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2024年8月 2日 (金曜日)

レイ・ギャロンの個性的なピアノ

ジャズを長年聴いてきて、ある日突然、コロッと魅力的な内容の盤が出てきて、リーダーは誰かな、と思って見たら、今までに聴いたことが無い名前で、調べてみたら、長年、米国でジャズマンとしてプレイしてきた、意外と実績のあるジャズマンだったりして、改めて、ジャズの裾野の広さと深さに呆れたり、感心したりすることがある。

Ray Gallon, Ron Carter & Lewis Nash『Grand Company』(写真左)。2022年5月20日、Van Gelder Recording Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Ray Gallon (p), Ron Carter (b), Lewis Nash (ds)。リーダーは、ピアニストのレイ・ギャロン。 ギャロンは、30年以上にわたって活躍しているニューヨーク出身のピアニスト。この盤は、2021年の『Make Your Move』以来の2枚目のリーダー作。

レイ・ギャロンというピアニストの名前は、2021年の初リーダー作『Make Your Move』で初めて知った。資料によると、なんと30年以上にわたって活躍しているニューヨーク出身のピアニストとのことなんだが、ギャロンの経歴は不明なところが多く、1958年、NYで生まれた様で、それが正しいとすると、今年66歳になる、大ベテランの域に達したピアニスト、ということになる。

共演歴としては、ライオネル・ハンプトンやロン・カーター、グラディ・テイト、ジョージ・アダムス、ハーパー・ブラザーズなどとの共演歴があり、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍してきた、とある。僕は全く知らなかった。ただ、この2枚目のリーダー作を聴くと、ギャロンのピアノは個性的で素性確かなもの、ということを十分に理解する。

この盤を聴くと、ギャロンのピアノはとても個性的。ビバップとブルースを基調としていることは明らか、スイング感はスクエア、どこか、セロニアス・モンクに通じる幾何学的なスクエアなスイング感も見え隠れする。
 

Ray-gallon-ron-carter-lewis-nashgrand-co

 
どう聴いても、オーソドックスなハードバップ志向のピアノでは無い。キレのある硬質なタッチ、鋭角的な音のエッジ、凹凸のある流麗さ、自然とモーダルに展開する柔軟性、パーカッシヴなブロックコード等々、かなりユニークなピアノが展開される。

エリントンの「Drop Me Off in Harlem」や、ビル・エヴァンスの「Nardis」、スタンダード曲「 If I Had You」「Old Folks」を聴けば、そんなギャロンのピアノのユニークさが良く判る。

オーソドックスな4ビート演奏ではあるが、速弾きすること無く、ミッド・テンポな丁寧な弾き回しで、ギャロンの個性的なピアノが鳴り響く。右手のシングルトーンでフレーズを唄い上げながら、絶妙に挿入される左手のブロックコードは小粋で絶妙な、ギャロン独特のグルーヴ感を醸し出している。

そんな個性的なピアノを弾き回すギャロンをサポートする、ロン・カーターのベースと、ルイス・ナッシュのドラムは見事。カーターに関しては近年のプレイと同様、ここでも音程のズレは無く、安定&安心のベースで、独特のグルーヴ感溢れるベースラインをブンブンはじき出す。ギャロンのピアノのフレーズの「底」をガッチリ押さえた、素晴らしい「脇役ベース」を聴かせてくれる。

ナッシュのドラミングは硬軟自在、変幻自在、緩急自在、多彩なドラミングのニュアンスを繰り出して、ギャロンの個性的なピアノのリズム&ビートをガッチリサポートしている。ナッシュの職人芸的ドラミングは素晴らしいパフォーマンスである。

最近の若手〜中堅ジャズマンが展開する「ネオ・ハードバップ」な4ビートなピアノとは明らかに一線を画したギャロンの個性的なピアノは、意外と聴き応えがある。ピアノ・トリオとしてのまとまりも良く、各人の個性もきちんと発揮されている、なかなかに充実した内容のピアノ・トリオ盤である。Takao Fujiokaのイラストをあしらったジャケも良い感じ。好盤です。
 
 

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