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2024年1月23日 (火曜日)

名盤『Light As A Feather』再聴

大傑作『Return To Forever』の録音が1972年2月、リリースが1972年9月。次作の録音が1972年10月。『Return To Forever』のアルバムとしての出来と評判を確認して、満を持しての次作の録音である。この次作、チックの、そして、バンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)」の揺るぎない自信が満ち溢れた傑作に仕上がった。

Chick Corea & Return To Forever『Light As A Feather』(写真)。1972年10月8, 15日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (el-p, Fender Rhodes), Stanley Clarke (b), Flora Purim (vo, perc), Joe Farrell (ts, ss, fl), Airto Moreira (ds, perc)。チック・コリア率いる「リターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)」の2枚目のアルバム。

タイトルの「Light As A Feather」は直訳すると「羽のように軽い」。前作『Return To Forever』で提示された、リリカルでメロディアスなユートピア志向のサウンドをメインとした「クロスオーバーなエレ・ジャズ」をベースに、ポップでメロディアスな面を全面に押し出した音世界。つまり、この盤に詰まっているのは「羽のように軽い」クロスオーバー・サウンドである。

評論家の方々やジャズ・ファンの方で『Light as a Feather』は、前作『Return to Forever』と比べてポップになって、神秘性、緊張感が薄れて「イマイチ」なんて言われることがあるが、的はずれも甚だしい。そもそも、アルバム・コンセプトが違う。チックがこのRTFで表現するサウンドはバリエーション豊かで圧倒的に幅広。安易に前作のサウンドを踏襲することはしないだろう。

当盤のコンセプトは「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向である。そう解釈すればこの盤の評価は座りが良くなる。そして、この「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向を濃厚に表現しているのが、チックの弾く「フェンダー・ローズ」である。チックの弾くフェンダー・ローズの音色・フレーズが、この盤の音世界の志向を決定付けている。
 

Chick-corea-return-to-foreverlight-as-a-

 
そもそも、以前より、チックのフェンダー・ローズは凄い。ローズにはローズなりの弾き方というものがあって、ローズをアコピのように弾いても何の意味も無い。コリアは、ローズならではの、ローズの特性を活かした弾き方が出来る第一人者である。

かのマイルスが電気化していった時、ローズをアコピの様にしか弾けない(弾かない?)ハービーに代わって、マイルス・グループのレギュラーとなったのがチック。あのマイルスが、チックのローズの弾き方にはたいそう満足したというから凄い。確かに、ローズって、その音の表現という面で、こんなに可能性を秘めた楽器だったんだ、とチックの演奏を聴いて、強く思ったのを覚えている。

そんなローズの幅のある表現の中で、この盤では、チックはローズの「ポップでメロディアスな表現」を引き出し、「羽のように軽い」クロスオーバー・ジャズ志向のフレーズを弾きまくる。冒頭「You're Everything」から「Light as a Feather「Captain Marvel」「500 Miles High」「Children's Song」と、チックのポップでメロディアスなローズの響き、フレーズが満載である。

そして、極めつけは、何と言っても、ラストの名曲・名演「Spain」。「アランフェス協奏曲」をイントロに用いた、スパニッシュな雰囲気満載の人気曲。フローラ・プリムの爽やかで神秘的な歌声と、チックの硬軟自在、緩急自在、変幻自在の「ポップでメロディアスな」ローズの弾きっぷりが堪らない。

この『Light As A Feather』は「演奏の親しみやすさ」と「バンド全体の演奏能力の高さ」がバランス良くミックスされた、ポップでメロディアスなクロスオーバー・ジャズ。前作の『Return to Forever』は「硬」、当作の『Light As A Feather』は「軟」。チックは自らの新しい音志向を2枚のアルバムで「硬軟」の双方向から表現した、と言える。見事である。
 
 

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