小沼ようすけのソロ・ギター盤
マイルスの聴き直しをちょっと離れて、最近のジャズの新盤のストックが溜まったので、順に聴き進めている。ここ1年、グロ=バルなジャズにおいても、和ジャズにおいても、内容の優れたアルバムが多いので、世界的にジャズのレベルはさらに上がったなあ、と感じるし、聴いていてとても楽しい。
現代ジャズ・ギターの名手の一人、カート・ローゼンウィンケルのギター・ソロ盤を聴いていて、我が国の現代ジャズ・ギターというのは、どういう状況になっているのだろうと思った。そういえば、ホーン楽器やピアノについては、我が国では古くから、優秀なミュージシャンが多く出ているが、ギターは? と問われれば、すぐに名前が出てこないのが正直なところ。
小沼ようすけ『Your Smile』(写真左)。2023年9月のリリース。名実ともに日本を代表するジャズ・ギタリスト小沼ようすけによる初のソロ・ギター・アルバム。仰向けに寝転びながらギターを弾く猫のイラストのジャケットが可愛い。アルバム『Jam Ka』(2010年)以降からコロナ禍までに書き溜めた曲から厳選されて録音されている、とのこと。
21世紀に入って、我が国のジャズ・ギター・シーンについては、確かに、小沼ようすけが第一人者だろう。純ジャズからワールドミュージックまで、幅広く音楽志向を広げて、様々な楽曲を展開してきたので、このソロ・アルバムもバラエティーに富んだ音楽志向のソロ演奏かと思いきや、徹頭徹尾、メインストリームな純ジャズ志向のソロ・パフォーマンスで埋め尽くされているのには、小沼の矜持を強く感じて、頼もしく感じた。
ウォームでエッジが丸い、やや太めの音色が個性的。テクニックは抜群。和ジャズらしく、ファンクネスはとても希薄、それでいて、しっかりオフビートしていて、ブルージーでジャジーな音色は、ガッツリ「ジャズしている」。小沼のオリジナル曲で占められているが、どの曲も流麗で温和で聴き心地が良いので「独りよがり感」は全くない。逆に、オリジナル曲がゆえ、小沼のギターの個性が強く感じられて良い。
テンポ的には、ミッド・テンポがメインなので、曲を聴き進めるうちに「飽きるかなあ」とちょっと危惧していたが、どうして、小沼のギターは、ところどころにアレンジや弾き方の面で、様々な工夫を施していて(これは相当高度なテクニックが無いとできない)、へ〜っ、ほ〜っと感心したり、聴き耳を立てているうちに、あっという間にラスト曲になってしまう。演奏の展開のバリエーションの豊かさと表現方法の引き出しの多さには感心することしきり、である。
2001年にデビュー・アルバム『nu jazz』をリリースして以降、ジャズ・ギターの優れた内容のリーダー作を順調にリリースしているが、まだ、我が国で人気がイマイチなのが残念。僕は、小沼ようすけのリーダー作はリリースされる度に聴いているのだが、ネット上を見てみても、小沼の人気はまだまだ。
しかし、小沼のジャズ・ギターは素性が良い。個性も独特の個性を持っていて、まだまだ伸びしろはある。人気の伸びしろもまだまだある。このソロ盤辺りから、そろそろブレイクして欲しいなあ。
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