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2023年11月 7日 (火曜日)

マイルスの『Collectors’ Items』

プレスティッジ・レーベルは、セッションを録音するだけ録音しておいて、そのストックした音源の中から、感覚で収録曲をチョイスし、その感覚でチョイスした演奏曲を寄せ集めて、LPフォーマットに収めて、該当するジャズマンのリーダー作をリリースする、という、ジャズという音楽の性格上、好ましくないアルバムの制作をしていた。

ジャズは即興と進化が個性の音楽ジャンルなので、そのセッションが録音された年月日がとても重要になる。そのジャズマンの経歴の中の「どの時期」の、「どんな環境下」での、「どんなメンバーとの」セッションだったのか。それによって、演奏内容や雰囲気は変わる、と言っていい。ポップスやロックの様に、演奏自体が譜面に落とされていて、その演奏は何回演奏しても、何時演奏しても、その内容はほとんど変わらない、ということはジャズにはない。

Miles Davis『Collectors' Items』(写真左)。プレスティッジお得意の2つのセッションの寄せ集め。この盤のリリースは1956年12月。マイルスの伝説の一つになっている、1955年7月、ニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演後、マイルスのパフォーマンスについては、批評家からも観客からも高評価を得て、1955年のダウンビート誌読者投票ではディジー・ガレスピーと並んで最優秀トランペッター賞を獲得している。当時のマイルス人気に乗っかって、プレスティッジのストック音源から未発表音源を引っ張り出し、マイルスのリーダー作に仕立て上げて、その売り上げを狙ったものだと思われる。

ちなみにパーソネルは、まず、1953年1月30日の録音については、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Charlie Parker (as "Charlie Chan") (ts), Walter Bishop Jr. (p), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds) 、のセクステット編成。1956年3月16日の録音については、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds) 。

LPのA面「The Serpent's Tooth" (Take 1)」「The Serpent's Tooth" (Take 2)」「'Round About Midnight」「Compulsion」が、1953年1月30日の録音。マイルスとソニー・ロリンズ、そして、チャーリー・パーカー(ここではテナーを吹いている)の共演として有名なセッション。パーカーの存在が目をひくが、テナーを吹いて参加しました、ってくらいのレベル。ロリンズもパーカーに遠慮したのか、こぢんまりしたアドリブ展開に終始している。
 

Miles-daviscollectors-items

 
マイルスにだけ着目すると、1953年1月は麻薬禍を克服しつつある時期で、マイルスのトランペットは往年の輝きを取り戻しつつあることが、この録音を聴けば、それとなく判る。フロントの相棒、ロリンズの存在が良い刺激になったと思われる。結構、気持よさそうにトラペットを吹いている。ただ、演奏される楽曲のアレンジとそれに乗ったマイルスのトランペットのフレーズは平凡とは言わないまでも「発展途上」。ハードバップ初期、まだまだこれからやな、という、シンプルなアレンジ。ただ、ビ・バップとは全く異なる音世界に仕上がっているのはさすが。

LPのB面「No Line」「Vierd Blues」「In Your Own Sweet Way」が、1956年3月16日の録音。CBSへのかの名盤『'Round About Midnight』の録音が、1956年の9〜10月なので、その半年前の録音になる。マイルスのトランペットは完全復調、さらに「マイルスの考えるハードバップ」を推し進めていることがよく判る、

楽曲のアレンジとマイルスのトランペットのフレーズは、当時のハードバップとしては「先進的」。新しい響き満載で、「マイルスの考えるハードバップ」は完成に近づいていることを感じることが出来る。特にラストの「In Your Own Sweet Way」は名演。

ソニー・ロリンズのテナーとの相性も抜群で、マイルスが最後までロリンズと共演したがっていたことがよく判る。マイルスの「フロントの相棒」として最適なテナーをロリンズは提供している。このロリンズを聴けば、マイルスの下でメジャー・デビューを果たしたコルトレーンに疑問符が付いたのも頷ける。

以上の様な、録音年月日の背景を踏まえれば、LP時代のA面とB面、それぞれをそれぞれの観点で楽しむことが出来る。が、録音年月日の背景が不明ならば、LPのA面とB面の演奏の内容、演奏の雰囲気がかなり異なることに違和感を覚えるだろう。本来、アルバムは「アルバム制作のコンセプト」で統一されているという前提があるので、このプレスティッジのセッションの寄せ集めのアルバム作りは「掟破り」に近い。

プレスティッジ・レーベルのアルバムを聴く場合、楽曲の録音年月日とパーソネル、そして、できれば、ライナーノーツかアルバム解説を押さえることは重要。とにかく、セッションばらばら、寄せ集め収録曲のアルバムが得意のプレスティッジ。プレスティッジのマイルスもほとんどが「要注意」。振り返ってみれば、実に「困ったちゃん」なレーベルである。
 
 

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