マクリーン流ハードバップの完成
1961年のジャキー・マクリーンは、マクリーン流のハードバップを完成させた年。アルト・サックスの吹きっぷり、演奏のイメージとアレンジ、どれもがマクリーン流にこなれて、マクリーン独特のアルト・サックスの音色と相まって、一聴してすぐに判る「マクリーン流」ハードバップな演奏を確立している。
Jackie Mclean『A Fickle Sonance』(写真左)。1961年10月26日の録音。ブルーノートの4089番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Tommy Turrentine (tp), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。
マクリーンのアルト・サックスと、珍しく、トニー・タレンタインのトランペットがフロント2管、これまた珍しくソニー・クラークがピアノを担当、ベースのワーレンとドラムのヒギンスはこのところの、マクリーンのお気に入りリズム隊。
1961年の録音なので、マクリーンは、まだ、モードやフリーには傾倒してはいない。アルト・サックスの吹きっぷりは、コルトレーンのストレートな吹き方を踏襲、シーツ・オブ・サウンドにも似た高速アドリブ・フレーズも吹きまくる、先進的なハードバップ志向の演奏。演奏内容の傾向としては、前リーダー作の『Bluesnik』の内容を継承している。そう、この『A Fickle Sonance』は、前リーダー作の『Bluesnik』と併せて、兄弟盤の様な位置付けで、一気に聴き通した方が判り易いかもしれない。
『A Fickle Sonance』の演奏自体の雰囲気は「先進的」。マイルスやコルトレーンが提示した「先鋭的」なハードバップを自分なりに消化して、従来のハードバップの成果を踏襲することなく、精度の高い、内容充実の「先進的」なハードバップを展開していて立派。モードに展開する前に、しっかりと自分なりのスタイルを固めた、マクリーン流のハードバップを確立して様は見事である。
サイドマンの演奏も充実している。トニー・タレンタインのトランペットはブリリアントでリリカルで切れ味の良い力感溢れるトランペットを聴かせてくれる。
ピアノのソニー・クラークも、マクリーンの志向に応じて、新しい響きのハードバップなバッキング・フレーズをガンガン繰り出している。これが、マクリーンの「先進的」なハードバップ・フレーズと相まって、爽快感溢れる、躍動感抜群のパフォーマンスを演出する。
マクリーンのアルト・サックスと、タレンタインのトランペットとのユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス、コール・アンド・レスポンス、どれをとっても極上の響き。ワーレンのベースとヒギンスのドラムも、通常のハードバップにはない、一癖も二癖もある、新しい響きを宿したリズム&ビートを供給していて「隅に置けない」。
マクリーン流の「先進的」ハードバップが詰まった名盤。マクリーンはこの盤を置き土産に、次作『Let Freedom Ring』で、モード&フリーに「挑戦」していく。マクリーンのハードバップの「マイルストーン的位置付け」の一枚。
実はこの『A Fickle Sonance』、2021年12月28日に鑑賞記事をアップしているのですが、今回、聴き直した折、印象がかなり違ったんで、今回、改めて鑑賞記事をアップし直しました。今回のこの鑑賞記事を最新としてお読みいただければ幸いです。
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