伝説ベース、ロンの初リーダー作
ジャズ演奏におけるベースの役割は大きい。まず、演奏全体の曲のボトムをしっかり支える。次に、曲のルート音をしっかり押さえて、曲全体の調性を整える。そして、リズム隊として、ドラムとピアノと共同で、曲のリズム&ビートを供給する。
「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第」というが、ベースもドラマーと同様に、ジャズ演奏における役割は大きい。「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもベーシスト次第」と言っても過言ではない。
ベースはフロント楽器の演奏のバックで、ベースは音程を出せる楽器なので、低音域のルート音をガッチリ押さえ、フレーズで演奏全体のボトムをしっかり支えることが出来る。ベースは低音域の音程、フレーズでリズム&ビートを供給する。ドラムはアタック音でリズム&ビートを供給する。
Ron Carter『Where?』(写真左)。1961年6月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b, cello), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Mal Waldron (p), George Duvivier (b), Charlie Persip (ds)。モダン・ベーシストのレジェンド、ロン・カーターの初リーダー作である。
ロンが初リーダー作で選んだジャズは「エリック・ドルフィー」。エリック・ドルフィーの唯一無二のモード・ジャズをロンのベースが支え、曲全体の調整を整える役割を担う。それが、ロンの選んだ、自らの初リーダー作のコンセプト。
ドルフィーの高速捻れまくりエモーショナルな、かっ飛んだ唯一無二のフレーズの洪水な演奏の「低音域のルート音」をガッチリ押さえ、ドルフィーの個性出まくりのフレーズの「ボトム」をしっかり支える。そして、ロン独特のベースのフレーズでリズム&ビートを供給する。
ドルフィーの高速フレーズに対応するため、アコースティック・ベースを、別のベーシスト、デュビビエにお願いして、ロン自身はアコースティック・ベースをチェロに持ち替えて、高速速弾きな、低音域の音程、フレーズでリズム&ビートを供給し、演奏全体の曲のボトムをしっかり支える。
マル・ウォルドロンが、ロンにしっかりと寄り添う様に、哀愁感溢れるピアノを弾きまくる。ロンのベースと共同で、高速フレーズで演奏全体のボトムをしっかり支える。そして、マルのピアノ、パーシップのドラムと共同で、曲のリズム&ビートを供給する。ドルフィーの唯一無二のモード・ジャズに、ピッタリと寄り添う、一期一会のリズム・セクション。
このドルフィーの「高速捻れまくりエモーショナルな、かっ飛んだ唯一無二のフレーズの洪水な演奏」に追従し、鼓舞し、ガッチリ支える一期一会のリズム・セクションに恵まれたからこそ、この盤におけるドルフィーの快演がある。
ピックアップでベース音を増幅した時代は、ピッチが合っていない、音がボワンボワンで締まりがない、など、低評価がつきまとった時期もあったが、ベースが生音でピッチをきっちり合わせたロンのベースは、やはり優れている。ロンのベースが絶妙にリズム・セクションを牽引し、ドルフィーがそんな相性バッチリのリズム&ビートに乗って疾走する。
「演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもベーシスト次第」ということを改めて教えてくれる、ロンの初リーダー作である。
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