A&Mの作るボサノヴァ・ジャズ
A&Mレコードの 3000 series の諸作は、リーダーを務めるジャズマンについては、錚々たるメンバーである。ハードバップ時代から活躍してきたジャズマンが、こぞって、このA&Mレコードの目指す「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のジャズ」を実現する為に集ってきた。
バックを司るサイドマンも、ハードバップ時代からの一流どころが参加していて、若手のスタジオ・ミュージシャンにまじって、しっかりと存在感をアピールしている。皆、一流どころなので、テクニックは優秀、出てくるフレーズには歌心が溢れていて、演奏自体、内容があって、水準以上のレベルでのパフォーマンスを発揮している。当然、名盤、好盤の類のアルバムが目白押しである。
Walter Wanderley Set『When It Was Done』(写真左)。1968年12月の録音。A&Mレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Walter Wanderley (org, el-harpsichord), José Marino (b), João Palma (ds), Lu Lu Ferreira (perc) がメイン・メンバーで、バックにオーケストラが入っている。
ブラジル出身のオルガン奏者、ウォルター・ワンダレイのリーダー作、ボサノヴァ・ジャズの名曲集になる。ワンダレイといえば「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われる。ブラジル出身のオルガニストであるが故、ボサノヴァの本質を突いたオルガンを弾きまくる。
ボサノバはムード音楽では無い、ボサノヴァの本質は「サウダージ(郷愁、哀愁)」にある、意外と硬派な音楽なのだが、その辺りをワンダレーは、しっかり踏まえて、硬派で甘さに流れない、正統派な「コンテンポラリーなボサノヴァ・ジャズ」を展開している。
電子ハープシコードの音が、ちょっとチープな響きで気になるが、概ね、ワンダレイのキーボードについては、耳当たりは良いが、結構切れ味良く尖っていて、アルバム全体の雰囲気をグッと締めていて聴き応えがある。
バックのオーケストラは、あくまで、ワンダレイのキーボードの引き立て役。ベース、ドラム、パーカッションのリズム隊は、ボサノヴァのリズム&ビートを的確にワンダレイのキーボードに供給している。
演奏全体のリズム&ビートを含め、ボサノヴァ・ジャズとして破綻は全く無い。逆に、ボサノヴァのリズム&ビートに乗った、ワンダレイのオルガンは切れ味良く、真摯で迫力がある。決して、ムード・ジャズのオルガンでは無い。ワンダレイは「ボサノヴァ・オルガンの第一人者」と言われていたことを再認識する。
各曲毎のドン・セベスキーのアレンジも、ボサノヴァ・ジャズという特性を良く把握した、優れたアレンジで、アルバム全体の雰囲気をしっかりと引き締めている。
このワンダレイの『When It Was Done』は、A&Mレコードの「上質でコンテンポラリーなイージーリスニング志向のボサノヴァ・ジャズ」。さらに、ボサノヴァ・ジャズの名盤の一枚に上げても良い内容だと思う。
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