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2024年9月 5日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・26

ほんと、久しぶりにボサノバ・ジャズの元祖的アルバム『Getz / Gilberto』を、メインのステレオ装置で、しっかりとスピーカーに対峙して聴いた。僕なりのジャズ超名盤研究の第26回目である。

前にこの『Getz / Gilberto』を記事にしたのが、2006年7月。あれから、18年が経過した。それまでに、ボサノバ・ジャズのアルバムは、沢山、新規にリリースされたし、リイシューについても、今まで、ほとんど再発されなかった盤が、結構な数、リリースされた。そんなアルバムについては、標準以上のレベルのものが多く、ボサノバ&サンバ・ジャズは、ほぼ、ジャズの一ジャンルとして定着した感がある。

『Getz / Gilberto』(写真左)。1963年3月の録音。パーソネルは、Stan Getz (ts)、João Gilberto (g, vo)、Antonio Carlos Jobim (p)、Tommy Wiliams (b)、Milton Banana (ds)、Astrud Gilberto (vo)。今から振り返ると、なんとも言えない、このパーソネルで「ジャズ」をやったのか、と感心する。

ジョアン・ジルベルトは、ボサノヴァというジャンルを創成した功労者、生みの親。ジョアンを「ボサノバの神」などと呼ぶ人もいる位。この「ボサノヴァの神」がギターとボーカルを担当して、ジャズのリズム&ビートに乗って、ボサノバをやるのだ。かなり無理があったと思う。逆に、ジョアンの音楽性の柔軟度の高さに敬意を表したい。ジョアンの懐の深さがあったからこそ、このボサノバ・ジャズの元祖的アルバムが世に出たと僕は思う。
 

Getz-gilberto_1

 
アントニオ・カルロス・ジョビンは、ボサノバを代表するピアニスト。この人も、ボサノバでは「神」の様な存在であり、そんなジョビンが、よく、ボサノバ調のジャジーなリズム&ビートを捻り出しているなあ、と感心する。このジョビンのピアノが、以降のボサノバ・ジャズにおける良き「お手本」となっている。ボサノバ・ジャズのリズム&ビートは、ジョビンのピアノから派生したと言っても過言ではない。

アストラット・ジルベルトは、当時、ジョアンの妻君。ボーカリストとして全くの素人。ゲッツは、このアストラットの「英語による唄声」に大いなる魅力を感じて、大プッシュしたらしいが、ジョアンはかなり難色を示したらしい。それはそうで、ボサノバは英語では唄わない。しかし、英語で唄うボサノバ・ジャズのボーカルについては、このアストラットの「イパネマの娘」の素人ボーカルが「お手本」になったのは事実だろう。しかし、素人なので、やっぱり上手くはない。

ゲッツのテナーについては、ジョアンはうるさくてしかたがなかったらしいが、それもそのはず、ゲッツのテナーの音がやけに「大きい」。目立ちたい、前へ出たい、という意図が丸見え。これがジョアンの癇に障ったのだろう。確かに、ボサノバのアンニュイで気怠い雰囲気に合っていない。前に出たがらない、奥ゆかしい吹奏であれば、ボサノバ・ジャズにおける管楽器の「お手本」になったのだろうが、これだけ、テナーが大きい音で前へ出ているのは、どう聴いても、後の「お手本」なり損ねている。

いろいろ、良い点、課題点が山積した、初めての本場ボサノバと本場ジャズとの邂逅。初めての試みなので仕方がない。絶対的名盤とは言い難いが、後のボサノバ・ジャズの「基本・基準」となったことは確か。そんなボサノバ・ジャズの「超名盤」である。
 
 

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