バグスの多彩な才能の記録です
ジャズ・ヴァイブの神様、ミルト・ジャクソン(愛称「バグス」)のキャリア初期のリーダー作は、概ね、サボイ・レーベル(Savoy Label)からのリリースになる。ブルーノートの『Milt jackson』、プレスティッジの『Milt Jackson Quartet』は、どちらも該当レーベルからの単発。サボイからの最終作『Jackson's Ville』までのリーダー作9作中の6作までがサボイからのリリース。改めて「へ〜っ」と思ってしまう。
Milt jackson『Meet Milt Jackson』(写真左)1949年12月23日、1954年11月1日、1955年2月7日、1956年1月5日の4セッションからの寄せ集め収録。1956年のリリース。当然、パーソネルは複雑で、整理すると、
1949年12月23日(tracks 6–9)は、Milt Jackson (vib), Bill Massey (tp), Julius Watkins (French horn), Billy Mitchell (ts), Walter Bishop Jr. (p), Nelson Boyd (b), Roy Haynes (ds)。珍しいフレンチ・ホルンが入ったセプテット編成。
1954年11月1日(track 5)は、Milt Jackson (vib, p, vo), Frank Morgan (as), Walter Benton (ts), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。バグスが唄い、ピアノを弾く、変則クインテット編成。
1955年2月7日(track 4)は、Milt Jackson (vib, p), Frank Wess (ts, fl), Charlie Fowlkes (bs), Eddie Jones (b), Kenny Clarke (ds)。バグスがピアノを弾く、変則クインテット編成。
1956年1月5日(tracks 1–3)は、Milt Jackson (vib), Lucky Thompson (ts), Wade Legge (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。スタンダードなクインテット編成。
既出の4セッションから未収録だった演奏を寄せ集めているのだが、当盤のリリースが1956年なので、冒頭「They Can't Take That Away from Me」から、3曲目の「Flamingo」までが、当時、一番ホットな「1956年1月5日」の演奏で、収録曲が進むにつれ、録音年月日が過去に遡っていくという、ちょっと面白い曲の収録順となっている。
当然、後半6曲目「Hearing Bells」から、ラストの「Bubu」は、1949年12月23日の録音なので、1956年1月5日の録音と比べると、演奏自体、まだまだ、こなれていない、ちょっと硬くてギクシャクした演奏になっているが、これは仕方がない。
初期のバグスのサボイにおけるリーダー作は、内容的に優れたものが多いが、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介などで無視されている。ネット上でも、取り上げる人は僅少。
しかし、この盤を聴いてみると、バグスの多彩な才能が聴いて取れる。本業のヴァイブはもとより、ピアノの腕前もなかなかのもの、加えて、この盤ではボーカルまで披露していて、これもなかなかのもの。
4セッションからの寄せ集め収録の盤ではあるが、バグスのヴァイブについては、既に、1949年12月23日において、テクニック、歌心、フレーズの個性、いづれも、ほぼ完成の域に達しているので、4つのセッションを横断するバグスのヴァイブについては一貫性があって、アルバム全体に統一感がある。グループサウンズ自体は、その時代の標準レベルなので、古い演奏ほど、内容が伴わないのは致し方ない。
このアルバムの副題に「Vibist, Pianist. Vocalist」とあるのは「言い得て妙」。この盤は若き日のバグスの多彩な才能の記録である。
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