« A&Mの ”カイとJ.J.” の名演 | トップページ | A&Mレコードのナシメント »

2024年5月18日 (土曜日)

A&Mの作るボサノヴァ・ジャズ

A&Mレコードの 3000 series の諸作は、リーダーを務めるジャズマンについては、錚々たるメンバーである。ハードバップ時代から活躍してきたジャズマンが、こぞって、このA&Mレコードの目指す「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」を実現する為に集ってきた。

バックを司るサイドマンも、ハードバップ時代からの一流どころが参加していて、若手のスタジオ・ミュージシャンにまじって、しっかりと存在感をアピールしている。皆、一流どころなので、テクニックは優秀、出てくるフレーズには歌心が溢れていて、演奏自体、内容があって、水準以上のレベルでのパフォーマンスを発揮している。当然、名盤、好盤の類のアルバムが目白押しである。

Walter Wanderley Set『When It Was Done』(写真左)。1968年12月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Walter Wanderley (org, el-harpsichord), José Marino (b), João Palma (ds), Lu Lu Ferreira (perc) がメイン・メンバーで、バックにオーケストラが入っている。

ブラジル出身のオルガン奏者、ウォルター・ワンダレイのリーダー作、ボサノヴァ・ジャズの名曲集になる。ワンダレイといえば「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われる。ブラジル出身のオルガニストであるが故、ボサノヴァの本質を突いたオルガンを弾きまくる。
 

Walter-wanderley-setwhen-it-was-done  

 
ボサノバはムード音楽では無い、ボサノヴァの本質は「サウダージ(郷愁、哀愁)」にある、意外と硬派な音楽なのだが、その辺りをワンダレーは、しっかり踏まえて、硬派で甘さに流れない、正統派な「コンテンポラリーなボサノヴァ・ジャズ」を展開している。

電子ハープシコードの音が、ちょっとチープな響きで気になるが、概ね、ワンダレイのキーボードについては、耳当たりは良いが、結構切れ味良く尖っていて、アルバム全体の雰囲気をグッと締めていて聴き応えがある。

バックのオーケストラは、あくまで、ワンダレイのキーボードの引き立て役。ベース、ドラム、パーカッションのリズム隊は、ボサノヴァのリズム&ビートを的確にワンダレイのキーボードに供給している。

演奏全体のリズム&ビートを含め、ボサノヴァ・ジャズとして破綻は全く無い。逆に、ボサノヴァのリズム&ビートに乗った、ワンダレイのオルガンは切れ味良く、真摯で迫力がある。決して、ムード・ジャズのオルガンでは無い。ワンダレイは「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われていたことを再認識する。

各曲毎のドン・セベスキーのアレンジも、ボサノヴァ・ジャズという特性を良く把握した、優れたアレンジで、アルバム全体の雰囲気をしっかりと引き締めている。

このワンダレイの『When It Was Done』は、A&Mレコードの「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のボサノヴァ・ジャズ」。さらに、ボサノヴァ・ジャズの名盤の一枚に上げても良い内容だと思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2024.01.07 更新

    ・西海岸ロックの雄、イーグルス・メンバーのソロ盤の
   記事をアップ。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2024.01.08 更新

  ・チューリップ『ぼくが作った愛のうた』『無限軌道』
   の記事をアップ。

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から13年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

 

 

« A&Mの ”カイとJ.J.” の名演 | トップページ | A&Mレコードのナシメント »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« A&Mの ”カイとJ.J.” の名演 | トップページ | A&Mレコードのナシメント »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー