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2024年9月11日 (水曜日)

チック&オリジンの ”Change”

確かに、チックって、いつも、質の良い「ジャズの新しい何か」を提示してくれるのだが、世の中に受けないと思ったら、一旦、さっさと撤収することが多いので、このチックの提示する「ジャズの新しい何か」に違和感を感じた方々は、やっぱりチックもそう思って引っ込めた、と勘違いしているきらいがある。

Chick Corea & Origin『Change』(写真左)。1999年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, marimba), Bob Sheppard (b-cl, fl, bs, as, ss, ts), Steve Wilson (cl, fl, as, ss), Steve Davis (tb), Avishai Cohen (b), Jeff Ballard (ds), チック・コリア&オリジンとしては初のスタジオ録音。

リード楽器 x2+トロボーンのフロント3管のセクステット編成。まるで、1960年代のジャズ・メッセンジャーズの様な編成である。しかし、出てくる音は全く異なる。今回、改めて聴いてみて、21世紀に入って、その演奏トレンドが顕著となる「ネオ・ハードバップ」の走りの様な内容に、ちょっとビックリ。

モード&コードのごった煮な展開は1960年代と同じだが、限りなくフリーに展開しているところが耳に新しい。それも、激情に任せた、本能に赴くままの展開ではなくて、あくまで理知的に、あくまでクールに、限りなくフリー&スピリチュアルに展開しているところが新鮮。
 

Chick-corea-originchange

 
モードな展開も、コードな展開も理知的でクール。出てくるフレーズはファンクレス。欧州の純ジャズ的な透明度の高い、理路整然としたクールな展開。米国出身のジャズマンが中心のセクステットで、欧州の純ジャズ的な展開をする。この辺りは、21世紀に入って、ECMレーベルが標榜した「メインストリーム・ジャズのボーダーレス化」に通じるものがある。

米国ジャズの面々が欧州な純ジャズをやるのだから、この盤がリリースされた当時は、皆、違和感を感じたのだろうな。故に、このチック・コリア&オリジンは全く話題にならなかったどころか、チックはもう終わった、なんて揶揄されたものだ(笑)。

このチックがオリジンで提示した「ジャズの新しい何か」は、最終的に、トリオ演奏に焼き直されて、2006年の『Super Trio』で再提示され、今度は世の中から受けに受け、評価されるのだから、面白いといえば面白いし、当時、チックはもう終わった、なんて揶揄した方々については、意外と無責任やなあ、とも思ったりする。

チックのピアノのフレーズはどこから切っても「チック流」の響きが満載だし、リズム隊としては、ジェフ・バラードの変幻自在、硬軟自在なドラミングは、後の「ネオ・ハードバップ」の響きが満載。オリジンとしての個性的なグループサウンズの響きはしっかりとキープされていて、スタジオ盤として、良好な出来だと思う。
 
 

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