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2024年8月29日 (木曜日)

浪花エクスプレス ”No Fuse”

和フュージョン、いわゆる「日本のフュージョン・ジャズ」は、米国のフュージョン・ジャズとは距離を置いて、独自の進化・独自の深化を遂げた、と感じている。リズム&ビートはファンクネス皆無、フレーズの展開はロック志向、ソフト&メロウな雰囲気は希薄で、爽快感&疾走感が優先。和フュージョンは、世界の中で独特のポジションを獲得している。

日本の中での和ジャズは、かなり地域特性があった。東京の和ジャズだけがレコード会社に取り上げられ、メジャーな存在になっていったが、ジャズはそれぞれの地方で、独自の深化を遂げていったと思っている。地方に行けば、かなり地味な存在ではあるが、その地域ならではの「ジャズ・スポット」が必ずある。

浪花エクスプレス『No Fuse』(写真左)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、青柳誠 (ts, Rhodes), 岩見和彦 (g), 中村建治 (key), 清水興 (b), 東原力哉 (ds, perc)。ゲストに、マリーン (vo), 塩村修 (tb), 渕野繁男, 荒川達彦 (sax), 平山国次, 菅野真吾, 平山修三 (perc)。

上方フュージョンの牽引役として、浪花のファンの熱狂的な支持を受けて、大阪からデビューした、カシオペアやスクエアに並ぶ和フュージョンの代表的グループ「浪花エクスプレス」のファースト・アルバム。
 

No-fuse

 
この浪花エクスプレスのデビュー盤の出来は、カシオペアやスクエアのデビュー盤の出来を凌ぐ。繰り出されてくるフレーズが、実に滑らかで耳に馴染む。非常に鍛錬され洗練された音。流麗とはちょっとニュアンスが違う、しっかり芯の入った、力感溢れるロックなフレーズ。それでいて、和フュージョン独特の乾いたグルーヴ感がジャジーに響く。

今の耳で聴くと、「浪花エクスプレス」の音は、和の「クロスオーバー&ジャズ・ロック」。ガッツリ根性の入った、鍛錬&洗練された、浪花エクスプレス独特の展開は、東京フュージョンには無い、唯一無二なもの。

収録されたどの曲も良い出来だが、やはり1曲目の「Believin」が印象深い。浪花エクスプレスの代表曲であり、浪花エクスプレスの個性がガッツリ反映された名曲&名演である。

1982年という、ジャズ界ではフュージョン・ブームが下降線を辿っていた時期でのデビューだったので、カシオペアやスクエアに比べて、かなり損をしている。明らかにメジャーになり損ねた、人気バンドになり損ねた感が強い。

逆にだからこそ、今の耳で聴いて、このデビュー盤の『No Fuse』は、和フュージョン・ジャズの名盤の一枚として、大いに評価できるのだ。この『No Fuse』は和フュージョンの名盤の一枚。フュージョン者にとっては、避けられないマストアイテムです。
 
 

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コメント

今年はあまりに酷暑で、せめてラテンフュージョンでも聴いて気を紛らわそうと、サーチしていたらマスターのお店にたどり着きました。読み応えのある記事の数々に圧倒されていますが、これからゆっくりと目を通していきます!
「No Fuse」大好きな一枚です。当時CasiopeaやTHE SQUAREにどっぷりでしたが、自分にとって「関西舐めたらあかんで!!」的な独自性、粘っくコテコテなのにチラッとスタイリッシュ、、とにかく当時の東京しか知らない自分にとって、とてつもない「地域性」を意識させられたのを思い出します。。清水興さんのアトランシアガーランドベースや、東原さんの正装(?)であるアロハシャツや素足で踏むキックペダル、岩見さんの顔ギター(もちろん激テク)、何より才能の塊である青柳さん、、確かに当時のフュージョンの"消費のされ方"、レコード会社の"売りたい"方向性とは異なっていたため「売れ損なった」感はありますが、その後「関西Soul」の確かな流れをしっかり作った、とても骨太なバンドだと思います。

長文、失礼しました。
なんか書いてるうちにいろいろと思い出してきて笑
これからも記事たのしみにしております!!

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