LaRoca (ds)、1958年1月5日のセッションは、Art Farmer (tp), Jackie McLean (as), Philly Joe Jones (ds) が加わったクインテット編成。

このパーソネルを見て、1958年1月5日の録音(1〜2曲目)って、かの名盤『Cool Struttin'』と同一日、同一メンバーでの録音ではないか、と思われた方は、優れた「ブルーノート者」である。
 
 
Sonny-clark-quintets
 
 
そう、この1曲目「Royal Flush」と2曲目「Lover」は『Cool Struttin'』と同一日、同一メンバーでの録音である。演奏の雰囲気、音の傾向が『Cool Struttin'』そのもの。名演の類である。この盤、この2曲を聴くだけでも価値がある。

かたや、1957年12月の録音は、質実剛健テナーのジョーダンと、漆黒のアーバン・ギターのバレルがフロントを張る変則クインテットだが、ここでのクラークのピアノも絶好調。

クラークは1956〜57年が絶好調で、その絶好調期の最後を飾ったのが、1958年1月5日のセッション。当時、お蔵入りになって2曲は、『Cool Struttin'』がLPであったが故に、収録時間的にあぶれたと思われる(CDでは『Cool Struttin'』のボートラで追加されている)。

逆に、1957年12月8日のセッションの3曲は、このパーソネルでのセッションが、後にも先にもこの日だけだったので、結果、この3曲はアルバムに収録されないまま、放置されたと思われる。このセッションについては、運がなかった、気の毒な3曲だろう。

それでも、1976年に目出度くリリースされたのだから良かった。ジャケットのデザインも良好、ここにクラークの写真が小粋にあしらわれていた、と思うのは僕だけだろうか。
 

 

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ブルーベック者、溜飲を下げる

ディブ・ブルーベック(Dave Brubeck)は、ジャズ史上にその名が残るジャズ・ピアノのレジェンドの1人である。しかし、僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国におけるブルーベックの評価は甚だ悪かった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」という評論。これはあまりに失礼ではないか。

そんな酷い評論がまかり通った1970年代、そして1980年代、純ジャズ復古がなって、メインストリーム・ジャズが、ジャズの真ん中に戻ってきたのだが、ブルーベックの評価は以前のまま。再評価されることなく、現在に至っている。ちなみに米国ジャズでのブルーベックの評価は高く、亡くなった後も、不世出の音楽家の1人としてリスペクトされている。

Dave Brubeck『Lullabies』 (写真左)。2011年の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p)。ブルーベックがソロ・ピアノで孫のために収録した、ブルーベックの生涯最後のスタジオ録音とのこと。パッキパキ、前衛的にスクエアにスイングするブルーベックが「子守唄」集をソロ・ピアノでやるとは。興味津々のアルバムである。
 
 
Lullabies_dave-brubeck    
 
 
昨年の2020年は、ブルーベックの生誕100年の記念の年。2012年12月、ブルーベックが亡くなってから8年が経過した2020年12月にリリースされたのが、生涯最後のレコ―ディングとなったという、このソロ・ピアノ盤である。当時、孫への贈り物として録音されたこの盤。数々の子守唄を題材に、ブルーベックの特徴的な即興演奏てんこ盛り。

ジャズ・スタンダードはもちろん、クラシック、ディズニー、トラッド、そしてオリジナル曲まで様々な楽曲を取り上げ、アレンジはシンプルの一言、パッキパキ、前衛的にスクエアにスイングする、味のあるソロ・ピアノで、数々の子守唄を唄い上げていく。テクニックも上々、歌心溢れ、彼の独特の個性である「スクエアなスイング」が耳に心地良い。

1曲目の「ブラームスの子守唄」の優しい心安らぐフレーズ、その雰囲気そのままに、全15曲のショートピースが続く。奇をてらわない真摯で誠実な、創造力溢れる弾きっぷり。このソロ・ピアノを聴いていて、我が国でのブルーベックのピアノに対する厳しい批評がいかに的外れであったかが良く判る。ブルーベック者として溜飲の下がるソロ・ピアノ盤である。
 
 
 

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2021年2月20日 (土曜日)

ハートマンの歌唱が素晴らしい

ジャズの男性ボーカルは、フランク・シナトラ、メル・トーメ、ナット・キング・コールが専らの「お気に入り」。他のボーカリストについてはあまり聴かない、というか、他にメジャー・な存在がほとんどいないといえばいない。よって、この盤も最初は共演パートナーに惹かれてゲットした盤ではある。

『John Coltrane and Johnny Hartman』(写真左)。1963年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Hartman (vo), John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。ジョン・コルトレーンの「伝説のカルテット」に、ボーカルのジョニー・ハートマンが客演したイメージの共演盤である。

ジョニー・ハートマンは、1923年7月、米国ルイジアナ州生まれのジャズ・ボーカリスト。アール・ハインズ、エロル・ガーナーとの共演で頭角を現し、カントリーなどにも適応するが、メインはジャズ・ボーカル。この共演盤を録音した時点で40歳。ボーカリストとして油の乗りきった中堅でのパフォーマンスである。
 
 
John-coltrane-and-johnny-hartman
 
 
コルトレーンにとっては、名盤『Ballads』と同じ系統のアルバムになる。激しいシーツ・オブ・サウンドやフリーなブロウを封印し、内省的で耽美的でスローなブロウをメインに据えたパフォーマンスに終始している。この盤でのコルトレーンは限りなく美しく唄う様にブロウし、ハートマンに対抗するようにブロウする。

ハートマンについてはマイペース。バックがコルトレーンの「伝説のカルテット」なのだが、全く緊張感も気負いも感じられない。ただただ自然体で、ハートマンの個性を振り撒いて唄い上げていく。この盤でのハートマンの唄いっぷりは素晴らしく、聴き惚れるばかり。特に緩やかなバラードの歌唱は素晴らしい。

この盤、コルトレーンのテナーにばかり話題が集中するが、どうして、この盤はハートマンのバラードの歌唱が頭1つ抜きんでている。どうも、コルトレーンの「伝説のカルテット」は歌伴は似合わない。エルヴィンのドラムも不完全燃焼っぽい。マッコイのピアノだけがなんとか上手くハートマンの伴奏をしているのが微笑ましい。
 
 
 
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2021年2月19日 (金曜日)

朗々なベネットに歌伴エヴァンス

ボーカルものを聴き進めている。前にも書いたが、ジャズ・ボーカルについては、伝統的スタイルの「こぶし」やヴィブラートを効かした唄い方にどうしても馴染めなくて、ジャズ初心者の頃から常に後回しにしてきた。が、聴かず嫌いは良く無い。21世紀に入ってから、有名盤については努めて聴く様にしている。

『The Tony Bennett / Bill Evans Album』(写真左)。1975年6月10−13日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Bennett (vo), Bill Evans (p)。男性ジャズ・ボーカリストの代表格の1人、トニー・ベネットと、ジャズ・ピアニストのレジェンド、ビル・エヴァンスとのデュオ盤である。

トニー・ベネットは男性ジャズヴォーカリスト界を代表する存在で, 「I Left My Heart in San Francisco」などの世界的なヒットで知られている。ビル・エヴァンスは、ジャズ・ピアノのスタイリスト。トリオのインタープレイの祖であり、モーダルなバップ・ピアノの基本である。

ベネットのボーカルは「朗々」と唄い上げるもの。フェイクもギミックも無い。男性らしい声でストレートに朗々と唄う。こういうボーカリストの伴奏は難しい。朗々と唄うものを邪魔してはいけないし、かといって、キーになる音やビートは唄い手にしっかり伝えないといけない。目立たずに、でも存在感は必要。
 
 
The-tony-bennett-bill-evans-album
 
 
しかし、そこは「伴奏上手」のエヴァンス。心得たものである。エヴァンスは、ピアノ・トリオでの弾き回しは、明快なタッチで明らかにバップな弾きっぷり。フレーズはしっかり浮かび上がるし、ビートはしっかり前面にでる。しかし、歌伴に回ると、エヴァンスの弾き回しは明らかに変わる。

ボーカルを決して邪魔せず、それでいて、唄い手が唄い易い様に、キーになるフレーズやビートを明確に伝える。変にモードに傾かず、しっかりとコードとビートを供給する。これがこの盤での聴きどころになる。実に上手い「歌伴」だ。

デュオの中では、ベネットが朗々と唄い上げるタイプのボーカリストなのでリードする方に回るし、エヴァンスは当然、フォローする方に回る。リードする方とフォローする方、主従の関係が時々交代すれば、何か「化学反応」でも起こる可能性もあるのだが、このベネットとエヴァンスのデュオではそれは無い。だからそれを期待するのは「筋違い」だろう。

この盤、気持ち良い伴奏を得て、朗々と気持ち良く唄うベネットと、そんな気持ちの良い伴奏を供給する、伴奏上手のエヴァンス、その両方をそれぞれ確認し楽しむ盤だと思う。
 
 
 

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