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2024年6月 3日 (月曜日)

聴かせる好企画盤『カルメン』

シビアで硬派で「即興が命」の純ジャズを聴き続けた合間、耳休めにウエストコースト・ジャズを聴くことが多い。

ウエストコースト・ジャズは、1950年代後半から1960年代全般にかけて、米国西海岸、ロスアンゼルス、サンフランシスコを中心に流行ったジャズの演奏トレンド。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演奏トレンドの一つ。

Barney Kessel『Modern Jazz Performances From Bizet's Opera Carmen』(写真左)。1958年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g, arr), André Previn (p), Victor Feldman (vib), Joe Mondragon (b), Shelly Manne (ds)。ここに、8人編成の管楽器がメインのコンボが付く。ジャズ白人3大ギタリストの一人、ウエスコースト・ジャズの代表的ギタリスト、バーニー・ケッセルのリーダー作。

ウエストコースト・ジャズを代表するメンバーで、オペラでお馴染みビゼーの「カルメン」をカヴァーした作品集である。ビゼーの「カルメン」からの編曲は、ケッセル自身が行っている。収録曲は以下の通り。

1)闘牛士の歌(Swingin' The Toreador)
2)セギディーリャ(A Pad On The Edge of Town)
3)お前、おれが好きなら(If You Dig Me)
4)恋は野の鳥(Free As A Bird)
5)行進曲(Viva El Toro!)
6)花の歌(Flowersville)
7)あんたのために踊るは(Carmen's Cool)
8)母の様子を教えておくれ(Like There's No Place Like)
9)ジプシーの歌(The Gypsy's Hip)
 

Barney-kesselcarmen  

 
こうやって、ジャズ化された曲を並べてみると、このビゼーの「カルメン」には、キャッチーなメロディーを持った、魅力的な曲が沢山あることが判る。また、これらをジャズに編曲した、ケッセルのアレンジ能力も素晴らしい。

演奏全体の雰囲気は明るくて楽しい内容。どこかで聴いたことのある、親しみのある、キャッチーなメロディーがジャズに乗って、演奏される。結構、俗っぽいメロディーを持った楽曲もあるのだが、優れたアレンジと演奏で、そんな俗っぽさをカバーしている。

この「カルメン」のカヴァー盤は、あくまで、ギターがメインの、ギターがフロントのパフォーマンス。管楽器のコンボがバックに付くが、ケッセルのギターの音は骨太でメロディアスなので、管楽器のコンボの音に、ケッセルのギターの音が埋もれることは無い。

プレヴィンのピアノの伴奏フレーズの妙が素晴らしい。フェルドマンのヴァイブは流麗で躍動感溢れメロディアス。マンの職人芸的、変幻自在のドラミング。バッキングを受け持つ、ウエストコースト・ジャズの名うての名手たちの演奏も優秀だが、あくまで、ケッセルのギターをサポートし、引き立てる役に徹していて立派だ。

1950年代には、米国の東西ジャズで、ミュージカルやクラシック、映画スコアのジャズ化が行われ、我が国では「キワモノ」として、硬派なジャズ者の方々からは敬遠される向きもあるが、このケッセルの『カルメン』は、キワモノとして、聴かず嫌いで敬遠するには惜しい、充実した内容をキープしている。

印象的なイラストのジャケットも良し。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演奏トレンド、ウエストコースト・ジャズの「好例」の一枚として、一聴をお勧めしたい好企画盤です。
 
 

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