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2023年11月16日 (木曜日)

クリスマスの喧嘩セッション再び

ジャズには、伝説めいた「逸話」が沢山ある。それぞれ、関係者や当事者の証言から「真実」とされる逸話もあれば、関係者や当事者の証言が全く違う「作り話」な逸話もある。それでも、それぞれの「逸話」は、ジャズならではの話がほとんどで、ジャズやジャズに関係する人達が、いかに人間っぽくて温かでユニークなのか、が良く判る。

マイルス・ディヴィスの、そんな「逸話」の筆頭に「クリスマス・セッションでの喧嘩セッション」という話がある。マイルスが先輩のモンクに「俺のバックでピアノを弾くな」と言い放ち、モンクはそれが面白くなくて途中でバッキングを取り止め、スタジオ内では一触即発の雰囲気に包まれたという伝説。「マイルスとモンクの喧嘩セッション」としても有名だったんだが、当の本人や当時の関係者の証言から、この話は全くの作り話ということで落ち着いている。

『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』(写真左)。1954年12月24日の録音。3曲目の「'Round Midnight」だけが、1956年10月26日の録音。かの有名なプレスティッジ・レーベルでの「マイルスのマラソンセッション」の音源からの1曲。これが、このアルバムのど真ん中に配置されている。演奏内容は当然良いのだが、他の「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」の演奏とは全く雰囲気が異なる。プレスティッジらしい「暴挙」である。

全5曲中、3曲目の「'Round Midnight」を除く4曲が1954年12月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。これって、先にご紹介した『Bags' Groove』の、タイトル曲のTake1, Take2と同じ。

つまり、「Bags' Groove」のTake1, Take2と、この『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』から「'Round Midnight」を除いた残り4曲が1954年12月24日の録音。この6曲が「真のクリスマス・セッション」になる。

結論から言うと、このマイルスとモンクのクリスマス・セッションについては、「Bags' Groove」のTake1, Take2が突出して出来が良く、次いで、モンク自身の作で、マイルスも気合を入れて吹いている「Bemsha Swing」。この3曲が良い。

問題の「The Man I Love (Take 2)」。この録音に入る前に、マイルスはモンクに、彼が作曲した「ベムシャ・スイング」以外は、自分の即興パートでのピアノのバッキングはやめてくれと言ったという。モンクはそれを忠実に守っただけ。そう解釈すると、この演奏は名演である。
 

Miles-davis-and-the-modern-jazz-giants

 
とにかく、冒頭のイントロ部分から、ミルトの透明感溢れる、耽美的でジャジーなヴァイブがテンションを高め、テーマを奏でるマイルスのクールでリリカルなトランペットが素晴らしい。バックキングをつける、モンク=ヒース=クラークのリズム隊も、テンションの高い、ブルージーで堅実なリズム&ビートを刻む。

ここでもモンクのコンピングは、いかにもモンクらしくて、とてもユニ0区。ただ、このモンクらしいコンピングがバックに付くと、あまりにコンピングがユニークすぎて、この耽美的なバラードにおけるアドリブ・パートが吹き難い。

マイルスの判断は正しかった。この「The Man I Love (Take 2)」でのマイルスのアドリブ・パートのクールな吹奏は素晴らしい。そんなマイルスのアドリブがクッキリ浮かび出る。

「Bemsha Swing」も良い。モンクの手になる曲が故に、モンクは活き活きとバッキングする。そのモンクの活き活きとした個性的なピアノをバックに、リリカルでクールなマイルスとミルトの流れるようなフレーズが展開される。この違和感漂う不思議な演奏が実に魅力的。

逆に、ラストに入っている「The Man I Love (Take 1)」は出来はイマイチ。これはアルバムに収録しなくてもよかったのでは、と思う。名演の「The Man I Love (Take 2)」の前の練習テイク的位置づけの演奏。これは無くても良かったなあ、と思う。

それより、この「The Man I Love (Take 1)」を除いて、「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」と呼ばれる音源で固めて、『Bags' Groove』のタイトル曲の2テイクと、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』の「The Man I Love (Take 2)」「Swing Spring」「Bemsha Swing」の5曲で、ミルト・ジャクソンを含む「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」を一枚のアルバムとしてまとめてリリースしなかったのかが不思議。

『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』は、同一パーソネルの『Bags' Groove』のタイトル曲の2テイクと合わせて聴くと、このセッションが如何に優れた内容のセッションなのかが良く判る。但し、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』のど真ん中にいる「'Round Midnight」は必ず「除いて」、である(笑)。
 
 

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