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2024年9月 7日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・28

今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや2年。やっと第1巻の終わりに差し掛かってきた。

Lee Morgan『The Sidewinder』(写真左)。1963年12月21日の録音。ブルーノートの4157番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Barry Harris (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。リリース当時、ビルボード・チャートで最高25位を記録し、ブルーノート・レーベル空前のヒット盤となった。ジャズ史上においても、屈指のヒット盤である。

この盤も、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。なんせ、冒頭のタイトル曲「The Sidewinder」が、8ビート・ジャズで格好良いのなんのって。この曲が、8ビートを取り入れた「ジャズロック」の走りで、「実はブルースなんだが、8ビートに乗っているので、スピード感溢れる切れの良いブルースに仕上がった」という逸話を知ったのは、ジャズを聴き始めて10年くらい経ってから。

ただ、この盤、冒頭の「The Sidewinder」が、8ビートのジャズロックなブルースだからといって、全編、ジャズロックのオンパレードかと思いきや、それが違うのだからややこしい。この盤の評論にも「この盤は、いち早くロックのリズムを取り入れ、それに成功したジャズ盤」と堂々と書いているものもあるが、これって、2局目以降の演奏を聴かずに書いたとしか思えない。
 

Thesidewinder_1

 
ジャズ者初心者にとって、この盤を全編8ビートの「ジャズロック」が満載だと勘違いすると、この盤は辛い。2局目以降は、2曲目以降、4ビートの曲もあるし、6拍子の曲もあって、様々なリズム・アプローチを試みたハードバップ盤の様相で、この盤は「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」と言える。

加えて、トランペットのモーガン、テナーのジョーヘン、共にアドリブ展開は「モード」を基本として、吹きまくっている。それぞれ、モーガンなりのモード展開、ジョーヘンなりのモード展開で、疾走感溢れるアドリブ・フレーズを吹きまくっていて、それまでのコードがメインのハードバップとは、音やフレーズの響きが全く異なる。当時としては、新鮮な響きを宿した、新しいハードバップとして捉えられていたのではなかろうか。

よって、この盤、キャッチャーでポップな、冒頭のジャズロック曲「The Sidewinder」に惑わされがちだが、ジャズ者初心者の入門盤としては、ちょっと難易度が高いと思う。

逆に、ジャズを聴き始めて、ジャズに興味が湧いて、様々なスタイルのジャズを聴いてみたいと思った時に、様々なビートに乗った、聴きやすい「モード・ジャズ」を体験するには最適の盤だと思う。特に、8ビートに乗った「モード・ジャズ」は、聴いていて「モード」をとても理解し易いと僕は思う。

ジャズロックを始めとした「様々なリズム・アプローチを試みたファンキー・ジャズ盤」として、この盤は内容充実であり、そういう切り口でこの盤は、ジャズの「超名盤」だと言える。ゆめゆめ、ジャズロック曲「The Sidewinder」が入っているから「超名盤」だとは解釈しないで欲しい。それだけ、この盤、ジャズロック曲「The Sidewinder」以外が充実しているのだ。
 
 

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