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2024年3月25日 (月曜日)

聴かせる Jimmy Smith Trio + LD

1950年代から1960年代のブルーノート・レーベルは、プロデュースが大変優れていると感じる。セッションのジャズマンのブッキングなど、その対象となるリーダー作が、どの様な「志向」の演奏内容にするかによって、メンバーを厳選している。そして、その演奏の「志向」に則った演奏を実現する。このブルーノートの優れたプロデュースが数々の名盤を生み出している。

『Jimmy Smith Trio + LD』(写真左)。1957年7月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Lou Donaldson (as, tracks 1–2, 4, 6), Eddie McFadden (g), Donald Bailey (ds)。当時の売れっ子オルガニスト、ジミー・スミスのトリオに、アルト・サックスのベテラン職人、ルー・ドナルドソン(以降「ルーさん」)がフロント管として客演する格好のカルテット編成。

録音時点で、ジミー・スミスは29歳、ルーさんは31歳。両人とも実績十分の中堅ジャズマン。どちらも職人気質のジャズマンでプライドも高く、自分が一番前に出たがる。いわゆる「一国一城の主」タイプで、同じレベルのジャズマン同士、対等な立場での共演は好まないタイプなんだが、この盤では一期一会の共演が実現している。

スミス、ルーさん、どちらも前に出たがるタイプみたいなんだが、この盤では「前へ出たがり」同士がぶつかることなく、お互いの音をしっかり聴きながらの、心地良いテンポ、雰囲気のインタープレイが展開されている。ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いオルガン・ジャズを展開している。
 

Jimmy-smith-trio-ld

 
スミスのオルガンは、特徴である「切れ味の良い攻撃的な」オルガンを封印、ルーさんのアルト・サックスのバッキングに徹している。自分のソロの番になっても、オルガンのボリュームを上げて、ガンガンに弾きまくることはない。あくまで、ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いオルガンを弾き進める。

ルーさんのアルト・サックスは、お得意の熱量の高いアグレッシブな「ビ・バップ」風の吹き回しは封印、スミスのオルガンのバッキングを損なうことなく、スミスのオルガンに歩調を合わせる様に、ジェントルなトーンで、流麗でファンキーな、とても聴き心地の良いアルト・サックスを吹き進める。

スミス、ルーさん共に、双方の一番の「持ち味」を封印し、グループサウンズ優先、底に小粋なファンクネスを忍ばせつつ、ムーディーで流麗なオルガン・ジャズを展開している。アレンジも優秀で、まるで、ウエストコースト・ジャズにおける上質のオルガン・ジャズの様な雰囲気。いわゆる「聴かせる」オルガン・ジャズとして、聴き手にしっかりアピールする。

しかし、この盤、録音当時は「お蔵入り」。当時のブルーノートお得意の「理由不明のお蔵入り」盤となっている。今でもなぜお蔵入りなのかが良く判らない。それでも、1985年、我が国においてのみ、発掘リリースされ、今ではサブスク・サイトでも鑑賞することが出来る。この盤、後の「イージーリスニングなソウル・ジャズ」としても愛聴することが出来る優れもの。発掘リリースされて良かった、と改めて思う、今日この頃である。
 
 

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