Azymuth『Aguia Não Come Mosca』
我がバーチャル音楽喫茶「松和」は、フュージョン・ジャズも分け隔てせず範疇に入れて、ジャズ盤の感想を掲載している。フュージョン・ジャズも「良い音楽」と「悪い音楽」とがあって、当然、「良い音楽」なアルバムも沢山ある。決して、「時代の徒花」などと突き放すことはしていない。
今月の最新号、レコード・コレクターズ 2024年5月号の「【特集】 フュージョン・ベスト100 洋楽編」を読んでいて、ベスト100に選ばれたアルバムは、どれもが僕にとっては「良い音楽」で、やっぱフュージョン・ジャズも捨てたもんやないな、とホクホクしながら読み進めていて、ふと目が止まった。「Azymuth(アジムス)」である。
アジムスについては、当ブログでは記事として扱ったことが無かった。しかし、アジムスは、特に我が国における人気の高かったフュージョン・バンドとして無視することは出来ない。これはいかん、と、もう一度、アジムスの全アルバムを聴き直すことにした。
Azymuth『Aguia Não Come Mosca』(写真左)。1977年の作品。邦題『涼風』 。ちなみにパーソネルは、Alexandre Malheiros (b, g, vo), José Roberto Bertrami (key, vo), Nenem (cuica), Ivan Miguel (Mamão) (ds, perc, vo), Ariovaldo (ganzá, triangle, tamborim), Jorginho (pandeiro), Doutor (repinique), Paulo Moura (ss, tracks: A2)。
ブラジリアン・フュージョンの雄、未だに愛され続ける人気グループ「アジムス」のセカンド盤。NHK-FMの名番組:クロスオーバー・イレブンのオープニング・テーマに使われていた「Voo Sobre O Horizonte」を収録している。
このクロスオーバー・イレブンのオープニングについては、当初は、この盤の冒頭に収録されている「Voo Sobre O Horizonte」を使用、米国デビュー盤となった次作『Light as a Feather』がリリースされた後、4曲目「Fly Over The Horizon(Fly Over The Horizon(Voo Sobre O Horizonte))」に移行している。僕としては、どっちも懐かしい「クロスオーバー・イレブン」のオープニング曲である。
フュージョン・ジャズを「融合」が前提の音楽とするなら、このアジムスの音世界は明らかにフュージョン・ジャズである。エレクトリックなジャズ・ロックとブラジリアン・ミュージックの「融合」。フレーズはボサノバの如くの「軽快で爽快なソフト&メロウ」。米国フュージョンの「ソフト&メロウ」とはテイストが全く異なる。
リズム&ビートは、サンバなどブラジル音楽で活用される楽器が入っていて、米国フュージョンとはテイストが異なる、明らかにブラジリアンなリズム&ビートが爽やかな印象を残していて心地良い。爽快感、軽快感溢れる、ブラジリアンな8ビートのグルーヴ感が独特の感覚。このグルーヴ感が「アジムス」の独特の個性になっている。
キーボードの使い方が独特で抜群に良い雰囲気。シンセの使い方のセンスが良い。弾き過ぎず、それでいてしんせっぽさは濃厚。それでいて重くならず、ブラジリアン・ミュージックらしい軽妙さがある。漂うが如きローズの揺らいだ響きも心地良く、そよ風にたなびくヴヴェールの様なストリングス・シンセの厚みのあるユニゾン&ハーモニー。このキーボードの使い方も「アジムス」の独特の個性。
このアジムスのセカンド盤は、ブラジル・ミュージックらしい、仄かな熱気とビートもしっかりと「融合」されていて、次作以降、徐々にアメリカン・フュージョンぽい部分が増えていく中で、明快にコッテコテな「ブラジリアン・フュージョン」を味わうことの出来る、フュージョン名盤だと思う。
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これこれ、これです。こちらも見つけました。『Light as a Feather』にコメントしましたが、私にとってのアジムスの始まりはこちらです。クロスオーバーイレブンのオープニングも去ることながらエンディングに流れたタルジ。アジムスナンバーで挟んじゃうって。相当な推しですよね。タルジはショーターのネイティブダンサーでミントンナシメントが歌っていたナンバー。とても大好きで大好きで。まさかこれがカバーされるとは。それもこんな感じに。ネイティブではなく心地いいブラジルフュージョンナンバーに生まれ変わってる。疾走感と抑揚がドラマチック。なんとも言えない心地いいアレンジが施されていて甲乙つけられません。エレピに深い揺らぎのステレオ感が加えられているのも夢心地に繋がっちゃう。ブラジリアンミュージックってアレンジが何だか大袈裟だな~って感じてしまうものも少なくないのですが、でも決して嫌いじゃありません。ある意味それが個性にも繋がっていてすんなり受け入れられちゃう不思議さがあります。ウヮンウヮンと左右に揺らぎながらサスティンのかかるサウンドにいつの間にか身体を委ねてるっていうのが醍醐味だと感じる大好きな1枚です。
投稿: HT | 2024年6月15日 (土曜日) 20時35分