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2024年3月 2日 (土曜日)

活動前期の傑作『Consciousness』

最近やっと、パット・マルティーノ(Pat Martino)をしっかり聴き直している。しっかりディスコグラフィーのリストを作って、聴いたアルバム、未聴のアルバム、入手不可能なアルバムに分けて、聴いたアルバムについては、当ブログに記事化されていないものは順に記事化、未聴のアルバムは時間を見つけては聴き直している。

パット・マルティーノは、1944年8月生まれ。2021年11月、惜しくも77歳で逝去している。1967年の初リーダー作『El Hombre』から頭角を表し、1年に1枚のペースで順調にリーダー作をリリース、純ジャズ逆境の時代に、メインストリーム志向の「クロスオーバー・バップ」なエレギで、ジャズ・ギターの第一線を走っていた。

が、1976年、脳動静脈奇形による脳動脈瘤に倒れ、1980年に手術の結果、記憶を失う。しかし、家族の支え、コンピューターによる支援、自身のアルバムの聴取等、の努力で以前の記憶を回復。1987年の『The Return』で奇跡的にカムバックを果たす。以降、2004年には『ダウン・ビート』誌の「Guitar Player of the Year」を獲得するなど、第一線で活躍した。

Pat Martino『Consciousness』(写真左)。1974年10月7日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Pat Martino (g), Eddie Green (el-p, perc), Tyrone Brown (el-b), Sherman Ferguson (ds, perc)。ギターのマルティーノがリーダー&フロント、エレピ、エレベ、ドラムのエレ・リズム隊をバックにしたカルテット編成。

エレ・リズム隊のメンバー名には全く馴染みが無い。アルバム全体の雰囲気は、エレ・ジャズを基本に8ビートがメインの「クロスオーバー・バップ」な演奏の数々。
 

Pat-martinoconsciousness

 
マルティーノのエレギ・フレーズには、サイケデリック・ロックな雰囲気や、プログレッシヴ・ロックな雰囲気が漂っていて、フレーズの雰囲気もアグレッシヴで切れ味良好。それまでにない、新しい響きのエレ・ジャズ・ギターであった。

収録曲を見渡すと、これが今の感覚からするとユニークで、コルトレーンのモード・ジャズ「Impressions」、ゴルソンのファンキー・ジャズの名曲「Along Came Betty」が収録されている。このモード・ジャズ、ファンキー・ジャズの名曲を、バリバリとバップなエレギで弾きまくっている。フレーズの雰囲気は明らかに「バップ」で、これがマルティーノのギターの最大の個性である。

特に、冒頭の「Impressions」と、6曲目のマルティーノ作の「On the Stairs」の弾きまくりは凄い。鬼気迫るが如く迫力満点、疾走感溢れる、かっ飛ぶが如くのフレーズで圧倒する。

3曲目のマルティーノの自作曲「Passata on Guitar」と、7曲目のジョニ・ミッチェルの名曲「Both Sides, Now(青春の光と影)」では、テクニックの確かさ、そして、従来の「バップ」とは異なる、1970年代にECMレーベルを中心に現れ出た「ニュー・ジャズ」志向のギターの響きと静寂で透明感のあるソロ・パフォーマンスが新鮮で個性的で絶品。

1970年代以降の「ニュー・ジャズ」志向のジャズ・ギタリストの中でも、先頭集団に位置するパット・マルティーノ。この『Consciousness』は、1976年、脳動脈瘤に倒れるまでの「マルティーノ活動前期」の傑作の一枚。とにかく、まあ、凄まじいテクニックと唯一無二のソロ・パフォーマンス、聴きどころ満載です。
 
 

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