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2024年5月 3日 (金曜日)

最後の録音リアタイのリーダー作

『The Flip』のリリースにて、ブルーノートを離れたハンク・モブレー。『The Flip』の録音は1969年7月12日。それから2年7か月、モブレーは短命のコブルストーン・レーベルにリーダー作を吹き込む。しかし、このリーダー作が、録音リアルタイムでリリースされた最後のモブレーのリーダー作になってしまった。

Hank Mobley『Breakthrough!』(写真)。1972年2月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Charles Davis (ss, bs), Cedar Walton (p, el-p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモブレーのテナーと、デイヴィスのソプラノ&バリトン・サックスの2管フロント。バックは、ウォルトンのピアノ、ジョーンズのベース、非銀子のドラムの当時、流行のど真ん中を行く活きの良いリズム・セクション。

まず、このリーダー作は全編、ハードバップで埋められている。それも、1972年という、その時代の音楽背景を踏まえたハードバップ。ロックやソウルの台頭に煽られた、ポップで根明な、聴いてノリが良く判り易いハードバップ。しかも、全6曲中、ブルーノート時代は作曲の優れた才能を活かして、アルバム全曲中、ほぼモブレーの自作曲で埋められていたのに、この盤では、モブレーの自作曲は2曲のみ。収録曲から感じるモブレーの個性はグッと薄まった。
 

Hank-mobleybreakthrough

 
しかも、ブルーノート時代の後半、必ず冒頭を飾っていた「ジャズ・ロック」な曲は見当たらない。やはり、ブルーノート時代の後半のモブレーのジャズロック曲は、アルバムの売り上げを目論み、ジャズ人気の維持を狙ったものだったのだろう。しかし、ブルーノートを離れて、モブレーはジャズロックには手を染めていない。

モブレーのテナーはストレートに、軽くモーダルに、ハードバップなフレーズを吹きまくる。バックのリズム・セクションは、ウォルトンのピアノがモーダルな展開でバッキングしているのだが、モブレーは気にかけず、ハードバップ時代のコード展開に則ったアドリブ展開で吹きまくる。やはりモブレーの本質はハードバップだったのだろう。従前の中音域中心の歌心溢れる流麗な、基本モーダルなフレーズは全く変わっていない。

迫力あるモブレーのブロウと、ウォルトンのモーダルなピアノが魅力の佳作。まだまだ元気なモブレーだが、この盤を最後に、録音リアルタイムのリーダー作のリリースは途絶える。ヘビースモーカーだったモブレーは肺に問題を抱え(テナー奏者としては致命的)、1970年代半ばに引退を余儀なくされる。加えて、引退後はホームレスの問題も抱えることになる。そして、1986年5月30日、肺炎にて55歳で逝去する。あまりに早過ぎる逝去であった。
 
 

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