マクラフリンの初期の名盤です
ジャズ・エレギのイノベーター&レジェンドの一人、ジョン・マクラフリン。彼は、ギタリストのキャリアの中で、何度か、そのスタイルを大きく変えている。いわゆる「進化」するタイプのギタリストで、その「進化」の跡は、後継に対して、一つの「スタイル」として定着している。
John McLaughlin『My Goal's Beyond』(写真)。March 1971年3月、NYでの録音。John McLaughlin (ac-g), Charlie Haden (b), Jerry Goodman (vln), Mahalakshmi (tanpura), Dave Liebman (fl, ss), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Badal Roy (tabla)。
マクラフリンのソロ3作目。全編アコースティック・ ギターによる演奏がメイン。アルバム構成としては、LP時代のA面は、インド音楽への傾倒を露わにした、マクラフリンの新しいスタイルの演奏。マクラフリンの精神的指導者であるインドの導師、 シュリ・チンモイに捧げられている。B面は、マニアックなミュージシャンズ・チューンや自作曲を演奏している。
まず、当時のマクラフリンの最初の「進化」である、インド音楽への傾倒。とはいえ、完全にインド音楽している訳では無くて、インド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏と形容するのがしっくりくる。ただ、ジャズロックがメインの演奏に、インド音楽のフレーズとビートが濃厚に漂い、インド音楽とジャズロックの融合は「成功」している。
ジェリー・グッドマンのバイオリン、デイヴ・リーブマンのフルート&ソプラノ・サックスが効果的に、深淵で幽玄なスピリチュアルな響きを撒き散らし、バダル・ロイのタブラがインド音楽志向のリズム&ビートを一手に引き受ける。ヘイデンのベース、コブハムのドラム、モレイラのパーカッションが、ジャズロックなリズム&ビートをしっかりとキープする。
そんなインド音楽とジャズロックの「クロスオーバー」な演奏をバックに、マクラフリンのアコギがスピリチュアルに飛翔する。インド音楽のストレンジな響きに流されない、切れ味の良い、スピリチュアルなマクラフリンのアコギの響き。このマクラフリンのアコギがこのインド音楽の雰囲気濃厚な演奏をジャズロックに仕立て上げている。
LP時代のB面の演奏も実に興味深い。最初の1曲目「Goodbye Pork Pie Hat」は、英国ロックのオールド・ファンは懐かしさに駆られると思う。あのジェフ・ベックの名演の基になったであろう、このマクラフリンのアコギのパソーマンス。アレンジが後のジェフ・ベックの演奏とほとんど同じ。アコギでの切れ味良いスピリチュアルな弾き回しは、明らかにジェフ・ベックのエレギの演奏を上回る。
LP時代のB面は、2〜3分の小品ばかりだが、マクラフリンのアコギのパフォーマンスは申し分ない。このB面のアコギのパフォーマンスの優れた内容がマクラフリンの基本的個性であり、マクラフリンがジャズロック&クロスオーバー・ジャズのギター・レジェンドである所以だろう。ところどころ、コブハムによる様々なシンバルのアクセントが効果的に加わるところもなかなか「ニクい」アレンジである。
このアルバムでのジャズロック&クロスオーバー・ジャズでの「バイオリン」の導入は、英国のプログレッシヴ・ロックにも影響を与えた様で、ロバート・フリップ率いる、第3期キング・クリムゾンのバイオリンの導入にも繋がっている、と言われる。それも納得の「効果的なヴァイオリンの導入」も見事。
マクラフリンのエフェクトを駆使したエレギよりも、この盤でのアコギのパフォーマンスに、とことん感じ入ります。インド音楽への傾倒も興味深い内容ですが、僕は、この盤でのマクラフリンのアコギのパフォーマンスに、ギター・レジェンドとしての「凄み」をビンビンに感じます。
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