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2023年10月 7日 (土曜日)

ローゼンウィンケルのライヴ盤

ジャズという音楽は「即興演奏」を旨とする音楽なので、じっくり腰を据えて制作されるスタジオ録音も良いが、やはり、ライヴ録音が聴きたくなる。

ジャズの場合、ライヴハウスやコンサート、ジャズ・フェスなどに足を運べば良いのだろうが、お気に入りの、推しのジャズメンについては、そうそう都合良く我が国に来日してくれる訳もなく、やはり、ライヴ盤のリリースに期待することになる。

Kurt Rosenwinkel『Undercover: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年、NY, Village Vanguardでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Aaron Parks (p, syn), Eric Revis (b), Greg Hutchinson (ds)。中堅の人気ジャズ・ギタリスト、カート・ローゼンウィンケルの、 NYの老舗ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ盤になる。

ローゼンウィンケルについては、僕のお気に入りのジャズ・ギタリストゆえ、デビュー作から追いかけてきた訳だが、スタジオ録音だけでなく、やはりライヴ・パフォーマンスが聴きたい。まさか、NYにまで足を運ぶ訳にもいかず鬱々していたら、今回、このビレバガでのライヴ盤がリリースされた。いやはやめでたい事である。

ローゼンウィンケルの、伸びの良いクールで単音と複雑なコード進行を織り交ぜて弾くアーバンでスムースなエレギの個性は、そのまま、ライヴで再現されている。
 

Kurt-rosenwinkelundercover-live-at-the-v  

 
逆にライヴがゆえ、スタジオ録音よりも、ローゼンウィンケルの弾き回しがホット。どこかアーバンな響き、どこか黄昏色の黄色く輝く様な音の響き。アーバンとはいえ大都会では無い、地方都市サイズの、少しフォーキーなアーバン感が心地良い。

このライヴ演奏は、ギターとキーボード、そしてベースとドラムのカルテット編成。ギターとキーボードがフロントのカルテット編成と言えば、パット・メセニー・グループ(PMG)を彷彿とさせるのだが、出て来る音世界は異なる。ローゼンウィンケルのギターもそうなんだが、パークスのキーボードはローゼンウィンケルの音志向を踏襲してはいるが、インタープレイ的にはローゼンウィンケルに相対し対峙している。

PMGのキーボードを担当していたライル・メイズは、メセニーの音志向を踏襲しつつ、メセニーのギターを引き立てる役割を担っているが、メセニーに対するインタープレイ的なアプローチはほぼ無い。このローゼンウィンケルのバンドにおいては、パークスはローゼンウィンケルと対等の表現者である。それが証拠に、パークスの特にシンセのアドリブ・ソロは圧巻。ローゼンウィンケルの音志向を外さず、その枠の中で、パークスの個性満載のキーボード・ソロを聴かせてくれる。

レヴィスのベースとハッチンソンのドラムが目立たないのが玉に瑕ではあるが、録音も良く、近年のローゼンウィンケルのライヴ盤として十分に楽しめる内容。これだけ密度の高いライヴ演奏を繰り広げているのだから、ローゼンウィンケルもパークスも全く隅に置けない。素直なライヴ・パーフォマンスばかりで、ローゼンウィンケルの正直なところがじっくり聴ける。良好盤です。
 
 

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