小沼ようすけ『Jam Ka Deux』
21世紀に入ってから頭角を表した、優れた日本人ジャズ・ギタリストの一人「小沼ようすけ(おぬま、と読む)」。1974年生まれ。今年で49歳になる。秋田県能代市出身。ジャズの世界でいけば、若手と言うにはちょっと歳は取っていて「中堅」レベルの存在。心身共々やっと落ち着いて、自らの個性を最大限発揮出来る年代である。
ギターの音の個性とは、エッジの丸いマイルドな音色。それもそのはず。ピックを使わないフィンガー・ピッカーとのこと。それでいて硬質な切れ味の良い音。ネットの情報を見れば、ギブソン・ES-275を愛用しているとのこと。
小沼ようすけ『Jam Ka Deux』(写真左)。2016年の作品。ちなみにパーソネルは、Yosuke Onuma (g), Reggie Washington (b), Arnaud Dolmen (ds, ka & vo), Olivier Juste, Sonny Troup (ka), Grgory Privat (p & Rhodes), Herv? Samb, Jacques Schwarz-bart (g), Joe Powers (harmonica), Simone Schwarz-bart (poetry reading)。
カリブ海に浮かぶ、フランス海外県グアドループの民族リズム「グオッカ」を採り入れた『Jam Ka』(2010)の続編。5年の歳月を経て、オリジナル・メンバーが再集結。
ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音作りが新鮮。この盤を聴いていて、ウエザー・リポートの3rd.盤『Sweetnighter』や、4th.盤『Mysterious Traveller』、5th.盤『Tale Spinnin'』辺りの音世界を想起した。キーボードがメインではない、小沼のこの盤は、ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」。
担当楽器の欄に「ka」とある。「Ka」とは、カリブ海の島グアドループの民族音楽「グオッカ・ドラム」のことで、この「Ka」がパーカッシヴな独特な音を出す。これが実にユニーク。この「Ka」の音、どうも癖になる(笑)。打楽器好きには堪らない。この「グオッカ・ドラム」の音が、この盤の音世界のワールド・ミュージック志向をより濃厚にしている。
メインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音。フレーズが聴きやすく耳当たりが良いので、フュージョン・ジャズかな、と思って聴くが、リズム&ビートとアドリブ部の展開がジャジー。ギターの音が、しっかり芯は入っていて、マイルドで心地良い。そして、フェンダー・ローズの音が良い雰囲気を醸し出す。カリビアンな音の響きがとても爽やかで印象的。今までのコンテンポラリーなエレ・ジャズの中で「ありそうで無い」、新しい響きを宿したパフォーマンス。
ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」と言えば、パット・メセニーを想起するが、メセニーの様な「ネイチャー志向」ではない。小沼の音世界は「カリビアン・ミュージック志向」であり、「シーサイド志向」である。この音世界って、今までのジャズに「ありそうで無い」。
今までのジャズにありそうで無い、小沼独特の音世界である「Jam Ka」の続編。今までに聴いたことの無いジャズ・ギターの音にあふれている。何度も聴き直したくなるような、新しい音世界がこの盤に詰まっている。
前作『Jam Ka』の音世界を、よりワールド・ミュージック志向を色濃くし、コンテンポラリーなジャズ度合いを色濃くした『Jam Ka Deux』。僕はこの『Jam Ka Deux』は通過点と感じている。次の「Jam Ka」盤では、このワールド・ミュージック志向とコンテンポラリーなジャズ度合いを、さらに高めた音世界を聴かせてくれるのだろうか。大いに楽しみである。
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