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2023年10月 9日 (月曜日)

エンリコのローマでのライヴ盤

ここ2〜3年ほどだろうか、イタリアン・ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以降、エンリコと略)のリーダー作を数多く目にする。新盤もあるし、以前のお蔵入り音源のリリースもあるし、以前リリースされたアルバムのリイシューもある。とにかく、エンリコの人気は尋常ではない。欧州ジャズにおけるピアニストの第一人者であることは事実だし、とても欧州のモダン・ジャズらしい響きは、確かにジャズ者万人向けのピアニストではある。

Enrico Pieranunzi, Joey Baron & Marc Johnson『Current Conditions - Live in Rome at Radiotre』(写真左)。2001年11月、ローマでのライヴ演奏。マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラム、という「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオによるライヴ演奏。2007年にリリースされている。今回、僕はこのライヴ盤は初めて聴いた。

「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオとは言っても、こライヴ盤では、モリコーネの楽曲は全く無い。トリオのメンバーそれぞれのオリジナル曲を持ち寄っての、21世紀の、欧州ジャズの「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード」な演奏がてんこ盛り。特に、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムという、現代における、最高レベルのベテラン・リズム隊に恵まれて、エンリコは自由奔放、変幻自在、硬軟自在に、モーダルなフレーズを弾きまくっている。
 

Enrico-pieranunzi-joey-baron-marc-johnso

 
このライヴ盤の魅力は、エンリコの欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでバップなピアノなんだが、その魅力をさらに押し上げているのが、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムの存在。このリズム隊の存在がエンリコのピアノの魅力を明らかに増幅している。このリズム隊、相当、強力にエンリコをバッキングし鼓舞しているのが、ありありと伝わってくる。

マーク・ジョンソンは、ビル・エヴァンスの最後のトリオのベース担当であったくらいで、エンリコの耽美的でリリカルでバップなピアノをよく理解し、よくサポートする様が実に頼もしい。そして、ジョーイ・バロンのドラムは、ピアノとベースのインタープレイの「底」をしっかり支え、自らもインタープレイの中に参加する。実は、ジョーイ・バロンのドラミングについては、こんなに素敵に、ネオ・ハードバップな、自由度と柔軟度の高いドラミングをするドラマーとは思わなかった。

音楽のサブスク・サイトを徘徊していて偶然見つけたライヴ盤であったが、これは「当たり」。ジャケはあまりに単純で、最初は、とるに足らない「イージーリスニング・ジャズ」と思って流したが、ジャケをよくよく見ると、エンリコ、ジョンソン、バロンの名前が見えるではないか。戻って、ストリームできいてみて、あらビックリである(笑)。しかし、エンリコのリーダー作にはハズレが無いなあ。感心することしきり、である。
 
 

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