ヴァーヴのグラント・グリーン
9月になった。それでも、真夏日の日々は変わらない。まだまだ、長時間の外出は控えねばならない。熱中症の警戒しての昼下がりの「引き籠もり」の日は続く。引き篭もりの折には、ジャズを聴く。8月は「ボサノバ・ジャズ」だったが、9月になっても、ボサノバ・ジャズはなあ、ということで、なぜか「ファンキー・ジャズ」である(笑)。
Grant Green『His Majesty King Funk』(写真左)。1965年5月26日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Harold Vick (ts), Larry Young (org), Ben Dixon (ds), Candido Camero (bongo, congas)。グラント・グリーンといえば、キャリアのほぼ大半がブルーノート所属の、ブルノートのハウス・ギタリスト的な存在だった。パーソネルだけを見れば、ブルノートからのリリースかと思う。
が、この盤は、パーソネルはブルノートのイメージを借りているが、当時の大手レコード会社であった「ヴァーヴ」からのリリースである。グラント・グリーンの1950年代〜1960年代のディスコグラフィーの中で、この版だけがヴァーヴ・レコードからのリリース。プロデューサーは、後のフュージョン・ジャズの仕掛け人「クリード・テイラー」である。
ブルーノートでのグラント・グリーンのリーダー作においては、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるのが、グリーンの身上。しかし、この盤については、聴き易さを追求した様な、ポップで親しみ易く判り易い、一般大衆向け、イージーリスニング志向のファンキー・ジャズに仕立て上げられている。これは、プロデューサーのクリード・テイラーの仕業であろう。
この盤と同様な「イージーリスニング志向のファンキー・ジャズ」のコンセプトで、同時期にブルーノートからは『I Want to Hold Your Hand』が出ているが、こちらは、レノン=マッカートニーの「I Want to Hold Your Hand(抱きしめたい)」の、ビートルズ・ナンバーのカヴァーを目玉にした、グリーンのギターの力量とテクニックの素晴らしさが実感できる秀逸な内容だった。これは、やはり、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの優れた手腕の賜物だろう。
さて、この『His Majesty King Funk』、ヴァーヴのクリード・テイラーとしては、二匹目のドジョウならぬ「二人目のウエス・モンゴメリー」を、グラント・グリーンに求めたのではないだろうか。しかしながら、グリーンは自らの「身上」の根底を曲げることはなかった様で、クリード・テイラーの指導よろしく、ちょっとポップでイージーリスニング志向に傾いてはいるが、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターを弾きまくるスタイルは変えていない。
しっかり耳を傾ければ、グリーンのギター自体は、ブルーノート時代と変わっていないことが判るのだが、ちょっとポップでイージーリスニング志向の雰囲気が漂う分、この盤は、一部では「聴く価値無し」と酷評されている。が、ポップでイージーリスニング志向に傾いた「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキー」なグラントのギターは、意外と聴き心地が良い。こういうグリーンもたまにあっても良いのでは、と僕は気軽に思っている。
このヴァーヴの『His Majesty King Funk』は、ブルーノートの『I Want to Hold Your Hand』と併せて、ポップでイージーリスニング志向に傾いた「独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキー」なグラントのギターを楽しむ、グリーンの「企画盤」の一枚だと僕は評価している。「気軽に聴けるグリーン盤」の一枚でしょう。
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