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2023年11月の記事

2023年11月30日 (木曜日)

初シンタックスのホールズワース

超「変態捻れエレギ」の雄、Allan Holdsworth (アラン・ホールズワース) 。4枚目のリーダー作『Metal Fatigue』で、エレギ一本の「変態捻れエレギ」で勝負して、ホールズワースにしか作れない、捻れエレギの傑作を手にした。次はどうするんやろ、と思って聴く5枚目のリーダー作である。

Allan Holdsworth『Atavachron』(写真左)。1986年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Rowanne Mark (vo, track 7), William Edward Childs (key, tracks 2, 5), Alan Pasqua (key, tracks 3, 4, 6), Gary Husband (ds, tracks 1, 2, 4, 6), Chad Wackerman (ds, tracks 3, 7), Tony Williams (ds, track 5), Jimmy Johnson (b)。クロスオーバー・ジャズ的アプローチに力点が移ったイメージの音作り。

ホールズワースがシンタックスに手を染めた最初のリーダー作になる。シンタックスとは、シンセサイザー+アックス(斧)の合成造語。ギターを斧に見立てて名付けられた「ギター・シンセサイザー」である。

エレギ命の「ホールズワース者」からすると、許しがたい楽器みたいだが、ホールズワースの音作りやフレーズの中に潜む「プログレッシヴ・ロック」な音の要素を全面に押し出すには最適の楽器と僕は評価している。

エレクトリック・ギターとシンタックスが混在して活用されているが違和感がない。それくらい、この盤でのホールズワースはシンタックスに精通している。
 

Allan-holdsworthatavachron

 
英国プログレッシヴ・ロック等で活躍してきたシンセサイザーの基本はキーボード。シンタックスの基本はギター。シンタックスから出てくる音はシンセサイザーの音だが、出てくるフレーズはギターという楽器ならではのフレーズが出てくる。キーボード系のシンセサイザーのフレーズを聴き慣れた耳に新鮮に響く。これが「肝」。

キーボードとギターは運指のアプローチが全く違う。よって、ギターにとっては、キーボード系シンセとのユニゾン&ハーモニーは意外と取りにくいし、フレーズの受け渡しも意外と難しい。シンタックスは基本がギターなので、ギター的アプローチが容易。エレギとのユニゾン&ハーモニーは取り易いし、フレーズの受け渡しもスムーズ。その点に着目して導入に至ったのだろう。

この盤を聴いて思うのだが、ホールズワースはエレギと絡めたシンタックスの使い方が上手い。今までのキーボード系シンセのキーボード的アプローチとは全く異なる響きのギター的響きのシンセの音。これが新しいエレギの音として鳴り響いている。明らかに「エレギの弾き手」の表現の幅が広がっている。

アルバム・タイトルは「Atavachron=アタヴァクロン」。Atavachron (アタヴァクロン) とは、米国のSFテレビドラマ「Star Trek (スター・トレック) 」の中に出てくるタイム・トラベル用の装置の名前だそう。確かに、ジャケのアートワークに描かれたホールズワース本人もスタートレックの衣装を着ている。しかし、その逸話とアルバムの内容との因果関係は、と問われると、「?」と返答するしかないんですけど(笑)。
 
 

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2023年11月29日 (水曜日)

ホールズワースの個性全開

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のリーダー作の落穂拾い。というか、当ブログ記事として扱っていなかった、ホールズワースのリーダー作を聴き直している。見直してみたら、ホールズワースのリーダー作の半分以上が、当ブログの記事として扱っていない。思わず、計画立てての聴き直しである。

Allan Holdsworth『Metal Fatigue』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Paul Williams (vo, tracks 1, 4), Paul Korda (vo, track 6), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds, tracks 1–4), Gary Husband (ds, track 5), "Mac Hine" (drum machine, track 6), Jimmy Johnson (b, tracks 1–4, 6), Gary Willis (b, track 5)。基本的に知らない名前ばかり(笑)。

ホールズワースの4枚目のリーダー作。まだ、一部では「悪名高い」SynthAxe(シンタックス)には手を染めていない、純粋にエレギ一本で勝負している。しかも、ホールズワースのエレギが「捻れに捻れている」。変態拗れ(ねじれ)エレギと形容されるホールズワースのエレギだが、この盤では、とても気持よく、清々しいばかりに「捻れている」(笑)。
 

Allan-holdsworthmetal-fatigue  

 
ハーモナイザーとディストーションを効かせたヘビーなサウンドがメインで、曲によってはボーカルが入っていて、どこか「英国プログレッシヴ・ロック(プログレ)」風な響きがユニーク。さすが、ジャズとロックの境目が曖昧な英国クロスオーバー+フュージョンである。それでも、ホールズワースの変態捻れギターは、当時の英国プログレには存在しないので、これは「プログレ」ではないな、ということになる。

しかし、ホールズワースのエレギは気持ちよく捻れている。アタッチメントの選び方、使い方が上手くて、ホールズワースにしか出せない音がとんでもなく個性的。収録された曲それぞれがなかなかの出来で、様々な志向&嗜好がてんこ盛りな内容にも関わらず、曲の良さ、という点でアルバム全体に統一感がある不思議なアルバムである。

3つのセッションを合わせて作成したアルバム。色々な音の要素が散りばめられている「万華鏡」の様な内容だが、ホールズワーズの変態捻れエレギの個性は、それぞれの曲の中で一貫していて、どこから聴いても「ホールズワースしか作れない」アルバムに仕上がっているところが、このアルバムの「肝」。ホールズワースの名盤の一枚。
 
 

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2023年11月27日 (月曜日)

ヴァーヴのウエスは只者では無い

ウエス・モンゴメリーのリーダー作に駄盤は無い。ウエスの場合、初リーダー作にして、彼のギターのスタイル、個性が完璧に確立されていて、リーダー作を重ねるごとに、そのテクニックが段階的に向上していって、ピークを迎えた後、急逝するまで、そのピークな状態を維持し続けた。つまり、ウエスは、そのギターのスタイル、個性、テクニックがピークに達したまま、鬼籍に入ったことになる。

Wes Montgomery『Movin' Wes』(写真左)。1964年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Bobby Scott (p), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds), Willie Bobo (perc) 、ウエスがフロントのカルテット編成+パーカッションがメインで、バックに3トランペット、4トロンボーン、2チューバのブラス・セクションが付く。そして、異色の楽器として、Jerome Richardson (woodwinds) が入っている。

この盤は、ウエスがヴァーヴ・レコードに移籍した後、第一弾のリーダー作になる。プロデューサーは、後のCTIの総帥プロデューサーのクリード・テイラー。ジョニー・ペイトがアレンジを担当している。パーソネルを見ても分かる通り、プロデューサーの名前を見ても分かる通り、演奏の編成から聴こえてくる音は「イージーリスニング・ジャズ」。
 

Wes-montgomerymovin-wes

 
ただし、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。とにかく、ウエスがギター弾きまくっている。ギター一本がフロントなので、フロント旋律は「細身」なのかと思いきや、ウエスのギターの旋律は太くて切れ味抜群、奏でる旋律がブラス・セクションの音をバックにくっきり浮かび上がってくる。ブラス・セクションの助けを借りての「イージーリスニング・ジャズ」では無い。ブラス・セクションをウエスのギターの「引き立て役」にして、ガッチリ従えている。

冒頭の有名スタンダード曲「Caravan」を聴けば、それが良く判る。「Caravan」は、フロント楽器の超絶技巧なテクニックが映える名曲だが、この曲でのウエスの引き回しは凄い。切れ味の良い、鬼気迫る弾き回しながら、そのテンションは軽やか。凄いテクニックで弾き回しているのに、それが耳につかない、どころか、心地よい響きで耳に伝わってくる。そして、そんなウエスの弾き回しが、ブラス・セクションを従えることによって、さらに引き立つ。

ヴァーヴ・レコードは大手ジャズ・レーベルだけあって、大衆にアピールし訴求する「売れるイージーリスニング・ジャズ」をウエスに求めた。そして、ウエスはその要求に応え、さらに、ウエスのスタイルと個性とテクニックで、その「イージーリスニング・ジャズ」をアーティステックな、メインストリーム志向の純ジャズのレベルに押し上げている。改めて、ウエスの「イージーリスニング・ジャズ」は只者ではない。
 
 

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2023年11月25日 (土曜日)

ウエスの弾きっぷりが見事。

リヴァーサイド・レーベル時代のウエス・モンゴメリーのリーダー作に「はずれ」は無い。どのリーダー作でも、ウエスのギターは絶好調。加えて、総帥プロデューサーのオリン・キープニュースのサイドマンの人選がとても良く、ウエスはそんなパーソネルに恵まれて、心おきなく、ギターを弾きまくっている。

Wes Montgomery『So Much Guitar!』(写真左)。1961年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Hank Jones (p), Ron Carter (b), Ray Barretto (conga), Lex Humphries (ds)。ウエス・モンゴメリーの6枚目のリーダー作。米国ではウエスの最高の録音の1つとされる。パーソネルのメンバーの人選も申し分ない。

しかし、まあ(笑)、思いっきり弾きまくるウエスである。鬼気迫る雰囲気ではない、軽やかに爽やかに疾走するように、超絶技巧なギターを弾きまくるウエス。

これが良い。収録された曲の選曲がふるっている。全8曲中、ウエスの自作曲が2曲のみ。他の6曲は渋めのスタンダード曲。意外とひと捻りもふた捻りもある、癖のあるスタンダード曲で、これは弾き甲斐があるだろう。

一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで、ウエスの持つテクニックを余すことなく駆使して、ウエスしか弾けないギターで、渋めのスタンダード曲を味わい深く聴かせてくれる。
 

Wes-montgomeryso-much-guitar  

 
あまりに軽くかっ飛んだ弾き回しなので、ジャズ・ギター初心者は、何が何だか判らなくなるかも(笑)。それでも、この弾き回しは凄いのはよく判るかと思います。

バックのリズム隊+コンガの叩き出すリズム&ビートは小粋で典雅。ハンク・ジョーンズのファンクネス漂う典雅なバップ・ピアノが効いている。伴奏上手、奥ゆかしく典雅にバッキングするハンクのピアノは、フロントのウエスにピッタリ。

ギターとピアノ、一本弾きからお得意のオクターブ奏法、そしてコード弾きまで全部できる楽器同士なので、音がぶつかったりするのだが、ハンクのテクニックが優れているのか、決して、音がぶつからないのには感心する。

この盤、米国ではウエスの最高の録音の1つとされるが、我が国では「コンガ入り」が良く無いのか、あまりこの盤を「名盤」として紹介される機会は僅少。

が、この「コンガ」の存在が、この盤のシリアスでハードな面を緩和し、若干、ポップな雰囲気を添加していて、効果抜群と僕は聴いている。

ウエス初期の名盤の一つとして、しっかりと聴いてもらいたいリーダー作。成熟し完成し切ったウエスのギターの弾きっぷりが見事です。
 
 

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2023年11月24日 (金曜日)

『Con Alma』を傾聴する。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)』と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がる。ただ、この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

レイ・ブライアントの活動期間は、リーダー作ベースで見ても、1955年から1999年と、約半世紀に渡る。そんなレジェンド級のジャズ・ピアニストの代表盤が、1956年リリースの『Ray Bryant Trio』(Prestige)と、1959年リリースの『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚だけというのは、ちょっとなあ、と思う。レイ・ブライアントのリーダー作を全部聴けば、もっとブライアントらしい代表盤があるんだが....。

Ray Bryant『Con Alma』(写真)。1960年11月25日と1961年1月26日の録音。大手Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ray Bryant (p), Arthur Harper (b, tracks 2 & 4), Bill Lee (b, tracks 1, 3, 5 & 7–9), Mickey Roker (ds, tracks 1–5 & 7–9)。基本はピアノ・トリオ編成。ブライアントの自作曲「Cubano Chant」1曲だけ、ピアノ・ソロ。
 

Ray-bryantcon-alma

 
この盤は、全9曲中、スタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが7曲。ブライアントの自作曲も「Cubano Chant」はスタンダード志向のミュージシャンズ・チューンなので、この盤の全体の雰囲気は「ブライアントのスタンダード曲集」と解釈して良いだろう。スタンダード曲も選曲が良い。「Milestones」「Round Midnight」「Django」「Autumn Leaves」など、ブライアントが弾いたらどうなるか、と興味を強く引く選曲なので、聴いていて面白い。

ブライアントのピアノの個性である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」で、スタンダード曲を弾き進めると、そのブライアントのピアノの個性がより濃厚に伝わってくる。アレンジに、もひと工夫もふた工夫もしていて、それぞれのスタンダード曲&ミュージシャンズ・チューンが、明確にブライアント仕様になっている。

ブライアントのピアノは基本的に「ファンキー・ジャズなピアノ」。そんなブライアントの個性と特徴が、この「ブライアントのスタンダード曲集」で明確に理解できる。僕が思うに、この『Con Alma』も、レイ・ブライアントの代表盤である。
 
 

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2023年11月23日 (木曜日)

『Little Susie』を聴き直す。

レイ・ブライアントは、僕の大のお気に入りのピアニスト。オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴンゴーンと入れて、ベースラインに強烈なファンクネスとアーシーなビートを醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる弾き回し。そんな「ブライアント節」僕は大好き。

レイ・ブライアントの代表盤といえば、これまでのジャズ盤紹介本やジャズ盤紹介記事では、押し並べて『Ray Bryant Trio』(Prestige)と『Ray Bryant Plays』(Signature) の2枚ばかりが上がるが、これには僕は「疑問符」である。どうして、そうなるのか、理解に苦しむ。

この2枚でのブライアントは、彼のピアノの個性と特徴が抑制され、柄にもなく、ラウンジ・ピアノっぽい弾き回し。トリオ演奏としては聴き味は良いが、ブライアントのピアノとしては、個性と特徴が抑えられていて「隔靴搔痒」の感が強い。

Ray Bryant『Little Susie』(写真)。1959年12月10日と1960年1月19日の録音。大手のColumbiaレコードからのリリース。『Ray Bryant Plays』(Signature) から、僅か1ヶ月後の録音。ちなみに、パーソネルは、Ray Bryant (p) Tommy Bryant (b) Oliver Jackson (ds)。一ヶ月前の録音の『Ray Bryant Plays』と同じ面子での録音。
 

Ray-bryantlittle-susie_1

 
『Ray Bryant Plays』(Signature) の録音から、たった1ヶ月後なのに、こちらの『Little Susie』は内容が濃い。収録曲すべてにおいて、ブライアントのピアノの個性が、特徴が乱舞している。恐らく、プロデュースの問題だろう。ブライアントのピアノの個性が最大限に発揮されていて、聴いていてとても楽しい。

特に、冒頭1曲目の表題曲「Little Susie」は、ブライアントの愛娘の為に作った曲なんだが、実に愛らしく躍動的なテーマをベースに、ブライアントのピアノの特徴である「アーシー、ファンキー、ゴスペル・フィーリング、強いタッチに強調されたオフ・ビート、良く歌う右手」が心ゆくまで堪能できる。ブライアントのピアノの個性と特徴はこの1曲に集約されている、と言って良いほどの演奏。これ、本当に「良い」。

2曲目以降の演奏も、冒頭の「Little Susie」に勝るとも劣らない、ブライアントのピアノの特徴である、右手のアドリブの展開も特徴的で、オフビートを強調しつつ、右手の取り回しに含みと間を持たせつつ、一気にフレーズを弾き切るというドライブ感を増幅させる弾き方が「てんこ盛り」。

愛娘とのツーショットの写真も微笑ましいアルバム・ジャケットも良好で、このアルバムは、僕の大のお気に入り。アルバム全編に渡って、ブライアントのピアノの個性と特徴がしっかりと感じ取ることが出来る。僕が思うに、これぞ代表盤、である。
 
 

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2023年11月22日 (水曜日)

ユッコ・ミラー『Ambivalent』

ユッコ・ミラー。我が国の若手女子の実力派サックス奏者。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る。

そんなユッコ・ミラーのサックスがお気に入りである。特に、ながら聴きのフュージョン系ジャズとしていい感じ。ユッコ・ミラー自身のアルト・サックスの音がとても良い。アクがなく、すっと素直に伸びで、変に捻ることなく、ストレートにフレーズを紡ぐ。音は明るく軽くブリリアント。テクニックは確か。印象にしっかり残るが、決して耳障りではない。

ユッコ・ミラー『Ambivalent』(写真)。2023年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as, vo, bs), 曽根麻央 (p, key, tp), 馬場桜佑 (tb)、中村裕希 (b)、山内陽一朗 (ds)。ユッコ・ミラーの6枚目のリーダー作になる。収録曲を見渡すと、まず、チャレンジングなカバー曲が目を引く。

4曲目の「KICK BACK」は、米津玄師の手になるアニメのテーマ曲。バリバリ、シャウト系ハードロックっぽいボーカル曲なんだが、この原曲の持つ雰囲気を上手くアルト・サックスで再現している。トロンボーンとトランペットとサックスというブラス・セクションが大活躍。曲の旋律をなぞるだけではない、原曲のコード進行を拝借して、正統派ジャズのごとく、しっかりとしたアドリブを展開する。

もう一曲は、7曲目の「可愛くてごめん」。日本のクリエイターユニット・HoneyWorksの楽曲。TVアニメ『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』のキャラクターソング。これまた、今年大流行りのJ-Pop曲を曲想に合った「可愛らしい」アレンジでガンガン、ジャズしている。しかも、アドリブ部は「可愛くない」アレンジ(笑)。うむむ、ユッコ・ミラー恐るべし、である。
 

Ambivalent

 
正統派フュージョン・ジャズの楽曲っぽい、5曲目の「Morning Breeze」 は、MBSお天気部秋のテーマ曲。そして、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにおける代表的名曲、グローヴァー・ワシントン・ジュニア & ビル・ウィザースの「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」をカヴァっている。これがまた、コッテコテのソフト&メロウなアレンジで「攻めに攻める」。

ユッコ・ミラーの素晴らしいところは、この様な、フュージョン・ジャズ全盛期の名曲や、J-Pop系のアニメ関連の主題歌やキャラクターソングといった「チャレンジングなカバー曲」を、ラウンジ・ジャズっぽく、楽曲の持つ有名な旋律をなぞるだけでなく、それぞれの曲が持つコード進行を拝借して、しっかりと即興演奏っぽく、正統派ジャズっぽいアドリブを展開するところ。

そういう「意欲的」なところが全面に押し出されているからこそ、ユッコ・ミラーのアルバムは決して「ラウンジ・ジャズ」にはならない。どころか、バックの優秀なリズム隊の、切れ味の良い、躍動感あふれるリズム&ビートを得て、高度な内容の「現代のフュージョン・ジャズ」を展開している。そう、聴き手やレコード会社に迎合することなく、しっかり「ジャズ」しているところが凄い。

ユッコ・ミラーが、雑誌インタビューで「すごく幅広いし、それが面白いし、まったく飽きないアルバムになりました」と語っているが、全くその通りだと思う。ユッコ・ミラーの自作曲も内容充実。

チャレンジングなカバー曲と相まって、とてもバラエティーに富んだ、表情豊かな、実に人間っぽいアルバムに仕上がっている。アルバム・タイトルの「Ambivalent」は言い得て妙。ながら聴きに最適な「爽やかな」内容の好盤です。
 
 

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2023年11月21日 (火曜日)

小沼ようすけ『Jam Ka』再聴

「オーガニック・ジャズ」という用語を目にすることが多くなってきた様な気がする今日この頃。「オーガニック」と言えば、すなわち有機栽培や添加物無しの食品のことを指すものと思ってきたが、最近、音楽の世界で「オーガニック・ジャズ」なんて感じで使われ出している。

どうも、音楽の世界における「オーガニック」とは、「コンピューター・プログラミングではなく人力の演奏の重視」、「アコースティック楽器をメインに使うこと」、「デジタルな音加工を極力避けること」。つまり、オーガニック・ジャズとは、生楽器がメインで、人力の演奏で、音の加工や多重録音などを排除したジャズを指すのだろう。

小沼ようすけ『Jam Ka(ジャム・カ)』(写真左)。2010年の作品。ちなみにパーソネルは、小沼ようすけ (el-g、ac-g), Reggie Washington (el-b、ac-b), Milan Milanovic (p, Rhodes, Wurlitzer), Olivier Juste (Ka)、Arnaud Dolmen (Ka)、Stephanie Mckay, Joe Powers (hca)。

演奏全体の雰囲気はスムース・ジャズに近い。分かりやすく、聴いていて心地の良いアレンジ。人力の演奏オンリー、生楽器がメイン、音の加工は一切無しのシンプルな演奏。こういうジャズ演奏のイメージを「オーガニック・ジャズ」というのだろう。つまりは「オーガニック・スムース・ジャズ」。
 

Jam-ka

 
とにかく聴いていて心地良い。リズム&ビートが耳慣れない、それでいて魅惑的な、ワールド・ミュージック系ジャズが好きなじジャズ者にはたまらない響き。それは耳慣れない打楽器のリズム&ビートが醸し出す響き。

カリブ海の島・グアドループの伝統的な太鼓、カ(ka)から生み出されるグォッカのリズム&ビートが耳に新しい。ワールド・ミュージック系のスムース・ジャズといった雰囲気がぷんぷんする。カリビアンなフレーズ、音の響きが心地よく、このアルバムの演奏から想起する風景は「海と海岸」。それも、その「海」はカリブ海。

カルテット編成にカリブの民族楽器「カ(ka)」が加わって、常夏の海に面したカントリーで流れているにピッタリな、カリビアンな雰囲気。そこに、小沼のリラックス感満載な、オーガニックなギターの音が入ってきて、これがまた、クールでスマートなグルーヴを醸し出して、心地よいことこの上ない。

「海と海岸=カリブ海」を想起するカリビアンなスムース・ジャズ。ハーモニカの奏でるフレーズがこれまた「ワールド・ミュージック」風の音世界を増幅する。日本人がメインのワールド・ミュージック系の「オーガニック・スムース・ジャズ」。録音も良く、アルバムの完成度は高い。現代の「和スムース・ジャズ」の佳作。
 
 

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2023年11月20日 (月曜日)

マイルス『Quintet/Sextet』再聴

1955年7月、ニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演時、批評家からも観客からも高評価を得て、大手レコード会社のCBSと契約したのが、1955年10月。このCBSとの契約以降、マイルスは「ジャズの帝王」の道を歩き始める訳だが、それまでは、プレスティッジ・レーベルがメインの「インディーズ・ジャズの大将」って感じだった。

Miles Davis and Milt Jackson『Quintet / Sextet』(写真左)。1955年8月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Jackie McLean (as), Ray Bryant (p), Percy Heath (b), Art Taylor (ds)。アルト・サックスのマクリーンは故あって、全4曲中、「Dr. Jackle」「Minor March」の2曲にしか入っていない。

フロントが、マイルスのトランペット、マクリーンのアルト・サックス、バグス(ミルト・ジャクソン)のヴァイブの3人。バックのリズム隊は、ブライアントのピアノ、ヒースのベース、テイラーのドラム。リズム隊についてはザッと集めた感が濃厚。

このトリオ演奏は他に見たことが無い。プレスティッジらしいといえば、プレスティッジらしい(笑)。ブライアントのピアノは右手がシンプルで間を活かしたラウンジ・ピアノっぽいところがあるので、マイルスは「まあ、それはそれで良いか」と考えたのだろう。

マイルスとバグスの共演については、両者とも耽美的でリリカルなフレーズが身上、トランペットは力強くブリリアント、ヴァイブは繊細で透明度が高い。その対比が「クールでヒップな」、マイルス曰く「女を切々と口説くような」、極上のアーバンでジャジーでブルージーな音世界を創り出す。マイルスとバグスの対比は、マイルスにとって必要なものだった様に感じるが、バグスはMJQへの参加を決めていて、マイルスとバグスの共演は、この盤が最後になった。

この盤は「マイルスの考えるハードバップ」の完成形を聴くことが出来る。プレスティッジの録音セッションなので、ろくにリハーサルもせずに、いきなり本番に臨んだ節があるので、演奏のまとまりや精度について、100%満足できるものでは無いが、演奏全体の展開、アドリブの取り回し、聴かせるアレンジなど、ハードバップに必要な要素が、全て「マイルス色」に染め上げられて、ずらりと勢揃いしている。
 

Miles-davis-and-milt-jacksonquintet-sext

 
プレステッィジ・レーベルが故の、リハーサル不足、マクリーンの途中脱退、ほぼ初見のリズム隊。当然、演奏全体のレベルについては、いろいろ不足なところはあるだろう。しかし、収録曲からして、マイルスは一曲も書いていないが、他のジャズマンが書いた曲はなかなかの内容で、これがブルーノートの様にしっかりとリハーサルを積んで演奏されていたら、かなりの好演奏になっていたのでは、と推測する。

とにかく、この盤は「マイルスの考えるハードバップ」の完成形であり、マイルスは、この盤以降、この盤の成果を基に「マイルスの考えるハードバップ」を発展&昇華させていくことになる。そういう意味で、この盤は演奏そのものについては課題が残るが、これはプレスティッジに良くあることなので仕方がない。それより、「マイルスの考えるハードバップ」の完成形を聴くことが出来る点に注目すべきだろう。

ちなみにマクリーンが途中退場した理由については、マイルスの自叙伝を紐解くと、以下の通りらしい。

「Bitty Ditty」録音時、ドラムスのテイラーが繰り返し失敗。ただ、テイラーは繊細なタイプで、萎縮しないよう、マイルスはあまり強く当たらなかった。それを見たマクリーン、えこ贔屓されていると感じたのか、「俺には強く当たるのに、テイラーには優しいのか」とマイルスに詰め寄る。

まあ、なんてマクリーンは子供なんだ、というところなんですが、マクリーンは当時、既に24歳。録音時、かなり「かかった」演奏をしていたので、ヤクでもやっていたんでしょうか。そして、マイルスがそれに応じて、「どうしたんだお前、小便でもしたいのか」ときつく叱責。怒り狂ったマクリーンは楽器を片付けて帰ってしまった、とのことらしい。現場放棄のマクリーン。これ以降、マイルスとの共演は無い。

この盤のジャケの酷さについても、いろいろ揶揄されているが、プレスティッジ・レーベルなので、これくらいの酷さは当たり前と言えば当たり前。これはもう仕方がないと思っている。マイルスもこの録音は、プレスティッジとの契約の穴埋め的録音と解釈していた節があり、ジャケにもこだわることは無かったのだろう。まあ、マイルスとしては「要は中身」なんだろう。

まとめると、このマイルスの『Quintet / Sextet』、一部で言われるほど、そんなに悪い内容の盤では無いと思う。名盤『'Round About Midnight』(1956年)の「露払い的位置付けの」アルバムとして捉えた方が、この盤の内容理解が進むのでは、と思う。
 
 

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2023年11月19日 (日曜日)

ジョン・ルイスの個性と特徴

ジョン・ルイス(John Lewis)は、ジャズをクラシックと同等のアーティステックな音楽と捉え、ジャズの基本であるブルースから、ファンクネスの源泉であるゴスペル、はたまたクラシックの数々の手法にも精通したジャズ・ピアニストである。

自らのリーダー作では、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。音楽監督として腕を振るったグループ「Modern Jazz Quartet」では、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込んだり。ジャズの持つ「芸術性」を一段階、押し上げたイメージの辣腕ピアニスト&コンポーザーである。

John Lewis『The John Lewis Piano』(写真左)。1956年7月30日、1957年2月21日、8月24日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p), Barry Galbraith (g, tracks 3,5,6), Jim Hall (g, tracks 7), Percy Heath (b, tracks 2,4), Connie Kay (ds, tracks 1,2,4)。ジョン・ルイスの4枚目のリーダー作。

タイトルが「ジョン・ルイスのピアノ」。アルバム・タイトル通り、そんなジョン・ルイスの個性と特徴がしっかりと記録されているリーダー作である。ピアノ・ソロの演奏は無いが、デュオ(ドラムかギター)とピアノ・トリオによる演奏がメインで、ジョン・ルイスのピアノが全面に押し出され、その個性と特徴が良く判る内容になっている。
 

John-lewisthe-john-lewis-piano

 
端正で知的、リリカルで洗練されていてクール。その底にはブルージーな感覚と、そこはかとないファンクネスが漂っている。バリバリ弾きまくることは皆無。音を厳選した、シンプルで音の間を活かした弾き回し。左手が刻むビートは「黒くてジャジー」。決して、ラウンジ・ピアノっぽくはならない。そんなところ、対位法などクラシックの手法を応用した展開や弦楽四重奏的なアレンジが出てきたりして、全体に「アーティステック」な雰囲気が色濃く漂う。

バップなピアノとは対極に位置するような、無理にスイングさせない、古き良きブルースやゴスペルの感覚を漂わせながら、シンプルに、抑制されたオフビートな弾き回しを披露する。特に、ドラムのデュオ、ギターとのデュオに、ジョン・ルイスのピアノの個性が映えに映える。あぁ、これがジョン・ルイスのピアノやな、と実感する。

アーバンなインテリジェンスも感じさせる、ジョン・ルイスの作曲とアレンジについても特筆に値する。そんなジョン・ルイスの個性と特徴がしっかりと感じ取ることのできる『The John Lewis Piano』である。

「バリバリの演奏力」や「聴けばすぐに判る個性的な弾き回し」で勝負するのではなく、生涯ブレる事の無かった「自らの美意識に基づいた弾き回し」と、作曲&アレンジの才による「作品の完成度&構築力」で、ジャズ・ピアニストとしての格好たるポジションを獲得した。そんなジョン・ルイスの個性と特徴がダイレクトに体感できるアルバムがこの『The John Lewis Piano』である。
 
 

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2023年11月18日 (土曜日)

ジョン・ルイス meets 西海岸

ジョン・ルイスのピアノが好きである。ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。

ジャズをアカデミックな音楽ジャンルとして捉え、クラシックの手法などに精通している、のが気に入らないとかで、昔の硬派な「4ビート東海岸のモダン・ジャズ絶対主義」のジャズ者の方々からは敬遠されていた節がある。

かなり偏った評価だが、昔はそういう「ジャズの許容量が狭い」ジャズおじさんが沢山いた。ジョン・ルイスは嫌い、MJQはもっと嫌い。個人個人の感じ方なので、それはそれで良いのだが、大きな声で悪口を並べるのは良くない(笑)。

John Lewis『Grand Encounter』(写真)。1956年2月10日、ロスアンゼルスでの録音。Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p), Bill Perkins (ts), Jim Hall (g), Percy Heath (b), Chico Hamilton (ds)。サブタイトルが「2° East / 3° West」。ジョン・ルイスとパーシー・ヒースの二人が「東海岸」、ビル・パーキンス、ジム・ホール、チコ・ハミルトンが「西海岸」。
 

John-lewisgrand-encounter

 
まさに、東海岸ジャズマンと西海岸ジャズマンとの「豪華な出会い」である。フロントのテナーとギター、ドラムが「西海岸」なので、演奏全体の音作りは「ウエストコースト・ジャズ」志向になっていると思いきや、どこか「イーストコースト・ジャズ」のファクネスやブルージーな雰囲気が漂っているところが面白い。

まず、それだけ、ジョン・ルイスのピアノが「黒い」のだ。クラシックの手法に精通しているのにも関わらず、ルイスのピアノは「黒い」、つまりジャジーなのだ。加えて、紡ぎ出すフレーズがそこはかとなくファンキー。そんな「黒い」ピアノで、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジする。そんなアンバランスな魅力というか、ジャズのボーダーレスな特質が具現化されているというか、そいうところが、ジョン・ルイスのピアノの魅力。

もともと、ジョン・ルイスの作曲する楽曲は「聴かせる」楽曲。そういう点では、西海岸向きだと言える。そんなジョン・ルイスの楽曲が西海岸のジャズマンと共演することで、映えに映える。西海岸ジャズマンは「聴かせる」ジャズの演奏表現に長けているので、ジョン・ルイスの曲を全く違和感なく、聴き手に訴求する「聴かせる」演奏を展開している。

ジャズは「融合」の音楽ジャンル、他の音楽ジャンルの取り込みに長けるところが長所なのだが、この盤は、東海岸ジャズと西海岸ジャズとの融合。ジョン・ルイスのピアノと作曲センス、パーシー・ヒースの「聴かせるベースラインは西海岸、出てくる音は東海岸」というベースが西海岸ジャズにピッタリ合って、素敵な「融合」ジャズがここに記録されている。
 
 

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2023年11月17日 (金曜日)

R・ブライアントの初リーダー作

ジャズ演奏の中では、ピアノの演奏が一番お気に入り。子供の頃、10年間ほどピアノを習っていたということもあって、ピアノについては聴くだけでは無く、弾く難しさも多少理解できるので、ジャズ・ピアノは他の楽器より、その内容が理解し易い。そういう点からも、ジャズ・ピアノが一番好きなんだろうな、と思う。

ジャズ・ピアニストについては、好きなピアニストは多々いるが、ジャズを聴き始めた50年ほど前から、レイ・ブライアントがお気に入りのピアニストの一人。で、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」を追い求めていたのだが、やっとその音源を確保することが出来たのが5年ほど前。今日は、その「レイ・ブライアントの初リーダー作」のお話を。

Betty Carter And Ray Bryant『Meet Betty Carter And Ray Bryant』(写真)。1955年5月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Betty Carter (vo), Ray Bryant (p), Jerome Richardson (fl), Wendell Marshall (b), Philly Joe Jones (ds)。レイ・ブライアントのディスコグラフィーからすると、この盤が初リーダー作になるという。

この盤の構成が面白くて、ブライアントのトリオ演奏と、ベティ・カーターのボーカル入りのトリオ演奏と交互に入っている。ベティ・カーターも共同名義のアルバムなので、年齢からして、ベティ・カーター先攻で始まると思って構えていたら、ブライアントのトリオ演奏が冒頭に来るので、ちょっと拍子抜け(笑)。

しかし、この冒頭のトリオ演奏「Sneaking Around」はブライアント作の曲で、これがなかなか「イケる」。この冒頭の「Sneaking Around」から、3曲目「What Is This Thing Called Love?」のブライアント・トリオの演奏を聴いていると、レイ・ブライアントのピアノの演奏スタイルは、この初リーダー作時点で確立されていたことが判る。
 

Betty-carter-and-ray-bryantmeet-betty-ca

 
オフビートでファンキーな弾き回しが見事な右手、低音を効果的にゴーンと入れて、演奏のベースラインに強烈なファンクネスとアーシーな雰囲気を醸し出す左手。演奏のフレーズに「ダウン・トゥ・アース」な雰囲気をしっかりと漂わせる。このアーシーでダウン・トゥ・アースなピアノの弾き回しが僕は大好き。そんな「ブライアント節」が、この初リーダー作のトリオ演奏に既にしっかりと存在している。

そして、ベティ・カーターについても、この盤が初リーダー作になるらしいが、そんな雰囲気は微塵もない。既にベテランの様な堂々とした唄いっぷり。ボーカルに張りとパンチがあって歯切れが良いところは「若さ」から来るのか、とも思うが、とにかく唄いっぷりは堂々としている。そんな堂々とした唄いっぷりを支えているのが、ブライアント・トリオの小粋なバッキング。

レイ・ブライアントは伴奏上手、という印象は以前から持っているが、この初リーダー作にして、その「伴奏上手」が炸裂しているとは思わなかった。確かに「伴奏上手」。カーターのボーカルを邪魔することなく、効果的にサポートし鼓舞する。カーターはとても唄いやすそうで、自然体で流れる様に唄い上げている。

最後に、この盤は当初。LPでのリリース時には、収録曲は全12曲。CDリイシューの際に、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDと、ボーナストラックを加えて、曲順もLP時代と全く変えてリイシューしているCDとある。

この盤を聴く時は、LP時代の内容をそのままに復刻しているCDを聴いて欲しい。サブスクの場合は、冒頭の1曲目が「Sneaking Around」で始まり、12曲目が「Can't We Be Friends?」のもの。これ、ボートラが後ろにくっついている場合があるが、このボートラは無視して下さい(笑)。
 
 

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2023年11月16日 (木曜日)

クリスマスの喧嘩セッション再び

ジャズには、伝説めいた「逸話」が沢山ある。それぞれ、関係者や当事者の証言から「真実」とされる逸話もあれば、関係者や当事者の証言が全く違う「作り話」な逸話もある。それでも、それぞれの「逸話」は、ジャズならではの話がほとんどで、ジャズやジャズに関係する人達が、いかに人間っぽくて温かでユニークなのか、が良く判る。

マイルス・ディヴィスの、そんな「逸話」の筆頭に「クリスマス・セッションでの喧嘩セッション」という話がある。マイルスが先輩のモンクに「俺のバックでピアノを弾くな」と言い放ち、モンクはそれが面白くなくて途中でバッキングを取り止め、スタジオ内では一触即発の雰囲気に包まれたという伝説。「マイルスとモンクの喧嘩セッション」としても有名だったんだが、当の本人や当時の関係者の証言から、この話は全くの作り話ということで落ち着いている。

『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』(写真左)。1954年12月24日の録音。3曲目の「'Round Midnight」だけが、1956年10月26日の録音。かの有名なプレスティッジ・レーベルでの「マイルスのマラソンセッション」の音源からの1曲。これが、このアルバムのど真ん中に配置されている。演奏内容は当然良いのだが、他の「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」の演奏とは全く雰囲気が異なる。プレスティッジらしい「暴挙」である。

全5曲中、3曲目の「'Round Midnight」を除く4曲が1954年12月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。これって、先にご紹介した『Bags' Groove』の、タイトル曲のTake1, Take2と同じ。

つまり、「Bags' Groove」のTake1, Take2と、この『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』から「'Round Midnight」を除いた残り4曲が1954年12月24日の録音。この6曲が「真のクリスマス・セッション」になる。

結論から言うと、このマイルスとモンクのクリスマス・セッションについては、「Bags' Groove」のTake1, Take2が突出して出来が良く、次いで、モンク自身の作で、マイルスも気合を入れて吹いている「Bemsha Swing」。この3曲が良い。

問題の「The Man I Love (Take 2)」。この録音に入る前に、マイルスはモンクに、彼が作曲した「ベムシャ・スイング」以外は、自分の即興パートでのピアノのバッキングはやめてくれと言ったという。モンクはそれを忠実に守っただけ。そう解釈すると、この演奏は名演である。
 

Miles-davis-and-the-modern-jazz-giants

 
とにかく、冒頭のイントロ部分から、ミルトの透明感溢れる、耽美的でジャジーなヴァイブがテンションを高め、テーマを奏でるマイルスのクールでリリカルなトランペットが素晴らしい。バックキングをつける、モンク=ヒース=クラークのリズム隊も、テンションの高い、ブルージーで堅実なリズム&ビートを刻む。

ここでもモンクのコンピングは、いかにもモンクらしくて、とてもユニ0区。ただ、このモンクらしいコンピングがバックに付くと、あまりにコンピングがユニークすぎて、この耽美的なバラードにおけるアドリブ・パートが吹き難い。

マイルスの判断は正しかった。この「The Man I Love (Take 2)」でのマイルスのアドリブ・パートのクールな吹奏は素晴らしい。そんなマイルスのアドリブがクッキリ浮かび出る。

「Bemsha Swing」も良い。モンクの手になる曲が故に、モンクは活き活きとバッキングする。そのモンクの活き活きとした個性的なピアノをバックに、リリカルでクールなマイルスとミルトの流れるようなフレーズが展開される。この違和感漂う不思議な演奏が実に魅力的。

逆に、ラストに入っている「The Man I Love (Take 1)」は出来はイマイチ。これはアルバムに収録しなくてもよかったのでは、と思う。名演の「The Man I Love (Take 2)」の前の練習テイク的位置づけの演奏。これは無くても良かったなあ、と思う。

それより、この「The Man I Love (Take 1)」を除いて、「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」と呼ばれる音源で固めて、『Bags' Groove』のタイトル曲の2テイクと、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』の「The Man I Love (Take 2)」「Swing Spring」「Bemsha Swing」の5曲で、ミルト・ジャクソンを含む「マイルスとモンクのクリスマス・セッション」を一枚のアルバムとしてまとめてリリースしなかったのかが不思議。

『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』は、同一パーソネルの『Bags' Groove』のタイトル曲の2テイクと合わせて聴くと、このセッションが如何に優れた内容のセッションなのかが良く判る。但し、『Miles Davis And The Modern Jazz Giants』のど真ん中にいる「'Round Midnight」は必ず「除いて」、である(笑)。
 
 

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ジャズ喫茶で流したい・269

クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている、オールマイティーなサックス奏者だが、やはり、メインストリーム系の純ジャズを吹かせたら、現代ジャズ・サックス奏者の先頭集団に値するパフォーマンスを披露してくれる。

Chris Potter『Got the Keys to the Kingdom: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年2月、ニューヨークのライヴ・ハウス「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter(ts), Craig Taborn (p), Scott Colley (b), Marcus Gilmore (ds)。ポッターのテナーがワンホーン・フロントの、いわゆる「ワンホーン・カルテット」編成。演奏楽器もしっかり「アコースティック」のみで編成されている。

ワンホーン・カルテットのパフォーマンスは、フロント1管の演奏内容が聴き取り易い。この盤では、フロント1管の、ポッターのテナーのパフォーマンスの内容をじっくりと味わい尽くすことが出来る。

加えて、本ライヴ盤は収録されている6曲全てがカヴァー、オリジナル曲は無い。ジャズ・スタンダード、アマゾン民謡、ボサノヴァ、静的なスピリチュアル・ジャズなどを演奏している。このオリジナル曲の無いライヴ音源というのは、アレンジ、楽曲の解釈、アドリブ展開の仕方などが、他のサックス奏者のライヴ・パフォーマンスと比較し易い。そのライヴ盤のリーダーが吹くサックスの力量と才能を推し量り易くなる。
 

Chris-pottergot-the-keys-to-the-kingdom-

 
力感溢れる、高テクニックで悠然とブロウするポッターのテナーは実に魅力的。実に硬派でクールで歌心満載のポッターのテナーは、メインストリーム系の純ジャズでのパフォーマンスにおいて「映えに映える」。ポッターのテナーの力量と才能がハイレベルであることを十分に確認することができる。

ネオ・ハードバップな、ネオ・モーダルな正統派なテナーで、スタンダード曲やボサノバ曲を悠然とブロウし、テクニックを駆使して、アブストラクトな展開、フリーな展開にも対応する。高速フレーズも難なくこなす。圧倒的である。ポッターのテナーの優れたところは「オリジナリティー」を保持していること。コルトレーン風の吹き方をしそうな展開でも、ポッターはそうはならない。ポッター・オリジナルな展開を吹き上げていく。これは「見事」というほか無い。

バックのリズム・セクションも優秀。ECMでお馴染みのフリー〜スピリチュアル系、ミネソタ州ミネアポリス出身のピアニスト、クレイグ・テイボーン。お爺さんがロイ・ヘインズ、ヴィジェイ・アイヤーのトリオでドラムを担当するマーカス・ギルモア。ポッターと何作も共演しているお馴染みのベーシスト、スコット・コリー。このリズム隊が、適応力抜群なネオ・ハードバップなリズム&ビートを叩き出す。

クリス・ポッターのテナーは純ジャズにこそ、ネオ・ハードバップにこそ、最高に「映える」。そんな事実をこのビレバガでのライヴ盤はしっかりと伝えてくれる。ポッターのメインストリーム系のテナーを愛でるに最適な一枚。良いライヴ盤です。
 
 

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2023年11月14日 (火曜日)

ラックナーの『Last Decade』

朝の冷え込みがずっと続いている。今日は朝から日差しがあったので、気温はそこそこ上がったが、日差しの無い曇天だと気温が上がらない。一週間ほど前まで、半袖で過ごしていたのになあ。これだけいきなり気温が下がると、体がついていかない。外へ出て、散歩するのもちょっと控えている今日この頃。

こういう気候の時は家にいて、少し暖房をつけた暖かい部屋でジャズを聴くのが良い。部屋の中で熱いコーヒーをすすりながらジャズを聴く。それも静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズだ。それに限る。静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズとくれば「ECMレーベル」のジャズ盤だろう(なんかこればっかりやなあ・笑)。

Benjamin Lackner『Last Decade』(写真左)。2021年9月6〜8日、フランスでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Benjamin Lackner (p), Mathias Eick (tp, voice), Jerome Regard (b), Manu Katche (ds)。師匠のブラッド・メルドーも称賛する、作曲とピアノの両方でその才能を発揮しているベンジャミン・ラックナーのリーダー作。

ラックナーのピアノは透明度が高く耽美的でリリカル。エコーが効いた、漂うが如く流れるが如く、秋の黄昏時の穏やかに輝く黄金色の光の様な、ブリリアントで温かみのある音色。決して、弾きまくらない、印象的にフレーズをゆったりと流していく。いかにもECMレーベルらしいピアノの音。
 

Benjamin-lacknerlast-decade

 
そんなラックナーのピアノをバックに、ロマンティシズム溢れる、耽美的でリリカルでブリリアントなマティアス・アイクのトランペットが大活躍。バリエーション豊かで説得力のあるアイクのトランペットはこの盤での「聴きもの」のひとつ。ノルウェー出身のアイクの耽美的でリリカルなトランペットの音色も、いかにもECMレーベルらしい音。

マヌ・カッチェのドラムが変幻自在、硬軟自在、緩急自在。演奏の場面場面で、そこの相応しいリズム&ビートを叩き出す。決して全面には出てこない。それでも、この耽美的でリリカルで、クールな躍動感のあるドラミングは見事。ラックナーのピアノとアイクのトランペットに効果的に絡み、効果的に鼓舞する。

そして、ジェローム・ルガールのベースが、オーソドックスではあるが、堅実で魅了的な、しなり豊かで硬質なベースラインが、的確にリズム&ビートを刻む。ルガールのベースラインがあってこそ、ラックナーもアイクも安心して、モーダルなアドリブ・フレーズを、ゆったりとしたスピリチュアルなフレーズを弾き込み、吹き込むことが出来る。

ドイツ系アメリカ人のラックナーが奏でる、いかにも欧州ジャズらしい、いかにもECMレーベルらしい音世界。従来の欧州ジャズのピアノの音には無かった「ブリリアントで温かみのある」音色が耳に新しく響く。この盤にも、ボーダーレスな欧州ジャズを具現化する「現代のECMレーベルの音」が溢れている。
 
 

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2023年11月12日 (日曜日)

「ECMのロヴァーノ」の新作です

寒い。とにかく寒い。気象通報によれば「年末年始頃の寒さ」。あの〜今はまだ11月の上旬なんですが。これだけいきなり寒くなると、外出するのも憚られる。こういう日は、冬の身支度をして、部屋の中で熱いコーヒーでもすすりながらジャズを聴く。それも耽美的でリリカルなニュー・ジャズだ。それに限る。

静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズとくれば「ECMレーベル」のジャズ盤だろう(なんかこればっかりやなあ・笑)。特に21世紀に入った後のECMの音は幅が広がってきた。ECMといえば「欧州ジャズ」の老舗なんだが、21世紀に入って、ボーダーレスになってきた。東欧的な音、米国的な音、イスラエルな音、音の幅が広がって「ワールド・ワイド」になってきている。

Joe Lovano, Marilyn Crispell, Carmen Castaldi『Our Daily Bread』(写真左)。2022年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Trio Tapestry : Joe Lovano (ts, Tarogato, Gongs), Marilyn Crispell (p), Carmen Castaldi (ds)。ベースレス、テナー+ピアノ+ドラムの変則トリオ、ジョー・ロヴァーノのトリオ・タペストリーからの3枚目のアルバム。

ジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)は、アメリカのジャズ・サックス奏者。1952年12月29日生まれ。今年で71歳。大ベテランの域。初リーダー作は、1985年の『Tones, Shapes & Colors』。ちょうど、純ジャズ復古の時期に新鋭サックス奏者としてデビューしたので損をしている。純ジャズ復古のタイミングでカムバックしてきたベテラン・ジャズマンや、1960年代のハードバップを最良のジャズとして、その再現に精進した新伝承派ジャズマンに混じってのデビューだったので、目立ち損ねた感がある。
 

Joe-lovano-marilyn-crispell-carmen-casta

 
ECMレーベル独特の音世界の中での、ボーダーレスな「静的でスピリチュアルなジャズ」。即興演奏をメインとした、ボーダーレスなモード・ジャズをベースに、ECMお得意の「静的で耽美的でリリカルなニュー・ジャズ」が展開される。そんまニュー・ジャズの音世界にスピリチュアルな要素がしっかりと反映される。ECMにとって「新しい響き」ひとつ。

まず、ロヴァーノのサックスの音自体が「スピリチュアル」。そこに耽美的でリリカルなクリスペルのピアノが絡む。そして、このボーダーレスな「静的でスピリチュアルなジャズ」のリズム&ビートを、カスタルディのドラムがガッチリと支える。

ロヴァーノのサックスとクリスペルのピアノが醸し出す、耽美的でリリカルな音の広がり。その音の広がりに、カスタルディのシンバルがビートを刻み、印象的なメリハリを加える。典雅で流麗な、そして浮遊感溢れるバラードチックな展開には、思わずじっくりと聴き惚れてしまう。

今年のECMからリリースされた「静的なスピリチュアルなニュー・ジャズ」のアルバムの中でも白眉の出来。耽美的でリリカルな音の広がりだけでなく、リズム&ビートもしっかりと刻む。水墨画の様な仄かな暗さだけでなく、仄かに明るいブリリアントでくすんだ音の輝きもあり、アドリブ展開の巧みさと相まって、ジャズの持つ「即興の妙」を心ゆくまで楽しめる。良いアルバムです。
 
 

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2023年11月10日 (金曜日)

ドミニク・ミラー『Vagabond』

晩秋の雨の一日。午前中からそぼそぼ降り始めて、夕方からは、まとまって降る雨。こういう日は家でじっとしているに限る。外は北風に変わって気温は下がるが、室内はまだ保温が良いのか、23℃と過ごしやすい。窓の外は雨に煙る、晩秋の雨の日の風景。こういう日に聴くジャズは「ECM」が良い。

そぼ降る雨。鉛色の空。こういう天候の日は欧州系のジャズが良い。秋の黄昏時の穏やかに輝く黄金色の光の様な、ブリリアントでリリカルで叙情的な音。どこか翳りがあって、マイナー調のジャジーな響き。水墨画の如く濃淡のある静的な音の広がり。こういう欧州系のジャズについては、欧州ジャズの老舗レーベル「ECM」に求めるのが一番。

Dominic Miller『Vagabond』(写真左)。2021年4月の録音。ECMの2704番。ちなみにパーソネルは、Dominic Miller (g), Jakob Karlzon (p, key), Nicolas Fiszman (b), Ziv Ravitz (ds)。 ドミニク・ミラーのギター一本がフロントのカルテット編成。ドミニク・ミラーにとって、ECMレーベルでの3作目になる。

ドミニク・ミラーはアルゼンチン、ブエノスアイレス出身。1960年3月生まれなので、今年で63歳。この『Vagabond』録音時は61歳。ベテランの域に達した、プログレッシヴなギターが身上のギタリスト。ミラーは15歳の頃にロンドンに移り住んでいる。

ミラーはロック・ギタリストでもある。フィル・コリンズ『バッド・シリアスリー』やジュリア・フォーダム『微笑みにふれて』などに参加。特に有名になったきっかけは、1991年、スティングのアルバム『ソール・ケージ』への参加。その後、現在まで、ミラーはスティングのツアー、レコーディングに不可欠なギタリストであり続けている。
 

Dominic-millervagabond  
 

しかし、このECMレーベルで、ニュー・ジャズなリーダー作もリリースしている。いわゆる「二刀流」である。ただ、ロンドン在住経験のある、いわゆるブリティッシュ・ロックの体現者なので、元々、英国ではジャズとロックの境目が不明瞭。ロック畑のミュージシャンがジャズを違和感なくやったり、ジャズ畑のミュージシャンがロックを平気でやったりする。恐らく、ミラーもそんな「ギタリストの一人」なんだろう。

冒頭、印象的な掛け合いから始まる「All Change」が、この盤の音世界を決定づける。音の雰囲気は、秋の黄昏時の穏やかに輝く黄金色の光の様な寂寞感。これはもう、ECMレーベルお得意のリリカルで叙情的な「ニュー・ジャズ」の世界。欧州ジャズを決定づける哀愁感。

そこにミラーの「くすんだ音色の哀愁感溢れる」印象的なギターがスッと入ってくる。そして、要所要所で、寄り添うようなヤコブ・カールソンのピアノとのインタープレイが繰り広げられる。ホットではない、クールで静的な熱気を孕んだ印象的な音の絡み。

今回は、スウェーデンのピアニスト、ヤコブ・カールソンとイスラエルのドラマー、ジヴ・ラヴィッツが参加。ベーシストは前回参加のベルギーのニコラ・フィズマンが継続。このリズム・セクションが唯一無二。

北欧、イスラエル、そして、欧州ど真ん中のリズム&ビートが効果的に融合した様な、欧州ジャズ風の「多国籍」リズム・セクションが独特な雰囲気を醸し出す。この「多国籍」リズム・セクションが、このミラーのリーダー作独特の音世界の個性を、さらに濃厚なものにしている。

全曲合わせてのアルバム全体の所要時間は32分程度と短いが、それぞれの楽曲の内容が濃いので、その短さは気にならない。従来のECMの音と比べると、やや仄かに明るく、躍動感に溢れている。そんな現代のECMの音が実に印象的。エレクトリックもアコースティックもどちらのギターも優れたパフォーマンスを提供する。現代のECMのギター好盤の一枚だろう。
 
 

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2023年11月 9日 (木曜日)

マイルス『Blue Moods』を聴く

マイルスは、1953〜54年に麻薬禍から脱して復調した訳だが、収入的には満足できるレベルには至ってはいなかったと思われる。収入的に満足レベルになったのは、恐らく、1955年7月、ニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演時、批評家からも観客からも高評価を得て、大手レコード会社のCBSと契約した1955年10月以降だろう。

Miles Davis『Blue Moods』(写真左)。1955年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Britt Woodman (tb), Charles Mingus (b), Teddy Charles (vib), Elvin Jones (ds)。ベースのチャールズ・ミンガスが主宰する「Debutレーベル」からのリリースになる。プレスティッジ・レーベルからのリリースでは無いところが、この盤の「ミソ」。

収録曲はたった4曲。アルバム全体の収録時間は30分にも満たないアルバム。これは恐らく、10インチLPで収録可能は収録時間を意識してのことらしい。それを12インチLPの幅広い盤で制作すると、レコードの溝を広く深くすることができて、これが再生音の低音の向上を狙ったもの、とも解釈されるらしいが、1955年当時、アルバム再生時、そこまでハイファイな環境を意識することがあったのか、と訝しく思う。

パーソネルを見渡すと、マッチョでゴリゴリなベースのミンガス、しかも、ドラムにはエルヴィン・ジョーンズがいて、どうにも、マイルスの美意識とは合わない、マッチョでポリリズミックなドラマーである。どう考えて、この二人をマイルスが招聘する訳がない。しかも、この盤だけが突出する、ミンガスが主宰する「Debutレーベル」からのリリース。どういう背景で、このセッションに至ったのか。

どうも、マイルス、収入的には満足できないレベルにありながら、派手な生活を送っていて、お金を使いまくって、ミンガスに借金をしたらしい。しかも、借金を返済する様子もない。そこで、ミンガスは激怒。自分のレーベルからマイルスのリーダー作を出して、その収入を「借金の肩代わり」にしようと思い立ったらしい。強制的にミンガスがホストのレコーディング・セッションに連行されたマイルス。しかも、ドラムのエルヴィンもミンガスに借金していたらしく、マイルスと同様に「連行」されてきたらしい(笑)。|
 

Miles-davisblue-moods

 
そんな理由で人選されたパーソネル。一応、リーダーがマイルスなんで、マイルスの意向は反映されなかったか、とも思うんですが、それは無かったでしょうねえ(笑)。

トロンボーンを入れたのは、ブルーノートのマイルスでの「JJ.ジョンソン」の代わり、ヴァイブを入れたのは、バグス・グルーヴの「ミルト・ジャクソン」の代わりかな。ただ、ミンガスのベースとエルヴィンのドラムは、どう考えたって、マイルスのトランペットに合わないと思うのだが。エルヴィンの参加は借金返済の肩代わり、ミンガスはどうしてもベースは自分で弾きたかったのかな(笑)。

それでも、この高いレベルのジャズマンが集結したパーソネルである。恐らく、背景が背景だけに、リハーサルもそこそこに録音に入ったと思われるが、まずまずのレベルの演奏を残しているのだから、プロの一流ジャズマンって凄いなあ、と思う。ただ、パーソネルの違和感がそのまま演奏に出ていて、マイルスの自叙伝に書いてある通り、収録された4曲に共通して「何か問題があってすべてがうまく嚙み合わず、熱気のない演奏」という傾向は否めない。

それでも、マイルスのトランペットはリリカルで耽美的で力感が溢れ、4曲目「Easy Living」はバラード調で演奏されいて、この盤で一番の出来となっている。気合を入れて吹いているマイルスは申し分ない。この盤の録音動機が不純なので(笑)、セッション中、集中して気合をしっかり入れ続けることができなかったのかな、とも思う。加えて、このパーソネルでは、マイルスも気持ち良く吹き続けることができなかったのだろう。

ちなみに、この盤の録音から、マイルスが「ハーマン・ミュート」を使うようになった、とのこと。それまでの「カップ・ミュート」の音色とは異なる、クールで繊細なトランペットの音色が堪らない。マイルスのミュートといえば「ハーマン・ミュート」。そのマイルスのキャッチフレーズの様な「ハーマン・ミュート」がこの盤のセッションから使われ出した、というのは面白いエピソードである。

 

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2023年11月 8日 (水曜日)

マイルス『Bags’ Groove』再聴

1954年のマイルスは、麻薬禍を克服し復調なって、「マイルスの考えるハードバップ」の追求を加速させている。特に1954年半ば以降のマイルスのリーダー作に堕盤は無い。どの盤も、マイルス独特の美学の中でのハードバップな演奏が素晴らしい。

マイルス伝説の一つになっている、マイルスのパフォーマンスについて、批評家からも観客からも高評価を得たニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演が1955年7月。このジャズフェスへの出演がきっかけで、大手レコード会社のCBSと契約、かの大名盤『’Round About Midnight』の最初の録音が1955年10月。

この大名盤の録音以降、マイルスは「伝説」となっていく訳だが、1954年の半ばから、大名盤の録音の1955年10月までは、以前と変わらない、プレスティッジ・レーベルへの録音が続く。どうして、こういうアルバム編集になったのか、と思うアルバムもあって、アルバムの作りとしては「玉石混交」としているが、演奏の内容としては優れたものばかり。

Miles Davls『Bags' Groove』(写真左)。この盤もプレスティッジ・レーベルお得意の2つのセッションの寄せ集め。しかも、この盤のリリースは1957年12月。CBSに移籍して、人気ジャズマンとなったマイルス人気に完全に乗っかったリリースだろう。ジャケット・デザインについては、玉成混交としているプレスティッジ・レーベルとしては優秀な部類で、タイポグラフィーが実に魅力的。

LPのA面は1954年12月24日の録音。「Bags' Groove" (Take 1)」「Bags' Groove" (Take 2)」の2曲のみ。どちらも収録時間10分前後と、ハードバップらしい、かなりのロングプレイである。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Milt Jackson (vib), Thelonious Monk (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。ミルトの参加していた、初代MJQ(Modern Jazz Quartet)のメンバーから、ピアノのジョン・ルイスをセロニアス・モンクに代えたもの。
 

Bags_groove_1

 
LPのB面は1954年6月29日の録音。「Airegin」「Oleo」「But Not for Me (Take 2)」「Doxy」「But Not for Me (Take 1)」の5曲。それぞれの収録時間は4〜5分程度。ソニー・ロリンズ作の曲が3曲を占める。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。LPのA面のパーソネルから、ピアノがホレス・シルヴァーになっている。

この盤では、やはりLPのA面を占めるタイトル曲「Bags' Groove」が白眉の出来。何回聴いても飽きがこない、ハードバップ時代の名曲名演の一つである。

マイルスのクールでリリカルな抑制の効いたトランペット、ミルトのブルージーでファンキーで端正なヴァイブ、堅実なパーシー・ヒースのベースに、バップなリズムが魅力のケニー・クラークのドラム。そして、何より素晴らしいのが、モンクのピアノ。木訥とした不規則なタイム感覚のフレーズに、微妙で不思議な間。どこにも無い、聴いたことの無い独特のフレーズの積み重ね。シンプルさが際立つ、ブルージーでファンキーな旋律が心地良い。

LPのB面は、実は10" LP時代の『Miles Davis with Sonny Rollins』の収録曲を、そっくりそのまま持ってきたもの。「But Not for Me」のみ、未収録の別テイクを持ってきているが、これは収録曲の数を増やすだけの仕業かと思われる(笑)。

ピアノが違えば、リズム・セクションの雰囲気はガラリと変わる、という典型的な例で、LPのA面とは全く違う雰囲気の、実直ファンキーで硬派でストレートなハードバップ演奏が続く。若きソニー・ロリンズの自由奔放なテナーが魅力で、マイルスとの相性も抜群。マイルスが最後まで、フロント管の相棒として、ロリンズを欲しがったのかが良く判る。

しかしながら、LPのA面を占めるタイトル曲「Bags' Groove」の演奏内容と、LPのB面を占める、with ロリンズの演奏内容とは、「水と油」の如く、全く異なる雰囲気なので、CDやストリーミングの様に、LPのA面曲からB面曲まで連続して再生されると、途中でガラッと演奏の雰囲気が変わって、かなりの違和感が残る。

この盤は、アルバム・タイトル通り、冒頭2曲の「Bags' Groove」を愛でるためにあるアルバム、と極言しても良いかと思う。
 
 

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2023年11月 7日 (火曜日)

マイルスの『Collectors’ Items』

プレスティッジ・レーベルは、セッションを録音するだけ録音しておいて、そのストックした音源の中から、感覚で収録曲をチョイスし、その感覚でチョイスした演奏曲を寄せ集めて、LPフォーマットに収めて、該当するジャズマンのリーダー作をリリースする、という、ジャズという音楽の性格上、好ましくないアルバムの制作をしていた。

ジャズは即興と進化が個性の音楽ジャンルなので、そのセッションが録音された年月日がとても重要になる。そのジャズマンの経歴の中の「どの時期」の、「どんな環境下」での、「どんなメンバーとの」セッションだったのか。それによって、演奏内容や雰囲気は変わる、と言っていい。ポップスやロックの様に、演奏自体が譜面に落とされていて、その演奏は何回演奏しても、何時演奏しても、その内容はほとんど変わらない、ということはジャズにはない。

Miles Davis『Collectors' Items』(写真左)。プレスティッジお得意の2つのセッションの寄せ集め。この盤のリリースは1956年12月。マイルスの伝説の一つになっている、1955年7月、ニューポート・ジャズ・フェスティバルへの出演後、マイルスのパフォーマンスについては、批評家からも観客からも高評価を得て、1955年のダウンビート誌読者投票ではディジー・ガレスピーと並んで最優秀トランペッター賞を獲得している。当時のマイルス人気に乗っかって、プレスティッジのストック音源から未発表音源を引っ張り出し、マイルスのリーダー作に仕立て上げて、その売り上げを狙ったものだと思われる。

ちなみにパーソネルは、まず、1953年1月30日の録音については、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Charlie Parker (as "Charlie Chan") (ts), Walter Bishop Jr. (p), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds) 、のセクステット編成。1956年3月16日の録音については、Miles Davis (tp), Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds) 。

LPのA面「The Serpent's Tooth" (Take 1)」「The Serpent's Tooth" (Take 2)」「'Round About Midnight」「Compulsion」が、1953年1月30日の録音。マイルスとソニー・ロリンズ、そして、チャーリー・パーカー(ここではテナーを吹いている)の共演として有名なセッション。パーカーの存在が目をひくが、テナーを吹いて参加しました、ってくらいのレベル。ロリンズもパーカーに遠慮したのか、こぢんまりしたアドリブ展開に終始している。
 

Miles-daviscollectors-items

 
マイルスにだけ着目すると、1953年1月は麻薬禍を克服しつつある時期で、マイルスのトランペットは往年の輝きを取り戻しつつあることが、この録音を聴けば、それとなく判る。フロントの相棒、ロリンズの存在が良い刺激になったと思われる。結構、気持よさそうにトラペットを吹いている。ただ、演奏される楽曲のアレンジとそれに乗ったマイルスのトランペットのフレーズは平凡とは言わないまでも「発展途上」。ハードバップ初期、まだまだこれからやな、という、シンプルなアレンジ。ただ、ビ・バップとは全く異なる音世界に仕上がっているのはさすが。

LPのB面「No Line」「Vierd Blues」「In Your Own Sweet Way」が、1956年3月16日の録音。CBSへのかの名盤『'Round About Midnight』の録音が、1956年の9〜10月なので、その半年前の録音になる。マイルスのトランペットは完全復調、さらに「マイルスの考えるハードバップ」を推し進めていることがよく判る、

楽曲のアレンジとマイルスのトランペットのフレーズは、当時のハードバップとしては「先進的」。新しい響き満載で、「マイルスの考えるハードバップ」は完成に近づいていることを感じることが出来る。特にラストの「In Your Own Sweet Way」は名演。

ソニー・ロリンズのテナーとの相性も抜群で、マイルスが最後までロリンズと共演したがっていたことがよく判る。マイルスの「フロントの相棒」として最適なテナーをロリンズは提供している。このロリンズを聴けば、マイルスの下でメジャー・デビューを果たしたコルトレーンに疑問符が付いたのも頷ける。

以上の様な、録音年月日の背景を踏まえれば、LP時代のA面とB面、それぞれをそれぞれの観点で楽しむことが出来る。が、録音年月日の背景が不明ならば、LPのA面とB面の演奏の内容、演奏の雰囲気がかなり異なることに違和感を覚えるだろう。本来、アルバムは「アルバム制作のコンセプト」で統一されているという前提があるので、このプレスティッジのセッションの寄せ集めのアルバム作りは「掟破り」に近い。

プレスティッジ・レーベルのアルバムを聴く場合、楽曲の録音年月日とパーソネル、そして、できれば、ライナーノーツかアルバム解説を押さえることは重要。とにかく、セッションばらばら、寄せ集め収録曲のアルバムが得意のプレスティッジ。プレスティッジのマイルスもほとんどが「要注意」。振り返ってみれば、実に「困ったちゃん」なレーベルである。
 
 

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2023年11月 6日 (月曜日)

フェローシップ・バンドの新作

現代のジャズ・ドラマーのお気に入りの一人に「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」がいる。米国のジャズ・ドラマーで、1970年7月生まれなので、今年で53歳になる。自身が運営するグループ「フェローシップ・バンド」にて、初リーダー作をリリースして以降、ずっと、この「ザ・フェローシップ・バンド」で自身のリーダー作を発表し続けている。

ブライアン・ブレイドと言えば、サイドマンとしての活動にも優れた実績を残していて、チック・コリア、ケニー・ギャレット、ジョシュア・レッドマン、ウェイン・ショーター、ノラ・ジョーンズ、そして、ボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェルなど、ジャズがメインではあるが、ジャンルの垣根を超えて、ロック畑の一流ミュージシャンとの共演が目を引く。ジャンル問わずのオールマイティーなドラマーでもある。

僕は「ブライアン・ブレイドがドラマーとして参加するアルバムに駄盤無し」と常々感じていて、ブレイドのサイドマンとしてのドラミングは適応力、応用力、説得力が抜群。ブレイドのドラミングの個性&特徴はそのままに、それぞれのリーダーに合ったリズム&ビートを的確に提供している。しばらく聴いていると、これってブレイドかな、と判るくらい、個性と特徴のあるドラミングで、お気に入りになると「クセになる」ドラミングである。

Brian Blade & The Fellowship Band『Kings Highway』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, org), Kurt Rosenwinkel (g), Christopher Thomas (b, c.t. synth), Myron Walden (as, b-cl)。2017年『Body And Shadow』以来の、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」としての7枚目のスタジオ盤になる。
 

Brian-blade-the-fellowship-bandkings-hig

 
内容的には従来からの「ザ・フェローシップ・バンド」の音世界を踏襲している。1970年代、ECMレーベルがメインにリリースしてきた「ニュー・ジャズ」、いわゆる現代のコンテンポラリー・ジャズ。ハードバップの様な4ビートの旧来のジャズではなく、モーダルな展開をメインに、リズム&ビートはジャジー、即興演奏を旨として、自由度の高い、それでいて流麗〜メロディアスでキャッチャーなフレーズ展開がメインの音世界。

冒頭、ブレイド作の「Until We Meet Again」のフェローシップらしい分厚いハーモニーが「らしくて」良い。続くカワード曲「Catalysts」は、柔軟でしなやか、力強くて切れ味抜群のブレイドのドラムと、ローゼンウィンケルの高速テクニカルで浮遊感のあるエレギが印象的。3曲目の、これまたカワード曲「People’s Park」、サックスとギターのアンサンブルが美しい。

以降、ブレイド作が続いて「Kings Highway」、ドラマチックな展開にワクワクする。ハイレベルなソロ・パフォーマンスも聴き応え十分。「Look to The Hills」の高揚感が印象的で、「Migration」は15分超えの大作だが、この大作をフェローシップはダイナミックにリリカルに演奏しきってしまう。展開のバリエーション豊かで、マンネリに陥るところは皆無。創造力豊かなフェローシップ・バンドの面目躍如。ラストは讃美歌「「God Be with You」の厳かで敬虔な演奏で幕を閉じる。

ブレイドの硬軟自在、変幻自在、緩急自在な、説得力のあるドラミングは素晴らしいの一言。そして、ギターのローゼンウィンケルが大活躍。他のフェローシップのメンバーの演奏も充実の一言。この盤、ブライアン・ブレイド率いる「ザ・フェローシップ・バンド」として、現時点での最高の内容を誇る好盤だと思う。コンテンポラリー・ジャズ者には堪らない内容。良いアルバムです。
 
 

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2023年11月 5日 (日曜日)

黒田卓也『Midnight Crisp』良好

我が国の中堅ジャズ・トランペッターの黒田卓也。1980年2月21日生まれ。兵庫県芦屋市出身。20歳でバークリー音楽大学へ短期留学。2003年に渡米、NYのニュースクール大学ジャズ科に進学。2014年、リーダー作『Rising Son』(Blue Note)でメジャー・デビュー。日本国内では、JUJU、orange pekoeなどのアルバムにアレンジャーやプレイヤーとして参加している。

黒田卓也『Midnight Crisp』(写真左)。2022年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Takuya Kuroda(黒田卓也) (tp), Corey King (tb, vo), Craig Hill (ts), Lawrence Fields (p, key), Rashaan Carter (b), Adam Jackson (ds)。前作『Fly Moon Die Soon』から約2年ぶりとなった最新作。前作同様、プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートに乗った、現代のコンテンポラリーなエレ・ジャズ的な内容。「Miles Reimagined」な好盤である。

前作からの音志向を踏襲。基本はエレ・ファンク。メインストリーム志向の展開をしているので、黒田がトランペッターということもあって、まるで1970年代から1980年代のマイルス・デイヴィスのエレ・ファンクを聴いている気分になる。しかし、ファンクネスは日本人らしく、乾いていて軽い。それでも、プログラミングしているのであろうビートが切れ味よく効いていて、「Miles Reimagined」な好盤として楽しむことができる。
 

Midnight-crisp

 
トータルで33分程度の演奏なので、EP扱いとなっているみたいだが、内容が濃いので、ひとつのフル・アルバムとして聴いても何の違和感もない。これまでの「ファンク、ソウル、ジャズ、バップ、フュージョン、ヒップホップ」などの音の要素を取り込んで、現代における、21世紀における「Miles Reimagined」なエレ・ファンクに仕上がっているところが聴きどころ。特に、プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートの処理が上手い。

そんなプログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートをバックに、黒田の切れ味良く、伸びの良い、テクニック優秀な、存在感抜群のトランペットが映えに映える。エレピやシンセなどのキーボード類の弾き回しも、しっかりエレ・ファンクしていて聴き味抜群。プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートとエレ・ファンクしたエレピやシンセとが相乗効果を生んで、独特のグルーヴ感を醸し出している。

トランペット、テナー、トロンボーンのフロント3管が強力なアンサンブルを奏で、活力あるインタープレイを繰り広げる。リーダーの黒田として、トランペッターとしてのみならず、プロデューサー&コンポーザー、ビートメイカーとしての能力を遺憾無く発揮したエレ・ファンク基調のコンテンポラリーな純ジャズとして、十分に鑑賞に耐える、内容良好のなかなかの力作だと思う。
 
 

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2023年11月 4日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・268

イタリアン・ジャズの至宝であり重鎮であるピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以下、エンリコと略)。1949年12月生まれだから、今年で74歳になる。大ベテランの域であり、今までの実績から「生けるレジェンド」的存在。ビル・エヴァンスのバップでリリカルで耽美的なピアノを欧州仕様にした様な、正統派かつ硬派なモダン・ジャズ・ピアニストである。

Enrico Pieranunzi Latin Jazz Quintet『Live At Birdland』(写真左)。2008年11月1日、NYのバードランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Diego Urcola (tp), Yosvany Terry (as, ss, per), John Patitucci (b, elb), Antonio Sanchez (ds)。録音当時、2008年のエンリコ・ピエラヌンツィのニュー・プロジェクトのライヴ録音。

エンリコがラテン・ジャズに寄り道したかの様なバンド名。しかも、バードランドでのライヴ・パフォーマンスの記録。おおよそ、こってこてなラテン・ジャズが展開される、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」なライヴ盤だと思って、あまり聴く気が起きなかった。

が、リズム隊を見ると、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のベーシストのジョン・パティトゥッチ。そして、これまた、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のドラマーのアントニオ・サンチェスが名を連ねている。これは意外と、現代の硬派でメインストリーム志向の純ジャズではなかろうか、と思わす拝聴である。

冒頭「Talk Introduction」から「Danza 2」「Choro Del Infinito Hombre」と続く演奏を聴いて、まず「これのどこがラテン・ジャズ」なんや、と首をかしげる。というか、「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」が展開されるのだ。
 

Enrico-pieranunzi-latin-jazz-quintetlive

 
ラテンの雰囲気は、ところどころのキーの進行に見え隠れするが、全く「ラテン・ジャズ」色は前に出てこない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズが展開される。

特に前半は、トランペットのディエゴ・ウルコラ(アルゼンチン出身)と、サックスのヨスヴァニー・テリー(キューバ出身)のパフォーマンスが見事。この二人のフロント2管の大活躍で、前半はエンリコのピアノはあまり目立たない。

ありゃ〜?、と思って聴き進めると、明確にラテン・フレイバーの演奏が出てきたりし出して、エンリコのピアノがグイグイ前面に出てくる様になる。明らかにラテンなフレーズが出てきても「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」な雰囲気は変わらない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードな展開の中で、乾いた「ラテンなフレーズ」が見え隠れする。

不思議な雰囲気のライヴ盤。ラテン・ジャズ基調でありながら、俗っぽくて判り易い、こってこてなラテン・フレーヴァーは皆無。演奏全体の雰囲気は「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」。そんな雰囲気の中で、ストイックなラテン・フレーズが展開される。欧州ジャズが考えるラテン・ジャズ、とでも形容したら良いだろうか。

バンド名に惑わされてはいけない。「ラテン」が付いているからといって、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」の、こってこてなラテン・ジャズが展開される訳ではない。そんな要素は皆無。現代のネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズの好盤として聴かれるのが良いだろう。充実した内容の好盤である。
 
 

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2023年11月 3日 (金曜日)

マイルスの『Walkin’』を聴き直す

マイルスの麻薬禍のピークは「1952年」。1953年後半には、故郷のセントルイスに戻り、依存症の治療に専念している。麻薬禍の克服とジャズ・シーンへの本格的なカムバックは1954年。1954年には麻薬禍から脱して、マイルスの考えるハードバップを本格的に追求し始める。マイルスの1954年は「マイルスの考えるハードバップ」元年である。

Miles Davis『Walkin'』(写真左)。1954年4月3日と4月29日の2セッションの録音から成る。パーソネルも2パターンに別れる。LP時代のA面の#1「Walkin'」、#2「Blue 'n' Boogie」が、1954年4月29日の録音。LP時代のB面の#3「Solar」、#4「You Don't Know What Love Is」、#5「Love Me or Leave Me」が、1954年4月3日の録音。

ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds) は、2セッション共通。1954年4月29日の録音(LP時代のA面の#1「Walkin'」、#2「Blue 'n' Boogie」)には、J. J. Johnson (tb) と Lucky Thompson (ts) が、954年4月3日の録音(LP時代のB面の#3「Solar」、#4「You Don't Know What Love Is」、#5「Love Me or Leave Me」)には、David Schildkraut (as) が入る。

1954年4月3日の録音といえば、Miles Davis『Blue Haze』の中の、Track #1「I'll Remember April」と同じセッションになる。いかにも、プレスティッジらしい、適当なアルバム編集である。『Blue Haze』の「I'll Remember April」では、麻薬禍を克服して、クールでリリカルな、独特な響きを持ったマイルスのトランペットが戻ってきているが、この盤の「Solar」「You Don't Know What Love Is」「Love Me or Leave Me」も同様で、マイルスは復調してきたな、ということが実感できる。

が、この盤のタイトル曲の#1「Walkin'」は別格の名演。冒頭テーマ演奏のユニゾン・ハーモニーの付け方が、まったくもって、ハードバップ。アドリブの部分については更に顕著で、間の取り方、緩急の付け方、強弱の付け方、そしてタイミングを創意工夫して、ビ・バップよりも遙かに長い、複雑なアドリブをクールに表現する。
 

Miles_walkin_1  

 
そして、そのアドリブでのバッキングの妙。アドリブをしている傍らで他のミュージシャンが、フロントのアドリブを引き立てるバッキングするなんて、ビ・バップの時代には無かったこと。

つまり、ハードバップは、個人の演奏を尊重しつつ、グループ・サウンドの醸成に力点を置いた、演奏スタイルであることが理解できる。ビ・バップの様に超絶技巧な高速テクニックだけを要求するのではない、ハードバップは、非常にアカデミックな、そしてクールな演奏スタイルであることが、この「Walkin'」を通じて、大変良く判る。

2曲目以降も、麻薬禍を克服したイメージの溌剌とした、クールでリリカルなマイルスのトランペットが魅力的。同時期の録音に、1954年3月6日の録音で、ブルーノートのマイルスがあるが、これも同様に溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。この『Walkin'』セッションとブルーノートのマイルスと併せて、完全復調したマイルスを感じ取ることが出来る。

加えて、この『Walkin'』セッションで感じるのは、ベースとドラムの役割の向上。ビ・バップでは、リズム・キープとアドリブ演奏の引き立て役、という限定された役割だったが、ハードバップではその役割が、グループサウンドの醸成という枠の中で、かなり変化し向上しているのが判る。リズムの打ち方にも様々な工夫が施され、アドリブ楽器と同様、間の取り方、緩急の付け方、強弱の付け方、そしてタイミングを創意工夫して、グループサウンドの更なる醸成に貢献している。

この『Walkin'』を聴くと、マイルスが完全に麻薬禍を克服して、ジャズ・シーンにカムバックしたことを実感できる。そして、いち早く「マイルスの考えるハードバップ」の醸成に着手している。が、収入的にはまだまだ厳しかった。これは、大手レーベルである「Columbiaレコード」と単独契約するまで続くのである。
 
 

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2023年11月 2日 (木曜日)

ジャム・バンドなジョンスコ再び

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降、略して「ジョンスコ」)という、ほぼレジェンド級のギタリストって、フュージョン・テイストのコンテンポラリーなジャズから入って、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なニュー・ジャズをやったり。個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。

John Scofield『Uncle John's Band』。2022年8月、米ニューヨーク州ラインベックのクラブハウス・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Vicente Archer (b), Bill Stewart (ds)。円熟の「ジャム・バンド仕様」盤だった『Combo 66』(2018年4月録音)のパーソネルからピアノを抜いたトリオ編成。

デビュー当時から、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャム・バンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりして、数々の名作を送り出してきたが、今回の新盤の基本コンセプトは「ジャム・バンド」。収録された演奏曲を見ると、いやはかバラエティーに富んでいることおびただしい(笑)。こんな曲がジャズになるんや、と感心する選曲ばかりが並ぶ。これ、ほんとに凄い。全ての収録曲が見事に「コンテンポラリー・ジャズ」化されている。

1970年台のロック曲から「Mr. Tambourine Man」(Bob Dylan) から、ニール・ヤングの「Old Man」(Neil Young)、「Uncle John's Band」(Grateful Dead) 。ミュージカル曲は「Somewhere」(From West Side Story, Leonard Bernstein)。ジャズのスタンダード曲からミュージシャンズ・チューンについては「Budo」(Miles Davis)、「Stairway To The Stars」や「Ray's Idea」。そして、スウィング、ファンク、フォークなど様々な要素を取り入れたジョンスコのオリジナル曲。
 

John-scofielduncle-johns-band

 
トリオとしての演奏レベルが非常に高く、かつ流麗。今回はピアノレスだが、その効果が如実に現れている。リズム&ビートがシンプルになった分、ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる。そんなジョンスコの「捻れ」エレギが、印象的な即興フレーズを流麗に力強く弾き進めていく。

バックのリズム隊も秀逸。ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる様な、硬軟自在、変幻自在なリズム&ビートは聴き応え十分。ジョンスコとの相性も良く、フロントのジョンスコのエレギを引き立て、鼓舞する。このリズム隊があって、ジョンスコは流れるような力感溢れる即興フレーズを気持ちよく弾き進めることが出来るのだろう。

今回はCDにすると2枚組のボリューミーな意欲作。次から次へと演奏が進み、プレイバックして捨て曲がなかったのだろう。確かに全14曲、緩んだところ、マンネリなところは全く無い。ジャズ者の方々のみならず、ジャム・バンドのファンの方々にも訴求する優れたアルバム。

しかし、こういう内容のアルバムがECMレーベルから出るとはなあ。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーの許容範囲も広くなったもんだ、と感慨に耽る秋の夕暮れ、である。
 
 

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2023年11月 1日 (水曜日)

小沼ようすけ『Jam Ka Deux』

21世紀に入ってから頭角を表した、優れた日本人ジャズ・ギタリストの一人「小沼ようすけ(おぬま、と読む)」。1974年生まれ。今年で49歳になる。秋田県能代市出身。ジャズの世界でいけば、若手と言うにはちょっと歳は取っていて「中堅」レベルの存在。心身共々やっと落ち着いて、自らの個性を最大限発揮出来る年代である。

ギターの音の個性とは、エッジの丸いマイルドな音色。それもそのはず。ピックを使わないフィンガー・ピッカーとのこと。それでいて硬質な切れ味の良い音。ネットの情報を見れば、ギブソン・ES-275を愛用しているとのこと。

小沼ようすけ『Jam Ka Deux』(写真左)。2016年の作品。ちなみにパーソネルは、Yosuke Onuma (g), Reggie Washington (b), Arnaud Dolmen (ds, ka & vo), Olivier Juste, Sonny Troup (ka), Grgory Privat (p & Rhodes), Herv? Samb, Jacques Schwarz-bart (g), Joe Powers (harmonica), Simone Schwarz-bart (poetry reading)。

カリブ海に浮かぶ、フランス海外県グアドループの民族リズム「グオッカ」を採り入れた『Jam Ka』(2010)の続編。5年の歳月を経て、オリジナル・メンバーが再集結。

ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音作りが新鮮。この盤を聴いていて、ウエザー・リポートの3rd.盤『Sweetnighter』や、4th.盤『Mysterious Traveller』、5th.盤『Tale Spinnin'』辺りの音世界を想起した。キーボードがメインではない、小沼のこの盤は、ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」。
 

Jam-ka-deux

 
担当楽器の欄に「ka」とある。「Ka」とは、カリブ海の島グアドループの民族音楽「グオッカ・ドラム」のことで、この「Ka」がパーカッシヴな独特な音を出す。これが実にユニーク。この「Ka」の音、どうも癖になる(笑)。打楽器好きには堪らない。この「グオッカ・ドラム」の音が、この盤の音世界のワールド・ミュージック志向をより濃厚にしている。

メインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音。フレーズが聴きやすく耳当たりが良いので、フュージョン・ジャズかな、と思って聴くが、リズム&ビートとアドリブ部の展開がジャジー。ギターの音が、しっかり芯は入っていて、マイルドで心地良い。そして、フェンダー・ローズの音が良い雰囲気を醸し出す。カリビアンな音の響きがとても爽やかで印象的。今までのコンテンポラリーなエレ・ジャズの中で「ありそうで無い」、新しい響きを宿したパフォーマンス。

ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」と言えば、パット・メセニーを想起するが、メセニーの様な「ネイチャー志向」ではない。小沼の音世界は「カリビアン・ミュージック志向」であり、「シーサイド志向」である。この音世界って、今までのジャズに「ありそうで無い」。

今までのジャズにありそうで無い、小沼独特の音世界である「Jam Ka」の続編。今までに聴いたことの無いジャズ・ギターの音にあふれている。何度も聴き直したくなるような、新しい音世界がこの盤に詰まっている。

前作『Jam Ka』の音世界を、よりワールド・ミュージック志向を色濃くし、コンテンポラリーなジャズ度合いを色濃くした『Jam Ka Deux』。僕はこの『Jam Ka Deux』は通過点と感じている。次の「Jam Ka」盤では、このワールド・ミュージック志向とコンテンポラリーなジャズ度合いを、さらに高めた音世界を聴かせてくれるのだろうか。大いに楽しみである。
 
 

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