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2024年5月16日 (木曜日)

”A&Mのデスモンド” の傑作盤

故あって、A&Mレコードの3000 series のアルバムを聴き直している。A&Mレコードの3000 series の諸作は、クロスオーバー・ジャズの範疇だと思うが、それぞれのアルバムのパーソネルを見渡すと、大方、ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンを起用している。

ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンが、優れたアレンジに乗って、エレ・ジャズをバックに、ジャズオケをバックに、聴き心地の良い、聴き応えのある、イージーリスニング志向のジャズをやる。しかし、イージーリスニング志向だからと言って、聴くに優しい、甘々のジャズかと言えば、そうでは無い。

さすが、ハードバップ時代から活躍してきた一流ジャズマンである。それぞれの演奏のレベルは高く、一本しっかりと筋が通っている。意外と硬派な「イージーリスニング志向のコンテンポラリー・ジャズ」を展開しているから隅に置けない。特に、A&Mレコードの3000 series のアルバムを聴いてみると、それがよく判る。

Paul Desmond『Summertime』(写真左)。Paul Desmond (as), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Leo Morris = Idris Muhammad (ds) がコア・メンバー。ここに、曲毎にゲストが入る。主だったところでは、Mike Mainieri (vib), Joe Venuto (marimba), Airto Moreira (perc), ギターはリズム楽器に徹している。そして、ホーンがメインのジャズオケがバックに控える。アレンジは、Don Sebesky。

「Someday My Prince Will Come」や「Autumn Leaves」など、有名スタンダード曲が選曲され、レノン=マッカートニーの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のカバーがあったりで、これだけで、甘々のイージーリスニング・ジャズと判断して聴くのを止めてしまうジャズ者の方もいるだろう。
 

Paul-desmondsummertime  

 
しかし、聴けば判るが、有名スタンダード曲については、耳新しい、新鮮なアレンジが施され、手垢が付いた感じが全くない。そんな優れたアレンジの下、デスモンドの柔らかで硬派なアルト・サックスが、唄うが如く、囁くが如くの素敵なフレーズを吹き上げる。

レノン=マッカートニーの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」のカバーだって、囁くが如くのテーマ部のアレンジも秀逸、アドリブ部については、メインストリーム・ジャズのど真ん中を行く、素晴らしいアドリブ・パフォーマンスを展開する。これは、イージーリスニング志向では全く無い。これは「純ジャズ」なアドリブである。

ラストの、これまた、有名スタンダード曲、タイトル曲の「Summertime」については、これが凄い。バックのリズム・セクションに、ハンコックのピアノ、ロンのベース、モリスのドラム。そこに、フロント1管で、デスモンドのアルト・サックス。そして、出てくる演奏は、ストイックな変拍子&モード・ジャズ。

ハンコックのモーダル・ピアノが迫力満点、そこに、ロンのベースが呼応するように追従する。モリス(イドリス・ムハンマド)のドラムが切れ味の良い変拍子を叩き出す。そこに、耳新しい、モーダルなアルト・サックスのデスモンドが吹きまくる。この『Summertime』は、立派な「メインストリームな純ジャズ」である。

全編に漂う雰囲気は「硬派なイージーリスニング志向のコンテンポラリー・ジャズ」、時々「メインストリームな純ジャズ」。収録曲の曲名見ると、ちょっと聴くのをためらってしまうかもしれないが、この盤、デスモンドの傑作の一枚だと思う。
 
 

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コメント

オブラディ・オブラダの主人公がデスモンドだから、洒落で取り上げなくちゃと思ったんだろうけど、よくこんなジャズから遠い曲を取り上げたよなあ。(笑)
他に誰かジャズでカバーしてるんだろうか?

My Favorite Thingsはジャズになっても
ドレミの歌をジャズでやるのは、結構難しいんだろうね。

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