« 『Ahmad Jamal Plays』を聴く | トップページ | マイルスの『Dig』 再び »

2023年10月14日 (土曜日)

マイルスの『クールの誕生』再び

マイルスのアルバムの記事を整理している。当ブログにおけるマイルスの記事は、かなり昔、このブログを始めて数年の頃、つまり、今を去ること、10年以上前に書かれたものが多い。読み返してみると、聴きが甘いなあ、と思うところがあるし、今とは評価の切り口が全く古いところもある。ということで、改訂を含めて、録音時期順にマイルスに関する記事をリメイクすることにした。

さて、マイルスのリーダー作は『クールの誕生』 Birth of the Cool(1949年〜1950年録音)に端を発する。

時はビ・バップ時代。ビ・バップ時代のマイルスは、主に、チャーリー・パーカーの陰で、サイドマンとして活躍していた。ビ・バップは、1948〜1950年。当時のジャズ界は「ビ・バップ」の全盛期。

演奏のテクニック、スピード、展開、インスピレーションを競う「ビ・バップ」。その頃、ビ・バップは、その演奏がテクニックとスピード優先、演奏者同士の競い合いに終始し、その最先端の演奏は、単純に、音楽として鑑賞に堪えるものではなくなっていた。そのテクニックを愛でる「アクロバティック」なマニア向けの「ジャズ」になりつつあった。

マイルスについては「演奏のテクニック、スピード」という点で、人後に落ちていたのは否めない。しかし、ビ・バップについては、いち早く、その「限界」を感じ取っていたのではないかと思われる。

そこでマイルスはどう考えたか。「これでは大衆音楽としてのジャズは駄目になる」と思った。「人のやってないことをやらないと生き残れない」と考えた。ひいては、ビ・バップの演奏では「女は口説けない」と考えた。

Miles Davis『Birth of the Cool』(写真)。1949年〜1950年録音。ちなみにパーソネルは、九重奏団が基本だが、録音毎に大きく変わるので、詳細は割愛する。中心人物は、Miles Davis (tp), Gerry Mulligan (bs) の二人。メンバーは、当時の米国西海岸ジャズのジャズマンを中心に選出されている。東海岸はマイルス以外、見当たらない。このパーソネルの偏りもこの盤の面白いところ。
 

Birth-of-the-cool

 
そこで、ビ・バップの演奏の弱点である、聴き応えのある展開〜アレンジ、アドリブにおけるバリエーション溢れるインスピレーションの部分を強化して、ビ・バップの次なる演奏トレンドを思索し始める。聞き手側の立場に立った、ビ・バップの弱点を克服する演奏トレンドのコンセプトを据える。「クール」である。

このアルバムの根底に流れているコンセプト。ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンら、有能なアレンジャーの「アレンジ」の下、バリトン・サックスやフレンチ・ホルン、チューバを含む9重奏団の演奏を録音した。ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比して、「クール」と称された本作。ジャズにおける「アレンジの力」を示した最初の作品だと僕は思う。

この『クールの誕生』では、構成やアレンジを重視する関係上、プレーヤー個々の自発性が犠牲にされている、というが、聴き直してみるとそうでもない。優れたアレンジの演奏の下で、少なくとも、マイルスとマリガンのアドリブは全面に押し出されていて、バックの演奏のアレンジが優秀がゆえ、マイルスもマリガンもいマージネーション溢れる、優れたアドリブを展開している。十分に「ジャズ」しているのが判る。

しっかりアレンジされ、演奏の進行も事前準備されているのだが、じっくり聴くと、この「クール」のコンセプトを通過して、ビ・バップはハード・バップに移行したんだ、と納得できる。1954年2月21日、バードランドでの歴史的な夜に、突如として、ハード・バップが世に出た訳ではない。

マイルス、コニッツそしてマリガンは熱い演奏を繰り広げているし、しっかりアレンジされている関係上、楽器のハーモニーが素晴らしく、なかなかのジャズ・オーケストラのサウンドです。ジャズにおける「アレンジの力」。振り返って、聴き返してみると、結構、興味深く、楽しく聴けたりして、これはこれで「あり」だと僕は思っています。少なくとも、ジャズとして否定するもの、低く評価するものでは無いでしょう。

 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 『Ahmad Jamal Plays』を聴く | トップページ | マイルスの『Dig』 再び »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 『Ahmad Jamal Plays』を聴く | トップページ | マイルスの『Dig』 再び »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー