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2023年11月 8日 (水曜日)

マイルス『Bags’ Groove』再聴

1954年のマイルスは、麻薬禍を克服し復調なって、「マイルスの考えるハードバップ」の追求を加速させている。特に1954年半ば以降のマイルスのリーダー作に堕盤は無い。どの盤も、マイルス独特の美学の中でのハードバップな演奏が素晴らしい。

マイルス伝説の一つになっている、マイルスのパフォーマンスについて、批評家からも観客からも高評価を得たニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演が1955年7月。このジャズフェスへの出演がきっかけで、大手レコード会社のCBSと契約、かの大名盤『’Round About Midnight』の最初の録音が1955年10月。

この大名盤の録音以降、マイルスは「伝説」となっていく訳だが、1954年の半ばから、大名盤の録音の1955年10月までは、以前と変わらない、プレスティッジ・レーベルへの録音が続く。どうして、こういうアルバム編集になったのか、と思うアルバムもあって、アルバムの作りとしては「玉石混交」としているが、演奏の内容としては優れたものばかり。

Miles Davls『Bags' Groove』(写真左)。この盤もプレスティッジ・レーベルお得意の2つのセッションの寄せ集め。しかも、この盤のリリースは1957年12月。CBSに移籍して、人気ジャズマンとなったマイルス人気に完全に乗っかったリリースだろう。ジャケット・デザインについては、玉成混交としているプレスティッジ・レーベルとしては優秀な部類で、タイポグラフィーが実に魅力的。

LPのA面は1954年12月24日の録音。「Bags' Groove" (Take 1)」「Bags' Groove" (Take 2)」の2曲のみ。どちらも収録時間10分前後と、ハードバップらしい、かなりのロングプレイである。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。ミルトの参加していた、初代MJQ(Modern Jazz Quartet)のメンバーから、ピアノのジョン・ルイスをセロニアス・モンクに代えたもの。
 

Bags_groove_1

 
LPのB面は1954年6月29日の録音。「Airegin」「Oleo」「But Not for Me (Take 2)」「Doxy」「But Not for Me (Take 1)」の5曲。それぞれの収録時間は4〜5分程度。ソニー・ロリンズ作の曲が3曲を占める。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。LPのA面のパーソネルから、ピアノがホレス・シルヴァーになっている。

この盤では、やはりLPのA面を占めるタイトル曲「Bags' Groove」が白眉の出来。何回聴いても飽きがこない、ハードバップ時代の名曲名演の一つである。

マイルスのクールでリリカルな抑制の効いたトランペット、ミルトのブルージーでファンキーで端正なヴァイブ、堅実なパーシー・ヒースのベースに、バップなリズムが魅力のケニー・クラークのドラム。そして、何より素晴らしいのが、モンクのピアノ。木訥とした不規則なタイム感覚のフレーズに、微妙で不思議な間。どこにも無い、聴いたことの無い独特のフレーズの積み重ね。シンプルさが際立つ、ブルージーでファンキーな旋律が心地良い。

LPのB面は、実は10" LP時代の『Miles Davis with Sonny Rollins』の収録曲を、そっくりそのまま持ってきたもの。「But Not for Me」のみ、未収録の別テイクを持ってきているが、これは収録曲の数を増やすだけの仕業かと思われる(笑)。

ピアノが違えば、リズム・セクションの雰囲気はガラリと変わる、という典型的な例で、LPのA面とは全く違う雰囲気の、実直ファンキーで硬派でストレートなハードバップ演奏が続く。若きソニー・ロリンズの自由奔放なテナーが魅力で、マイルスとの相性も抜群。マイルスが最後まで、フロント管の相棒として、ロリンズを欲しがったのかが良く判る。

しかしながら、LPのA面を占めるタイトル曲「Bags' Groove」の演奏内容と、LPのB面を占める、with ロリンズの演奏内容とは、「水と油」の如く、全く異なる雰囲気なので、CDやストリーミングの様に、LPのA面曲からB面曲まで連続して再生されると、途中でガラッと演奏の雰囲気が変わって、かなりの違和感が残る。

この盤は、アルバム・タイトル通り、冒頭2曲の「Bags' Groove」を愛でるためにあるアルバム、と極言しても良いかと思う。
 
 

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